説明

表示装置および表示装置用基板

【課題】高い表示性能を実現しつつ、簡便に作製可能な表示装置を提供する。
【解決手段】この表示装置は、基板上に、第1電極層、発光層を含む有機層、および第2電極層が各々順に積層されてなる複数の発光素子と、有機層を、発光素子ごとに分離する黒色絶縁層とを備える。黒色絶縁層において外光が吸収される。また、対向基板にブラックマトリクス層を設ける必要がない構造であることから、対向基板を貼り合わせる際にアライメントが不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば有機EL(Electroluminescence)素子や液晶表示素子などの表示素子を備えた表示装置、およびそのような表示装置に適用される表示装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、表示装置においては、その表示画像における高いコントラストが求められる。従来、そのような要求を実現するため、外光の、バックプレーン(一対の基板のうちの、表示面とは反対側の基板)での反射を抑える目的でブラックマトリクス層を設けるようにした構造が知られている。さらに、高コントラストに加えて色純度を向上させるため、カラーフィルタと一体化された構造のブラックマトリクス層を設けるようにした構造も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−59809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の表示装置では、バックプレーンと対向する基板上に上記のブラックマトリクス層を設けるようになっている。このため、バックプレーンと、ブラックマトリクス層が形成された基板とを貼り合せるにあたり、その位置精度(アライメント精度)の低下が問題となる場合がある。特に、一対の基板をプラスチックなどの可撓性基板とした場合、寸法安定性、平坦性および取り扱い性(ハンドリング性)などがガラス基板などと比較して低いことから、アライメント精度が低下しやすい。そのようなアライメント精度の低下により、各画素の表示領域のばらつきが生じることとなる。このため、所望の輝度が得られず、表示性能の劣化を招く可能性がある。
【0005】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、より高い表示性能を実現しつつ、簡便に作製可能な表示装置、およびそれに用いられる表示装置用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示装置は、基板上に、第1電極、発光層を含む有機層、および第2電極が各々順に積層されてなる複数の発光素子と、有機層を、発光素子ごとに分離する黒色絶縁層とを備えたものである。
【0007】
本開示の表示装置では、有機層を発光素子ごとに分離する黒色絶縁層を設けるようにしたので、その黒色絶縁層において外光が吸収される。また、対向基板にブラックマトリクス層を設ける必要がない構造であることから、対向基板を貼り合わせる際にアライメントが不要である。
【0008】
本開示の表示装置用基板は、複数の表示素子と共に表示装置に用いられるものであって、複数の発光素子を駆動させる駆動回路と、駆動回路上の領域を複数の表示素子に各々対応した複数の表示領域に区切る黒色絶縁層とを備えたものである。
【0009】
本開示の表示装置用基板では、黒色絶縁層によって複数の表示素子に各々対応した複数の表示領域に区切るようにしたので、その黒色絶縁層において外光が吸収される。また、対向基板にブラックマトリクス層を設ける必要がない構造であることから、対向基板との貼り合わせを行う際、アライメントが不要である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の表示装置および表示装置用基板によれば、素子分離を行う絶縁層を黒色としたので、外光反射の防止により黒レベルが低下し、高コントラストを実現することができる。そのうえ、対向基板にブラックマトリクス層を設ける必要がないので、比較的容易に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本技術の第1の実施の形態としての表示装置の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した表示装置の全体構成を表す概略図である。
【図3】図2に示した画素駆動回路の一例を表す回路図である。
【図4】本技術の第2の実施の形態としての表示装置の構成を表す断面図である。
【図5】本技術の変形例としての表示装置の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
<表示装置の全体構成>
図1は、本技術の第1の実施の形態としての有機発光素子を備えた、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置(以下、単に表示装置という。)1の要部断面構成を表している。表示装置1は、例えば、支持基板11の上に、映像表示用の信号線駆動回路や走査線駆動回路(図示せず)を含む画素駆動回路形成層L1と、有機発光素子10を含む発光素子形成層L2と、封止層17と、対向基板18とが順に積層されたものである。なお、各構成要素の詳細については後述する。
【0014】
図2は、表示装置1の全体構成を表すものである。表示装置1は、支持基板11の上に表示領域110が形成されたものであり、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられる。基板111上の表示領域110の周辺には、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120、走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140が形成されている。
【0015】
表示領域110には、マトリクス状に二次元配置された複数の有機発光素子10(10R,10G,10B)と、それらを駆動するための画素駆動回路150とが形成されている。有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、赤色、緑色、青色を発光する有機発光素子10を意味する。画素駆動回路150において、列方向(Y方向)には複数の信号線120A(120A1,120A2,・・・,120Am,・・・)および複数の電源供給線140A(140A1,・・・,140An,・・・)が配置され、行方向(X方向)には複数の走査線130A(130A1,・・・,130An,・・・)が配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの各交差点に、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つが対応して設けられている。各信号線120Aはその両端が信号線駆動回路120に接続され、各走査線130Aはその両端が走査線駆動回路130に接続され、各電源供給線140Aはその両端が電源供給線駆動回路140に接続されている。
【0016】
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された有機発光素子10R,10G,10Bに供給するものである。なお、信号線120Aには、その両端から信号線駆動回路120からの信号電圧が印加される。
【0017】
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各有機発光素子10R,10G,10Bへの映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。なお、走査線130Aには、その両端から走査線駆動回路130からの走査信号が供給される。
【0018】
電源供給線駆動回路140は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。電源供給線駆動回路140は、信号線駆動回路120による列単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し、各々の両端から、互いに異なる第1電位および第2電位のいずれかを適宜供給する。これにより、後述する駆動トランジスタTr1の導通状態または非導通状態の選択が行われる。
【0019】
画素駆動回路150は、基板111と有機発光素子10との間の階層、すなわち画素駆動回路形成層L1に設けられている。図3に、画素駆動回路150の一構成例を表す。図3に示したように、画素駆動回路150は、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、有機発光素子10とを有するアクティブ型の駆動回路である。有機発光素子10は、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタTr1と直列に接続されている。駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0020】
書込トランジスタTr2は、例えばドレイン電極が信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書込トランジスタTr2のゲート電極は走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書込トランジスタTr2のソース電極は、駆動トランジスタTr1のゲート電極と接続されている。
【0021】
駆動トランジスタTr1は、例えばドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタTr1のソース電極は、有機発光素子10と接続されている。
【0022】
保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート電極1G(書込トランジスタTr2のソース電極2S)と、駆動トランジスタTr1のソース電極1Sとの間に形成されるものである。
【0023】
<表示装置の要部構成>
次に、再び図1を参照して、支持基板11、画素駆動回路形成層L1、発光素子形成層L2および対向基板18などの詳細な構成について説明する。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは、互いに有機層15(後出)の構成が一部異なることを除き、他は共通の構成であるので、以下では、まとめて説明する。
【0024】
支持基板11は、例えば、水分(水蒸気)および酸素の透過を遮断可能なガラスまたはプラスチック材料などにより形成されている。トップエミッション型では対向基板18から光が取り出されるため、支持基板11は、透過性材料または非透過性材料のいずれにより形成されていてもよい。なお、表示装置1をフレキシブルディスプレイとする場合には、可撓性を有するプラスチック材料によって支持基板11を構成するとよい。
【0025】
画素駆動回路形成層L1は、ゲート絶縁膜12と保護層13との積層構造を有している。画素駆動回路形成層L1には、画素駆動回路150を構成する駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2が形成されており、さらに、信号線120A、走査線130Aおよび電源供給線140A(図示せず)も埋設されている。詳細には、支持基板11の上に、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2のゲート電極1G,2Gがそれぞれ形成され、ゲート絶縁膜12によって一括して覆われている。そのゲート絶縁膜12の上には、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2における、半導体層SC1,SC2、ソース電極1S,2Sおよびドレイン電極1D,2Dがそれぞれ形成されている。
【0026】
ゲート電極1G,2Gは、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、酸化インジウム(In23)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)またはポリスチレンスルホン酸(PSS)などである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。なお、ゲート電極1G,2Gは、上記した各種材料の層が2層以上積層されたものでもよい。
【0027】
ゲート絶縁膜12は、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。無機材料は、例えば、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)、酸化ハフニウム(HfOx)またはチタン酸バリウム(BaTiO3)などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリイミド、ポリメタクリル酸アクリレート、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。なお、ゲート絶縁膜12は、上記した各種材料の層が2層以上積層されたものでもよい。
【0028】
半導体層SC1,SC2は、無機半導体材料または有機半導体材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。無機半導体材料は、例えばアモルファスシリコンなどである。また、有機半導体材料としては、例えばアセンまたはその誘導体などを用いることができる。アセンは、例えば、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレンまたはサーカムアントラセンなどである。
【0029】
ソース電極1S,2Sおよびドレイン電極1D,2Dは、例えば、上記したゲート電極1G,2Gと同様の材料により形成されており、半導体層SC1,SC2にオーミック接触していることが好ましい。
【0030】
保護層13は、主に画素駆動回路形成層L1の表面を平坦化するために設けられるものであり、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されている。なお、ゲート絶縁膜12により十分な平坦性が得られていれば、保護層13を省略することもできる。
【0031】
発光素子形成層L2には、有機発光素子10および絶縁層19と、それらを覆う封止層17とが設けられている。
【0032】
有機発光素子10は、支持基板11の側から、アノード電極としての第1電極14、発光層15C(後出)を含む有機層15、およびカソード電極としての第2電極16が各々順に積層されたものである。有機層15および第1電極14は、絶縁層19によって有機発光素子10ごとに分離されている。一方、第2電極16は、全ての有機発光素子10に共通して設けられている。
【0033】
有機層15は、第1電極14の側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順に積層された構成を有する。但し、発光層以外の層は、必要に応じて設ければよい。
【0034】
正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層と第2電極16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層を設けてもよい。
【0035】
有機層15の各層の構成材料の一部は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ異なっている。有機発光素子10Rの正孔注入層は、例えば4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層は、例えばビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層14Cは、例えば8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層は、例えばAlq3 により構成されている。
【0036】
有機発光素子10Gの正孔注入層は、例えばm−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層は、例えばα−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層は、例えばAlq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層は、例えばAlq3 により構成されている。
【0037】
有機発光素子10Bの正孔注入層は、例えばm−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層は、例えばα−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層は、例えばスピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層は、例えばAlq3 により構成されている。
【0038】
絶縁層19は、隣り合う有機発光素子10における第1電極14および有機層15同士の隙間を埋めるように設けられている。すなわち、絶縁層19は、第1電極14と第2電極16との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10の発光領域を正確に画定するものでもある。
【0039】
絶縁層19は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料に黒色の顔料、染料および色素が分散されることで黒色を呈するもの、すなわち、可視光を吸収して反射を低減する材料によって構成されている。そのような黒色の顔料としては、例えば以下のような有機顔料および無機顔料のうちの少なくとも1種が使用される。有機顔料としては、アゾレーキ系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、アントラキノン系、ペリノン系、チオインジコ系、ペリレン系などが挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ミロリブルー、コバルト紫、マンガン紫、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ビリジアンなどが挙げられる。これらの顔料は各々単独で、もしくは2種以上を混合して使用することができる。また、黒色の染料としては、例えばアニリン・ニトロベンゼンを縮合したアジン系化合物であるニグロシン(例えばオリエント化学工業製のNUBIAN BLACKシリーズ)やBONJET BLACK(オリエント化学工業製)などが挙げられる。また、絶縁層19は、例えば、形成工程を簡略化すると共に所望の形状に成形可能にするために、光パターニングまたはリフローなどにより成形可能な感光性樹脂材料を用いて形成されていることが好ましい。
【0040】
絶縁層19には、第2電極16から保護層13に至るまで貫通した開口19Kが所定の位置に設けられている。具体的には、開口19Kは、図3に示したように、信号線120A、走査線130Aおよび電源供給線140Aの相互の交差点近傍に複数設けられている。この開口19Kを通じて、画素駆動回路形成層L1に埋設された信号線120A、走査線130Aおよび電源供給線140Aなどを構成する金属層の一部に対し、対向基板18側からレーザビームを照射することができるようになっている。
【0041】
封止層17は、保護層13と同様に、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されている。
【0042】
対向基板18は、封止層17、および熱硬化型樹脂などの接着層(図示せず)などと共に有機発光素子10を封止するものであり、有機層15に含まれる発光層において発生した光を透過する透明なガラスまたはプラスチック材料により構成されている。
【0043】
<表示装置の製造方法>
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0044】
まず、上述した材料よりなる支持基板11を用意し、その上に、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2を含む画素駆動回路150を形成する。具体的には、まず、支持基板11上に例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングすることで、支持基板11上にゲート電極1G,2Gおよび信号線120Aを形成する。次いで、全面を覆うように、上記の材料を用いて蒸着法などによりゲート絶縁膜12を形成する。さらに、ゲート絶縁膜12の上に、半導体層SC1,SC2、ドレイン電極1D,2Dおよびソース電極1S,2Sを順に、所定形状となるように形成する。その際、ゲート電極1Gとソース電極2Sとを接続する接続部を予めゲート絶縁膜12に形成しておく。また、ドレイン電極1D,2Dおよびソース電極1S,2Sの形成と併せて、走査線130Aおよび電源供給線140Aを各々形成する。その際、各配線と各電極とを繋ぐ必要な接続部を適宜形成しておく。そののち、スピンコート法などにより全体を保護層13で覆うことにより(必要に応じてさらにフォトリソグラフィ処理を施すことにより)、画素駆動回路形成層L1を完成させる。その際、保護層13における金属層1S上の所定位置に、ドライエッチングなどにより第1電極14との接続部を形成するための接続孔を形成しておく。
【0045】
さらに、上述した所定の材料よりなる第1電極14を形成する。具体的には、例えば蒸着法などによって上述の材料からなる金属膜を全面成膜したのち、その金属膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成し、さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、金属膜の選択的なエッチングを行う。その際、第1電極14を、保護層13の表面を覆うと共に上記の接続孔を充填するように形成する。
【0046】
第1電極14を形成したのち、それらの隙間を充填するように、絶縁層19を選択的に形成する。具体的には、例えば黒色顔料を含むポジ型のブラックレジストを使用し、これをスピンコート法によって全面塗布する。そののち、焼成(例えば約100℃で2分間程度)、選択的露光(150mJ/cm2 )および現像を順次行うことにより、所定形状にパターニングすることができる。その際、併せて開口19Kを所定位置に形成する。さらに、150℃程度まで加熱し、保持することでブラックレジストに含まれる有機溶媒を除去する。この際、例えば真空のオーブン内で加熱を行うと、効果的に乾燥を行うことができる。このように、開口19Kは、フォトリソグラフィ処理により高精度の形成が可能であるので、最小限度の開口面積に抑えることができる。
【0047】
以上により、薄膜トランジスタを含む画素駆動回路形成層L1と、その画素駆動回路形成層L1上の領域を複数の有機発光素子10の表示領域に区切る黒色の絶縁層19とを備えたバックプレーン(表示装置用基板)が完成する。
【0048】
続いて、第1電極14のうち、露出している部分を完全に覆うように上述した所定の材料および厚みの正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を、例えば蒸着法によって順に積層することで有機層15を形成する。さらに、有機層15を挟んで第1電極14と対向するように、全面に亘って第2電極16を形成することで有機発光素子10を完成させる。
【0049】
こののち、全体を覆うように、上述した材料よりなる封止層17を形成する。最後に、封止層17の上に、接着層を形成し、この接着層を間にして対向基板18を貼り合わせる。以上により、表示装置1が完成する。
【0050】
<表示装置の作用効果>
以上、説明したように、本実施の形態では、有機層15を有機発光素子10ごとに分離する絶縁層19が黒色材料によって構成されるようにしたので、以下の効果を奏する。すなわち、対向基板18の側から入射した外光を吸収し、その反射を十分に抑制することで、表示画像の視認性を向上させることができる。なお、位相差板や偏光板(図示せず)との組み合わせにより、有機発光素子10における外光反射率をよりいっそう低減することも可能である。また、黒色の絶縁層19によって画素分離がなされているので、隣り合う発光素子からの異なる色の画像光同士が混ざり合うこと(混色)を回避することもできる。また、対向基板18には、従来のようにブラックマトリクス層を設ける必要がないので、その対向基板18を、支持基板11上に設けられた画素駆動回路形成層L1、発光素子形成層L2および封止層17と貼り合わせる際に、特段の位置合わせ作業が不要となる。
【0051】
さらに、絶縁層19における所定位置に開口19Kを設けるようにしたので、製造段階において信号線120A、走査線130Aおよび電源供給線140の相互間で短絡が起きた場合であっても、そのリペア(修復)が可能である。例えば信号線120Aと走査線130Aとの任意の交点において短絡が生じた場合、その短絡した交点を含む信号線120A上および走査線130A上の有機発光素子10は欠陥となり、正確な発光動作をしなくなってしまう。しかしながら、その場合、その短絡箇所を挟む位置で、開口19Kを通すようにレーザビームを照射することにより信号線120Aまたは走査線130Aを破断させればよい。これにより、短絡箇所が電気的に孤立されるので、そのような欠陥が修復されるからである。電源供給線140Aと走査線130Aとの任意の交点において短絡が生じた場合についても、同様の手法により欠陥箇所の修復を行うことができる。なお、これらの修復は、信号線120A、走査線130Aおよび電源供給線140の各々の両端がそれぞれ信号線駆動回路120,走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140と接続され、信号を受けていることが前提となる。また、同一の信号線120A、走査線130Aおよび電源供給線140においては、1箇所までの修復が可能である。
【0052】
[第2の実施の形態]
図4は、本技術の第2の実施の形態としての有機発光素子を備えた表示装置1Aの要部断面構成を表しており、上記第1の実施の形態における図1に対応するものである。第1の実施の形態の表示装置1では、有機層15の構成材料を変更することにより、有機発光素子10の発光色を異ならせるようにした。これに対し、本実施の形態の表示装置1Aでは、有機発光素子10の発光色は白色とし、その上に各色のカラーフィルタを選択的に形成することにより、各色の表示を行うようにしたものである。表示装置1Aは、その点を除き、他は表示装置1と同様の構成を有する。
【0053】
この表示装置1Aの形成にあたっては、表示装置1と同様にして第2電極16までの形成を行ったのち、蒸着法およびフォトリソグラフィ法を用いて所望の色のカラーフィルタCFを選択的に形成する。カラーフィルタCFは、第1電極14と有機層15と第2電極16とが重なり合う領域を少なくとも覆い、対向基板18の側に白色光が漏れない程度の大きさを有していればよい。カラーフィルタCFの形成ののち封止層17を形成し、最後に接着層を介して封止層17と対向基板18を貼り合わせることで表示装置1Aが完成する。
【0054】
このような表示装置1Aにおいても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0055】
以上、いくつかの実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、トップエミッション型の有機発光素子を用いた表示装置について説明したが、本技術はボトムエミッション型の有機表示装置にも適用可能である。
【0056】
また、上記実施の形態では、有機発光素子を用いた表示装置を例示して説明するようにしたが、本技術は、例えば図5に示したような液晶表示素子を備えた表示装置2にも適用可能である。表示装置2は、支持基板11の上に、例えば上記実施の形態で説明した画素駆動回路形成層L1と、液晶表示素子20を含む液晶素子形成層L3と、対向基板18とが順に積層されたものである。液晶表示素子20は、保護層13の上に選択的に形成された画素電極としての第1電極24と、対向電極としての第2電極26と、それらの間に封入された液晶層25とを有している。第1電極24および第2電極26は、いずれもITOなどの透明導電性材料によって構成される。また、液晶層25に含まれる液晶分子の種類は任意に選択可能である。ここで、第1電極24は、やはり黒色の絶縁層19によって分離されている。さらに絶縁層19には、上記実施の形態と同様に開口19Kが所定の位置に複数設けられている。このような液晶表示素子20を用いた表示装置2においても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
1,1A,2…表示装置、10(10R,10G,10B)…有機発光素子、11…支持基板、12…ゲート絶縁膜、13…保護層、14,24…第1電極、15…有機層、16,26…第2電極、17…封止層、18…対向基板、19…絶縁層、19K…開口、20…液晶表示素子、25…液晶層、110…表示領域、120…信号線駆動回路、130…走査線駆動回路、140…電源供給線駆動回路、150…画素駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
第1電極、発光層を含む有機層、および第2電極が各々順に積層されてなる複数の発光素子と、
前記有機層を、前記発光素子ごとに分離する黒色絶縁層と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記基板は可撓性を有する材料からなる
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記基板と前記複数の発光素子および前記黒色絶縁層との間に、前記複数の発光素子を駆動させる駆動回路をさらに備え、
前記黒色絶縁層は開口を有している
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記複数の発光素子、前記黒色絶縁層および前記駆動回路を挟んで前記基板と対向する対向基板を備えた
請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、有機半導体層を含む薄膜トランジスタを有する
請求項3記載の表示装置。
【請求項6】
前記黒色絶縁層は、黒色の顔料、染料および色素を分散した感光性樹脂からなる
請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
前記黒色の顔料はカーボンブラックである
請求項6記載の表示装置。
【請求項8】
複数の表示素子と共に表示装置に用いられる表示装置用基板であって、
前記複数の発光素子を駆動させる駆動回路と、
前記駆動回路上の領域を前記複数の表示素子に各々対応した複数の表示領域に区切る黒色絶縁層と
を備えた表示装置用基板。
【請求項9】
前記黒色絶縁層は開口を有している
請求項8記載の表示装置用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30293(P2013−30293A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163918(P2011−163918)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】