説明

表示装置及びその製造方法

【課題】隣接する表示画素間で混色を生じることなく、良好な発光機能層(有機EL層)が形成された表示パネルを備えた表示装置、及び、当該表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性基板11上に配列される各表示画素PIXの画素形成領域Rpxを画定するためのバンク18は、少なくとも共通電圧ラインLcとなる金属層(主配線層18c)を含む導電性バンク部を備えた構造を有し、当該金属層の上面18upが撥液化され、各画素形成領域Rpxに露出する画素電極と金属層の側面18sdが親液化された状態で、有機EL層16を形成するための有機化合物含有液を塗布し、加熱乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びその製造方法に関し、特に、発光機能材料を有する液状材料を塗布することにより発光機能層が形成される発光素子を有する複数の表示画素を、二次元配列した表示パネルを備えた表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯音楽プレーヤ等の電子機器の表示デバイスとして、自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)を2次元配列した表示パネル(有機EL表示パネル)を適用したものが知られている。特に、アクティブマトリックス駆動方式を適用した有機EL表示パネルにおいては、広く普及している液晶表示装置に比較して、表示応答速度が速く、視野角依存性も小さく、液晶表示装置のようにバックライトを必要としない等の利点を有している。そのため、今後様々な電子機器への適用が期待されている。
【0003】
ここで、有機EL素子は、周知のように例えば、概略、基板等の一面側に、アノード(陽極)電極と、有機EL層(発光機能層)と、カソード(陰極)電極と、を順次積層した素子構造を有し、アノード電極に正電圧、カソード電極に負電圧を印加することにより、有機EL層内で注入されたホールと電子が再結合する際に生じるエネルギーに基づいて光(励起光)が放射されるものであるが、有機EL層となる担体輸送層を形成する有機材料(正孔輸送材料や電子輸送材料)に応じて、低分子系と高分子系の有機EL素子に大別することができる。
【0004】
低分子系の有機材料を適用した有機EL素子の場合、一般に、製造プロセスにおいて蒸着法を適用する必要があるため、画素形成領域のアノード電極上にのみ当該低分子系の有機膜を選択的に薄膜形成する際に、上記アノード電極以外の領域への低分子材料の蒸着を防止するためのメタルマスクを用いており、当該マスクの表面にも低分子材料が付着することになるため、製造時の材料ロスが大きいうえ、フォレジストマスクに比べて高精細化が困難であるという問題を有している。
【0005】
一方、高分子系の有機材料を適用した有機EL素子の場合には、湿式成膜法としてインクジェット法(液滴吐出法)やノズルプリント法(液流吐出法)等を適用することができるので、アノード電極上、又は、アノード電極を含む特定の領域にのみ選択的に上記有機材料の溶液を塗布することができ、材料ロスが少なく、メタルマスクを用いる必要がないので高精細化できるという利点を有している。
【0006】
そして、このような高分子系の有機EL表示パネルにおいては、基板上に配列される各表示画素の形成領域(画素形成領域)を画定するとともに、高分子系有機材料を有する液状材料を塗布する際に、隣接する画素形成領域に異なる色の発光材料が混入して表示画素間で発光色の混合(混色)等が生じる現象を防止するために、各画素形成領域間に絶縁性基板上に突出し、連続的に形成された隔壁を設けたパネル構造を有するものが知られている。このような隔壁を備えた有機EL表示パネルについては、例えば、特許文献1等に詳しく説明されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−76881号公報 (第4頁〜第7頁、図1〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような高分子系の有機EL素子EL表示パネルにおいては、インクジェット法やノズルプリント法等の湿式成膜法を適用して有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)を製造する際に、上記有機材料を有する液状材料が塗布される各画素形成領域や各表示画素(画素形成領域)間に設けられた隔壁の表面の特性(親液性や撥液性)、上記液状材料(塗布液)の溶媒成分に起因する表面張力や凝集力等の様々な要因により、隣接する画素形成領域に異なる色の発光材料が混入して表示画素間で発光色の混合(混色)が生じたり、或いは画素形成領域内に形成される有機EL層の膜厚が不均一になったりするという問題を有していた。
【0009】
そのため、有機EL素子の発光動作時における発光開始電圧や有機EL層から放射される光の波長(すなわち、画像表示時の色度)が設計値からずれて、所望の表示画質が得られなくなったり、或いは有機EL層の膜厚の薄い領域に過大な発光駆動電流が流れることにより、表示パネル(画素形成領域)に占める発光領域の割合(いわゆる開口率)の低下や有機EL層(有機EL素子)の劣化が著しくなり表示パネルの信頼性や寿命が低下するという問題を有していた。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、良好な発光機能層(有機EL層)が形成された表示パネルを備えた表示装置、及び、当該表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、担体輸送層を有する発光素子を含む複数の表示画素を2次元配列した表示パネルを備えた表示装置において、前記表示画素の画素形成領域を画定するための隔壁を有し、前記隔壁は、前記担体輸送層を形成するための担体輸送性材料を含む溶液に対して親液性を有する被膜が形成された側面と、前記担体輸送性材料を含む溶液に対して撥液性を有する被膜が形成された上面と、を有することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表示装置において、前記隔壁は、少なくとも表面が金属層により形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の表示装置において、前記隔壁は、隣接する前記表示画素の前記画素形成領域間を絶縁する下地層と、前記金属層と、前記下地層と前記金属層との密着性を向上するための介在層と、を積層して形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の表示装置において、前記下地層は、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜からなり、前記金属層は、銅又はその合金を有することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の表示装置において、前記金属層は、前記撥液性を有する被膜を介して、前記担体輸送層に電圧を印加するための電極に接合されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置において、前記担体輸送性材料は高分子系の有機材料からなり、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、担体輸送層を有する発光素子を含む複数の表示画素を2次元配列した表示パネルを備えた表示装置の製造方法において、
基板上に設定された前記表示画素の画素形成領域に形成された画素電極間に第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、
前記第1の金属膜上に第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、
前記第1及び第2の金属層をマスクを用いてパターニングして、前記画素形成領域ごとの前記画素電極を露出させるパターニング工程と、
前記マスクを除去した後、前記画素電極の表面を、前記担体輸送層を形成するための担体輸送性材料を含む溶液に対して親液化する親液化工程と、
前記第2の金属層を除去した後、前記第1の金属層の上面を、前記担体輸送性材料を含む溶液に対して撥液化する撥液化工程と、
前記第1の金属層により画定される前記画素形成領域に前記担体輸送性材料を含む溶液を塗布、乾燥して前記画素電極上に前記担体輸送層を形成する担体輸送層形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の表示装置の製造方法において、前記親液化工程は、前記画素電極の表面とともに前記第1の金属層の側面を、前記担体輸送層を形成するための担体輸送性材料を含む溶液に対して親液化することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項7又は8記載の表示装置の製造方法において、前記親液化工程は、前記基板に対して酸素プラズマ処理又はUVオゾン処理を施すことを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項7乃至9のいずれかに記載の表示装置の製造方法において、前記撥液化工程は、トリアジンチオール化合物の溶液に前記基板を浸漬し、前記隔壁の上面に前記担体輸送性材料を含む溶液に対して撥液性を有する被膜を形成することを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項7乃至10のいずれかに記載の表示装置の製造方法において、前記担体輸送層を介して前記複数の表示画素の前記画素電極に共通に対向し、かつ、前記撥液化された前記隔壁上に延在するように形成され、前記撥液性を有する被膜を介して、前記第1の金属層に電気的に接合された対向電極を形成する対向電極形成工程と、をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る表示装置及びその製造方法によれば、良好な発光機能層(担体輸送層;有機EL層)が形成された表示パネルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る表示装置及びその製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。ここで、以下に示す実施形態においては、表示画素を構成する発光素子として、上述した高分子系の有機材料を有する有機EL層を備えた有機EL素子を適用した場合について説明する。
【0020】
(表示パネル)
まず、本発明に係る表示装置に適用される表示パネル(有機ELパネル)及び表示画素について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置に適用される表示パネルの画素配列状態の一例を示す概略平面図であり、図2は、本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される各表示画素(表示素子及び画素駆動回路)の回路構成例を示す等価回路図である。なお、図1に示す平面図においては、説明の都合上、表示パネル(絶縁性基板)を視野側から見た、各表示画素(色画素)に設けられる画素電極の配置と各配線層の配設構造との関係のみを示し、各表示画素の有機EL素子(発光素子)を発光駆動するために、各表示画素に設けられる図2に示す画素駆動回路内のトランジスタ等の表示を省略した。また、図1においては、画素電極及び各配線層の配置を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
【0021】
本発明に係る表示装置(表示パネル)は、図1に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を有する色画素PXr、PXg、PXbを一組として、この組が行方向(図面左右方向)に繰り返し複数配列されるとともに、列方向(図面上下方向)に同一色の色画素PXr、PXg、PXbが複数配列されている。ここでは、隣接するRGB3色の色画素PXr、PXg、PXbを一組として一の表示画素PIXが形成されている。
【0022】
表示パネル10は、絶縁性基板11の一面側から突出し、柵状又は格子状の平面パターンを有して連続的に配設されたバンク(隔壁)18により、列方向に配列された同一色の複数の色画素PXr、PXg、又は、PXbの画素形成領域を有する各色画素領域が画定される。また、各色画素領域に含まれる各色画素PXr、PXg、又は、PXbの画素形成領域には、画素電極(例えばアノード電極)15が形成されているとともに、上記バンク18の配設方向に並行して列方向(図面上下方向)に信号ライン(データライン)Ldが配設され、また、当該信号ラインLdに直交して行方向(図面左右方向)に選択ライン(走査ライン)Lsおり、また供給電圧ライン(例えばアノードライン)Laが、後述するトランジスタTr12のドレイン電極Tr12dに接続され且つ列方向に延在するようにドレイン電極Tr12d上に設けられている。
【0023】
また、絶縁性基板11上に2次元配列された複数の表示画素PIX(各画素電極15)に対して共通に対向するように単一の平面電極(べた電極)を有する対向電極(例えばカソード電極)17が形成されている。ここで、対向電極17は上記バンク18上にも延在し、バンク18を形成する導電性バンク部(後述する主配線層18c)との間で電気的に接続されるようにすることにより、当該導電性バンク部を共通電圧ライン(例えばカソードライン)Lcとして適用することができる。
【0024】
表示画素PIXの各色画素PXr、PXg、PXbの具体的な回路構成としては、例えば図2に示すように、絶縁性基板11上に1乃至複数のトランジスタ(例えばアモルファスシリコン薄膜トランジスタ等)を有する画素駆動回路(又は画素回路)DCと、当該画素駆動回路DCにより生成される発光駆動電流が、上記画素電極15に供給されることにより発光動作する有機EL素子(発光素子)OELと、を備えている。
【0025】
画素駆動回路DCは、例えば図2に示すように、ゲート端子が選択ラインLsに、ドレイン端子が表示パネル10の列方向に配設された信号ラインLdに、ソース端子が接点N11に各々接続されたトランジスタ(選択用薄膜トランジスタ)Tr11と、ゲート端子が接点N11に、ドレイン端子が供給電圧ラインLaに、ソース端子が接点N12に各々接続されたトランジスタ(発光駆動用薄膜トランジスタ)Tr12と、を備えている。ここでは、トランジスタTr11、Tr12はいずれもnチャネル型の薄膜トランジスタが適用されている。
【0026】
有機EL素子OELは、アノード端子(アノード電極となる画素電極15)が上記画素駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード端子(カソード電極となる対向電極17)が共通電圧ラインLcに接続されている。また、図示を省略したが、トランジスタTr12のゲート−ソース間には寄生容量、又は、付加的な補助容量が形成されている。
【0027】
ここで、選択ラインLsは、例えば図示を省略した選択ドライバに接続され、所定のタイミングで表示パネル10の行方向に配列された複数の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)を選択状態に設定するための選択信号Sselが印加される。また、信号ラインLdは、図示を省略したデータドライバに接続され、上記表示画素PIXの選択状態に同期するタイミングで表示データに応じた階調信号Vpixが印加される。
【0028】
また、供給電圧ラインLaは、例えば所定の高電位電源に直接又は間接的に接続されて、各表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)に設けられる有機EL素子OELの画素電極(例えばアノード電極)15に表示データに応じた発光駆動電流が流れるための所定の高電圧(供給電圧Vdd)が印加され、対向電極17に接続された共通電圧ラインLc(バンク18の導電性バンク部)は、供給電圧ラインLaに印加される供給電圧Vddよりも低い電圧、例えば所定の低電位電源に直接又は間接的に接続されて、複数の有機EL素子OELに所定の低電圧(共通電圧Vcom;例えば接地電位Vgnd)が印加されるように設定されている。
【0029】
そして、このような回路構成を有する表示画素PIXにおける駆動制御動作は、まず、図示を省略した選択ドライバから所定の選択ラインLsの選択期間に対して、選択レベル(オンレベル;例えばハイレベル)の選択信号Sselを当該所定の選択ラインLsに印加することにより、トランジスタTr11がオン動作して選択状態に設定される。このタイミングに同期して、図示を省略したデータドライバから表示データに応じた電圧値を有する階調信号Vpixを信号ラインLdに印加するように制御する。これにより、トランジスタTr11を介して、階調信号Vpixに応じた電位が接点N11(すなわち、トランジスタTr12のゲート端子)に印加される。
【0030】
このように、薄膜トランジスタTr12のドレイン電極Tr12及び有機EL素子OELのカソードにそれぞれ所定の電位の供給電圧Vdd、所定の電位の共通電圧Vcomが印加されている状態では、薄膜トランジスタTr12のゲート電極Tr12gに印加される階調信号Vpix、言い換えれば薄膜トランジスタTr12のゲート−ソース間の電圧にしたがった発光駆動電流が、供給電圧ラインLaから薄膜トランジスタTr12及び有機EL素子OELを介して共通電圧ラインLcに流れ、有機EL素子OELが階調信号Vpix(すなわち表示データ)に応じた階調輝度で発光動作する。また、このとき、接点N11に印加された階調信号Vpixに基づいて、トランジスタTr12のゲート−ソース間の寄生容量(又は補助容量)に電荷が蓄積(充電)されることが好ましい。
【0031】
次いで、所定の選択ラインLsでは、選択期間後の非選択期間になると、非選択レベル(オフレベル;例えばローレベル)の選択信号Sselが印加されることにより、表示画素PIXのトランジスタTr11がオフ動作して非選択状態に設定され、信号ラインLdと画素駆動回路DCとが電気的に遮断される。このとき、上記寄生容量に蓄積された電荷が保持されることにより、トランジスタTr12では、ゲート端子に階調信号Vpixに相当する電圧が保持されるため、トランジスタTr12のゲート−ソース間の電圧が保持され続ける。
【0032】
したがって、上記選択状態における発光動作と同様に、供給電圧VddからトランジスタTr12を介して、有機EL素子OELに所定の発光駆動電流が流れて、発光動作状態が継続される。この発光動作状態は、次の階調信号Vpixが印加される(書き込まれる)まで、例えば、1フレーム期間継続するように制御される。そして、このような駆動制御動作を、表示パネル10に2次元配列された全ての表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)について、例えば各行ごとに順次実行することにより、所望の画像情報を表示する画像表示動作を実行することができる。
【0033】
なお、図2においては、表示画素PIXを構成する画素駆動回路DCとして、階調信号Vpixの電圧値を調整することにより、有機EL素子OELに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所定の輝度階調で発光動作させる電圧階調指定方式(又は、電圧階調指定駆動)の回路構成を示したが、表示データに応じて書き込む電流値を調整することにより、有機EL素子OELに流す発光駆動電流の電流値を制御して、電流値にしたがった所望の輝度階調で発光動作させる電流階調指定方式(又は、電流階調指定駆動)の回路構成を有するものであってもよい。
【0034】
(表示画素のデバイス構造)
次いで、上述したような回路構成を有する表示画素(発光駆動回路及び有機EL素子)の具体的なデバイス構造(平面レイアウト及び断面構造)について説明する。ここでは、有機EL層において発光した光を、有機EL素子が設けられている基板を介すことなく視野側(封止基板側)に出射するトップエミッション型の発光構造を有する表示パネル(有機ELパネル)について示すが、本発明はこれに限らず有機EL素子が設けられている基板を介して発光するボトムエミッション型の表示パネルに適用することもできる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の一例を示す平面レイアウト図である。ここでは、図1に示した表示画素PIXの赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素PXr、PXg、PXbのうちの、特定の一の色画素の平面レイアウトを示す。なお、図3においては、画素駆動回路DCの各トランジスタ及び配線層等が形成された層を中心に示す。また、図4、図5は、各々、図3に示した平面レイアウトを有する表示画素PIXにおけるA−A断面及びB−B断面を示す概略断面図である。
【0036】
図2に示した表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)は、具体的には、絶縁性基板11の一面側に設定された画素形成領域(各色画素PXr、PXg、PXbにおける有機EL素子の形成領域)Rpxにおいて、例えば図3に示すような平面レイアウトの上方の縁辺領域に行方向(図面左右方向)に延在するように選択ラインLsが配設されるとともに、図示しないゲート絶縁膜を介してこれらの選択ラインLsに直交するように、上記平面レイアウトの左方の縁辺領域に列方向(図面上下方向)に延在するように信号ラインLdが配設されるとともに、平面レイアウトの右方の縁辺領域に列方向(図面上下方向)に延在するように供給電圧ラインLaが配列されている。また、上記平面レイアウトの右方の縁辺領域には列方向に延在するようにバンク(詳しくは後述する)18が配設されている。
【0037】
ここで、例えば図3〜図5に示すように、選択ラインLsは、ゲート絶縁膜12を介して信号ラインLdよりも下層側(絶縁性基板11側)に設けられ、また、信号ラインLdは、供給電圧ラインLaよりも下層側に設けられている。なお、選択ラインLsは、トランジスタTr11、Tr12のゲート電極Tr11g、Tr12gを形成するためのゲートメタル層をパターニングすることによって当該ゲート電極と同じ工程で形成される。また、信号ラインLdは、トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成するためのソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって当該ソース電極、ドレイン電極と同じ工程で形成される。
【0038】
すなわち、表示画素PIXは、図4、図5に示すように、絶縁性基板11上に表示画素PIXごとに設けられる画素駆動回路DC(図2参照)の複数のトランジスタTr11、Tr12や、選択ラインLs及び信号ラインLdを含む各種配線層が設けられ、当該トランジスタTr11、Tr12及び配線層を被覆するように積層形成された保護絶縁膜13及び平坦化膜14を介して、その上層に、画素駆動回路DCに接続されて所定の発光駆動電流が供給される画素電極(例えばアノード電極)15、正孔輸送層16a(担体輸送層)と電子輸送性発光層16b(担体輸送層)を有する有機EL層(発光機能層)16、及び、共通電圧Vcomが印加される対向電極(例えばカソード電極)17を有する有機EL素子OELが形成されている。
【0039】
画素駆動回路DCは、より具体的には、例えば図3に示すように、図2に示したトランジスタTr11が行方向に配設された選択ラインLs(又は信号ラインLdから行方向に突出して形成された信号配線層Ldx)に沿って延在するように配置され、トランジスタTr12が供給電圧ラインLaに沿って延在するように配置されている。
【0040】
ここで、各トランジスタTr11、Tr12は、周知の電界効果型の薄膜トランジスタであり、各々、絶縁性基板11上に形成されたゲート電極Tr11g、Tr12gと、ゲート絶縁膜12を介して各ゲート電極Tr11g、Tr12gに対応する領域に形成された半導体層SMCと、該半導体層SMCの両端部に延在するように形成されたソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dと、を有している。
供給電圧ラインLaは、列方向に沿って各行ごとに配置されている複数のトランジスタTr12のドレイン電極Tr12dに接続されるように、列方向に延在しながらドレイン電極Tr12d上に設けられている。
【0041】
なお、各トランジスタTr11、Tr12のソース電極とドレイン電極が対向する半導体層SMC上には当該半導体層SMCへのエッチングダメージを防止するための酸化シリコン又は窒化シリコン等のブロック層BLが形成され、また、ソース電極とドレイン電極が接触する半導体層SMC上には、当該半導体層SMCとソース電極及びドレイン電極とのオーミック接続を実現するための不純物層OHMが形成されている。トランジスタTr11、Tr12のゲート電極Tr11g、Tr12gはいずれも同一のゲートメタル層をパターニングすることによって形成されている。トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dはいずれも同一のソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって形成されている。
【0042】
そして、図2に示した画素駆動回路DCの回路構成に対応するように、トランジスタTr11は、図3〜図5に示すように、ゲート電極Tr11gが選択ラインLsと一体的に形成され、同ソース電極Tr11sが信号ラインLdと一体的に形成された信号配線層Ldxに接続されている。
【0043】
また、トランジスタTr12は、図3〜図5に示すように、ゲート電極Tr12gがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホール(図示を省略)を介して上記トランジスタTr11のソース電極Tr11sに接続され、同ドレイン電極Tr12dが上部の供給電圧ラインLaの下に形成され、同ソース電極Tr12sが保護絶縁膜13及び平坦化膜14に形成されたコンタクトホールHLa(コンタクトメタルMTL)を介して有機EL素子OELの画素電極15に接続されている。
供給電圧ラインLa(アノードライン)は、図3、図4に示すように、保護絶縁膜13及び平坦化膜14に形成された配線溝HLbに埋め込まれた厚膜配線構造を有し、上記コンタクトホールHLaに埋め込まれるコンタクトメタルMTLと同じ工程で形成される。
【0044】
そして、各画素形成領域Rpxの平坦化膜14上には、図4、図5に示すように、例えばアノード電極となる画素電極15、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bを有する有機EL層16、及び、カソード電極となる対向電極17を順次積層した有機EL素子が設けられている。ここで、表示パネル10(有機EL素子OEL)がトップエミッション型の発光構造を有している場合には、画素電極15が少なくとも光反射特性を有するとともに、対向電極17が光透過性を有している。画素電極15は、具体的には後述する製造方法(図6〜図10参照)において説明するように、下層側の反射金属層15aと上層側の透明な酸化金属層15bを有する積層構造を適用することができる。
【0045】
対向電極17は、少なくとも各画素形成領域Rpxの画素電極15に対して有機EL層16を介して共通に対向するように、単一の平面電極(べた電極)により形成されている。
また、列方向の各画素形成領域Rpx間(各表示画素PIXの有機EL素子OELの形成領域相互の境界領域)には、有機EL素子OELの形成領域(厳密には、有機EL層16の形成領域)を画定するためのバンク(隔壁)18が平坦化膜14の上面から連続的に突出して設けられている。
【0046】
ここで、本実施形態に適用されるバンク18は、例えば図4に示すように、表示パネル10(絶縁性基板11)の平坦化膜14上に列方向に沿って形成され、各画素形成領域Rpxに形成される画素電極15相互を絶縁する下地層18aと、該下地層18a上に形成された下層側のチタン薄膜を有する密着層18b及び上層側の銅薄膜を有する主配線層18cを有する導電性バンク部と、を積層した構造を有している。
【0047】
バンク18は、より具体的には、隣接する表示画素PIX(画素電極15)間の境界領域付近に露出する平坦化膜14上から、有機EL素子OELの画素電極15上に一部が延在するようにシリコン窒化膜(SiN)やシリコン酸化膜(SiO)等を有する下地層18aが設けられ、当該下地層18a上に密着層18b及び主配線層18cが厚さ方向に突出するように積層形成されている。密着層18bは、行方向において、その幅が下地層18aの幅より狭く下地層18aの中央に配置されているので、下地層18aの行方向両端側の各上面が露出している。
【0048】
特に、バンク18を形成する導電性バンク部の上層側の主配線層18cは、図1に示したように、表示パネル10(絶縁性基板11)上に柵状又は格子状に配設された低抵抗の共通電圧ラインLcとして適用され、また、下層側の密着層18bは、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等を有する下地層18aと上層側の主配線層18cとの密着性を改善するための介在層として適用される。
【0049】
そして、図4、図5に示すように、各表示画素PIXに共通に設けられる対向電極17が、各画素形成領域Rpxだけでなく、当該画素形成領域Rpxを画定するバンク18上にも延在するように設けられることにより、上記導電性バンク部の上層側の主配線層18cと電気的に接続するように接合されている。これにより、主配線層18cを共通電圧ライン(例えばカソードライン)Lcとして兼用することができる。
【0050】
そして、図1に示したように、上記積層構造を有するバンク18を表示パネル10(絶縁性基板11)上に柵状又は格子状の平面パターンを有するように配設することにより、列方向(図面上下方向)に配列された複数の表示画素PIXの画素形成領域Rpx(すなわち、後述する製造方法において、各画素形成領域Rpxに有機EL層16を形成する際の有機化合物材料(有機化合物含有液)の塗布領域)が画定される。
【0051】
なお、上記画素駆動回路DC、有機EL素子OEL及びバンク18が形成された絶縁性基板11上には、例えば図4、図5に示すように、透明な封止樹脂層19を介して、絶縁性基板11に対向するようにガラス基板等を有する封止基板20が接合されている。なお、封止樹脂層19の代わりに1Pa以下に減圧された雰囲気又は不活性ガスが充填された雰囲気で満たされていてもよい。
【0052】
そして、このような表示パネル10においては、例えば、表示パネル10の下層(有機EL素子OELの絶縁性基板11側の層)に設けられたトランジスタTr11、Tr12等の機能素子、選択ラインLsや信号ラインLd、供給電圧ライン(アノードライン)La等の配線層を有する画素駆動回路DCにおいて、信号ラインLdを介して供給された表示データに応じた階調信号Vpixに基づいて、所定の電流値を有する発光駆動電流がトランジスタTr12のドレイン−ソース間に流れ、当該トランジスタTr12(ドレイン電極Tr12d)からコンタクトホールHLa(コンタクトメタルMTL)を介して、有機EL素子OELの画素電極15に供給されることにより、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL素子OELが上記表示データに応じた所望の輝度階調で発光動作する。
【0053】
このとき、本実施形態に示した表示パネル10において、画素電極15が光反射特性を有し、対向電極17が光透過性を有することにより(すなわち、有機EL素子OELがトップエミッション型の発光構造を有することにより)、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光は、光透過性を有する対向電極17を介して直接、あるいは、光反射特性を有する画素電極15で反射して、絶縁性基板11を介することなく、封止基板20(表示パネル)の一面側に設定された視野側(図4、図5の図面上方)に出射される。
【0054】
(表示装置の製造方法)
次に、上述した表示装置(表示パネル)の製造方法について説明する。
図6乃至図10は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図である。ここでは、図4に示したA−A断面のパネル構造の製造工程について説明する。また、図11は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に形成されるバンク表面の被膜の分子構造を説明するための化学記号であり、図12は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に形成されるバンク表面の撥液性及び親液性を説明するための概略断面図である。また、図13は、本実施形態に係る有機EL層の形成工程における膜表面の状態変化を示す概念図である。
【0055】
上述した表示装置(表示パネル)の製造方法は、まず、図6(a)に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側(図面上面側)に設定された表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の形成領域(画素形成領域)Rpxごとに、上述した画素駆動回路(図2、図3参照)DCのトランジスタTr11、Tr12、選択ラインLsや信号ラインLd(信号配線層Ldxを含む)等の配線層を形成する(図4、図5参照)。具体的には、絶縁性基板11上に、ゲート電極Tr11g、Tr12g、及び、ゲート電極Tr11gと一体的に形成される選択ラインLs(図5参照)を同一のゲートメタル層をパターニングすることによって同時に形成し、その後、絶縁性基板11の全域にゲート絶縁膜12を被覆形成する。
【0056】
次いで、ゲート絶縁膜12上の各ゲート電極Tr11g、Tr12gに対応する領域に、例えばアモルファスシリコンやポリシリコン等を有する半導体層SMCを形成し、当該半導体層SMCの両端部にオーミック接続のための不純物層OHMを介してソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成する。このとき、同一のソース、ドレインメタル層をパターニングすることによってソース電極Tr11sと接続された信号ラインLd及び信号配線層Ldx(図4、図5参照)を同時に形成する。このとき、ゲート電極Tr12g上のゲート絶縁膜12には図示しないコンタクトホールが設けられ、このコンタクトホール上にソース電極Tr11sが跨るように形成されることによって、ソース電極Tr11sとゲート電極Tr12gとが接続される。
【0057】
なお、上述したトランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12d、選択ラインLs、信号ラインLd(信号配線層Ldxを含む)は、配線抵抗を低減し、かつ、マイグレーションを低減する目的で、例えばアルミニウム合金層と遷移金属層を有する積層配線構造を有しているものであってもよい。
【0058】
次いで、図6(b)に示すように、上記トランジスタTr11、Tr12、選択ラインLs及び信号ラインLdを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、窒化シリコン(SiN)等を有する保護絶縁膜(パッシベーション膜)13及び有機材料等を有する平坦化膜14を順次形成した後、当該平坦化膜14及び保護絶縁膜13をエッチングして、トランジスタTr12のドレイン電極Tr12dの上面が露出するコンタクトホールHLa、及び、トランジスタTr12のソース電極Tr12sの上面が露出し、かつ、供給電圧ラインLaの配線パターンに対応した配線溝HLbを形成する。
【0059】
次いで、図6(c)に示すように、無電解メッキ法等によって上記コンタクトホールHLaに金属材料を有するコンタクトメタルMTLを埋め込むとともに、配線溝HLbに厚膜配線構造を有する供給電圧ラインLaを埋め込み形成した後、図6(d)に示すように、各画素形成領域Rpx(各色画素PXr、PXg、PXbの形成領域)ごとに、コンタクトメタルMTLに電気的に接続された画素電極15を形成する。
【0060】
ここで、画素電極15は、具体的には、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)、パラジウム銀(AgPd)系の合金等の光反射特性を有する反射金属膜を薄膜形成し、所定の形状にパターニングすることによりコンタクトメタルMTLに電気的に接続された下層側の反射金属層15aを形成する。その後、当該反射金属層15aを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide;ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム(Indium Zinc Oxide;IZO)等の透明電極材料を有する(光透過特性を有する)酸化金属膜を薄膜形成し、上記反射金属層15aの上面や端面が露出しないようにパターニングすることにより上層側の導電性の酸化金属層15bを形成する。
【0061】
このように、上層側の酸化金属膜をパターニングする際に、下層側の反射金属層15aが露出しないようにすることにより、酸化金属膜と反射金属層15aとの間で電池反応を引き起こさないようにすることができるとともに、下層側の反射金属層15aがオーバーエッチングされたり、エッチングダメージを受けたりすることを防止することができる。
【0062】
次いで、反射金属層15a及び酸化金属層15bを有する上記画素電極15を含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、化学気相成長法(CVD法)等を用いて、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の無機の絶縁性材料を有する絶縁層を形成した後パターニングすることにより、図4、図5、図7(a)に示すように、行方向に隣接する表示画素PIXに形成された画素電極15との間の領域(すなわち、隣接する表示画素PIXとの境界領域)の列方向に後述するバンク18の最下層となる下地層18aを形成する。すなわち、各画素形成領域Rpxにおいて、一体的に形成される下地層18aを有する絶縁膜に画素電極15(酸化金属層15b)の上面が露出する開口部が形成されている。
【0063】
次いで、図7(b)に示すように、下地層18aが形成された絶縁性基板11上に、例えばチタン(Ti)を含む密着層18x、銅(Cu)を含む主配線層18y、チタン(Ti)を含む酸化防止層18zを順次積層形成する。具体的には、スパッタリング法やイオンプレーティング法、真空蒸着法、メッキ法等により、チタンやその合金、或いは銅やその合金等の金属材料を用いて、上記3層の金属薄膜を連続して成膜する。各金属薄膜は、例えば、密着層18x、酸化防止層18zとして0.05〜0.1μm、銅薄膜を含む主配線層18yとして0.2〜0.3μm以上の膜厚で形成する。
【0064】
ここで、最下層となる金属薄膜(密着層18x)は、チタンに限定されるものではなく、下層の下地層18aとなるシリコン酸化膜やシリコン窒化膜との接合性(密着性)が良好な金属材料であればよく、また、最上層となる金属薄膜(酸化防止層18z)は、チタンに限定されるものではなく、後述する工程(図7(c)参照)において形成されるフォトレジストとの接合性が良好な金属材料であればよく、かつ、いずれの金属薄膜(密着層18x、酸化防止層18z)も主たる配線層となる金属薄膜(主配線層18y)との接合性が良好な金属材料であればよい。
【0065】
次いで、図7(c)に示すように、上記3層の金属薄膜18x〜18zが形成された絶縁性基板11上にフォトレジストを形成し、プリベーク後、露光、現像処理を施して、酸化防止層18z上の表示画素PIX(有機EL素子OEL)間の境界領域(すなわち、後述するバンク18の形成領域)にフォトレジストを残留させてエッチングマスクMSKを形成する。
【0066】
次いで、図8(a)に示すように、上記フォトレジストを有するエッチングマスクMSKを用いて、チタンエッチング液(例えば旭電化工業製のアデカテックWTI/W−A12、B19等)により最上層の酸化防止層18zをエッチングして酸化防止層18dを形成し、引き続き上記エッチングマスクを用いて、銅エッチング液(例えば旭電化工業製のアデカスーパーケルミカWAD−5011等)により中間層の主配線層18yをエッチングして主配線層18cを形成し、さらに、上記エッチングマスクを用いて、上記酸化防止層に用いるエッチング液と同じエッチング液により最下層の密着層18xをエッチングし、密着層18bを形成する。密着層18b、主配線層18c及び酸化防止層18dは、行方向において、その幅が下地層18aの幅より狭く下地層18aの中央に配置されているので、下地層18aの行方向両端側の各上面が露出している。
【0067】
次いで、図8(b)に示すように、エッチングマスクMSKを剥離液(例えば三菱瓦斯化学製のR−100や旭電化工業製のアデカリムーバー等)を用いて除去する。これにより、表示画素PIX(有機EL素子OEL)間の境界領域にのみ酸化防止層18d、主配線層18c及び密着層18bが残されて、主配線層18c及び密着層18bを有する導電性バンク部の上面に酸化防止層18dが被覆形成された状態となる。また、各表示画素PIXの形成領域(画素形成領域Rpx)には画素電極15(酸化金属層15b)が露出した状態となる。
【0068】
次いで、各表示画素PIXの画素形成領域(有機EL素子OELの形成領域)Rpxに露出する画素電極15(酸化金属層15b)表面を、後述する有機EL層16の形成工程において使用する正孔輸送材料や電子輸送性発光材料の有機化合物含有液に対して馴染みやすくするために親液化処理を施す。
【0069】
具体的には、まず絶縁性基板11を純水で洗浄した後、例えば酸素プラズマ処理やUVオゾン処理等により親液化処理を施す。主配線層18cは特に銅を含んでいるためにこのような親液化処理によって表面が酸化されやすい性質を持っている。このとき、表示画素PIX間の境界領域に形成された導電性バンク部(主配線層18c及び密着層18b)の上面は酸化防止層18dに被覆されているため、上記親液化処理によっては酸化されないとともに親液化せず、導電性バンク部の側面は、酸化防止層18dに被覆されず露出しているため、上記親液化処理によって多少酸化されて(親液性の被膜である酸化膜が形成されて)、ITO膜等の透明電極材料を有する上記画素電極15(酸化金属層15b)と同時に親液化される。
【0070】
また、この親液化処理をエッチングマスクMSKの除去を兼ねて行なうこともできる。前述のように、フォトレジストによるエッチングマスクMSKを、剥離液により除去する代わりに、親液化処理として行なう酸素プラズマ処理もしくはUVオゾン処理にて、フォトレジストを灰化揮発させ除去する。これにより、エッチングマスクMSKの除去と親液化処理を連続して行なうことができる。
【0071】
次いで、図9(a)に示すように、導電性バンク部上の酸化防止層18dを上記と同様のチタンエッチング液(例えば旭電化工業製のアデカテックWTI/W−A12、B19等)に浸漬することによりエッチングして、表示画素PIX間の境界領域において導電性バンク部を形成する主配線層18cの上面を露出させる。その後、絶縁性基板11を純水で洗浄して乾燥させる。
【0072】
これにより、図4に示したように、隣接する表示画素PIXとの境界領域に形成された下地層18a上に密着層18b及び主配線層18cを積層してなるバンク18が形成される。バンク18の上面は、酸化防止層18dが除去された後でも、酸化されない状態が続いている。このバンク18により囲まれた領域が表示画素PIX(有機EL素子OEL)の画素形成領域Rpxとして画定されるとともに、隣接する他の色の表示画素PIXの画素形成領域Rpxと隔離される。
【0073】
次いで、表示画素PIX間の境界領域に形成されたバンク18(導電性バンク部を形成する主配線層18c)の上面において、正孔輸送材料や電子輸送性発光材料の有機化合物含有液をはじくようにするために撥液化処理を施す。
具体的には、まず、絶縁性基板11をトリアジントリチオール又はフッ素系トリアジンジチオール誘導体等のトリアジンチオール化合物の撥液処理溶液の処理槽内に挿入して浸漬する。この処理工程における撥液処理溶液の温度は概ね20〜30℃程度、浸漬時間は概ね1〜10分程度に設定する。その後、絶縁性基板11を撥液処理溶液から取り出し、アルコール等により濯いで絶縁性基板11表面に残留する撥液処理溶液(トリアジンチオール化合物)を洗い流し、絶縁性基板11を純水で2次洗浄した後、窒素ガス(N)のブローにより乾燥させる。
【0074】
このとき、トリアジンチオール化合物は図12に示すように、酸化していない(酸化膜が形成されていない)導電性バンク部の主配線層18cの上面18upの金属原子と選択的に結合し、撥液性の被膜が形成されることになるが、画素電極15表面の金属酸化物(酸化金属層15b)、及び、酸化した導電性バンク部の側面18sd、下地層18aを形成する無機絶縁膜には撥液性を発現する程度には被膜されず、親液性が維持される。
【0075】
すなわち、トリアジンチオール化合物の一例として適用可能なフッ素系トリアジンジチオール誘導体は、図11(a)に示すように、トリアジン(3個の窒素を含む六員環構造)の窒素(−N)にチオール基(−SH)が結合した分子構造に加え、特定のチオール基(−SH)のS原子にアルキル基(−CH−CH−)及びフッ化アルキル基(−CF−CF−CF−CF)が順次結合した分子構造を有し、他のトリアジンチオール化合物と同様に、それ自体が撥液性を示すトリアジントリチオールに加えてさらに撥液性を示すフッ素原子を含んでいるので、図11(b)に示すように、導電性バンク部の主配線層18cの上面18upに形成される被膜は、トリアジントリチオールよりも強い撥液性を示す。なお、上述した処理工程において使用する撥液処理溶液の濃度は、概ね1×10−4〜1×10−2mol/Lの範囲が好ましい。
【0076】
なお、上記フッ素系トリアジンジチオール誘導体は、チオール基のS原子がアルキル基(−CH−CH−)と結合していたが、直接フッ化アルキル基と結合してもよく、また著しい立体障害にならない限りアルキル基、フッ化アルキル基の炭素数に特別な制限はない。また、上記フッ素系トリアジンジチオール誘導体は、残る二つのチオール基の一つのS原子において、水素基に代わって直接又は間接的にフッ化アルキル基が置換形成されていてもよく、或いはフッ素原子を含む基の炭素間がオレフィン二重結合を有していてもよい。また、その他のトリアジンチオール誘導体として、例えば、6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール−ナトリウム塩或いは6−ジドデシルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール−ナトリウム塩を用い、水に溶解して被膜を形成してもよい。
【0077】
したがって、上述した一連の親液化処理及び撥液化処理により、同一の絶縁性基板11上において、バンク18(導電性バンク部)の上面のみが撥液化処理され、当該バンク18の側面、及び、バンク18により画定された各画素形成領域Rpxに露出する画素電極15表面は撥液化されていない状態(親液性が保持された状態)が実現される。
【0078】
このように、上面が撥液化処理されたバンク18により各表示画素PIX(有機EL素子OEL)の画素形成領域Rpxを画定することにより、後述する有機EL層16となる発光層(電子輸送性発光層16b)を形成する際に、当該発光材料の溶液又は分散液(液状材料)を塗布する場合であっても、隣接する表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)間で発光材料が混合することがなく、隣接する色画素相互での混色を防止することができる。
【0079】
なお、本実施形態において使用する「撥液性」とは、後述する正孔輸送層となる正孔輸送材料を含有する有機化合物含有液や、電子輸送性発光層となる電子輸送性発光材料を含有する有機化合物含有液、もしくは、これらの溶液に用いる有機溶媒を、絶縁性基板上等に滴下して、接触角の測定を行った場合に、当該接触角が50°以上になる状態と規定する。また、「撥液性」に対峙する「親液性」とは、本実施形態においては、上記接触角が40°以下になる状態と規定する。
また、バンク18を形成する上記導電性バンク部(特に主配線層18c)は、表示パネル10に2次元配列された各表示画素PIXに共通電圧Vcomを印加するための共通電圧ラインLcとしても兼用される。
【0080】
次いで、図9(b)に示すように、各色の画素形成領域(有機EL素子OELの形成領域)Rpxに対して、互いに分離した複数の液滴を所定位置に吐出するインクジェット法、又は、連続した溶液を吐出するノズルプリント法等を適用して同一工程で、正孔輸送材料の溶液又は分散液を塗布した後、加熱乾燥させて正孔輸送層(担体輸送層)16aを形成する。続いて、図10(a)に示すように、インクジェット法又はノズルプリント法等を適用して、上記正孔輸送層16a上に電子輸送性発光材料の溶液又は分散液を塗布した後、加熱乾燥させて電子輸送性発光層(担体輸送層)16bを形成する。これにより、画素電極15上に正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bを有する有機EL層(発光機能層)16が積層形成される。
【0081】
具体的には、有機高分子系の正孔輸送材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液として、例えばポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT/PSS;導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSSを水系溶媒に分散させた分散液)を、上記画素電極15(酸化金属層15b)上に塗布した後、ホットプレート上で100℃以上の温度条件で加熱乾燥処理を行って残留溶媒を除去することにより、当該画素電極15上に有機高分子系の正孔輸送材料を定着させて、担体輸送層である正孔輸送層16aを形成する。
【0082】
ここで、画素電極15及びその周辺の下地層18aの表面は、上述した親液化処理により上記有機化合物含有液(PEDOT/PSS)に対して親液性を有しているので、バンク18により画定された画素形成領域Rpxに塗布された有機化合物含有液は当該領域内(画素電極15上)に充分馴染んで広がる。一方、バンク18(主配線層18c)の上面18upは、上述した撥液化処理により上記有機化合物含有液(PEDOT/PSS)に対して撥液性を有しているので、隣接する画素形成領域への塗布された有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができ、また、バンク18の側面18sdは、親液性が保持されているので、毛細管現象により当該有機化合物含有液が迫り上がる。
【0083】
このように、画素形成領域Rpxに塗布された有機化合物含有液(PEDOT/PSS)は撥液性を有するバンク18の上面でははじかれる一方、充分な親液性を有する画素電極15上、及び、バンク18の側面において馴染んで広がるので、図13(a)に示すように、バンク18に囲まれた画素形成領域Rpxにドーム状の断面を有して滞留することになる。
【0084】
塗布直後より、上記有機化合物含有液(PEDOT/PSS)中の溶媒の揮発が進行する。図13(b)に示すように、親液性を有するバンク18の側面や下地層18aの表面において有機化合物含有液が充分に馴染んで広がることから、当該有機化合物含有液の液面が画素形成領域Rpxの縁辺領域(バンク18の近傍領域)に引っ張られた状態で乾燥が進み、画素電極15が露出する開口部の中央領域への有機化合物の凝集が抑制されるので、画素電極15上の略全域で膜厚が均一化する。
【0085】
また、有機高分子系の電子輸送性発光材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液として、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料を、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒或いは水に溶解した溶液を、上記正孔輸送層16a上に塗布した後、窒素雰囲気中でホットプレートにより、あるいは、真空中でシーズヒータにより加熱乾燥処理を行って残留溶媒を除去することにより、正孔輸送層16a上に有機高分子系の電子輸送性発光材料を定着させて、担体輸送層であり発光層でもある電子輸送性発光層16bを形成する。
【0086】
この場合においても、上述した正孔輸送層16aと同様に、画素電極15上の正孔輸送層16a及びその周辺の下地層18aの表面は、上記有機化合物含有液に対して親液性を有しているので、バンク18により画定された画素形成領域Rpxに塗布された有機化合物含有液は当該領域内(正孔輸送層16a)に充分馴染んで広がる。一方、バンク18(主配線層18c)の上面は、上記有機化合物含有液に対して撥液性を有しているので、隣接する画素形成領域への有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができ、また、バンク18の側面は、親液性が保持されているので、毛細管現象により当該有機化合物含有液が迫り上がる。
【0087】
したがって、画素形成領域Rpxに塗布された有機化合物含有液は、図13(a)と同様に、バンク18に囲まれた画素形成領域Rpxにドーム状の断面を有して滞留し、このような状態で有機化合物含有液中の溶媒の揮発が進行することにより、図13(b)と同様に、当該有機化合物含有液の液面が画素形成領域Rpxの縁辺領域(バンク18の近傍領域)に引っ張られた状態で乾燥が進むので、画素電極15が露出する開口部の中央領域への有機化合物の凝集が抑制されて、画素電極15上の略全域で膜厚が均一化する。
【0088】
その後、図10(b)に示すように、少なくとも各画素形成領域Rpxを含む絶縁性基板11上に光透過性を有する導電層(透明電極層)を形成し、上記有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を介して各画素電極15に対向する共通の対向電極(例えばカソード電極)17を形成する。ここで、対向電極17は、例えば蒸着法やスパッタリング法等により厚さが10nm以下の電子注入層となるバリウム、マグネシウム、フッ化リチウム等の金属材料を有する薄膜を形成した後、その上層にスパッタリング法等によりITO等の透明電極層又はアルミニウム等の薄膜を積層形成した、厚さ方向に透明な膜構造を適用することができる。
【0089】
また、対向電極17は、図4、図5、図10(b)に示すように、上記画素電極15に対向する領域のみならず、各画素形成領域Rpx(有機EL素子OELの形成領域)を画定するバンク18及び下地層18a上にまで延在する単一の導電層(平面電極;べた電極)として形成されるとともに、バンク18を形成する導電性バンク部(主配線層18c)と電気的に接続されるように接合される。これにより、バンク18を形成する導電性バンク部を各表示画素PIXに共通に接続された共通電圧ライン(カソードライン)Lcとして適用することができる。このように、有機EL素子OEL間に対向電極17と等電位の導電性バンク部を網羅することによってカソード全体のシート抵抗を下げ、表示パネル10全体で均一な表示特性にすることができる。
【0090】
次いで、上記対向電極17を形成した後、絶縁性基板11の一面側全域に保護絶縁膜(パッシベーション膜)としてシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等を有する封止層19をCVD法等を用いて形成し、さらに、UV硬化又は熱硬化接着剤を用いて、封止蓋や封止基板20を接合することにより、図4、図5に示したような断面構造を有する表示パネル10が完成する。
【0091】
上述したように、実施形態に係る表示装置及びその製造方法においては、表示パネル10上に2次元配列される表示画素PIX間の境界領域に、各画素形成領域Rpxを画定するためのバンク18を有し、当該バンク18を形成する導電性バンク部(主配線層18c;低抵抗の金属層)上に、酸化防止層18dを積層形成した状態で、各画素形成領域Rpxに露出する画素電極15を親液化処理し、次いで、上記酸化防止層18dを除去した後、導電性バンク部を撥液化処理することにより、図12に示したように、上記親液化処理の際に酸化防止層18dにより酸化されていない導電性バンク部の上面18upにのみ撥液性(トリアジンチオール化合物)の被膜を形成し、一方、上記親液化処理により酸化された導電性バンク部の側面18sdへの撥液性の被膜の形成を抑制して親液性を有する状態に保持して、各画素形成領域Rpxに有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を形成するための有機化合物含有液(例えばPEDOT/PSS等)を塗布することができる。
【0092】
ここで、バンクを形成する導電性バンク部上に酸化防止層を形成することなく親液化処理及び撥液化処理を施した場合(以下、便宜的に「比較例」と記す)と本実施形態とを比較検証すると、比較例においては、導電性バンク部(銅等の低抵抗の金属層)の上面及び側面の全面が露出した状態で親液化処理が施されるため、導電性バンク部の表面全域が酸化されて酸化膜が形成される。
【0093】
この状態で導電性バンク部を撥液化処理すると、上記酸化膜によりトリアジンチオール化合物の被膜の形成が阻害されて、導電性バンク部表面を充分に撥液化することができないため、バンク(導電性バンク部)に囲まれた画素形成領域に有機化合物含有液を塗布した際に、隣接する画素形成領域への有機化合物含有液の漏出や乗り越えが生じて表示画素間で混色が発生する問題や、導電性バンク部上に形成された酸化膜や付着した有機化合物により、画素形成領域から延在して形成される対向電極とのコンタクト抵抗が増加して有機EL素子に一定の共通電圧を供給することができなくなる問題を有している。
【0094】
これに対して、実施形態に示した表示装置及びその製造方法によれば、上述したように、バンク18を形成する導電性バンク部の上面18upのみを撥液化し、側面18sdの親液性を保持した状態で有機化合物含有液を塗布することができるので、隣接する画素形成領域Rpxへの当該有機化合物含有液の漏出や乗り越えを抑制して表示画素PIX間の混色を防止することができるとともに、導電性バンク部上面における酸化膜の形成や有機化合物の付着を防止して、対向電極17とのコンタクト抵抗を低減し、有機EL素子OELに一定の共通電圧Vcomを供給することができる。
【0095】
また、本実施形態においては、上述したように導電性バンク部の上面18upのみを撥液化し、側面18sdの親液性を保持した状態で画素形成領域Rpxに有機化合物含有液を塗布することにより、当該有機化合物含有液が撥液性を有する導電性バンク部の上面18upではじかれる一方、親液性を有する画素電極15上及び導電性バンク部の側面18sdにおいてに充分に馴染んで広がるので、図13(a)に示したように、バンク18(導電性バンク部)に囲まれた画素形成領域Rpxに良好に滞留し、加熱乾燥処理により、図13(b)に示したように、当該有機化合物含有液の液面が画素形成領域Rpxの縁辺領域(バンク18の近傍領域)に引っ張られた状態で乾燥が進むので、バンク(又は導電性バンク部)の表面全域(上面及び側面)を撥液化した状態で有機化合物含有液を塗布した場合に比較して、画素電極15が露出する開口部の中央領域への有機化合物の凝集が抑制されて、画素形成領域Rpxの略全域で膜厚が均一化された有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を形成することができる。
【0096】
したがって、本実施形態に係る表示装置及びその製造方法によれば、発光動作時における発光開始電圧や、有機EL層から放射される光の波長(色度)の設計値からのずれを抑制して、所望の表示画質を得ることできるとともに、有機EL素子の劣化を抑制して、信頼性や寿命に優れた表示パネルを実現することができる。
【0097】
また、本実施形態においては、バンク18を形成する導電性バンク部として、共通電圧ラインLcとなる上層側の主配線層18cと下層側の密着層18bとを積層した構造を有し、主配線層18cとシリコン窒化膜等を有する下地層18aとの間に密着層18bを介在させているので、主配線層18cと下地層18aとを直接積層した構造に比較して、接合性を向上させることができ、層間剥離やクラックの発生を抑制することができる。
【0098】
なお、上述した実施形態においては、トップエミッション型の発光構造を有する表示パネルについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ボトムエミッション型の発光構造を有するものであってもよい。ところで、上述したようなトップエミッション型の発光構造においては、対向電極として高い光透過性が要求されるので、ITO等の透明電極を薄く形成する必要があるが、これによりカソード側の配線抵抗が増大する可能性がある。そこで、配線抵抗の低抵抗化のために共通電圧ラインと兼用するバンク(導電性バンク部)を備えたパネル構造を適用することが有効となる。したがって、このような観点からも、本実施形態に係る表示装置及びその製造方法は、トップエミッション型の発光構造を有する表示パネルに対して特に有効である。
【0099】
また、上述した実施形態においては、画素電極15の親液化処理の際に、バンク18を形成する導電性バンク部(主配線層18c)の上面18upの酸化を防止するために、予め酸化防止層18dを積層形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、酸素プラズマ処理やUVオゾン処理等による親液化処理に際して、共通電圧ラインLcとなる金属層(上層側の主配線層18c)の上面の酸化を抑制することができるものであれば、他の金属材料や絶縁性材料を適用するものであってもよい。
【0100】
また、上述した実施形態においては、共通電圧ラインLcとなる金属層(上層側の主配線層18c)と下地層18aとの接合性を改善するための介在層として、密着層18bを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の金属材料や絶縁性材料を有する薄膜を介在させるものであってもよい。また、共通電圧ラインLcとなる金属層として、シリコン窒化膜等を有する下地層との接合性が良好な低抵抗の金属層を適用することができる場合には、当該金属層と下地層との間に介在層を形成する必要はなく、導電性バンク部を単一の金属層(共通電圧ラインLcとなる低抵抗の金属層のみ)を有する構造としてもよい。
【0101】
さらに、上述した各実施形態においては、有機EL層16が正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bを有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば正孔輸送兼電子輸送性発光層のみでもよく、正孔輸送性発光層及び電子輸送層でもよく、また、間に適宜担体輸送層が介在してもよく、その他の担体輸送層の組合せであってもよい。
【0102】
また、上述した実施形態においては、画素電極15をアノードとしたが、これに限らずカソードとしてもよい。このとき、有機EL層16は、画素電極15に接する担体輸送層が電子輸送性の層であればよい。また、有機EL層16を成膜する際の隔壁として用いたバンク18は、カソードとなる共通電圧ラインLcとしたが、アノードとなる電圧ラインであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る表示装置に適用される表示パネルの画素配列状態の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される各表示画素(表示素子及び画素駆動回路)の回路構成例を示す等価回路図である。
【図3】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の一例を示す平面レイアウト図である。
【図4】本実施形態に係る平面レイアウトを有する表示画素におけるA−A断面を示す概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る平面レイアウトを有する表示画素におけるB−B断面を示す概略断面図である。
【図6】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その1)である。
【図7】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その2)である。
【図8】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その3)である。
【図9】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その4)である。
【図10】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その5)である。
【図11】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に形成されるバンク表面の被膜の分子構造を説明するための化学記号である。
【図12】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に形成されるバンク表面の撥液性及び親液性を説明するための概略断面図である。
【図13】本実施形態に係る有機EL層の形成工程における膜表面の状態変化を示す概念図である。
【符号の説明】
【0104】
10 表示パネル
11 絶縁性基板
15 画素電極
15a 反射金属層
15b 酸化金属層
16 有機EL層
16a 正孔輸送層
16b 電子輸送性発光層
17 対向電極
18 バンク
18a 下地層
18b 密着層
18c 主配線層
18d 酸化防止層
PIX 表示画素
Rpx 画素形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体輸送層を有する発光素子を含む複数の表示画素を2次元配列した表示パネルを備えた表示装置において、
前記表示画素の画素形成領域を画定するための隔壁を有し、
前記隔壁は、前記担体輸送層を形成するための担体輸送性材料を含む溶液に対して親液性を有する被膜が形成された側面と、前記担体輸送性材料を含む溶液に対して撥液性を有する被膜が形成された上面と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記隔壁は、少なくとも表面が金属層により形成されていることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記隔壁は、隣接する前記表示画素の前記画素形成領域間を絶縁する下地層と、前記金属層と、前記下地層と前記金属層との密着性を向上するための介在層と、を積層して形成されていることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記下地層は、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜からなり、前記金属層は、銅又はその合金を有することを特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記金属層は、前記撥液性を有する被膜を介して、前記担体輸送層に電圧を印加するための電極に接合されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記担体輸送性材料は高分子系の有機材料からなり、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
担体輸送層を有する発光素子を含む複数の表示画素を2次元配列した表示パネルを備えた表示装置の製造方法において、
基板上に設定された前記表示画素の画素形成領域に形成された画素電極間に第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、
前記第1の金属膜上に第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、
前記第1及び第2の金属層をマスクを用いてパターニングして、前記画素形成領域ごとの前記画素電極を露出させるパターニング工程と、
前記マスクを除去した後、前記画素電極の表面を、前記担体輸送層を形成するための担体輸送性材料を含む溶液に対して親液化する親液化工程と、
前記第2の金属層を除去した後、前記第1の金属層の上面を、前記担体輸送性材料を含む溶液に対して撥液化する撥液化工程と、
前記第1の金属層により画定される前記画素形成領域に前記担体輸送性材料を含む溶液を塗布、乾燥して前記画素電極上に前記担体輸送層を形成する担体輸送層形成工程と、
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記親液化工程は、前記画素電極の表面とともに前記第1の金属層の側面を、前記担体輸送層を形成するための担体輸送性材料を含む溶液に対して親液化することを特徴とする請求項7記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記親液化工程は、前記基板に対して酸素プラズマ処理又はUVオゾン処理を施すことを特徴とする請求項7又は8記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記撥液化工程は、トリアジンチオール化合物の溶液に前記基板を浸漬し、前記隔壁の上面に前記担体輸送性材料を含む溶液に対して撥液性を有する被膜を形成することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記担体輸送層を介して前記複数の表示画素の前記画素電極に共通に対向し、かつ、前記撥液化された前記隔壁上に延在するように形成され、前記撥液性を有する被膜を介して、前記第1の金属層に電気的に接合された対向電極を形成する対向電極形成工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−59981(P2008−59981A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237567(P2006−237567)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】