説明

表示装置及びその駆動方法

【課題】同一画面上に白色と原色または補色とをサブピクセルレンダリングにより同時に表示しても原色または補色が視感的にくすんで見えてしまうことを防止する。
【解決手段】第1画像データをサブピクセルレンダリング処理して、座標系が前記第1画像データとは異なるとともに前記表示パネルに対応した第2画像データを生成し(S2)、前記第1画像データに基づいて表示パネルに表示される表示画像を事前に識別し、予め定められた第1基準値よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整する(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタを備えた表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL等の表示装置では、カラー表示を行うために、表示画素毎に所定の色成分に対応したカラーフィルタが形成されている。この色成分には色の3原色として、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)が適用されている。そして、赤色成分のカラーフィルタと緑色成分のカラーフィルタと青色成分のカラーフィルタは、図10(a)に示すように、連続して配置された3つの表示画素に順に形成されている。このような表示装置では、この3つの表示画素を1単位とし、1座標に対する各色成分の画像データをこの3つの表示画素で空間分割的に表示してカラー表示を行っている(以下、「RGB空間分割方式」と記す)。
【0003】
ところで、近年、比較的少ない表示画素で擬似的に高解像度なカラー表示が可能なサブピクセルレンダリングが開発されている。このサブピクセルレンダリングでは、赤色、緑色及び青色といった色の3原色の他にさらに白色成分が加えられ、例えば図10(b)に示すように、それぞれに対応したカラーフィルタが、行方向に連続して配置された4つの表示画素に順に形成されているとともに、隣接する画素行間において互いに等しい色成分が2画素分ずれるように形成されている。そして、サブピクセルレンダリングでは、RGB空間分割方式において3表示画素分の広さの領域に2つの表示画素を配置することにより、RGB空間分割方式と大凡同程度の表示解像度を得ることができる。即ち、RGB空間分割方式の2/3の表示画素数でRGB空間分割方式と大凡同程度の表示解像度を得ることができる。従って、各表示画素の開口率を大きくすることができるため、RGB空間分割方式に比べ高輝度表示が可能になる。さらに、白色表示を行うときには可視光領域における所定の波長をあえて吸収させることのない白色カラーフィルタが形成された表示画素を用いて表示することもできるため、これによってもRGB空間分割方式に比べ高輝度表示が可能になる。
【0004】
なお、サブピクセルレンダリングでは、表示すべき画像の各座標に対して赤色成分、緑色成分、青色成分の各階調レベルが割り当てられて入力されてきた画像データを上述したカラーフィルタ配列に対応するようにサブピクセルレンダリング処理によって座標変換等のデータ変換が行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−255409号公報
【特許文献2】特開2007−41551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サブピクセルレンダリングでは、白色表示する際に、上述したように、白色カラーフィルタが形成された表示画素を用いて表示することで、RGB空間分割方式と比べて非常に明るい表示が得られる。しかし、赤色、緑色及び青色の原色と、これら3つの原色のうちのいずれか2つを組み合わせた色(以下、「補色」と記す)、即ち、イエロー、シアン及びマゼンタを表示する際には、RGB空間分割方式と同様に他の色成分を吸収するカラーフィルタが形成された表示画素の輝度のみを高めて表示するため、原色及び補色表示時の最大輝度と白色表示時の最大輝度との視感的な輝度差がRGB空間分割方式と比べて大きくなる。
【0007】
このため、白色を表示する領域と原色または補色を表示する領域とに一画面を領域分割し、白色と原色または補色とを同一画面上に同時に表示した場合、明るく表示される側である白色の輝度に人間の瞳孔が調整され、原色または補色が視感的にくすんで見えてしまうということが問題となっていた。また、原色と補色では補色に対するくすみの感じ具合が大きく、特にイエローに対するくすみの感じ具合が他の色に対するくすみの感じ具合よりも顕著であり、このイエロー表示に対する表示品位の低下がさらに問題となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、同一画面上に白色と原色または補色とをサブピクセルレンダリングにより同時に表示しても原色または補色が視感的にくすんで見えてしまうことを防止できる表示装置及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の表示装置は、それぞれの画素が、赤色成分、緑色成分、青色成分または白色成分の何れかに対応するように形成された表示パネルと、第1画像データをサブピクセルレンダリング処理して、座標系が前記第1画像データとは異なるとともに前記表示パネルに対応した第2画像データを生成する第1変換手段と、前記第1画像データに基づいて前記表示パネルに表示される表示画像を事前に識別し、予め定められた第1基準よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した前記画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整する第2変換手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の表示装置は、請求項1に記載の表示装置において、前記第2変換手段は、予め定められた第2基準よりも前記表示画像に所定の色の着色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した前記画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の表示装置は、請求項2に記載の表示装置において、前記第2変換手段は、前記第1画像データにおける白色成分に対する階調レベルの平均値が予め定めた白色平均基準値よりも大きく且つ白色成分に対する階調レベルの分散値が予め定めた白色分散基準値よりも小さいときに、前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別し、前記第1画像データにおける前記所定の色成分に対する階調レベルの平均値が予め定めた着色平均基準値よりも大きく且つ前記所定の色成分に対する階調レベルの分散値が予め定めた着色分散基準値よりも小さいときに、前記表示画像に前記所定の色の着色画像が多く含まれていると識別することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の表示装置は、請求項3に記載の表示装置において、前記所定の色は、赤色、緑色及び青色のうち、何れか2つの色からなる補色であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の表示装置は、請求項4に記載の表示装置において、前記補色がイエローであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の表示装置は、請求項2から5の何れかに記載の表示装置において、前記第2変換手段は、予め定められた第2基準値よりも前記表示画像に所定の色の着色画像が多く含まれていないと識別されるときに、前記第2画像データの調整を留保することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の表示装置は、請求項1から6の何れかに記載の表示装置において、前記第2変換手段は、予め定められた第1基準値よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていないと識別されるときには、前記第2画像データの調整を留保することを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の表示装置は、請求項6または7に記載の表示装置において、前記表示パネルに光を照射するバックライトと、前記バックライトの発光輝度を調整する発光輝度調整手段と、を備え、前記発光輝度調整手段は、前記第2変換手段が前記第2画像データの調整を留保した際に前記バックライトの発光輝度を第1の輝度に制御し、前記第2変換手段が前記第2画像データを調整した際に前記バックライトの発光輝度を前記第1の輝度よりも明るい第2の輝度に制御することを特徴とする。
【0017】
また、請求項9に記載の表示装置の駆動方法は、それぞれの画素が、赤色成分、緑色成分、青色成分または白色成分の何れかに対応するように形成された表示装置の駆動方法であって、第1画像データをサブピクセルレンダリング処理して、座標系が前記第1画像データとは異なるとともに前記表示パネルに対応した第2画像データを生成する第1変換ステップと、前記第1画像データに基づいて前記表示パネルに表示される表示画像を事前に識別し、予め定められた第1基準値よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した前記画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整する第2変換ステップと、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、同一画面上に白色と原色または補色とをサブピクセルレンダリングにより同時に表示しても原色または補色が視感的にくすんで見えてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】液晶表示装置の主要構成図。
【図2】表示パネルの断面図。
【図3】各色成分のカラーフィルタの配置図。
【図4】各走査信号のタイミングチャート。
【図5】走査ドライバ11の説明図
【図6】保持回路の説明図。
【図7】信号ドライバの説明図。
【図8】データ変換部の動作を説明するためのフローチャート。
【図9】ヒストグラムの説明図。
【図10】各色成分の配置図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本発明にかかる表示装置としての液晶表示装置1の概略全体構成は図1に示すように、例えば外部から供給される画像データDinに基づく画像が表示される表示パネル10と、表示パネル10の走査信号線を走査するための走査ドライバ11と、表示パネル10のデータ信号線に表示信号電圧を供給するための信号ドライバ12と、表示パネル10に所望の画像が表示されるように走査ドライバ11や信号ドライバ12を制御する制御部13と、供給される電源Vccを駆動に必要な電圧に調整して各部に供給する電源調整回路14等を有している。
【0022】
表示パネル10は、液晶層LCを介してガラス等の透明材料からなる第1の基板16と第2の基板17とが対向するように配置されている。第1の基板16と第2の基板17は、大凡方形枠状のシール材15により貼り合わされ、この枠状のシール材15に囲まれた領域に液晶が封入されることにより液晶層LCが形成されている。
【0023】
第1の基板16の第2の基板17との対向面側には、各画素行に対応するように行方向に延伸配設された複数の走査信号線G(j)(例えばn本の走査信号線)と、各画素列に対応するように列方向に延伸配設された複数のデータ信号線S(i)(例えばm本のデータ信号線)とが形成されている。そして、走査信号線G(j)とデータ信号線S(i)との各交点近傍には、図2に示すように、表示画素Pixに対応して透明導電膜(ITO膜等)からなる画素電極18が形成されている。そして、各画素電極18は絶縁膜19を介して当該画素電極18よりも下層側に配置されたスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)20にそれぞれ電気的に接続されている。ここで、各薄膜トランジスタ20は、そのゲート電極が当該画素行に対応する走査信号線G(j)に接続され、そのドレイン電極が当該画素列に対応するデータ信号線S(i)に接続され、そのソース電極が当該表示画素に対応する画素電極18に接続されている。また、各画素電極18の上層側(液晶層側)には、各画素電極18を覆うようにして、液晶層LCにおける液晶の初期配向状態を規定する配向膜21が形成されている。なお、i=1,2,・・・,m。j=1,2,・・・,n。
【0024】
一方、第2の基板17の第1の基板16との対向面側には、開口部22mが画素電極18に対応する位置となるように形成された格子状のブラックマトリクスとしての遮光膜22が形成されている。そして、遮光膜22の上層側(液晶層側)には、表示画素Pix毎に所定の色成分に対応したカラーフィルタ23が形成されている。
【0025】
具体的には、図3に示すように、赤色成分のカラーフィルタ23rと緑色成分のカラーフィルタ23gと青色成分のカラーフィルタ23bと白色成分のカラーフィルタ23wとが、画素行方向に連続するように配置された4つの表示画素Pix毎に順に形成されているとともに、隣接する画素行間において互いに等しい色成分が2画素分ずれるように形成されている。つまり、赤色成分のカラーフィルタ23rが形成された表示画素Pixrが赤色成分に対応した画像データに基づいた輝度を表示し、緑色成分のカラーフィルタ23gが形成された表示画素Pixgが緑色成分に対応した画像データに基づいた輝度を表示し、青色成分のカラーフィルタ23bが形成された表示画素Pixbが青色成分に対応した画像データに基づいた輝度を表示し、白色成分のカラーフィルタ23wが形成された表示画素Pixwが白色成分に対応した画像データに基づいた輝度を表示する。
【0026】
各カラーフィルタ23の上層側には、各表示画素Pix間で共通の電位に設定されるコモン電極24が形成されている。また、コモン電極24のさらに上層側には、第1の基板16側と同様に、液晶層LCにおける液晶の初期配向状態を規定する配向膜25が形成されている。
【0027】
走査ドライバ11は、図4に示すように、制御部13から出力される垂直同期信号Vsや、水平同期信号Hsとしての第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に基づいて、各走査信号線G(j)に走査信号を出力する。なお、第1ゲートクロック信号GCK1と第2ゲートクロック信号GCK2とは互いに逆位相の矩形信号である。
【0028】
走査ドライバ11の主要部における概略構成は、図5に示すように、例えば走査信号線数分(n段)の保持回路101、102、103、104、・・・が直列に配置されて構成される。そして、それぞれの保持回路は、入力端子INと、出力端子OUTと、リセット端子RSTと、クロック信号入力端子CKと、高電位電源入力端子Thと、低電位電源入力端子Tlとを有している。そして、1段目の保持回路101の入力端子INには1段目の入力信号として垂直同期信号Vsが供給される。また、2段目以後の保持回路の入力端子INには前段の保持回路の出力信号が供給される。また、各保持回路のリセット端子RSTには次段の保持回路の出力信号が供給される。なお、最終段(例えばn段目)の保持回路(図示せず)のリセット端子RSTには、別途リセット信号ENDが供給される構成としてもよいし、1段目の保持回路101の出力信号が供給される構成としてもよい。
【0029】
さらに、奇数段目の保持回路のクロック信号入力端子CKには、第1ゲートクロック信号GCK1が供給され、偶数段目の保持回路のクロック信号入力端子CKには、第1ゲートクロック信号GCK1に対して逆位相となっている第2ゲートクロック信号GCK2が供給される。また、各保持回路の高電位電源入力端子Thには所定の高電圧Vghが供給され、各保持回路の低電位電源入力端子Tlには所定の低電圧Vglが供給される。
【0030】
各保持回路101、102、103、104、・・・は、図6に示すように、それぞれ、6個のMOS型電界効果トランジスタ(以下、MOSトランジスタと記す)T11〜T16と、コンデンサCとを有している。
【0031】
このような走査ドライバ11は、図4に示すように、垂直同期信号Vsに応じて当該フレームでの走査を開始するとともに、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に応じて、所定の期間だけローレベル電圧Vglからハイレベル電圧Vghに切り換えるといった電圧出力を、最前段の走査信号線G(1)から順に最後段の走査信号線G(n)まで、走査信号線毎に行う。
【0032】
つまり、走査ドライバ11は、走査信号線G(j)毎に、当該走査信号線G(j)に対応するTFT(i,j)を順次オン状態にし、このときにデータ信号線S(i)に出力されている表示信号電圧を対応する表示画素Pix(i,j)に書き込む。
【0033】
信号ドライバ12は、制御部13から出力される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hs、各表示画素に対応した階調データDout及び基準クロック信号CLKに基づいて、表示パネル10に設けられた各データ信号線S(i)に対して、各データ信号線S(i)に対応する表示信号電圧を所定のタイミングで出力する。
【0034】
信号ドライバ12の機能ブロック構成は、図7に示すように、サンプリングメモリ121、データラッチ部122、D/A変換回路(DAC)123、及び表示信号電圧生成回路124からなる。
【0035】
サンプリングメモリ121は、制御部13から出力される水平同期信号Hs及び基準クロック信号CLKに同期して、走査信号線一本分の表示画素に対する画像データ(1水平期間分の画像データ)単位で、各表示画素に対応する画像データDoutを前段側の走査信号線に対応するものから順に一時記憶するためのものであり、データ信号線S(i)の数と同数のデータ格納領域を備えている。つまり、サンプリングメモリ121は、走査信号線毎に当該走査信号線に対応した表示画素の画像データを取り込むとともに、当該取り込んだ画像データDoutのそれぞれを、対応するデータ信号線S(i)のデータ格納領域に格納する。ここで、画像データDoutは、各表示画素に表示すべき階調レベル情報であり、この階調レベル情報は、表示画素毎に例えば8ビットのデジタルデータとして表される。そして、各データ格納領域には、この8ビットのデジタルデータが格納される。
【0036】
サンプリングメモリ121が取り込んだ1水平期間分の画像データDoutは、後段のデータラッチ部122からの要求にしたがって、サンプリングメモリ121からデータラッチ部122に転送される。データラッチ部122に画像データDoutが転送されると、サンプリングメモリ121は、次の1水平期間分の画像データDoutとして次の行の走査信号線に対応した画像データDoutの取り込み状態に移る。これは、水平同期信号Hsに同期して行われる。
【0037】
データラッチ部122は、水平同期信号Hsに基づいて、サンプリングメモリ121から1水平期間分の階調データDoutを一斉に取得するとともに、取得した階調データDoutを後段のD/A変換回路123に出力する。
【0038】
D/A変換回路123は、複数のDAC部125及び出力アンプ回路126で構成され、DAC部125により表示信号電圧生成回路124から供給される表示信号電圧が選択されることで、データラッチ部122から出力されてくるそれぞれの画像データDoutが、対応するアナログ信号としての表示信号電圧に変換され、出力アンプ回路126によりデータ信号線S(i)へ出力される。そして、データ信号線S(i)に出力された表示信号電圧は、走査信号線G(j)を介して走査ドライバ11によりオン状態にされているTFT20に対応する表示画素の画素電極に印加されるとともに保持される。
【0039】
制御部13は、図1に示すように、例えば外部から供給される画像データDinを一時記憶するとともに当該画像データDinに基づいて表示パネル10における各表示画素に対応させた画像データDoutを生成して信号ドライバ12に出力するデータ変換部20と、データ変換部20により出力される画像データDoutの出力タイミングに同期した垂直同期信号Vs、水平同期信号Hs及び基準クロック信号CLK等の各種制御信号を生成して出力する制御信号生成部21等から構成されている。
【0040】
データ変換部20は、例えば外部から供給されてくる画像データDinであって画像における各座標に対して赤色成分、緑色成分、青色成分の各階調レベルが対応付けられている画像データDinを表示パネル10に対応した座標系に変換する座標系変換部201と、この座標系変換部201により変換された座標系において一旦各座標に対応付けられた階調レベルを画像データDinに基づいて更に調整する階調レベル調整部202とを備えている。
【0041】
以下、データ変換部20における動作を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
座標系変換部201は、画像における各座標に対して赤色成分、緑色成分、青色成分の各階調レベルが対応付けられた画像データDinが入力されてくると、画像1画面分の画像データDinを記憶し(ステップS1)、当該記憶した画像1画面分の画像データDinに対してサブピクセルレンダリング処理を行うことにより表示パネル10に対応した座標系に変換する(ステップS2)。即ち、赤色成分、緑色成分、青色成分、白色成分に対応した画素を備えた表示パネル10で表示すべき画像が表示可能なように、各画素に対応した座標毎に階調レベルを割り当てる。このとき、座標系変換部201は、画像1画面分の画像データDin毎に当該座標変換を実施する。以下、画像1画面分の画像データDinに対してサブピクセルレンダリング処理により座標変換が行われた画像データを画像データDmidとして、また、表示パネル10に対応した座標系を新座標系として記す。
【0043】
一方、階調レベル調整部202は、画像1画面分の画像データDinにおける所定の色成分に対するヒストグラムを生成する(ステップS3)。本実施の形態では、図9(a)に示すようなイエロー成分に対するヒストグラムと、図9(b)に示すような白色成分に対するヒストグラムとを生成する場合について説明する。
【0044】
ここで、画像データDinでは、画像における各座標に対して赤色成分、緑色成分、青色成分の各階調レベルが対応付けられている。このため、階調レベル調整部202は、赤色成分の階調レベルと緑色成分の階調レベルとが等しく且つ青色成分の階調レベルが最小階調になっている座標をイエロー成分としてカウントするとともに、このときの赤色成分または緑色成分の階調レベルをイエロー成分の階調レベルとして取得する。また、階調レベル調整部202は、赤色成分の階調レベルと緑色成分の階調レベルと青色成分の階調レベルとが等しい座標を白色成分としてカウントするとともに、このときの各色成分の階調レベルを白色成分の階調レベルとして取得する。即ち、図8(a)はイエロー成分の各階調レベルに対する出現頻度であり、図8(b)は白色成分の各階調レベルに対する出現頻度である。なお、図8(a)、図8(b)は、階調レベル数が8ビットの場合(最大階調が255の場合)を例示している。
【0045】
次に、階調レベル調整部202は、イエロー成分のヒストグラムに基づいて、画像1画面分の画像データDinにおけるイエロー成分の階調レベルの平均値Ay及び分散値σyを導出する(ステップS4)。また、白色成分のヒストグラムに基づいて、画像1画面分の画像データDinにおける白色成分の階調レベルの平均値Aw及び分散値σwを導出する(ステップS5)。
【0046】
そして、階調レベル調整部202は、イエロー成分の階調レベルの平均値Ayが予め定められたイエローレベル基準値Yarよりも大きいか否か(ステップS6)、イエロー成分の階調レベルの分散値σyが予め定められたイエロー分散基準値Yσrよりも小さいか否か(ステップS7)、白色成分の階調レベルの平均値Awが予め定められた白色レベル基準値Warよりも大きいか否か(ステップS8)、白色成分の階調レベルの分散値σwが予め定められた白色分散基準値Wσrよりも小さいか否か(ステップS9)の判定をそれぞれ行い、これら条件をすべて満たす場合に、画像データDmidを更に調整した画像データDoutを生成する(ステップS10)。
【0047】
即ち、階調レベル調整部202は、表示パネル10に表示される表示画像に純色に近いイエロー画像が多く含まれているか否か及び高輝度な白色画像が多く含まれているかを上述したような基準に基づいて事前に識別している。そして、階調レベル調整部202は、表示画像に純色に近いイエロー画像が多く含まれ且つ高輝度な白色画像が多く含まれている場合に、画像データDmidを更に調整した画像データDoutを生成する。
【0048】
画像データDmidの調整は、新座標系において白色成分の画素に対応する座標に割り当てられた階調レベルに対して行われる。例えば、新座標系において白色成分の画素に対応する座標に割り当てられた階調レベルWoldから予め定められた差分値Dwを差し引いた値Wold−Dwを新たな階調レベルWnewとして当該座標に割り当てる。
【0049】
そして、階調レベル調整部202は、このように画像データDmidを調整して得た新たな画像データDoutを信号ドライバ12へ出力する(ステップS11)。なお、階調レベル調整部202は、ステップS6−S9の判定において、何れか一つでも条件を満たさない場合には、画像データDmidを調整することなく当該画像データDmidを画像データDoutとし(ステップS12)、この画像データDoutを信号ドライバ12へ出力する(ステップS11)。即ち、階調レベル調整部202は、表示画像に純色に近いイエロー画像が多く含まれないようなときや高輝度な白色画像が多く含まれていないようなときには、上述したような画像データDmidに対するさらなる調整を留保する。
【0050】
つまり、データ変換部20は、純色に近いイエロー画像が多く含まれるとともに高輝度な白色画像が多く含まれる表示画像を識別し、このような画像を表示パネル10に表示させる際に、白色成分のカラーフィルタが形成されていることで白色成分の輝度表示を行う画素に対してその表示輝度が低下するように画像データを変換している。そして、このように画像変換を行うことにより、イエローと白色との間の輝度差を小さくすることが可能になり、表示パネル10に表示される画像においてイエローが視感的にくすんで見えてしまうことを防止できる。
【0051】
なお、表示パネル10に向けて光を照射するバックライトを液晶表示装置1に備える構成とする場合には、白色成分の表示輝度を上述した画像変換により低下させる際に、バックライトの発光輝度が明るくなるようにバックライトを制御する構成としてもよい。即ち、白色成分の表示輝度を上述した画像変換により低下させるか否かに応じて、バックライトの発光輝度が第1の輝度とこの第1の輝度よりも明るい第2の輝度との間で切り換わるように制御する制御手段を備えた構成としてもよい。
【0052】
また、予め第1の表示モードと第2の表示モードとが選択可能なように液晶表示装置1を構成し、第1の表示モードが選択されたときに、データ変換部20が上述したような動作フローを実行し、第2の表示モードが選択されたときには、画像データDinが常時そのまま画像データDoutとして信号ドライバ12に出力される構成としてもよい。例えば、液晶表示装置1が携帯端末の表示部として適用されるような場合に、一般的に静止画が主体であるWEBサイトに接続したようなときに高画質表示モードとして前記第1の表示モードが選択されるとともに一般的に動画が主体であるテレビ映像を表示するときには低消費電力表示モードとして前記第2の表示モードが選択される構成としてもよい。静止画に比べて動画の場合にはくすみに対する視感度が比較的鈍るため、このような場合はデータ変換部の機能を停止させ、画質よりも消費電力を低下させることを優先させることが好ましい。
【0053】
上述の実施の形態では、補色としてイエロー成分に対するヒストグラムを生成して当該ヒストグラムに基づいてイエロー成分に対する視感的くすみを防止するように画像データを変換する場合について説明したが、他の補色、即ち、シアン成分やマゼンタ成分に対するヒストグラムを生成して、当該ヒストグラムに基づいてシアン成分やマゼンタ成分に対する視感的くすみを防止するように画像データを変換してもよい。なお、シアン成分に対するヒストグラムは、青色成分の階調レベルと緑色成分の階調レベルとが等しく且つ赤色成分の階調レベルが最小階調になっている座標をシアン成分としてカウントするとともに、このときの青色成分または緑色成分の階調レベルをシアン成分の階調レベルとして取得すればよい。また、マゼンタ成分に対するヒストグラムは、青色成分の階調レベルと赤色成分の階調レベルとが等しく且つ緑色成分の階調レベルが最小階調になっている座標をマゼンタ成分としてカウントするとともに、このときの青色成分または赤色成分の階調レベルをマゼンタ成分の階調レベルとして取得すればよい。
【0054】
また、上述の実施の形態では、イエロー成分に対するヒストグラムを生成する際に、緑色成分の階調レベルと赤色成分の階調レベルとが等しく且つ青色成分の階調レベルが最小階調になっている座標をイエロー成分としてカウントするとともに、このときの緑色成分または赤色成分の階調レベルをイエロー成分の階調レベルとして取得する場合について説明したが、緑色成分の階調レベルと赤色成分の階調レベルとを比較し、階調レベルが低い方の色成分の階調レベルをイエロー成分の階調レベルとして取得することでイエロー成分に対するヒストグラムを生成する構成としてもよい。当該ヒストグラムによっても純色に近いイエロー画像の含有量を識別することができる。
【0055】
また、上述の実施の形態では、白色成分に対するヒストグラムを生成する際に、赤色成分の階調レベルと緑色成分の階調レベルと青色成分の階調レベルとが等しい座標を白色成分としてカウントするとともに、このときの各色成分の階調レベルを白色成分の階調レベルとして取得する場合について説明したが、赤色成分の階調レベルと緑色成分の階調レベルと青色成分の階調レベルを比較し、階調レベルが最も低い色成分の階調レベルを白色成分の階調レベルとして取得することで白色成分に対するヒストグラムを生成する構成としてもよい。当該ヒストグラムによっても高輝度な白色画像の含有量を識別することができる。
【0056】
また、上述の実施の形態では、補色としてイエロー成分に対するヒストグラムを生成して当該ヒストグラムに基づいてイエロー成分に対する視感的くすみを防止するように画像データを変換する場合について説明したが、原色、即ち、赤色成分や緑色成分、青色成分に対するヒストグラムを生成して、当該ヒストグラムに基づいて赤色成分や緑色成分、青色成分に対する視感的くすみを防止するように画像データを変換してもよい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、1画面分の画像データ毎に所定の色のヒストグラムを新たに生成する場合について説明したが、所定数のフレーム毎に生成してもよいし、複数画面分のヒストグラムを生成し、当該ヒストグラムに基づいて画像データを変換してもよい。
【0058】
また、上述の実施の形態では、液晶表示装置に適用した場合について説明したが有機EL等の自発光型の表示装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:液晶表示装置
10:表示パネル
11:走査ドライバ
12:信号ドライバ
13:制御部
20:データ変換部
23:カラーフィルタ
201:座標系変換部
202:階調レベル調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの画素が、赤色成分、緑色成分、青色成分または白色成分の何れかに対応するように形成された表示パネルと、
第1画像データをサブピクセルレンダリング処理して、座標系が前記第1画像データとは異なるとともに前記表示パネルに対応した第2画像データを生成する第1変換手段と、
前記第1画像データに基づいて前記表示パネルに表示される表示画像を事前に識別し、予め定められた第1基準よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した前記画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整する第2変換手段と、
を備えていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第2変換手段は、予め定められた第2基準よりも前記表示画像に所定の色の着色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した前記画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2変換手段は、
前記第1画像データにおける白色成分に対する階調レベルの平均値が予め定めた白色平均基準値よりも大きく且つ白色成分に対する階調レベルの分散値が予め定めた白色分散基準値よりも小さいときに、前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別し、
前記第1画像データにおける前記所定の色成分に対する階調レベルの平均値が予め定めた着色平均基準値よりも大きく且つ前記所定の色成分に対する階調レベルの分散値が予め定めた着色分散基準値よりも小さいときに、前記表示画像に前記所定の色の着色画像が多く含まれていると識別することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記所定の色は、赤色、緑色及び青色のうち、何れか2つの色からなる補色であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記補色がイエローであることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2変換手段は、予め定められた第2基準値よりも前記表示画像に所定の色の着色画像が多く含まれていないと識別されるときに、前記第2画像データの調整を留保することを特徴とする請求項2から5の何れかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2変換手段は、予め定められた第1基準値よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていないと識別されるときには、前記第2画像データの調整を留保することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示パネルに光を照射するバックライトと、
前記バックライトの発光輝度を調整する発光輝度調整手段と、を備え、
前記発光輝度調整手段は、前記第2変換手段が前記第2画像データの調整を留保した際に前記バックライトの発光輝度を第1の輝度に制御し、前記第2変換手段が前記第2画像データを調整した際に前記バックライトの発光輝度を前記第1の輝度よりも明るい第2の輝度に制御することを特徴とする請求項6または7に記載の表示装置。
【請求項9】
それぞれの画素が、赤色成分、緑色成分、青色成分または白色成分の何れかに対応するように形成された表示装置の駆動方法であって、
第1画像データをサブピクセルレンダリング処理して、座標系が前記第1画像データとは異なるとともに前記表示パネルに対応した第2画像データを生成する第1変換ステップと、
前記第1画像データに基づいて前記表示パネルに表示される表示画像を事前に識別し、予め定められた第1基準値よりも前記表示画像に白色画像が多く含まれていると識別されるときに、白色成分に対応した前記画素での表示輝度が前記第2画像データで当該画素に割り当てられた階調レベルに対応する表示輝度よりも低くなるように前記第2画像データを調整する第2変換ステップと、
を有していることを特徴とする表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−190921(P2010−190921A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32113(P2009−32113)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】