説明

表示装置及び表示装置の駆動方法

【課題】黒レベルを示す階調値の経時変化等に起因する焼き付きを軽減することができる表示装置を提供する。
【解決手段】輝度補正部は、表示素子が映像信号に基づいて所定の単位時間の間動作したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したと仮定したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する基準動作時間値計算部、累積基準動作時間値保持部、基準カーブ格納部、黒レベルシフト量保持部、及び、黒レベルシフト量保持部に保持された黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子に対応した入力信号の階調値を補正して映像信号として出力する映像信号生成部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光部を備えた表示素子、及び、係る表示素子を備えた表示装置が周知である。例えば、有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下、ELと略称する場合がある)を利用した有機エレクトロルミネッセンス発光部を備えた表示素子(以下、単に、有機EL表示素子と略称する場合がある)は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な表示素子として注目されている。
【0003】
液晶表示装置と同様に、例えば、有機EL表示素子を備えた表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と略称する場合がある)においても、駆動方式として、単純マトリクス方式、及び、アクティブマトリクス方式が周知である。アクティブマトリクス方式は、構造が複雑となるといった欠点はあるが、画像の輝度を高いものとすることができる等の利点を有する。アクティブマトリクス方式により駆動される有機EL表示素子にあっては、発光層を含む有機層等から構成された発光部に加えて、発光部を駆動するための駆動回路を備えている。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス発光部(以下、単に、発光部と略称する場合がある)を駆動するための回路として、例えば、2つのトランジスタと1つの容量部から構成された駆動回路(2Tr/1C駆動回路と呼ぶ)が、特開2007−310311号公報(特許文献1)等から周知である。この2Tr/1C駆動回路は、図3に示すように、書込みトランジスタTRWと駆動トランジスタTRDの2つのトランジスタ、及び、1つの容量部C1から構成されている。
【0005】
2Tr/1C駆動回路を備えた有機EL表示素子の動作の概要を説明する。図19にタイミングチャートを示すように、[期間−TP(2)3]及び[期間−TP(2)5]において、閾値電圧キャンセル処理が行われる。次いで、[期間−TP(2)7]において書込み処理が行われ、その後、[期間−TP(2)8]において、駆動トランジスタTRDのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsが発光部ELPに流れる。基本的に、有機EL表示素子は、発光部ELPの発光効率と、発光部ELPに流れるドレイン電流Idsの値との積に応じた輝度で発光する。
【0006】
尚、2Tr/1C駆動回路を備えた有機EL表示素子の動作については、後ほど、図19の他、後述する図20乃至図25を参照して、詳しく説明する。
【0007】
一般に、表示装置は、動作時間が長くなればなるほど輝度が低下する。有機EL表示素子を用いた表示装置においても、黒レベルを示す階調値の経時変化等により輝度の低下が観察される。従って、表示装置にあっては、同一のパターンを長時間表示させると、そのパターンに応じた輝度変化が観察されるといった所謂焼き付きが起こる場合がある。例えば、図28の(A)に示すように、有機EL表示装置の表示領域EAの右上に文字を表示(白表示)し、文字以外の領域を黒表示とした状態で、長時間表示装置を動作させる。その後、表示領域EA全体を白表示とすると、図28の(B)に示すように、表示領域EAにおいて、右上の文字表示をした部分の領域の輝度が相対的に低くなり、不要なパターンとして視認される。このように、焼き付きが起こると、表示装置の表示品質は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−310311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
経時変化により黒レベルを示す階調値が大きくなる場合には、焼き付きを生じた領域の表示素子を駆動する際に、元の信号の階調値に黒レベルの階調値の変化量を加算して表示素子を制御するといったことによって、焼き付きを軽減することができる。しかしながら、例えば、有機EL表示素子を用いた表示装置において、黒レベルを示す階調値の経時変化は、表示する画像の輝度の履歴等によって左右される。動作履歴を種々変えたときの経時変化データを予め多数測定しておき、これらのデータを格納したテーブル等を参照して焼き付きを軽減するように制御するといった方法では、制御のための回路規模が大きくなると共に、制御が複雑になるといった問題が生ずる。
【0010】
従って、本発明の目的は、表示する画像の輝度の履歴等を個別にデータとして保存することなく、これらの履歴を反映して黒レベルを示す階調値の経時変化等に起因する焼き付きを軽減することができる表示装置を提供し、あるいは又、これらの履歴を反映して黒レベルを示す階調値の経時変化等に起因する焼き付きを軽減することができる表示装置の駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の表示装置は、
電流駆動型の発光部を有する表示素子が第1の方向と第2の方向とに2次元マトリクス状に配列されて成り、映像信号に基づいて画像を表示する表示パネル、及び、
入力信号の階調値を補正して映像信号として出力することによって、表示パネルが画像を表示する際の表示素子の輝度を補正する輝度補正部、
を備えており、
輝度補正部は、
表示素子が映像信号に基づいて所定の単位時間の間動作したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したと仮定したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する基準動作時間値計算部、
基準動作時間値計算部が計算した基準動作時間の値を表示素子毎に累積した累積基準動作時間値を保持する累積基準動作時間値保持部、
表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したときの、表示素子の動作時間と表示素子の黒レベル階調値の経時変化との関係を示す基準カーブを格納した基準カーブ格納部、
累積基準動作時間値保持部と基準カーブ格納部とを参照して表示素子の黒レベル階調値の経時変化を補償するための黒レベルシフト量を計算し、各表示素子に対応した黒レベルシフト量を保持する黒レベルシフト量保持部、及び、
黒レベルシフト量保持部に保持された黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子に対応した入力信号の階調値を補正して映像信号として出力する映像信号生成部、
を備えている。
【0012】
また、上記の目的を達成するための本発明の表示装置の駆動方法は、
電流駆動型の発光部を有する表示素子が第1の方向と第2の方向とに2次元マトリクス状に配列されて成り、映像信号に基づいて画像を表示する表示パネル、及び、
入力信号の階調値を補正して映像信号として出力することによって、表示パネルが画像を表示する際の表示素子の輝度を補正する輝度補正部、
を備えた表示装置を用いた表示装置の駆動方法において、
輝度補正部の動作に基づいて、入力信号の階調値を補正して映像信号として出力することによって、表示パネルが画像を表示する際の表示素子の輝度を補正する輝度補正ステップを有し、
輝度補正ステップは、
表示素子が映像信号に基づいて所定の単位時間の間動作したときの黒レベル階調値の経時変化と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したと仮定したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する基準動作時間値計算ステップ、
基準動作時間の値を表示素子毎に累積した累積基準動作時間値を保持する累積基準動作時間値保持ステップ、
累積基準動作時間値と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したときの表示素子の動作時間と表示素子の黒レベル階調値の経時変化との関係を示す基準カーブとを参照して表示素子の黒レベル階調値の経時変化を補償するための黒レベルシフト量を計算し、各表示素子に対応した黒レベルシフト量を保持する黒レベルシフト量保持ステップ、及び、
黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子に対応した入力信号の階調値を補正して映像信号として出力する映像信号生成ステップ、
を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置によれば、表示する画像の輝度の履歴等を個別にデータとして保存することなく、これらの履歴を反映して黒レベルを示す階調値の経時変化等に起因する焼き付きを軽減することができる。また、本発明の表示装置の駆動方法によれば、表示する画像の輝度の履歴等を個別にデータとして保存することなく、これらの履歴を反映して黒レベルを示す階調値の経時変化等に起因する焼き付きを軽減するように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1の表示装置の概念図である。
【図2】図2は、輝度補正部の構成を説明するための、模式的なブロック図である。
【図3】図3は、表示パネルを構成する表示素子の等価回路図である。
【図4】図4は、表示装置を構成する表示パネルの一部分の模式的な一部断面図である。
【図5】図5の(A)は、初期状態の表示素子における映像信号電圧の値と表示素子の輝度の値との関係を説明するためのグラフである。図5の(B)は、経時変化によって黒レベル階調値のシフトを生じた表示素子における映像信号電圧の値と表示素子の輝度の値との関係を説明するためのグラフである。
【図6】図6は、種々の階調値の映像信号に基づいて表示素子を動作させたときの累積動作時間と、黒レベル経時変化量との関係を説明するための模式的なグラフである。
【図7】図7は、映像信号の階調値を変えながら表示素子を動作させたときの、動作時間と黒レベル経時変化量との関係を説明するための模式的なグラフである。
【図8】図8は、図7において符号CL1,CL2,CL3で表したグラフの部分と、図6に示すグラフとの対応関係を説明するための図である。
【図9】図9は、図7に示す動作履歴に基づいて表示素子を動作させたときの動作時間の値を、所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作させたと仮定したときの基準動作時間の値に換算する方法を説明するための模式的なグラフである。
【図10】図10は、図6に示すグラフを4つの領域に分割し、各領域毎に直線を用いて近似したグラフである。
【図11】図11は、図10に示すグラフの傾きを説明するための図である。
【図12】図12は、基準動作時間を計算する方法を説明するための模式図である。
【図13】図13は、映像信号の階調値と動作時間換算係数との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、図2に示す動作時間換算係数格納部に格納されているデータを説明するための模式的なグラフである。
【図15】図15は、図2に示す累積基準動作時間値保持部に保持されるデータを説明するための模式図である。
【図16】図16は、図2に示す基準カーブ格納部に格納されているデータを説明するための模式的なグラフである。
【図17】図17は、図2に示す黒レベルシフト量保持部を構成する黒レベルシフト量計算部の動作を説明するための模式的なグラフである。
【図18】図18は、図2に示す黒レベルシフト量保持部を構成する黒レベルシフト量格納部に保持されるデータを説明するための模式図である。
【図19】図19は、実施例1の表示装置の駆動方法における表示素子の動作を説明するためのタイミングチャートの模式図である。
【図20】図20の(A)及び(B)は、表示素子の駆動回路を構成する各トランジスタの導通状態/非導通状態等を模式的に示す図である。
【図21】図21の(A)及び(B)は、図20の(B)に引き続き、表示素子の駆動回路を構成する各トランジスタの導通状態/非導通状態等を模式的に示す図である。
【図22】図22の(A)及び(B)は、図21の(B)に引き続き、表示素子の駆動回路を構成する各トランジスタの導通状態/非導通状態等を模式的に示す図である。
【図23】図23の(A)及び(B)は、図22の(B)に引き続き、表示素子の駆動回路を構成する各トランジスタの導通状態/非導通状態等を模式的に示す図である。
【図24】図24の(A)及び(B)は、図23の(B)に引き続き、表示素子の駆動回路を構成する各トランジスタの導通状態/非導通状態等を模式的に示す図である。
【図25】図25は、図24の(B)に引き続き、表示素子の駆動回路を構成する各トランジスタの導通状態/非導通状態等を模式的に示す図である。
【図26】図26は、駆動回路を含む表示素子の等価回路図である。
【図27】図27は、駆動回路を含む表示素子の等価回路図である。
【図28】図28の(A)及び(B)は、表示装置における焼き付きを説明するための、表示装置の模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の表示装置及び表示装置の駆動方法、全般に関する説明
2.実施例1(表示装置及び表示装置の駆動方法)
【0016】
[本発明の表示装置及び表示装置の駆動方法、全般に関する説明]
本発明の表示装置及び表示装置の駆動方法において、入力信号及び映像信号の値は、デジタル制御を行うといった観点からは、2の冪乗で表される段階で値が変化するといった構成が好ましい。本発明の表示装置及び表示装置の駆動方法にあっては、焼き付きを軽減するために、映像信号の階調値が入力信号の階調値の最大値を超える値となる場合が生じ得る。
【0017】
例えば入力信号において8ビットの階調制御を行い、映像信号は8ビットを超える階調制御を行う構成とすることができる。一例として、映像信号を9ビット制御とするといった構成を挙げることができるが、これに限るものではない。
【0018】
本発明の表示装置、あるいは、本発明の表示装置の駆動方法に用いられる表示装置(以下、これらを総称して、単に、本発明の表示装置と呼ぶ場合がある)にあっては、
輝度補正部は、更に、
表示素子が各階調値の映像信号に基づいて動作するときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化の速度と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作するときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化の速度との比を動作時間換算係数テーブルとして格納した動作時間換算係数格納部、
を備えており、
基準動作時間値計算部は、
動作時間換算係数格納部の動作時間換算係数テーブルを参照し、映像信号の階調値に対応した動作時間換算係数の値を求め、単位時間の値に動作時間換算係数の値を乗算することによって、基準動作時間の値を計算する構成とすることができる。
【0019】
上述した好ましい構成の本発明の表示装置にあっては、
動作時間換算係数格納部には、表示素子の黒レベル階調値の経時変化の範囲毎に対応した複数の動作時間換算係数テーブルが格納されており、
基準動作時間値計算部は、黒レベルシフト量保持部に保持された黒レベルシフト量の値に対応した動作時間換算係数テーブルを選択して参照する構成とすることができる。
【0020】
上述した各種の好ましい構成を含む本発明の表示装置にあっては、単位時間が短いほど、焼き付きの軽減の精度が向上するが、輝度補正部における処理の負担も増加する。単位時間は、表示装置の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
例えば、表示フレームレートの逆数で与えられる時間、換言すれば、所謂1フレーム期間が占める時間を単位時間とすることができる。あるいは又、所定の数のフレーム期間を纏めた期間が占める時間を単位時間とすることができる。尚、後者の構成にあっては、単位時間において、1つの表示素子に種々の階調値の映像信号が印加される。この場合には、例えば、単位時間の始期のフレーム期間における階調値のみ参照するといった構成とすればよい。
【0022】
輝度補正部を構成する、基準動作時間値計算部、累積基準動作時間値保持部、基準カーブ格納部、黒レベルシフト量保持部、映像信号生成部、及び、動作時間換算係数格納部は、周知の回路素子等を用いて構成することができる。後述する、電源部、走査回路、及び、信号出力回路等の各種の回路についても同様である。
【0023】
上述した各種の好ましい構成を含む本発明の表示装置は、所謂モノクロ表示の構成であってもよいし、カラー表示の構成であってもよい。
【0024】
カラー表示の構成とする場合には、1つの画素は複数の副画素から成る構成、具体的には、1つの画素は、赤色発光副画素、緑色発光副画素、及び、青色発光副画素の3つの副画素から成る構成とすることができる。更には、これらの3種の副画素に更に1種類あるいは複数種類の副画素を加えた1組(例えば、輝度向上のために白色光を発光する副画素を加えた1組、色再現範囲を拡大するために補色を発光する副画素を加えた1組、色再現範囲を拡大するためにイエローを発光する副画素を加えた1組、色再現範囲を拡大するためにイエロー及びシアンを発光する副画素を加えた1組)から構成することもできる。
【0025】
表示装置の画素(ピクセル)の値として、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(1920,1035)、(720,480)、(1280,960)等、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0026】
本発明の表示装置にあっては、表示素子を構成する電流駆動型の発光部として、有機エレクトロルミネッセンス発光部、LED発光部、半導体レーザ発光部等を挙げることができる。これらの発光部は、周知の材料や方法を用いて構成することができる。平面型の表示装置を構成する観点からは、中でも、発光部は、有機エレクトロルミネッセンス発光部から成る構成が好ましい。有機エレクトロルミネッセンス発光部は、いわゆる上面発光型であってもよいし、下面発光型であってもよい。有機エレクトロルミネッセンス発光部は、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等から構成することができる。
【0027】
表示パネルを構成する表示素子は、或る平面内に形成され(例えば、支持体上に形成され)ており、発光部は、例えば、層間絶縁層を介して、発光部を駆動する駆動回路の上方に形成されている。
【0028】
発光部を駆動する駆動回路を構成するトランジスタとして、例えば、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)を挙げることができる。駆動回路を構成するトランジスタは、エンハンスメント型であってもよいし、デプレッション型であってもよい。nチャネル型のトランジスタにあってはLDD構造(Lightly Doped Drain構造)が形成されていてもよい。場合によっては、LDD構造は非対称に形成されていてもよい。例えば、駆動トランジスタに大きな電流が流れるのは表示素子の発光時であるので、発光時においてドレイン領域となる一方のソース/ドレイン領域にのみLDD構造を形成した構成とすることもできる。尚、例えば、pチャネル型の薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0029】
駆動回路を構成する容量部は、一方の電極、他方の電極、及び、これらの電極に挟まれた誘電体層から構成することができる。駆動回路を構成する上述したトランジスタ及び容量部は、或る平面内に形成され(例えば、支持体上に形成され)、発光部は、例えば、層間絶縁層を介して、駆動回路を構成するトランジスタ及び容量部の上方に形成されている。また、駆動トランジスタの他方のソース/ドレイン領域は、発光部の一端(発光部に備えられたアノード電極等)に、例えば、コンタクトホールを介して接続されている。尚、半導体基板等にトランジスタを形成した構成であってもよい。
【0030】
支持体や後述する基板の構成材料として、高歪点ガラス、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)、硼珪酸ガラス(Na2O・B23・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)等のガラス材料の他、可撓性を有する高分子材料、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)やポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される高分子材料を例示することができる。尚、支持体や基板の表面に各種のコーティングが施されていてもよい。支持体と基板の構成材料は、同じであってもよいし異なっていてもよい。可撓性を有する高分子材料から成る支持体及び基板を用いれば、可撓性を有する表示装置を構成することができる。
【0031】
表示装置にあっては、走査線、データ線、給電線等の各種の配線は、周知の構成や構造とすることができる。
【0032】
1つのトランジスタの有する2つのソース/ドレイン領域において、「一方のソース/ドレイン領域」という用語を、電源側に接続されたソース/ドレイン領域といった意味において使用する場合がある。また、トランジスタが導通状態にあるとは、ソース/ドレイン領域間にチャネルが形成されている状態を意味する。係るトランジスタの一方のソース/ドレイン領域から他方のソース/ドレイン領域に電流が流れているか否かは問わない。一方、トランジスタが非導通状態にあるとは、ソース/ドレイン領域間にチャネルが形成されていない状態を意味する。また、ソース/ドレイン領域は、不純物を含有したポリシリコンやアモルファスシリコン等の導電性物質から構成することができるだけでなく、金属、合金、導電性粒子、これらの積層構造、有機材料(導電性高分子)から成る層から構成することができる。
【0033】
本明細書における各種の式に示す条件は、式が数学的に厳密に成立する場合の他、式が実質的に成立する場合にも満たされる。式の成立に関し、表示素子や表示装置の設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0034】
以下の説明で用いるタイミングチャートにおいて、各期間を示す横軸の長さ(時間長)は模式的なものであり、各期間の時間長の割合を示すものではない。縦軸においても同様である。また、タイミングチャートにおける波形の形状も模式的なものである。
【実施例1】
【0035】
実施例1は、本発明の表示装置及び表示装置の駆動方法に関する。
【0036】
図1は、実施例1の表示装置1の概念図である。実施例1の表示装置1は、電流駆動型の発光部を有する表示素子10が第1の方向と第2の方向とに2次元マトリクス状に配列されて成り、映像信号VDSigに基づいて画像を表示する表示パネル20、及び、入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力することによって、表示パネル20が画像を表示する際の表示素子10の輝度を補正する輝度補正部110を備えている。実施例1では、発光部は有機エレクトロルミネッセンス発光部から成る。
【0037】
表示素子10は、第1の方向(図1においてX方向、以下、行方向と呼ぶ場合がある)にN個、第2の方向(図1においてY方向、以下、列方向と呼ぶ場合がある)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列されている。表示素子10の行数はMであり、各行を構成する表示素子10の数はNである。尚、図1においては、3×3個の表示素子10を図示しているが、これは、あくまでも例示に過ぎない。
【0038】
表示パネル20は、更に、走査回路101に接続され、第1の方向に延びる複数(M本)の走査線SCL、信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びる複数(N本)のデータ線DTL、及び、電源部100に接続され、第1の方向に延びる複数(M本)の給電線PS1を備えている。第m行目(但し、m=1,2・・・,M)の表示素子10は、第m番目の走査線SCLm、及び、第m番目の給電線PS1mに接続されており、1つの表示素子行を構成する。また、第n列目(但し、n=1,2・・・,N)の表示素子10は、第n番目のデータ線DTLnに接続されている。
【0039】
電源部100及び走査回路101の構成や構造は、周知の構成や構造とすることができる。信号出力回路102は、図示せぬD/Aコンバータやラッチ回路を備えており、映像信号VDSigの階調値に基づいた映像信号電圧VSigを発生すると共に、一行分の映像信号電圧VSigを保持し、N本のデータ線DTLに映像信号電圧VSigを供給する。また、信号出力回路102は図示せぬセレクタ回路を備えており、セレクタ回路の切り替えによって、データ線DTLに映像信号電圧VSigを供給する状態と、データ線DTLに後述する基準電圧VOfsを供給する状態とが切り替えられる。電源部100、走査回路101、及び、信号出力回路102は、周知の回路素子等を用いて構成することができる。
【0040】
実施例1の表示装置1は、複数の表示素子10(例えば、N×M=640×480)を備えている、モノクロ表示の表示装置である。各表示素子10は画素を構成する。表示領域においては、行方向と列方向とに2次元マトリクス状に画素が配列されている。
【0041】
走査回路101からの走査信号によって、表示装置1は行単位で線順次走査される。第m行、第n列目に位置する表示素子10を、以下、第(n,m)番目の表示素子10あるいは第(n,m)番目の画素と呼ぶ。第(n,m)番目の表示素子10に対応する入力信号vDSigをvDSig(n,m)と表し、輝度補正部110により補正された第(n,m)番目の表示素子10に対応する映像信号VDSigを、VDSig(n,m)と表す。また、映像信号VDSig(n,m)に基づいた映像信号電圧をVSig(n,m)と表す。
【0042】
上述したように、輝度補正部110は、入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力する。
【0043】
説明の都合上、入力信号vDSigの階調ビット数は8ビットであるとする。入力信号vDSigの階調値は、表示すべき画像の輝度に応じて、0乃至255のいずれかの値となる。ここでは、階調値が大きいほど表示すべき画像の輝度が高いものとする。また、説明の都合上、映像信号VDSigの階調ビット数は9ビットであるとする。
【0044】
図2は、輝度補正部110の構成を説明するための、模式的なブロック図である。輝度補正部110の動作については、後ほど、後述する図14乃至図18を参照して詳しく説明する。ここでは、輝度補正部110の概要について説明する。
【0045】
輝度補正部110は、基準動作時間値計算部112、累積基準動作時間値保持部114、基準カーブ格納部116、黒レベルシフト量保持部115、及び、映像信号生成部111を備えており、更に、動作時間換算係数格納部113を備えている。これらは、演算回路や記憶装置(メモリ)等から構成されており、周知の回路素子等を用いて構成することができる。
【0046】
基準動作時間値計算部112は、表示素子10が映像信号VDSigに基づいて所定の単位時間の間動作したときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化と、表示素子10が所定の基準階調値の映像信号VDSigに基づいて動作したと仮定したときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する。「所定の単位時間」及び「所定の基準階調値」については、後述する。
【0047】
動作時間換算係数格納部113には、表示素子10が各階調値の映像信号VDSigに基づいて動作するときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化の速度と、表示素子10が所定の基準階調値の映像信号VDSigに基づいて動作するときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化の速度との比が動作時間換算係数テーブルとして格納されている。
【0048】
より具体的には、動作時間換算係数格納部113には、表示素子10の黒レベル階調値の経時変化の範囲毎に対応した複数の動作時間換算係数テーブルが格納されている。実施例1では、動作時間換算係数格納部113には、図14のグラフに示す関係を表す関数fCSC_BS1,fCSC_BS2,fCSC_BS3,fCSC_BS4がテーブルとして予め格納されている。
【0049】
動作時間換算係数格納部113は、所謂不揮発性メモリといった記憶装置から構成することができる。後述する基準カーブ格納部116においても同様である。
【0050】
基準動作時間値計算部112は、動作時間換算係数格納部113の動作時間換算係数テーブルを参照し、映像信号VDSigの階調値に対応した動作時間換算係数の値を求め、単位時間の値に動作時間換算係数の値を乗算することによって、基準動作時間の値を計算する。より具体的には、基準動作時間値計算部112は、黒レベルシフト量保持部115に保持された黒レベルシフト量の値に対応した動作時間換算係数テーブルを選択して参照する。
【0051】
累積基準動作時間値保持部114は、基準動作時間値計算部112が計算した基準動作時間の値を表示素子10毎に累積した累積基準動作時間値を保持する。累積基準動作時間値は、表示装置1の動作履歴を反映した値であり、表示装置1の電源遮断等によってリセットされない。累積基準動作時間値保持部114は、各表示素子10に対応した記憶領域を持つ書き換え可能な不揮発性の記憶装置から構成されており、図15に示すデータを保持する。
【0052】
基準カーブ格納部116には、表示素子10が所定の基準階調値の映像信号VDSigに基づいて動作したときの、表示素子10の動作時間と表示素子10の黒レベル階調値の経時変化との関係を示す基準カーブが格納されている。具体的には、基準カーブ格納部116には、図16に示す基準カーブを表す関数fREF_BS_SHIFTがテーブルとして予め格納されている。
【0053】
尚、上述した関数fCSC_BS1,fCSC_BS2,fCSC_BS3,fCSC_BS4、関数fREF_BS_SHIFTは、同一仕様の表示装置を用いた実測等によるデータに基づき予め決定されている。
【0054】
実施例1にあっては、「所定の単位時間」を所謂1フレーム期間が占める時間とし、「所定の基準階調値」を500としたが、これに限定するものではない。
【0055】
黒レベルシフト量保持部115は、累積基準動作時間値保持部114と基準カーブ格納部116とを参照して表示素子10の黒レベル階調値の経時変化を補償するための黒レベルシフト量を計算し、各表示素子10に対応した黒レベルシフト量を保持する。
【0056】
黒レベルシフト量保持部115は、黒レベルシフト量計算部115Aと黒レベルシフト量格納部115Bとから構成されている。黒レベルシフト量計算部115Aは演算回路から構成されている。黒レベルシフト量格納部115Bは、各表示素子10に対応した記憶領域を持ち、書き換え可能な不揮発性の記憶装置から構成されており、図18に示すデータを保持する。図18に示すデータは、表示装置1の電源遮断等によってリセットされない。
【0057】
映像信号生成部111は、黒レベルシフト量保持部115に保持された黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子10に対応した入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力する。
【0058】
以上、輝度補正部110の概要を説明した。次いで、表示装置1の構成について説明する。
【0059】
図3は、表示パネル20を構成する表示素子10の等価回路図である。
【0060】
表示素子10は、電流駆動型の発光部ELPと駆動回路11を含んでいる。駆動回路11は、ゲート電極とソース/ドレイン領域とを有する駆動トランジスタTRD、及び、容量部C1を少なくとも備えており、駆動トランジスタTRDのソース/ドレイン領域を介して発光部ELPに電流が流れる。後で図4を参照して詳しく説明するが、表示素子10は、駆動回路11と、この駆動回路11に接続された発光部ELPとが積層された構造を有する。
【0061】
駆動回路11は、駆動トランジスタTRDに加えて、更に、書込みトランジスタTRWを備えている。駆動トランジスタTRDと書込みトランジスタTRWは、nチャネル型のTFTから成る。尚、例えば書込みトランジスタTRWがpチャネル型のTFTから成る構成とすることもできる。また、駆動回路11は、例えば後述する図26や図27に示すように、更に別のトランジスタを備えていてもよい。
【0062】
容量部C1は、駆動トランジスタTRDのソース領域に対するゲート電極の電圧(所謂ゲート−ソース間電圧)を保持するために用いられる。この場合の「ソース領域」とは、発光部ELPが発光するときに「ソース領域」として働く側のソース/ドレイン領域を意味する。表示素子10の発光状態においては、駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域(図3において給電線PS1に接続されている側)はドレイン領域として働き、他方のソース/ドレイン領域(発光部ELPの一端、具体的には、アノード電極に接続されている側)はソース領域として働く。容量部C1を構成する一方の電極と他方の電極は、それぞれ、駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域とゲート電極に接続されている。
【0063】
書込みトランジスタTRWは、走査線SCLに接続されたゲート電極と、データ線DTLに接続された一方のソース/ドレイン領域と、駆動トランジスタTRDのゲート電極に接続された他方のソース/ドレイン領域とを有する。
【0064】
駆動トランジスタTRDのゲート電極は、書込みトランジスタTRWの他方のソース/ドレイン領域と容量部C1の他方の電極とが接続された、第1ノードND1を構成する。駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域は、容量部C1の一方の電極と発光部ELPのアノード電極とが接続された、第2ノードND2を構成する。
【0065】
発光部ELPの他端(具体的には、カソード電極)は、第2の給電線PS2に接続されている。尚、図1に示すように、第2の給電線PS2は、全ての表示素子10において共通である。
【0066】
発光部ELPのカソード電極には、第2の給電線PS2から、後述する所定の電圧VCatが印加される。発光部ELPの容量を符号CELで表す。また、発光部ELPの発光に必要とされる閾値電圧をVth-ELとする。即ち、発光部ELPのアノード電極とカソード電極との間にVth-EL以上の電圧が印加されると、発光部ELPは発光する。
【0067】
発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び、カソード電極等から成る周知の構成や構造を有する。
【0068】
図3に示す駆動トランジスタTRDは、表示素子10の発光状態においては、飽和領域で動作するように電圧設定されており、以下の式(1)に従ってドレイン電流Idsを流すように駆動される。上述したように、表示素子10の発光状態においては、駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域はドレイン領域として働き、他方のソース/ドレイン領域はソース領域として働く。説明の都合上、以下、駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域を単にドレイン領域と呼び、他方のソース/ドレイン領域を単にソース領域と呼ぶ場合がある。尚、
μ :実効的な移動度
L :チャネル長
W :チャネル幅
gs:ソース領域に対するゲート電極の電圧
th:閾値電圧
ox:(ゲート絶縁層の比誘電率)×(真空の誘電率)/(ゲート絶縁層の厚さ)
k≡(1/2)・(W/L)・Cox
とする。
【0069】
ds=k・μ・(Vgs−Vth2 (1)
【0070】
このドレイン電流Idsが発光部ELPを流れることで、表示素子10の発光部ELPが発光する。更には、このドレイン電流Idsの値の大小によって、表示素子10の発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。
【0071】
書込みトランジスタTRWの導通状態/非導通状態は、書込みトランジスタTRWのゲート電極に接続された走査線SCLからの走査信号、具体的には、走査回路101からの走査信号によって制御される。
【0072】
書込みトランジスタTRWの一方のソース/ドレイン領域には、データ線DTLから、信号出力回路102の動作に基づいて種々の信号や電圧が印加される。具体的には、信号出力回路102から、映像信号電圧VSigと所定の基準電圧VOfsが印加される。尚、映像信号電圧VSigや基準電圧VOfsに加えて更に別の電圧が印加されるといった構成であってもよい。
【0073】
走査回路101からの走査信号によって、表示装置1は行単位で線順次走査される。各水平走査期間にあっては、データ線DTLには先ず基準電圧VOfsが印加され、その後、映像信号電圧VSigが供給される。
【0074】
図4に表示装置1を構成する表示パネル20の一部分の模式的な一部断面図を示す。駆動回路11を構成するトランジスタTRD,TRW及び容量部C1は支持体21上に形成され、発光部ELPは、例えば、層間絶縁層40を介して、駆動回路11を構成するトランジスタTRD,TRW及び容量部C1の上方に形成されている。また、駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に、コンタクトホールを介して接続されている。尚、図4においては、駆動トランジスタTRDのみを図示する。その他のトランジスタは隠れて見えない。
【0075】
より具体的には、駆動トランジスタTRDは、ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33に設けられたソース/ドレイン領域35,35、及び、ソース/ドレイン領域35,35の間の半導体層33の部分が該当するチャネル形成領域34から構成されている。一方、容量部C1は、他方の電極36、ゲート絶縁層32の延在部から構成された誘電体層、及び、一方の電極37から成る。ゲート電極31、ゲート絶縁層32の一部、及び、容量部C1を構成する他方の電極36は、支持体21上に形成されている。駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域35は配線38(給電線PS1に対応する)に接続され、他方のソース/ドレイン領域35は一方の電極37に接続されている。駆動トランジスタTRD及び容量部C1等は、層間絶縁層40で覆われており、層間絶縁層40上に、アノード電極51、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び、カソード電極53から成る発光部ELPが設けられている。尚、図面においては、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を1層52で表した。発光部ELPが設けられていない層間絶縁層40の部分の上には、第2層間絶縁層54が設けられ、第2層間絶縁層54及びカソード電極53上には透明な基板22が配置されており、発光層にて発光した光は、基板22を通過して、外部に出射される。尚、一方の電極37とアノード電極51とは、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホールによって接続されている。また、カソード電極53は、第2層間絶縁層54、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホール56,55を介して、ゲート絶縁層32の延在部上に設けられた配線39(第2の給電線PS2に対応する)に接続されている。
【0076】
図4に示す表示パネル20を備えた表示装置1の製造方法を説明する。先ず、支持体21上に、走査線SCL等の各種配線、容量部C1を構成する電極、半導体層から成るトランジスタ、層間絶縁層、コンタクトホール等を、周知の方法により適宜形成する。次いで、周知の方法により成膜及びパターニングを行い、マトリクス状に配列された発光部ELPを形成する。そして、上記工程を経た支持体21と基板22を対向させ周囲を封止した後、外部の回路との結線を行い、表示装置を得ることができる。
【0077】
次いで、実施例1の表示装置1の駆動方法(以下、単に、実施例1の駆動方法と略称する場合がある)について説明する。表示装置1の表示フレームレートをFR(回/秒)とする。第m行目に配列されたN個の画素のそれぞれを構成する表示素子10が同時に駆動される。換言すれば、第1の方向に沿って配されたN個の表示素子10にあっては、その発光/非発光のタイミングは、それらが属する行単位で制御される。表示装置1を行単位で線順次走査するときの1行当たりの走査期間、より具体的には、1水平走査期間(所謂1H)は、(1/FR)×(1/M)秒未満である。
【0078】
以下の説明において、電圧あるいは電位の値を以下のとおりとするが、これは、あくまでも説明のための値であり、これらの値に限定されるものではない。
【0079】
Sig :映像信号電圧
・・・0ボルト(階調値0)〜10ボルト(階調値511)
Ofs :駆動トランジスタTRDのゲート電極(第1ノードND1)に印加する基準電圧
・・・0ボルト
CC-H :発光部ELPに電流を流すための駆動電圧
・・・20ボルト
CC-L :駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域(第2ノードND2)の
電位を初期化するための初期化電圧
・・・−10ボルト
th :駆動トランジスタTRDの閾値電圧
・・・3ボルト
Cat :発光部ELPのカソード電極に印加される電圧
・・・0ボルト
th-EL:発光部ELPの設計上の閾値電圧
・・・4ボルト
【0080】
第(n,m)番目の表示素子10の動作については、後ほど、図19乃至図25を参照して詳しく説明する。先ず、映像信号VDSigと映像信号電圧VSigの関係について説明する。
【0081】
背景技術の欄においても説明したが、図19にタイミングチャートを示すように、[期間−TP(2)3]及び[期間−TP(2)5]において、閾値電圧キャンセル処理が行われる。次いで、[期間−TP(2)7]において書込み処理が行われ、その後、[期間−TP(2)8]において、駆動トランジスタTRDのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsが発光部ELPに流れ、発光部ELPが発光する。
【0082】
図19及び図24の(B)に示すように、[期間−TP(2)7]の終期において、第2ノードND2の電位は(VOfs−Vth+ΔV)である。そして、駆動トランジスタTRDのソース領域に対するゲート電極の電圧Vgsは、以下の式(4)のように表すことができる。
【0083】
gs≒VSig_m−(VOfs−Vth)−ΔV (4)
【0084】
式(4)において、「VSig_m」は第(n,m)番目の表示素子10の映像信号電圧VSig(n,m)を示しており、「ΔV」は、第2ノードND2の電位の上昇量ΔV(電位補正値)である。電位補正値ΔVについては、後ほど、図24の(B)を参照して詳しく説明する。
【0085】
図19及び図25に示すように、[期間−TP(2)8]において駆動トランジスタTRDのソース領域の電位は上昇する。また、所謂ブートストラップ回路におけると同様の動作(ブートストラップ動作)が生じ、駆動トランジスタTRDのゲート電極の電位も上昇する。
【0086】
即ち、[期間−TP(2)8]にあっては、第1ノードND1は浮遊状態となり、第2ノードND2の電位は、(VOfs−Vth+ΔV)から、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを超える電位まで上昇する。ブートストラップ動作が理想的に起こる場合、換言すれば、第1ノードND1の電位の上昇量が第2ノードND2の電位の上昇量と等しくなるといった場合には、[期間−TP(2)8]においても、電圧Vgsは上述した式(4)で与えられる値を維持する。第(n,m)番目の表示素子10の発光部ELPに流れドレイン電流Idsは、上述した式(1)と式(4)から、以下の式(5)のように表すことができる。
【0087】
ds=k・μ・(VSig_m−VOfs−ΔV)2 (5)
【0088】
説明の都合上、ここでは、「ΔV」の値はVSig_mに比べて充分小さいとする。上述したように、VOfsは0ボルトであるので、式(5)は、式(5’)のように変形することができる。
【0089】
ds=k・μ・VSig_m2 (5’)
【0090】
式(5’)から明らかなように、ドレイン電流Idsは、映像信号電圧VSig(n,m)の値の自乗に比例する。表示素子10は、発光部ELPの発光効率と、発光部ELPに流れるドレイン電流Idsの値との積に応じた輝度で発光する。従って、映像信号電圧VSigの値は、基本的には、映像信号VDSigの階調値の平方根に比例するように設定されている。
【0091】
図5の(A)は、初期状態の表示素子10における映像信号電圧VSigの値と表示素子10の輝度の値LUとの関係を説明するためのグラフである。
【0092】
図5の(A)の横軸は、映像信号電圧VSigの値である。尚、横軸には、対応する映像信号VDSigの階調値を[]で囲んで記載した。後述する図5(B)においても同様である。また、他の図面においても、[]で囲んだ数値は階調値を表す。
【0093】
上述した係数「k」と係数「μ」と発光部ELPの初期状態の発光効率等とによって定まる係数をαIniと表せば、輝度LUは、
LU=(VDSig−ΔD)×αIni
といった式で表すことができる。ここで、「ΔD」は、所謂黒レベルの階調であり、表示装置1の仕様や設計によって定まる。尚、VDSig<ΔDの場合には、式においてLUの値が負となるが、この場合にはLUは「0」として扱う。
【0094】
説明の都合上、ここでは、ΔDの値は0であるとする。この場合には、
LU=VDSig×αIni
と表すことができる。例えば、αIni=1.2であるとすれば、初期状態の表示装置1において階調値500の映像信号VDSigに基づいて画像を表示する場合、画像の輝度は概ね600cd/m2となる。尚、実施例1にあっては、表示装置1の仕様上の輝度の最大値は、255×αIniである。
【0095】
次いで、表示素子10の黒レベルを示す階調値の経時変化と、それに起因する焼き付きを軽減する方法の原理について説明する。
【0096】
一般に、表示素子10を構成する発光部ELPやトランジスタTRD,TRWの特性は、表示装置1の使用履歴に応じて経時変化を示す。例えば、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの値は、表示素子10の動作時間や動作時の映像信号VDSigの階調値によって影響を受け、定性的には徐々にその値が大きくなるといった経時変化を示す。
【0097】
ブートストラップ動作が理想的に起こるのであれば、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの経時変化が、ドレイン電流Idsの値に影響を与えるといったことはない。しかしながら、実際には、駆動トランジスタTRDの寄生容量等の影響により、ブートストラップ動作における第1ノードND1の電位の上昇量は、第2ノードND2の電位の上昇量よりも小さくなる。換言すれば、ブートストラップ動作時の第2ノードND2の電位の上昇量が大きくなるほど、駆動トランジスタTRDのソース領域に対するゲート電極の電圧Vgsの値は小さくなる。
【0098】
そして、上述したように、[期間−TP(2)8]にあっては、第2ノードND2の電位は発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを超える電位まで上昇する。従って、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの値が経時変化により大きくなるほど、[期間−TP(2)8]における第2ノードND2の電位の上昇量は大きくなり、駆動トランジスタTRDのソース領域に対するゲート電極の電圧Vgsの値は小さくなる。閾値電圧Vth-ELの経時変化に起因する電圧Vgsの変化量を符号ΔVBSで表せば、[期間−TP(2)8]における電圧Vgsは、以下の式(4’)のように表すことができる。
【0099】
gs≒VSig_m−(VOfs−Vth)−ΔV−ΔVBS (4’)
【0100】
従って、この場合には、式(5’)は、以下の式(5”)のように変形することができる。
【0101】
ds=k・μ・(VSig_m−ΔVBS2 (5”)
【0102】
図5の(B)は、経時変化を生じた表示素子10における映像信号電圧VSigの値と表示素子10の輝度の値との関係を説明するためのグラフである。
【0103】
図5の(B)に示すように、経時変化後の特性カーブは、初期特性の特性カーブを、横方向に電圧ΔVBSシフトしたカーブとなる。この特性カーブから明らかなように、黒レベルを示す映像信号電圧VSigの値は、ΔVBSの値だけシフトする。電圧ΔVBSに対応する階調値を符号ΔVDBSで表せば、表示素子10の黒レベルを示す階調値は、ΔVDBSシフトする。即ち、ΔVDBSは黒レベル経時変化量である。
【0104】
従って、表示素子10の黒レベルを示す階調値の経時変化に起因する焼き付きを軽減するには、基本的には、映像信号VDSigの階調値に、上述したΔVDBSに相当する値の黒レベルシフト量を加算して、表示素子10を動作させればよい。
【0105】
以上、表示素子10の黒レベルを示す階調値の経時変化に起因する焼き付きを軽減する方法の原理について説明した。表示素子10の黒レベルを示す階調値の経時変化は、表示装置1に表示する画像の輝度及び動作時間の履歴によっても左右される。表示素子10の黒レベルを示す階調値の経時変化の程度は、表示素子10毎に異なる。従って、表示装置1の焼き付きを軽減するためには、表示素子10毎に映像信号VDSigの階調値を制御するといったことが必要になる。
【0106】
図2を参照して、表示装置1における焼き付きを軽減する方法の概略を説明する。各表示素子10に対応した黒レベルシフト量を、累積基準動作時間値保持部114に保持されたデータに基づいて基準カーブ格納部116を参照して計算する。そして、その黒レベルシフト量に基づいて入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力する。
【0107】
ここで、累積基準動作時間値保持部114には、基準動作時間値計算部112が計算した基準動作時間の値を累積した値が保持される。輝度補正部110は、表示素子10が各階調値の映像信号VDSigに基づいて動作するときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化の速度と、表示素子10が所定の基準階調値の映像信号VDSigに基づいて動作するときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化の速度との比を動作時間換算係数テーブルとして格納した動作時間換算係数格納部113を備えている。基準動作時間値計算部112は、動作時間換算係数格納部113の動作時間換算係数テーブルを参照し、映像信号VDSigの階調値に対応した動作時間換算係数の値を求め、単位時間の値に動作時間換算係数の値を乗算することによって、基準動作時間の値を計算する。
【0108】
以下、表示装置1における焼き付きを軽減する方法について詳しく説明する。
【0109】
先ず、図6乃至図13を参照して、基準動作時間の計算方法について説明する。その後、図2、図14乃至図18を参照して、表示装置1の焼き付きを軽減する駆動方法について説明する。
【0110】
図6は、種々の階調値の映像信号VDSigに基づいて表示素子10を動作させたときの累積動作時間tAOPと、経時変化による表示素子10の黒レベル経時変化量との関係を説明するための模式的なグラフである。
【0111】
図6のグラフについて具体的に説明する。初期状態の表示装置1を用いて、表示領域に含まれる第1番目乃至第6番目の領域を、それぞれ、階調値50,100,200,300,400,500の映像信号VDSigに基づいて動作させ、一定時間(例えば1時間)毎に、黒レベル経時変化量ΔVDBSを測定した。尚、黒レベル経時変化量ΔVDBSは、映像信号VDSigの階調値を変えて確認したが、この作業に要する時間は全体の動作時間に比べて充分短い。従って、表示装置1は実質的に継続して階調値50,100,200,300,400,500の映像信号VDSigに基づいて動作したといえる。
【0112】
そして、累積動作時間tAOPの長さを横軸の値とし、区分した各領域における表示素子10について、黒レベル経時変化量ΔVDBSの値を縦軸の値としてプロットした。尚、映像信号VDSigの階調値を上述した各階調値に保持する必要があるため、図1に示す輝度補正部110は動作させずに、上述した各階調値の映像信号VDSigを別回路で生成して信号出力回路102に供給して測定を行った。
【0113】
図6に示すグラフから明らかなように、映像信号VDSigの階調値が大きいほど、黒レベル経時変化量ΔVDBSは大きくなる。同様に、累積動作時間tAOPが長くなるほど、黒レベル経時変化量ΔVDBSは大きくなる。
【0114】
測定した結果によれば、図6に示すグラフは、基本的には、累積動作時間tAOPを変数とする対数関数のグラフで近似できることが分かった。逆に言えば、表示素子10は、このような条件を満たすような経時変化をしていることが認められた。
【0115】
具体的には、階調値50のときにはΔVDBS=a50・ln(tAOP+1)、階調値100のときにはΔVDBS=a100・ln(tAOP+1)、階調値200のときにはΔVDBS=a200・ln(tAOP+1)といった関数に基づいて、黒レベル経時変化量ΔVDBSを計算することができる。同様に、階調値300のときにはΔVDBS=a300・ln(tAOP+1)、階調値400のときにはΔVDBS=a400・ln(tAOP+1)、階調値500のときにはΔVDBS=a500・ln(tAOP+1)といった関数に基づいて、黒レベル経時変化量ΔVDBSを計算することができる。尚、図示の都合上、図6では階調値100,200,300の関数の記載を省略した。
【0116】
ここで、係数「a50」乃至「a500」は正値であり、その値は実測によって定まる。これらの係数は、a50<a100<a200<a300<a400<a500といった大小関係にある。
【0117】
従って、表示素子10における黒レベル経時変化量は、表示素子10が動作するときの映像信号VDSigの階調値と、その動作時間の長さとによって左右される。映像信号VDSigの階調値を変えて表示素子10を動作させたときの経時変化について、図7を参照して説明する。
【0118】
図7は、映像信号VDSigの階調値を変えながら表示素子10を動作させたときの、動作時間と経時変化による表示素子10の黒レベル経時変化量との関係を説明するための模式的なグラフである。
【0119】
具体的には、図7に示すグラフは、初期状態の表示装置1を用いて、動作時間DT1の間は階調値50、動作時間DT2の間は階調値100、動作時間DT3の間は階調値200の映像信号VDSigに基づいて表示素子10を動作さたときのデータに基づいて、累積動作時間の長さを横軸の値とし、表示素子10における黒レベル経時変化量ΔVDBSの値をプロットしたグラフである。尚、図6において説明したと同様に、図1に示す輝度補正部110は動作させずに、上述した各階調値の映像信号VDSigを別回路で生成して信号出力回路102に供給して測定を行った。
【0120】
図7において、符号PT1,PT2,PT3は、その時点における累積動作時間の値を示す。時間PT3は、動作時間DT1乃至動作時間DT3の長さの総和となる。
【0121】
図7において、時間PT1,PT2,PT3に対応する縦軸の値を、それぞれ、RA(PT1),RA(PT2),RA(PT3)と表す。また、図7に示すグラフについて、時間0から時間PT1までの部分、時間PT1から時間PT2までの部分、時間PT2から時間PT3までの部分を、符号CL1,CL2,CL3で表す。図7に示すグラフは、図6に示すグラフの一部を適宜繋げたものとして説明することができる。
【0122】
図8は、図7において符号CL1,CL2,CL3で表したグラフの部分と、図6に示すグラフとの対応関係を説明するための図である。
【0123】
図8に示すように、図7の符号CL1で表すグラフの部分は、図6における階調値50のグラフにおいて、縦軸が1からRA(PT1)となるまでの部分に対応する。符号CL2で表すグラフの部分は、図6における階調値100のグラフにおいて、縦軸がRA(PT1)からRA(PT2)となるまでの部分に対応する。符号CL3で表すグラフの部分は、図6における階調値200のグラフにおいて、縦軸がRA(PT2)からRA(PT3)となるまでの部分に対応する。
【0124】
一方、図7に示す時間PT3での表示素子10の経時変化は、時間0から時間PT3’まで階調値500の映像信号VDSigに基づいて表示素子10を動作させたと仮定したときの、表示素子10の経時変化に相当する。尚、時間PT3’は、図6に示す階調値500のグラフにおいて、縦軸の値がRA(PT3)となるときの累積基準動作時間である。
【0125】
従って、図7に示す動作履歴に基づいて時間PT3’(累積基準動作時間)の値を計算することができれば、この時間PT3’の値と、図6に示す階調値500のカーブとに基づいて、図7に示す時間PT3における表示素子10の黒レベル経時変化量を求めることができる。
【0126】
累積基準動作時間PT3’は、図7に示す動作時間DT1乃至動作時間DT3の長さと、映像信号VDSigの階調値を反映した所定の係数(動作時間換算係数)とに基づいて、計算することができる。図9乃至図12を参照して、動作時間換算係数について説明する。
【0127】
図9は、図7に示す動作履歴に基づいて表示素子10を動作させたときの動作時間の値を、所定の基準階調値、即ち、階調値500の映像信号VDSigに基づいて動作させたと仮定したときの基準動作時間の値に換算する方法を説明するための模式的なグラフである。
【0128】
図9に示す基準動作時間DT1’,DT2’,DT3’は、それぞれ、図7に示す動作時間DT1,DT2,DT3を換算したものに該当する。
【0129】
上述したように、図6に示すグラフは対数関数で表される。このため、動作時間DT1,DT2,DT3の値を数学的に基準動作時間DT1’,DT2’,DT3’の値に換算する場合には、冪乗計算を行って換算する必要がある。しかしながら、冪乗計算処理の負荷は非常に重い。従って、例えば1フレーム毎に動作時間の値を基準動作時間値に換算するといった処理を行うことは困難である。
【0130】
そこで、実施例1では、図6に示すグラフを、表示素子の黒レベル階調値の経時変化の範囲に応じて応じて複数の領域に分け、各領域毎にカーブを直線で近似することによって、冪乗計算を行うことなく動作時間の値を基準動作時間値に換算する。尚、実施例1では、黒レベル経時変化量に応じて4つの領域に分けるとして説明するが、領域の分割数はこれに限るものではない。領域の分割数は、表示装置の設計に応じて適宜設定することができる。また、説明の都合上、表示装置1の実使用上の黒レベル経時変化量は、上述した範囲内に収まるものとする。
【0131】
図10は、図6に示すグラフを4つの領域に分割し、各領域毎に直線を用いて近似したグラフである。
【0132】
具体的には、黒レベル経時変化量ΔVDBSが0以上5未満、5以上10未満、10以上15未満、15以上20未満の4つの領域に分け、各領域のグラフを、領域の境界部の点同士をつなぐ直線を用いて近似した。尚、例えば、領域の中央部における微分係数を傾きとする直線を用いて近似してもよい。
【0133】
図11は、図10に示すグラフの傾きを説明するための図である。尚、図示の都合上、図10に対し縦軸及び横軸を1.5倍に拡大して表した。
【0134】
階調値が50である場合に、黒レベル経時変化量ΔVDBSが0以上5未満であるときの直線の傾きをSL[0,5)_[50]と表し、ΔVDBSが5以上10未満であるときの直線の傾きをSL[5,10)_[50]と表し、ΔVDBSが10以上15未満であるときの直線の傾きをSL[10,15)_[50]と表し、ΔVDBSが15以上20未満であるときの直線の傾きをSL[5,10)_[50]と表す。階調値が100,200,300,400,500の場合は、[]内の階調値を適宜読みかえればよい。これらの傾きは、黒レベル階調値の経時変化の速度を表す。尚、図示の都合上、図11においては、一部の傾きの記載を省略した。
【0135】
図12は、基準動作時間を計算する方法を説明するための模式図である。
【0136】
例えば、表示素子10が或る時刻tから時刻(t+Δt)までの間、階調値50の映像信号VDSigに基づいて動作したとする。時刻tにおける黒レベル経時変化量をΔVDBS(t)と表し、時刻(t+Δt)における黒レベル経時変化量をΔVDBS(t+Δt)と表す。尚、説明の都合上、0≦ΔVDBS(t),ΔVDBS(t+Δt)<5であるとする。
【0137】
階調値50の映像信号VDSigに基づいて動作した時間Δtにおける黒レベル経時変化量の変化量は、(ΔVDBS(t+Δt)−ΔVDBS(t))である。図12に示すように、この変化量は、表示素子10が階調値500の映像信号VDSigに基づいて時間Δt’の間動作したと仮定したときの変化量に等しい。時間Δtは表示素子10の動作時間に対応し、時間Δt’は基準動作時間に対応する。
【0138】
時間Δt’は、階調値50の近似直線の傾きSL[0,5)_[50]と、階調値500の近似直線の傾きSL[0,5)_[500]とを用いて、
Δt’=Δt・(SL[0,5)_[50]/SL[0,5)_[500]
といった計算で求めることができる。この(SL[0,5)_[50]/SL[0,5)_[500])は、黒レベル経時変化量が0以上5未満であるときの、階調値50における動作時間換算係数に該当する。
【0139】
同様に、例えば、階調値100における動作時間換算係数は(SL[0,5)_[100]/SL[0,5)_[500])で与えられる。即ち、黒レベル経時変化量が0以上5未満であるとき、階調値50,100,200,300,400,500における動作時間換算係数は、(SL[0,5)_[50]/SL[0,5)_[500]),(SL[0,5)_[100]/SL[0,5)_[500]),(SL[0,5)_[200]/SL[0,5)_[500]),(SL[0,5)_[300]/SL[0,5)_[500]),(SL[0,5)_[400]/SL[0,5)_[500]),(SL[0,5)_[500]/SL[0,5)_[500])で与えられる。
【0140】
そして、黒レベル経時変化量が5以上10未満であるとき、階調値50,100,200,300,400,500における動作時間換算係数は、(SL[5,10)_[50]/SL[5,10)_[500]),(SL[5,10)_[100]/SL[5,10)_[500]),(SL[5,10)_[200]/SL[5,10)_[500]),(SL[5,10)_[300]/SL[5,10)_[500]),(SL[5,10)_[400]/SL[5,10)_[500]),(SL[5,10)_[500]/SL[5,10)_[500])で与えられる。
【0141】
また、黒レベル経時変化量が10以上15未満であるとき、階調値50,100,200,300,400,500における動作時間換算係数は、(SL[10,15)_[50]/SL[10,15)_[500]),(SL[10,15)_[100]/SL[10,15)_[500]),(SL[10,15)_[200]/SL[10,15)_[500]),(SL[10,15)_[300]/SL[10,15)_[500]),(SL[10,15)_[400]/SL[10,15)_[500]),(SL[10,15)_[500]/SL[10,15)_[500])で与えられる。
【0142】
また、黒レベル経時変化量が15以上20未満であるとき、階調値50,100,200,300,400,500における動作時間換算係数は、(SL[15,20)_[50]/SL[15,20)_[500]),(SL[15,20)_[100]/SL[15,20)_[500]),(SL[15,20)_[200]/SL[15,20)_[500]),(SL[15,20)_[300]/SL[15,20)_[500]),(SL[15,20)_[400]/SL[15,20)_[500]),(SL[15,20)_[500]/SL[15,20)_[500])で与えられる。
【0143】
横軸を映像信号VDSigの階調値とし、縦軸を動作時間換算係数としてプロットすると、黒レベル経時変化量の範囲の種類分の本数のグラフが得られる。図13は、映像信号VDSigの階調値と動作時間換算係数との関係を示すグラフである。
【0144】
図13において、符号[0,5)を付したグラフは、黒レベル経時変化量が0以上5未満のときのグラフであり、符号[5,10)を付したグラフは、黒レベル経時変化量が5以上10未満のときのグラフである。同様に、符号[10,15)を付したグラフは、黒レベル経時変化量が10以上15未満のときのグラフであり、符号[15,20)を付したグラフは、黒レベル経時変化量が15以上20未満のときのグラフである。
【0145】
以上、動作時間換算係数について説明した。動作時間換算係数を用いた基準動作時間の計算方法は以下のとおりである。
【0146】
図9に示す基準動作時間DT1’は、その始期において黒レベル経時変化量が0以上5未満であるから、動作時間換算係数として(SL[0,5)_[50]/SL[0,5)_[500])を用いて、
DT1’=DT1・(SL[0,5)_[50]/SL[0,5)_[500]
といった計算で求めることができる。
【0147】
同様に、基準動作時間DT2’は、その始期において黒レベル経時変化量が5以上10未満であるから、動作時間換算係数として(SL[5,10)_[100]/SL[5,10)_[500])を用いて、
DT2’=DT2・(SL[5,10)_[100]/SL[5,10)_[500]
といった計算で求めることができる。
【0148】
また、基準動作時間DT3’は、その始期において黒レベル経時変化量が10以上15未満であるから、動作時間換算係数として(SL[10,15)_[200]/SL[10,15)_[500])を用いて、
DT3’=DT3・(SL[10,15)_[200]/SL[10,15)_[500]
といった計算で求めることができる。
【0149】
そして、累積基準動作時間PT3’は、基準動作時間DT1’,DT2’,DT3’の総和として求めることができる。
【0150】
尚、図9等にあっては、図示の都合上、動作時間DT1,DT2,DT3を1フレーム期間に対して極端に長い時間として表した。このため、図にあっては、各動作時間の前端と後端とで、黒レベル経時変化量が異なる範囲に含まれるように表されている。実際には、動作時間の長さを例えば1フレーム期間とすれば、その前後での黒レベル経時変化量の変化は僅かである。
【0151】
次いで図2、図14乃至図18を参照して、表示装置1の焼き付きを軽減する駆動方法について説明する。
【0152】
図14は、図2に示す動作時間換算係数格納部113に格納されているデータを説明するための模式的なグラフである。
【0153】
図2に示す輝度補正部110の概要については既に述べたが、動作時間換算係数格納部113には、表示素子10の黒レベル階調値の経時変化の範囲毎に対応した複数の動作時間換算係数テーブルが格納されている。具体的には、図14のグラフに示す関係を表す関数fCSC_BS1,fCSC_BS2,fCSC_BS3,fCSC_BS4がテーブルとして予め格納されている。これは、図13に示す映像信号VDSigの階調値と動作時間換算係数との関係を反映したものである。関数fCSC_BS1は黒レベルシフト量が0以上5未満のときの関係を表し、関数fCSC_BS2は黒レベルシフト量が5以上10未満のときの関係を表し、関数fCSC_BS3は黒レベルシフト量が10以上15未満のときの関係を表し、関数fCSC_BS4は黒レベルシフト量が15以上20未満のときの関係を表す。
【0154】
図15は、図2に示す累積基準動作時間値保持部114に保持されるデータを説明するための模式図である。
【0155】
上述したように、累積基準動作時間値保持部114は、各表示素子10に対応した記憶領域を持ち、書き換え可能な不揮発性の記憶装置から構成されており、累積基準動作時間値を示すデータSP(1,1)乃至SP(N,M)を保持する。
【0156】
図16は、図2に示す基準カーブ格納部116に格納されているデータを説明するための模式的なグラフである。
【0157】
基準カーブ格納部116には、図16に示す基準カーブを表す関数fREF_BS_SHIFTがテーブルとして予め格納されている。この基準カーブは、図6において階調値500であるときのカーブを表すものである。
【0158】
図18は、図2に示す黒レベルシフト量保持部115を構成する黒レベルシフト量格納部115Bに保持されるデータを説明するための模式図である。
【0159】
上述したように、黒レベルシフト量格納部115Bは、各表示素子10に対応した記憶領域を持ち、書き換え可能な不揮発性の記憶装置から構成されており、黒レベルシフト量を示すデータLC(1,1)乃至LC(N,M)を保持する。
【0160】
実施例1の駆動方法は、輝度補正部110の動作に基づいて、入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力することによって、表示パネル20が画像を表示する際の表示素子10の輝度を補正する輝度補正ステップを有し、
輝度補正ステップは、
表示素子10が映像信号VDSigに基づいて所定の単位時間の間動作したときの黒レベル階調値の経時変化と、表示素子10が所定の基準階調値の映像信号VDSigに基づいて動作したと仮定したときの表示素子10の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する基準動作時間値計算ステップ、
基準動作時間の値を表示素子10毎に累積した累積基準動作時間値を保持する累積基準動作時間値保持ステップ、
累積基準動作時間値と、表示素子10が所定の基準階調値の映像信号VDSigに基づいて動作したときの表示素子10の動作時間と表示素子10の黒レベル階調値の経時変化との関係を示す基準カーブとを参照して表示素子10の黒レベル階調値の経時変化を補償するための黒レベルシフト量を計算し、各表示素子10に対応した黒レベルシフト量を保持する黒レベルシフト量保持ステップ、及び、
黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子10に対応した入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力する映像信号生成ステップ、
を備えている。
【0161】
ここでは、表示装置1の初期状態から累積して第1番目乃至第(Q−1)番目のフレーム表示が終了し、第Q番目(但し、Qは2以上の自然数)のフレーム表示を行うための書き込み処理が行われる際の、第(n,m)番目の表示素子10に関する輝度補正ステップについて説明する。
【0162】
尚、第(n,m)番目の表示素子10の第q番目(但し、q=1,2・・・,Q)のフレームにおける入力信号vDSig及び映像信号VDSigを、vDSig(n,m)_q及びVDSig(n,m)_qと表し、第q番目のフレーム表示が表示した時点での、第(n,m)番目の表示素子10に対応する累積基準動作時間値を示すデータをSP(n,m)_qと表し、第(n,m)番目の表示素子10に対応する黒レベルシフト量を示すデータをLC(n,m)_qと表す。また、所謂1フレーム期間が占める時間を符号TFで表す。尚、初期状態にあっては、データSP(1,1)乃至SP(N,M)、及び、データLC(1,1)乃至LC(N,M)には初期値として予め「0」が格納されている。
【0163】
第(Q−1)番目の表示フレームにおいて、図2に示す基準動作時間値計算部112は、映像信号VDSig(n,m)_Q-1、及び、黒レベルシフト量格納部のデータLC(n,m)_Q-2に基づいて、基準動作時間値計算ステップを行う。
【0164】
具体的には、基準動作時間値計算部112は、黒レベルシフト量保持部115に保持された黒レベルシフト量LC(n,m)_Q-2の値に対応して動作時間換算係数テーブルを選択して参照する。具体的には、LC(n,m)_Q-2の値が0以上5未満のときには関数fCSC_BS1を選択し、LC(n,m)_Q-2の値が5以上10未満のときには関数fCSC_BS2を選択し、LC(n,m)_Q-2の値が10以上15未満のときには関数fCSC_BS3を選択し、LC(n,m)_Q-2の値が15以上20未満のときには関数fCSC_BS4を選択する。そして、
第(Q−1)番目の表示フレームにおける基準動作時間=TF・fCSC_BS(VDSig(n,m)_Q-1
といった計算を行う。尚、記載の都合上、上式においては選択した関数を単にfCSC_BSとして表した。
【0165】
そして、累積基準動作時間値保持部114は、基準動作時間値計算部112が計算した基準動作時間の値を表示素子10毎に累積した累積基準動作時間値を保持する累積基準動作時間値保持ステップを行う。
【0166】
具体的には、第(Q−1)番目の表示フレームにおいて、累積基準動作時間値保持部114は、直前のデータSP(n,m)_Q-2に対し、更に、上述した第(Q−1)番目の表示フレームにおける基準動作時間を加算する。具体的には、
SP(n,m)_Q-1=SP(n,m)_Q-2+TF・fCSC_BS(VDSig(n,m)_Q-1
といった動作を行う。これにより、累積基準動作時間値保持部114には、基準動作時間値計算部112が計算した基準動作時間の値を表示素子10毎に累積した累積基準動作時間値が保持される。
【0167】
そして、黒レベルシフト量保持部115は、各表示素子10に対応した黒レベルシフト量を保持する黒レベルシフト量保持ステップを行う。
【0168】
図17は、図2に示す黒レベルシフト量保持部115を構成する黒レベルシフト量計算部115Aの動作を説明するための模式的なグラフである。
【0169】
具体的には、黒レベルシフト量計算部115Aは、累積基準動作時間値保持部114に保持されたデータSP(n,m)_Q-1に基づいて基準カーブ格納部116を参照し(図17参照)、関数値fREF_BS_SHIFT(SP(n,m)_Q-1)を求める。そして、黒レベルシフト量ΔVDBS_SHIFTとして、関数値fREF_BS_SHIFT(SP(n,m)_Q-1)を、黒レベルシフト量格納部115BのデータLC(n,m)_Q-1に保持する。
【0170】
そして、映像信号生成部111は、黒レベルシフト量ΔVDBS_SHIFTに基づいて、各表示素子10に対応した入力信号vDSigの階調値を補正して映像信号VDSigとして出力する映像信号生成ステップを行う。
【0171】
即ち、第Q番目のフレームの直前には、累積基準動作時間値保持部114には、データSP(1,1)_Q-1乃至SP(N,M)_Q-1が保持され、黒レベルシフト量保持部115を構成する黒レベルシフト量格納部115Bには、データLC(1,1)_Q-1乃至LC(N,M)_Q-1が保持されている。
【0172】
映像信号生成部111は、入力信号vDSig(n,m)_Qと黒レベルシフト量格納部115BのデータLC(n,m)_Q-1とを参照し、
映像信号VDSig(n,m)_Q=vDSig(n,m)_Q+LC(n,m)_Q-1
といった計算を行い、生成した映像信号VDSig(n,m)_Qを信号出力回路102に供給する。
【0173】
そして、第Q番目のフレーム表示が行われる。その後、第(Q+1)番目以降のフレームにおいても、上述した動作が繰り返される。
【0174】
実施例1の表示装置1にあっては、動作時間換算係数格納部113を参照して基準動作時間の値を算出し、その値を累積基準動作時間値として保持し、これに基づいて基準カーブ格納部116を参照して黒レベルシフト量を求める。基準動作時間の値には、映像信号VDSigの階調値が反映されている。また、基準動作時間の値は、単純な乗算処理によって求めることができるので、高速な処理を行うことができる。
【0175】
基準動作時間の値を累積した累積基準動作時間値には、映像信号VDSigの階調値の履歴が反映されている。これにより、黒レベルを示す階調値の経時変化に起因する焼き付きが軽減され、良好な画像を表示することができる。
【0176】
以上の説明において、表示装置1はモノクロ表示としたが、カラー表示の表示装置であってもよい。この場合において、例えば、表示素子10の経時変化の傾向が発光色毎に異なるといった場合には、図2に示す動作時間換算係数格納部113及び基準カーブ格納部116を、発光色毎に別個の構成としておけばよい。
【0177】
以上、表示装置1における焼き付きの軽減について詳しく説明した。
【0178】
次いで、第(n,m)番目の表示素子10についての、黒レベルを示す階調値の経時変化の補正以外の動作全般の詳細を、図19、図20の(A)及び(B)、図21の(A)及び(B)、図22の(A)及び(B)、図23の(A)及び(B)、図24の(A)及び(B)、並びに、図25を参照して詳細に説明する。尚、これらの図面や以下の説明においては、記載の都合上、第(n,m)番目の表示素子10に対応する映像信号電圧VSig(n,m)を、VSig_mと表す。
【0179】
[期間−TP(2)-1](図19、図20の(A)参照)
この[期間−TP(2)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、前回の各種の処理完了後に第(n,m)番目の表示素子10が発光状態にある期間である。即ち、第(n,m)番目の画素を構成する表示素子10における発光部ELPには、後述する式(5’)に基づくドレイン電流Ids’が流れており、第(n,m)番目の画素を構成する表示素子10の輝度は、係るドレイン電流Ids’に対応した値である。ここで、書込みトランジスタTRWは非導通状態であり、駆動トランジスタTRDは導通状態である。第(n,m)番目の表示素子10の発光状態は、第(m+m’)行目に配列された表示素子10の水平走査期間の開始直前まで継続される。
【0180】
上述したように、各水平走査期間に対応して、データ線DTLnには、基準電圧VOfsと映像信号電圧VSigとが供給される。しかしながら、書込みトランジスタTRWは非導通状態であるので、[期間−TP(2)-1]においてデータ線DTLnの電位(電圧)が変化しても、第1ノードND1と第2ノードND2の電位は変化しない(実際には、寄生容量等の静電結合による電位変化が生じ得るが、通常、これらは無視することができる)。後述する[期間−TP(2)0]においても同様である。
【0181】
図19に示す[期間−TP(2)0]〜[期間−TP(2)6]は、前回の各種の処理完了後の発光状態が終了した後から、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。[期間−TP(2)0]〜[期間−TP(2)7]において、第(n,m)番目の表示素子10は原則として非発光状態にある。図19に示すように、[期間−TP(2)5]、[期間−TP(2)6]及び[期間−TP(2)7]は第m番目の水平走査期間Hmに包含される。
【0182】
また、[期間−TP(2)3]及び[期間−TP(2)5]において、走査線SCLからの走査信号に基づいて導通状態とされた書込みトランジスタTRWを介してデータ線DTLnから駆動トランジスタTRDのゲート電極に基準電圧VOfsを印加した状態で、給電線PS1から駆動電圧VCC-Hを駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に印加し、以て、駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域の電位を基準電圧VOfsから駆動トランジスタTRDの閾値電圧を減じた電位に向かって近づける閾値電圧キャンセル処理を行う。
【0183】
実施例1においては、閾値電圧キャンセル処理を複数の水平走査期間、より具体的には、第(m−1)番目の水平走査期間Hm-1と第m番目の水平走査期間Hmにおいて行うとして説明するが、これに限定するものではない。
【0184】
また、[期間−TP(2)1]において、基準電圧VOfsとの差が駆動トランジスタTRDの閾値電圧を超える初期化電圧VCC-Lを給電線PS1から駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に印加し、走査線SCLmからの走査信号に基づいて導通状態とされた書込みトランジスタTRWを介してデータ線DTLnから駆動トランジスタTRDのゲート電極に基準電圧VOfsを印加し、以て、駆動トランジスタTRDのゲート電極の電位と駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域の電位とを初期化する。
【0185】
図19において、[期間−TP(2)1]は、第(m−2)番目の水平走査期間Hm-2における基準電圧期間(データ線DTLに基準電圧VOfsが印加される期間)に一致し、[期間−TP(2)3]は、第(m−1)番目の水平走査期間Hm-1における基準電圧期間に一致し、[期間−TP(2)5]は、第m番目の水平走査期間Hmにおける基準電圧期間に一致するとする。
【0186】
引き続き、図19等を参照して、[期間−TP(2)0]〜[期間−TP(2)8]の各期間の動作について説明する。
【0187】
[期間−TP(2)0](図19、図20の(B)参照)
この[期間−TP(2)0]は、例えば、前の表示フレームから現表示フレームにおける動作である。即ち、この[期間−TP(2)0]は、前の表示フレームにおける第(m+m’)番目の水平走査期間Hm+m'の始期から、現表示フレームにおける第(m−3)番目の水平走査期間の終期までの期間である。そして、この[期間−TP(2)0]において、第(n,m)番目の表示素子10は、原則として非発光状態にある。[期間−TP(2)0]の始期において、電源部100から給電線PS1mに供給する電圧を駆動電圧VCC-Hから初期化電圧VCC-Lに切り替える。その結果、第2ノードND2の電位はVCC-Lまで低下し、発光部ELPのアノード電極とカソード電極との間に逆方向電圧が印加され、発光部ELPは非発光状態となる。また、第2ノードND2の電位低下に倣うように、浮遊状態の第1ノードND1(駆動トランジスタTRDのゲート電極)の電位も低下する。
【0188】
[期間−TP(2)1](図19、図21の(A)参照)
そして、現表示フレームにおける第(m−2)番目の水平走査期間Hm-2が開始する。この[期間−TP(2)1]において、走査線SCLmをハイレベルとして表示素子10の書込みトランジスタTRWを導通状態とする。信号出力回路102からデータ線DTLnに供給される電圧は基準電圧VOfsである。その結果、第1ノードND1の電位は、VOfs(0ボルト)となる。電源部100の動作に基づき、給電線PS1mから初期化電圧VCC-Lを第2ノードND2に印加しているので、第2ノードND2の電位はVCC-L(−10ボルト)を保持する。
【0189】
第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差は10ボルトであり、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthは3ボルトであるので、駆動トランジスタTRDは導通状態である。尚、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差は−10ボルトであり、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを超えない。これにより、第1ノードND1の電位及び第2ノードND2の電位が初期化される。
【0190】
[期間−TP(2)2](図19、図21の(B)参照)
この[期間−TP(2)2]において走査線SCLmをローレベルとする。表示素子10の書込みトランジスタTRWは非導通状態となる。第1ノードND1及び第2ノードND2の電位は、基本的には従前の状態を維持する。
【0191】
[期間−TP(2)3](図19、図22の(A)参照)
この[期間−TP(2)3]において、第1回目の閾値電圧キャンセル処理を行う。走査線SCLmをハイレベルとし表示素子10の書込みトランジスタTRWを導通状態とする。信号出力回路102からデータ線DTLnに供給される電圧は基準電圧VOfsである。第1ノードND1の電位は、VOfs(0ボルト)である。
【0192】
次いで、電源部100から給電線PS1mに供給される電圧を、電圧VCC-Lから駆動電圧VCC-Hに切り替える。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs=0ボルトを維持)、基準電圧VOfsから駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、第2ノードND2の電位が上昇する。
【0193】
この[期間−TP(2)3]が充分長ければ、駆動トランジスタTRDのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差がVthに達し、駆動トランジスタTRDは非導通状態となる。即ち、第2ノードND2の電位が(VOfs−Vth)に近づき、最終的に(VOfs−Vth)となる。しかしながら、図19に示す例では、[期間−TP(2)3]の長さは、第2ノードND2の電位を充分変化させるには足りない長さであり、[期間−TP(2)3]の終期において、第2ノードND2の電位は、VCC-L<V1<(VOfs−Vth)という関係を満たす或る電位V1に達する。
【0194】
[期間−TP(2)4](図19、図22の(B)参照)
この[期間−TP(2)4]においては、走査線SCLmをローレベルとし、表示素子10の書込みトランジスタTRWは非導通状態となる。その結果、第1ノードND1は浮遊状態となる。
【0195】
電源部100から駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に駆動電圧VCC-Hが印加されているので、第2ノードND2の電位は、電位V1から或る電位V2に上昇する。一方、駆動トランジスタTRDのゲート電極は浮遊状態であり、容量部C1が存在するが故に、ブートストラップ動作が駆動トランジスタTRDのゲート電極に生ずる。従って、第1ノードND1の電位は、第2ノードND2の電位変化に倣って上昇する。
【0196】
次の[期間−TP(2)5]における動作の前提として、[期間−TP(2)5]の始期において、第2ノードND2の電位が(VOfs−Vth)よりも低いことが必要となる。[期間−TP(2)4]の長さは、基本的には、V2<(VOfs-L−Vth)の条件を満たすように決定されている。
【0197】
[期間−TP(2)5](図19、図23の(A)及び(B)参照)
この[期間−TP(2)5]において、第2回目の閾値電圧キャンセル処理を行う。走査線SCLmからの走査信号に基づいて、表示素子10の書込みトランジスタTRWを導通状態とする。信号出力回路102からデータ線DTLnに供給される電圧は基準電圧VOfsである。第1ノードND1の電位は、ブートストラップ動作によって上昇した電位から、再度VOfs(0ボルト)となる(図23の(A)参照)。
【0198】
ここで、容量部C1の値を値c1とし、発光部ELPの容量CELの値を値cELとする。そして、駆動トランジスタTRDのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量の値をcgsとする。第1ノードND1と第2ノードND2との間の容量値を符号cAで表せば、cA=c1+cgsである。また、第2ノードND2と第2の給電線PS2との間の容量値を符号cBと表せば、cB=cELである。尚、発光部ELPの両端に、追加の容量部が並列に接続されている構成であってもよいが、その場合には、cBには更に追加の容量部の容量値が加算される。
【0199】
第1ノードND1の電位が変化すると、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位も変化する。即ち、第1ノードND1の電位の変化分に基づく電荷が、第1ノードND1と第2ノードND2との間の容量値と、第2ノードND2と第2の給電線PS2との間の容量値に応じて、振り分けられる。然るに、値cb(=cEL)が、値cA(=c1+cgs)と比較して充分に大きな値であれば、第2ノードND2の電位の変化は小さい。そして、一般に、発光部ELPの容量CELの値cELは、容量部C1の値c1及び駆動トランジスタTRDの寄生容量の値cgsよりも大きい。以下、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化は考慮せずに説明を行う。尚、図19に示した駆動のタイミングチャートにおいては、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮せずに示した。
【0200】
電源部100から駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に駆動電圧VCC-Hが印加されているので、基準電圧VOfsから駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、第2ノードND2の電位は、電位V2から上昇し、基準電圧VOfsから駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって変化する。そして、駆動トランジスタTRDのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTRDが非導通状態となる(図23の(B)参照)。この状態にあっては、第2ノードND2の電位は、概ね(VOfs−Vth)である。ここで、以下の式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0201】
(VOfs−Vth)<(Vth-EL+VCat) (2)
【0202】
この[期間−TP(2)5]にあっては、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vth、及び、基準電圧VOfsのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。[期間−TP(2)5]の終期において、走査線SCLmからの走査信号に基づいて、書込みトランジスタTRWを導通状態から非導通状態とする。
【0203】
[期間−TP(2)6](図19、図24の(A)参照)
書込みトランジスタTRWの非導通状態を維持した状態で、信号出力回路102からデータ線DTLnの一端に基準電圧VOfsに替えて映像信号電圧VSig_mが供給される。[期間−TP(2)5]において駆動トランジスタTRDが非導通状態に達しているとすれば、実質上、第1ノードND1と第2ノードND2の電位は変化しない(実際には、寄生容量等の静電結合による電位変化が生じ得るが、通常、これらは無視することができる)。尚、[期間−TP(2)5]で行う閾値電圧キャンセル処理において駆動トランジスタTRDが非導通状態に達していない場合には、[期間−TP(2)6]においてブートストラップ動作が生じ、第1ノードND1と第2ノードND2の電位は多少上昇する。
【0204】
[期間−TP(2)7](図19、図24の(B)参照)
この[期間−TP(2)7]において、走査線SCLmの走査信号に基づいて、表示素子10の書込みトランジスタTRWを導通状態とする。データ線DTLnから書込みトランジスタTRWのゲート電極に映像信号電圧VSig_mを印加する。
【0205】
上述した書込み処理にあっては、駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域には電源部100から駆動電圧VCC-Hが印加している状態で、駆動トランジスタTRDのゲート電極に映像信号電圧VSigを印加する。このため、図19に示すように、表示素子10にあっては[期間−TP(2)7]において第2ノードND2の電位が変化する。具体的には、第2ノードND2の電位が上昇する。この電位の上昇量を符号ΔVで表す。
【0206】
駆動トランジスタTRDのゲート電極(第1ノードND1)の電位をVg、駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域(第2ノードND2)の電位をVsとしたとき、上述した第2ノードND2の電位の上昇を考慮しなければ、Vgの値、Vsの値は以下のとおりとなる。第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTRDのゲート電極とソース領域として働く他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、以下の式(3)で表すことができる。
【0207】
g =VSig_m
s ≒VOfs−Vth
gs≒VSig_m−(VOfs−Vth) (3)
【0208】
即ち、駆動トランジスタTRDに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号電圧VSig_m、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vth、及び、基準電圧VOfsのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0209】
次いで、上述した第2ノードND2の電位の上昇量(ΔV)について説明する。上述した実施例1の駆動方法にあっては、表示素子10の駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に駆動電圧VCC-Hを印加している状態で書込み処理を行う。これにより、表示素子10の駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域の電位を変化させる移動度補正処理が併せて行われる。
【0210】
駆動トランジスタTRDを薄膜トランジスタ等から作製した場合、トランジスタ間で移動度μにばらつきが生ずることは避け難い。従って、移動度μに差異がある複数の駆動トランジスタTRDのゲート電極に同じ値の映像信号電圧VSigを印加したとしても、移動度μの大きい駆動トランジスタTRDを流れるドレイン電流Idsと、移動度μの小さい駆動トランジスタTRDを流れるドレイン電流Idsとの間に、差異が生じてしまう。そして、このような差異が生ずると、表示装置1の画面の均一性(ユニフォーミティ)が損なわれてしまう。
【0211】
上述した駆動方法にあっては、駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域には電源部100から駆動電圧VCC-Hが印加された状態で、駆動トランジスタTRDのゲート電極に映像信号電圧VSigが印加される。このため、図19に示すように、書込み処理において第2ノードND2の電位が上昇する。駆動トランジスタTRDの移動度μの値が大きい場合、駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域における電位(即ち、第2ノードND2の電位)の上昇量ΔV(電位補正値)は大きくなる。逆に、駆動トランジスタTRDの移動度μの値が小さい場合、駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域における電位の上昇量ΔVは小さくなる。ここで、駆動トランジスタTRDのゲート電極とソース領域として働く他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、式(3)から以下の式(4)のように変形される。
【0212】
gs≒VSig_m−(VOfs−Vth)−ΔV (4)
【0213】
尚、映像信号電圧VSigの書込みを行う走査信号の期間の長さは、表示素子10や表示装置1の設計に応じて決定すればよい。また、このときの駆動トランジスタTRDの他方のソース/ドレイン領域における電位(VOfs−Vth+ΔV)が以下の式(2’)を満足するように、走査信号の期間の長さは決定されているとする。
【0214】
表示素子10にあっては、[期間−TP(2)7]において発光部ELPが発光することはない。この移動度補正処理によって、係数k(≡(1/2)・(W/L)・Cox)のばらつきの補正も同時に行われる。
【0215】
(VOfs−Vth+ΔV)<(Vth-EL+VCat) (2’)
【0216】
[期間−TP(2)8](図19、及び、図25参照)
駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に電源部100から駆動電圧VCC-Hが印加された状態を維持する。表示素子10にあっては、書込み処理によって容量部C1に映像信号電圧VSig_mに応じた電圧が保持されている。走査線からの走査信号は終了しているので、書込みトランジスタTRWは非導通状態となる。従って、映像信号電圧VSig_mの駆動トランジスタTRDのゲート電極への印加が停止されることによって、書込み処理によって容量部C1に保持された電圧の値に応じた電流が駆動トランジスタTRDを介して発光部ELPに流れて発光部ELPが発光する。
【0217】
表示素子10の動作について、より具体的に説明する。駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域に電源部100から駆動電圧VCC-Hが印加された状態を維持しており、第1ノードND1は、データ線DTLnから電気的に切り離されている。従って、以上の結果として、第2ノードND2の電位は上昇する。
【0218】
ここで、上述したとおり、駆動トランジスタTRDのゲート電極は浮遊状態にあり、しかも、容量部C1が存在するが故に、所謂ブートストラップ回路におけると同様の現象が駆動トランジスタTRDのゲート電極に生じ、第1ノードND1の電位も上昇する。その結果、駆動トランジスタTRDのゲート電極とソース領域として働く他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、式(4)の値を保持する。
【0219】
また、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を超えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、駆動トランジスタTRDのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsであるので、式(1)で表すことができる。ここで、式(1)と式(4)から、式(1)は、以下の式(5)のように変形することができる。
【0220】
ds=k・μ・(VSig_m−VOfs−ΔV)2 (5)
【0221】
従って、発光部ELPを流れる電流Idsは、基準電圧VOfsを0ボルトに設定したとした場合、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号電圧VSig_mの値から、駆動トランジスタTRDの移動度μに起因した電位補正値ΔVの値を減じた値の2乗に比例する。云い換えれば、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTRDの閾値電圧Vthの影響を受けない。そして、第(n,m)番目を構成する表示素子10の輝度は、係る電流Idsに対応した値である。
【0222】
しかも、移動度μの大きな駆動トランジスタTRDほど電位補正値ΔVが大きくなるので、式(4)の左辺のVgsの値が小さくなる。従って、式(5)において、移動度μの値が大きくとも、(VSig_m−VOfs−ΔV)2の値が小さくなる結果、駆動トランジスタTRDの移動度μのばらつき(更には、kのばらつき)に起因するドレイン電流Idsのばらつきを補正することができる。これにより、移動度μのばらつき(更には、kのばらつき)に起因する発光部ELPの輝度のばらつきを補正することができる。
【0223】
そして、発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この第(m+m’−1)番目の水平走査期間の終期は、[期間−TP(2)-1]の終期に相当する。ここで、「m’」は、1<m’<Mの関係を満たし、表示装置1において所定の値である。換言すれば、発光部ELPは、[期間−TP(2)8]の始期から第(m+m’)番目の水平走査期間Hm+m'の直前まで駆動され、この期間が発光期間となる。
【0224】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した表示装置1の構成や構造、表示装置1の製造方法の工程、表示装置1の駆動方法の工程は例示であり、適宜変更することができる。
【0225】
例えば、実施例1においては、駆動トランジスタTRDがnチャネル型であるとして説明した。駆動トランジスタTRDをpチャネル型トランジスタとする場合には、発光部ELPのアノード電極とカソード電極とを入れ替えた結線をすればよい。尚、この構成にあってはドレイン電流の流れる向きが変わるので、給電線PS1等に供給される電圧の値等を適宜変更すればよい。
【0226】
また、図26に示すように、表示素子10を構成する駆動回路11が、第1ノードND1に接続されたトランジスタ(第1トランジスタTR1)を備えている構成であってもよい。第1トランジスタTR1においては、一方のソース/ドレイン領域は、基準電圧VOfsが印加され、他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードND1に接続されている。第1トランジスタ制御線AZ1を介して第1トランジスタ制御回路103からの制御信号が第1トランジスタTR1のゲート電極に印加され、第1トランジスタTR1の導通状態/非導通状態を制御する。これにより、第1ノードND1の電位を設定することができる。
【0227】
更には、表示素子10を構成する駆動回路11が、上述した第1トランジスタTR1に加えて別のトランジスタを備えていてもよい。図27に、第2トランジスタTR2、第3トランジスタTR3を備えた構成を示す。第2トランジスタTR2においては、一方のソース/ドレイン領域は、初期化電圧VCC-Lが印加され、他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードND2に接続されている。第2トランジスタ制御線AZ2を介して第2トランジスタ制御回路104からの制御信号が第2トランジスタTR2のゲート電極に印加され、第2トランジスタTR1の導通状態/非導通状態を制御する。これにより、第2ノードND2の電位を初期化することができる。第3トランジスタTR3は、駆動トランジスタTRDの一方のソース/ドレイン領域と給電線PS1との間に接続されており、第3トランジスタ制御線CLを介して第3トランジスタ制御回路105からの制御信号が第3トランジスタTR3のゲート電極に印加される。
【符号の説明】
【0228】
TRW・・・書込みトランジスタ、TRD・・・駆動トランジスタ、TR1・・・第1トランジスタ、TR2・・・第2トランジスタ、TR3・・・第3トランジスタ、C1・・・容量部、ELP・・・有機エレクトロルミネッセンス発光部、CEL・・・発光部ELPの容量、ND1・・・第1ノード、ND2・・・第2ノード、SCL・・・走査線、DTL・・・データ線、PS1・・・給電線、PS2・・・第2の給電線、AZ1・・・第1トランジスタ制御線、AZ2・・・第2トランジスタ制御線、CL・・・第3トランジスタ制御線、1・・・表示装置、10・・・表示素子、11・・・駆動回路、20・・・表示パネル、21・・・支持体、22・・・基板、31・・・ゲート電極、32・・・ゲート絶縁層、33・・・半導体層、34・・・チャネル形成領域、35,35・・・ソース/ドレイン領域、36・・・他方の電極、37・・・一方の電極、38,39・・・配線、40・・・層間絶縁層、51・・・アノード電極、52・・・正孔輸送層、発光層及び電子輸送層、53・・・カソード電極、54・・・第2層間絶縁層、55,56・・・コンタクトホール、100・・・電源部、101・・・走査回路、102・・・信号出力回路、103・・・第1トランジスタ制御回路、104・・・第2トランジスタ制御回路、105・・・第3トランジスタ制御回路、110・・・輝度補正部、111・・・映像信号生成部、112・・・基準動作時間値計算部、113・・・動作時間換算係数格納部、114・・・累積基準動作時間値保持部、115・・・黒レベルシフト量保持部、115A・・・黒レベルシフト量計算部、115B・・・黒レベルシフト量格納部、116・・・基準カーブ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流駆動型の発光部を有する表示素子が第1の方向と第2の方向とに2次元マトリクス状に配列されて成り、映像信号に基づいて画像を表示する表示パネル、及び、
入力信号の階調値を補正して映像信号として出力することによって、表示パネルが画像を表示する際の表示素子の輝度を補正する輝度補正部、
を備えており、
輝度補正部は、
表示素子が映像信号に基づいて所定の単位時間の間動作したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したと仮定したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する基準動作時間値計算部、
基準動作時間値計算部が計算した基準動作時間の値を表示素子毎に累積した累積基準動作時間値を保持する累積基準動作時間値保持部、
表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したときの、表示素子の動作時間と表示素子の黒レベル階調値の経時変化との関係を示す基準カーブを格納した基準カーブ格納部、
累積基準動作時間値保持部と基準カーブ格納部とを参照して表示素子の黒レベル階調値の経時変化を補償するための黒レベルシフト量を計算し、各表示素子に対応した黒レベルシフト量を保持する黒レベルシフト量保持部、及び、
黒レベルシフト量保持部に保持された黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子に対応した入力信号の階調値を補正して映像信号として出力する映像信号生成部、
を備えている表示装置。
【請求項2】
輝度補正部は、更に、
表示素子が各階調値の映像信号に基づいて動作するときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化の速度と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作するときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化の速度との比を動作時間換算係数テーブルとして格納した動作時間換算係数格納部、
を備えており、
基準動作時間値計算部は、
動作時間換算係数格納部の動作時間換算係数テーブルを参照し、映像信号の階調値に対応した動作時間換算係数の値を求め、単位時間の値に動作時間換算係数の値を乗算することによって、基準動作時間の値を計算する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
動作時間換算係数格納部には、表示素子の黒レベル階調値の経時変化の範囲毎に対応した複数の動作時間換算係数テーブルが格納されており、
基準動作時間値計算部は、黒レベルシフト量保持部に保持された黒レベルシフト量の値に対応した動作時間換算係数テーブルを選択して参照する請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
発光部は、有機エレクトロルミネッセンス発光部から成る請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
電流駆動型の発光部を有する表示素子が第1の方向と第2の方向とに2次元マトリクス状に配列されて成り、映像信号に基づいて画像を表示する表示パネル、及び、
入力信号の階調値を補正して映像信号として出力することによって、表示パネルが画像を表示する際の表示素子の輝度を補正する輝度補正部、
を備えた表示装置を用いた表示装置の駆動方法において、
輝度補正部の動作に基づいて、入力信号の階調値を補正して映像信号として出力することによって、表示パネルが画像を表示する際の表示素子の輝度を補正する輝度補正ステップを有し、
輝度補正ステップは、
表示素子が映像信号に基づいて所定の単位時間の間動作したときの黒レベル階調値の経時変化と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したと仮定したときの表示素子の黒レベル階調値の経時変化とが等しくなる基準動作時間の値を計算する基準動作時間値計算ステップ、
基準動作時間の値を表示素子毎に累積した累積基準動作時間値を保持する累積基準動作時間値保持ステップ、
累積基準動作時間値と、表示素子が所定の基準階調値の映像信号に基づいて動作したときの表示素子の動作時間と表示素子の黒レベル階調値の経時変化との関係を示す基準カーブとを参照して表示素子の黒レベル階調値の経時変化を補償するための黒レベルシフト量を計算し、各表示素子に対応した黒レベルシフト量を保持する黒レベルシフト量保持ステップ、及び、
黒レベルシフト量に基づいて、各表示素子に対応した入力信号の階調値を補正して映像信号として出力する映像信号生成ステップ、
を備えている表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−128148(P2012−128148A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279003(P2010−279003)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】