説明

表示装置及び電子機器

【課題】従来よりも簡便な構造で額縁領域が見え難く、あるいはタイリングした場合に継ぎ目が無い画像を表示でき、表示品位が高く薄型化、軽量化に適した表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、表示領域10Aと表示領域の外側に設けられた額縁領域10Fとを有し、表示領域と額縁領域との間に第1の方向に延びる境界が存在する少なくとも1つの表示パネル10と、少なくとも1つの表示パネルの観察者側に配置された少なくとも1つの透光性カバー14とを備える。少なくとも1つの透光性カバーは、境界を跨ぐように配置されたレンズ部141であって、表示領域から出射された光の一部を額縁領域の側に屈折させるレンズ部を有し、レンズ部の観察者側表面1411は曲面であり、かつ、レンズ部の背面側表面1412も曲面であり、いずれもが凸曲面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に直視型の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビや情報表示用の表示装置において、複数の表示装置を配列する(タイリング技術ということがある)試みがなされている。このタイリング技術を用いることで、たとえば、大画面の表示装置を擬似的に実現することが試みられている。しかしながら、このタイリング技術を用いると、複数の表示装置の継ぎ目が見えるという問題がある。
【0003】
液晶表示装置を例に、この問題を説明する。
【0004】
液晶表示装置は、液晶表示パネルと、バックライト装置、液晶表示パネルに各種の電気信号を供給する回路や電源およびこれらを収容する筐体を備えている。液晶表示パネルは、一対のガラス基板と、これらの間に設けられた液晶層とを有する。一対のガラス基板のうち、一方には、カラーフィルタ層や対向電極が形成されており、他方には、TFTやバスラインおよびこれらに信号を供給するための駆動回路等が設けられている。また、液晶表示パネルは、複数の画素が配列された表示領域と、その周辺の額縁領域とを有している。額縁領域には、一対の基板を互いに対向させるとともに、液晶層を密閉、保持するためのシール部や、画素を駆動するための駆動回路実装部等が設けられている。
【0005】
額縁領域には画素が配列されていないため、額縁領域は表示に寄与しない。すなわち、液晶表示パネルの観察者には、額縁領域は画像が表示されていない部分として視認される。
【0006】
複数の液晶表示パネルを配列することによって大画面を構成する場合、液晶表示パネルのうち額縁領域は表示に寄与しないため各液晶表示パネルの額縁領域には画像が表示されず、画像に継ぎ目が生じてしまう。この問題は液晶表示装置に限らず、プラズマ表示装置(PDP)、有機EL表示装置、電気泳動表示装置など、直視型の表示装置に共通の問題である。
【0007】
特許文献1には、継ぎ目が無い画像を表示する表示装置が開示されている。
【0008】
特許文献1に記載の表示装置は、表示パネルの観察者側に透光性カバーを備えている。この透光性カバーのエッジ部分は、観察者側の表面が屈曲した部分を有している。屈曲した部分はレンズとして機能するので、以下では「レンズ部」ということにする。透光性カバーのレンズ部は、表示パネルの額縁領域と、表示領域のうち額縁領域に隣接する領域の一部と重なるように設けられている。表示領域の内でレンズ部と重なる部分を「周辺表示領域」ということにする。周辺表示領域に配列された画素から出射される光は、レンズ部によって額縁領域側へ屈折される。その結果、額縁領域の前面にも画像が表示され、画面全体として継ぎ目が無い画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−524551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、透光性カバーのエッジ部分に観察者側表面が屈曲したレンズ部を設けた構成を採用すると以下の課題がある。この課題を図11および図12を参照して説明する。
【0011】
図11および図12に、特許文献1に記載の透光性カバーを備える表示装置800および900のレンズ部における光線追跡シミュレーションの結果を示す。図11に示す表示装置800と図12に示す表示装置900とは、透光性カバーの構造が異なっている。
【0012】
図11に示す表示装置800は表示パネル810、820と、表示パネル810、820の観察者側(図11において上側)に配置された透光性カバー814、824とを備えている。透光性カバー814、824のエッジ部分はレンズ部8141、8241を有している。レンズ部8141、8241の観察者側表面は曲面であり、その断面は円弧状である。図12に示す表示装置900は表示装置800と同様に、表示パネル910、920、透光性カバー914、924を備え、透光性カバー914、924は観察者側表面が曲面であるレンズ部9141、9241を有している。表示装置800のレンズ部8141、8241の曲率半径は比較的小さく透光性カバー814、824の厚さh81、h82は比較的小さい。一方、表示装置900のレンズ部9141、9241の曲率半径は比較的大きく、透光性カバー914、924の厚さh91、h92は比較的大きい。なお、ここでは、表示パネル810、820、910および920の額縁領域810F、820F、910Fおよび920Fの幅L2は何れも等しく、且つ、表示装置800の非表示領域830および表示装置900の非表示領域930はいずれも額縁領域のみで構成されているとする。
【0013】
表示装置800では周辺表示領域810D、820Dの画素から出射された光がレンズ部8141、8241によって表示パネル810、820の境界部分にある非表示領域830上に屈折され、継ぎ目が無い画像が表示される。表示装置900でも表示装置800と同様に、周辺表示領域910D、920Dの画素から出射された光がレンズ部9141、9241によって表示パネル910、920の境界部分にある非表示領域930上に屈折され、継ぎ目が無い画像が表示される。
【0014】
ここで、レンズ部の幅を、周辺表示領域の幅L1と額縁領域の幅L2との和で表し、画像圧縮率a=L1/(L1+L2)と定義する(0<a<1)。そうすると、周辺表示領域の画像が画像圧縮率aの逆数1/a倍に拡大されることによって、継ぎ目が無く、且つゆがみの無い画像が表示されることになる。すなわち、画像圧縮率aとは、周辺表示領域に形成される画像をレンズ部によって拡大したときにゆがみの無い画像が表示されるように、表示パネルの周辺表示領域に形成する画像を予め圧縮するときに必要な圧縮率を示している。特許文献1には、エッジ部の画素を圧縮することによってゆがみを補償する構成が記載されている。
【0015】
額縁領域の幅L2は一定であるが、周辺表示領域の幅L1を変えることによって画像圧縮率aを変えることができる。L1を小さくすると、画像圧縮率aは小さくなる。逆にL1を大きくすると、画像圧縮率aは大きくなる。表示装置800(図11)は画像圧縮率aが比較的小さい(例えばa<0.7)場合、表示装置900(図12)は画像圧縮率aが比較的大きい場合を示している。
【0016】
表示装置800は、画像圧縮率aが小さく、拡大率1/aは大きいので、レンズ部8141、8241の観察者側の曲面の曲率半径が小さく、透光性カバー814、824は薄い。一方、表示装置900は、画像圧縮率aが大きく、拡大率1/aは小さいので、レンズ部9141、9241の曲率半径が大きく、透光性カバー914、924は厚い。
【0017】
ここで、図11に示す表示装置800の様に、画像圧縮率aが小さい場合(例えばa<0.7)、画素の拡大率が大きいために、画素と画素の間のブラックマトリクスが目立って見えてしまうことがある。また、周辺表示領域に形成される画像はレンズ部8141、8241によって拡大されるので、その拡大率(1/a)に応じて解像度が低下する。このとき、レンズ部8141、8241上に表示される画像と平板部8142、8242上に表示される画像との間に解像度の差が発生する。拡大率が比較的大きいと、レンズ部8141、8241上に表示される画像の解像度の低下が大きく、したがって平板部8142、8242上に表示される画像との解像度の差は大きくなる。
【0018】
一方、表示装置900は、画像圧縮率aが大きく拡大率1/aが小さいので、ブラックマトリクスが目立って見えることはなく、また、レンズ部9141、9241上に表示される画像の解像度の低下も小さい。従って表示装置900の表示品位は表示装置800よりも高い。
【0019】
上述したように、特許文献1に開示されている技術を採用すると、高い表示品位を得るためには、表示装置900のように画像圧縮率aを大きくし、厚い透光性カバーを用いれば良いことがわかる。しかしながら、透光性カバーが厚いと表示装置の厚さと重量が増すという問題がある。特に、携帯電子機器などの表示装置に適用することは難しい。
【0020】
上記の説明では、複数の表示パネルをタイリングした表示装置について従来技術の問題点を説明したが、単一の表示パネルの額縁領域を見え難くするために透光性カバーを用いる場合にも同様の問題が発生する。
【0021】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、表示パネルの額縁領域が見え難い、あるいは複数の表示パネルをタイリングした場合には継ぎ目が無い画像を表示することができ、表示品位が高く、従来よりも薄く、あるいは軽い直視型の表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の直視型の表示装置は、表示領域と前記表示領域の外側に設けられた額縁領域とを有し、前記表示領域と前記額縁領域との間に第1の方向に延びる境界が存在する少なくとも1つの表示パネルと、前記少なくとも1つの表示パネルの観察者側に配置された少なくとも1つの透光性カバーと、を備え、前記少なくとも1つの透光性カバーは、前記境界を跨ぐように配置されたレンズ部であって、前記表示領域から出射された光の一部を前記額縁領域の側に屈折させるレンズ部を有し、前記レンズ部の観察者側表面は曲面であり、かつ、前記レンズ部の背面側表面も曲面であることを特徴とする。
【0023】
ある実施形態において、前記レンズ部の観察者側表面の形状と前記レンズ部の背面側表面の形状とは対称である。
【0024】
ある実施形態において、前記レンズ部の観察者側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第1の交線と、前記レンズ部の背面側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第2の交線のうちの少なくとも一方は円弧である。
【0025】
ある実施形態において、前記レンズ部の観察者側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第1の交線と、前記レンズ部の背面側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第2の交線のうちの少なくとも一方は円弧ではない曲線である。
【0026】
ある実施形態において、前記レンズ部の観察者側表面と、前記レンズ部の背面側表面のうちの少なくとも一方は自由曲面である。
【0027】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの透光性カバーは、前記レンズ部以外の部分に、観察者側表面が前記少なくとも1つの表示パネルの表示面と略平行な面で形成されている平板部を有する。
【0028】
ある実施形態において、前記表示領域には、前記第1の方向および、前記第1の方向に垂直な第2の方向に複数の画素が等間隔に配列されている。
【0029】
ある実施形態において、前記レンズ部に入射する光を出す画素に供給される表示信号は、前記平板部に入射する光を出す画素に供給される表示信号と比較して前記第2の方向に圧縮されている。
【0030】
ある実施形態において、前記レンズ部に入射する光を出す画素に供給される表示信号は、前記平板部に入射する光を出す画素に供給される表示信号と比較して、圧縮率a(0<a<1)で前記第2の方向に一様に圧縮されており、前記圧縮率aは、前記表示領域のうち前記レンズ部に入射する光を出す画素が配列されている領域である周辺表示領域の前記第2の方向の幅をL1、前記額縁領域の前記第2の方向の幅をL2として、以下の式で定義される。
a=L1/(L1+L2)
【0031】
ある実施形態において、前記レンズ部は、前記周辺表示領域に形成される画像を、前記第2の方向に一様に1/a倍に拡大する。
【0032】
ある実施形態において、前記圧縮率aは0.7以上である。
【0033】
ある実施形態において、前記周辺表示領域に形成される画像の輝度は、前記表示領域のうち前記周辺表示領域以外の領域に形成される画像の輝度よりも高い。
【0034】
ある実施形態において、本発明による表示装置は、前記少なくとも1つの表示パネルに向けて光を出射するバックライト装置をさらに備え、前記周辺表示領域に配列された画素に向けて前記バックライト装置から出射される光の強度は、前記表示領域のうち前記周辺表示領域以外の領域に配列された画素に向けて前記バックライト装置から出射される光の強度よりも高い。
【0035】
ある実施形態において、前記レンズ部の前記額縁領域側の端部に保護部材が設けられている。
【0036】
ある実施形態において、前記保護部材は接着フィルムである。
【0037】
ある実施形態において、前記保護部材は光吸収率が95%以上である。
【0038】
ある実施形態において、前記保護部材の色は黒色である。
【0039】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの透光性カバーの観察者側には光反射防止処理が施されている。
【0040】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの透光性カバーの観察者側には、前記少なくとも1つの透光性カバーより屈折率の低い層が設けられている。
【0041】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの透光性カバーは、前記少なくとも1つの表示パネルと、前記少なくとも1つの透光性カバーよりも屈折率の低い樹脂で接着されている。
【0042】
ある実施形態において、前記表示領域と前記額縁領域との間に前記第1の方向に垂直な第2の方向に延びる第2の境界が存在し、前記少なくとも1つの透光性カバーは前記第2の境界を跨ぐように配置された第2のレンズ部を有する。
【0043】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの表示パネルは前記第1の方向または前記第1の方向に垂直な第2の方向に互いに隣接するように配列された2つ以上の表示パネルを含み、前記少なくとも1つの透光性カバーは前記第1の方向または前記第2の方向に互いに隣接するように配列された2つ以上の透光性カバーを含み、前記2つ以上の透光性カバーのレンズ部は、前記第1の方向または前記第2の方向に互いに隣接する。
【0044】
本発明による電子機器は、第1の表示部と、ヒンジと、前記第1の表示部に前記ヒンジを介して接続されている第2の表示部とを備え、前記第1の表示部と前記第2の表示部とは上記の構成を有する表示装置であり、前記ヒンジによって、前記第1の表示部のレンズ部が前記第2の表示部のレンズ部と互いに隣接するよう前記第1の表示部と前記第2の表示部とが並ぶ開状態と、前記第1の表示部が前記第2の表示部に対して相対的に重なる閉状態とを取ることができる。
【0045】
あるいは、本発明による電子機器は、表示領域、および、前記表示領域の外側に設けられた額縁領域を有する第1の表示部と、上記の構成を有する表示装置を有し、前記第1の表示部の観察者側に配置されている第2の表示部と、を備え、観察者側から見て、前記第2の表示部が前記第1の表示部に重なる位置と、前記第2の表示部が前記第1の表示部と互いに隣接するとともに前記第2の表示部のレンズ部が前記第1の表示部の額縁領域に重なる位置との間を、前記第2の表示部がスライド可能となるよう、前記第1の表示部に前記第2の表示部が保持されている。
【0046】
ある実施形態の電子機器は、上記の構成を有する表示装置を有し、前記第2の表示部の観察者側に配置されている第3の表示部を備え、観察者側から見て、前記第3の表示部が前記第2の表示部に重なる位置と、前記第3の表示部が前記第2の表示部と互いに隣接するとともに前記第3の表示部のレンズ部が前記第2の表示部の額縁領域に重なる位置との間を、前記第3の表示部がスライド可能となるよう、前記第2の表示部に前記第3の表示部が保持されている。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、表示パネルの額縁領域が見え難く、あるいは複数の表示パネルをタイリングした場合には継ぎ目が無い画像を表示することができ、表示品位が高く、薄型化、軽量化に適した直視型の表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による実施形態の表示装置100の模式的な断面図である。
【図2】透光性カバー24の模式的な斜視図である。
【図3】本実施形態の表示装置100による光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。
【図4】比較例1の表示装置600による光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。
【図5】比較例2の表示装置700による光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。
【図6】(a)および(b)は、本発明による実施形態の電子機器200を示す図であり、(c)は、電子機器200’を示す図であり、(a)は開状態を示し、(b)および(c)は閉状態を示す。
【図7】本発明による実施形態の電子機器300を示す図であり、(a)は表示部301と表示部302とが並ぶ場合を示し、(b)は表示部302が表示部301に重なる場合を示す。
【図8】本発明による実施形態の電子機器400を示す図であり、(a)は表示部401、表示部402、表示部403が並ぶ場合を示し、(b)は表示部401、表示部402、表示部403が重なる場合を示す。
【図9】電子機器300の表示部302の一部を拡大して示す図である。
【図10】電子機器300の表示部302の一部を拡大して示す図である。
【図11】表示装置800による光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。
【図12】表示装置900による光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明による実施形態を説明するが、本発明は例示する実施形態に限定されるものではない。
【0050】
図1に、本発明による実施形態の直視型の液晶表示装置100を模式的に示す。図1は液晶表示装置100の模式的な断面図である。以下では、表示パネルとして液晶表示パネルを用いた液晶表示装置を例示するが、本発明の表示装置に用いる表示パネルはこれに限られない。表示パネルとして、たとえば、PDP用表示パネル、有機EL表示パネル、電気泳動表示パネル等を用いることもできる。
【0051】
図1に示す液晶表示装置100は、2つの液晶表示パネル10および20を備え、液晶表示パネル10、20の観察者側(図1において上側)には透光性カバー14、24が配置されている。ここでは、液晶表示パネル10、20が互いに隣接するように配置された液晶表示装置を例示する。なお、液晶表示パネル10および20に代えて、液晶表示パネル10が筐体に収められた液晶表示ユニットと、液晶表示パネル20が筐体に収められた液晶表示ユニットとが互いに隣接するように配置されたものを用いることもできる。透光性カバー14、24の構成については図2を参照して後に詳述する。なお、図2は透光性カバー24の斜視図である。
【0052】
液晶表示パネル10、20は、複数の画素が配列された表示領域10A、20Aと表示領域10A、20Aの外側にある額縁領域10F、20Fとを有する。表示に寄与しない領域を総称して非表示領域30と称することとする。非表示領域30には、額縁領域10F、20Fが含まれ、これらの間隙または接続部が存在する場合には、これら間隙や接続部も非表示領域30に含まれる。本実施形態の液晶表示装置100では、非表示領域30は額縁領域10F、20Fのみから構成されているとする。液晶表示パネル10の表示領域10Aには、表示領域10Aと額縁領域10Fとの間の境界線の方向である第1の方向(液晶表示パネル10、20の表示面19、29における法線方向、図2においてD1で示す)および第1の方向に垂直で液晶表示パネル10の表示面19に平行である第2の方向D2(液晶表示パネル10、20の表示面19、29における水平方向)にマトリクス状に複数の画素が配置されている。液晶表示パネル20においても、表示領域20Aには複数の画素が第1の方向および第2の方向にマトリクス状に配列されている。表示領域10A、20A内において、画素は第1の方向と第2の方向それぞれに等ピッチで配列されている。
【0053】
液晶表示パネル10は、透光性の上基板11および下基板12を有し、上基板11と下基板12との間には液晶層13が設けられている。上基板11には、例えばカラーフィルタ層や対向電極が形成されており、下基板12には、例えば透明電極がマトリクス状に形成されているほか、TFTやバスライン、これらに信号を供給するための駆動回路等が設けられている。上基板11の上方および下基板12の下方にはそれぞれ偏光板が配置されている(偏光板については不図示)。また、液晶表示パネル10の額縁領域10Fには、液晶層13を上基板11と下基板12との間に保持しておくためのシール部16や、画素を駆動するための駆動回路等が含まれる。下基板12の下方に配置された偏光板のさらに下方には、バックライト装置15が設けられている。液晶表示パネル20には、液晶表示パネル10と同様に、上基板21、下基板22、液晶層23、偏光板、シール部26、バックライト装置25等が設けられている。ここでは、バックライト装置15、25として、蛍光管を光源として導光板により拡散出射して照明を行なうエッジライト式と呼ばれる方式のものを用いた。
【0054】
先述のように、液晶表示パネル10、20の観察者側には、透光性カバー14、24が配置されている。透光性カバー14、24はレンズ部141、241と平板部142、242とを有する。レンズ部141、241は透光性カバー14、24のエッジ部分に設けられ、平板部142、242は透光性カバー14、24のうちレンズ部141、241以外の部分に設けられている。レンズ部141、241と平板部142、242とは観察者側表面の形状が互いに異なる。
【0055】
レンズ部141は、液晶表示パネル10の、表示領域10Aと額縁領域10Fとの間の、第1の方向に延びる境界を跨ぐように配置されている。言い換えると、レンズ部141は、額縁領域10Fと、表示領域10Aのうち額縁領域10Fに第2の方向に隣接する領域である周辺表示領域10Dとを含む領域の観察者側にある。レンズ部241も同様に、表示領域20Aと額縁領域20Fとの間の第1の方向に延びる境界を跨ぐように配置されており、額縁領域20Fと周辺表示領域20Dとを含む領域の観察者側にある。
【0056】
図2に、本実施形態の液晶表示装置100の透光性カバー24の斜視図を示す。レンズ部241の観察者側(図2における上側)表面2411と背面側(図2における下側)表面2412とはいずれも曲面である。本実施形態では観察者側表面2411の形状と背面側表面2412の形状とを、レンズ部241を上下に2分する平面(図2における平面S1)に関して対称な曲面としたが、特に対称ではなくても本実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、レンズ部241の観察者側表面2411の形状と背面側表面2412の形状とを平面S1に関して対称な曲面とするのではなく、観察者側表面2411の曲率半径を大きくし、平面に近い形状にすることで、観察者から見た場合に表示面が平面のように見えるため、表示装置の見栄えが良くなる場合もある。
【0057】
また、本実施形態では、観察者側表面2411と第1の方向(D1)に垂直な平面との交線(第1の交線)2413、背面側表面2412と第1の方向に垂直な平面との交線(第2の交線)2414をそれぞれ円弧としたが、これらは円弧ではない曲線であってもよい。例えば、第1の交線2413および第2の交線2414は非球面関数によって規定される曲線であってもよい。第1の交線2413と第2の交線2414とが互いに異なる曲線であってもよい。また、観察者側表面2411、背面側表面2412の少なくとも一方の面を自由曲面としてもよい。
【0058】
なお、液晶表示パネル10上に配置される透光性カバー14のレンズ部141の形状は、液晶表示パネル10と20との境界線に対して図2に示すようなレンズ部241と対称である。言い換えると、レンズ部141は、レンズ部141とレンズ部241とが接する面に対して、レンズ部241と対称である。
【0059】
レンズ部141、241は第1の方向に延びる稜線を有している。ここで、稜線が延びる方向を液晶表示パネル10、20の画素列、すなわちカラーフィルタ列と略垂直とすることによって、モアレの発生を抑制することができる。
【0060】
平板部142、242は、表示領域10A、20Aのうち、周辺表示領域10D、20D以外の領域である中央表示領域10B、20Bの観察者側にある。平板部142、242の観察者側表面1421、2421は、液晶表示パネル10、20の表示面19、29と略平行である。
【0061】
次に図3を参照して、本実施形態の液晶表示装置による画像表示について説明する。図3に、本実施形態の液晶表示装置100において、液晶表示パネル10、20から出て透光性カバー14、24を透過する光の光線追跡シミュレーションの結果を示す。なお、図3に示す液晶表示装置100は図1を参照して説明した液晶表示装置100と同じ構成を有する。
【0062】
図3に示すように、液晶表示パネル10、20の中央表示領域10B、20Bに配列された画素から出る光は、平板部142、242に入射し、平板部142、242内を液晶表示パネル10、20の表示面19、29に垂直な方向に直進して観察者側(図3において上側)に出射され、表示面19、29に垂直な方向に進む。周辺表示領域10D、20Dに配列された画素から出る光は、レンズ部141、241に入射し、外側(液晶表示パネル10と液晶表示パネル20との境界線B1側)へ屈折して観察者側に出射され、表示面19、29に垂直な方向に進む。このようにして、液晶表示パネル10、20の周辺表示領域10D、20Dから出射された光が屈折することにより、額縁領域10F、20Fの前面に画像が表示される。このことにより、額縁領域10F、20Fが見え難くなる。このことにより、タイリングした場合に画像の継ぎ目として見える非表示領域30が視認されないようにすることができるため、本実施形態の表示装置のように表示パネルをタイリングした場合でも、継ぎ目が無い画像を表示することができる。
【0063】
本実施形態のレンズ部141、241の観察者側表面1411、2411と背面側表面1412、2412とはいずれも曲面であり、レンズ部141、241に入射する光は2回屈折する。レンズ部の表裏両面が曲面である場合、片面のみが曲面である場合に比べて、より短い光学距離で大きく光を屈折させることが可能となる。
【0064】
本実施形態の液晶表示装置100では、上述のように、レンズ部141、241の表裏両面が曲面であるため、レンズ部141、241に入射する光は2回屈折する。従って、図11および12を参照して説明した透光性カバーの片側表面にだけ設けられた曲面に比べ、液晶表示装置100のレンズ部141、241が有する曲面は、より大きな曲率半径で同等のレンズ特性(拡大率)を発揮することできる。その結果、片側表面にだけ曲面を設けた透光性カバーに比べ、透光性カバーの厚さを小さくできる。本実施形態の構成は、画像圧縮率aが大きい場合(例えば0.7以上)に特に有利であり、従来の透光性カバーよりも薄い、あるいは軽い透光性カバーを用いて、解像度の低下が抑制された表示品位の高い液晶表示装置を得ることができる。
【0065】
本実施形態の液晶表示装置100の設計値の例を以下に示す。
額縁領域10F、20Fの幅L2:2mm
透光性カバー14、24の厚さh1、h2:6mm
レンズ部141、241の曲率半径:33mm
レンズ部141、241の幅(=L1+L2):13mm
画像圧縮率a(=L1/(L1+L2)):0.85
【0066】
こうして得られた液晶表示装置100は、画像圧縮率a>0.7であるため、レンズ部141、241上に表示される画像には、画素と画素との間のブラックマトリクスが目立って見えることはなかった。また、レンズ部141、241上に表示される画像は、平板部142、242上に表示される画像と比較して解像度は劣っておらず、レンズ部141、241上に表示される画像の解像度と平板部142、242上に表示される画像の解像度との差は小さかった。
【0067】
次に比較例1、2を示す。
【0068】
[比較例1]
図4に比較例1の表示装置600による光線追跡シミュレーションの結果を示す。表示装置600は、表示パネル610、620を備え、表示パネル610、620の観察者側(図4において上側)には透光性カバー614、624が配置されている。比較例1の表示装置600は、レンズ部6141、6241の観察者側表面のみ曲面とした表示装置であり、レンズ部6141、6241の曲率半径は比較的小さく、透光性カバー614、624は比較的薄い表示装置である。その他の構成は本実施形態の表示装置100と同じとした。
【0069】
比較例1の表示装置600の設計値を以下に示す。
額縁領域610F、620Fの幅L2:2mm
透光性カバー614、624の厚さh61、h62:6mm
レンズ部6141、6241の曲率半径:6mm
レンズ部6141、6241の幅(=L1+L2):5mm
画像圧縮率a(=L1/(L1+L2)):0.6
【0070】
[比較例2]
図5に比較例2の表示装置700による光線追跡シミュレーションの結果を示す。表示装置700は、表示パネル710、720を備え、表示パネル710、720の観察者側(図5において上側)には透光性カバー714、724が配置されている。比較例2の表示装置700は、レンズ部7141、7241の観察者側表面のみ曲面とした表示装置であり、レンズ部7141、7241の曲率半径は比較的大きく、透光性カバー714、724は比較的厚い表示装置である。その他の構成は本実施形態の表示装置100と同じとした。
【0071】
比較例2の表示装置700の設計値を以下に示す。
額縁領域710F、720Fの幅L2:2mm
透光性カバー714、724の厚さh71、h72:11mm
レンズ部7141、7241の曲率半径:15mm
レンズ部7141、7241の幅(=L1+L2):13mm
画像圧縮率a(=L1/(L1+L2):0.85
【0072】
本実施形態の表示装置100、比較例1の表示装置600、および比較例2の表示装置700の性能を比較した表を表1に示す。表1では、継ぎ目が無い画像の表示、表示品位、透光性カバーの厚さを比較して示している。継ぎ目が無い表示が実現されたか、表示品位の高低、透光性カバーの厚さによって○または×で示す。
【0073】
【表1】

【0074】
いずれの表示装置も、非表示領域上(表示装置100における非表示領域30、表示装置600における非表示領域630、表示装置700における非表示領域730)に画像が表示され、画面全体として継ぎ目が無い表示が実現された。比較例1の表示装置600は、画像圧縮率aが小さい(a<0.7)ため、ブラックマトリクスが目立って見えることと、解像度の低下が激しいことに起因して、表示品位は悪かった。一方比較例2の表示装置700は、透光性カバーの厚さが11mmと他と比較して厚いため、表示装置の薄型化、軽量化には適さない。このような表示装置は、たとえば携帯して用いる場合に好ましくない。
【0075】
一方、本実施形態の表示装置100では、画像圧縮率aを大きくすることができるため、表示品位は良好である。また、本実施形態の表示装置100では、レンズ部の曲率半径は大きいが、表裏両面が屈曲しているため、透光性カバーは薄い。そのため、本実施形態の表示装置100は薄型化、軽量化に適している。このような表示装置は、たとえば携帯して用いる場合に好ましい。
【0076】
次に、均一な表示を得るための構成を説明する。まず、画像の均一化について説明する。
【0077】
本実施形態では、画像を圧縮する方法として、画素ピッチは一定とし、信号処理によって周辺表示領域10D、20Dに圧縮画像を形成する方法が採られている。すなわち、周辺表示領域10D、20Dに配列された画素に供給される表示信号を、第2の方向(D2)に沿って一様に画像圧縮率aで圧縮する。このことにより、周辺表示領域10D、20Dに配列された画素によって第2の方向にa倍に圧縮された画像を形成する。この方法は例えばソフトウェアにより実現される。
【0078】
画像を圧縮する方法としては、例えば画素ピッチを第2の方向に変化させる方法がある。周辺表示領域の画素ピッチを中央表示領域の画素ピッチより狭くし、信号処理を行なうことなく圧縮画像を形成する方法である。この方法は特別な信号処理が不要であるものの、予め専用の表示パネルを製造する必要がある、汎用性に劣る、また、コストが掛かる、等の問題がある。本実施形態の表示装置では、表示領域全体に亘って画素を等間隔に配列するため、上記の問題がない簡易な構造である、という利点を有する。
【0079】
また、画素を等間隔に配列し、表示信号を第2の方向に沿って異なる圧縮比で圧縮し、周辺表示領域に圧縮された画像を形成する方法もある。本実施形態の表示装置では、上述のように画像圧縮率aを一定にしている。そのため、本実施形態の表示装置では、第2の方向に沿って表示信号の圧縮比を異ならせる必要が無く、信号処理をより簡単に行なえるという利点も有する。
【0080】
続いて、輝度の均一化について説明する。
【0081】
液晶表示パネル10、20から出射される光のうち、レンズ部141、241に入射する光はレンズ部141、241によって拡大されるので、その拡大率(1/a)に応じて輝度が低下する。従って、レンズ部141、241上に表示される画像と平板部142、242上に表示される画像との間に輝度差が発生する。
【0082】
このような輝度差は、レンズ部141、241に入射する光の輝度を平板部142、242に入射する光の輝度よりも相対的に高めることにより改善できる。
【0083】
本実施形態の液晶表示装置100では、中央表示領域10B、20Bから出射される光の輝度を高くする方法として、以下の2つの方法が考えられる。
方法a:中央表示領域10B、20Bに配列された画素の透過率を下げる。
方法b:周辺表示領域10D、20Dに配列された画素から出る光の輝度を中央表示領域10B、20Bに配列された画素から出る光の輝度よりも高くする。
【0084】
方法aは、画素に供給する電圧を調整することによって容易に実現できる。方法bは、例えば、周辺表示領域10D、20Dに配列された画素に向けてバックライト装置15、25から出射される光の強度を中央表示領域10B、20Bに配列された画素に向けてバックライト装置15、25から出射される光の強度よりも高くすれば実現できる。バックライト装置15、25として冷陰極管が配列されている場合、周辺表示領域10D、20Dに対応して配置された冷陰極管群を他の冷陰極管(中央表示領域10B、20Bに対応して配置された冷陰極管)よりも明るく点灯させればよい。また、バックライト装置として、発光ダイオード(LED)が並べて配置されている場合でも同様の方法で実現できる。もちろん上記の方法aおよびbを組み合わせて、輝度の均一化を行ってもよい。
【0085】
また表示パネルが、プラズマ表示パネル(PDP)や有機EL表示パネル(OLED)のような自発光型の表示パネルの場合は、平板部に入射する光を出す画素の輝度を相対的に小さくすればよい。
【0086】
本実施形態の透光性カバーは、たとえば、アクリル樹脂を用いて作製される。透光性カバーの材料としてはもちろんこれに限られない。ポリカーボネート等の透明樹脂やガラスなど、透光性の材料であれば用いることができる。
【0087】
上述の説明では、本実施形態の液晶表示装置100の透光性カバー14、24には、表示領域10A、20Aと額縁領域10F、20Fとの間に第1の方向に延びる境界を跨ぐように配置されたレンズ部141、241が設けられているが、レンズ部の位置はこれに限られない。たとえば、表示領域と額縁領域との間に第2の方向(D2)に延びる境界(第2の境界)を跨ぐように配置されたさらなるレンズ部(第2のレンズ部)が透光性カバーに設けられてもよい。たとえば矩形の表示パネルと、矩形の透光性カバーとを備える表示装置において、透光性カバーが第2の境界を跨ぐように配置された第2のレンズ部をさらに有していれば、表示パネルの全周の額縁領域にレンズ部を配置することができ、表示パネルの全周の額縁領域を見え難くすることができる。このような透光性カバーを表示装置に適用すれば、たとえば、複数の表示パネルを第1の方向に互いに隣接するようにタイリングする場合に、継ぎ目が無い画像を表示することができ、かつ表示品位が高く薄型化、軽量化に適した表示装置が実現される。
【0088】
また、上述の説明では、本実施形態の液晶表示装置100は2つの液晶表示パネル10、20を有するが、本発明による表示装置は表示パネルを1つだけ有するものであってもよく、たとえば表示パネルを1つ備え、表示パネルの観察者側に透光性カバーが1つ配置されていてもよい。このような表示装置でも、額縁領域が見え難く、表示品位が高く、薄型化、軽量化に適している。また、本発明による表示装置は3つ以上の表示パネルを有していてもよい。たとえば、表示パネルを第1の方向に3つ以上配列し、表示パネルの観察者側に、表示領域と額縁領域との間に第2の方向に延びる境界を跨ぐように設けられたレンズ部を有する透光性カバーを配置してもよい。また、表示パネルを第2の方向に3つ以上配列し、表示パネルの観察者側に、表示領域と額縁領域との間に第1の方向に延びる境界を跨ぐように設けられたレンズ部を有する透光性カバーを配置してもよい。また、表示パネルを第1の方向および第2の方向に互いに隣接するよう、マトリクス状に複数配列し、表示パネルの観察者側に、表示領域と額縁領域との間に第1の方向に延びる境界を跨ぐように設けられたレンズ部および表示領域と額縁領域との間に第2の方向に延びる境界を跨ぐように設けられたレンズ部を有する透光性カバーを配置してもよい。いずれの場合でも、継ぎ目が無い画像を表示することができ、かつ表示品位が高く薄型化、軽量化に適した表示装置が実現される。
【0089】
また、本実施形態の表示パネルは液晶表示パネルであったが、本発明の表示パネルは液晶表示パネルに限られない。表示パネルとして、たとえば、PDP用表示パネル、有機EL表示パネル、電気泳動表示パネル等を用いることもできる。また、バックライトを有しない自発光型の表示装置にも本発明は適用可能である。
【0090】
このように、本発明の実施形態によると、表示パネルの額縁領域が見え難く、あるいはタイリングした場合には継ぎ目が無い画像を表示することができ、かつ表示品位が高く薄型化、軽量化に適した表示装置が実現される。
【0091】
次に、図6〜図8を参照して、本発明による実施形態の表示装置を用いた電子機器の種々の具体例を示す。
【0092】
図6に示す電子機器200は、2つの表示部201および202と、ヒンジ70とを備える。表示部201は表示パネル210と透光性カバー214とを有し、表示部202は表示パネル220と透光性カバー224とを有する。透光性カバー214、224は表示パネル210、220の観察者側(図6において上側)に配置されている。表示部202は表示部201にヒンジ70を介して接続されている。表示パネル210、220や透光性カバー214、224はそれぞれ先述の本実施形態の表示装置100の表示パネルや透光性カバーと同様の構成を有する。
【0093】
電子機器200は、ヒンジ70によって、図6(a)に示すように表示部201が表示部202と並ぶ開状態と、図6(b)に示すように表示部201が表示部202に対して相対的に重なる閉状態とを取ることができる。開状態(図6(a))では、透光性カバー214のレンズ部2141と透光性カバー224のレンズ部2241とが第2の方向(D2)に互いに隣接するように並ぶ。そのため、電子機器200は継ぎ目が無い画像を表示することができる。一方閉状態(図6(b))では、表示部201の背面(表示パネル210の背面側)が表示部202の背面(表示パネル220の背面側)に対向し、表示部201が画像を表示する方向と表示部202が画像を表示する方向が互いに反対となるように表示部201と表示部202とが重なる。この閉状態では電子機器200はコンパクトに携帯することができる。
【0094】
上記の電子機器200において、ヒンジ70の回転中心は、表示部201の背面および表示部202の背面の延長面上にあるが、ヒンジ70の回転中心は透光性カバー214および224の観察者側最表面の延長面上にあってもよい。図6(c)にヒンジ70’の回転中心75が透光性カバー214および224の観察者側表面の延長面上にある電子機器200’の閉状態の模式的な断面図を示す。図6(c)に示すように、電子機器200’は、閉状態では透光性カバー214、224を内側にして折りたたまれ、表示部201の透光性カバー214側と表示部202の透光性カバー224側とが対向する。電子機器200’は、閉状態において表示装置の表示を視認することができないが、携帯時に透光性カバーの傷や汚れを防止できる点で好ましい。
【0095】
電子機器200の透光性カバー214、224は、レンズ部2141、2241の表裏両面が曲面であるため薄く、電子機器200は携帯性に優れている。また、透光性カバー214、224が薄くても、電子機器200が表示する画像は表示品位が高い。
【0096】
図7に示す電子機器300は、2つの表示部301および302を備える。表示部301は表示パネル310を有し、表示部302は表示パネル320と透光性カバー324とを有する。透光性カバー324は表示パネル320の観察者側(図7において上側)に配置されている。表示パネル310、320や透光性カバー324はそれぞれ先述の本実施形態の液晶表示装置100の表示パネルや透光性カバーと同様の構成を有する。表示部302は表示部301の観察者側に配置されている。また、表示部302は表示部301上を第2の方向にスライドする構成である。
【0097】
表示部302は、観察者側から見て、表示部301と第2の方向(D2)に互いに隣接する位置(図7(a))および表示部301に重なる位置(図7(b))との間をスライド可能となるように保持されている。図7(a)に示されるように表示部302が、表示部301と第2の方向D2に互いに隣接する位置にある場合、表示部301の額縁領域310Fに透光性カバー324のレンズ部3241が重なる。従って、額縁領域310Fは視認されない。また、図7(a)に示すように、レンズ部3241は、表示パネル320の周辺表示領域内の画素から出射された光を屈折させる。従って、レンズ部3241上に画像が表示される。従って、電子機器300は継ぎ目が無い画像を表示することができる。また、表示部302が表示部301に重なる位置にある場合(図7(b))、表示パネル310の表示面319上に表示部302の表示パネル320の背面が重なる。この状態では電子機器300はコンパクトに携帯することができる。
【0098】
電子機器300の表示部302の透光性カバー324は、レンズ部3241の表裏両面が曲面であるため薄く、電子機器300は携帯性に優れている。また、透光性カバーが薄くても、電子機器300が表示する画像は表示品位が高い。
【0099】
図8に示す電子機器400は、3つの表示部401、402、403を備える。表示部401は表示パネル410を有し、表示部402は表示パネル420と透光性カバー424とを有し、表示部403は表示パネル430と透光性カバー434とを有する。透光性カバー424は表示パネル420の観察者側(図8において上側)に配置され、透光性カバー434は表示パネル430の観察者側に配置されている。表示パネル410、420、430や透光性カバー424、434はそれぞれ先述の本実施形態の表示装置100の表示パネルや透光性カバーと同様の構成を有する。表示部402は表示部401の観察者側に配置され、表示部403は表示部402の観察者側に配置されている。
【0100】
表示部401、402は、それぞれ図7に示した電子機器300の表示部301、302と同様の構成を有する表示部である。表示部402は、電子機器300の表示部302と同様に、表示部401上を第2の方向(D2)にスライド可能となるように保持されている。すなわち、電子機器400は電子機器300と同様の構成を有する電子機器の観察者側に表示部をさらに一つ備える構成である。表示部403は、電子機器300の表示部302と同様に、表示部402上を第2の方向D2にスライド可能となるように保持されている。
【0101】
表示部403は、観察者側から見て、表示部402に第2の方向に互いに隣接する位置(図8(a))および表示部402に重なる位置(図8(b))との間をスライド可能である。図8(a)に示すように、表示部403が表示部402に隣接する位置にあり、表示部402と表示部401とが隣接しているとき、表示パネル420の額縁領域420Fに透光性カバー434のレンズ部4341が重なり、表示パネル410の額縁領域410Fに透光性カバー424のレンズ部4241が重なる。このとき、上述した電子機器300(図7)と同様に、額縁領域410Fおよび420Fは視認されない。また、レンズ部4241および4341上には、画像が表示される。このことにより、電子機器400は全体に亘って継ぎ目が無い画像を表示することができる。また、表示部403が表示部402に重なる位置にあり、表示部402が表示部401に重なるとき、図8(b)に示すように、表示パネル410の表示面419上に表示部402の表示パネル420の背面が重なり、表示部402の透光性カバー424上に表示部403の表示パネル430の背面が重なる。この状態では電子機器400はコンパクトに携帯することができる。
【0102】
電子機器400の透光性カバー424、434は、表裏両面が曲面であるため薄く、携帯性に優れている。また、透光性カバーが薄くても、電子機器400が表示する画像は表示品位が高い。
【0103】
電子機器400のようなスライド型の電子機器として、電子機器400の表示部403の観察者側に、表示部403と同様の構成を有する少なくとも1つの表示部をさらに備えていてもよい。このような電子機器でも、さらなる表示部が上記のようにスライド可能な構成とすれば、表示部が互いに隣接するよう並ぶ場合には継ぎ目が無く表示品位が高い画像を表示することができ、表示部が重なる場合にはコンパクトに携帯することができる。このように、表示パネルを多段に積層することにより、大画面と携帯性とを向上させた表示装置または電子機器も実現可能である。
【0104】
これら電子機器200、300、400のように携帯して使用される場合、本発明の透光性カバーを好適に用いることができる。
【0105】
電子機器200(図6)は、閉状態(図6(b))においては表示部201、202の透光性カバー214、224のレンズ部2141、2241の額縁領域側の端面が剥き出しである。また、電子機器300(図7)は、表示部301、302が並ぶ場合(図7(a))、表示部301と表示部302とが重なる場合(図7(b))のいずれの場合においても、透光性カバー324のレンズ部3241の端面は剥き出しである。電子機器400(図8)も同様に、表示部402、403のレンズ部4241、4341の端面が剥き出しである。電子機器200、300、400のように、透光性カバーのレンズ部の額縁領域側の端面が剥き出しになって使用される場合には、レンズ部の端面の欠けや傷の防止、および表示装置内への埃等の混入を防ぐために、レンズ部の端面に保護部材を設けることで保護することが好ましい。図9に本発明による電子機器300の表示部302の額縁領域320F側端面付近を拡大して示す。図9に示すように電子機器300では透光性カバー324のレンズ部3241の端面に保護部材326が設けられている。同様に、電子機器200の表示部201のレンズ部2141の端面、表示部202のレンズ部2241の端面には、それぞれ、保護部材216、226が設けられることが好ましく(図6)、電子機器400の表示部402のレンズ部4241の端面、表示部403のレンズ部4341の端面にも、それぞれ、保護部材426、436が設けられることが好ましい(図8)。
【0106】
保護部材としては、表示画像の連続性を乱さないために、十分薄いことが望ましく、例えば接着フィルム等が好適に用いられる。
【0107】
また、保護部材として光吸収率の高いもの(例えば、95%以上)を用いれば、透光性カバーを透過する不要な光を吸収することができるため、表示品位を向上させることができ、好ましい。光吸収率が高い保護部材として、たとえば色が黒色等の保護部材が用いられてもよい。
【0108】
また、本実施形態の表示装置では、透光性カバーの観察者側表面での周囲光の反射を抑えるために、観察者側表面に光反射防止処理が施されてもよい。光反射防止処理として、透光性カバーより屈折率の低い層が観察者側表面に設けられてもよい。
【0109】
また、周囲光の反射を抑えるために、透光性カバーと表示パネルの表示面とは透光性カバーよりも屈折率の低い樹脂で接着されてもよい。図10に本発明による電子機器300の表示部302の一部を拡大して示す。図10に示すように、透光性カバー324は表示パネル320と樹脂327によって接着されている。樹脂327は、透光性カバー324より屈折率が低い。この場合、屈折率が透光性カバーの屈折率に近い樹脂で接着すると、表示パネルから出る光がレンズ部の背面側表面で屈折せず、レンズとしての役割を果たさなくなる。透光性カバーよりも屈折率の低い樹脂を使用すると、表示パネルから出た光がレンズ部の背面側表面で屈折するため好ましい。接着に用いる樹脂の屈折率と透光性カバーの屈折率との差は0.05以上であることが好ましい。樹脂327としては、例えばJSR社製のオプスター(屈折率1.36〜1.42)が用いられる。
【0110】
上述したように、本発明によると従来よりも簡便な構造で、表示パネルの額縁領域が見え難く、あるいは複数の表示パネルをタイリングした場合には継ぎ目が無い画像を表示することができ、額縁領域や非表示領域の前面においてブラックマトリクスが目立たず、かつ解像度の低下が抑制された表示品位が高い表示を薄い透光性カバーにより実現できる表示装置が提供される。したがって、本発明によると、薄型化、軽量化に適した表示装置が実現される。また、本発明による表示装置は、マトリクス状に繋げて大画面を実現する表示装置に適用できるとともに、携帯して用いるコンパクトな電子機器にも好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、テレビや情報表示用の表示装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0112】
10、20 液晶表示パネル
10A、20A 表示領域
10B、20B 中央表示領域
10D、20D 周辺表示領域
10F、20F 額縁領域
11、21 上基板
12、22 下基板
13、23 液晶層
14、24 透光性カバー
15、25 バックライト装置
16、26 シール部
19、29 表示パネルの表示面
30 非表示領域
70 ヒンジ
75 回転中心
100 液晶表示装置
141、241 レンズ部
142、242 平板部
1411、2411 レンズ部の観察者側表面
1412、2412 レンズ部の背面側表面
1421、2421 平板部の観察者側表面
2413 第1の交線
2414 第2の交線
B1 液晶表示パネル10と液晶表示パネル20との境界線
D1 第1の方向
D2 第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域と前記表示領域の外側に設けられた額縁領域とを有し、前記表示領域と前記額縁領域との間に第1の方向に延びる境界が存在する少なくとも1つの表示パネルと、
前記少なくとも1つの表示パネルの観察者側に配置された少なくとも1つの透光性カバーと、
を備え、
前記少なくとも1つの透光性カバーは、前記境界を跨ぐように配置されたレンズ部であって、前記表示領域から出射された光の一部を前記額縁領域の側に屈折させるレンズ部を有し、
前記レンズ部の観察者側表面は曲面であり、かつ、前記レンズ部の背面側表面も曲面であり、
前記レンズ部の観察者側表面と、前記レンズ部の背面側表面とは、いずれも凸曲面である、直視型の表示装置。
【請求項2】
前記レンズ部の観察者側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第1の交線と、前記レンズ部の背面側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第2の交線のうちの少なくとも一方は円弧である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記レンズ部の観察者側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第1の交線と、前記レンズ部の背面側表面と前記境界に垂直な平面との交線である第2の交線のうちの少なくとも一方は円弧ではない曲線である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記レンズ部の観察者側表面と、前記レンズ部の背面側表面のうちの少なくとも一方は自由曲面である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの透光性カバーは、前記レンズ部以外の部分に、観察者側表面が前記少なくとも1つの表示パネルの表示面と略平行な面で形成されている平板部を有する、請求項1から4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示領域には、前記第1の方向および、前記第1の方向に垂直な第2の方向に複数の画素が等間隔に配列されている、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記レンズ部に入射する光を出す画素に供給される表示信号は、前記平板部に入射する光を出す画素に供給される表示信号と比較して前記第2の方向に圧縮されている、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記レンズ部に入射する光を出す画素に供給される表示信号は、前記平板部に入射する光を出す画素に供給される表示信号と比較して、圧縮率a(0<a<1)で前記第2の方向に一様に圧縮されており、前記圧縮率aは、前記表示領域のうち前記レンズ部に入射する光を出す画素が配列されている領域である周辺表示領域の前記第2の方向の幅をL1、前記額縁領域の前記第2の方向の幅をL2として、以下の式で定義される、請求項6または7に記載の表示装置。
a=L1/(L1+L2)
【請求項9】
前記レンズ部は、前記周辺表示領域に形成される画像を、前記第2の方向に一様に1/a倍に拡大する、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記圧縮率aは0.7以上である、請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記周辺表示領域に形成される画像の輝度は、前記表示領域のうち前記周辺表示領域以外の領域に形成される画像の輝度よりも高い、請求項8から10のいずれかに記載の表示装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの表示パネルに向けて光を出射するバックライト装置をさらに備え、
前記周辺表示領域に配列された画素に向けて前記バックライト装置から出射される光の強度は、前記表示領域のうち前記周辺表示領域以外の領域に配列された画素に向けて前記バックライト装置から出射される光の強度よりも高い、請求項8から11のいずれかに記載の表示装置。
【請求項13】
前記レンズ部の前記額縁領域側の端部に保護部材が設けられている、請求項1から12のいずれかに記載の表示装置。
【請求項14】
前記保護部材は接着フィルムである、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記保護部材は光吸収率が95%以上である、請求項13または14に記載の表示装置。
【請求項16】
前記保護部材の色は黒色である、請求項13から15のいずれかに記載の表示装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの透光性カバーの観察者側には光反射防止処理が施されている、請求項1から16のいずれかに記載の表示装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの透光性カバーの観察者側には、前記少なくとも1つの透光性カバーより屈折率の低い層が設けられている、請求項1から17のいずれかに記載の表示装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの透光性カバーは、前記少なくとも1つの表示パネルと、前記少なくとも1つの透光性カバーよりも屈折率の低い樹脂で接着されている、請求項1から18のいずれかに記載の表示装置。
【請求項20】
前記表示領域と前記額縁領域との間に前記第1の方向に垂直な第2の方向に延びる第2の境界が存在し、
前記少なくとも1つの透光性カバーは前記第2の境界を跨ぐように配置された第2のレンズ部を有する、請求項1から19のいずれかに記載の表示装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つの表示パネルは前記第1の方向および/または前記第1の方向に垂直な第2の方向に互いに隣接するように配列された2つ以上の表示パネルを含み、
前記少なくとも1つの透光性カバーは前記第1の方向および/または前記第2の方向に互いに隣接するように配列された2つ以上の透光性カバーを含み、
前記2つ以上の透光性カバーのレンズ部は、前記第1の方向および/または前記第2の方向に互いに隣接する、請求項20に記載の表示装置。
【請求項22】
第1の表示部と、ヒンジと、前記第1の表示部に前記ヒンジを介して接続されている第2の表示部とを備え、
前記第1の表示部と前記第2の表示部とは請求項1から20のいずれかに記載の表示装置であり、
前記ヒンジによって、前記第1の表示部のレンズ部が前記第2の表示部のレンズ部と互いに隣接するよう前記第1の表示部と前記第2の表示部とが並ぶ開状態と、前記第1の表示部が前記第2の表示部に対して相対的に重なる閉状態とを取ることができる、電子機器。
【請求項23】
表示領域、および、前記表示領域の外側に設けられた額縁領域を有する第1の表示部と、
請求項1から20のいずれかに記載の表示装置を有し、前記第1の表示部の観察者側に配置されている第2の表示部と、
を備え、
観察者側から見て、前記第2の表示部が前記第1の表示部に重なる位置と、前記第2の表示部が前記第1の表示部と互いに隣接するとともに前記第2の表示部のレンズ部が前記第1の表示部の額縁領域に重なる位置との間を、前記第2の表示部がスライド可能となるよう、前記第1の表示部に前記第2の表示部が保持されている電子機器。
【請求項24】
請求項1から20のいずれかに記載の表示装置を有し、前記第2の表示部の観察者側に配置されている第3の表示部を備え、
観察者側から見て、前記第3の表示部が前記第2の表示部に重なる位置と、前記第3の表示部が前記第2の表示部と互いに隣接するとともに前記第3の表示部のレンズ部が前記第2の表示部の額縁領域に重なる位置との間を、前記第3の表示部がスライド可能となるよう、前記第2の表示部に前記第3の表示部が保持されている請求項23に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−215886(P2012−215886A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122414(P2012−122414)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【分割の表示】特願2010−517732(P2010−517732)の分割
【原出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】