説明

表示装置

【課題】互いに重なり合った複数の図柄を選択的に表示可能とすることにより、省スペース化および視認性の向上を図り、且つ安価な表示装置を提供する。
【解決手段】透光性のフィルム8上に、緑色の光を拡散する塗料により「定員超過」の文字を描いた緑色光拡散塗膜9と、赤色の光を拡散する塗料により「救出運転中」の文字を描いた赤色光拡散塗膜10と、を重ねて印刷して表示シート5を構成するとともに、その表示シート5の裏面側に赤色および緑色の光を選択的に発することが可能なバックライト6を配置し、バックライト6の発光色を選択切り替えすることで「定員超過」の文字または「救出運転中」の文字を選択的に発光・表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも一部が互いに重なり合った複数の図柄を選択的に表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗場およびかご室には、かごの運行状況等の様々な情報を乗客に伝達する表示装置が設けられている。
【0003】
この種の表示装置として、表示対象となる図柄を印刷した透光性のシートの裏面側にバックライトを設け、そのバックライトの発する光により上記シートを透かすことで上記シートに印刷されている図柄を乗客に示すようにした技術が例えば特許文献1,2に開示されており、バックライトの点灯および消灯の切り替えによって、上記シートに印刷されている図柄の表示および非表示を切り替えるようになっている。
【特許文献1】特開2005−104594号公報
【特許文献2】特開2006−21853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載の技術では、複数の図柄を選択的に表示する場合に、各図柄毎に独立した表示装置を設ける必要があるため、その設置スペースが大きくなり、好ましくない。特に、エレベータのかご操作盤上に表示装置を配置する場合等の表示装置の設置スペースに限りがある場合には、それぞれの図柄を小さくせざるを得ず、乗客からの視認性が低下するという問題があった。
【0005】
また、表示装置として例えば液晶ディスプレイを用いることにより上述の課題は解決できるが、この場合にはコスト的に不利となる。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑み、簡素な構造で複数の図柄を同位置において選択的に表示可能とすることにより、省スペース性および視認性の向上を図り、且つ安価な表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、互いに異なる特定波長の光を拡散する特性を有する複数の図柄表示層を透光性基板上に重ねて配置するとともに、この透光性基板の表側または裏側に上記複数の図柄表示層毎の特定波長の光を選択的に発光可能な面光源を配置し、この面光源が発光する光の波長の選択切り替えに応じて上記複数の図柄表示層のうちいずれか一つの図柄表示層を選択的に発光・表示させるようになっていることを特徴としている。
【0008】
ここで、上記複数の図柄表示層は少なくとも一部が互いに重なり合っていればよいことは言うまでもない。
【0009】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、面光源が発光すると、その光の波長を特定波長とする図柄表示層が面光源の発した光を拡散し、その図柄表示層が発光・表示されることとなるため、面光源が発光する光の波長を選択切り替えすることで、発光・表示する図柄表示層を切り替えることができる。
【0010】
その上で、請求項2に記載のように、上記複数の図柄表示層をそれぞれ印刷による塗膜をもって形成することで、上記複数の図柄表示層を容易に製造することができ、コストの面でより好ましいものとなる。
【0011】
さらに好ましくは、請求項3に記載のように、面光源としてエッジライト方式のバックライトを用いると、表示装置が薄型のものとなるメリットがある。
【0012】
より具体的には、例えば請求項4に記載のように、エレベータの乗場またはかご室に配置されるものとする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、面光源の発する光の波長を選択切り替えして発光・表示する図柄表示層を切り替えることにより、簡素な構造をもって同位置に複数の図柄を選択的に表示することが可能となり、省スペース性および視認性が向上するメリットがある上に、コスト的に有利となるメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明のより具体的な実施の形態としてエレベータのかご室に設けられたかご操作盤を示す正面図である。また、図2の(a)は図1におけるA−A断面図であって、図2の(b)は図2の(a)におけるB矢視図である。
【0015】
図1に示すようにかご操作盤1の上部には、かご位置表示器2のほか、第一の緊急用表示装置3および第二の緊急用表示装置4がそれぞれ設けられている。各緊急用表示装置3,4は図2の(a)に示すように表示シート5およびその表示シート5の裏面側に配置されたいわゆるエッジライト方式の面光源たるバックライト6からそれぞれ構成されているとともに、図2の(b)に示すように各緊急用表示装置3,4のバックライト6同士の間には遮光板7が配置されていて、各緊急用表示装置3,4がそれぞれ独立して表示を行うようになっている。
【0016】
ここで、各緊急用表示装置3,4は互いにほぼ同様の構造を有しているが、代表例として第一の緊急用表示装置3について以下に説明する。
【0017】
バックライト6は、長波長の光を発する赤色LED12Rおよび短波長の光を発する緑色LED12Gを直線状にそれぞれ交互に配置したLEDユニット12と矩形状の導光板11により構成されている。なお、導光板11はアクリル製であるとともに、導光板11のうち左右方向両端面および表示シート5と対向する面を除く面は図示外の白いマスクフィルムに覆われている。
【0018】
LEDユニット12は導光板11のうち左右方向両端面にそれぞれ対向配置されていて、各LED12G,12Rがそれぞれ独立して点灯可能となっている。すなわち、各LED12G,12Rのうちいずれか一方を選択的に点灯することで、その光が導光板11内に入射して導光板11の全面に導かれ、導光板11全面が赤色または緑色で均一に面発光することとなる。換言すれば、各LED12G,12Rはそれぞれ異なる波長の光を発するようになっていて、赤色LED12Rを点灯することで導光板11が赤色に相当する波長で面発光する一方で、緑色LED12Gを点灯することで導光板11が緑色に相当する波長で面発光することになる。
【0019】
他方、表示シート5は図2の(a)に示すように透光性のフィルム8を基板とし、そのフィルム8上に例えば「定員超過」の文字を描いた図柄表示層たる緑色光拡散塗膜9および例えば「救出運転中」の文字を描いた図柄表示層たる赤色光拡散塗膜10を重ね合わせたいわゆる積層構造のものとして構成されている。そして、表示シート5はかご操作盤1のベースプレート1aに形成された開口部1bを閉塞するように配置されていて、表示シート5の表面がベースプレート1の表面と面一となっている。
【0020】
図3は第一の緊急用表示装置3の表示内容を示す説明図であって、図3の(a)は緑色光拡散塗膜9の表示内容を示しているとともに、図3の(b)は赤色光拡散塗膜10の表示内容を示している。
【0021】
より詳細には、図3の(a)に示すように、緑色光拡散塗膜9は、「定員超過」の文字部9Gに緑色に相当する波長の光を拡散する塗料を、その文字部9Gを除く部位に赤色に相当する波長の光を透過するとともに緑色に相当する波長の光を吸収する塗料を、印刷によってそれぞれ塗布することで形成されている。一方、図3の(b)に示すように、赤色光拡散塗膜10は、「救出運転中」の文字部10Rに赤色に相当する波長の光を拡散する塗料を、その文字部10Rを除く部位に緑色に相当する波長の光を透過するとともに赤色に相当する波長の光を吸収する塗料を、印刷によってそれぞれ塗布することで形成されている。言い換えれば、各塗膜9,10はそれぞれ互いに異なる波長の光を拡散する特性を有している。さらに、両塗膜9,10はともに透光性を有していて、フィルム8および両塗膜9,10を重合させてなる表示シート5をバックライト6の発する光が透過するようになっている。
【0022】
なお、表示内容を変更可能とすべく表示シート5をベースプレート1aおよび導光板11から分離可能に構成することが望ましいが、表示内容の変更を要しない場合には、導光板11を透光性基板としてスクリーン印刷を施すことで各塗膜9,10を形成するようにしてもよい。また、各塗膜9,10をそれぞれ別のフィルムに印刷することで、緑色光拡散塗膜9を有する表示シートと赤色光拡散塗膜10を有する表示シートをそれぞれ独立して交換可能に構成してもよい。
【0023】
以上のように構成した表示装置では、第一の緊急用表示装置3の緑色LED12Gを点灯して導光板11を緑色に面発光させると、その緑色の光は赤色光拡散塗膜10を透過して緑色光拡散塗膜9の文字部9Gで拡散するとともに、その文字部9Gを除く部位では緑色の光が吸収されるため、図3の(a)に示すように「定員超過」の文字が発光・表示される。
【0024】
一方、第一の緊急用表示装置3の赤色LED12Rを点灯して導光板11を赤色に面発光させると、その赤色の光が赤色光拡散塗膜10のうち文字部10Rで拡散して緑色光拡散塗膜9を透過するとともに、その文字部10Rを除く部位では赤色の光が吸収されるため、図3の(b)に示すように「救出運転中」の文字が発光・表示される。すなわち、バックライト6の発光色を選択切り替えすることにより、「定員超過」の文字および「救出運転中」の文字のうちいずれか一方が選択的に表示されることとなる。
【0025】
図4は第二の緊急用表示装置4の表示内容を示す説明図であって、図4の(a)は緑色光拡散塗膜13の表示内容を示しているとともに、図4の(b)は赤色光拡散塗膜14の表示内容を示している。
【0026】
また、図4の(a)に示すように第二の緊急用表示装置4のうち緑色光拡散塗膜13には「しばらくお待ちください」の文字部13Gがスクリーン印刷により形成されている一方で、図4の(b)に示すように赤色光拡散塗膜14には「降りてください」の文字部14Rがスクリーン印刷により形成されていて、第二の緊急用表示装置4は「しばらくお待ちください」の文字および「降りてください」の文字のうちいずれか一方を選択的に表示するようになっている。
【0027】
したがって、本実施の形態における表示装置によれば、重ね合わせて配置された二つの図柄のうちいずれか一方を選択的に表示することが可能であるため、表示装置の省スペース化が図れるとともに、それぞれの文字を大きく表示することで表示の視認性が向上するメリットがある。
【0028】
その上、表示フィルム5はスクリーン印刷により容易に製造可能である上に、各LED12G,12Rのうち点灯するLEDを選択切り替えするだけで表示する図柄を容易に変更することができるため、コスト的に有利となるメリットがある。
【0029】
なお、本実施の形態では、ベースプレート1aに開口部1bを形成し、表示シート5の表面とベースプレート1aの表面とが面一となるようにしたが、各緊急用表示装置3,4は薄型のものとして形成されているため、各緊急用表示装置3,4をいわゆる壁掛け式としてベースプレート1aの表面上に配置し、ベースプレート1aの開口部1bを省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、エレベータのかご操作盤を示す正面図。
【図2】同図(a)は図1におけるA−A断面図、同図(b)は同図(b)におけるB矢視図。
【図3】第一の緊急用表示装置の表示内容を示す説明図。
【図4】第二の緊急用表示装置の表示内容を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
6…バックライト(面光源)
8…フィルム(透光性基板)
9…緑色光拡散塗膜(図柄表示層)
10…赤色光拡散塗膜(図柄表示層)
13…緑色光拡散塗膜(図柄表示層)
14…赤色光拡散塗膜(図柄表示層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる特定波長の光を拡散する特性を有する複数の図柄表示層を透光性基板上に重ねて配置するとともに、
この透光性基板の表側または裏側に上記複数の図柄表示層毎の特定波長の光を選択的に発光可能な面光源を配置し、
この面光源が発光する光の波長の選択切り替えに応じて上記複数の図柄表示層のうちいずれか一つの図柄表示層を選択的に発光・表示させるようになっていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記複数の図柄表示層がそれぞれ印刷による塗膜をもって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
面光源としてエッジライト方式のバックライトを用いていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
エレベータの乗場またはかご室に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−74552(P2008−74552A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255247(P2006−255247)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000228246)日本オーチス・エレベータ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】