説明

表示装置

【課題】回折反射を低減することの可能な表示装置を提供する。
【解決手段】
有機EL素子のアノード35Aの直下にソース32B(端子33B)が設けられており、ソース32Bの上面32B−1(端子33Bの上面33B−1)が、少なくともアノード35Aとの対向領域に形成されている。ソース32B(端子33B)の端部に対応して、アノード35Aの下地に形成された段差がアノード35Aの直下には存在せず、アノード35Aは下地の平坦面上に形成されている。これにより、外光がアノード35Aに入射したときに回折反射が生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(electro luminescence)素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、画素の発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL素子を用いた表示装置が開発され、商品化が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、光源(バックライト)が必要ないので、光源を必要とする液晶表示装置と比べて画像の視認性が高く、消費電力が低く、かつ素子の応答速度が速い。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。前者は、構造が単純であるものの、大型かつ高精細の表示装置の実現が難しいなどの問題がある。そのため、現在では、アクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。この方式は、画素ごとに配した発光素子に流れる電流を、発光素子ごとに設けた駆動回路内に設けた能動素子(一般にはTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ))によって制御するものである。
【0005】
図14は、一般的な有機EL表示装置の概略構成を表したものである。図14に記載の表示装置100は、複数の画素120がマトリクス状に配置された表示部110と、各画素120を駆動する駆動部(水平駆動回路130、書き込み走査回路140および電源走査回路150)とを備えている。
【0006】
各画素120は、赤色用の画素120R、緑色用の画素120Gおよび青色用の画素120Bからなる。画素120R,120G,120Bは、図15、図16に示したように、有機EL素子121(有機EL素子121R,121G,121B)およびそれに接続された画素回路122により構成されている。なお、図15は、画素120R,120G,120Bの回路構成を表したものである。図16は、画素120R,120G,120Bのレイアウトを表したものである。
【0007】
画素回路122は、サンプリング用のトランジスタTWS、保持容量Cs、駆動用のトランジスタTDrによって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。書き込み走査回路140から引き出されたゲート線WSLが行方向に延在して形成されており、コンタクト126Aを介して、トランジスタTWSのゲート123Aに接続されている。電源走査回路150から引き出されたドレイン線DSLも行方向に延在して形成されており、引出配線128Aを介して、トランジスタTDrのドレイン124Cに接続されている。また、水平駆動回路130から引き出された信号線DTLは列方向に延在して形成されており、コンタクト126Bおよび引出配線128Bを介して、トランジスタTWSのドレイン123Cに接続されている。トランジスタTWSのソース123Bは、コンタクト126Cを介して、駆動用のトランジスタTDrのゲート124Aと、保持容量Csの一端(端子125A)とに接続されている。トランジスタTDrのソース124Bと保持容量Csの他端(端子125B)とが、コンタクト126Dを介して、有機EL素子121R,121G,121B(以下、有機EL素子121R等と略する。)のアノード127Aに接続されている。有機EL素子121R等のカソード127Bは、グラウンド線GNDに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−083272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図17は、図12のA−A矢視方向の断面構成を表したものである。各画素120は、図16のA−A線に対応する部分において、基板111上に、ゲート124A(端子125A)、ゲート絶縁膜112、ソース124B(端子125B)、絶縁保護膜113、絶縁平坦化膜114、開口規定絶縁膜115、有機EL素子121および絶縁保護膜116を有している。有機EL素子121R等のアノード127Aの直下には、例えば膜厚が1μm程度のソース124B(端子125B)が存在しており、これによってアノード127Aに凹凸が生じるのを防止する目的で、絶縁平坦化膜114が形成されている。
【0010】
しかし、実際には、図17に示したように、ソース124B(端子125B)に起因して、アノード127Aに例えば0.3〜0.4μm程度の凹凸127Dが生じている。この凹凸127Dは、ソース124B(端子125B)の形状を反映しており、列方向に長く延在している。そのため、外光Lがアノード127Aに入射したときに、この凹凸127Dで回折反射するので、その反射光が観察者(図示せず)に見えてしまい、画質が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、回折反射を低減することの可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の表示装置は、有機EL素子および画素回路を画素ごとに有する表示部を備えたものである。画素回路は、映像信号を書き込む書き込み用の第1トランジスタと、第1トランジスタによって書き込まれた映像信号に基づいて有機EL素子を駆動する駆動用の第2トランジスタとを有している。第2トランジスタは、ゲート、ソースおよびドレインを有しており、有機EL素子は、アノード、有機層およびカソードを有している。ソースまたはドレインの上面が、少なくともアノードまたはカソードとの対向領域に形成されている。
【0013】
本発明の第1の表示装置では、第2トランジスタのソースまたはドレインの上面が、少なくとも有機EL素子のアノードまたはカソードとの対向領域に形成されている。これにより、ソースまたはドレインの端部に対応する段差がアノードまたはカソードの直下には存在せず、アノードまたはカソードは平坦面上に形成されている。
【0014】
本発明の第2の表示装置は、有機EL素子および画素回路を画素ごとに有する表示部を備えたものである。画素回路は、映像信号を書き込む書き込み用の第1トランジスタと、第1トランジスタによって書き込まれた映像信号に基づいて有機EL素子を駆動する駆動用の第2トランジスタとを有している。第2トランジスタは、ゲート、ソースおよびドレインを有しており、有機EL素子は、アノード、有機層およびカソードを有している。ソースまたはドレインは、連続した湾曲面を含む長辺部を有している。
【0015】
本発明の第2の表示装置では、第2トランジスタのソースまたはドレインが、連続した湾曲面を含む長辺部を有している。これにより、有機EL素子のアノードまたはカソードには、ソースまたはドレインの長辺部に形成された、連続した湾曲面に対応した凹凸が形成されている。
【0016】
ここで、本発明の第1および第2の表示装置において、表示部が、ゲートと、ソースまたはドレインとの間に接続された保持容量を画素ごとに有していてもよい。この場合、保持容量を、ソースまたはドレインのうち、ソースまたはドレインの上面が少なくともアノードまたはカソードとの対向領域に形成されている方と、ゲートとによって構成することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の表示装置によれば、第2トランジスタのソースまたはドレインの上面を、少なくとも有機EL素子のアノードまたはカソードとの対向領域に形成するようにした。これにより、外光がアノードまたはカソードに入射したときに、回折反射を低減することができる。その結果、回折反射に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0018】
本発明の第2の表示装置によれば、第2トランジスタのソースまたはドレインに、連続した湾曲面を含む長辺部を設けるようにした。これにより、外光がアノードまたはカソードに入射したときに、一定方向に回折反射が生じることを低減することができる。その結果、回折反射に起因した画質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の概略構成図である。
【図2】図1の画素の回路構成図である。
【図3】図1の画素のレイアウト図である。
【図4】図3の画素の断面構成図である。
【図5】図1の画素の一変形例のレイアウト図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置に含まれる画素のレイアウト図である。
【図7】図6の画素の断面構成図である。
【図8】上記各実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図9】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図10】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図11】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図12】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図13】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図14】従来の表示装置の概略構成図である。
【図15】図10の画素の回路構成図である。
【図16】図10の画素のレイアウト図である。
【図17】図16の画素の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(ソースの面積が大きい)
2.変形例
3.第2の実施の形態(カソードの端部に、連続した湾曲面を含む)
4.変形例
5.モジュールおよび適用例
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置1の全体構成の一例を表したものである。この表示装置1は、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板40(後述)上に、表示部10と、表示部10の周辺に形成された周辺回路部20(駆動部)とを備えている。
【0022】
[表示部10]
表示部10は、複数の画素11を表示部10の全面に渡ってマトリクス状に配置したものであり、外部から入力された映像信号20aに基づく画像をアクティブマトリクス駆動により表示するものである。各画素11は、赤色用の画素11Rと、緑色用の画素11Gと、青色用の画素11Bとを含んでいる。
【0023】
図2は、画素11R,11G,11Bの回路構成の一例を表したものである。図3は、画素11R,11G,11Bのレイアウトを表したものである。画素11R,11G,11B内には、図2に示したように、有機EL素子12R,12G,12B(発光素子)と、画素回路13とが設けられている。
【0024】
画素回路13は、トランジスタTWS(第1トランジスタ)と、トランジスタTDr(第2トランジスタ)と、トランジスタTDrのゲート−ソース間に接続された保持容量Csとを含んで構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。トランジスタTWSは、映像信号を書き込む書き込み用のトランジスタである。トランジスタTDrは、トランジスタTWSによって書き込まれた映像信号に基づいて有機EL素子12R,12G,12B(以下、有機EL素子12と総称する)を駆動する駆動用のトランジスタである。トランジスタTWS,TDrは、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。
【0025】
[周辺回路部20]
周辺回路部20は、タイミング制御回路21と、水平駆動回路22と、書き込み走査回路23と、電源走査回路24とを有している。タイミング制御回路21は、表示信号生成回路21Aと、表示信号保持制御回路21Bとを含んでいる。また、周辺回路部20には、ゲート線WSLと、ドレイン線DSLと、信号線DTLと、グラウンド線GNDとが設けられている。なお、グラウンド線は、グラウンドに接続されるものであり、グラウンドに接続されたときにグラウンド電圧(参照電圧)となる。
【0026】
表示信号生成回路21Aは、外部から入力された映像信号20aに基づいて、例えば1画面ごと(1フィールドの表示ごと)に表示部10に表示するための表示信号21aを生成するものである。
【0027】
表示信号保持制御回路21Bは、表示信号生成回路21Aから出力された表示信号21aを1画面ごと(1フィールドの表示ごと)に、例えばSRAM(Static Random Access Memory)などから構成されたフィールドメモリに格納して保持するものである。この表示信号保持制御回路21Bはまた、各画素11を駆動する水平駆動回路22、書き込み走査回路23および電源走査回路24が連動して動作するように制御する役割も果たしている。具体的には、表示信号保持制御回路21Bは、書き込み走査回路23に対しては制御信号21bを、電源走査回路24に対しては制御信号21cを、表示信号駆動回路21Cに対しては制御信号21dをそれぞれ出力するようになっている。
【0028】
水平駆動回路22は、表示信号保持制御回路21Bから出力された制御信号21dに応じた電圧を出力可能となっている。具体的には、水平駆動回路22は、表示部10の各画素11に接続された信号線DTLを介して、書き込み走査回路23により選択された画素11へ所定の電圧を供給するようになっている。
【0029】
書き込み走査回路23は、表示信号保持制御回路21Bから出力された制御信号21bに応じた電圧を出力可能となっている。具体的には、書き込み走査回路23は、表示部10の各画素11に接続されたゲート線WSLを介して、駆動対象の画素11へ所定の電圧を供給し、サンプリング用のトランジスタTWSを制御するようになっている。
【0030】
電源走査回路24は、表示信号保持制御回路21Bから出力された制御信号21cに応じた電圧を出力可能となっている。具体的には、電源走査回路24は、表示部10の各画素11に接続されたドレイン線DSLを介して、駆動対象の画素11へ所定の電圧を供給し、有機EL素子12R等の発光および消光を制御するようになっている。
【0031】
[レイアウト]
次に、図2、図3を参照して、各構成要素の接続関係について説明する。書き込み走査回路23から引き出されたゲート線WSLは、行方向に延在して形成されており、コンタクト34Aを介して、トランジスタTWSのゲート31Aに接続されている。電源走査回路24から引き出されたドレイン線DSLも行方向に延在して形成されており、引出配線36Aを介して、トランジスタTDrのドレイン32Cに接続されている。また、水平駆動回路22から引き出された信号線DTLは列方向に延在して形成されており、コンタクト34Bおよび引出配線36Bを介して、トランジスタTWSのドレイン31Cに接続されている。トランジスタTWSのソース31Bは駆動用のトランジスタTDrのゲート32Aと、保持容量Csの一端(端子33A)に接続されている。トランジスタTDrのソース32Bと保持容量Csの他端(端子33B)とが、コンタクト34Dを介して、有機EL素子12のアノード35Aに接続されている。有機EL素子12のカソード35Bは、グラウンド線GNDに接続されている。
【0032】
[断面構成]
図4は、図3のA−A矢視方向の断面構成を表したものである。各画素11は、図3のA−A線に対応する部分において、基板40上に、ゲート32A(端子33A)、ゲート絶縁膜41、ソース32B(端子33B)、絶縁保護膜42、絶縁平坦化膜43、有機EL素子12、開口規定絶縁膜44および絶縁保護膜45を有している。
【0033】
ゲート32A(端子33A)は、基板40の表面に形成されており、おおむね、後述のEL開口部44Aとの対向領域を含む領域に形成されている。なお、図3には、ゲート32A(端子33A)が、EL開口部44Aのうち上部を除いた領域との対向領域を含む領域に形成されている場合が例示されている。ゲート絶縁膜41は、ゲート32A(端子33A)を含む基板40表面全体を覆っている。なお、ゲート32Aは極めて薄いことから、ゲート絶縁膜41には、ゲート32Aに起因する凹凸は実質的に存在していない。つまり、ゲート絶縁膜41の上面は、光学的には平坦面と同等である。
【0034】
ソース32B(端子33B)は、ゲート絶縁膜41と絶縁保護膜42との間に形成されている。ソース32Bの上面32B−1(端子33Bの上面33B−1)は、平坦面となっており、少なくともアノード35Aとの対向領域に形成されている。なお、後述するように、アノード35Aの上面の一部がEL開口部44Aに相当しているので、上面32B−1(33B−1)は、EL開口部44Aとの対向領域を含む領域に形成されている。
【0035】
絶縁保護膜42は、ゲート絶縁膜41およびソース32B(端子33B)の表面全体を覆っている。絶縁保護膜42は、ゲート絶縁膜41およびソース32B(端子33B)の表面にならって形成されていることから、ソース32B(端子33B)の端部に対応して、段差42Aを有している。この段差42Aは、アノード35Aとの非対向領域に形成されており、絶縁保護膜42の上面のうち少なくともアノード35Aとの対向領域は、平坦面となっている。
【0036】
絶縁平坦化膜43は、ソース32B(端子33B)の下地を平坦化することを目的として設けられたものであり、絶縁保護膜42の表面全体を覆っている。絶縁平坦化膜43は、例えば、段差42Aに対応した部位に、段差42Aの高さの半分以下程度の高さの段差43Aを有している。この段差43Aは、アノード35Aとの非対向領域に形成されており、絶縁平坦化膜43の上面のうち少なくともアノード35Aとの対向領域は、平坦面となっている。
【0037】
有機EL素子12は、例えば、アノード35A(陽極)、有機層35Cおよびカソード35B(陰極)が基板40側から順に積層された構成を有している。有機層35Cは、例えば、アノード35A側から順に、正孔注入効率を高める正孔注入層と、発光層への正孔輸送効率を高める正孔輸送層と、電子と正孔との再結合による発光を生じさせる発光層と、発光層への電子輸送効率を高める電子輸送層とを積層してなる積層構造を有している。アノード35Aは、絶縁平坦化膜43のうち段差43Aで囲まれた部分の表面(平坦面)上に形成されている。そのため、アノード35Aには、段差42A,43Aに対応した凹凸は存在せず、アノード35Aは、絶縁平坦化膜43の平坦面にならった平坦な膜となっている。カソード35Bは、少なくとも有機層35Cの上面に接して形成されており、例えば、有機層35Cおよび開口規定絶縁膜44の表面全体を覆っている。
【0038】
開口規定絶縁膜44は、有機EL素子12のアノード35Aと同一面内に形成されており、アノード35Aに対応して開口(EL開口部44A)を有している。EL開口部44Aは、アノード35Aの上面との対向領域の一部に形成されており、開口規定絶縁膜44が、アノード35Aの外縁(周縁)を覆っている。つまり、EL開口部44Aの底面には、アノード35Aの上面の一部だけが露出しており、有機層35Cは、アノード35Aの上面のうちEL開口部44Aの底面に露出している部分と接している。
【0039】
絶縁保護膜45は、カソード35Bの表面全体を覆っている。絶縁保護膜45は、有機EL素子12で発光した光に対して透明な材料によって形成されている。そのため、絶縁保護膜45は、有機EL素子12の発光光だけでなく、有機EL素子12の発光光と共通する波長帯の外光も透過することが可能となっている。
【0040】
[動作・効果]
本実施の形態の表示装置1では、各画素11において画素回路13がオンオフ制御され、各画素11の有機EL素子12に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、アノード35Aとカソード35Bとの間で多重反射し、カソード35Bを透過して外部に取り出される。その結果、表示部10において画像が表示される。
【0041】
ところで、従来の表示装置では、例えば、図17に示したように、有機EL素子121R等のアノード127Aの直下に、膜厚が1μm程度のソース124B(端子125B)が存在しており、それに起因して、アノード127Aに0.3〜0.4μm程度の凹凸127Dが生じていた。この凹凸127Dは、ソース124B(端子125B)の形状を反映しており、列方向に長く延在している。そのため、外光Lがアノード127Aに入射したときに、この凹凸127Dで回折反射する。その結果、その反射光が観察者(図示せず)に見えてしまい、画質が低下するなどの問題が発生していた。
【0042】
一方、本実施の形態では、従来例と同様、有機EL素子12のアノード35Aの直下に、膜厚が1μm程度のソース32B(端子33B)が存在している。しかし、本実施の形態では、ソース32Bの上面32B−1(端子33Bの上面33B−1)が、少なくともアノード35Aとの対向領域に形成されている。そのため、ソース32B(端子33B)の端部に対応して絶縁保護膜42や絶縁平坦化膜43に形成された段差42A,43Aがアノード35Aの直下には存在せず、アノード35Aは絶縁平坦化膜43の平坦面上に形成されている。つまり、アノード35Aには、段差42A,43Aに対応した凹凸は存在せず、アノード35Aは、絶縁平坦化膜43の平坦面にならった平坦な膜となっている。従って、外光Lがアノード35Aに入射したときに、従来のような回折反射が生じることはないので、回折反射に起因して画質が低下する虞はない。
【0043】
[変形例]
上記実施の形態では、上面32B−1(33B−1)が、少なくともアノード35Aとの対向領域に形成されている場合が例示されていたが、従来例と比べて回折反射を低減することの可能な範囲内で、アノード35Aとの対向領域からずれていてもよい。例えば、図5に示したように、上面32B−1(33B−1)が、アノード35Aとの関係で図の上方にずれており、アノード35Aの短辺部35A−1(短手の辺およびその近傍)とだけ非対向となっていてもよい。図5の場合には、アノード35Aの長手方向の辺およびその近傍については、上面32B−1(33B−1)と対向しており、少なくとも回折反射が生じない。従って、従来例よりも、回折反射を低減することができる。その結果、回折反射に起因した画質の低下を抑制することができる。また、図示しないが、アノード35Aに生じる凹凸が例えば0.1μm程度と極めて小さくなる場合に限り、上面32B−1(33B−1)の端部が、アノード35Aの端部よりも若干内側に位置していてもよい。
【0044】
<第2の実施の形態>
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の画素11(11R,11G,11B)のレイアウトを表したものである。本実施の形態の表示装置は、トランジスタTDrのゲート32Aの代わりにゲート52Aを、トランジスタTDrのソース32Bの代わりにソース52Bをそれぞれ備えている点で上記実施の形態およびその変形例の表示装置1の構成と相違する。さらに、本実施の形態の表示装置は、保持容量Csの端子33Aの代わりに端子53Aを、保持容量Csの端子33Bの代わりに端子53Bをそれぞれ備えている点で上記実施の形態およびその変形例の表示装置1の構成と相違する。そこで、以下では、上記実施の形態およびその変形例との相違点について主に説明し、上記実施の形態およびその変形例との共通点についての説明を適宜省略するものとする。
【0045】
[レイアウト]
本実施の形態では、ゲート52A(端子53A)は、上記実施の形態のゲート32A(端子33A)の面積よりも小さな面積となっており、トランジスタTDrのゲート32Aとして主に機能する部分を除いて、アノード35Aとの対向領域内に納まっている。つまり、ゲート52A(端子53A)は、図16に示した従来例のゲート124A(端子125A)と同様の構成となっている。
【0046】
一方、ソース52B(端子53B)についても、上記実施の形態のソース32B(端子33B)の面積よりも小さな面積となっており、トランジスタTDrのソース52Bとして主に機能する部分を除いて、アノード35Aとの対向領域内に納まっている。つまり、ソース52B(端子53B)は、その点では、図16に示した従来例のソース124B(端子125B)と同様の構成となっている。
【0047】
ただし、ソース52B(端子53B)は、従来例のソース124B(端子125B)とは異なり、少なくとも、ソース52B(端子53B)の長辺部54(長手の辺およびその近傍)で面内方向にうねっており、直線状になっていない。つまり、ソース52B(端子53B)は、少なくともソース52B(端子53B)の長辺部54に、連続した湾曲面を含んでいる。なお、図6には、ソース52B(端子53B)が、長辺部54だけでなく、短辺部55(短手の辺およびその近傍)にも連続した湾曲面を含んでいる場合が例示されている。さらに、図6には、ソース52B(端子53B)と同一層内に形成された、トランジスタTWSのソース31Bについても、長手の辺およびその近傍に連続した湾曲面を含んでいる場合が例示されている。
【0048】
[断面構成]
図7は、図6のA−A矢視方向の断面構成を表したものである。各画素11は、図6のA−A線に対応する部分において、基板40上に、ゲート52A(端子53A)、ゲート絶縁膜41、ソース52B(端子53B)、絶縁保護膜42、絶縁平坦化膜43、有機EL素子12、開口規定絶縁膜44および絶縁保護膜45を有している。
【0049】
ゲート52A(端子53A)は、基板40の表面に形成されており、上述したように、トランジスタTDrのゲート32Aとして主に機能する部分を除いて、アノード35Aとの対向領域内に形成されている。ゲート絶縁膜41は、ゲート52A(端子53A)を含む基板40表面全体を覆っている。なお、ゲート52A(端子53A)は極めて薄いことから、ゲート絶縁膜41には、ゲート52A(端子53A)に起因する凹凸は実質的に存在していない。つまり、ゲート絶縁膜41の上面は、光学的には平坦面と同等である。
【0050】
ソース52B(端子53B)は、ゲート絶縁膜41と絶縁保護膜42との間に形成されている。ソース52Bの上面52B−1(端子53Bの上面53B−1)は、平坦面となっており、上述したように、トランジスタTDrのソース52Bとして主に機能する部分を除いて、アノード35Aとの対向領域内に形成されている。さらに、上面52B−1(53B−1)は、トランジスタTDrのソース52Bとして主に機能する部分を除いて、EL開口部44Aとの対向領域内に形成されている。
【0051】
絶縁保護膜42は、ゲート絶縁膜41およびソース52B(端子53B)の表面全体を覆っている。絶縁保護膜42は、ゲート絶縁膜41およびソース52B(端子53B)の表面にならって形成されていることから、ソース52B(端子53B)の端部に対応する部位に段差42Aを有している。段差42Aは、ソース52B(端子53B)の端部と同様、面内方向にうねっている(連続した湾曲面を含んでいる)。段差42Aは、アノード35AおよびEL開口部44Aとの対向領域内に形成されており、絶縁保護膜42の上面のうちアノード35AおよびEL開口部44Aとの対向領域は、面内方向にうねりを持った凹凸面となっている。
【0052】
絶縁平坦化膜43は、ソース52B(端子53B)の下地を平坦化することを目的として設けられたものであり、絶縁保護膜42の表面全体を覆っている。絶縁平坦化膜43は、例えば、段差42Aに対応した部位に、段差42Aの高さの半分以下程度の高さの段差43Aを有している。段差43Aは、段差42Aと同様、面内方向にうねっている(連続した湾曲面を含んでいる)。段差43Aは、アノード35AおよびEL開口部44Aとの対向領域内に形成されており、絶縁平坦化膜43の上面のうち少なくともアノード35AおよびEL開口部44Aとの対向領域は、面内方向にうねりを持った凹凸面となっている。
【0053】
有機EL素子12において、アノード35Aは、絶縁平坦化膜43のうち段差43Aを含む表面(凹凸面)上に形成されている。そのため、アノード35Aには、段差43Aに対応した凹凸が形成されており、絶縁平坦化膜43の凹凸面にならった段差35Dを有している。段差35Dは、段差43Aと同様、面内方向にうねっている(連続した湾曲面を含んでいる)。段差35DはEL開口部44Aの底面に露出しており、有機層35Cおよびカソード35Bにも、段差35Dに対応した凹凸が形成されている。
【0054】
[効果]
本実施の形態の表示装置では、従来例と同様、有機EL素子12のアノード35Aの直下に、膜厚が1μm程度のソース52B(端子53B)が存在している。さらに、ソース52B(端子53B)の上面52B−1(53B−1)は、従来例と同様、トランジスタTDrのソース52Bとして主に機能する部分を除いて、EL開口部44Aとの対向領域内に形成されている。しかし、本実施の形態では、ソース52B(端子53B)は、ソース52B(端子53B)の長辺部54に連続した湾曲面を含んでいる。そのため、アノード35Aには、ソース52B(端子53B)の長辺部54に形成された、連続した湾曲面に対応した凹凸が形成されている。さらに、本実施の形態では、ソース52B(端子53B)は、ソース52B(端子53B)の短辺部55にも連続した湾曲面を含んでいる。そのため、アノード35Aには、ソース52B(端子53B)の短辺部55に形成された、連続した湾曲面に対応した凹凸が形成されている。従って、外光Lがアノード35Aに入射したときに、一定方向に回折反射が生じることはないので、回折反射に起因して画質が低下する虞はない。
【0055】
[変形例]
上記実施の形態では、ソース52B(端子53B)が、長辺部54および短辺部55に連続した湾曲面を含んでいる場合が例示されていたが、従来例と比べて回折反射を低減することの可能な範囲内で、連続した湾曲面の形成領域を削減してもよい。例えば、図示しないが、ソース52B(端子53B)の長辺部54にだけ連続した湾曲面を設け、短辺部55にはそのような湾曲面を設けず、直線状の端面を設けてもよい。これにより、一定方向に回折反射が生じることを低減することができる。その結果、回折反射に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0056】
<モジュールおよび適用例>
以下、上記各実施の形態およびその変形例で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態等の表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0057】
[モジュール]
上記実施の形態等の表示装置は、例えば、図8に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板2の一辺に、表示部10を封止する部材(図示せず)から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、タイミング制御回路21、水平駆動回路22、書き込み走査回路23および電源走査回路24の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0058】
[適用例1]
図9は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態等の表示装置により構成されている。
【0059】
[適用例2]
図10は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態等の表示装置により構成されている。
【0060】
[適用例3]
図11は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態等の表示装置により構成されている。
【0061】
[適用例4]
図12は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態等の表示装置により構成されている。
【0062】
[適用例5]
図13は、上記実施の形態等の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態等の表示装置により構成されている。
【0063】
以上、上記各実施の形態およびその変形例ならびに適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0064】
例えば、上記実施の形態等では、表示装置がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路13の構成は上記実施の形態等で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを画素回路13に追加してもよい。その場合、画素回路13の変更に応じて、上述した水平駆動回路22、書き込み走査回路23、電源走査回路24のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0065】
また、上記実施の形態等では、水平駆動回路22、書き込み走査回路23および電源走査回路24の駆動を信号保持制御回路21Bが制御していたが、他の回路がこれらの駆動を制御するようにしてもよい。また、水平駆動回路22、書き込み走査回路23および電源走査回路24の制御は、ハードウェア(回路)で行われていてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われていてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態等では、トランジスタTWSのソースおよびドレインや、トランジスタTDrのソースおよびドレインが固定されたものとして説明されていたが、いうまでもなく、電流の流れる向きによっては、ソースとドレインの対向関係が上記の説明とは逆になることがある。
【0067】
また、上記実施の形態等では、トランジスタTWS,TDrがnチャネルMOS型のTFTにより形成されているものとして説明されていたが、トランジスタTWS,TDrの少なくとも一方がpチャネルMOS型のTFTにより形成されていてもよい。なお、トランジスタTDrがpチャネルMOS型のTFTにより形成されている場合には、上記実施の形態等において、有機EL素子12のアノード35Aがカソードとなり、有機EL素子12のカソード35Bがアノードとなる。また、上記実施の形態等において、トランジスタTWS,TDrは、アモルファスシリコン型のTFTであってもよいし、低温ポリシリコン型のTFTであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…表示装置、10…表示部、11,11R,11G,11B…画素、12,12R,12G,12B…有機EL素子、13…画素回路、20…周辺回路部、21…タイミング制御回路、21A…表示信号生成回路、21B…表示信号保持制御回路、22…水平駆動回路、23…書き込み走査回路、24…電源走査回路、31A,32A…ゲート、31B,32B…ソース、32B−1,33B−1,52B−1,53B−1…上面、31C,32C…ドレイン、33A,33B…端子、34A,34B,34C,34D…コンタクト、35A…アノード、35B…カソード、35C…有機層、35D,42A,43A…段差、35A−1,55…短辺部、36A,36B…引出線、40…基板、41…ゲート絶縁膜、42,45…絶縁保護膜、43…絶縁平坦化膜、44…開口規定絶縁膜、44A…EL開口部、54…長辺部、Cs…保持容量、DSL…ドレイン線、DTL…信号線、L…外光、TDr,TWS…トランジスタ、WSL…ゲート線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子および画素回路を画素ごとに有する表示部を備え、
前記画素回路は、映像信号を書き込む書き込み用の第1トランジスタと、前記第1トランジスタによって書き込まれた映像信号に基づいて前記有機EL素子を駆動する駆動用の第2トランジスタとを有し、
前記第2トランジスタは、ゲート、ソースおよびドレインを有し、
前記有機EL素子は、アノード、有機層およびカソードを有し、
前記ソースまたは前記ドレインの上面が、少なくとも前記アノードまたは前記カソードとの対向領域に形成されている
表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記ゲートと、前記ソースまたは前記ドレインとの間に接続された保持容量を前記画素ごとに有し、
前記保持容量は、前記ソースまたは前記ドレインのうち、前記ソースまたは前記ドレインの上面が少なくとも前記アノードまたは前記カソードとの対向領域に形成されている方と、前記ゲートとによって構成されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
有機EL素子および画素回路を画素ごとに有する表示部を備え、
前記画素回路は、映像信号を書き込む書き込み用の第1トランジスタと、前記第1トランジスタによって書き込まれた映像信号に基づいて前記有機EL素子を駆動する駆動用の第2トランジスタとを有し、
前記第2トランジスタは、ゲート、ソースおよびドレインを有し、
前記有機EL素子は、アノード、有機層およびカソードを有し、
前記ソースまたは前記ドレインは、連続した湾曲面を含む長辺部を有する
表示装置。
【請求項4】
前記ソースまたは前記ドレインは、連続した湾曲面を含む短辺部をさらに有する
請求項3に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−205705(P2010−205705A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53159(P2009−53159)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】