説明

表示装置

【課題】簡易な構成によって焼きつきを防止し、安定した表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】青波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルター8を、有機EL素子の光取り出し側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を備えた表示装置に関するものであり、詳しくは多色表示が可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型デバイスである有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の表示部には、第1電極と第2電極とに狭持された有機化合物層を備える有機EL素子が複数配列されており、該有機化合物層に少なくとも含まれる発光層が発光し、画像を表示する。多色表示させる方法としては、各画素にそれぞれ異なる色で発光する発光層を形成することで、発光色の異なる複数の種類の副画素を構成する方法が一般的である。有機EL表示装置のフルカラー化方式としては、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の有機EL素子を副画素として並置し、それぞれ独立に発光させる方式(RGBパターニング方式)が知られている。また、別の方式として、白色(W)の有機EL素子に、各々R,G,Bのカラーフィルターを設置し、3色の副画素として発光させる方式(W+カラーフィルター方式)が知られている。
【0003】
フルカラーディスプレイとして実用上の課題は、有機EL素子の劣化によって起こる画像の焼きつき現象である。有機EL素子は発光することによって発光効率が低下するため、固定パターンを長時間表示すると、高輝度で光る副画素が集中的に発光量の低下を生じ、表示部が不均一な劣化を起こしてしまう。パターンにもよるが、2乃至5%程度の発光量の不均一性が現れると焼きつきとして視認される。
【0004】
この問題を解決するためには、特に駆動初期、2乃至5%程度の発光量低下を起こすまでの駆動時間を延ばす必要がある。しかしながら、現状、特に青色発光の有機EL素子の駆動安定性は十分でなく、RGBパターニング方式では、青の副画素が焼きつく問題があった。また、W+カラーフィルター方式においても、白色発光素子を構成する青色発光層の駆動安定性が低いため、駆動によって青色発光成分が減少し、青の副画素が焼きつく問題があった。
【0005】
焼きつき現象の対策の一例としては、特許文献1に、光検出器を画素毎に設けることで発光量低下を検知し、画素毎に駆動信号を補正することで、焼きつきを補償する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−139895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の手法では、画素毎に光検出器を設けるため画素構造が極めて複雑になり、また、光検出量に基づいて、画素毎に駆動信号を調整・補償するという複雑な駆動を行う必要があった。
【0008】
本発明の課題は、簡易な構成によって焼きつきを抑制し、安定した表示が可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、少なくとも青発光領域を含む複数の有機EL素子を2次元状に配置した有機EL素子アレイと、青波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターと、を有することを特徴とする表示装置である。
【0010】
本発明の第2は、劣化速度が速い有機EL素子と、劣化速度が遅い有機EL素子と、前記劣化速度が速い有機EL素子の発する光の波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターと、を有することを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構造で画素の焼きつきを抑制し、安定した表示が可能な表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のRGBパターニング方式の表示装置の断面模式図である。
【図2】有機EL素子の積層構成の一例の断面模式図である。
【図3】劣化補償フィルターの透過率の一例を示す図である。
【図4】劣化補償フィルターの透過率の時間変化の一例を示す図である。
【図5】青有機EL素子の発光量の時間変化の一例を示す図である。
【図6】青副画素から取り出される発光量の時間変化の一例を示す図である。
【図7】無機ガスバリア層を用いた表示装置の断面模式図である。
【図8】ボトムエミッション構成の表示装置の断面模式図である。
【図9】本発明のW+カラーフィルター方式の表示装置の断面模式図である。
【図10】白色発光有機EL素子の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の表示装置は、少なくとも青発光領域を含む有機EL素子を2次元状に配置した有機EL素子アレイと、劣化補償フィルターとを有する。そして、劣化補償フィルターが、青波長域において経時的に透過率が向上することにより、有機EL素子の焼きつきが補償される。以下、本発明の表示装置の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明の表示装置の一実施形態であるRGBパターニング方式の表示装置の1画素分の断面模式図である。本実施形態では、1画素が赤(R)、緑(G)、青(B)の副画素から構成されており、各副画素は赤発光、緑発光、青発光の発光層を有する有機EL素子を有している。以下、便宜上、R,G,Bの各副画素を赤副画素、緑副画素、青副画素と記し、R,G,Bの各有機EL素子をそれぞれ赤有機EL素子、緑有機EL素子、青有機EL素子と記す。
【0015】
図1中、1は基板、2は駆動回路、3は層間絶縁膜或いは平坦化膜、4は第1電極、5は素子分離膜、6R、6G、6BはそれぞれR,G,Bの有機化合物層、7は第2電極、8は劣化補償フィルター、9は封止基板である。
【0016】
基板1としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。
【0017】
基板1上にはトランジスタ、キャパシタ等の駆動回路2が形成され、表示部外に設置された電源やドライバ等(不図示)に配線されている。駆動回路2の上部には、該駆動回路2の凹凸を平坦化し、隣接する駆動回路2間を絶縁する層間絶縁膜或いは平坦化膜3が形成される。層間絶縁膜或いは平坦化膜3としては、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機絶縁材料や、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等からなる樹脂材料が用いられる。その上部には、第1電極4が形成され、第1電極4は駆動回路2に電気的に接続されている。第1電極4としては、Cr、Al、Ag、Au、Pt、ITO、IZO(登録商標)、ZnO等、有機ELパネルの電極として公知の材料を用いることができる。また、2つ以上の異なる材料を積層して下部電極層としてもよい。一般的にはトップエミッション構造(基板と反対側から光を取り出す構成)においては反射性電極を用い、ボトムエミッション構造(基板側から光を取り出す構成)においては透明電極を用いることができる。図1の実施形態ではトップエミッション構造を例に説明する。
【0018】
副画素間には素子分離膜5を形成する。素子分離膜5は副画素の発光領域を規定するものである。素子分離膜5の材料には絶縁材料が好適に用いられ、具体的には、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機絶縁材料や、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック系樹脂等からなる樹脂材料が用いられる。
【0019】
第1電極4上部には、順に、有機化合物層6R、6G、6B、第2電極7が設置され、各副画素がそれぞれ有機EL素子を形成している。有機化合物層6R、6G、6Bは、R,G,Bを発光する発光層を有し、その他に、複数の層が積層されていてもよい。代表的な有機EL素子の構成を図2に示す。
【0020】
図2に示す有機EL素子は、陽極21、ホール注入層22、ホール輸送層23、発光層24、電子輸送層25、電子注入層26、陰極27で構成されるが、従来知られている他の構成を用いることも可能である。図1の第1電極4が陽極21、第2電極7が陰極27に対応してもよいし、逆であってもかまわない。
【0021】
ホール注入層22及びホール輸送層23に用いられる材料としては、陽極21からのホールの注入を容易にし、また注入されたホールを発光層24に輸送する優れた輸送特性を有することが好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体が挙げられる。また、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、及びポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)が挙げられる。さらに、その他、導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。また、ホール注入層22としては、五酸化バナジウム、酸化モリブデン等の無機酸化物を用いることができる。ホール注入層22は単一材料で形成しても、複数の材料を混合して形成することも可能である。例えば、ホスト材料にアクセプタ材料をドープすることで自由キャリアを発生させ、陽極21からのホール注入のエネルギー障壁を軽減することも可能である。
【0022】
発光層24に用いられる材料としては、多環縮合芳香族化合物、キナクリドン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、ナイルレッド、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体が挙げられる。また、ベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、有機金属錯体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。上記多環縮合芳香族化合物としては、例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレンなどが挙げられる。また、有機金属錯体としては、例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、イリジウム錯体、プラチナ錯体が挙げられる。
【0023】
発光層24は、単一材料で形成することも、ホスト材料に発光性ドーパント材料を混合して形成することも可能である。発光性ドーパント材料は、蛍光性発光材料の他、燐光性発光材料を用いることができる。
【0024】
電子輸送層25に用いられる材料としては、電子を発光層24に輸送する機能を有するものから任意に選ぶことができる。また、発光層24からのホール注入障壁の大きな材料は、ホールブロック層としての役割も果たす。電子輸送性能を有する材料としては、多環縮合芳香族化合物、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体が挙げられる。また、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0025】
電子注入層26に用いられる材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらを含む合金、それらのフッ化物、酸化物、炭化物などを用いることができる。また、単一材料で構成することも、複数の材料を混合して形成することも可能である。例えば、電子輸送性有機化合物をホスト材料にして、アルカリ金属等をアクセプタ材料として混合して用いることも可能である。
【0026】
ホール注入層22、ホール輸送層23、電子輸送層25、電子注入層26などを構成する材料は、R,G,Bの各副画素毎に、独立に違った材料を用いることもできるし、同一材料を共通層として用いることも可能である。上記の各層は、真空蒸着法、塗布法、印刷法、転写法など従来知られている手法を用いて成膜することができる。
【0027】
第2電極7は各副画素に共通であり、電源に接続されている。第2電極7としては、第1電極4と同様従来知られている電極材料を用いることが可能である。図1に例示されるトップエミッション構成の場合には、第2電極7は光透過性を有する透明もしくは半透明電極が用いられる。また、ボトムエミッション構成の場合には、反射性電極が用いられる。
【0028】
第2電極7上には、劣化補償フィルター8が設置されている。本発明はこの劣化補償フィルター8によって焼きつきを抑制するが、その原理を以下に詳細に説明する。
【0029】
劣化補償フィルター8は、青波長域に吸収を有し、青副画素の青有機EL素子からの発光の一部を吸収する。図3(A)に劣化補償フィルターの透過率の一例を載せる。このフィルターは460nm付近にピークを持つ吸収があり、透過率は約0.84である。この劣化補償フィルター8は、ディスプレイを駆動し青有機EL素子が発光すると、この青色発光を吸収し、劣化補償フィルター8を構成する材料が変質し、青波長域の吸収量が不可逆的に低下する特性を持つ。図3(B)に青色光を一定時間照射した後の劣化補償フィルター8の透過率の一例を載せる。本発明で用いられる劣化補償フィルター8は、青有機EL素子の発光積算時間に応じて、透過率が経時的に向上しているのが分かる。これは、460nm付近にあった吸収が減少するためである。図4に劣化補償フィルターの透過率の経時変化の一例を示す。
【0030】
一方、青有機EL素子は発光積算時間に応じて劣化し、発光効率が低下することで、発光量が減少する。図5に青有機EL素子の、劣化する前の発光量を1に規格化した際の発光量の経時変化の一例を示す。
【0031】
青副画素から取り出される発光量は、青有機EL素子の発光量と劣化補償フィルターの透過率の積に比例するため、特に駆動初期の経時的な発光量低下による焼きつきを抑制することができる(図6)。
【0032】
発光量低下を改善できるのは、劣化補償フィルター8の吸収量が変化しなくなるまで(透過率が向上しきるまで)であり、その後は青有機EL素子の本来の効率劣化に対応した発光量低下をする。劣化補償フィルター8の透過率変化幅(当初の透過率と、透過率が変化しなくなるまで向上した時の差:図4中のR)が大きいほど、青副画素の発光量低下の補償幅が大きいことになる。しかしながら、青波長域の当初の透過率(駆動する前の状態での透過率)が低いと、青副画素の発光効率は低くなるので、適切な量に設定することが必要である。本発明における青波長域とは、青有機EL素子の発光波長ピークとその周囲の、該発光波長ピークの強度の1/2以上の強度を示す波長域である。青波長域における当初の透過率は、表示装置の使用目的に応じて設定することが必要だが、0.80〜0.97の範囲に収めることが好ましい。
【0033】
図3で示すように、本発明で用いられる劣化補償フィルター8は青波長域に吸収を持つが、緑波長域及び赤波長域には吸収をほとんど持たない。従って、緑副画素や赤副画素の発光には影響を及ぼさない。尚、本発明において緑波長域及び赤波長域に吸収を持たないとは、吸収による発光効率低下が問題にならない程度(例えば3%以下)の吸収量しかないことである。また、劣化補償フィルター8が青波長域に吸収を有する材料を含有し、該青波長域の吸収が、その材料の最低励起状態による吸収帯であることが特に好ましい。原理的に長波長側にはその材料の吸収帯が存在しないためである。
【0034】
駆動初期の発光量変化を極力抑えるためには、青有機EL素子の効率低下の時定数と、劣化補償フィルターの透過率向上の時定数を概略合わせるように設定することが好ましい。劣化補償フィルターの透過率向上の時定数は、光励起された際のフィルター材料の光安定性によって決まる。この光安定性は、フィルターを構成する材料種の選択や、フィルターの作製条件、フィルターの設置されている環境によって調整することが可能である。一般に、フィルター中に水分や酸素がある程度存在する場合には、フィルター材料は光酸化によって劣化することが多く、フィルターの作製条件や設置環境によって水分や酸素の量をコントロールすることで、光安定性を調整できる。また、一重項酸素クエンチャーを混合することで光安定性が向上することもある。
【0035】
本発明の動作原理を、有機EL素子の駆動電流量が一定の場合で説明したが、実際の表示装置においては、表示される画像によって、有機EL素子の駆動電流量は変化し発光量は変化する。例えば、256階調の表示を行う場合、駆動している状態で発光量は最大256倍変化する可能性がある。一般に有機EL素子の効率低下は、駆動電流量が多い、即ち発光量が多い程、顕著に起こることが知られているので、上述した劣化補償フィルターの透過率向上と青有機EL素子の効率低下の時定数を合わせるのは、最大発光状態で行うことが好ましい。特に、表示装置の最大発光状態で、青有機EL素子の発光量が5%低下した時に、劣化補償フィルター8を透過後の取り出し光量の低下が2%以下になるように調整することが好ましい。
【0036】
また、劣化補償フィルター8は、青有機EL素子の発光によって光励起されても実質的に発光しないことが好ましい。発光すると、青副画素の色純度が低下する原因となる。
【0037】
劣化補償フィルター8を構成する材料としては、例えば、前述した有機EL素子のホール注入層22及びホール輸送層23、さらには発光層24の構成材料として挙げた材料を利用することができる。具体的には、多環縮合芳香族化合物、キナクリドン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、ナイルレッド、ピラジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体が挙げられる。また、ベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、有機金属錯体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。上記多環縮合芳香族化合物としては、例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレンなどが挙げられる。また、有機金属錯体としては、例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、イリジウム錯体、プラチナ錯体が挙げられる。さらに、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体が挙げられる。また、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、及びポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)が挙げられる。特に好ましい材料としては、アリールアミン誘導体、フェニルカルバゾール誘導体が挙げられる。青波長域に最低励起状態に起因する比較的大きな吸収を持つ材料が容易に得られることや、青発光を吸収し比較的容易に材料劣化し、吸収帯が消滅するためである。
【0038】
また、これらの材料を単一の材料で構成しても、複数の材料を混合して用いても構わないし、例えば、透明樹脂材料に分散して用いても構わない。劣化補償フィルター8の発光が問題になる場合には消光剤を混合することも好ましい。
【0039】
劣化補償フィルター8は、その構成する材料に応じて、蒸着法、塗布法、転写法などで成膜する。基板上に2次元状に作製された有機EL素子の光取り出し側に直接成膜してもかまわないし、別途フィルターを作製して有機EL素子と組み合わせることも可能である。図1では一例として、有機EL素子の第2電極7の上に、劣化補償フィルター8を成膜している。劣化補償フィルター8を成膜後は、水分ゲッター材料(不図示)を設置した後、不活性ガス(乾燥窒素等)中で封止基板9を貼り合わせ封止する。
【0040】
劣化補償フィルター8を図1のように設置する場合には、劣化補償フィルター8の上面でのフレネル反射係数が大きいため、その膜厚は光学干渉に大きく影響する。膜厚を調整し、光学干渉長を変更することで、発光スペクトルの調整や光取り出し効率の向上を図ることが可能である。
【0041】
また、本発明の表示装置が、外光下の使用が想定される場合には、さらに円偏光板を設置することが好ましい。表示装置内に侵入した外光が、第1電極等で反射され、表示のコントラストが落ちるためである。円偏光板の設置位置は、劣化補償フィルター8よりも光取り出し側であることが好ましい。
【0042】
また、劣化補償フィルターの他の配置例としては、図7に示すように、第2電極7上に光学干渉長調整層31を設けた後、無機ガスバリア層32、劣化補償フィルター8、無機ガスバリア層32を順に設けることも可能である。光学干渉長調整層31としては、SiOxやSiNxが好ましく用いられ、無機ガスバリア層32としては、SiOx、SiNx、SiNxy、TiOxなどの無機酸化物や無機窒化物を用いることができる。
【0043】
また、図8に示すように、ボトムエミッション構成の場合には、基板1と第1電極4との間に劣化補償フィルター8を設置することが好ましい。尚、劣化補償フィルター8は基板1の下に配置されていてもよい。
【0044】
画素の2次元配列は、従来知られているものを使用可能である。例えば、ストライプ配列、ダイアゴナル(モザイク)配列、デルタ(トライアングル)配列等を挙げられるが、これらに限らない。
【0045】
劣化補償フィルター8を設置する位置は、有機EL素子の光取り出し側であれば上記以外の場所でも構わないが、有機EL素子に接近した位置に設置することが好ましい。有機EL素子の光取り出し側からの距離が大きくなると、直下の青有機EL素子からの発光だけではなく、隣接する画素の青有機EL素子からの斜め方向の発光が入射することになり、劣化補償機能が損なわれる。従って、劣化補償フィルター8の有機EL素子側の位置と有機EL素子の光取り出し側の位置の距離は、画素ピッチ以下であることが好ましく、より好ましくは、画素ピッチの1/3以下である。
【0046】
劣化補償フィルター8は青副画素のみに設置しても構わないが、成膜工程の簡便性から全面に配置することが好ましい。
【0047】
本発明の表示装置は、非常に強い外光下で使用する場合には、外光を吸収することで劣化補償フィルターが劣化しないように、外光遮断構造を設けることが好ましい。外光に紫外線が含まれる場合には、紫外線吸収フィルターを設置することが好ましい。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態によれば、RGBパターニング方式の表示装置において、簡便な構造で青副画素の焼きつきを抑制することができる。
【0049】
また、以上では、一般的に青色を発する有機EL素子は発光効率の低下が他の色を発する有機EL素子よりも速いために、青波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターを設ける構成を示した。例えば赤色を発する有機EL素子の発光効率の低下が他の色よりも速い場合には、赤波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターを設ける構成であってもよい。つまり、本発明は、劣化速度が速い有機EL素子と、劣化速度が遅い有機EL素子と、前記劣化速度が速い有機EL素子の発する光の波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターと、を有する構成であってもよい。尚、劣化速度が速いとは、発光効率の低下が大きいことを意味している。この場合でも、焼きつきが抑制されて、安定した表示が可能であるのは明らかである。
【0050】
(第2の実施形態)
図9は本発明のW+カラーフィルター方式の表示装置の断面の模式図である。図中、図1と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、R,G,Bの各副画素を構成する有機EL素子は共通の有機化合物層40を備えた白色発光有機EL素子である。そして、光取り出し側にカラーフィルター41R,41G,41Bを設置することでフルカラー化する。青副画素42Bに設置するカラーフィルター41Bは、青発光成分は透過するが緑及び赤発光成分を吸収してカットする。緑副画素42Gに設置するカラーフィルター41Gは、緑発光成分は透過するが青及び赤発光成分を吸収してカットする。赤副画素42Rに設置するカラーフィルター41Rは、赤発光成分は透過するが青及び緑発光成分を吸収してカットする。
【0052】
白色発光有機EL素子は、従来知られている素子構成を用いることが可能であるが、一例として、図10に青発光ユニット51、緑発光ユニット52、赤発光ユニット53を電荷発生層54を介して積層したタンデム素子を示す。各発光ユニットは、前出のような従来知られている有機EL素子の材料と積層構成を使用することが可能である。電荷発生層54も従来知られている材料及び積層構成を使用することが可能である。電荷発生層54の一例としては、2層の積層構成であり、第1層はアルカリ金属、アルカリ土類金属、それらのフッ化物、酸化物、炭化物などを、単体もしくは有機化合物と混合したものである。そして、第2層はバナジウム、モリブデン、タングステン等の遷移金属の酸化物や、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT−CN)等のアクセプタ性の高い有機化合物を用いることができる。
【0053】
図9の有機EL素子を駆動すると、図10の青発光ユニット51、緑発光ユニット52、赤発光ユニット53が各々発光し、全体として白色発光する。そして、劣化補償フィルター8が青発光ユニット52の発光を吸収し、不可逆的に透過率が向上することで、青発光量の低下を補償する。尚、動作原理の詳細は第1の実施形態と同様である。尚、緑副画素42Gや赤副画素42Rにおいても、青発光ユニット51からの発光を劣化補償フィルター8が吸収する。しかしながら、緑発光ユニット52や赤発光ユニット53からの発光は、劣化補償フィルター8を透過するので、劣化補償フィルター8を設置することの影響はない。
【0054】
図9においては、劣化補償フィルター8を第2電極7とカラーフィルター41の間に設置しているが、カラーフィルター41の上に設置してもよい。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態によれば、W+カラーフィルター方式の表示装置において、簡便な構造で青副画素の焼きつき防止を行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
8:劣化補償フィルター、41R:赤カラーフィルター、41G:緑カラーフィルター、41B:青カラーフィルター、42R:赤副画素、42G:緑副画素、42B:青副画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも青発光領域を含む複数の有機EL素子を2次元状に配置した有機EL素子アレイと、
青波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターと、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記劣化補償フィルターは、青波長域の光を吸収することによって青波長域の吸収量が不可逆的に低下する特性を有していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記劣化補償フィルターが、青波長域に吸収を有する材料を含有し、前記青波長域の光の吸収が前記材料の最低励起状態に起因する吸収であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記材料が、アリールアミン誘導体又はフェニルカルバゾール誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
1画素が青、緑、赤の副画素から構成され、
前記青、緑、赤の副画素が、各々、青発光、緑発光、赤発光の有機EL素子を有し、さらに、前記劣化補償フィルターを少なくとも前記青発光の有機EL素子の光取り出し側に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
1画素が青、緑、赤の副画素から構成され、
前記青、緑、赤の副画素が、白色発光有機EL素子と各々青、緑、赤のカラーフィルターとを有し、さらに、前記劣化補償フィルターを前記白色発光有機EL素子の光取り出し側に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
劣化速度が速い有機EL素子と、
劣化速度が遅い有機EL素子と、
前記劣化速度が速い有機EL素子の発する光の波長域における透過率が経時的に向上する劣化補償フィルターと、
を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156095(P2012−156095A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16345(P2011−16345)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】