説明

表示装置

【課題】より良好な立体映像表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】この表示装置は、第1から第4の色の表示画素を複数ずつ含み、第1の方向へ第1および第2の色の表示画素が交互配置された第1の画素列と、第1の方向へ第3および第4の色の表示画素が交互配置された第2の画素列とが第1の方向と異なる第2の方向において交互に配列され、複数の視差画像を表示する表示部と、第1および第2の方向の双方と異なる第3の方向へ延伸する複数の視差分離部を有し、複数の視差画像を複数の視点方向に分離する分離素子とを備える。さらに以下の式(1),(2)を共に満足している。
Nx=Npix+Yo/(2×S) ……(1)
S=Nsy/Nsx ……(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばパララックスバリアやレンチキュラーレンズ等の光学素子を用いて立体表示を行うことのできる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示を行う技術は、観察者が眼鏡を用いるものと、観察者が眼鏡を用いずに裸眼での立体視が可能なものとに分けることができる。後者の表示方法を裸眼立体表示方法と呼ぶ。裸眼立体表示方法の代表的なものとしては、パララックスバリア方式とレンチキュラレンズ方式とがある。パララックスバリア方式やレンチキュラ方式の場合、液晶ディスプレイ等の画像表示素子に立体視用の複数の視差画像(例えば2視点の場合には右眼用画像と左眼用画像)を空間分割して合成表示し、その視差画像を視差分離手段(パララックス素子)によって水平方向に視差分離することで立体視が行われる。パララックスバリア方式の場合、パララックス素子としてスリット状の開口が設けられたパララックスバリアを用いる。レンチキュラ方式の場合、パララックス素子として、シリンドリカル状の分割レンズを複数並列配置したレンチキュラレンズが用いられる。すなわち、観察者は、パララックスバリアもしくはレンチキュラーレンズを介して右眼と左眼とで表示部における異なる画素群を視認することにより、立体映像を認識することができる。
【0003】
従来、パララックスバリア方式やレンチキュラ方式を採用した表示装置としては以下のような特許文献1〜3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4023626号公報
【特許文献2】特許第3955002号公報
【特許文献3】特許第4271155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばパララックスバリアのスリットが画面垂直方向へ延伸し、あるいはレンチキュラーレンズにおける各シリンドリカルレンズの延伸方向(軸方向)が画面垂直方向である場合、画面水平方向の解像度と画面垂直方向の解像度とのバランスが劣化する。画面水平方向における解像度を向上させることはできるものの、画面垂直方向における解像度の向上が困難であるからである。そこで、解像度バランスの改善を図るため、スリットやシリンドリカルレンズの延伸方向を画面垂直方向に対して傾けることが考えられる。しかしながら、そうした場合であっても、解像度バランスが不十分なことがあった。また、別の問題として、画素同士の境界部分が見かけ上の暗部として観察者に視認され、その見かけ上の暗部が周期的に現れることで輝度むら(モアレ)が発生することもあった。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の視点映像を用いて立体表示を行う場合に、解像度バランスを向上させ、モアレの発生を抑制することのできる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の表示装置は、以下の(A)および(B)の構成要件を備え、かつ、式(1),(2)を共に満足するものである。
(A)第1から第4の色の表示画素を複数ずつ含み、第1の方向へ第1および第2の色の表示画素が交互配置された第1の画素列と、第1の方向へ第3および第4の色の表示画素が交互配置された第2の画素列とが前記第1の方向と異なる第2の方向において交互に配列され、複数の視差画像を表示する表示部。
(B)第1および第2の方向の双方と異なる第3の方向へ延伸する複数の視差分離部を有し、複数の視差画像を複数の視点方向に分離する分離素子。
Nx=Npix+Yo/(2×S) ……(1)
S=Nsy/Nsx ……(2)
但し、
Nx:第1の方向において一の視差分離部に割り当てられる表示画素の数
Npix:1以上の整数
Yo:0.5もしくは0以上の整数
Nsx:第3の方向において同色の表示画素が現れる一周期あたりの、第1の方向に並ぶ表示画素の数
Nsy:第3の方向において同色の表示画素が現れる一周期あたりの、第2の方向に並ぶ表示画素の数
【0008】
本開示の表示装置では、表示部の表示画素と分離素子の視差分離部との関係において式(1),(2)を満足するようにした。これにより、分離素子を介して観察者に到達する各視差画像において、相対的に高い輝度の画素と相対的に低い輝度の画素とがバランスよく配置される。また、上記各視差画像において、画素の中心位置に対応する領域と、画素間の境界部に対応する領域とがバランスよく配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の表示装置によれば、表示部の画素配列に対する分離素子における複数の視差分離部の傾斜角度および配列ピッチを最適化するようにしたので、見かけの明るさの周期的変動や指向性を緩和することができる。これにより、効果的にモアレの発生を抑制し、かつ、解像度バランスを改善し、良好な立体映像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の第1の実施の形態としての表示装置の全体構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示した表示部の画面構成、およびレンチキュラーレンズと表示部との位置関係を表す平面図である。
【図3】図1に示した表示装置において、表示画素の配列パターンと分離素子(レンチキュラーレンズ)における視差分離部(シリンドリカルレンズ)の延伸方向とを所定の条件で最適化した構成例を示す平面図である。
【図4】レンチキュラーレンズを介して観測される視差画像を構成する画素パターンを表す模式図である。
【図5】図3の一部を拡大した平面図である。
【図6】レンチキュラーレンズを介して観測される画素パターンを表す模式図(実施例1)である。
【図7】本開示の第2の実施の形態としての表示装置の、表示部における画素配列を表す平面図である。
【図8】レンチキュラーレンズを介して観測される画素パターンを表す模式図(実施例2)である。
【図9】本開示の第3の実施の形態としての表示装置の、表示部における画素配列を表す平面図である。
【図10】レンチキュラーレンズを介して観測される画素パターンを表す模式図(実施例3−1)である。
【図11】レンチキュラーレンズを介して観測される画素パターンを表す模式図(実施例3−2)である。
【図12】比較例としての画素パターンを表す模式図(比較例1)である。
【図13】本開示の第4の実施の形態としての表示装置の、表示部における画素配列を表す平面図である。
【図14】レンチキュラーレンズを介して観測される画素パターンを表す模式図(実施例4−1)である。
【図15】図13の一部を拡大した平面図である。
【図16】レンチキュラーレンズを介して観測される画素パターンを表す模式図(実施例4−2)である。
【図17】本技術における変形例としての表示装置の全体構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図に示した構成要素の寸法比、相対角度および相対位置は一例を表すものであって、本開示の技術はこれに限定されるものではない。
【0012】
<第1の実施の形態>
[表示装置の全体構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態としての表示装置の一構成例を示している。この表示装置は、分離素子としてのレンチキュラーレンズ1と、表示部2とを備えている。図2は、表示部2の画面構成、およびレンチキュラーレンズ1と表示部2との位置関係を表す平面図である。
【0013】
表示部2は、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)方式表示パネル、またはプラズマディスプレイ等の2次元表示ディスプレイで構成されている。表示部2の表示画面には、複数の画素が水平方向(X軸方向)および垂直方向(Y軸方向)に2次元的に配列される。例えば、垂直方向へ緑色の画素Gと、白色の画素Wとが交互配置された画素列Y1と、同じく垂直方向(Y軸方向)へ青色の画素Bと赤色の画素Rとが交互配置された画素列Y2とが、水平方向(X軸方向)において交互に配列される。水平方向においては、左から右へ画素R,画素G,画素B,画素Wの順序で周期配列されている。なお、画素配列の例では、水平方向に隣り合う4つの画素R,画素G,画素B,画素Wが1つの正方画素を構成するような形状寸法を有していることが望ましい。表示部2には、複数の視点用の視差画像が、所定の配置パターンで画素ごとに割り当てられて合成表示されるようになっている。
【0014】
レンチキュラーレンズ1は、表示部2に表示された視差合成画像に含まれる複数の視差画像を立体視が可能となるように複数の視点方向に分離するものであり、立体視を可能にするように表示部2に対して所定の位置関係で対向配置されている。レンチキュラーレンズ1は、光を透過し、表示部2の画素に対して立体視が可能となるように所定の条件で対応付けられた視差分離部として機能する複数の分割レンズを有している。分割レンズとは、所定の方向に延在するシリンドリカルレンズ13である。なお、この場合、図2に示したように、シリンドリカルレンズ13の円筒母線41は、斜め方向(S軸方向)に延伸している。
【0015】
レンチキュラーレンズ1は、特定の視点位置から表示部2を観測したときに特定の視差画像のみが視認されるように、表示部2の画面上の視差合成画像に含まれる複数の視差画像を分離するようになっている。レンチキュラーレンズ1の幅と、表示部2の各画素との位置関係から、表示部2の各画素より射出される光の射出角度が制限される。すなわち、表示部2における各画素は、シリンドリカルレンズ12との位置関係によって表示される方向が異なることとなる。観察者の左右の眼10L,10Rには、異なる画素からの光線L3,L2が到達し、互いに視差のある画像を観察する状態となることで立体映像として知覚できる。
【0016】
[表示部と分離素子との配置関係]
本実施の形態では、表示部2の画素配列に対する、シリンドリカルレンズ13の傾斜角度およびシリンドリカルレンズ13の配列ピッチを最適化することで、見かけの明るさの周期的変動が緩和されると共に解像度バランスの改善がなされている。
【0017】
具体的には、表示部2とレンチキュラーレンズ1とは以下の条件式(1)および(2)を満足する関係にある。
Nx=Npix+Yo/(2×S) ……(1)
S=Nsy/Nsx ……(2)
但し、Nxは水平方向において一のシリンドリカルレンズ13に割り当てられる画素の数であり、Npixは1以上の整数であり、Yoは0.5もしくは0以上の整数であり、Nsxは斜め方向へ延伸する直線上において画素Gもしくは画素Wの中心位置が現れる一周期あたりの、水平方向に並ぶ画素の数であり、Nsyは斜め方向へ延伸する直線上において画素Gもしくは画素Wの中心位置が現れる一周期あたりの、垂直方向に並ぶ画素の数である。
【0018】
図3は、上記の所定条件を満たす場合の、特定の視点位置において視認される表示部2の画素列を表す模式図である。図3において、直線13L(13L1,13L2,13L3,・・・)に沿った各画素からの光はそれぞれ一のシリンドリカルレンズ13によって集光されて特定の視差画像を構成することとなる。直線13Lは、各シリンドリカルレンズ13の延伸方向、すなわち、S軸方向と平行である。
【0019】
条件式(2)におけるSは、各シリンドリカルレンズ13における円筒母線41の、画素の配列方向に対する傾斜角度を表すパラメータであり、画素数NsxおよびNsyによって規定される。図3に示した例では、例えばいずれも直線13L1上に中心を有する画素W1,W2の相互間隔は、水平方向において画素2個分に相当し(すなわち、Nsx=2であり)、垂直方向において画素7個分に相当する(すなわち、Nsy=7である)。よって、S=3.5である。
【0020】
なお、Sは、以下の条件式(3)によって定義することもできる。
S・tanθ=Px/Py ……(3)
但し、Pxは水平方向における画素の配置ピッチであり、Pyは垂直方向における画素の配置ピッチであり、θは表示部2における画素の並び方向に対する、円筒母線41のなす傾斜角度である。
【0021】
図3では、画素数Nsyを奇数とすることで、直線13Lが同一色の画素(画素Wもしくは画素G)のみの中心位置を通過するようにした。しかしながら、画素数Nsyを偶数とすることで、直線13Lが画素Gの中心位置と画素Wの中心位置とを交互に通過するように構成可能である。
【0022】
図4は、レンチキュラーレンズ1を介して観測される視差画像を構成する画素パターンの一例である。図4の画素パターンにおいて、各列L(L1〜L4)はそれぞれ異なるシリンドリカルレンズ13によって視認される単位を表している。この例では、4種類の列L1〜L4がS軸方向と直交するT軸方向において周期配列されている。図4の画素パターンにおいて、Phは、各々の中心位置が視認される画素Gおよび画素Wのうち、S軸方向と直交するT軸方向において最近接位置にあるもの同士の水平方向間隔、すなわち水平方向の配列ピッチを表す。Pvは、各々の中心位置が視認される画素Gおよび画素Wのうち、S軸方向において最近接位置にあるもの同士の垂直方向間隔、すなわち垂直方向の配列ピッチを表す。これらの配列ピッチPh,Pvは、図3にも示されている。
【0023】
ここで、2つ分のシリンドリカルレンズ13の幅が配列ピッチPhと同等となる条件を考える。水平方向において画素Gもしくは画素Wが出現するまでの繰り返し単位となる画素群Gpixを構成する画素の数をNunitとし、1つの配列ピッチPhに割り当てられる画素群Gpixの繰り返し数をNpixとする。すなわち、Npix個の画素群Gpixを水平方向に並べたときの幅が配列ピッチPhに相当する。すると以下の関係式(0)が導かれる。
2×Nx−Yo/S=Nunit×Npix ……(0)
本実施の形態では、1つの画素群Gpixが2つの画素からなるので、Nunit=2である。よって、関係式(0)は
Nx=Npix+Yo/(2×S) ……(1)
となる。
【0024】
図4の例では、2つ隣のシリンドリカルレンズ13を介して各々の中心位置が視認される画素G同士および画素W同士がT軸方向において最近接に位置している。このため、Yoは0以上の整数となる。また、4つ隣のシリンドリカルレンズ13を介して各々の中心位置が視認される画素G同士および画素W同士がT軸方向において最近接に位置している場合は、Yo=0.5となる。
【0025】
ここで、その中心位置が視認される任意の画素Gに着目する。まず、その注目画素Gから2つ隣のシリンドリカルレンズ13を介して中心位置が視認される画素が同色の画素Gとなる条件を考える。その条件は、NpixおよびYoがいずれも偶数もしくはいずれも奇数であることである。次に、その注目画素Gから2つ隣のシリンドリカルレンズ13を介して中心位置が視認される画素が異色の画素Wとなる条件を考える。その条件は、NpixおよびYoのうち、いずれか一方が偶数であり他方が奇数であることである。先に述べたように、画素数Nsyが奇数の場合、S軸方向において隣り合う、中心位置が視認される画素は同色(G)となる。その場合、2つ隣のシリンドリカルレンズ13を介して中心位置が視認される画素を異色(W)とすることで、すなわち、NpixおよびYoを偶数と奇数との組み合わせとすればよい。そうすることで、画面を観る角度に関わらず、画素Gと画素Wとがほぼ同じ条件で視認される。また、画素数Nsyが偶数の場合、S軸方向において隣り合う、中心位置が視認される画素は異色(W)となる。その場合、2つ隣のシリンドリカルレンズ13を介して中心位置が視認される画素を同色(G)とすることで、すなわち、NpixおよびYoをいずれも偶数、もしくはいずれも奇数とすればよい。そうすることで、画面を観る角度に関わらず、画素Gと画素Wとがほぼ同じ条件で視認される。
【0026】
次に隣接するシリンドリカルレンズ13を介して中心位置が視認される画素を考える。図2,図3に示した画素配列の場合、Npixが偶数の場合には画素Gの隣に画素Wが位置することとなる。解像度バランスの観点では、画素Gの隣には比較的低輝度の画素Rもしくは画素Bが位置することが望ましい。このような理由から、Npixは奇数が望ましい。
【0027】
モアレを低減するためには、以下の対応が効果的である。ひとつは、パラメータSを非整数の値に設定にすることである。それにより、シリンドリカルレンズ13の延伸方向(S軸方向)に沿って、画素の中心位置が見える領域と、画素同士の境界部分が見える領域とがバランス良く混在して見えることとなるからである。また、別の方法として、パラメータYoの値を奇数とすることが挙げられる。これにより、隣接するシリンドリカルレンズ13を介して観測される画素パターンの列において、画素の中心位置が見える領域と画素同士の境界部分が見える領域との配列状態が異なることとなるからである。
【0028】
水平方向の解像度と垂直方向の解像度とのバランス(解像度バランス)が最もよい条件はPv=Phである。Phは、以下のように表すことができる。
Ph=Nunit×Npix×Px ……(4)
【0029】
Nsyを繰り返し単位とした場合、Pvは、以下のように表すことができる。
Pv=Py×Nsy ……(5)
【0030】
条件式(4)および(5)から、以下の条件式(6)を満たす場合に、解像度バランスが最適化される。
Nunit×Npix×Px=Py×Nsy ……(6)
よって、
Npix=(Py×Nsy)/(Px×Nunit) ……(7)
【0031】
また、(2×Nsy)を繰り返し単位とした場合、Pvは、以下のように表すことができる。
Pv=2×Py×Nsy ……(8)
よって、
Nunit×Npix×Px=2×Py×Nsy ……(9)
Npix=2×(Py×Nsy)/(Px×Nunit) ……(10)
【0032】
以上により、条件式(1)および(10)を満たす奇数Npixが最適条件となる。また、設定可能な最大視点数Nmaxは、パラメータSを互いに素なAy,Axで置き換える(S=Ay/Ax)と、
Nmax=nl×(Ay×Npix+Ax×Yo/2) ……(11)
ここで、nlは、最大視点数Nmaxが整数となる最も小さな整数を表す。
【0033】
なお、図4に示した画素パターンの例は、以下の数値条件を満たすものである。
Px/Py=4
S=3.5
Nsx=2
Nsy=7
Nunit=2
Yo=1
Nx=15+1/7
【0034】
次に、画素の開口比率について説明する。本実施の形態では、画素配列に対して傾斜した方向(S軸方向)に延伸する分離素子(シリンドリカルレンズ13)を配置している。このため、レンチキュラーレンズ1を介して視認される画素パターンにおいて、各画素のほぼ全域が見える明るい領域と、画素同士の境界部分が見える暗い領域とが混在することとなる。そのため、画素配列に対するシリンドリカルレンズ13の傾斜角度や配列ピッチの条件によっては、上記の明るい領域および暗い領域の分布に偏りが生じる場合がある。そこで、画素同士の境界部分の寸法、画素の配置ピッチPx,Py、およびパラメータSの最適条件を考える。
【0035】
図5は、図3の一部を拡大して表したものである。理想的なレンチキュラーレンズ(収差がなく、レンズの焦点位置がZ方向において画素位置となっている場合)を想定すると、ある方向からは、例えば表示部2の画面上における画素群のうちの、直線13Lが通過する領域部分が見える。従って、各画素の輝度は、その開口部分を通過する直線13L上の線分の長さとなる。図5に示したように、本実施の形態では、注目する画素Wの上下には異色の画素Gが位置する。ここで、画素同士の境界部分(ブラックマスク)の幅の、画素の配置ピッチPx,Pyに対する比率をBx,Byとする。すると、直線13Lのうち、画素Wの開口部分と重なる線分の長さの垂直成分Lcは、
Lc=1−By ……(12)
となる。また、画素WとY軸方向に隣り合う上下の画素Gにおける垂直成分の和Lsは、
Ls=(1−Bx)×S−(1+By) ……(13)
となる。
輝度分布の方向依存性を解消するにはLs=Lcが最も望ましいので、それを満たす条件は、
Bx=1−2/S ……(14)
となる。この条件が成り立つ場合は、ある方向から見た場合に、例えば図5における画素Wと、その上下に位置する2つの画素Gとを一単位としたときの輝度分布は、見る方向に依存せずに一定となる。条件式(14)を満たす場合には、先述したモアレの回避条件を必ずしも満たさなくてもよい。また、先述したモアレの回避条件を満たし、かつ、この条件式(14)をも満たすことにより、解像度バランスが向上する。なお、パラメータSの値によっては、画素Gの隣の画素Bおよび画素Rの存在をも考慮したほうが望ましい。しかしながら、パラメータSが2よりも大きく3以下の場合は、画素Bおよび画素Rの影響は少なく、条件式(14)を満たすことで十分な効果が得られる。
【0036】
以下、本実施の形態に対応する実施例について説明する。
(実施例1)
図6に示した画素パターンは、以下の数値条件に対応するものである。
Px/Py=4
S=2.5
Nsx=2
Nsy=5
Nunit=2
Yo=0
【0037】
この条件における最適な画素数Nxは、条件式(1)から
Nx=Npix ……(15)
【0038】
また、条件式(7)より、
Npix=10
ここで、Npixを10に近い奇数である9としたとき、条件式(15)より、
Nx=9
となる。
よって、最適なBxは、条件式(14)より、
Bx=1−2/2.5=1/5
となる。
【0039】
図6では、白色の画素Wおよび緑色の画素Gを輝度重心としたとき、最近接に位置する4つの輝度重心を結んで形成される最小寸法の格子をC1で表す。本実施例では、格子C1が極めて正方形に近い形状である。よって、解像度バランスの改善効果が得られている。
【0040】
次にモアレについて説明する。例えば図6に示した画素パターンを構成する列L1〜L4は、それぞれ異なるシリンドリカルレンズ13を介して視認される単位を表している。例えば列L1では、その中心位置が見える画素R同士は、S軸方向において互いに画素5つ分だけ離れて存在している。列L1では、その他の色の画素G,B,Wについては各々の開口部分の一部が欠けた状態で視認される。列L2では、その中心位置が見える画素W同士は、S軸方向において互いに画素5つ分だけ離れて存在している。列L2では、その他の色の画素R,G,Bについては各々の開口部分の一部が欠けた状態で視認される。同様に、列L3では、画素B以外の画素R,G,Wについて各々の開口部分の一部が欠けた状態で視認され、列L4では、画素G以外の画素R,B,Wについて各々の開口部分の一部が欠けた状態で視認される。このような構成の結果、図6に示した画素パターンでは、S軸方向およびT軸方向の双方において、画素の中心位置が見える高輝度領域と、隣り合う画素同士の境界位置が見える低輝度領域とが偏りなく配列された状態となっている。よって、どの角度から見ても高輝度領域と低輝度領域とが混在して見えることになり、画素の境界部分(未発光部分)に起因するモアレを回避できる。特に、各色の画素の中心位置が見える領域が一定の順序で周期的に偏りなく存在するので、色の違いによる輝度の高低に起因するモアレも生じにくくなっている。
【0041】
設定可能な最大視点数Nmaxは、条件式(11)に以下の数値を代入することで得られ、Nmax=45となる。
nl=1
Ax=2
Ay=5
Npix=9
Yo=0
【0042】
ところで、設定可能な視点数はこれを超えなければ設定可能である。各画素に与える視点データは以下の条件式(15)で示される。
V(x,y)=mod(x−y/S,Nx)Ntot/Nx ……(16)
但し、Ntotは設定視点数を表し、mod(a,b)はaをbで割った余りを表す。V(x,y)は、Ntot=Nmaxの場合は整数値となるが、それ以外の場合は非整数の値となる場合もある。非整数値の場合は2つの視点データを混合する。例えばV(x,y)=1.5となった画素には第1および第2の視点のデータを50%の比率で混合する。混合比率は線形関数に従う場合に限らず、それ以外の適当な関数で規定するようにしてもよい。
【0043】
設定視点数および立体表示特性について簡単に説明する。設定視点数が多いほど角度分解能が上がりなめらかな視点移動が可能となる。一方、1つの視点あたりの空間解像度が低下するので、視差があり空間周波数の高い絵柄の表現が困難になる。設定視点数が少ないほど1視点あたりの空間解像度が上がる。また、隣接視点間のクロストークが小さくなるので、最適位置に限定すればクロストークの少ない立体表示が可能となる。一方、最適視点からずれた場合には隣接視点画像がゴーストとして目立つことと、なめらかな視点移動が困難になるという問題が生じる。表示装置の解像度、入力多視点画像の視差、システムコスト等を考慮して視点数を決めることが望ましい。
【0044】
[実施の形態の効果]
このように、本実施の形態の表示装置では、表示部2の画素配列に対する、各シリンドリカルレンズ13の傾斜角度および配列ピッチを最適化するようにした。これにより、レンチキュラーレンズ1を介して得られる立体映像の解像度バランスを改善することができる。また、モアレに関しても、上記最適化により大幅に改善される。モアレは、ある同一の視点位置から眺めた場合に、画素の中心位置が見える領域と、画素同士の境界位置が見える領域とで見かけの輝度が一致しないことに起因する。したがって、表示部2の画素配列に対する、各シリンドリカルレンズ13の傾斜角度および配列ピッチを最適化し、観察者が視認する画素パターンにおいて、見かけの高輝度領域と低輝度領域とを混在させることで、モアレを解消することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態の表示装置によれば、条件式(1)などを満たすことにより、観察者が視認する立体映像において見かけの明るさの周期的変動や指向性を緩和することができる。これにより、効果的にモアレの発生を抑制し、かつ、解像度バランスを改善し、良好な立体映像を得ることができる。
【0046】
<第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、表示部2の画素配列が異なることを除き、他は上記実施の形態と同様の構成である。
【0047】
図7は、本実施の形態としての表示部2の画素配列の一部を表している。図7に示したように、垂直方向へ緑色の画素Gと、白色の画素Wとが交互配置された画素列Y1と、同じく垂直方向(Y軸方向)へ青色の画素Bと赤色の画素Rとが交互配置された画素列Y2とが、水平方向(X軸方向)において交互に配列される。また、水平方向においては、右から左へ画素R,画素G,画素B,画素Wの順序で周期配列されている。
【0048】
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0049】
(実施例2)
本実施の形態に対応した実施例(実施例2)について、図8を参照して説明する。図8は、レンチキュラーレンズ1を介して観測される本実施例に対応した画素パターンであり、以下の数値条件を満たすものである。
Px/Py=4
S=3.0
Nsx=2
Nsy=6
Nunit=2
Yo=1
【0050】
この条件における最適な画素数Nxは、条件式(1)から
Nx=Npix+1/6 ……(17)
【0051】
また、条件式(7)より、
Npix=12
ここで、Npixを12に近い奇数である11としたとき、条件式(17)より、
Nx=11+1/6
となる。
最適なBxは、条件式(14)より、
Bx=1−2/3=1/3
となる。
【0052】
図8では、白色の画素Wおよび緑色の画素Gを輝度重心としたとき、最近接に位置する4つの輝度重心を結んで形成される最小寸法の格子をC2で表す。本実施例では、格子C2が極めて正方形に近い形状である。よって、解像度バランスの改善効果が得られている。
【0053】
次にモアレについて説明する。図8に示した画素パターンを構成する列L1〜L4は、図6と同様、それぞれ異なるシリンドリカルレンズ13を介して視認される単位を表している。この画素パターンでは、例えば列L1,L3では、画素の中心位置が見える領域は存在しない。一方、列L2,L4では、画素の中心位置が見える領域と、画素同士の境界部分が見える領域とが交互にS軸方向に並んでいる。そして画素パターン全体としては、列L1,L2,L3,L4の順に周期配列されていることから、S軸方向およびT軸方向の双方において、画素の中心位置が見える高輝度領域と、隣り合う画素同士の境界位置が見える低輝度領域とが偏りなく配列された状態となる。よって、どの角度から見ても高輝度領域と低輝度領域とが混在して見えることになり、画素の境界部分(未発光部分)に起因するモアレを回避できる。特に、各色の画素の中心位置が見える領域が一定の順序で周期的に偏りなく存在するので、色の違いによる輝度の高低に起因するモアレも生じにくくなっている。
【0054】
設定可能な最大視点数Nmaxは、条件式(11)に以下の数値を代入することで得られ、Nmax=67となる。
nl=2
Ax=1
Ay=3
Npix=11
Yo=1
【0055】
<第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、表示部2の画素形状が異なることを除き、他は上記実施の形態と同様の構成である。
【0056】
図9は、本実施の形態としての表示部2の画素配列の一部を表している。図9に示したように、水平方向に隣り合う1組の画素同士が1つの正方画素を構成するような形状寸法を有している。すなわち、この画素配列では、画素Gおよび画素Bからなる正方画素と画素Wおよび画素Rからなる正方画素とが、水平方向および垂直方向の双方において隣り合うように交互配置されている。
【0057】
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0058】
(実施例3−1)
次に、本実施の形態に対応した実施例(実施例3−1)について、図10を参照して説明する。図10は、レンチキュラーレンズ1を介して観測される本実施例に対応した画素パターンであり、以下の数値条件を満たすものである。
Px/Py=2
S=3.0
Nsx=2
Nsy=6
Nunit=2
Yo=1
【0059】
この条件における最適な画素数Nxは、条件式(1)から
Nx=Npix+1/6 ……(18)
【0060】
また、条件式(7)より、
Npix=6
ここで、Npixを6に近い奇数である5としたとき、条件式(18)より、
Nx=5+1/6
となる。
最適なBxは、条件式(14)より、
Bx=1−2/3=1/3
となる。
【0061】
設定可能な最大視点数Nmaxは、条件式(11)に以下の数値を代入することで得られ、Nmax=31となる。
nl=2
Ax=1
Ay=3
Npix=5
Yo=1
【0062】
図10では、画素Wおよび画素Gを輝度重心としたとき、最近接に位置する4つの輝度重心を結んで形成される最小寸法の格子C3が極めて正方形に近い形状である。よって、解像度バランスの改善効果が得られている。また、S軸方向およびT軸方向の双方において、画素の中心位置が見える高輝度領域と、隣り合う画素同士の境界位置が見える低輝度領域とが偏りなく配列された状態となっている。したがって、本実施例においても、条件式(1)などを満たすことにより、モアレの発生が抑制され、かつ、良好な解像度バランスも得られることが確認できた。
【0063】
(実施例3−2)
次に、本実施の形態に対応した他の実施例(実施例3−2)について、図11を参照して説明する。図11は、レンチキュラーレンズ1を介して観測される本実施例に対応した画素パターンであり、条件式(14)を除き、他は上記実施例3−1と同じ数値条件を満たすものである。すなわち、本実施例では、ブラックマスクの幅に関するパラメータBxを、条件式(14)を満足しない値、具体的にはBx=2/3としたものである。
【0064】
この場合、画素Wおよび画素Gを輝度重心としたとき、最近接に位置する4つの輝度重心を結んで形成される最小寸法の格子C4がほぼ正方形となるので解像度バランスの改善効果が得られている。隣り合う画素同士の境界位置が見える低輝度領域がS軸方向に連なる列L1と、画素の中心位置が見える高輝度領域がS軸方向に連なる列L2とが交互に配列されているので、ある程度のモアレ抑制効果が得られている。しかしながら、パラメータBxが最適化されていないので、実施例3−1と比較して画面全体の輝度が低いものとなっている。
【0065】
(比較例1)
次に、本実施の形態に対する比較例1としての画素パターンを図12に示す。図12に示した画素パターンは、以下の数値条件に対応するものであり、条件式(1)を満足しないものである。具体的には以下の数値条件に従う例である。
Px/Py=2
S=3.0
Nsx=2
Nsy=6
Yo=1
Nx=6
【0066】
図12では、列L1と列L2とが、画素の中心位置が見える高輝度領域同士が隣り合うと共に境界位置が見える低輝度領域同士が隣り合うように、交互に配列された状態となっている。そのため、全体としてほぼ水平方向に連なる高輝度領域および低輝度領域が、ほぼ垂直方向に並んだ状態となり、強いモアレが発生してしまう。また、最近接に位置する4つの輝度重心を結んで形成される最小寸法の格子C5が細長い平行四辺形となっている。このため、解像度バランスが悪く、かつ、モアレが発生しやすいものとなっている。
【0067】
<第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、表示部2の画素配列が異なることを除き、他は上記実施の形態と同様の構成である。
【0068】
図13は、本実施の形態としての表示部2の画素配列の一部を表している。図13に示したように、表示部2では、垂直方向へ画素Rと画素Gとが交互配置された画素列Y3と、同じく垂直方向へWと画素Bとが交互配置された画素列Y4とが、水平方向において交互に配列される。また、水平方向においては、画素Rと画素Wとが交互配置され、または画素Gと画素Bとが交互配置されている。ここで、各画素R,G,B,Wは、いずれも正方形を有していることが望ましい。
【0069】
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0070】
(実施例4−1)
次に、本実施の形態に対応した実施例(実施例4−1)について、図14を参照して説明する。図14は、レンチキュラーレンズ1を介して観測される本実施例に対応した画素パターンであり、以下の数値条件を満たすものである。
Px/Py=1
S=1.5
Nsx=2
Nsy=3
Nunit=2
Yo=4
【0071】
この条件における最適な画素数Nxは、条件式(1)から
Nx=Npix+4/3 ……(19)
【0072】
なお、図13に示した画素配列において画素数Nsyが偶数の場合、レンチキュラーレンズ1を介して観測される画素パターンでは、画素Gの中心位置が見える領域がS軸方向に並ぶ列と、画素Wの中心位置が見える領域がS軸方向に並ぶ列とが存在することとなる。この場合、条件式(7)を満たす場合に、解像度バランスが最適化される。但し、パラメータYoを偶数とする。一方、画素数Nsyが奇数の場合は(2×Nsy)を繰り返し単位とし、条件式(10)を満たすことで解像度バランスが最適化される。但し、パラメータYoを偶数とする。
【0073】
本実施例では画素数Nsyが奇数(Nsy=3)であるから、条件式(10)より、
Npix=3
ここで、Npixを3に近い奇数である3としたとき、条件式(19)より、
Nx=3+4/3
となる。
【0074】
図15は、図13の一部を拡大して表したものである。理想的なレンチキュラーレンズ(収差がなく、レンズの焦点位置がZ方向において画素位置となっている場合)を想定すると、ある方向からは、例えば表示部2の画面上における画素群のうちの、直線13Lが通過する領域部分が見える。従って、各画素の輝度は、その開口部分を通過する直線13L上の線分の長さとなる。図15に示したように、本実施の形態では、注目する画素Wの斜め方向には異色の画素Gが位置する。
【0075】
ここで、パラメータSが1より大きく2より小さい場合は、水平方向の3画素分、および垂直方向の3画素分の範囲(図15に示した範囲)を考慮すれば十分である。すると、画素Wと斜め方向(S軸方向)において隣り合う2つの画素Gにおける垂直成分の和Lsは、
Ls=3−(1+Bx)×S−By ……(20)
となる。輝度分布の方向依存性を解消するにはLs=Lcが最も望ましいので、それを満たす条件は、条件式(12)および(20)から、
1−By=3−(1+Bx)×S−By ……(21)
よって
Bx=(2/S)−1 ……(22)
となる。この条件が成り立つ場合は、ある方向から見た場合に、例えば図15における画素Wと、その斜め方向に位置する2つの画素Gとを一単位としたときの輝度分布は、見る方向に依存せずに一定となる。
【0076】
本実施例における最適なBxは、条件式(22)より、
Bx=(2/1.5)−1=1/3
となる。
【0077】
設定可能な最大視点数Nmaxは、条件式(11)に以下の数値を代入することで得られ、Nmax=13となる。
nl=1
Ax=2
Ay=3
Npix=3
Yo=4
【0078】
図14では、画素Wおよび画素Gを輝度重心としたとき、最近接に位置する4つの輝度重心を結んで形成される最小寸法の格子C6が極めて正方形に近い形状である。よって、解像度バランスの改善効果が得られている。また、S軸方向およびT軸方向の双方において、画素の中心位置が見える高輝度領域と、隣り合う画素同士の境界位置が見える低輝度領域とが偏りなく配列された状態となっている。したがって、本実施例においても、条件式(1)などを満たすことにより、モアレの発生が抑制され、かつ、良好な解像度バランスも得られることが確認できた。
【0079】
(実施例4−2)
次に、本実施の形態に対応した他の実施例(実施例4−2)について、図16を参照して説明する。図16は、レンチキュラーレンズ1を介して観測される本実施例に対応した画素パターンであり、以下の数値条件を満たすものである。
Px/Py=1
S=1.5
Nsx=2
Nsy=6
Nunit=2
Yo=1
【0080】
この条件における最適な画素数Nxは、条件式(1)から
Nx=Npix+1/6 ……(23)
【0081】
本実施例では画素数Nsyが偶数(Nsy=6)であるから、条件式(7)より、
Npix=3
ここで、Npixを3に近い奇数である3としたとき、条件式(23)より、
Nx=3+1/6
となる。
【0082】
本実施例における最適なBxは、条件式(22)より、
Bx=(2/1.5)−1=1/3
となる。
【0083】
設定可能な最大視点数Nmaxは、条件式(11)に以下の数値を代入することで得られ、Nmax=19となる。
nl=1
Ax=1
Ay=3
Npix=3
Yo=1
【0084】
本実施例においても、条件式(1)などを満たすことにより、モアレの発生が抑制され、かつ、良好な解像度バランスも得られることが確認できた。
【0085】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態等では、観察者の側から分離素子としてのレンチキュラーレンズと、表示部とを順に配置するようにした。しかしながら、本技術では、表示部として透過型の液晶表示ディスプレイを用いた場合には、観察者の側から表示部とレンチキュラーレンズとを順に配置するようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、分離素子としてレンチキュラーレンズを用いるようにしたが、例えばこれに代えて図17に示したパララックスバリア1Aを用いるようにしてもよい。
【0087】
パララックスバリア1Aは、表示部2に表示された視差合成画像に含まれる複数の視差画像を立体視が可能となるように複数の視点方向に分離するものであり、立体視を可能にするように表示部2に対して所定の位置関係で対向配置されている。パララックスバリア1Aは、光を遮蔽する遮蔽部11と、光を透過し、表示部2の画素に対して立体視が可能となるように所定の条件で対応付けられた視差分離部としての開口部12とを有している。パララックスバリア1Aは、例えば透明な平面板の上に、遮蔽部11として、光を通さない黒色の物質や、光を反射する薄膜状の金属などを設置することで形成されている。パララックスバリア1Aの開口部12は、斜め方向(S軸方向)にステップ状(段差状)に設けられている。または、開口部12を斜めストライプ形状に設けるようにしてもよい。画像表示素子2では、バリアパターンに応じたパターンで複数の視点用の視差画像を合成表示する。ステップ状のバリアパターンである場合には、複数の視差画像を、そのバリアパターンに応じて斜め方向に所定の配置パターンで段差状に分割して合成する。パララックスバリア1Aを用いる場合、その開口部12の延伸方向および配列ピッチが、上記実施の形態におけるレンチキュラーレンズ1のシリンドリカルレンズ13と同様の所定の条件を満足するようにすればよい。
【0088】
また、表示部における画素の配列順序は、上記実施の形態等で示したものに限定されず、他の配列順序を取り得る。但し、より良好な解像度バランスを得るためには、上記実施の形態等で説明したように、比較的高輝度の画素と比較的低輝度の画素とが水平方向に交互に並ぶようにするとよい。また、画素を色についても、上記実施の形態のものに限定されず、例えばR,G,B,Y(黄色)などの他の色を用いてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態等で記載した条件式は、優れた解像度バランスとモアレ抑制効果とを両立させる最適条件を示すものである。よって、製造誤差等による僅かなずれが生じた場合においても、各条件式を実質的に満たすものであれば、十分な効果が期待できる。
【0090】
また、本技術は以下のような構成を取り得るものである。
<1>
第1から第4の色の表示画素を複数ずつ含み、第1の方向へ第1および第2の色の表示画素が交互配置された第1の画素列と、前記第1の方向へ第3および第4の色の表示画素が交互配置された第2の画素列とが前記第1の方向と異なる第2の方向において交互に配列され、複数の視差画像を表示する表示部と、
前記第1および第2の方向の双方と異なる第3の方向へ延伸する複数の視差分離部を有し、前記複数の視差画像を複数の視点方向に分離する分離素子と
を備え、
以下の式(1),(2)を共に満足している
表示装置。
Nx=Npix+Yo/(2×S) ……(1)
S=Nsy/Nsx ……(2)
但し、
Nx:第2の方向において一の視差分離部に割り当てられる表示画素の数
Npix:1以上の整数
Yo:0.5もしくは0以上の整数
Nsx:第3の方向へ延伸する直線上において第1もしくは第2の色の表示画素の中心位置が現れる一周期あたりの、第2の方向に並ぶ表示画素の数
Nsy:第3の方向へ延伸する直線上において第1もしくは第2の色の表示画素の中心位置が現れる一周期あたりの、第1の方向に並ぶ表示画素の数
<2>
前記第1の色の表示画素、第3の色の表示画素、第2の色の表示画素、第4の色の表示画素の順序で前記第2の方向へ周期配列され、
前記第1および第2の色の表示画素が前記第3および第4の色の表示画素よりも高い輝度を有する
上記<1>記載の表示装置。
<3>
前記第1から第4の色は、それぞれ、緑(G),白(W),青(B),赤(R)である
上記<2>記載の表示装置。
<4>
前記第2の方向へ前記第1および第3の色の表示画素が交互配置された第3の画素列と、前記第2の方向へ第2および第4の色の表示画素が交互配置された第4の画素列とが前記第1の方向において交互に配列され、
前記第2および第3の色の表示画素が前記第1および第4の色の表示画素よりも高い輝度を有する
上記<1>記載の表示装置。
<5>
前記第1から第4の色は、それぞれ、赤(R),緑(G),白(W),青(B)である
上記<4>記載の表示装置。
<6>
前記分離素子は、前記複数の視差分離部として機能する複数の分割レンズを有するレンチキュラーレンズであり、
前記分割レンズは所定の方向に延在する円筒レンズであり、その円筒母線方向が、前記第3の方向と一致している
上記<1>から<5>のいずれか1つに記載の表示装置。
<7>
前記分離素子は、光を透過し、前記複数の視差分離部として機能する複数の開口部と、光を遮蔽する遮蔽部とを有するパララックスバリアであり、
前記開口部の形状が前記第3の方向へ延伸するステップ形状もしくは斜めストライプ形状を有する
上記<1>から<5>のいずれか1つに記載の表示装置。
<8>
前記第1の方向は垂直方向であり、前記第2の方向は水平方向である
上記<1>から<7>のいずれか1つに記載の表示装置。
<9>
以下の式(3)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
Npix=(Py×Nsy)/(Px×2) ……(3)
但し、
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
<10>
以下の式(4)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
Npix=(Py/Px)×Nsy ……(4)
<11>
Npixは奇数である
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
<13>
Yoは奇数である
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
<14>
以下の式(5)および式(6)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
2<S≦3 ……(5)
Bx=1−2/S ……(6)
但し、
Bx:第2の方向における、画素同士の境界部分の幅の、配置ピッチPyに対する比率
である。
<14>
以下の式(7)および式(8)を満足している
上記<4>または<5>に記載の表示装置。
1<S<2 ……(7)
Bx=2/S−1 ……(8)
但し、
Bx:第2の方向における、画素同士の境界部分の幅の、配置ピッチPyに対する比率
である。
<15>
Sの値が非整数である
上記<1>から<8>のいずれか1つに記載の表示装置。
<16>
以下の式(9)および式(10)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
Py/Px=4 ……(9)
S=2.5 ……(10)
但し、
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
である。
<17>
Nx=9である
上記<16>記載の表示装置。
<18>
Bx=1/5である
上記<16>または<17>に記載の表示装置。
<19>
以下の式(11)および式(12)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
Py/Px=4 ……(11)
S=3.0 ……(12)
但し、
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
である。
<20>
Nx=11+1/6である
上記<19>記載の表示装置。
<21>
Bx=1/3である
上記<19>または<20>に記載の表示装置。
<22>
以下の式(13)および式(14)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
Py/Px=2 ……(13)
S=3.0 ……(14)
但し、
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
である。
<23>
Nx=5+1/6である
上記<22>記載の表示装置。
<24>
Bx=1/3である
上記<22>または<23>に記載の表示装置。
<25>
以下の式(15)および式(16)を満足している
上記<4>または<5>に記載の表示装置。
Py/Px=1 ……(15)
S=1.5 ……(16)
但し、
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
である。
<26>
Nx=3+4/3である
上記<25>記載の表示装置。
<27>
Bx=1/3である
上記<25>または<26>記載の表示装置。
<28>
以下の式(17)および式(18)を満足している
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の表示装置。
Py/Px=1 ……(17)
S=3.0 ……(18)
但し、
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
である。
<29>
Nx=3+1/6である
上記<28>記載の表示装置。
<30>
Bx=1/3である
上記<28>または<29>に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0091】
1…レンチキュラーレンズ、1A…パララックスバリア、2…表示部、10L…左眼、10R…右眼、11…遮蔽部、12…開口部、13…シリンドリカルレンズ、41…円筒母線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1から第4の色の表示画素を複数ずつ含み、第1の方向へ第1および第2の色の表示画素が交互配置された第1の画素列と、前記第1の方向へ第3および第4の色の表示画素が交互配置された第2の画素列とが前記第1の方向と異なる第2の方向において交互に配列され、複数の視差画像を表示する表示部と、
前記第1および第2の方向の双方と異なる第3の方向へ延伸する複数の視差分離部を有し、前記複数の視差画像を複数の視点方向に分離する分離素子と
を備え、
以下の式(1),(2)を共に満足している
表示装置。
Nx=Npix+Yo/(2×S) ……(1)
S=Nsy/Nsx ……(2)
但し、
Nx:第2の方向において一の視差分離部に割り当てられる表示画素の数
Npix:1以上の整数
Yo:0.5もしくは0以上の整数
Nsx:第3の方向へ延伸する直線上において第1もしくは第2の色の表示画素の中心位置が現れる一周期あたりの、第2の方向に並ぶ表示画素の数
Nsy:第3の方向へ延伸する直線上において第1もしくは第2の色の表示画素の中心位置が現れる一周期あたりの、第1の方向に並ぶ表示画素の数
【請求項2】
前記第1の色の表示画素、第3の色の表示画素、第2の色の表示画素、第4の色の表示画素の順序で前記第2の方向へ周期配列され、
前記第1および第2の色の表示画素が前記第3および第4の色の表示画素よりも高い輝度を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1から第4の色は、それぞれ、緑(G),白(W),青(B),赤(R)である
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の方向へ前記第1および第3の色の表示画素が交互配置された第3の画素列と、前記第2の方向へ第2および第4の色の表示画素が交互配置された第4の画素列とが前記第1の方向において交互に配列され、
前記第2および第3の色の表示画素が前記第1および第4の色の表示画素よりも高い輝度を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1から第4の色は、それぞれ、赤(R),緑(G),白(W),青(B)である
請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記分離素子は、前記複数の視差分離部として機能する複数の分割レンズを有するレンチキュラーレンズであり、
前記分割レンズは所定の方向に延在する円筒レンズであり、その円筒母線方向が、前記第3の方向と一致している
請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
前記分離素子は、光を透過し、前記複数の視差分離部として機能する複数の開口部と、光を遮蔽する遮蔽部とを有するパララックスバリアであり、
前記開口部の形状が前記第3の方向へ延伸するステップ形状もしくは斜めストライプ形状を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の方向は垂直方向であり、前記第2の方向は水平方向である
請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
以下の式(3)を満足している
請求項1記載の表示装置。
Npix=(Py×Nsy)/(Px×2) ……(3)
但し、
Px:第2の方向における画素の配置ピッチ
Py:第1の方向における画素の配置ピッチ
【請求項10】
以下の式(4)を満足している
請求項1記載の表示装置。
Npix=(Py/Px)×Nsy ……(4)
【請求項11】
Npixは奇数である
請求項1記載の表示装置。
【請求項12】
Yoは奇数である
請求項1記載の表示装置。
【請求項13】
以下の式(5)および式(6)を満足している
請求項1記載の表示装置。
2<S≦3 ……(5)
Bx=1−2/S ……(6)
但し、
Bx:第2の方向における、画素同士の境界部分の幅の、配置ピッチPyに対する比率
である。
【請求項14】
以下の式(7)および式(8)を満足している
請求項1記載の表示装置。
1<S<2 ……(7)
Bx=2/S−1 ……(8)
但し、
Bx:第2の方向における、画素同士の境界部分の幅の、配置ピッチPyに対する比率
である。
【請求項15】
Sの値が非整数である
請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−242806(P2012−242806A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116245(P2011−116245)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】