説明

表示装置

【課題】表示内容や観察位置に関わらず、色収差を目立たない表示を行うことが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置は、電子的に表示画像を生成する画像生成手段と、生成した物体像を空間に投射結像する結像手段と、から構成され、結像手段に入射する光の外周光を可変的に遮断する絞り手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置として、画像を投射するプロジェクターと、プロジェクターから投射された投射像を表示するスクリーンと、スクリーン上に表示された投射像を空中に投射結像させる結像手段とを備え、結像手段のスクリーン側とは反対側の何もない空間に実像を表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
これらでは、結像手段としてフレネルレンズが使用されているが、通常のフレネルレンズの場合、周辺側へ行くに従って色収差が大きくなる特徴がある。ガラスレンズの場合は、アッベ数の異なる2種類のレンズを組み合わせて色消しを行うことにより色収差を低減することができる。しかしながら、これをフレネルレンズで行うことは困難であった。
【0004】
図10は、フレネルレンズを使って実像の空間像を表示する原理を示す図である。
図10に示すように、FPDやプロジェクターなどから投射されてリアスクリーン102上に生成された物体像Yは、フレネルレンズ103を通して空間像Zとして結像する。結像する位置、すなわちフレネルレンズ103と空間像Zとの位置は、一般のレンズの公式により、フレネルレンズ103の焦点距離をf、物体像Yからフレネルレンズ15の距離をaとすると、フレネルレンズ103と空間像Zとの距離bは、
1/b=1/f−1/a
となる。
【0005】
ここで、物体像Yの点Pから出た光は、フレネルレンズ103のあらゆる所を通過して空間像Zの点Qの位置に結像しているが、観察者が点Bの位置から実像(空間像Z)を観察する場合、光線の一部であるフレネルレンズ103の点Dで屈折されて、実像(空間像Z)の点Qを通った光線が選択的に観察者の眼に入射し、像として認識される。ここで、観察位置を点Aに移動した場合、観察者の眼に入射する光線はフレネルレンズ103上では点Cに移動することになる。
【0006】
一方、空間像Zの位置にスクリーン104を配置した場合、空間像Zは実像としてスクリーン104上に結像して拡散する。この場合、空間像Zの点Qの位置ではフレネルレンズ103上のあらゆる所を通ってきた光線が拡散することになり、点Aの位置、点Bの位置でそれぞれ観察される実像(空間像Z)に大きな違いは生じない。
【0007】
ところが、スクリーン104が存在しない場合には、観察者の眼に入射する光線は、フレネルレンズ103の点Cおよび点Dの位置しか通過しないという違いがある。ここで、フレネルレンズ103の特性として色収差があることが問題となる。フレネルレンズ103はその中心から周辺に行くに従って屈折角度が大きくなるため、周辺部ほど色収差が大きくなる。光は、波長の違いによって屈折率(焦点距離)が異なり、色によって像面の位置が光軸方向でずれてしまう。例えば、白色の光線をフレネルレンズ103に入射させると、フレネルレンズ103側から青赤色、赤色の順で結像する。フレネルレンズ103上における点Cは、点Dよりもレンズ周辺側に位置するため、色収差の影響が大きく、点Dの位置よりも点Cの位置を通過した光線の方が、光軸から大きくずれて観察されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−065288号公報
【特許文献2】特開2009−300987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結像手段としてフレネルレンズを使用する場合には、上記のような課題はやむを得ないものであったが、表示する内容や観察者の観察位置によっては画質をさらに大きく損なうことになってしまう。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、表示内容や観察位置に関わらず、色収差を目立たない表示を行うことが可能な表示装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、画像を表示する表示手段と、表示手段に表示された画像を空間に投射結像する結像手段と、から構成され、前記結像手段に入射する光の外周光を可変に遮断する絞り手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
これによれば、絞り機構により結像手段の周辺部分を透過する光を絞り手段により遮光することとしたので、観察者側に向かって色収差により画質が低下した画像が表示されることを避けることができる。
【0013】
また、前記結像手段から観察者までの距離を検出する距離検出手段と、前記距離検出手段により検出された距離に応じて前記絞り手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記結像手段と前記観察者との距離が近い場合に、前記絞り手段による前記光の遮断量が大きくなるように制御する構成としてもよい。
【0014】
本発明では、画像を観察する観察者の観察距離、つまり、結像手段と観察者との距離によって絞り量を制御する構成としたので、観察者の観察位置が結像手段から遠い場合には色収差が目立たないため絞りを機能させなくてもよい。しかしながら、観察者の観察位置が結像手段に近い場合には、色収差が目立ちやすいので、絞り手段の絞り量を大きくして結像手段の中心部分のみを透過する光を使用して、色収差の発生を低減させることができる。このようにして表示画質が低下するのを避けることができる。
【0015】
また、前記表示手段に入力される画像信号における赤と青の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、前記信号レベル検出手段による検出出力に応じて前記絞り手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記赤と青の信号レベルが大きい場合に、前記光の遮断量が大きくなるように前記絞り手段を制御する構成としてもよい。
【0016】
本発明では、信号レベル検出手段による検出結果、つまり入力信号のうち赤と青の信号レベルの大きさに応じて絞り手段を制御している。
【0017】
このため、入力信号に含まれる赤色成分および青色成分が大きい場合は、絞り手段の開口領域を小さくし、光を遮光する領域が大きくなるように制御し、結像手段の中央部分のみを使用して色収差の発生を抑えることができる。一方、入力信号に含まれる赤色成分および青色成分が小さい場合は、絞り手段による光の絞り量が小さくなるように絞り手段を制御して、結像手段の周辺部分も使用して観察者による適視範囲をできるだけ広く確保しながら画質の低下を避けることが可能である。
【0018】
また、赤と青の信号レベルは、画像信号のうち、画像のそれぞれのドットにおける赤の強度と青の強度の積に、それぞれのドットの位置に応じた係数を乗じ、画像全体に足し合わせた値に比例する値である構成としてもよい。
【0019】
色収差が目立つのは、画面の同一場所で赤と青の信号レベルが同時に表示された場合であるため、同一場所での赤信号レベルと青信号レベルとの積を求め、これを画面全体で加算した値が制御のための妥当な信号となる。ただし、応答速度が考慮すると、複数フレームで平均化するなどの処理が適当であるため複数フレームの加算値とする。
【0020】
また、前記絞り手段が、大きさが固定された開口を有する絞り板と、前記絞り板を光軸方向に移動させる移動手段と、により構成される構成としてもよい。
これによれば、複雑な構成によらず絞り作用を得ることができる。
【0021】
また、前記絞り手段が、複数の電極を備えたPDLC表示素子で構成された構成としてもよい。
これによれば、絞り手段が複数の電極を備えたPDLC表示素子によって構成されているので、機械的に部材を可動させることなく絞り量(遮光領域)を制御することが可能である。また、所定の電極に電圧を印加するだけで遮光領域を制御することが可能なため、応答性が高く、信頼性が向上する。
【0022】
また、前記複数の電極が同心円状に配置されている構成としてもよい。
これによれば、各電極の中心を光軸と一致させることによって、所定の電極に電圧を印加することで遮光領域を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の表示装置によって空間像が形成される原理を示す図。
【図2】表示装置における絞り手段の位置を示す図。
【図3】実施形態の表示装置の具体的な構成の一例を示す斜視図。
【図4】実施形態における、絞り機構を制御するための機能ブロック図。
【図5】絞り機構の構成を示す図であって、(A)は光軸上における絞り機構の位置を示す図、(B)は矩形枠を示す平面図、(C)は1つの絞り羽部材を示す平面図、(D)は開く方向を示す図、(E)閉じる方向を示す図。
【図6】第2実施形態の表示装置の構成を示す図。
【図7】(A),(B)は、絞り板の構成例を示す図。
【図8】第3実施形態の表示装置の構成を示す図。
【図9】絞り機構の電極構造を示す図。
【図10】フレネルレンズを使って実像の空間像を表示する原理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の表示装置によって空間像が形成される原理を示す図である。図2は、表示装置における絞り手段の位置を示す図である。
本実施形態の表示装置100は、図1に示すように、電子的に表示画像(物体像)を生成するためのFPDからなる画像生成手段1と、フレネルレンズ(結像手段)15とを備えている。画像生成手段1には、図示しないパーソナルコンピューターなどの映像信号生成装置が接続されており、画像生成手段1は、外部からの映像信号生成装置から入力された映像信号に基づいて画面1A上に画像(物体像)を生成する。画面1A上に表示された物体像はフレネルレンズ15によって、光軸方向で画像生成手段1側とは反対側の空間に、実像として空間像が表示される。
【0026】
ここで、図2に示すように、フレネルレンズ15の背面側(画像生成手段1側)、つまり画像生成手段1とフレネルレンズ15との間には絞り手段5が設けられている。この絞り手段5により、フレネルレンズ15の周辺部15bに入射する光線を遮光している。
【0027】
ここで、光軸LXを挟んでフレネルレンズ15の一方の端15aと空間像Zの同じ側の端を結ぶ光線a1の延長線上より光軸LX側が空間像Zの端の見える位置であり、これよりも光軸LXの逆側では空間像Zが全く見えないことになる。空間像Z(実像)の全体が観察される適視範囲は、図1に斜線で示す範囲となる。この適視範囲内であれば、空間像Zが全て見えることになる。逆に、光軸LXから離れるようにして上記範囲から移動して行くと、空間像Zの一部が見えなくなり、さらに移動すると空間像Zは全く見えなくなる。言い換えると、観察者の眼から空間像Zを見込んだ線(観察者の視線)がフレネルレンズ15の適視範囲内にあれば、空間像Zが全て見えることになる。
【0028】
図2において破線で示した部分は絞り手段5がない状態を示し、実線で示す部分は絞り手段5を設置した状態を示す。
図2において、破線は図1と同様に絞りがない光線a2を示し、実線は絞り手段5を設けたときの光線a3を示す。このように、絞り手段5を設けることでフレネルレンズ15の周辺部15bに入射しようとする光が遮断されるため、これに対応して適視範囲も狭くなっていることがわかる。適視範囲が狭くてもいい場合には、絞り手段5を設けることによってフレネルレンズ15の周辺部15bに入射する光を遮光し、色収差によって生じる焦点のずれが生じるのを防止することができる。このようにして、光軸上の色収差を絞り手段5による絞り込みによってある程度抑制することが可能となり、その結果、形成される空間像の大きさが色によって異なるなど、色収差の影響が大きい画像が表示されないようにすることができる。
【0029】
なお、画像生成手段1は、例えば液晶テレビジョンのように、ディスプレイと映像信号生成装置とが一体化した装置であっても良い。図1において、紙面に平行な方向を画像生成手段1の画面1Aの水平方向H(左右方向)とし、紙面に垂直な方向を画像生成手段1の画面1Aの垂直方向V(上下方向)とする。
【0030】
また、上記した画像生成手段(表示手段)としてのプロジェクターと、リアスクリーンとを備え、プロジェクターからリアスクリーンに向けて投射光を投射させることによって、リアスクリーン上に投射像を形成するようにしてもよい。
【0031】
図3は、本実施形態の表示装置の具体的な構成の一例を示す斜視図である。
本実施形態の表示装置100は、図3に示すように、プロジェクター(表示手段)11を備え、さらに、リアスクリーン12、ミラー13、絞り機構(絞り手段)14およびフレネルレンズ15と、これらを収容する筐体31とを備えている。そして、プロジェクター(画像生成手段)11から投射された投射光は、リアスクリーン12上に投射されて物体像を生成し、ミラー13により光軸が折り曲げられて、フレネルレンズ15により実像として空間像Zを表示する。
【0032】
また、筐体31の前面31aには、フレネルレンズ15から観察者までの距離を測定する距離検出センサー(距離検出手段)16が設けられている。そして、筐体31の内部には、距離検出センサー16により検出された検出結果(距離)に応じて上記絞り機構14を制御する制御回路(制御手段)17が備えられている。絞り機構14は、フレネルレンズ15に入射する光の外周光を可変的に遮断するものである。
【0033】
図4は、本実施形態における、絞り機構を制御するための機能ブロック図である。
図4に示すように、制御回路17は、信号レベル検出部(信号レベル検出手段)18、信号増幅部19、演算部20、絞り制御部21を有し、距離検出センサー16および絞り機構14が接続されている。
【0034】
まず、信号レベル検出部18において、入力信号における赤信号成分および青信号成分を検出する。この成分抽出には、コンポーネント信号であれば、赤色入力信号、青色入力信号をそのまま使用し、各色の信号レベルを検出する。あるいは、コンポジット信号であれば、RGBにデコードした後の信号を使用して検出する。
【0035】
ここで、色収差が目立ちやすい画像とは、赤色信号および青色信号が明るいレベルで同時に表示された場合である。一方、赤色信号、青色信号がそれぞれ単独で表示された場合には、比較対象がないために収差としては認識されない。
【0036】
また、赤色信号、青色信号のいずれか一方と緑色信号とが同時に表示された場合には、収差として光軸上でのずれが生じるが、赤色信号および青色信号が同時に表示された場合と比較すると、緑色と各色(赤、青)との光軸上での結像位置のずれは少なくて済むので、緑色信号については検出の対象から外しても構わない。
【0037】
そこで、赤色信号と青色信号に着目し、検出レベルをS、赤信号レベルをR、青信号レベルをBとして、S、R、Bともに1に正規化すると、
S(x,y)=R(x,y)×B(x,y)
とすればよい。
【0038】
さらに、フレネルレンズ15の周辺部分を通過する光ほど屈折角度が大きくなり色収差が目立つことから、このフレネルレンズ15に対応する係数として、中心が小さく周辺が大きい係数K(x,y)を設定しておく。つまり、フレネルレンズ15の各位置に対応して割り当てられている所定の係数のうち、基本単位となる中心位置の係数(中心係数)よりも、中心位置を囲む周辺位置の係数(周辺係数)を中心係数よりも大きく設定してある。
【0039】
なお、実際の空間像Zの表示では、入力信号の周辺部が必ずしもフレネルレンズ15の周辺で表示されるわけではなく、観察者が観察する位置によって、フレネルレンズ15に表示される位置も変化するが、光軸上から見れば傾向として一致する。このため、これを基準として係数も周辺を大きく設定しておく。
【0040】
このような二次元の信号に、予め設定した周辺係数を掛け合せて、
Z(x,y)=S(x,y)×K(x,y)
という信号を得て、演算回路に入力する。
【0041】
なお、係数K(x,y)は、観察者の垂直方向V(上下方向)、および水平方向H(左右方向)の位置を検出して、それを基に係数を書き換えることを行うようにすることもできる。
【0042】
演算部20には、上記のようにして得たZ(x,y)と、距離検出センサー16の距離出力値Dが入力される。演算部20では、Z(x,y)と距離出力値Dによって、絞り機構14を駆動制御するための制御電圧Fを出力する。
【0043】
この制御電圧Fは、Z(x,y)を画面全体で積分したΣZ(x,y)と、距離出力値Dにより、例えば、
F=m×ΣZ(x,y)−p×D
で示すように設定することができる。
ここで、mとpは、ΣZ(x,y)と距離出力値Dの出力最大値と、両出力による絞りの感度を決める係数であり、任意に決めることができる。
【0044】
また、これらは単調増加するように設定すれば、他の関数であってもかまわない。
さらに、時間軸方向には入力信号のフレームごとに応答する必要はなく、複数フレームで応答するものであったり、入力信号の変化が大きかった場合に応答するような構成にしてもよい。
このようにして得た制御電圧Fによって、絞り制御部21で絞り機構14を制御する。
【0045】
次に、絞り機構の具体的な構成例について述べる。
図5は、絞り機構の構成を示す図であって、(A)は光軸上における絞り機構の位置を示す図、(B)は矩形枠を示す平面図、(C)は1つの絞り羽を示す平面図、(D)は開く方向を示す図、(E)閉じる方向を示す図である。
【0046】
本実施形態の絞り機構14は、図5に示すように、矩形枠14cと、この矩形枠14cに対して移動可能な4つの絞り羽14Aとにより構成されている。絞り羽14Aは平面視L字状を呈し、それぞれが、光軸LXの周りに互いに90°ずつ向きをずらして矩形枠14cの4辺に沿って配置されている。4枚の絞り羽14Aは、開口領域を大きくするように絞りを開く場合、それぞれが光軸LXから遠ざかるように移動して図5(D)で示す開状態となる。一方、開口領域を大きくするように絞りを開く場合、それぞれが光軸LXへ近づくように移動して図5(E)で示す閉状態となる。
【0047】
図5(D)は各絞り羽14Aと光軸LXとの距離が広く、絞りを開いた状態を示す。投射光が通過する開口141は最大となり、通過光量が増加する。絞りを開いた状態では、投射光の最外周の光線はフレネルレンズ15のE点を通過して、L位置を通る光線e1となる。
図5(E)は各絞り羽14Aと光軸LXとの距離が近く、絞りを閉じた状態を示す。投射光が通過する開口141は小さくなり、通過光量が減少する。絞りを閉じた状態では、投射光の最外周の光線はフレネルレンズ15のF点を通過して、S位置を通る光線f1となる。
よって、図5(A)において、開状態では最外周の光線はLの位置を通るが、閉状態ではSの位置となり、フレネルレンズ15で屈折される光線の最外周の部分が制御(遮蔽)されることになる。
【0048】
このようにして、入力信号に含まれる赤と青の信号レベルを検出し、赤色成分および青色成分が他の色の成分よりも大きい場合には、絞り羽14Aを閉じる方向に移動させることで絞り量を大きくし、フレネルレンズ15の周辺部を通過する光を遮光して色収差を抑えた表示を行うことができる。
【0049】
赤と青の信号レベルは、画像信号のうち、画像のそれぞれのドットにおける赤の強度と青の強度との積に、それぞれのドットの位置に応じた係数を乗じ、画像全体に足し合わせた値に比例する値である。
【0050】
ここで、赤と青の信号レベルは、1フレーム内の同一場所における赤信号レベルと青信号レベルとの積の値の1フレームまたは複数フレームの加算値に略比例する値であり、画面の同一場所での各信号レベルの積を求め、これを画面全体で加算した値が制御のための妥当な信号となる。ただし、応答速度などを考慮して、複数フレームで平均化するなどの処理を行うことが適当であるため、複数フレームの加算値を利用する。
【0051】
また、観察者による観察位置がフレネルレンズ15から遠い場合には、観察者の視力が一定の視力であれば色収差が分かりにくくなるため(気にならなくなるため)、絞り羽14Aを開く方向に移動制御して絞り量を小さくし、フレネルレンズ15の周辺部分を通過する光も利用して表示を行うことができる。
【0052】
本実施形態の表示装置100によれば、絞り機構14によりフレネルレンズ15の周辺部分を透過する光を遮光することとしたので、観察者側に向かって色収差により画質が低下した画像が表示されることを避けることができる。
【0053】
具体的に本実施形態では、画像を見る観察者の観察距離、つまり表示装置100(フレネルレンズ15)と観察者との距離によって絞り量を制御する構成としたので、観察者の観察位置がフレネルレンズ15から遠い場合には色収差が目立たないため、絞り機構14の絞りを開いて適視範囲を広げても画質低下を避けることができる。
【0054】
一方、観察者の観察位置がフレネルレンズ15に近い場合には色収差が目立ちやすいので、絞り機構14の絞り量を大きくしてフレネルレンズ15の中心部分のみを使用することにより、色収差の発生を低減させることができる。
このようにして表示画質が低下するのを避けることができる。
【0055】
本実施形態では、信号レベル検出部18によって検出される検出結果、つまり、入力信号の赤色および青色の信号レベルの大きさに応じて絞り機構14を制御する。色収差が目立つのは、画面の同一場所で赤と青が同時に表示された場合である。そのため、入力信号における赤色成分および青色成分が所定値よりも大きい場合には、絞り機構14の絞り羽14Aを閉じて絞り量を大きくし(開口領域を小さくし)、フレネルレンズ15の中心部分のみを使用して色収差の発生を低減させることができる。一方、入力信号における赤色成分および青色成分が小さい場合には色収差は目立たないので、絞り羽14Aを開いた状態でも良好な表示が行える。この場合、適視範囲をできるだけ広く確保しながら画質低下を避けることが可能である。
【0056】
また、4枚の絞り羽14Aの位置を固定して所定の大きさの開口141を形成し、この状態で絞り機構14を光軸方向へ移動させることによって、複雑な構成によることなく絞り機能を実現することができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の表示装置の構成について述べる。
図6は、第2実施形態の表示装置の構成を示す図である。図7(A),(B)は、絞り板の構成例を示す図である。
本実施形態の表示装置200は先の実施形態と基本構成は略同じであるが、絞り機構の構成において異なる。よって、絞り機構の構成について詳しく述べる。
【0058】
図6に示すように、本実施形態の絞り機構24は、フレネルレンズ15の背面側(リアスクリーン12側)に配置された絞り板23と、絞り板23の下端に接続された移動板27と、光軸方向に移動板27を移動可能に支持する支持板25と、移動板27を支持板25に対して摺動させるモーター(移動手段)26とにより構成されている。モーター26の駆動により移動板27を支持板25上で摺動させれば、フレネルレンズ15から遠い位置P1と、これよりもフレネルレンズ15に近い位置P2との間で絞り板23を移動させることができる。
【0059】
ここで、絞り板23が位置P1にあるとき、投射光の最外周の光線はフレネルレンズ15のE点を通過して、L位置を通る光線e1となる。また、絞り板23が位置P2にあるとき、投射光の最外周の光線はフレネルレンズ15のF点を通過して、S位置を通る光線f1となるので、所定位置で絞り量を制御する先の実施形態と同様に、色収差の原因となるフレネルレンズ15の周縁部分を通る光を遮蔽することができる。
【0060】
なお、絞り板23の開口23Aの形状は、図7(A)に示すような円形状であってもいいし、図7(B)に示すような矩形状であっても良い。
また、絞り制御部21をモーター26に接続することで先の実施形態同様に絞り機構を制御することが可能である。
【0061】
さらに、人間の両眼は水平方向に配置されていることや、観察者の観察位置は上下方向よりも左右方向の方が移動する可能性が高いことを考慮すると、開口23Aは水平方向に広い方がより好ましい。
【0062】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の表示装置の構成について述べる。
図8は、第3実施形態の表示装置の構成を示す図である。図9は、絞り機構の電極構造を示す図である。
本実施形態の表示装置300は、PDLC(高分子ポリマー液晶)からなる絞り機構34と、この絞り機構34である液晶パネルを駆動制御する駆動部37と、を備えて構成されている。この絞り機構34は一対のガラス基板間に液晶層を挟持してなるもので、一方の基板側にベタ状に形成された電極35と、他方の基板側に平面視楕円形状を呈する複数の電極36a〜36eとを有する。各電極36a〜36eは同心円状に形成されその全てが電極35と対向している。このような液晶パネルは、上記電極35、36a〜36e間に電圧を印加するとその表示領域が透明になり、電圧を印加しないと白濁するものである。
なお、液晶パネルは、各電極36a〜36eの中心が光軸LXに一致するようにして配置される。
【0063】
ここで、図9に示すように、液晶パネルの一方の基板側は複数の電極構造を備えており、外側に位置する電極36aから電極36eへと順次印加電圧を制御することにより、電圧が印加された電極に対応して表示領域の周囲から順次白濁する。このため、機械的な動作によって絞り量を制御する先の実施形態の絞り機構と同様に、フレネルレンズ15の周辺部分を通過する光を遮光する作用を得ることができる。
【0064】
また、上記絞り制御部21の出力側が液晶パネルからなる絞り機構34の駆動部37に接続されており、液晶パネルの駆動部37の出力側は各電極35、36a〜36eに接続されているので、先の実施形態と同様に作用させることができる。
【0065】
本実施形態の絞り機構34では、絞り機構24を、同心円状に配置された複数の電極36a〜36eを備えたPCLD表示素子で構成しているため、所定の電極に電圧を印加するだけで光を遮光することが可能となり、機械的に部材を可動させる必要がない。このため、可動部材の位置制御などが不要となり、遮光領域を制御する際の応答性が向上する。また、絞り精度における画像表示の信頼性を向上させることができる。
【0066】
また、液晶パネルは、その周辺部分の白濁させた領域に入射する光を完全に遮断するのではなく光拡散材のように作用するので、空間像Zの周辺部分が完全に切断されることなく表示される。つまり、透明領域(透過領域)と白濁領域(遮蔽領域)との境界部分では空間像Zがぼやけたように表示される。このため、形成される空間像Zの一部が完全に欠落して観察者に違和感を生じさせるのを低減することができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
1…画像生成手段、1a,1A…画面、5…絞り手段、b…距離、Y…物体像、11…プロジェクター(表示手段)、15…フレネルレンズ(結像手段)、14,24,34…絞り機構、14…絞り機構(絞り手段)、16…距離検出センサー(距離検出手段)、17…制御回路(制御手段)、18…信号レベル検出部(信号レベル検出手段)、23…絞り板、23A…開口、26…モーター(移動手段)、35,35e,36a…電極、LX…光軸、P1,P2…位置、100,200,300…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示手段と、表示手段に表示された画像を空間に投射結像する結像手段と、から構成され、
前記結像手段に入射する光の外周光を可変に遮断する絞り手段を備えた
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記結像手段から観察者までの距離を検出する距離検出手段と、
前記距離検出手段により検出された距離に応じて前記絞り手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記結像手段と前記観察者との距離が近い場合に、前記絞り手段による前記光の遮断量が大きくなるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示手段に入力される画像信号における赤と青の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
前記信号レベル検出手段による検出出力に応じて前記絞り手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記画像信号における前記赤と青の信号レベルが大きい場合に、前記光の遮断量が大きくなるように前記絞り手段を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記赤と青の信号レベルは、前記画像信号のうち、前記画像のそれぞれのドットにおける赤の強度と青の強度の積に、前記それぞれのドットの位置に応じた係数を乗じ、前記画像の全体に足し合わせた値に比例する値である
ことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記絞り手段が、
大きさが固定された開口を有する絞り板と、
前記絞り板を光軸方向に移動させる移動手段と、により構成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記絞り手段が、複数の電極を備えたPDLC素子で構成された
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数の電極が同心円状に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−73228(P2013−73228A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214797(P2011−214797)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】