説明

表示部材支持構造およびこれを備えた電子機器

【課題】表示部材の取り付けまたは取り外しにおける作業効率を高めることが可能であり、かつ、表示部材の位置ズレの発生を防止することが可能な表示部材支持構造およびこれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】表示部材支持部5は、上側キャビネット4の一部に設けられるとともに液晶パネル10を支持する枠体50を有する。枠体50は、第1の開口部53、第2の開口部57、および保持部を備える。第1の開口部53は、液晶パネル10が通過するように構成されるとともに、枠体50内部を電話機本体1の外側に開放させる。第2の開口部57は、液晶パネル10が通過するように構成されるとともに、枠体50内部を電話機本体1の内側に開放させる。保持部は、枠体50内部の所定の位置に導入された液晶パネル10を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器の筐体の一部に設けられるとともに、電子機器に設けられる板状の表示部材を支持する表示部材支持構造およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器は、ユーザに情報を提示するための表示部材を備えるものが多い。表示部材の代表例として、板状を呈する液晶パネルが挙げられる。液晶パネルの多くは、電子機器のキャビネットに取り付けられ、透明パネルによってカバーされる。
【0003】
ところが、いったん液晶パネルが透明パネルによってカバーされると、液晶パネルの修理または交換等を行なうことが難しいという問題があった。特に、キャビネットと一体になったホルダによって液晶パネルが支持される構成では、透明パネルによるカバーがされた後に液晶パネルを修理または交換することが困難であった。
【0004】
そこで、従来技術の中では、液晶パネルを支持するホルダが、キャビネットから切り離し可能で、かつ、再度キャビネットに取り付けることが可能となる構成を採るものがあった(例えば、特許文献1参照。)。この構成では、キャビネットからホルダごと液晶パネルを取り外すことによって、透明パネルでカバーした後にも液晶パネルの交換または修理等を行なうことが可能である、とされていた。
【特許文献1】特開2005−173194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ホルダをキャビネットから切り離して再び取り付けた時に、ホルダの位置ズレが発生するおそれがある。ホルダの位置ズレが発生すると、液晶パネルの位置精度が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術では、液晶パネルの取り付けまたは取り外しを予め決められた単一の手順によって行なう必要があり、他の手順によって液晶パネルの取り付けまたは取り外しを行なうことができなかった。この結果、液晶パネルの取り付けまたは取り外しにおける作業効率を低下する虞があった。
【0007】
この発明の目的は、表示部材の取り付けまたは取り外しにおける作業効率を高めることが可能であり、かつ、表示部材の位置ズレの発生を防止することが可能な表示部材支持構造およびこれを備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る表示部材支持構造は、電子機器に表示部として設けられる板状の表示部材を支持するとともに電子機器の筐体の一部に設けられる枠体を有する。この枠体は、第1の開口部、第2の開口部、および保持部を備える。第1の開口部は、表示部材が通過するように構成されるとともに、枠体の内部を筐体の外側に開放させる。第2の開口部は、表示部材が通過するように構成されるとともに、枠体の内部を筐体の内側に開放させる。保持部は、枠体の内部の所定の位置に導入された表示部材を保持する。
【0009】
表示部材の代表例として、液晶パネルが挙げられる。表示部材は、第1の開口部または第2の開口部を介して枠体の内部に導入される。筐体の外側から表示部材を取り付ける場合には第1の開口部が用いられる。一方、筐体の内側から表示部材を取り付ける場合には第2の開口部が用いられる。筐体の外側または内側のいずれから表示部材を枠体内部に導入する場合であっても、枠体の内部に導入された表示部材が保持部によって確実に保持される。
【0010】
(2)さらに、表示部材は、直方体を呈しており、かつ、
保持部は、表示部材の第1の側面および第1の側面に直交する第2の側面にそれぞれ接触する基準面と、第1の側面および第2の側面をそれぞれ基準面に押し当てる複数の位置決め部材と、を備えた構成を採ることが好ましい。
【0011】
この構成を採れば、表示部材の寸法にバラツキが生じる場合であっても、表示部材が基準面によって確実に位置決めされる。この結果、電子機器における表示部材の位置精度が向上する。
【0012】
(3)さらに、位置決め部材は、第1の側面および第2の側面をそれぞれ基準面に押し当てるための力を表示部材に対して加える弾性部材であることが好ましい。
【0013】
位置決め部材の例として、弾性部材で構成されたリブや、表示部材に接するように配置されたバネが挙げられる。
【0014】
(4)本発明に係る電子機器は、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の表示部材支持構造を備えた筐体と、筐体の内部に配置される回路基板とを備えた電子機器である。この電子機器において、回路基板は、枠体に対応する位置に、表示部材と接続されるべきコネクタを備えている。また、枠体は、コネクタに対応する位置に形成されるとともに、枠体の内部を筐体の内側に開放させる第3の開口部を備える。
【0015】
第3の開口部を設けることによって、表示部材とコネクタとの接続が容易になる。第3の開口部の寸法は、少なくとも表示部材とコネクタとを接続するケーブルより大きくされる。表示部材とコネクタとの接続をさらに容易にするために、第3の開口部が、コネクタを通過させる程度の寸法であることが好ましい。
【0016】
(5)この電子機器の好ましい実施形態として、コネクタが、第3の開口部を介して枠体の内部に露出するように配置される構成が挙げられる。
【0017】
コネクタが枠内に露出することによって、外側から表示部材とコネクタとを接続し易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、表示部材の取り付けまたは取り外しにおける作業効率を高めることが可能であり、かつ、表示部材の位置ズレの発生を防止することが可能な表示部材支持構造およびこれを備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の表示部材支持構造が適用される電子機器として、電話機を説明する。電話機は、本発明の電子機器の一例であって、本発明の電子機器は電話機に限定されない。例えば、FAX装置や計算機など筐体に板状の表示装置を設ける電子機器であれば、本発明の表示部材支持構造を適用することができる。
【0020】
電話機は、電話機本体1と、これに接続される図示しない通話部とを備える。図1に示すように、電話機本体1は、下側キャビネット2、パネル基板3、上側キャビネット4、液晶パネル10、および透明パネル11を備える。
【0021】
下側キャビネット2は、パネル基板3を支持する基板支持部21を備える。パネル基板3は、下側キャビネット2の基板支持部21に取り付けられる。パネル基板3は、接点群31、コネクタ32、および後述する制御系回路群を備える。接点群31は、オペレータのキー操作を検出する。コネクタ32は、液晶パネル10が接続される。
【0022】
上側キャビネット4は、下側キャビネット2を覆うように取り付けられる。上側キャビネット4は、操作部41および表示部材支持部5を備える。操作部41は、複数の操作キーを備える。各操作キーは、接点群31の各接点に対応する位置に配置される。表示部材支持部5は、上側キャビネット4の一部に設けられる。表示部材支持部5は、電話機の表示部として設けられる板状の液晶パネル10を支持する。透明パネル11は、表示部材支持部5に取り付けられた液晶パネル10の上をカバーする。
【0023】
図2は、電話機の要部を示すブロック図である。同図に示すように、パネル基板3は、通話部およびバックライト部に接続される。また、パネル基板3には、ドライバ33、ROM34、記録部35、インタフェース部36、接点31、およびCPU30が搭載される。ドライバ33は、CPU30からの信号に基づいて液晶パネル10を駆動する。ROM34は、CPU30の動作に必要な複数のプログラムを格納する。記録部35は、記録すべきデータを記録する不揮発性のメモリである。インタフェース部36は、公衆回線を介して行なわれる外部装置との通信を制御する。接点31は、オペレータが操作部41に対して行なった操作内容をCPU30に伝達する。CPU30は、電話機の動作を統括的に制御する。
【0024】
図3(A)および(B)を用いて、表示部材支持部5を説明する。表示部材支持部5は、板状の液晶パネル10を支持する枠体50を備える。枠体50は、上側キャビネット4に一体成形される。枠体50は、第1の開口部53を備えており、。枠体50の内部が第1の開口部53を介して電話機本体1の外側に開放している。第1の開口部53は、液晶パネル10が通過するようにその形状および寸法が決められる。
【0025】
枠体50は、四角筒状の導光部54を備える。導光部54は、バックライト部から照射された光を液晶パネル10に導く。導光部54は、液晶パネル10に近づく程互いの間隔が拡がるように配置された一対の傾斜壁55を含む。一対の傾斜壁55の液晶パネル10側に配置される第1の端部55Aは、同一平面上に配置される。第1の端部55Aによって液晶パネル10の下側が支持される。
【0026】
枠体50は、液晶パネル10を支持するための部材として、フック部56、基準面51A,51B、およびリブ52A,52B,52Cを備える。フック部56は、第1の端部55Aに置かれた液晶パネル10の上面の一部に接触するように配置される。基準面51A,51Bは、液晶パネル10が置かれるべき位置を規定する。リブ52A,52B,52Cは、液晶パネル10に対して弾性力を作用させる弾性部材である。リブ52A,52Bは、液晶パネル10を基準面51Aに押しあてる。リブ52Cは、液晶パネル10を基準面51Bに押しあてる。液晶パネル10は、枠体50内において、第1の端部55A、フック部56、基準面51A,51B、およびリブ52A,52B,52Cによって、所定の位置に保持される。本実施形態では、第1の端部55A、フック部56、基準面51A,51B、およびリブ52A,52B,52Cによって本発明の保持部が構成される。このように、上側キャビネット4に所定位置に確実に固定された枠体50によって液晶パネル10を支持させ、しかも、枠体50内においても液晶パネル10の位置決めがされているため、液晶パネル10の位置精度を向上させることができる。
【0027】
図4(A)および(B)を用いて、外部から液晶パネル10を枠体50に導入する例を説明する。液晶パネル10は、第1の開口部53を介して枠体50の内部に導入される。さらに、液晶パネル10は、リブ52A,52B,52Cを押し退けつつ、第1の端部55Aに置かれる。このとき、リブ52A,52B,52Cは、液晶パネル10によって押された分だけ撓む。第1の端部55Aに置かれた液晶パネル10は、リブ52A,52B,52Cの復元力の作用によって、基準面51A,51Bに押し付けられる。リブ52A,52B,52C、および基準面51A,51Bによって液晶パネル10の前後方向および左右方向の動きが拘束される。さらに、第1の端部55Aとフック部56とに挟み込まれることによって、液晶パネル10の上下方向の動きが拘束される。
【0028】
この結果、図4(B)に示すように、液晶パネル10が枠体50において正確な位置に保持される。液晶パネル10を基準面51A,51Bに押し付けるようにして位置決めすることによって、液晶パネル10の寸法に誤差が生じても、同じ位置で液晶パネル10を保持することができる。このため、液晶パネル10のサイズに±1ミリ程度の寸法誤差が発生しても、液晶パネル10の位置が規定位置よりズレることがない。
【0029】
なお、液晶パネル10の取り付けが完了した後には、図5に示すように、液晶パネル10が透明パネル11によってカバーされる。ここでは、透明パネル11は接着剤を介して表示部材支持部5に固定される。ただし、透明パネル11の固定手法は接着剤に限定されることはなく、他の手法によって透明パネル11の固定を行なっても良い。
【0030】
図6は、上側キャビネット4を内側から見た状態を示している。図6に示すように、枠体50は、第2の開口部57を備える。第2の開口部57は、液晶パネル10が通過するように形状および寸法が決められる。第2の開口部57は、枠体50の内部空間を電話機本体1の内側に開放させる。
【0031】
液晶パネル10を枠体50から取り除く場合には、まず、液晶パネル10に力を加えることによって、第1の端部55A、フック部56、基準面51A,51B、およびリブ52A,52B,52Cによる拘束を解く。続いて、液晶パネル10を第2の開口部57を介して上側キャビネット4の内側に引き抜く。このため、表示部材支持部5に透明パネル11が固定された後にも、液晶パネル10を枠体50から取り外すことができる。
【0032】
さらに、第2の開口部57は、上側キャビネット4の内側から液晶パネル10を取り付ける場合にも用いることができる。上側キャビネット4の内側から液晶パネル10を取り付ける場合であっても、第1の端部55A、フック部56、基準面51A,51B、およびリブ52A,52B,52Cによって確実に位置決めがされるため、液晶パネル10を正確な位置に配置することができる。このように、上側および下側のいずれからでも液晶パネル10を取り付けできるため、液晶パネル10の取り付け作業の自由度が増し、その結果、作業効率が向上させることができる。
【0033】
また、枠体50は、第3の開口部58を備えることが好ましい。本実施形態では、第3の開口部58は、パネル基板3のコネクタ32が通過するように形状および寸法が決められる。さらに、パネル基板3と上側キャビネット4とを重ねた状態において、コネクタ32が第3の開口部58を介して枠体50内に露出することが好ましい。このことは、パネル基板3と表示部材支持部5とを近接配置し、かつ、コネクタ32に対応する位置に第3の開口部58を配置することによって実現する。この場合、電話機本体1の下側キャビネット2、パネル基板3、および上側キャビネット4の組み立てを行なった後であっても、液晶パネル10を外部から容易にコネクタ32に接続することができる。なお、ここでは、第3の開口部58と第2の開口部57とが連続する構成を示しているが、第3の開口部58と第2の開口部57とを別々に設けても良い。
【0034】
コネクタ32が枠体50内に露出するような構成を採ることは、透明パネル11と液晶パネル10とを同時に交換する場合にも有益である。つまり、コネクタ32が枠体50内に露出しているため、外部から液晶パネル10をコネクタから容易に外すことができる。この結果、透明パネル11と液晶パネル10とを同時に交換する際の作業効率を向上させることができる。
【0035】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】電話機本体の概略構成を示す図である。
【図2】電話機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】表示部材支持部の構成を示す図である。
【図4】液晶パネルの取り付けの説明図である。
【図5】電話機本体の概略構成を示す平面図である。
【図6】液晶パネルの取り外しの説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1−電話機本体
2−下側キャビネット
3−パネル基板
4−上側キャビネット
5−表示部材支持構造
10−LCD
11−透明パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に表示部として設けられる板状の表示部材を支持するとともに前記電子機器の筐体の一部に設けられる枠体を有する表示部材支持構造であって、
前記枠体は、
前記表示部材が通過するように構成されるとともに、前記枠体の内部を前記筐体の外側に開放させる第1の開口部と、
前記表示部材が通過するように構成されるとともに、前記枠体の内部を前記筐体の内側に開放させる第2の開口部と、
前記枠体の内部の所定の位置に導入された前記表示部材を保持する保持部と、
を備えたことを特徴とする表示部材支持構造。
【請求項2】
前記表示部材は、直方体を呈しており、
前記保持部は、前記表示部材の第1の側面および前記第1の側面に直交する第2の側面にそれぞれ接触する基準面と、前記第1の側面および前記第2の側面をそれぞれ前記基準面に押し当てる複数の位置決め部材と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示部材支持構造。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記第1の側面および前記第2の側面をそれぞれ前記基準面に押し当てるための力を前記表示部材に対して加える弾性部材であることを特徴とする請求項2に記載の表示部材支持構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示部材支持構造を備えた筐体と、前記筐体の内部に配置される回路基板とを備えた電子機器であって、
前記回路基板は、前記枠体に対応する位置に、前記表示部材と接続されるべきコネクタを備えており、
前記枠体は、前記コネクタに対応する位置に形成されるとともに、前記枠体の内部を前記筐体の内側に開放させる第3の開口部を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記コネクタは、前記第3の開口部を介して前記枠体の内部に露出するように配置されることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−163521(P2007−163521A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355561(P2005−355561)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】