表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル
【課題】装置に搭載するフローセルの外形部分に加工精度を比較的必要とせず、該フローセルの位置決めを簡便に行えるとともに測定の精度が確保でき、測定の作業性が高められ、設備費用が低減する表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルを提供する。
【解決手段】試料溶液が流れる流路10aと、前記流路10aに連通し、前記試料溶液が供給される供給部5と、前記流路10aに連通し、前記供給部5に供給された前記試料溶液を吸引して該流路10aに導く移送部6と、少なくとも前記流路10aの一部を含み、該流路10aの前記試料溶液に対面する検出部12を備えた測定領域11と、前記測定領域11の一端側及び他端側に前記流路10aを挟んで対向配置され、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する位置確認部7a,7bと、を備えることを特徴とする。
【解決手段】試料溶液が流れる流路10aと、前記流路10aに連通し、前記試料溶液が供給される供給部5と、前記流路10aに連通し、前記供給部5に供給された前記試料溶液を吸引して該流路10aに導く移送部6と、少なくとも前記流路10aの一部を含み、該流路10aの前記試料溶液に対面する検出部12を備えた測定領域11と、前記測定領域11の一端側及び他端側に前記流路10aを挟んで対向配置され、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する位置確認部7a,7bと、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴現象を利用して試料溶液中の特定物質を検出し測定する表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルに関する。
【背景技術】
【0002】
試料溶液内の測定対象分子を、該測定対象分子と特異的な相互作用を行って複合体を形成する分子認識材料を用いて分析するセンサは、生物、医薬、環境及び食品等の分野において広く利用されている。このような分析方法の一つである表面プラズモン共鳴測定法は、金属薄膜表面(測定領域)に予め固定された分子認識材料としての抗体(検出部)が、測定対象分子としての抗原と複合体を形成する抗原−抗体反応により生じる屈折率の変化を、金属薄膜表面で入射光が全反射する際に生じるエバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴を用いて測定する方法である。
【0003】
例えば、この表面プラズモン現象を用いて、牛乳中の菌、血液や尿中に存在するペプチド類、生体内で起こる分子間の相互作用等をリアルタイムで検出し測定することができる。
このような表面プラズモン共鳴現象を用いた測定装置(SPR測定装置)としては、例えば特許文献1〜3に開示されたものが知られている。特許文献1のSPR測定装置では、試料溶液を収容した試料セルを装置のプリズムの上面に載置し測定を行うようになっている。
【0004】
このようなSPR測定装置において、試料セルの検出部に試料溶液を接触させたままの状態では、対象となる試料溶液の抗原と検出部の抗体とが反応したことによる変化と、検出部に異物等が沈降して堆積した状態による変化との区別がつきにくい。そこで近年では、試料セルに流路を設け、流路に対面した検出部に試料溶液を一定の速度で流すように供給してやることにより、異物等の沈降を抑制し抗原−抗体反応による変化を選択的に検出できるようにしたフローセルが知られている。フローセルの流路に試料溶液を流す手段としては、例えば、フローセルの外部からポンプをチューブ等で接続し、流路に圧力をかける方法などが知られている。
【0005】
また、このようなSPR測定装置では、装置のプリズムの上面にフローセルを精度よく位置決めして載置することが重要視される。これは、プリズムを通してフローセルに照射する帯状の入射光の光軸を、該フローセルの測定領域の検出部に精度よく照射することで、試料溶液の測定の精度が確保されるためである。
【0006】
また、フローセルの検出部に試料溶液が供給されていない空の状態の測定(予測定)と試料溶液が供給された状態の測定(本測定)とで、該検出部の屈折率が大きく相違するため、例えばゴニオメータを用いて搭載したフローセルを回動させるとともに反射した反射光を受光する受光部を回動させて、入射光の照射角度範囲を各々設定することが行われている。
また、試料溶液を流路に流す本測定の直前に、該流路に試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有するリファレンス溶液(参照溶液)を流して予測定を行うことがある。
【特許文献1】特許第3356213号公報
【特許文献2】特開2002−148187号公報
【特許文献3】特開2005−24483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フローセルをSPR測定装置に精度よく載置するためには、フローセルの外形部分の加工精度を充分に確保する必要があった。すなわち、SPR測定装置にフローセルを載置する際に、該フローセルを保持するための保持機構等が設けられていて位置決め固定するが、作製されたフローセルの外形部分と検出部との位置精度が充分に確保されていない場合、装置にフローセルを載置した状態で入射光の光軸と検出部との相対位置がずれてしまうため、測定精度を得るために作業者がフローセルの位置調整を行う必要があった。この位置調整には作業者の熟練を要し、測定の作業性が妨げられていた。
【0008】
また、フローセルの外形により精度の高い精密工作加工を施して作製することも考えられるが、製作費用が嵩むという問題がある。また、PDMS(polydimethylsiloxane)樹脂製のフローセルを用いた場合には材料が柔軟なため、外形を基準に装置に精度よく位置決めすることは難しい。
【0009】
また、ゴニオメータを用いて測定を行う場合、装置に搭載したフローセルを回動させるとともに反射光を受光する受光部を回動させて、予測定と本測定とで入射光の照射角度範囲を各々設定し直す必要があり、測定に時間が掛かり作業性を妨げていた。また、フローセルや受光部を回動させるための大掛かりな装置の構成が必要とされ、設備費用が嵩んでいた。
【0010】
また、試料溶液を流路に流す本測定の直前に、該流路に試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を流して予測定を行う場合、フローセルの検出部が本測定前に参照溶液に晒されることとなるため、測定精度が低減することがあった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、装置に搭載するフローセルの外形部分に加工精度を比較的必要とせず、該フローセルの位置決めを簡便に行えるとともに測定の精度が確保でき、測定の作業性が高められ、設備費用が低減する表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルは、試料溶液が流れる流路と、前記流路に連通し、前記試料溶液が供給される供給部と、前記流路に連通し、前記供給部に供給された前記試料溶液を吸引して該流路に導く移送部と、少なくとも前記流路の一部を含み、該流路の前記試料溶液に対面する検出部を備えた測定領域と、前記測定領域の一端側及び他端側に前記流路を挟んで対向配置され、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する位置確認部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、測定領域の一端側及び他端側に、検出部の配置された流路を挟んで各々の位置確認部が対向配置されており、該フローセルを用いて試料溶液を測定する前に、予めこれら位置確認部を用いてフローセルの測定位置を精度よく設定することができる。すなわち、該フローセルを表面プラズモン共鳴現象測定装置(以下「SPR測定装置」と省略する)に搭載し測定するにあたり、SPR測定装置の光源からプリズムを通しフローセルの測定領域に入射する帯状の入射光の光軸を、予め各々の位置確認部に照射して反応を測定(予測定)しながら該フローセルの位置決めを精度よく行えるので、次いで行われる試料溶液の測定(本測定)の際、測定当初より入射光を検出部に精度よく照射することができる。従って、試料溶液の測定が迅速に精度よく行える。
【0014】
また、装置に搭載するフローセルの検出部の位置精度を確保するために、従来のように、フローセルの外形部分に面倒な精密工作加工を施して該外形部分と検出部との相対位置精度を確保したり、フローセルを装置に搭載する際に外形部分を基準に位置決めし固定するような部材等を用いたりする必要がない。すなわち、フローセルの外形部分を位置決めの基準として用いないので、外形部分の加工精度を比較的粗く設定することができ、製作費用が低減する。また、例えばPDMS(polydimethylsiloxane)樹脂製の柔軟な材料からなるフローセルを用いる場合にも、装置への位置決めにフローセルの外形を基準としていないので、精度よく位置決めすることができる。
【0015】
また、フローセルの位置確認部の屈折率と試料溶液の屈折率とが近似して設定されているので、入射光の検出部に対する照射角度範囲を予測定時と本測定時とで変更する必要がなく、測定の作業性が飛躍的に高められている。すなわち、従来のように、検出部に試料溶液が供給されていない空の状態の測定(予測定)と、試料溶液が供給された状態の測定(本測定)とで該検出部の屈折率が大きく相違することに起因して、例えばゴニオメータを用いフローセルを回動させるとともに反射光を受光する受光部を回動させて、入射光の照射角度範囲を各々設定し直すような面倒な作業や大掛かりな装置の構成が必要ない。従って、測定の作業性が向上するとともに、設備費用が低減する。
【0016】
また、試料溶液を流路に流す本測定の直前に、該流路に試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を流して検出部で予測定を行う必要がないので、該検出部が参照溶液に晒されることがなく、測定当初から目的の試料溶液が供給され、測定精度が高められる。
【0017】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留可能な穴状に形成されることとしてもよい。
【0018】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部が穴状に形成されており、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留することができるので、測定の際に、試料溶液の種類に合わせた参照溶液を適宜選択して用いることができる。すなわち、測定の対象が限定されないので、種々様々な試料溶液に対応可能である。
【0019】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部に参照溶液を供給するための参照溶液供給部が設けられることとしてもよい。
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部に参照溶液を供給するための参照溶液供給部を設けているので、例えばこの参照溶液供給部を大径の穴状に形成すれば、予測定時に参照溶液を注入しやすい。従って、測定の作業性が向上する。
【0020】
また、位置確認部とは別に参照溶液を注入する参照溶液供給部を設けることで、参照溶液を注入しやすくするために位置確認部を広く大きく形成するような必要がなくなる。よって、位置確認部をより狭く小さく形成でき、該位置確認部の測定領域に占める割合を低減できるとともに、検出部の測定領域に占める割合を増大できるので、例えば検出部として種類の異なる複数の抗体を用いた場合に、一度の測定でより多種多様な抗原−抗体反応を測定することが可能となる。
【0021】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状に形成されることとしてもよい。
【0022】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部が膜状に形成されるとともに試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有しているので、例えば特定の試料溶液を測定するような場合に、予め作製したフローセルを用いることにより、測定毎に位置確認部に参照溶液を注入する作業が削減でき、迅速に本測定に移行できる。従って、測定の作業性が飛躍的に向上する。
【0023】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、互いの中心を通る中心軸から離反するに連れ前記中心軸方向の幅が漸次減少又は増大するように形成されることとしてもよい。
【0024】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、予測定時に位置確認部へ入射光の光軸を照射した際に、例えば反射した反射光をCCDイメージセンサ等の受光部で受光した結果をモニタして位置確認部と光軸との重なり合う幅の大きさを確認することにより、位置確認部の中心軸と入射光の光軸との相対的な位置関係を把握することができる。すなわち、例えば、位置確認部の中心軸上に入射光の光軸が重なって配置された場合にモニタした前記幅が最大又は最小となるように設定しておき、該幅が最大又は最小となるようにフローセルを移動して、該フローセルと装置との相対的な位置決めを行うことができる。よって、フローセルの位置決めが簡便に精度よく行えるので、従来のように、フローセルと装置との相対位置を肉眼で確認しながら調整するような、作業者の熟練を要する調整作業が必要ない。
【0025】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記中心軸上に中心を配置した円形状に形成されることとしてもよい。
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部を例えば参照溶液を貯留可能な断面円形状の円孔又は円形テープ部材等で形成するので、該位置確認部の加工や成形を比較的簡便に行える。
【0026】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記中心軸上に重心を配置した三角形状に形成されるとともに、互いの頂点又は辺を対向配置することとしてもよい。
【0027】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部が三角形状に形成されているので、モニタで確認しながらフローセルを装置に位置決めする際、位置確認部と入射光の光軸との重なり合う幅の大きさに変化を生じさせやすい。すなわち、フローセルの位置調整にあたり前記中心軸と光軸とを相対的に極僅かに移動した際、前記幅が比較的大きく変化するので、微調整が行いやすい。従って、フローセルの位置合わせがより精度よく行える。
また、位置確認部が互いの頂点又は辺を対向配置しているので、位置決め調整作業の当初からフローセルと装置との相対的な位置関係を把握しやすく、作業がより迅速に行える。
【0028】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、互いに形状が異なることとしてもよい。
【0029】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、対向配置する位置確認部は、互いに形状が異なるので、入射光の光軸が各々の位置確認部に照射された際に、位置確認部と光軸との重なり合う部分に対応してモニタに表示される幅の大きさが夫々異なるようにされている。すなわち、モニタを目視する作業者は位置調整の当初から前記幅の広い方又は狭い方の配置状態を簡便に確認できるので、フローセルが装置に正しい向きに搭載されたかどうかを容易に判別でき、搭載方向の間違いがない。
【0030】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記移送部は、一端が前記流路に連通し他端が外気に開放される複数の貫通孔からなることとしてもよい。
【0031】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、移送部が複数の貫通孔からなるとともに、これら貫通孔が試料溶液で濡れる場合に、所謂毛細管現象によって流路から試料溶液を吸い上げるので、供給部に供給された試料溶液は連続的に流路に吸引されて検出部に供給されるようになっている。よって、従来のように、試料溶液を検出部に連続的に移送するため、フローセルの外部からポンプをチューブ等で接続して流路へ圧力をかけ試料溶液を流したり、これらポンプやチューブ等を測定毎に洗浄、乾燥したりするような、大掛かりな装置の構成や面倒な作業の手間をかけずに、簡便な構成で精度の高い測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、装置に搭載するフローセルの外形部分に加工精度を比較的必要とせず、該フローセルの位置決めを簡便に行えるとともに測定の精度が確保でき、測定の作業性が高められ、設備費用が低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るフローセルを用いたSPR測定装置の概略構成を示す説明図、図2はSPR測定装置で測定された検出部の反射率と反射角度との関係を説明する特性図、図3は本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す分解斜視図、図4は本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図、図5は図4のA−A矢視を示す側断面図、図6は図4のB−B矢視を示す側断面図、図7乃至図11は本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【0034】
本実施形態のフローセル1は、測定対象の検体が接触した金属薄膜の表面におけるエバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴、所謂表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)現象を利用したSPR測定装置100に搭載して測定に用いられるものである。
【0035】
図1に示すように、このSPR測定装置100は、光源101から発する光を偏光子(不図示)により偏光してP偏光光(以下「入射光」とする)とし、集光レンズ102で集光した帯状の入射光を半円柱状のプリズム103の曲面側に入射させ、該プリズム103の平面側の測定面103aに密着するフローセル1の後述する金属薄膜に照射し、その反射光をCCDイメージセンサからなる受光部104で検出するようになっている。
【0036】
受光部104で検出した反射光の強度(光強度)を測定すると、図2に示すように、上記共鳴が起こる角度(共鳴角)で反射強度が減少するため、反射率の低い谷105が観測される。共鳴角は、金属薄膜に接する試料溶液の光学的な性質(屈折率)に依存するため、金属薄膜上に抗体を固定し、該抗体と抗原との結合による屈折率変化を測定することにより、特定物質の定量測定を行うことができる。
【0037】
図3乃至図6に示すように、SPR測定装置100に搭載するフローセル1は、略直方体状又は略矩形板状の外形をなし積層構造を有している。すなわち、フローセル1をSPR測定装置100に載置した状態で、下側に配置される略矩形板状の下部基板2と、下部基板2の上側に積層され平面視の外形が該下部基板2と略同一に形成される上部基板3とを備えている。また、例えば下部基板2の板厚は1mm程度とされ、上部基板3の板厚は3mm程度とされている。
【0038】
上部基板3は、その平面視の幅方向(図3における左上−右下方向又は図4における左右方向)の略中央に、円柱孔状の2つの参照溶液供給孔4a,4bを備えている。参照溶液供給孔4a,4bは、幅方向に直交する向きに互いに対向配置されており、孔の軸線を上部基板3の板厚方向に延ばし該上部基板3を貫通している。また、参照溶液供給孔4aの参照溶液供給孔4bと反対を向く側には、測定する試料溶液を供給するための円柱孔状の試料溶液供給孔(供給部)5が設けられ該上部基板3を板厚方向に貫通している。
【0039】
また上部基板3には、円柱孔状の複数の貫通孔(移送部)6が設けられ該上部基板3を板厚方向に貫通している。またこれら貫通孔6は、参照溶液供給孔4a,4bを幅方向に挟むように一方側(図4における左側)と他方側(図4における右側)とに夫々平面視略矩形状に配列されている。また、これら貫通孔6は、試料溶液に対して毛細管現象を発現する範囲の内径に設定され、その上端が外気に開放されるとともに下端が後述する吸引流路9に連通している。
【0040】
また、下部基板2は2層から構成されており、その下側の層がガラスやアクリル樹脂等の光を透過する材料の下地基板2aからなり、上側の層が樹脂のフィルム等のスペーサ部2bからなる。
【0041】
スペーサ部2bには、厚み方向に貫通する複数の開口部分が形成されており、これら開口部分のうち、上部基板3の参照溶液供給孔4a,4bに対応する位置には、円柱孔状に形成され該参照溶液供給孔4a,4bの内径と略同一の内径を有する夫々の位置確認孔(位置確認部)7a,7bが設けられている。位置確認孔7a,7bは、孔の軸線に直交する断面が円形孔状とされている。
【0042】
また、スペーサ部2bの試料溶液供給孔5に対応する位置には、試料溶液供給孔5の内径と略同一の内径を有する円孔8が形成されている。また、スペーサ部2bには、上部基板3の幅方向の一方側と他方側とに夫々平面視略矩形状に配列された複数の貫通孔6の外形に対応するように略矩形孔状に形成された夫々の吸引流路9が設けられている。吸引流路9は、試料溶液が供給された際に、該試料溶液がその上方の貫通孔6との間に空隙を形成しない程度の高さに設定され、例えば板厚方向の高さが10〜100μm程度とされる。
【0043】
また、位置確認孔7aと位置確認孔7bとの間には、該位置確認孔7a,7bの対向する向きに延在する流路10aが形成されている。図4に示すように、流路10aは、位置確認孔7a,7bの互いの中心を通る中心軸Cに沿って形成されており、例えばその延在方向に直交する断面寸法(以下「断面寸法」と省略)の幅方向が1mm程度、板厚方向(高さ)が10〜100μm程度に設定されている。
【0044】
また、流路10aの一端側(図4における上方側)の端部には、幅方向の一方側と他方側とに分岐して位置確認孔7aの外周側を囲み円孔8に連通する平面視円弧溝状の夫々の流路10bが形成されている。また、流路10aの他端側(図4における下方側)の端部には、幅方向の一方側と他方側とに分岐して位置確認孔7bの外周側を囲み夫々の吸引流路9に連通する平面視略円弧溝状の夫々の流路10cが形成されている。また、これら流路10a,10b,10cの断面寸法は、各々試料溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定されている。
また、このようにして、試料溶液供給孔5に接続する円孔8と貫通孔6に接続する吸引流路9とが流路10a,10b,10cを介して互いに連通している。
【0045】
また、下地基板2aの上面には、矩形状の金属薄膜11が形成されている。金属薄膜11は、図3に2点鎖線で示すように、その表面の一端側の端部に位置確認孔7aを対向配置し、他端側の端部に位置確認孔7bを対向配置している。また金属薄膜11は、例えばAu(金)で形成される。また、このように一端と他端とに位置確認孔7a,7bを夫々対向配置した金属薄膜11の外形の範囲内の領域が、測定領域とされている。測定領域は、例えば長辺が5mm程度、短辺が0.7mm〜0.8mm程度に設定される。尚、本実施形態では測定領域と金属薄膜11とを同一の外形として説明しているが、金属薄膜11は測定領域の範囲を超えて大きく形成されていても構わない。
【0046】
また、図7の測定領域の概略平断面図(図7における左側の図)に示すように、金属薄膜11の位置確認孔7a,7bに対向する夫々の部分に挟まれた中央の部分には、流路10aに対面するとともに複数の抗体12aを中心軸C方向に配列してなる検出部12が設けられている。抗体12aは、検出部12の範囲に中心軸Cに沿って配列され、例えば15種類程度が該検出部12に均等配置されている。
【0047】
次いで、このように構成されたフローセル1を用いてSPR測定装置100で試料溶液を測定する手順について説明する。
まず、SPR測定装置100のプリズム103の測定面103aにマッチングオイル等を介しフローセル1を載置する。ここで、フローセル1を載置する際、SPR測定装置100の入射光の光軸と位置確認孔7a,7bを通る中心軸Cとが、ある程度重なり合うようにしておく。
【0048】
次いで、載置したフローセル1の参照溶液供給孔4a,4bに、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を適宜注入する。注入した参照溶液は、参照溶液供給孔4a,4bの下側に連通する位置確認孔7a,7bに貯留されていき、金属薄膜11上の位置確認孔7a,7bに対応する部分を覆うように供給される。尚、この参照溶液としては、試料溶液を用いても構わない。
【0049】
次いで、位置確認孔7a,7bに参照溶液が充分に供給された状態で、SPR測定装置100の光源101から発した入射光を、プリズム103の測定面103aに密着するフローセル1の金属薄膜11に照射して、その反射光を受光部104で検出する。
すると、図7のモニタイメージ(図7における右側の図)に示すように、入射光の光軸Lが位置確認孔7a,7bに夫々重なり合う部分が、モニタ13上に、例えば色の濃い夫々の帯状部14a,14bとして表示されて、作業者が確認できる。
【0050】
ここで、図8に示すように、入射光の光軸Lと位置確認孔7a,7bの中心軸Cとが幅方向にずれて配置された場合、光軸Lに重なる位置確認孔7a,7bの幅が夫々狭くなるため、モニタ13上の帯状部14a,14bの幅が夫々狭まって表示される。作業者は、モニタ13上の帯状部14a,14bの幅が夫々最大となるようにフローセル1の位置を幅方向に移動し調整する。
【0051】
また、図9に示すように、光軸Lと位置確認孔7a,7bとが中心軸C方向にずれて配置された場合、モニタ13上に帯状部14a,14bのいずれか一方又は両方が表示されない状態となるので、作業者はモニタ13上の表示を見ながらフローセル1の位置を中心軸C方向に移動し調整すればよい。図9においては、フローセル1が光軸Lに対し中心軸C方向の一端側にずれて配置された状態を示している。
【0052】
また、図10に示すように、光軸Lと位置確認孔7a,7bの中心軸Cとが平行でなく、互いの軸線C,Lを交差するように角度θを形成し配置される場合、モニタ13上の帯状部14a,14bの幅は夫々異なって表示されるので、作業者はモニタ13上の表示を見ながらフローセル1を平面視回動させるように移動させ、帯状部14a,14bの夫々の幅が同一かつ最大となるように調整を行えばよい。
【0053】
ここで、図11に示すように、フローセル1の位置調整によってもモニタ13上に帯状部14a,14bが正しく表示されない場合にはフローセル1の作製不良が考えられるので、別のフローセル1に交換し前述同様の作業を行う。図11は、位置調整孔7bがモニタ13上に帯状部14bとして正しく表示されない場合を示している。
【0054】
次いで、図7に示すように、モニタ13上の帯状部14a,14bの夫々の幅が同一かつ最大となった状態で、試料溶液供給孔5に試料溶液を注入する。試料溶液供給孔5に供給された試料溶液は、円孔8から毛細管現象により流路10b,10a,10cを通り吸引流路9へと流れる。吸引流路9に到達した試料溶液は、さらに貫通孔6が試料溶液で濡れることによる毛細管現象により吸引されるとともに、後続の試料溶液が連続的に流路10aへと導かれ流れるようになっている。そして、試料溶液中の抗原が流路10aに対面して配置した検出部12の各種抗体12aに結合して生じる抗原−抗体反応による変化を測定する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のフローセル1によれば、金属薄膜11の一端側及び他端側に、検出部12を配置した流路10aを挟んで位置確認孔7a,7bが対向配置されており、該フローセル1を用いて試料溶液を測定する前に、これら位置確認孔7a,7bに参照溶液を注入して予測定し、フローセル1の測定位置を精度よく設定することができる。すなわち、フローセル1をSPR測定装置100に搭載し測定するにあたり、フローセル1の金属薄膜11に照射する帯状の入射光の光軸Lを予め各々の位置確認孔7a,7bの参照溶液の部分に照射して、作業者がモニタ13上で反応を目視で確認しながらフローセル1の位置決めを行えるので、次いで行われる試料溶液の本測定の際、測定当初より入射光の光軸Lを検出部12に精度よく照射することができる。従って、試料溶液の測定が迅速に精度よく行える。
【0056】
また、SPR測定装置100に搭載するフローセル1の検出部12の位置精度を確保するために、従来のように、フローセル1の外形部分に面倒な精密工作加工を施して該外形部分と検出部12との相対位置精度を確保したり、フローセル1を装置に搭載する際に外形部分を基準に位置決めし固定するような部材等を用いたりする必要がない。すなわち、フローセル1の外形部分を位置決めの基準として用いないので、外形部分の加工精度を比較的粗く設定することができ、製作費用が低減する。
【0057】
また、フローセル1の位置確認孔7a,7bに注入する参照溶液の屈折率と試料溶液の屈折率とが近似して設定されているので、入射光の検出部12に対する照射角度範囲を予測定時と本測定時とで変更する必要がなく、測定の作業性が飛躍的に高められている。すなわち、従来のように、検出部12に試料溶液が供給されていない空の状態の測定(予測定)と、試料溶液が供給された状態の測定(本測定)とで該検出部12の屈折率が大きく相違することに起因して、例えばゴニオメータを用いフローセル1を回動させるとともに反射光を受光する受光部104を回動させて、入射光の照射角度範囲を各々設定し直すような面倒な作業や大掛かりな装置の構成が必要ない。従って、測定の作業性が向上するとともに、設備費用が低減する。
【0058】
また従来のように、試料溶液を流路10aに流す本測定の直前に、該流路10aに試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を流して検出部12で予測定を行う必要がないので、検出部12が参照溶液に晒されることがなく、測定当初から目的の試料溶液が供給されて、測定精度がより高められている。
【0059】
また、位置確認孔7a,7bには、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留することができるので、測定の際に、試料溶液の種類に合わせた参照溶液を適宜選択して用いることができる。すなわち、測定の対象が限定されないので、種々様々な試料溶液に対応可能である。
【0060】
また、位置確認孔7a,7bは、互いの中心を通る中心軸Cから離反するに連れ中心軸C方向の幅が漸次減少する断面円形孔状とされているので、予測定時に位置確認孔7a,7bの参照溶液へ入射光の光軸Lを照射し、各位置確認孔7a,7bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応して反射した反射光を受光部104で受光し、その結果をモニタ13上に表示して帯状部14a,14bの幅の大きさを確認することにより、位置確認孔7a,7bの中心軸Cと入射光の光軸Lとの相対的な位置関係を容易に把握することができ、作業者がフローセル1の位置決めを簡便に精度よく行える。すなわち、従来のように、フローセル1と装置との相対位置を作業者が肉眼で確認しながら調整するような、熟練を要する作業が必要ない。
また、位置確認孔7a,7b及び参照溶液供給孔4a,4bが円柱孔状に形成されるので、加工や成形を比較的簡便に行える。
【0061】
また、流路10aが金属薄膜11の一端側から他端側に延在して形成されているので、流路10aの試料溶液に対面する検出部12を該流路10aに沿って延在して配置することができ、検出部12として種類の異なる複数の抗体12aを用いて該流路10aに沿って配列することができるので、一度の測定で多種多様な抗原−抗体反応を測定することができる。
【0062】
また、複数の貫通孔6が、毛細管現象によって連通する流路10aから試料溶液を吸い上げるので、試料溶液供給孔5に供給された試料溶液は連続的に流路10aに吸引されて検出部12に供給されるようになっている。よって、従来のように、試料溶液を検出部12に連続的に移送するため、フローセル1の外部からポンプをチューブ等で接続して流路10aへ圧力をかけ試料溶液を流したり、これらポンプやチューブ等を測定毎に洗浄、乾燥したりするような、大掛かりな構成や面倒な作業の手間をかけずに、簡便な構成で精度の高い測定を行うことができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態について、図12乃至図14を参照しながら説明する。
図12乃至図14は本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
尚、前述の第1の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
第2の実施形態のフローセル1の上部基板3は、その幅方向の略中央に、三角柱孔状の2つの参照溶液供給孔24a,24bを備えている。参照溶液供給孔24a,24bは、幅方向に直交する向きに互いに対向配置されており、孔の軸線を上部基板3の板厚方向に延ばし該上部基板3を貫通している。
【0065】
また、スペーサ部2bには、上部基板3の参照溶液供給孔24a,24bに対応する位置に該参照溶液供給孔24a,24bの断面と略同一の断面を有する三角柱孔状の位置確認孔(位置確認部)27a,27bが設けられている。すなわち、位置確認孔27a,27bは、孔の軸線に直交する断面が三角形孔状とされている。また、位置確認孔27a,27bは、互いの頂点を対向配置して形成される。
【0066】
第2の実施形態のフローセル1によれば、位置確認孔27a,27bが断面三角形孔状に形成されているので、予測定時に位置確認孔27a,27bの参照溶液へ入射光の光軸Lを照射し、各位置確認孔27a,27bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応して反射した反射光を受光部104で受光し、その結果をモニタ13上に表示して帯状部14a,14bの幅を確認する際に、該幅に変化が生じやすい。
【0067】
すなわち、図12に示すように、位置確認孔27a,27bの互いの断面三角形孔状の重心を通る中心軸Cと入射光の光軸Lとが重なり一致した状態と、図13に示すように中心軸Cと光軸Lとが幅方向に互いに僅かにずれて配置された状態又は図14に示すように中心軸Cと光軸Lとが平行でなく角度θを形成するように交差して配置された状態と、を対比した場合に、モニタ13上に表示される夫々の帯状部14a,14bの幅に変化が生じやすくされている。従って、作業者がフローセル1の位置調整にあたり中心軸Cと光軸Lとを相対的に僅かに移動させた場合であっても、帯状部14a,14bの幅が比較的大きく変化するので、位置の微調整が行いやすい。従って、フローセル1の位置合わせがより精度よく行える。
【0068】
また、これら位置確認孔27a,27bが互いの頂点を対向配置しているので、位置決め調整作業の当初からフローセル1と装置との相対的な位置関係を把握しやすく、作業がより迅速に行える。すなわち、位置調整作業の初期の段階でモニタ13内に帯状部14a,14bの互いの外方端部を収めるようにしておけば、次いで行うフローセル1の幅方向や平面視回転方向の位置調整により中心軸Cと光軸Lとが重なり合うに連れ漸次帯状部14a,14bが互いに内方に向け夫々の幅を増大するので、帯状部14a,14bが該位置調整中に各幅を増大させてモニタ13外にはみ出してしまうことがない。よって、位置調整中にモニタ13内に帯状部14a,14b全体を表示させるためフローセル1を中心軸C方向に調整するような手間がなく、作業がより迅速に行える。
【0069】
次に、本発明の第3の実施形態について、図15及び図16を参照しながら説明する。
図15及び図16は本発明の第3の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
尚、前述の第1、第2の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
第3の実施形態のフローセル1の上部基板3は、その幅方向の略中央に、互いに異なる三角柱孔状の参照溶液供給孔34aと参照溶液供給孔34bとを備えている。これら参照溶液供給孔34a,34bは、幅方向に直交する向きに互いに対向配置されており、孔の軸線を上部基板3の板厚方向に延ばし該上部基板3を貫通している。
【0071】
また、スペーサ部2bには、上部基板3の参照溶液供給孔34aに対応する位置に該参照溶液供給孔34aの断面と略同一の断面を有する三角柱孔状の位置確認孔(位置確認部)37aが設けられ、また上部基板3の参照溶液供給孔34bに対応する位置に該参照溶液供給孔34bの断面と略同一の断面を有する三角柱孔状の位置確認孔(位置確認部)37bが設けられている。すなわち、位置確認孔37a,37bは、孔の軸線に直交する断面が互いに異なる三角形孔状とされている。また、位置確認孔37a,37bは、互いの頂点を対向配置して形成されている。
【0072】
第3の実施形態のフローセル1によれば、対向配置する位置確認孔37a,37bが互いに断面の異なる三角形孔状に形成されるので、入射光の光軸Lが位置確認孔37a,37bの参照溶液に照射された際に、各位置確認孔37a,37bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応してモニタ13上に表示される帯状部14a,14bの夫々の幅の大きさが異なるようにされている。
【0073】
すなわち、モニタ13上で確認しながらフローセル1を装置に位置決めするにあたり、作業者は位置調整の当初から帯状部14a,14bのうち幅の広い方又は狭い方の配置状態を一目で簡便に確認できるので、該フローセル1が装置に正しい向きに載置されたかどうかを容易に判別でき、搭載方向の間違いが防止される。
【0074】
次に、本発明の第4の実施形態について、図17及び図18を参照しながら説明する。
図17及び図18は本発明の第4の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
尚、前述の第1〜第3の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
第4の実施形態のフローセル1の上部基板3は、その幅方向の略中央に、該上部基板3を板厚方向に貫通する2つの参照溶液供給孔44a,44bを備えている。参照溶液供給孔44a,44bは、四角柱孔の内面の一面を孔内方に向け突出させたように形成され、該突出した部分の先端角部の稜線が孔の軸線に沿って板厚方向に延びている。これら参照溶液供給孔44a,44bは、前記先端角部が形成される側の面を内方に配置して、互いに幅方向に直交する向きに対向配置されている。
【0076】
また、参照溶液供給孔44a,44bの夫々の前記先端角部は該参照溶液供給孔44a,44bの幅方向の中心に夫々配置されており、これら先端角部上に中心軸Cが配置されている。また、スペーサ部2bには、上部基板3の参照溶液供給孔44a,44bに対応する位置に該参照溶液供給孔44a,44bの断面と略同一の断面を有する位置確認孔(位置確認部)47a,47bが形成されている。
【0077】
第4の実施形態のフローセル1によれば、位置確認孔47a,47bは、互いの中心を通る中心軸Cから離反するに連れ中心軸C方向の幅が漸次増大する断面とされているので、予測定時に位置確認孔47a,47bの参照溶液へ入射光の光軸Lを照射し、各位置確認孔47a,47bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応して反射した反射光を受光部104で受光し、その結果をモニタ13上に表示して帯状部14a,14bの幅を確認する作業がより迅速に行える。
【0078】
すなわち、位置調整作業の初期の段階ではフローセル1の中心軸Cと装置の光軸Lとは未だ重なり合い一致した状態でないと考えられるが、フローセル1の位置調整を行うに連れ漸次モニタ13上に表示される帯状部14a,14bの夫々の幅が減少するように設定されているので、帯状部14a,14bが該位置調整中に各幅を増大させてモニタ13外にはみ出してしまうようなことがない。よって、位置調整中にモニタ13内に帯状部14a,14b全体を表示させるためフローセル1を中心軸C方向に調整するような手間がなく、作業がより迅速に行える。
【0079】
次に、本発明の第5の実施形態について、図19を参照しながら説明する。
図19は本発明の第5の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
尚、前述の第1〜第4の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
第5の実施形態のフローセル51の上部基板53は、参照溶液供給孔4aの参照溶液供給孔4bと反対を向く側の幅方向の一方側(図19における左側)に試料溶液を供給するための試料溶液供給孔(供給部)55を備え、他方側(図19における右側)に参照溶液供給孔4aに参照溶液を供給するための参照溶液注入孔54aを備えている。また、参照溶液供給孔4bの参照溶液供給孔4aと反対を向く側には、参照溶液供給孔4bに参照溶液を供給するための参照溶液注入孔54bを備えている。これら参照溶液注入孔54a,54bは、上部基板53を板厚方向に貫通して形成され、各内径が、参照溶液供給孔4a,4bの内径よりも大きく設定されている。
【0081】
また、下部基板52のスペーサ部52bには、上部基板53の参照溶液供給孔4a,4bに対応する位置に該参照溶液供給孔4a,4bの内径と略同一の内径を有する略円柱孔状の夫々の位置確認孔(位置確認部)57a,57bが設けられている。位置確認孔57a,57bは、孔の軸線に直交する断面が略円形孔状とされている。
【0082】
また、スペーサ部52bの試料溶液供給孔55に対応する位置には、試料溶液供給孔55の内径と略同一の内径を有する円孔58が形成されている。また、位置確認孔57aと位置確認孔57bとの間に延在する流路10aの一端側(図19における上方側)の端部には、位置確認孔57aの幅方向の一方側の外周側を通って円孔58に連通する流路60bが形成されている。流路60bの断面寸法は、試料溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定される。
【0083】
また、スペーサ部52bの参照溶液注入孔54a,54bに対応する位置には、該参照溶液注入孔54a,54bの内径と略同一の内径を有する略円柱孔状の夫々の円孔56a,56bが設けられている。円孔56a,56bは、各々位置確認孔57a,57bとの間に形成する流路61a,61bにより、これら位置確認孔57a,57bと連通している。流路61a,61bの断面寸法は、各々参照溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定される。
【0084】
次いで、このように構成されたフローセル51を用いてSPR測定装置100で試料溶液を測定するには、予測定時に、装置に載置したフローセル51の参照溶液注入孔54a,54bに、参照溶液を適宜注入する。注入した参照溶液は、円孔56a,56bを通り流路61a,61bに吸引されるように位置確認孔57a,57bに貯留されていき、金属薄膜11上の位置確認孔57a,57bに対応する部分を確実に覆うように供給される。
【0085】
第5の実施形態のフローセル51によれば、位置確認孔57a,57bに参照溶液を供給するための参照溶液注入孔54a,54bが設けられているので、予測定時に参照溶液を注入しやすい。従って、作業者がフローセル51に参照溶液を確実に供給でき、測定の作業性が向上する。
【0086】
また、位置確認孔57a,57bとは別に参照溶液を注入する参照溶液注入孔54a,54bを設けることで、参照溶液を注入しやすくするために位置確認孔57a,57bを広く大きく形成するような必要がなくなる。よって、これら位置確認孔57a,57bをより狭く小さく形成でき、該位置確認孔57a,57bの金属薄膜11に占める割合を低減できるとともに、検出部12の金属薄膜11に占める割合を増大できるので、検出部12として種類の異なる複数の抗体12aを用いた場合に、一度の測定でより多種多様な抗原−抗体反応を測定することが可能となる。また、流路61a,61bの毛細管現象を用いているので、金属薄膜11の位置確認孔57a,57bに対応する部分に確実に参照溶液を供給できる。
【0087】
次に、本発明の第6の実施形態について、図20を参照しながら説明する。
図20は本発明の第6の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
尚、前述の第1〜第5の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
第6の実施形態のフローセル71は、下部基板72の下地基板72aの上面の金属薄膜11に、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状の位置確認部77a,77bを備えている。位置確認部77a,77bは平面視円形状に形成されており、位置確認部77aが金属薄膜11の一端側(図20における右上方側)の端部に配置され、位置確認部77bが他端側(図20における左下方側)の端部に配置されて、検出部12を挟んで互いに幅方向に直交する向きに対向している。これら位置確認部77a,77bは、例えば低屈折率を有するポリ4フッ化エチレンからなり、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のデュポンテフロンAF等を用いて形成される。また、位置確認部77a,77bとして、接着テープ等を用いても構わない。
【0089】
また、スペーサ部72bの流路10aは、幅方向に直交する向きに延びて形成されており、該流路10aの一端側の端部は、円孔8の他端側の端部に連通している。また、流路10aの他端側の端部は、幅方向の一方側と他方側とに分岐するように延びる流路10dに連通しており、流路10dは、幅方向の一方側の吸引流路9と他方側の吸引流路9とに連通している。また、流路10a,10dの断面寸法は、各々試料溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定されている。またこのようにして、試料溶液供給孔5に接続する円孔8と貫通孔6に接続する吸引流路9とが流路10a,10dを介して互いに連通している。
【0090】
第6の実施形態のフローセル71によれば、位置確認部77a,77bが膜状に形成されるとともに試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有しているので、特定の試料溶液を測定するような場合に、予め作製した該フローセル71を用いることにより測定毎に位置確認部77a,77bに参照溶液を供給する作業が削減でき、迅速に本測定に移行できる。従って、測定の作業性が飛躍的に向上するとともに、参照溶液を用いないので測定コストが低減する。また、上部基板73やスペーサ部72bには、参照溶液を用いる場合に必要とされた孔等がないので、製作費用を低減できる。また、スペーサ部72bの流路10a,10dを、前記孔等を迂回するための複雑な形状に形成する必要がないので、該スペーサ部72bを簡便に製作できる。
【0091】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1〜第5の実施形態では、位置確認部が試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を供給して貯留可能な穴状であることとして説明したが、これに限らず、フローセルの作製時に予め参照溶液を内部に封入して位置確認部としても構わない。
また第6の実施形態では、位置確認部77a,77bが試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状に形成されることとして説明したが、これに限らず、金属薄膜11上に面を配置した板状や柱状であっても構わない。
【0092】
また、位置確認部の形状は、本実施形態で説明した円形状や三角形状等に限らず、それ以外の種々様々な形状を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフローセルを用いたSPR測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】SPR測定装置で測定された検出部の反射率と反射角度との関係を説明する特性図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
【図5】図4のA−A矢視を示す側断面図である。
【図6】図4のB−B矢視を示す側断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図19】本発明の第5の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
【図20】本発明の第6の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1, 51,71 フローセル
5,55 試料溶液供給孔(供給部)
6 貫通孔(移送部)
7a,7b,27a,27b,37a,37b,47a,47b,57a,57b 位置確認孔(位置確認部)
10a 流路
11 金属薄膜(測定領域)
12 検出部
54a,54b 参照溶液注入孔(参照溶液供給部)
77a,77b 位置確認部
C 位置確認孔(位置確認部)の中心を通る中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴現象を利用して試料溶液中の特定物質を検出し測定する表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルに関する。
【背景技術】
【0002】
試料溶液内の測定対象分子を、該測定対象分子と特異的な相互作用を行って複合体を形成する分子認識材料を用いて分析するセンサは、生物、医薬、環境及び食品等の分野において広く利用されている。このような分析方法の一つである表面プラズモン共鳴測定法は、金属薄膜表面(測定領域)に予め固定された分子認識材料としての抗体(検出部)が、測定対象分子としての抗原と複合体を形成する抗原−抗体反応により生じる屈折率の変化を、金属薄膜表面で入射光が全反射する際に生じるエバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴を用いて測定する方法である。
【0003】
例えば、この表面プラズモン現象を用いて、牛乳中の菌、血液や尿中に存在するペプチド類、生体内で起こる分子間の相互作用等をリアルタイムで検出し測定することができる。
このような表面プラズモン共鳴現象を用いた測定装置(SPR測定装置)としては、例えば特許文献1〜3に開示されたものが知られている。特許文献1のSPR測定装置では、試料溶液を収容した試料セルを装置のプリズムの上面に載置し測定を行うようになっている。
【0004】
このようなSPR測定装置において、試料セルの検出部に試料溶液を接触させたままの状態では、対象となる試料溶液の抗原と検出部の抗体とが反応したことによる変化と、検出部に異物等が沈降して堆積した状態による変化との区別がつきにくい。そこで近年では、試料セルに流路を設け、流路に対面した検出部に試料溶液を一定の速度で流すように供給してやることにより、異物等の沈降を抑制し抗原−抗体反応による変化を選択的に検出できるようにしたフローセルが知られている。フローセルの流路に試料溶液を流す手段としては、例えば、フローセルの外部からポンプをチューブ等で接続し、流路に圧力をかける方法などが知られている。
【0005】
また、このようなSPR測定装置では、装置のプリズムの上面にフローセルを精度よく位置決めして載置することが重要視される。これは、プリズムを通してフローセルに照射する帯状の入射光の光軸を、該フローセルの測定領域の検出部に精度よく照射することで、試料溶液の測定の精度が確保されるためである。
【0006】
また、フローセルの検出部に試料溶液が供給されていない空の状態の測定(予測定)と試料溶液が供給された状態の測定(本測定)とで、該検出部の屈折率が大きく相違するため、例えばゴニオメータを用いて搭載したフローセルを回動させるとともに反射した反射光を受光する受光部を回動させて、入射光の照射角度範囲を各々設定することが行われている。
また、試料溶液を流路に流す本測定の直前に、該流路に試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有するリファレンス溶液(参照溶液)を流して予測定を行うことがある。
【特許文献1】特許第3356213号公報
【特許文献2】特開2002−148187号公報
【特許文献3】特開2005−24483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フローセルをSPR測定装置に精度よく載置するためには、フローセルの外形部分の加工精度を充分に確保する必要があった。すなわち、SPR測定装置にフローセルを載置する際に、該フローセルを保持するための保持機構等が設けられていて位置決め固定するが、作製されたフローセルの外形部分と検出部との位置精度が充分に確保されていない場合、装置にフローセルを載置した状態で入射光の光軸と検出部との相対位置がずれてしまうため、測定精度を得るために作業者がフローセルの位置調整を行う必要があった。この位置調整には作業者の熟練を要し、測定の作業性が妨げられていた。
【0008】
また、フローセルの外形により精度の高い精密工作加工を施して作製することも考えられるが、製作費用が嵩むという問題がある。また、PDMS(polydimethylsiloxane)樹脂製のフローセルを用いた場合には材料が柔軟なため、外形を基準に装置に精度よく位置決めすることは難しい。
【0009】
また、ゴニオメータを用いて測定を行う場合、装置に搭載したフローセルを回動させるとともに反射光を受光する受光部を回動させて、予測定と本測定とで入射光の照射角度範囲を各々設定し直す必要があり、測定に時間が掛かり作業性を妨げていた。また、フローセルや受光部を回動させるための大掛かりな装置の構成が必要とされ、設備費用が嵩んでいた。
【0010】
また、試料溶液を流路に流す本測定の直前に、該流路に試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を流して予測定を行う場合、フローセルの検出部が本測定前に参照溶液に晒されることとなるため、測定精度が低減することがあった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、装置に搭載するフローセルの外形部分に加工精度を比較的必要とせず、該フローセルの位置決めを簡便に行えるとともに測定の精度が確保でき、測定の作業性が高められ、設備費用が低減する表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルは、試料溶液が流れる流路と、前記流路に連通し、前記試料溶液が供給される供給部と、前記流路に連通し、前記供給部に供給された前記試料溶液を吸引して該流路に導く移送部と、少なくとも前記流路の一部を含み、該流路の前記試料溶液に対面する検出部を備えた測定領域と、前記測定領域の一端側及び他端側に前記流路を挟んで対向配置され、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する位置確認部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、測定領域の一端側及び他端側に、検出部の配置された流路を挟んで各々の位置確認部が対向配置されており、該フローセルを用いて試料溶液を測定する前に、予めこれら位置確認部を用いてフローセルの測定位置を精度よく設定することができる。すなわち、該フローセルを表面プラズモン共鳴現象測定装置(以下「SPR測定装置」と省略する)に搭載し測定するにあたり、SPR測定装置の光源からプリズムを通しフローセルの測定領域に入射する帯状の入射光の光軸を、予め各々の位置確認部に照射して反応を測定(予測定)しながら該フローセルの位置決めを精度よく行えるので、次いで行われる試料溶液の測定(本測定)の際、測定当初より入射光を検出部に精度よく照射することができる。従って、試料溶液の測定が迅速に精度よく行える。
【0014】
また、装置に搭載するフローセルの検出部の位置精度を確保するために、従来のように、フローセルの外形部分に面倒な精密工作加工を施して該外形部分と検出部との相対位置精度を確保したり、フローセルを装置に搭載する際に外形部分を基準に位置決めし固定するような部材等を用いたりする必要がない。すなわち、フローセルの外形部分を位置決めの基準として用いないので、外形部分の加工精度を比較的粗く設定することができ、製作費用が低減する。また、例えばPDMS(polydimethylsiloxane)樹脂製の柔軟な材料からなるフローセルを用いる場合にも、装置への位置決めにフローセルの外形を基準としていないので、精度よく位置決めすることができる。
【0015】
また、フローセルの位置確認部の屈折率と試料溶液の屈折率とが近似して設定されているので、入射光の検出部に対する照射角度範囲を予測定時と本測定時とで変更する必要がなく、測定の作業性が飛躍的に高められている。すなわち、従来のように、検出部に試料溶液が供給されていない空の状態の測定(予測定)と、試料溶液が供給された状態の測定(本測定)とで該検出部の屈折率が大きく相違することに起因して、例えばゴニオメータを用いフローセルを回動させるとともに反射光を受光する受光部を回動させて、入射光の照射角度範囲を各々設定し直すような面倒な作業や大掛かりな装置の構成が必要ない。従って、測定の作業性が向上するとともに、設備費用が低減する。
【0016】
また、試料溶液を流路に流す本測定の直前に、該流路に試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を流して検出部で予測定を行う必要がないので、該検出部が参照溶液に晒されることがなく、測定当初から目的の試料溶液が供給され、測定精度が高められる。
【0017】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留可能な穴状に形成されることとしてもよい。
【0018】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部が穴状に形成されており、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留することができるので、測定の際に、試料溶液の種類に合わせた参照溶液を適宜選択して用いることができる。すなわち、測定の対象が限定されないので、種々様々な試料溶液に対応可能である。
【0019】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部に参照溶液を供給するための参照溶液供給部が設けられることとしてもよい。
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部に参照溶液を供給するための参照溶液供給部を設けているので、例えばこの参照溶液供給部を大径の穴状に形成すれば、予測定時に参照溶液を注入しやすい。従って、測定の作業性が向上する。
【0020】
また、位置確認部とは別に参照溶液を注入する参照溶液供給部を設けることで、参照溶液を注入しやすくするために位置確認部を広く大きく形成するような必要がなくなる。よって、位置確認部をより狭く小さく形成でき、該位置確認部の測定領域に占める割合を低減できるとともに、検出部の測定領域に占める割合を増大できるので、例えば検出部として種類の異なる複数の抗体を用いた場合に、一度の測定でより多種多様な抗原−抗体反応を測定することが可能となる。
【0021】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状に形成されることとしてもよい。
【0022】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部が膜状に形成されるとともに試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有しているので、例えば特定の試料溶液を測定するような場合に、予め作製したフローセルを用いることにより、測定毎に位置確認部に参照溶液を注入する作業が削減でき、迅速に本測定に移行できる。従って、測定の作業性が飛躍的に向上する。
【0023】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、互いの中心を通る中心軸から離反するに連れ前記中心軸方向の幅が漸次減少又は増大するように形成されることとしてもよい。
【0024】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、予測定時に位置確認部へ入射光の光軸を照射した際に、例えば反射した反射光をCCDイメージセンサ等の受光部で受光した結果をモニタして位置確認部と光軸との重なり合う幅の大きさを確認することにより、位置確認部の中心軸と入射光の光軸との相対的な位置関係を把握することができる。すなわち、例えば、位置確認部の中心軸上に入射光の光軸が重なって配置された場合にモニタした前記幅が最大又は最小となるように設定しておき、該幅が最大又は最小となるようにフローセルを移動して、該フローセルと装置との相対的な位置決めを行うことができる。よって、フローセルの位置決めが簡便に精度よく行えるので、従来のように、フローセルと装置との相対位置を肉眼で確認しながら調整するような、作業者の熟練を要する調整作業が必要ない。
【0025】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記中心軸上に中心を配置した円形状に形成されることとしてもよい。
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部を例えば参照溶液を貯留可能な断面円形状の円孔又は円形テープ部材等で形成するので、該位置確認部の加工や成形を比較的簡便に行える。
【0026】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、前記中心軸上に重心を配置した三角形状に形成されるとともに、互いの頂点又は辺を対向配置することとしてもよい。
【0027】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、位置確認部が三角形状に形成されているので、モニタで確認しながらフローセルを装置に位置決めする際、位置確認部と入射光の光軸との重なり合う幅の大きさに変化を生じさせやすい。すなわち、フローセルの位置調整にあたり前記中心軸と光軸とを相対的に極僅かに移動した際、前記幅が比較的大きく変化するので、微調整が行いやすい。従って、フローセルの位置合わせがより精度よく行える。
また、位置確認部が互いの頂点又は辺を対向配置しているので、位置決め調整作業の当初からフローセルと装置との相対的な位置関係を把握しやすく、作業がより迅速に行える。
【0028】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記位置確認部は、互いに形状が異なることとしてもよい。
【0029】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、対向配置する位置確認部は、互いに形状が異なるので、入射光の光軸が各々の位置確認部に照射された際に、位置確認部と光軸との重なり合う部分に対応してモニタに表示される幅の大きさが夫々異なるようにされている。すなわち、モニタを目視する作業者は位置調整の当初から前記幅の広い方又は狭い方の配置状態を簡便に確認できるので、フローセルが装置に正しい向きに搭載されたかどうかを容易に判別でき、搭載方向の間違いがない。
【0030】
また本発明の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルにおいて、前記移送部は、一端が前記流路に連通し他端が外気に開放される複数の貫通孔からなることとしてもよい。
【0031】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、移送部が複数の貫通孔からなるとともに、これら貫通孔が試料溶液で濡れる場合に、所謂毛細管現象によって流路から試料溶液を吸い上げるので、供給部に供給された試料溶液は連続的に流路に吸引されて検出部に供給されるようになっている。よって、従来のように、試料溶液を検出部に連続的に移送するため、フローセルの外部からポンプをチューブ等で接続して流路へ圧力をかけ試料溶液を流したり、これらポンプやチューブ等を測定毎に洗浄、乾燥したりするような、大掛かりな装置の構成や面倒な作業の手間をかけずに、簡便な構成で精度の高い測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルによれば、装置に搭載するフローセルの外形部分に加工精度を比較的必要とせず、該フローセルの位置決めを簡便に行えるとともに測定の精度が確保でき、測定の作業性が高められ、設備費用が低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るフローセルを用いたSPR測定装置の概略構成を示す説明図、図2はSPR測定装置で測定された検出部の反射率と反射角度との関係を説明する特性図、図3は本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す分解斜視図、図4は本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図、図5は図4のA−A矢視を示す側断面図、図6は図4のB−B矢視を示す側断面図、図7乃至図11は本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【0034】
本実施形態のフローセル1は、測定対象の検体が接触した金属薄膜の表面におけるエバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴、所謂表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)現象を利用したSPR測定装置100に搭載して測定に用いられるものである。
【0035】
図1に示すように、このSPR測定装置100は、光源101から発する光を偏光子(不図示)により偏光してP偏光光(以下「入射光」とする)とし、集光レンズ102で集光した帯状の入射光を半円柱状のプリズム103の曲面側に入射させ、該プリズム103の平面側の測定面103aに密着するフローセル1の後述する金属薄膜に照射し、その反射光をCCDイメージセンサからなる受光部104で検出するようになっている。
【0036】
受光部104で検出した反射光の強度(光強度)を測定すると、図2に示すように、上記共鳴が起こる角度(共鳴角)で反射強度が減少するため、反射率の低い谷105が観測される。共鳴角は、金属薄膜に接する試料溶液の光学的な性質(屈折率)に依存するため、金属薄膜上に抗体を固定し、該抗体と抗原との結合による屈折率変化を測定することにより、特定物質の定量測定を行うことができる。
【0037】
図3乃至図6に示すように、SPR測定装置100に搭載するフローセル1は、略直方体状又は略矩形板状の外形をなし積層構造を有している。すなわち、フローセル1をSPR測定装置100に載置した状態で、下側に配置される略矩形板状の下部基板2と、下部基板2の上側に積層され平面視の外形が該下部基板2と略同一に形成される上部基板3とを備えている。また、例えば下部基板2の板厚は1mm程度とされ、上部基板3の板厚は3mm程度とされている。
【0038】
上部基板3は、その平面視の幅方向(図3における左上−右下方向又は図4における左右方向)の略中央に、円柱孔状の2つの参照溶液供給孔4a,4bを備えている。参照溶液供給孔4a,4bは、幅方向に直交する向きに互いに対向配置されており、孔の軸線を上部基板3の板厚方向に延ばし該上部基板3を貫通している。また、参照溶液供給孔4aの参照溶液供給孔4bと反対を向く側には、測定する試料溶液を供給するための円柱孔状の試料溶液供給孔(供給部)5が設けられ該上部基板3を板厚方向に貫通している。
【0039】
また上部基板3には、円柱孔状の複数の貫通孔(移送部)6が設けられ該上部基板3を板厚方向に貫通している。またこれら貫通孔6は、参照溶液供給孔4a,4bを幅方向に挟むように一方側(図4における左側)と他方側(図4における右側)とに夫々平面視略矩形状に配列されている。また、これら貫通孔6は、試料溶液に対して毛細管現象を発現する範囲の内径に設定され、その上端が外気に開放されるとともに下端が後述する吸引流路9に連通している。
【0040】
また、下部基板2は2層から構成されており、その下側の層がガラスやアクリル樹脂等の光を透過する材料の下地基板2aからなり、上側の層が樹脂のフィルム等のスペーサ部2bからなる。
【0041】
スペーサ部2bには、厚み方向に貫通する複数の開口部分が形成されており、これら開口部分のうち、上部基板3の参照溶液供給孔4a,4bに対応する位置には、円柱孔状に形成され該参照溶液供給孔4a,4bの内径と略同一の内径を有する夫々の位置確認孔(位置確認部)7a,7bが設けられている。位置確認孔7a,7bは、孔の軸線に直交する断面が円形孔状とされている。
【0042】
また、スペーサ部2bの試料溶液供給孔5に対応する位置には、試料溶液供給孔5の内径と略同一の内径を有する円孔8が形成されている。また、スペーサ部2bには、上部基板3の幅方向の一方側と他方側とに夫々平面視略矩形状に配列された複数の貫通孔6の外形に対応するように略矩形孔状に形成された夫々の吸引流路9が設けられている。吸引流路9は、試料溶液が供給された際に、該試料溶液がその上方の貫通孔6との間に空隙を形成しない程度の高さに設定され、例えば板厚方向の高さが10〜100μm程度とされる。
【0043】
また、位置確認孔7aと位置確認孔7bとの間には、該位置確認孔7a,7bの対向する向きに延在する流路10aが形成されている。図4に示すように、流路10aは、位置確認孔7a,7bの互いの中心を通る中心軸Cに沿って形成されており、例えばその延在方向に直交する断面寸法(以下「断面寸法」と省略)の幅方向が1mm程度、板厚方向(高さ)が10〜100μm程度に設定されている。
【0044】
また、流路10aの一端側(図4における上方側)の端部には、幅方向の一方側と他方側とに分岐して位置確認孔7aの外周側を囲み円孔8に連通する平面視円弧溝状の夫々の流路10bが形成されている。また、流路10aの他端側(図4における下方側)の端部には、幅方向の一方側と他方側とに分岐して位置確認孔7bの外周側を囲み夫々の吸引流路9に連通する平面視略円弧溝状の夫々の流路10cが形成されている。また、これら流路10a,10b,10cの断面寸法は、各々試料溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定されている。
また、このようにして、試料溶液供給孔5に接続する円孔8と貫通孔6に接続する吸引流路9とが流路10a,10b,10cを介して互いに連通している。
【0045】
また、下地基板2aの上面には、矩形状の金属薄膜11が形成されている。金属薄膜11は、図3に2点鎖線で示すように、その表面の一端側の端部に位置確認孔7aを対向配置し、他端側の端部に位置確認孔7bを対向配置している。また金属薄膜11は、例えばAu(金)で形成される。また、このように一端と他端とに位置確認孔7a,7bを夫々対向配置した金属薄膜11の外形の範囲内の領域が、測定領域とされている。測定領域は、例えば長辺が5mm程度、短辺が0.7mm〜0.8mm程度に設定される。尚、本実施形態では測定領域と金属薄膜11とを同一の外形として説明しているが、金属薄膜11は測定領域の範囲を超えて大きく形成されていても構わない。
【0046】
また、図7の測定領域の概略平断面図(図7における左側の図)に示すように、金属薄膜11の位置確認孔7a,7bに対向する夫々の部分に挟まれた中央の部分には、流路10aに対面するとともに複数の抗体12aを中心軸C方向に配列してなる検出部12が設けられている。抗体12aは、検出部12の範囲に中心軸Cに沿って配列され、例えば15種類程度が該検出部12に均等配置されている。
【0047】
次いで、このように構成されたフローセル1を用いてSPR測定装置100で試料溶液を測定する手順について説明する。
まず、SPR測定装置100のプリズム103の測定面103aにマッチングオイル等を介しフローセル1を載置する。ここで、フローセル1を載置する際、SPR測定装置100の入射光の光軸と位置確認孔7a,7bを通る中心軸Cとが、ある程度重なり合うようにしておく。
【0048】
次いで、載置したフローセル1の参照溶液供給孔4a,4bに、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を適宜注入する。注入した参照溶液は、参照溶液供給孔4a,4bの下側に連通する位置確認孔7a,7bに貯留されていき、金属薄膜11上の位置確認孔7a,7bに対応する部分を覆うように供給される。尚、この参照溶液としては、試料溶液を用いても構わない。
【0049】
次いで、位置確認孔7a,7bに参照溶液が充分に供給された状態で、SPR測定装置100の光源101から発した入射光を、プリズム103の測定面103aに密着するフローセル1の金属薄膜11に照射して、その反射光を受光部104で検出する。
すると、図7のモニタイメージ(図7における右側の図)に示すように、入射光の光軸Lが位置確認孔7a,7bに夫々重なり合う部分が、モニタ13上に、例えば色の濃い夫々の帯状部14a,14bとして表示されて、作業者が確認できる。
【0050】
ここで、図8に示すように、入射光の光軸Lと位置確認孔7a,7bの中心軸Cとが幅方向にずれて配置された場合、光軸Lに重なる位置確認孔7a,7bの幅が夫々狭くなるため、モニタ13上の帯状部14a,14bの幅が夫々狭まって表示される。作業者は、モニタ13上の帯状部14a,14bの幅が夫々最大となるようにフローセル1の位置を幅方向に移動し調整する。
【0051】
また、図9に示すように、光軸Lと位置確認孔7a,7bとが中心軸C方向にずれて配置された場合、モニタ13上に帯状部14a,14bのいずれか一方又は両方が表示されない状態となるので、作業者はモニタ13上の表示を見ながらフローセル1の位置を中心軸C方向に移動し調整すればよい。図9においては、フローセル1が光軸Lに対し中心軸C方向の一端側にずれて配置された状態を示している。
【0052】
また、図10に示すように、光軸Lと位置確認孔7a,7bの中心軸Cとが平行でなく、互いの軸線C,Lを交差するように角度θを形成し配置される場合、モニタ13上の帯状部14a,14bの幅は夫々異なって表示されるので、作業者はモニタ13上の表示を見ながらフローセル1を平面視回動させるように移動させ、帯状部14a,14bの夫々の幅が同一かつ最大となるように調整を行えばよい。
【0053】
ここで、図11に示すように、フローセル1の位置調整によってもモニタ13上に帯状部14a,14bが正しく表示されない場合にはフローセル1の作製不良が考えられるので、別のフローセル1に交換し前述同様の作業を行う。図11は、位置調整孔7bがモニタ13上に帯状部14bとして正しく表示されない場合を示している。
【0054】
次いで、図7に示すように、モニタ13上の帯状部14a,14bの夫々の幅が同一かつ最大となった状態で、試料溶液供給孔5に試料溶液を注入する。試料溶液供給孔5に供給された試料溶液は、円孔8から毛細管現象により流路10b,10a,10cを通り吸引流路9へと流れる。吸引流路9に到達した試料溶液は、さらに貫通孔6が試料溶液で濡れることによる毛細管現象により吸引されるとともに、後続の試料溶液が連続的に流路10aへと導かれ流れるようになっている。そして、試料溶液中の抗原が流路10aに対面して配置した検出部12の各種抗体12aに結合して生じる抗原−抗体反応による変化を測定する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のフローセル1によれば、金属薄膜11の一端側及び他端側に、検出部12を配置した流路10aを挟んで位置確認孔7a,7bが対向配置されており、該フローセル1を用いて試料溶液を測定する前に、これら位置確認孔7a,7bに参照溶液を注入して予測定し、フローセル1の測定位置を精度よく設定することができる。すなわち、フローセル1をSPR測定装置100に搭載し測定するにあたり、フローセル1の金属薄膜11に照射する帯状の入射光の光軸Lを予め各々の位置確認孔7a,7bの参照溶液の部分に照射して、作業者がモニタ13上で反応を目視で確認しながらフローセル1の位置決めを行えるので、次いで行われる試料溶液の本測定の際、測定当初より入射光の光軸Lを検出部12に精度よく照射することができる。従って、試料溶液の測定が迅速に精度よく行える。
【0056】
また、SPR測定装置100に搭載するフローセル1の検出部12の位置精度を確保するために、従来のように、フローセル1の外形部分に面倒な精密工作加工を施して該外形部分と検出部12との相対位置精度を確保したり、フローセル1を装置に搭載する際に外形部分を基準に位置決めし固定するような部材等を用いたりする必要がない。すなわち、フローセル1の外形部分を位置決めの基準として用いないので、外形部分の加工精度を比較的粗く設定することができ、製作費用が低減する。
【0057】
また、フローセル1の位置確認孔7a,7bに注入する参照溶液の屈折率と試料溶液の屈折率とが近似して設定されているので、入射光の検出部12に対する照射角度範囲を予測定時と本測定時とで変更する必要がなく、測定の作業性が飛躍的に高められている。すなわち、従来のように、検出部12に試料溶液が供給されていない空の状態の測定(予測定)と、試料溶液が供給された状態の測定(本測定)とで該検出部12の屈折率が大きく相違することに起因して、例えばゴニオメータを用いフローセル1を回動させるとともに反射光を受光する受光部104を回動させて、入射光の照射角度範囲を各々設定し直すような面倒な作業や大掛かりな装置の構成が必要ない。従って、測定の作業性が向上するとともに、設備費用が低減する。
【0058】
また従来のように、試料溶液を流路10aに流す本測定の直前に、該流路10aに試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を流して検出部12で予測定を行う必要がないので、検出部12が参照溶液に晒されることがなく、測定当初から目的の試料溶液が供給されて、測定精度がより高められている。
【0059】
また、位置確認孔7a,7bには、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留することができるので、測定の際に、試料溶液の種類に合わせた参照溶液を適宜選択して用いることができる。すなわち、測定の対象が限定されないので、種々様々な試料溶液に対応可能である。
【0060】
また、位置確認孔7a,7bは、互いの中心を通る中心軸Cから離反するに連れ中心軸C方向の幅が漸次減少する断面円形孔状とされているので、予測定時に位置確認孔7a,7bの参照溶液へ入射光の光軸Lを照射し、各位置確認孔7a,7bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応して反射した反射光を受光部104で受光し、その結果をモニタ13上に表示して帯状部14a,14bの幅の大きさを確認することにより、位置確認孔7a,7bの中心軸Cと入射光の光軸Lとの相対的な位置関係を容易に把握することができ、作業者がフローセル1の位置決めを簡便に精度よく行える。すなわち、従来のように、フローセル1と装置との相対位置を作業者が肉眼で確認しながら調整するような、熟練を要する作業が必要ない。
また、位置確認孔7a,7b及び参照溶液供給孔4a,4bが円柱孔状に形成されるので、加工や成形を比較的簡便に行える。
【0061】
また、流路10aが金属薄膜11の一端側から他端側に延在して形成されているので、流路10aの試料溶液に対面する検出部12を該流路10aに沿って延在して配置することができ、検出部12として種類の異なる複数の抗体12aを用いて該流路10aに沿って配列することができるので、一度の測定で多種多様な抗原−抗体反応を測定することができる。
【0062】
また、複数の貫通孔6が、毛細管現象によって連通する流路10aから試料溶液を吸い上げるので、試料溶液供給孔5に供給された試料溶液は連続的に流路10aに吸引されて検出部12に供給されるようになっている。よって、従来のように、試料溶液を検出部12に連続的に移送するため、フローセル1の外部からポンプをチューブ等で接続して流路10aへ圧力をかけ試料溶液を流したり、これらポンプやチューブ等を測定毎に洗浄、乾燥したりするような、大掛かりな構成や面倒な作業の手間をかけずに、簡便な構成で精度の高い測定を行うことができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態について、図12乃至図14を参照しながら説明する。
図12乃至図14は本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
尚、前述の第1の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
第2の実施形態のフローセル1の上部基板3は、その幅方向の略中央に、三角柱孔状の2つの参照溶液供給孔24a,24bを備えている。参照溶液供給孔24a,24bは、幅方向に直交する向きに互いに対向配置されており、孔の軸線を上部基板3の板厚方向に延ばし該上部基板3を貫通している。
【0065】
また、スペーサ部2bには、上部基板3の参照溶液供給孔24a,24bに対応する位置に該参照溶液供給孔24a,24bの断面と略同一の断面を有する三角柱孔状の位置確認孔(位置確認部)27a,27bが設けられている。すなわち、位置確認孔27a,27bは、孔の軸線に直交する断面が三角形孔状とされている。また、位置確認孔27a,27bは、互いの頂点を対向配置して形成される。
【0066】
第2の実施形態のフローセル1によれば、位置確認孔27a,27bが断面三角形孔状に形成されているので、予測定時に位置確認孔27a,27bの参照溶液へ入射光の光軸Lを照射し、各位置確認孔27a,27bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応して反射した反射光を受光部104で受光し、その結果をモニタ13上に表示して帯状部14a,14bの幅を確認する際に、該幅に変化が生じやすい。
【0067】
すなわち、図12に示すように、位置確認孔27a,27bの互いの断面三角形孔状の重心を通る中心軸Cと入射光の光軸Lとが重なり一致した状態と、図13に示すように中心軸Cと光軸Lとが幅方向に互いに僅かにずれて配置された状態又は図14に示すように中心軸Cと光軸Lとが平行でなく角度θを形成するように交差して配置された状態と、を対比した場合に、モニタ13上に表示される夫々の帯状部14a,14bの幅に変化が生じやすくされている。従って、作業者がフローセル1の位置調整にあたり中心軸Cと光軸Lとを相対的に僅かに移動させた場合であっても、帯状部14a,14bの幅が比較的大きく変化するので、位置の微調整が行いやすい。従って、フローセル1の位置合わせがより精度よく行える。
【0068】
また、これら位置確認孔27a,27bが互いの頂点を対向配置しているので、位置決め調整作業の当初からフローセル1と装置との相対的な位置関係を把握しやすく、作業がより迅速に行える。すなわち、位置調整作業の初期の段階でモニタ13内に帯状部14a,14bの互いの外方端部を収めるようにしておけば、次いで行うフローセル1の幅方向や平面視回転方向の位置調整により中心軸Cと光軸Lとが重なり合うに連れ漸次帯状部14a,14bが互いに内方に向け夫々の幅を増大するので、帯状部14a,14bが該位置調整中に各幅を増大させてモニタ13外にはみ出してしまうことがない。よって、位置調整中にモニタ13内に帯状部14a,14b全体を表示させるためフローセル1を中心軸C方向に調整するような手間がなく、作業がより迅速に行える。
【0069】
次に、本発明の第3の実施形態について、図15及び図16を参照しながら説明する。
図15及び図16は本発明の第3の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
尚、前述の第1、第2の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
第3の実施形態のフローセル1の上部基板3は、その幅方向の略中央に、互いに異なる三角柱孔状の参照溶液供給孔34aと参照溶液供給孔34bとを備えている。これら参照溶液供給孔34a,34bは、幅方向に直交する向きに互いに対向配置されており、孔の軸線を上部基板3の板厚方向に延ばし該上部基板3を貫通している。
【0071】
また、スペーサ部2bには、上部基板3の参照溶液供給孔34aに対応する位置に該参照溶液供給孔34aの断面と略同一の断面を有する三角柱孔状の位置確認孔(位置確認部)37aが設けられ、また上部基板3の参照溶液供給孔34bに対応する位置に該参照溶液供給孔34bの断面と略同一の断面を有する三角柱孔状の位置確認孔(位置確認部)37bが設けられている。すなわち、位置確認孔37a,37bは、孔の軸線に直交する断面が互いに異なる三角形孔状とされている。また、位置確認孔37a,37bは、互いの頂点を対向配置して形成されている。
【0072】
第3の実施形態のフローセル1によれば、対向配置する位置確認孔37a,37bが互いに断面の異なる三角形孔状に形成されるので、入射光の光軸Lが位置確認孔37a,37bの参照溶液に照射された際に、各位置確認孔37a,37bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応してモニタ13上に表示される帯状部14a,14bの夫々の幅の大きさが異なるようにされている。
【0073】
すなわち、モニタ13上で確認しながらフローセル1を装置に位置決めするにあたり、作業者は位置調整の当初から帯状部14a,14bのうち幅の広い方又は狭い方の配置状態を一目で簡便に確認できるので、該フローセル1が装置に正しい向きに載置されたかどうかを容易に判別でき、搭載方向の間違いが防止される。
【0074】
次に、本発明の第4の実施形態について、図17及び図18を参照しながら説明する。
図17及び図18は本発明の第4の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
尚、前述の第1〜第3の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
第4の実施形態のフローセル1の上部基板3は、その幅方向の略中央に、該上部基板3を板厚方向に貫通する2つの参照溶液供給孔44a,44bを備えている。参照溶液供給孔44a,44bは、四角柱孔の内面の一面を孔内方に向け突出させたように形成され、該突出した部分の先端角部の稜線が孔の軸線に沿って板厚方向に延びている。これら参照溶液供給孔44a,44bは、前記先端角部が形成される側の面を内方に配置して、互いに幅方向に直交する向きに対向配置されている。
【0076】
また、参照溶液供給孔44a,44bの夫々の前記先端角部は該参照溶液供給孔44a,44bの幅方向の中心に夫々配置されており、これら先端角部上に中心軸Cが配置されている。また、スペーサ部2bには、上部基板3の参照溶液供給孔44a,44bに対応する位置に該参照溶液供給孔44a,44bの断面と略同一の断面を有する位置確認孔(位置確認部)47a,47bが形成されている。
【0077】
第4の実施形態のフローセル1によれば、位置確認孔47a,47bは、互いの中心を通る中心軸Cから離反するに連れ中心軸C方向の幅が漸次増大する断面とされているので、予測定時に位置確認孔47a,47bの参照溶液へ入射光の光軸Lを照射し、各位置確認孔47a,47bの参照溶液と光軸Lとの重なり合う部分に対応して反射した反射光を受光部104で受光し、その結果をモニタ13上に表示して帯状部14a,14bの幅を確認する作業がより迅速に行える。
【0078】
すなわち、位置調整作業の初期の段階ではフローセル1の中心軸Cと装置の光軸Lとは未だ重なり合い一致した状態でないと考えられるが、フローセル1の位置調整を行うに連れ漸次モニタ13上に表示される帯状部14a,14bの夫々の幅が減少するように設定されているので、帯状部14a,14bが該位置調整中に各幅を増大させてモニタ13外にはみ出してしまうようなことがない。よって、位置調整中にモニタ13内に帯状部14a,14b全体を表示させるためフローセル1を中心軸C方向に調整するような手間がなく、作業がより迅速に行える。
【0079】
次に、本発明の第5の実施形態について、図19を参照しながら説明する。
図19は本発明の第5の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
尚、前述の第1〜第4の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
第5の実施形態のフローセル51の上部基板53は、参照溶液供給孔4aの参照溶液供給孔4bと反対を向く側の幅方向の一方側(図19における左側)に試料溶液を供給するための試料溶液供給孔(供給部)55を備え、他方側(図19における右側)に参照溶液供給孔4aに参照溶液を供給するための参照溶液注入孔54aを備えている。また、参照溶液供給孔4bの参照溶液供給孔4aと反対を向く側には、参照溶液供給孔4bに参照溶液を供給するための参照溶液注入孔54bを備えている。これら参照溶液注入孔54a,54bは、上部基板53を板厚方向に貫通して形成され、各内径が、参照溶液供給孔4a,4bの内径よりも大きく設定されている。
【0081】
また、下部基板52のスペーサ部52bには、上部基板53の参照溶液供給孔4a,4bに対応する位置に該参照溶液供給孔4a,4bの内径と略同一の内径を有する略円柱孔状の夫々の位置確認孔(位置確認部)57a,57bが設けられている。位置確認孔57a,57bは、孔の軸線に直交する断面が略円形孔状とされている。
【0082】
また、スペーサ部52bの試料溶液供給孔55に対応する位置には、試料溶液供給孔55の内径と略同一の内径を有する円孔58が形成されている。また、位置確認孔57aと位置確認孔57bとの間に延在する流路10aの一端側(図19における上方側)の端部には、位置確認孔57aの幅方向の一方側の外周側を通って円孔58に連通する流路60bが形成されている。流路60bの断面寸法は、試料溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定される。
【0083】
また、スペーサ部52bの参照溶液注入孔54a,54bに対応する位置には、該参照溶液注入孔54a,54bの内径と略同一の内径を有する略円柱孔状の夫々の円孔56a,56bが設けられている。円孔56a,56bは、各々位置確認孔57a,57bとの間に形成する流路61a,61bにより、これら位置確認孔57a,57bと連通している。流路61a,61bの断面寸法は、各々参照溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定される。
【0084】
次いで、このように構成されたフローセル51を用いてSPR測定装置100で試料溶液を測定するには、予測定時に、装置に載置したフローセル51の参照溶液注入孔54a,54bに、参照溶液を適宜注入する。注入した参照溶液は、円孔56a,56bを通り流路61a,61bに吸引されるように位置確認孔57a,57bに貯留されていき、金属薄膜11上の位置確認孔57a,57bに対応する部分を確実に覆うように供給される。
【0085】
第5の実施形態のフローセル51によれば、位置確認孔57a,57bに参照溶液を供給するための参照溶液注入孔54a,54bが設けられているので、予測定時に参照溶液を注入しやすい。従って、作業者がフローセル51に参照溶液を確実に供給でき、測定の作業性が向上する。
【0086】
また、位置確認孔57a,57bとは別に参照溶液を注入する参照溶液注入孔54a,54bを設けることで、参照溶液を注入しやすくするために位置確認孔57a,57bを広く大きく形成するような必要がなくなる。よって、これら位置確認孔57a,57bをより狭く小さく形成でき、該位置確認孔57a,57bの金属薄膜11に占める割合を低減できるとともに、検出部12の金属薄膜11に占める割合を増大できるので、検出部12として種類の異なる複数の抗体12aを用いた場合に、一度の測定でより多種多様な抗原−抗体反応を測定することが可能となる。また、流路61a,61bの毛細管現象を用いているので、金属薄膜11の位置確認孔57a,57bに対応する部分に確実に参照溶液を供給できる。
【0087】
次に、本発明の第6の実施形態について、図20を参照しながら説明する。
図20は本発明の第6の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
尚、前述の第1〜第5の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
第6の実施形態のフローセル71は、下部基板72の下地基板72aの上面の金属薄膜11に、試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状の位置確認部77a,77bを備えている。位置確認部77a,77bは平面視円形状に形成されており、位置確認部77aが金属薄膜11の一端側(図20における右上方側)の端部に配置され、位置確認部77bが他端側(図20における左下方側)の端部に配置されて、検出部12を挟んで互いに幅方向に直交する向きに対向している。これら位置確認部77a,77bは、例えば低屈折率を有するポリ4フッ化エチレンからなり、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のデュポンテフロンAF等を用いて形成される。また、位置確認部77a,77bとして、接着テープ等を用いても構わない。
【0089】
また、スペーサ部72bの流路10aは、幅方向に直交する向きに延びて形成されており、該流路10aの一端側の端部は、円孔8の他端側の端部に連通している。また、流路10aの他端側の端部は、幅方向の一方側と他方側とに分岐するように延びる流路10dに連通しており、流路10dは、幅方向の一方側の吸引流路9と他方側の吸引流路9とに連通している。また、流路10a,10dの断面寸法は、各々試料溶液に対し毛細管現象を発現する範囲に設定されている。またこのようにして、試料溶液供給孔5に接続する円孔8と貫通孔6に接続する吸引流路9とが流路10a,10dを介して互いに連通している。
【0090】
第6の実施形態のフローセル71によれば、位置確認部77a,77bが膜状に形成されるとともに試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有しているので、特定の試料溶液を測定するような場合に、予め作製した該フローセル71を用いることにより測定毎に位置確認部77a,77bに参照溶液を供給する作業が削減でき、迅速に本測定に移行できる。従って、測定の作業性が飛躍的に向上するとともに、参照溶液を用いないので測定コストが低減する。また、上部基板73やスペーサ部72bには、参照溶液を用いる場合に必要とされた孔等がないので、製作費用を低減できる。また、スペーサ部72bの流路10a,10dを、前記孔等を迂回するための複雑な形状に形成する必要がないので、該スペーサ部72bを簡便に製作できる。
【0091】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1〜第5の実施形態では、位置確認部が試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を供給して貯留可能な穴状であることとして説明したが、これに限らず、フローセルの作製時に予め参照溶液を内部に封入して位置確認部としても構わない。
また第6の実施形態では、位置確認部77a,77bが試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状に形成されることとして説明したが、これに限らず、金属薄膜11上に面を配置した板状や柱状であっても構わない。
【0092】
また、位置確認部の形状は、本実施形態で説明した円形状や三角形状等に限らず、それ以外の種々様々な形状を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフローセルを用いたSPR測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】SPR測定装置で測定された検出部の反射率と反射角度との関係を説明する特性図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
【図5】図4のA−A矢視を示す側断面図である。
【図6】図4のB−B矢視を示す側断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係るフローセルの測定領域を拡大して示す概略平断面図及び受光したモニタイメージを説明する図である。
【図19】本発明の第5の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す平面図である。
【図20】本発明の第6の実施形態に係るフローセルの概略構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1, 51,71 フローセル
5,55 試料溶液供給孔(供給部)
6 貫通孔(移送部)
7a,7b,27a,27b,37a,37b,47a,47b,57a,57b 位置確認孔(位置確認部)
10a 流路
11 金属薄膜(測定領域)
12 検出部
54a,54b 参照溶液注入孔(参照溶液供給部)
77a,77b 位置確認部
C 位置確認孔(位置確認部)の中心を通る中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料溶液が流れる流路と、
前記流路に連通し、前記試料溶液が供給される供給部と、
前記流路に連通し、前記供給部に供給された前記試料溶液を吸引して該流路に導く移送部と、
少なくとも前記流路の一部を含み、該流路の前記試料溶液に対面する検出部を備えた測定領域と、
前記測定領域の一端側及び他端側に前記流路を挟んで対向配置され、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する位置確認部と、を備えることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項2】
請求項1に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留可能な穴状に形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項3】
請求項2に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部に参照溶液を供給するための参照溶液供給部が設けられることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項4】
請求項1に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状に形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、互いの中心を通る中心軸から離反するに連れ前記中心軸方向の幅が漸次減少又は増大するように形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項6】
請求項5に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記中心軸上に中心を配置した円形状に形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項7】
請求項5に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記中心軸上に重心を配置した三角形状に形成されるとともに、互いの頂点又は辺を対向配置することを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、互いに形状が異なることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記移送部は、一端が前記流路に連通し他端が外気に開放される複数の貫通孔からなることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項1】
試料溶液が流れる流路と、
前記流路に連通し、前記試料溶液が供給される供給部と、
前記流路に連通し、前記供給部に供給された前記試料溶液を吸引して該流路に導く移送部と、
少なくとも前記流路の一部を含み、該流路の前記試料溶液に対面する検出部を備えた測定領域と、
前記測定領域の一端側及び他端側に前記流路を挟んで対向配置され、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する位置確認部と、を備えることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項2】
請求項1に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する参照溶液を貯留可能な穴状に形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項3】
請求項2に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部に参照溶液を供給するための参照溶液供給部が設けられることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項4】
請求項1に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記試料溶液の屈折率に近似した屈折率を有する膜状に形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、互いの中心を通る中心軸から離反するに連れ前記中心軸方向の幅が漸次減少又は増大するように形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項6】
請求項5に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記中心軸上に中心を配置した円形状に形成されることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項7】
請求項5に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、前記中心軸上に重心を配置した三角形状に形成されるとともに、互いの頂点又は辺を対向配置することを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記位置確認部は、互いに形状が異なることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセルであって、
前記移送部は、一端が前記流路に連通し他端が外気に開放される複数の貫通孔からなることを特徴とする表面プラズモン共鳴現象測定用のフローセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−288103(P2009−288103A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141462(P2008−141462)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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