説明

表面上の銅電着用界面活性条件抑制剤

抑制剤としてポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を含む銅電着のための電解質。ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩によって起こされた抑制は、銅表面の促進剤濃度によって条件付けられる。ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩の界面活性特性は、カソードと電解質とが接触している間に、電解質/大気界面を電解質/銅界面に即座に変換することを可能にする。本発明による電解質は、平滑で光沢のある電着物を得るため、およびマイクロエレクトロニクスで有用なサブミクロンスケールの凹部を有する表面上に銅を堆積するために適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅電着浴用の新系統の添加剤に関する。より具体的には、本発明は平滑で光沢のある銅堆積物および半導体の銅配線の製造に用いられる、銅電着浴用の新系統の界面活性抑制剤に関する。
【0002】
それぞれの銅堆積物は、その用途に応じた特定の性質を有していなければならない。それらの求められる特性を得るために、電着浴の少数成分とされる化合物で構成され、且つ添加物と称される、複数の鉱物あるいは有機化合物が、通常、銅の電着浴に添加される。
【0003】
元は溝を含んでいた表面上に、平滑で光沢のある電着銅堆積物を得るために、抑制剤およびブライトナー添加物の組み合わせ、例えば促進剤に付随して、を電解質に添加することが必要であることが経験的に判明した。前記の添加物の組み合わせは、表面上のミクロンおよびサブミクロンサイズの凹部、例えば、凹凸のへこんだ部分、溝あるいはマイクロトレンチの底から開始する加速された銅の堆積を促進し、それらを優先的に充填することを可能にする。同時に、それらの添加物は、表面の凸部上への銅の電着を減速する。これら2つの効果の組み合わせは、平滑な電着銅堆積物を得ることを可能にする。
【0004】
この結果は、堆積の促進剤が化学的に銅表面に吸着されるとき、凹部の充填の際のように、この表面が素早く収縮するときに、表面濃度が増加し、それとは反対に、マイクロ構造の凸部上への堆積の際のように、この表面が増加するときに、この促進剤の表面濃度は減少する、という事実によって説明される。(J.Osterwald und J.Schlz−Harder, Galvanotechnik, 1975,vol.66,360; J.Osterwald,Oberflache−Surface,1976,vol.17,89)。
【0005】
マイクロエレクトロニクスにおける配線の製造もまた、サブミクロンサイズの形状の凹部、例えばトレンチの形の凹部の、銅の電着による充填を含む。この充填は、凹部の中にいかなるボイドも残してはならない。前記の結果は凹部の底から開始することを促進する銅堆積によって既に得られている。それゆえに、一方で平滑な銅の電着物を得ること、他方で銅の電着によってサブミクロンサイズの凹部を充填することは、既に立証されたように同一の技術的課題を提起する(T.P.Moffat et al. IBM J.RES&DEV. 2005,49,(1)19−36; G.B.McFadden et al. Journal of The Electrochemical Society 2003,150,C591−C599)。従って、サブミクロンサイズの凹部を充填することによってマイクロエレクトロニクスの配線を製造するために、平滑な電着銅堆積物を得るための既知の添加剤の組み合わせを使用する。サブミクロンのトレンチの底からの開始を増やす、銅堆積速度を得るために、塩化物イオン存在下で抑制剤として機能する、即ち、銅堆積の際の過電圧を増加させる、ポリアルキレングリコールと、促進剤として機能する、即ち、銅堆積の際の過電圧を減少させるスルホン酸基を有するチオール、あるいは2つのスルホン酸基を有するジスルフィドとの、よく知られた組み合わせの使用が提案された。
【0006】
この添加物の組み合わせは、一般的に10-3〜10-2mol/lの濃度範囲の塩化物イオンが必要であることを含む欠点がある。しかしながら、塩化物イオン存在下で、銅表面はCu2+イオンと反応し、不均化反応によって塩化第一銅を生成する。(W−P DOW et al. Journal of The Electrochemical Society, 2005,152,C67−C76)。この不均化反応は、既に堆積された銅を消費し、初期の銅の層を、この層が銅の気相堆積で得られた薄く且つ分割された銅のシード層である場合に、部分的に除去することができるか、あるいはその表面特性を変えることができる。
【0007】
この添加物の組み合わせは、完全および即座に銅の初期表面を濡らさない電解質を生成するという欠点もある。
【0008】
それゆえに、塩化物イオンのない、新規組成を有する銅電着浴で、銅表面を即座に濡らすことを可能にし、そして銅表面に存在するサブミクロンサイズの溝および凹部を好ましく充填することが望まれている。
【0009】
より一般的には、酸性の銅電着浴内で有用な活性を持つとして知られる添加物は、実際のところ、長期にわたって知られている少数の系統群からなり、例えば、スルホン酸基を含むポリエーテル、チオールあるいはジスルフィド、並びにフェナジンの窒素複素環、たとえばヤヌスグリーンBである。それゆえに、例えば、特定の用途に最適な特性を有する銅の電着物を得ることを求めているときに、可能な組み合わせの数を増やすために、銅電着浴用の活性添加物の新系統群を有することが非常に望まれている。
【0010】
本発明は、銅電着の抑制特性およびポリ(アルキレン−ビグアニド)塩の銅−電着界面での界面活性特性の発見に関する。
【0011】
本発明は、ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を含み、塩化物イオンのない銅電着浴にも関する。
【0012】
本発明は、ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を含む浴を適用する銅電着方法にも関する。
【0013】
本発明はさらに、ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を含む浴から得られる、平滑な銅電着物および配線に関する。
より具体的には、本発明は第一の対象として、中性または酸性の銅電着浴内で添加物として使用されるポリ(アルキレン−ビグアニド)塩であって、以下の一般式:
【化1】

[式中、
pは、少なくとも2で、12までの整数であり、
nは、少なくとも2で、100までの整数であり、
Rは、NC−あるいはH2H−C(:O)の式で表される基であり、
AHは、酸であり、
xは、AHが一塩基酸であるときに(n+1)と2(n+1)の間であり、AHが二価酸であるときに(n+1)/2と(n+1)の間に含まれる]
で表されることを特徴とするポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を有する。
【0014】
好ましくは、本発明では、R−がNC−を表し、p=4、6、8、10または12であり、且つnが5から50の間に含まれる一般式(B)有するポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を実現する。
【0015】
最も好ましくは、本発明では、R−がNC−を表し、p=6で且つnが6と25の間に含まれる一般式(B)を有するポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を実現する。
【0016】
公知のように、ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩内のモノマーの数nを増加することが可能である。例えば、アルコール中の一般式(B)のオリゴマーの塩酸塩溶液を、約70℃から150℃の温度に加熱し、アミンとシアナミド端との間の反応によってより高度に縮合したオリゴマーを生成することができる。
【0017】
ポリ(アルキレン−ビグアニド)およびその塩の製造は、よく知られており、例えば、α、ωアルキレンジアミン塩酸塩とジシアンジアミドのナトリウム塩との重縮合にある。
【0018】
ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩の構造は、それらが溶解されている溶液のpHによる。それらの構造は、溶液のpHがおよそ3〜11の間に含まれるとき、ビグアニド基Gあたり1つのプロトンを含む、即ち、GH+であり、溶液のpHがおよそ3より低いとき、2つのプロトンを含む、即ちGH22+である。
【0019】
好ましくは、ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩は、水性溶液の形態で銅電着浴に添加される。好ましい塩の中で、強酸化された酸の塩、例えば硫酸塩、重硫酸塩、燐酸塩およびスルホン酸塩、例えばメタンスルホネートが挙げられる。
【0020】
水性溶液中のポリ(アルキレン−ビグアニド)塩は、公知のアニオン交換法、例えば電気透析によって、あるいは選択的に、ポリ(アルキレン−ビグアニド)を遊離塩基の形態で分離し、その後前記の遊離塩基の新しい酸との新しい塩の溶液を形成することによって他の塩に変換することができる。
【0021】
いくつかのポリ(アルキレン−ビグアニド)化合物は、それらの塩酸塩、例えばポリ(ヘキサメチル−ビグアニド)塩酸塩あるいはPHBGの中性水溶液の形態で、防腐剤として商品化されている。
【0022】
一般式(B)の化合物は、10-7モル/l〜10-3モル/l、好ましくは5×10-7モル/l〜10-5モル/lの濃度範囲内で、銅電着浴内で用いることができる。それらは好ましくは、メルカプトアルキルスルホン酸およびジアルキルジスルフィドジスルホン酸、あるいはそれらの塩、例えばナトリウムメルカプトプロピルスルホネート(MPS)またはビススルホプロピルジスルフィド(SPS)の中から選択される、銅堆積促進剤と共に用いられる。
【0023】
一般式(B)の化合物は、中性あるいは酸性の銅電着浴内で用いることができ、浴のpHは好ましくは3から0の間に含まれる。それらの浴の作業温度は、0℃から100℃の間、好ましくは20℃から80℃の間に含まれる。
【0024】
本出願人は、一般式(B)の化合物が、非常に低い濃度範囲、例えば、5×10-7モル/l〜10-5モルの範囲内で、実施例および図内で、それらの化合物存在下での銅の電着に対応する電流−電圧曲線によって示されるように、銅の電着を抑制することを発見した。本発明の主題であるこの抑制特性は、図3に示すように、ポリエチレングリコールおよび塩化物イオンを含む公知の抑制剤に匹敵し得る。
【0025】
他方で、ビグアニド基を1つだけ含む分子、例えばN,Nジメチルビグアニド塩酸塩は、硫酸銅および硫酸を含み、pHが0.5〜4の間に含まれる浴内で、銅の電着の抑制特性を示さない。
【0026】
本発明の第二の対象は、一般式(B)の少なくとも1つの添加剤を含むことを特徴とする銅電着浴に関する。
【0027】
銅電着浴内の促進剤、例えば、3−メルカプトプロピルスルホネート(MPS)またはジn−プロピルジスルフィド3,3’ジスルホネート(ビス−スルホプロピルジスルフィドまたはSPS)が、銅表面に化学吸着することがこれまでに示されている。例えば、硫酸銅、硫酸、ポリエチレングリコール、10-3モル/lの塩化物イオンおよび5×10-5モル/lのSPSを含む浴内で、SPSによる銅表面の被覆率が、室温の平衡状態で5.4%であり、SPS濃度が5×10-5モル/lより低いときには、SPSによる銅表面の被覆率は、平衡状態で、溶液中のSPS濃度に比例することが示された。銅の電着によってサブミクロンサイズの凹部を充填するのに必要な時間は、一般に10〜30秒であり、この時間は銅表面上に化学吸着した促進剤によって溶液との平衡に必要とされるものよりも短いので、銅表面上の表面濃度は、サブミクロンサイズの凹部を充填している間に、その凹部表面の減少が速いので、変遷的に増加する。濃度が増加する前記促進剤は、その後徐々に、ポリエチレングリコール+塩化物イオンタイプの抑制剤を置き換え、得られる抑制の停止は、凹部の底から開始する次第に速くなる充填を誘発し、それは完全且つボイドのない充填の実施を可能にする。(T.P.Moffat et al. The Electrochemical Society Interface,2004,46−52)。
【0028】
平滑な銅の電着物の形成の間、溝を充填するために適する、あるいは半導体の銅配線製造の間、サブミクロンサイズの凹部を充填するために適する抑制剤は、そこで下記の性質と特徴を有していなければならない:
低濃度、例えば10-5モル/lのMPSまたはSPSタイプの促進剤によって、銅表面から顕著に置き換えられない。
【0029】
溶液中で、より高濃度、即ち4〜6倍、即ち、例えば4×10-5モル/l〜10-4モル/lの間を含む濃度において、この同じ促進剤によって、銅表面から実際に置き換えられる。溶液中の促進剤のこの高められた濃度は、その後、溝の素早い充填の間、あるいはマイクロエレクトロニクスで用いられるサブミクロンサイズの凹部の充填の間、変遷的に達する濃度と同様に、銅表面の促進剤の濃度と平衡状態になる。
【0030】
塩化物イオンが存在してはならないという特徴要求が付加された特性。
【0031】
本出願人は、メルカプトプロピルスルホネート(MPS)が、5×10-5モル/lよりも高い濃度で、室温ならびに70〜75℃において、一般式(B)の化合物によって誘発される銅の電着の抑制を停止することを示した。
【0032】
より正確には、本出願人は、メルカプトプロピルスルホネート(MPS)が、10-5モル/lの濃度で、一般式(B)の化合物によって誘発される銅の電着の抑制を妨害しないのに対し、5×10-5モル/l〜10-4モル/lの濃度でMPSがこの抑制を停止することを示した。
【0033】
例えば、室温において、10-5モル/lの濃度のMPSは実際に一般式(B)の1つの化合物によって誘発される銅の電着の抑制を増加するのに対し、5×10-5モル/lの濃度では、MPSはこの抑制を停止することが示された。
【0034】
表1は、図4に表される実施例4のデータから作製された表であり、室温で10-5モル/lのMPS存在下で、1.25×10-6モル/lの濃度の一般式(B)の1つの化合物によって誘発された銅の電着のための過電圧、および促進剤MPSの濃度を5倍、即ち10-5モル/lから5×10-5モル/lに増加したことに起因するこの過電圧の減少を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
銅表面上で、平坦な領域と凹部は電気的に平行に配置されている。
【0037】
例えば実施例4の式(B)の化合物および10-5モル/lのMPSを含む電解質は、以下を起こすはずである:
印加された電流密度による、表1の1行目内に示された表面の平坦な領域上への銅の電着のための過電圧。
【0038】
充填の初期に、表1の1行目内に示された表面の凹部における銅の電着のための過電圧、それらの充填の最後には表1の2行目に示された値になる過電圧。
【0039】
電解質が表面上で充分速く流れ、そのため銅イオンの拡散が堆積工程を制限しないのであれば、電流密度は、凹部を含む表面全面にわたって最初は均一である。表1は、実施例4の式(B)の化合物および10-5モル/lのMPSを含有する電解質について、促進剤の表面濃度の段階的な増加のために、過電圧がより低くなる凹部の底を優先して充填している間に、電流分布が変わるはずであることを示す。
【0040】
トレンチ形状のサブミクロン構造において、トレンチの表面は、トレンチの開口部の表面よりも一般に4〜10倍広い。表面上のトレンチによって占められている表面に関しては、表1に示されている電流密度は、充填の初めに4〜10倍にされる。
【0041】
一般に、本発明の化合物による銅電着の抑制は、部分的な抑制であり、その大きさは一般式(B)の化合物およびMPSあるいはSPSタイプの促進剤のそれぞれの濃度によって、ならびに銅電極の電圧によって、および温度によって決定される。
【0042】
より正確には、濃度10-5モル/lのメルカプトプロピルスルホネート(MPS)は、一般式(B)の1つの化合物によって誘発された銅の電着の部分的な抑制を停止しないか、あるいはほんのわずかに停止し、一方で、5×10-5モル/l〜10-4モル/lの濃度のMPSは、この抑制のほとんどを停止する。これは出願人によって、70〜75℃で、0から−140mV/Ag/AgClまでの広い電極電圧範囲にわたって観察された。MPSあるいはSPSタイプの促進剤の特定の濃度、例えば10-5モル/l、および一般式(B)の1つの化合物の特定の濃度、例えば5×10-7モル/lから2.5×10-6モル/lの範囲で、表面の平坦領域上で、70〜75℃で0〜−140mV/Ag/AgClの範囲にわたって電極電圧を変える電流を変化させることによって、堆積速度を選択でき、電解質に対する銅カソード電圧は、強度がより高いので、すべてよりマイナスである。
【0043】
表面のサブミクロンの凹部内で、添加剤濃度の増加は、0から−140mV/Ag/AgClの範囲のいかなる銅カソード電圧であっても、抑制の段階的停止および充填によって加速する堆積速度に帰着するはずである。
【0044】
メルカプトプロピルスルホネート(MPS)あるいはスルホプロピルジスルフィド(SPS)タイプと組み合わせられる一般式(B)の化合物は、従って、充填の間、抑制の段階的停止によって、サブミクロンの凹部の底から開始する、促進された充填の工程を誘発するのに必要とされる、条件付きの抑制剤特性を有する。
一般式(B)の化合物およびメルカプトプロピルスルホネート(MPS)あるいはスルホプロピルジスルフィド(SPS)タイプの促進剤を実行する銅電着浴は、従って、平滑且つ光沢のある銅堆積物を得るために、あるいはマイクロエレクトロニクスの配線の製造におけるサブミクロンの凹部を充填するために必要な特性を有する。
【0045】
本発明の他の対象は、銅表面を即座に濡らすことができる電着浴を提供することである。
【0046】
出願人は、一般式(B)の化合物が電解質−大気界面に部分的に局在しており、且つ、電解質内への銅電極の液浸の間に、銅表面の大部分を即座に被覆することを示した。
【0047】
一定電極電圧での銅の電着の間、電解質中への一般式(B)の化合物の注入は、この電着の段階的抑制に帰着する。電極上の一般式(B)の抑制剤の到達に起因する、時間に対する電流の減少は、電解質のバルクからの拡散によって、この抑制剤が電極表面に到着する速度を正確に測定することを可能にする。例えば、一般式(B)の化合物、p=6;n=8;R=NC−;AH=H2SO4を注入したとき、電流の50%減を観察するのに必要な時間は、濃度6.25×10-7モル/lに対応する、注入されたこの抑制剤の量に対して、室温で約18秒であり、一方で、濃度1.25×10-6モル/lに対応する量に対して約8秒であり、濃度5×10-6モル/lに対応する量に対して約2秒である。
【0048】
短い補助銅線およびポテンシオスタットを用いて、銅電極の電圧を、電解質に接触した一番初めの瞬間の参照電極に対する印加電圧にすることができる。電解質への銅電極液浸の間、1/200秒毎に電流を記録することにより、出願人は、例えば、電解質が一般式(B)の抑制剤の1つを5×10-6モル/lの濃度で含有しているとき、電流は、わずか0.02秒後に、既にこの抑制剤がないときの値の61%以下であることを見出した。この比は、0.05秒後に55%、0.1秒後に52%、そしてその後20秒後に18%まで下がった。
【0049】
銅イオンの減少速度を半分にできる量の一般式(B)の抑制剤が、従って、電解質内への液浸の間、銅表面上に即座に存在し、その後、この抑制剤の追加量がゆっくりと拡散する。銅表面に即座に存在するこの量の抑制剤は、電解質−大気界面に既に必ず存在し、その理由は、電解質のバルクからの拡散がおよそ2秒必要であるためである。
【0050】
この結果は、一般式(B)の化合物が両親媒性オリゴマーであるという事実によって説明され、この理由が界面活性特性を与える、即ちそれらの化合物はそれらの溶液の空気との界面で、電解質内での濃度と比較して過剰な濃度で存在している。
【0051】
一般式(B)の1つの化合物を含有する水溶液への銅電極液浸の間に、初期の電解質−大気界面は、電解質中での濃度と比較して過剰な濃度のこの化合物を有し、即座に電解質−銅界面に変換され、その結果、最初に電解質−大気界面に存在した一般式(B)の化合物とほぼ同様の濃度を有する。
【0052】
出願人による、電解質−大気界面から電解質−銅界面への即座の変換過程の発見は、一般式(B)の化合物を含有する電解質によって銅表面を即座に濡らすのに好ましい性質である。
【0053】
一般式(B)の化合物の両親媒性特性は、両親媒性化合物の界面活性特性を記述する公知の一般的な法則、特に疎水鎖(CH2p長を変更することによって、あるいは電解質中に存在する鉱物塩および酸の濃度、ならびに温度を操作することによって変更することができる。
【0054】
従って、銅電着浴内での抑制剤としての一般式(B)の化合物の使用は、即座に特定且つ調整可能な量のそれらの抑制剤を、電解質にこの表面が浸されるとすぐに銅表面に送り出すことを可能にする。それらの抑制剤の銅表面への即座の初期の投入分は、電解質内のそれらの抑制剤の濃度、充填される凹部の形状、および温度によって、数秒から数十秒かかるそれらの拡散によって制御された追加量の供給に続く。
【0055】
本発明は、3番目の対象として、一般式(B)の少なくとも1つの添加剤を含有する浴を使用することを特徴とする銅電着方法を有する。
【0056】
一般式(B)の分子を適用する浴からの銅の電着は、カソードにおいて電流密度範囲0.1〜100mA/cm2、好ましくは1〜60mA/cm2の範囲の直流電流の印加によって行われ得る。
【0057】
出願人によって好まれる1つの実施態様において、予め電解質に浸されたアノードと、まだ電解質に接していないカソードの間に、電圧を最初に印加する。その後、カソードと電解質が接触する。
【0058】
本発明は、4番目の対象として、それは一般式(B)の少なくとも1つの添加剤を含有する浴を用いて得られることを特徴とする銅の電着物を有する。
例えば、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)スルフェートを含有する浴から得られる銅の電着物は、平滑且つ光沢のある外観およびくすんだバラ色を有している。
【0059】
以下の実施例で本発明を説明する。
【0060】
実施例1
ポリ(ヘキサメチレン−ビグアニド)スルフェート溶液の製造
20質量%の、主にポリマー分子当たり8つのビグアニド基を含む、ポリ(ヘキサメチレン−ビグアニド)塩酸塩の市販溶液100gをフラスコに入れ、真空度20mm Hgの下で、50℃で濃縮する。得られる残滓を無水エタノールに溶かし、その後、エタノールを真空中で蒸発させる。この作業を2回繰り返す。前記残滓を、その後、100mlの無水メタノールに溶かし、得られる溶液を窒素で脱気する。25質量%の、予め窒素で脱気された無水メタノール中のナトリウムメチレート溶液20gを、その後、窒素雰囲気下で攪拌しながら、このメタノール溶液に滴加した。塩化ナトリウムの微細な懸濁物を有する、得られた溶液をその後4℃で一晩おき、そしてその後、遠心分離して塩化ナトリウムを除去する。滴定は、得られたメタノール溶液が0.6モル/lの強塩基を含有していることを示し、それは遊離塩基として式(B)(p=6;n=8)の化合物の0.066モル/lに相当する。
【0061】
0.17mlの前記のメタノール溶液を、0.005モル/lの水性硫酸10mlに添加した。およそ1グラムのこの溶液を真空中で蒸発させてメタノールを除去し、その後、前記溶液の体積を蒸留水で10mlに調整した。
【0062】
この溶液は、0.001モル/lの式(B)(p=6;n=8;x=4.5;AH=H2SO4)のポリ(ヘキサメチレン−ビグアニド)スルフェートを含有し、以下の実施例内でIn1の省略形で示される。
【0063】
実施例2
In1によって誘発された銅電着の過電圧
容量20mlのタンクで構成され、磁気攪拌機、Ag/AgCl参照電極、対向電極としての白金格子、テフロンで包まれた切り口直径3.1mmの銅線を装備した、電気化学測定用セルを使用する。測定を行う前に、銅電着浴を窒素で脱気する。
【0064】
セルをポテンシオスタットに接続する。銅電極電圧を、経時的に、走査速度1.66mV/秒でマイナス電圧に向かって線形的に走査し、ミリアンペアで測定された得られる電流を記録する。
【0065】
図1は、以下の3つの浴で得られた電流−電圧曲線を示す:
a05d:0.25モル/lのSO4Cu溶液;pHをH2SO4で0.5に調整
m05:同a05d+In1:1.25×10-6モル/l
d05:同a05d+In1:5×10-6モル/l
温度:室温
実施例1の化合物In1によって誘発された銅電着の過電圧は、In1濃度1.25×10-6モル/lで約80mVであり、In1濃度5×10-6モル/lで約140mVである。
【0066】
実施例3
様々なpHでのポリ(ヘキサメチレン−ビグアニド)塩酸塩に誘発された銅電着過電圧
ポリマー分子当たり主に8つのビグアニド基を含むポリ(ヘキサメチレン−ビグアニド)塩酸塩の20%の市販溶液の希釈によって、式(B)(p=6;n=8;x=9;AH=HCl)のポリ(ヘキサメチレン−ビグアニド)塩酸塩の0.001モル/l溶液を作製し、以降、In2の省略形で示す。
【0067】
実施例2に記載された試験手順を、下記の4つの浴を用いて繰り返す:
E3:0.25モル/lのSO4Cu溶液; In2:5×10-6モル/l;pHをH2SO4で3に調整
E2:同E3であるが、しかし、pHをH2SO4で2に調整
E1:同E3であるが、しかし、pHをH2SO4で1に調整
E05:同E3であるが、しかし、pHをH2SO4で0.5に調整
温度:室温
図2は、得られた電流−電圧曲線を示す図である。
【0068】
濃度5×10-6モル/lの化合物In2によって誘発された銅電着過電圧は、約200mVである。それは、pH=3からpH=0でpHにほとんど依存していない。
【0069】
化合物In1およびIn2によって誘発された銅電着過電圧は、塩化物イオン存在中でポリエチレングリコールによって公知のように誘発された過電圧に匹敵する。比較のために、実施例2の試験手順を、下記の2つの浴で繰り返した:
og05:0.25モル/lのSO4Cu溶液+PEG 3400:88×10-6モル/l+Cl-:10-3モル/l;pH=0.5
og05 mps:同og05+ナトリウムメルカプトプロピルスルホネート:10-5モル/l
相応する電流−電圧曲線を図3に示す。
【0070】
実施例4
メルカプトプロピルスルホネート(MPS)によるIn1の抑制効果の段階的停止
実施例1の化合物In1による銅電着の抑制は、メルカプトプロピルスルホネート(MPS)の濃度を増加することによって、実施例2の手順を以下の3つの浴で繰り返したときに示されるように停止できる:
温度:室温
m 05:0.25モル/lのSO4Cu溶液; In1:1.25×10-6モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
o05:同m05+MPS:10-5モル/l
n05:同m05+MPS:5×10-5モル/l
相応する電流−電圧曲線を図4に示す。
【0071】
濃度10-5モル/lのMPSが、1.25×10-6モル/lのIn1に誘発された銅電着過電圧を増加し、一方で、濃度5×10-5モル/lのMPSはこの抑制を停止した。
【0072】
実施例5
70〜75℃での、メルカプトプロピルスルホネート(MPS)によるIn1の抑制効果の段階的停止
下記の浴を用いて、実施例4を繰り返した:
温度:71℃
tx05:0.25モル/lのSO4Cu溶液;pHをH2SO4で0.5に調整
tx05b:同tx05+In1:5×10-6モル/l
tx05d:同tx05b+MPS:5×10-5モル/l
tx05e:同tx05b+MPS:10-4モル/l
得られた電流−電圧曲線を図5に示す。
【0073】
5×10-5モル/lのMPSの添加は、In1によって誘発される抑制を実際上完全に停止できる。前記の実験を、下記の3つの浴を用い、2倍の濃度の10-5モル/lのIn1を用いて繰り返した:
温度:74℃
tb05:0.25モル/lのSO4Cu溶液; In1:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
tb05e:同tb05+MPS:5×10-5モル/l
tb05g:同tb05+MPS:10-4モル/l
得られた電流−電圧曲線を図6に表し、濃度5×10-5モル/lのMPSは、74℃で、In1によって誘発される抑制を停止できることを示す。
【0074】
実施例6
定電位電解法による70〜75℃における測定でのメルカプトプロピルスルホネート(MPS)存在下でのIn1の抑制効果
実施例1のセルを用いて、銅の電着に相応する電流を、印加され且つ一定の銅電極電圧の、参照電極に対する時間の関数として記録する。前記の溶液を、磁気棒を用いて攪拌する。70〜80秒後、抑制剤In1を浴に添加し、得られる抑制を記録する。
【0075】
温度:74℃
印加電圧:E=−40mV/Ag/AgCl
浴組成:
cata 14:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
70秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
cata 10:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
80秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
相応する電流−時間曲線を図7に示す。横軸は測定した時間を秒で表し、浴内へ銅電極を浸した、約2秒後に設定した電圧設定から開始する。縦軸は電流をミリアンペアで表す。
【0076】
74℃および銅電極電圧E=−40mV/Ag/AgClで、濃度10-5モル/lのMPSは、濃度6.25×10-7モル/lのIn1によって誘発される抑制を阻止しなかった一方で、濃度5×10-5モル/lのMPSは、効果的に、濃度6.25×10-7モル/lのIn1によって誘発される抑制を阻止した。
【0077】
実施例7
In1およびMPS濃度の関数としてのIn1の抑制効果
実施例6の条件を、以下の2つの浴に適用した:
温度:74℃
印加電圧:E=−40mV/Ag/AgCl
cata 11:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:5×10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
70秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
cata 23:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-4モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
70秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
実施例6および7に相応する曲線を、図8にまとめる。
【0078】
74℃および銅電極電圧E=−40mV/Ag/AgClで、濃度5×10-5モル/lのMPSは、濃度1.25×10-6モル/lのIn1によって誘発される抑制を停止しなかったが、6.25×10-7モル/lのIn1によって誘発される抑制を停止した。濃度10-4モル/lのMPSは、部分的にだけ、1.25×10-6モル/lのIn1によって誘発される抑制を停止した。
【0079】
実施例8
抑制剤In1および促進剤MPSの間の競合における銅カソード電圧の影響
実施例6および7の実験を、E=−40mV/Ag/AgClの代わりにE=−140mV/Ag/AgClのカソード電圧で再現した。
【0080】
温度:74℃
cata 13:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
55秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
cata 12:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:5×10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
60秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
cata 19:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
70秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
cata 20:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-4モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
80秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
cata 21:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
75秒時点で:2.5×10-6モル/lのIn1を注入
cata 22:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-4モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
75秒時点で:2.5×10-6モル/lのIn1を注入
これら6つの実験に相応する曲線を図9および10に示す。
【0081】
74℃および銅電極電圧E=−140mV/Ag/AgClで、
濃度10-5モル/lのMPSは、6.25×10-7モル/lのIn1によって誘発される抑制を停止しなかった一方で、濃度5×10-5モル/lのMPSは、この抑制を完全に停止した(cata13/cata12)。
【0082】
濃度10-5モル/lのMPSは、1.25×10-6モル/lのIn1によって誘発される抑制を停止しなかった一方で、E=−40mV/Ag/AgClで観察されたもの(cata23)とは反対に、濃度10-4モル/lのMPSは、この抑制を完全に停止した(cata19/cata20)。
【0083】
しかしながら、濃度10-4モル/lのMPSは、部分的にだけ、2.5×10-6モル/lのIn1によって誘発される抑制を停止した(cata21/cata22)。
【0084】
MPSによる抑制剤In1の置き換えは、それゆえにカソード電圧E=−40mV/Ag/AgClの時よりも、カソード電圧E=−140mVのときのほうがより容易である。
【0085】
実施例9
抑制剤In1と促進剤MPSの間の競合における銅カソード電圧の影響
銅カソード電圧の影響を、異なる電圧の2つの同一の浴によって得られる抑制を記録することで説明する。
【0086】
温度:70℃
cata 11:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:5×10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整 カソード電圧:E=−40mV/Ag/AgCl
70秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
cata 8:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:5×10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整 カソード電圧:E=−80mV/Ag/AgCl
70秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
相応する曲線を図11に示す。
【0087】
抑制剤In1の抑制効果は、両方の電圧で観察されるが、しかし、前記抑制はカソード電圧E=−40mV/Ag/AgClのときよりも、E=−80mVの銅カソード電圧のときのほうが小さかった。
【0088】
実施例10
In1による銅堆積の抑制に続く、70〜75℃での、促進剤MPSの濃度増加による、この抑制の停止
10-5モル/lのMPSを含有する浴から開始し、抑制をIn1の添加によって誘発し、その後、追加量のMPSを添加することで停止する。
【0089】
温度:74℃
印加電圧:E=−40mV/Ag/AgCl
cata 31:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
40秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
95秒時点で:9×10-5モル/lのMPSを注入
cata 32:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
40秒時点で:1.25×10-6モル/lのIn1を注入
95秒時点で:9×10-5モル/lのMPSを注入
相応する時間の関数としての電流曲線を図12に示す。濃度10-5モル/lのMPSは、74℃で、濃度6.25×10-7モル/lのIn1あるいは1.25×10-6モル/lのIn1によって誘発された抑止を防止しなかった一方、合計濃度10-4モル/lのMPSは74℃で、濃度6.25×10-7モル/lのIn1あるいは1.25×10-6モル/lのIn1によって誘発された抑止を効率的に停止した。
【0090】
実施例11
In1による銅堆積の抑制に続く、70〜75℃で、促進剤MPSの濃度増加によるこの抑制の停止。希釈硫酸銅溶液。
【0091】
2つの異なる印加電圧で、0.1モル/lの硫酸銅を含む溶液を用いて、実施例10の実験を繰り返した:
温度:74℃
cata 36:0.1モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整 電極電圧E=0V/Ag/AgCl
60秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
110秒時点で:9×10-5モル/lのMPSを注入
cata 40:0.1モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整 電極電圧E=−0.40V/Ag/AgCl
20秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
70秒時点で:9×10-5モル/lのMPSを注入
相応する時間の関数としての電流曲線を図13に示す。実施例10の結論を、0.1モル/lの硫酸銅を含む溶液にも適用する。
【0092】
実施例12
In1を含有する浴中への電極液浸の定電位電解の追跡調査および堆積の間にIn1を添加する場合との比較
In1の効果を、それが液浸の間に存在するか、あるいは銅堆積の間に添加されたかによって比較する。
【0093】
制御された電圧での電極の液浸:
(cata41)銅電極が、電解質との最初の接触で印加された電圧であるために、小さく細かい銅線を、液浸しない電極の部分に取り付ける。小さい銅線を、その後電解質に浸し、その後、電解質に対してE=−40mV/Ag/AgClの電圧を小さい銅線に印加するために、ポテンシオスタットを開始する。その後、銅電極を浸し、最初の接触のE=−40mV/Ag/AgClの電圧に設置し、そして得られた電流を1/200秒毎に1点の速度で、時間の関数として記録する。
【0094】
温度:71℃
印加電圧:E=−40mV/Ag/AgCl
cata 30:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l;pHをH2SO4で0.5に調整
20秒時点で:6.25×10-7モル/lのIn1を注入
95秒時点で:9×10-5モル/lのMPSを注入
cata 41:0.25モル/lのSO4Cu溶液; MPS:10-5モル/l; In1:6.25×10-7モル/l pHをH2SO4で0.5に調整
130秒時点で:9×10-5モル/lのMPSを注入
相応する曲線を図14に示す。
【0095】
20秒後、In1は、10-5モル/lのMPSを含有する浴中で、導入の方式がどんなものであろうとも、同一の抑制を誘発し、そしてこの抑制は、追加量のMPSによって同様に停止する。
【0096】
In1を含む浴中への液浸の最初の瞬間の初期電流が、In1を含まない浴中への液浸中に観察された電流のたったの約半分であることが観察される。最初の4〜5秒間の、係数1.8をかけられた電流増加は、In1よりも速いMPSの電極表面への拡散に起因すると解釈される。これに続いて、15秒後に、定電流に到達するまで減少し、それは電極表面でのMPSとIn1の間の均衡に起因する。
【0097】
実施例13
制御された電圧での銅電極の液浸の間のIn1による抑制速度論
実施例12に記載された浴中への電極液浸の定電位電解の追跡調査手順を用いる。
【0098】
温度:室温
印加電圧(小さい線、その後電極):E=−100mV/Ag/AgCl
1/200秒毎に1点の速度で、時間の関数として得られた電流を記録。
【0099】
電解質:
a05b:0.25モル/lのSO4Cu溶液;pHをH2SO4で0.5に調整
d05d:同a05b+5×10-6モル/lのIn1
d05f2:同a05b+10-5モル/lのIn1
20秒の記録に相応するI(t)曲線を図15に示す。
【0100】
液浸に続く1秒目の間のI(t)曲線を図16に示す。
【0101】
下の表2は、In1存在下での液浸の間に観察された電流:a05dあるいはf05f2、およびIn1不在下で観察された電流:a05b間の比を提供する。
【0102】
【表2】

【0103】
図16中の約0.2秒間の初期の電流減少は、Cu2+濃度勾配の確立に対応する。上記の表2および図15および16は、液浸後0.05秒の初期の抑制が、濃度5×10-6モル/lおよび10-5モル/lのIn1に対して、それぞれ45%および60%であることを示す。その後、次の20秒間、抑制はゆっくりと増加した。
【0104】
実施例14
浴組成物内のIn2を、濃度10-4モル/lのN,Nジメチルビグアニド塩酸塩で置き換え、実施例2の条件を適用する。銅電着の過電圧は、pH=3、2,1および0.5の測定された全てのpHで、抑制剤のない同一の浴と比較して、顕著に変更しなかった。濃度2×10-4モル/lのN,Nジメチルビグアニド塩酸塩を含有する浴で、同一の結論に達した。
【0105】
実施例15
In1を含有する浴からの銅電着
2つの同一の銅版を、カソードおよびアノードとして用い、それぞれの板面は1.45cm2の面積を有している。0.5モル/lの硫酸銅および1モル/lの硫酸を含む電解質の中に、濃度4.8×10-6モル/lでIn1を添加し、30mAの電気分解電流を室温で15分間印加する。得られた銅の電着物が、平滑で光沢があり、くすんだバラ色を有していることを顕微鏡で観察した。
【0106】
実施例16
2.1×10-5モル/lのナトリウム3−メルカプトプロピルスルホネートを電解質に添加して、実施例13に記載された実験を繰り返す。得られた銅堆積物が、平滑で、半ば光沢があり、くすんだバラ色をしていることを顕微鏡で観察した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施例2で得られた電流−電圧曲線を表す図である。
【図2】実施例3で得られた電流−電圧曲線を表す図である。
【図3】実施例3で得られた電流−電圧曲線を表す図である。
【図4】実施例4で得られた電流−電圧曲線を表す図である。
【図5】実施例5で得られた電流−電圧曲線を表す図である。
【図6】実施例5で得られた電流−電圧曲線を表す図である。
【図7】実施例6で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図8】実施例6および7で得られた曲線をまとめた図である。
【図9】実施例8で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図10】実施例8で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図11】実施例9で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図12】実施例10で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図13】実施例11で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図14】実施例12で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図15】実施例13で得られた電流−時間曲線を表す図である。
【図16】実施例13で得られた電流−時間曲線を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅の電着の過電圧を増加する手段として、有効量の一般式(B)
【化1】

[式中、
pは、2から12の間に含まれる整数であり、
nは、2から100の間に含まれる整数であり、
Rは、NC−あるいはH2H−C(:O)−を表し、
AHは、強酸を表し、
xは、2n+1である]
を有するポリ(アルキレン−ビグアニド)塩を含有することを特徴とする、銅を含むカソード上への銅の電着用酸性浴。
【請求項2】
ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩の式(B)において、
pは、6であり、
nは、6から20の間に含まれ、
Rは、NC−を表すことを特徴とする、請求項1に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着用酸性浴。
【請求項3】
式(B)において、AHが硫酸を表すことを特徴とする、請求項1あるいは2のいずれか1項に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着用酸性浴。
【請求項4】
ポリ(アルキレン−ビグアニド)塩濃度が、1リットルあたり5×10-7モルから、1リットルあたり10-5モルの間に含まれることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着用酸性浴。
【請求項5】
メルカプト−アルキルスルホン酸およびジアルキルジスルフィドジスルホン酸、あるいはそれらの塩の中から選択される銅堆積の促進剤を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着用酸性浴。
【請求項6】
式(B)において、AHが硫酸を表し、浴中に存在する前記酸が硫酸であり、その銅の塩が硫酸第二銅であり、且つ浴のpHが2.5より低いことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着用酸性浴。
【請求項7】
銅の堆積物が、請求項1から6までのいずれか一項による電解浴から開始して得られることを特徴とする、銅を含むカソード上への銅の電着方法。
【請求項8】
カソードが、サブミクロンの凹部を含むことを特徴とする、請求項7に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着方法。
【請求項9】
カソードが電解浴に接触する前に、アノードとカソードの間に電圧を印加することを特徴とする、請求項7あるいは8のいずれか1項に記載の、銅を含むカソード上への銅の電着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−533548(P2009−533548A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503610(P2009−503610)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000559
【国際公開番号】WO2007/118985
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508300437)テクノロジーズ モレキュレール (テクモ) (1)
【氏名又は名称原語表記】TECHNOLOGIES MOLECULAIRES (TECMO)
【住所又は居所原語表記】68, rue Massena, F−69006 Lyon, France
【Fターム(参考)】