説明

表面保護シート

【課題】被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が抑えられた表面保護シートを提供する。
【解決手段】本発明の表面保護シートは、基材層と粘着剤層とを備える表面保護シートであって、反射防止膜を有する透明基板の可視光線透過率T(%)と、該透明基板の片側に該表面保護シートを貼り付けて160℃で1時間放置した後に23℃の温度環境下において該表面保護シートを剥離した後の該透明基板の可視光線透過率T(%)との差ΔT(%)(ΔT=T−T)とが、ΔT≦1.8の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護シートに関する。本発明の表面保護シートは、金属板、塗装板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板等の部材;偏光シート、液晶パネル等の光学部材;電子部材;などを運搬、加工または養生する際等に、それら部材の表面に貼り付けて該表面を保護する用途等に用いられる。特に、金属板、樹脂板、ガラス板などの表面が親水性塗膜や表面処理により親水化された親水性部材や、反射防止をさせたい波長の1/4となる膜厚が形成された反射防止機能付き基板やナノレベルの凹凸構造による反射防止機能付き基板などの低汚染が求められる表面保護シートとして有用である。
【背景技術】
【0002】
塗装鋼板などの塗装板には、表面が平滑なものから表面が粗面のものまで様々なものが存在し、その表面を運搬時、加工時の傷付き等から保護するために、該表面に表面保護シートを貼り付けることが一般的に行われている。表面保護シートは、通常、基材層の片側に粘着剤層が設けられている。
【0003】
表面保護シートには、良好な粘着性、粘着力の安定性と同様に、剥離のし易さ、表面保護シートを剥離した後に被着体に残留する粘着剤による汚染のないこと等が要求される。例えば、特許文献1には、粘着剤による汚染を低減した表面保護シートが報告されている。
【0004】
近年、シリカ等の無機物質を主成分としたナノメートルサイズの微粒子が分散した塗料を用いて、様々な基板上に塗膜を形成し、入射光の低反射化や高透過化を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献2)。該塗膜は、非常に微細な凹凸を持つため、傷つき、破損しやすいという欠点がある。そこで、該塗膜を有する基板の運搬、加工時には表面保護シートが用いられる。しかしながら、上記塗膜を有する基板に表面保護シートを用いると、剥離後に基板に残留した粘着剤による汚染が起こり、該基板の反射率および透過率がともに低下し、反射防止膜により付与される特性が損なわれる場合がある。また、用途によっては、組立工程において、150℃以上の加熱工程が存在する場合がある。このような加熱工程を経る場合には、特許文献1に開示された表面保護シートを用いても粘着剤が残留することによる汚染が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−36448号公報
【特許文献2】国際公開第2008/041681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が抑えられた表面保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面保護シートは、
基材層と粘着剤層とを備える表面保護シートであって、
反射防止膜を有する透明基板の可視光線透過率T(%)と、該透明基板の片側に該表面保護シートを貼り付けて160℃で1時間放置した後に23℃の温度環境下において該表面保護シートを剥離した後の該透明基板の可視光線透過率T(%)との差ΔT(%)(ΔT=T−T)とが、
ΔT≦1.8の関係を満たす。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層を構成する粘着剤に含まれる主成分が、ポリマーAが架橋されたポリマーPである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記ポリマーAが、(メタ)アクリレートモノマーを主成分とするモノマー組成物を重合して得られるアクリル系ポリマーである。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記表面保護シートの引張弾性率をE(GPa)としたときに、ΔT/E1/10≦2.0の関係を満たす。
【0011】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護シートは、低汚染が要求される基板の表面の保護に用いる。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護シートは、反射防止膜を有する基板の保護に用いる。
【0013】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護シートは、太陽電池用カバーガラスの表面の保護に用いる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施形態による表面保護シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪A.表面保護シート≫
本発明の表面保護シートは、基材層と粘着剤層とを備える。図1は、本発明の好ましい実施形態による表面保護シートの概略断面図である。表面保護シート10は、基材層1と粘着剤層2を備える。本発明の表面保護シートは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。
【0017】
基材層1の粘着剤層2を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば、基材層に、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミン、長鎖アルキル系添加剤等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの任意の適切な剥離剤からなるコート層を設けたりすることができる。また、基材とは別に、離型性を有する剥離ライナーを貼り合わせても構わない。
【0018】
本発明の表面保護シートの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。傷付き防止および粘着力などの観点から、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは15〜250μmであり、さらに好ましくは20〜200μmであり、特に好ましくは25〜150μmである。
【0019】
本発明の表面保護シートは、反射防止膜を有する透明基板の可視光線透過率T(%)と、該透明基板の片側に該表面保護シートを貼り付けて160℃で1時間放置した後に23℃の温度環境下において該表面保護シートを剥離した後の該透明基板の可視光線透過率T(%)との差ΔT(%)(ΔT=T−T)が、ΔT≦1.8の関係を満たす。このような表面保護シートを用いることにより、反射防止膜を有する基板へ貼り付けた場合であっても、粘着剤が残留することによる汚染を抑えることができる。本発明の表面保護シートは、好ましくは、ΔT≦1.6の関係を満たし、より好ましくは、ΔT≦1.4の関係を満たす。
【0020】
本発明の表面保護シートは、好ましくは、該表面保護シートの引張弾性率E(GPa)と、反射防止膜を有する透明基板の可視光線透過率T(%)と、該透明基板の片側に該表面保護シートを貼り付けて160℃で1時間放置した後に23℃の温度環境下において該表面保護シートを剥離した後の該透明基板の可視光線透過率T(%)との差ΔT(%)(ΔT=T−T)とが、ΔT/E1/10≦2.0の関係を満たす。このような表面保護シートを用いることにより、反射防止膜を有する基板へ貼り付けた場合であっても、粘着剤が残留することによる汚染をより一層抑えることができる。本発明の表面保護シートは、好ましくは、ΔT/E1/10≦1.7の関係を満たし、より好ましくは、ΔT/E1/10≦1.5の関係を満たす。
【0021】
本発明の表面保護シートの引張弾性率E(GPa)は、特に制限はなく、好ましくは、表面保護シートがΔT/E1/10≦2.0の関係を満たすものであればよい。好ましくは、表面保護シートの引張弾性率は0.5GPa以上であり、より好ましくは0.5GPa〜5.0GPaである。本発明の表面保護シートの引張弾性率が上記の範囲内であれば、表面保護シートの粘着剤層と被着体(特に、非常に微細な凹凸を有する反射防止膜を有する被着体)との接触面積を小さくすることができ、粘着剤の残留による被着体の汚染をより抑えることができる。
【0022】
本発明の表面保護シートの反射防止膜を有する透明基板の可視光線透過率T(%)と、該透明基板の片側に該表面保護シートを貼り付けて160℃で1時間放置した後に23℃の温度環境下において該表面保護シートを剥離した後の該透明基板の可視光線透過率T(%)との差ΔT(%)(ΔT=T−T)は、特に制限はなく、ΔT≦1.8の関係を満たすものであればよい。ΔT(%)は、好ましくは0≦ΔT≦1.8であり、より好ましくは0≦ΔT≦1.6であり、さらに好ましくは0≦ΔT≦1.4である。ΔT(%)が上記の範囲であれば、粘着剤の残留による汚染が抑えられており、反射防止膜の機能を十分に維持することができる。
【0023】
<A−1.基材層>
基材層の厚みとしては、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。基材層の厚みは、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは10〜250μmであり、さらに好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜150μmである。
【0024】
基材層は、単層でも良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層は、延伸されたものであっても良い。
【0025】
基材層の材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。基材層は、1種の材料から構成されていても良いし、2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていても良い。
【0026】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体;などが挙げられる。
【0027】
基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材層に含有され得る添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、基材層の材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤のいくつかを含有することが好ましい。耐候性向上等の観点から、添加剤として特に好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤としては、任意の適切な酸化防止剤を採用し得る。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、基材層のベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは1重量部以下であり、より好ましくは0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0029】
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を採用し得る。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0030】
光安定剤としては、任意の適切な光安定剤を採用し得る。このような光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。光安定剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0031】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を採用し得る。このような充填剤としては、例えば、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。充填剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0032】
さらに、添加剤としては、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系、低分子量系および高分子量系帯電防止剤も好ましく挙げられる。特に、汚染、粘着性維持の観点から、高分子量系帯電防止剤やカーボンが好ましい。
【0033】
<A−2.粘着剤層>
粘着剤層の厚みは、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.5〜50μmであり、さらに好ましくは1.0〜30μmであり、特に好ましくは1.0〜20μmである。
【0034】
粘着剤層は粘着剤により構成される。粘着剤は1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。粘着剤は、好ましくはポリマーAが架橋されたポリマーPを主成分とする。具体的には、粘着剤中のポリマーPの含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0035】
ポリマーAの重量平均分子量Mw(標準ポリスチレン換算)は、好ましくは500000以上であり、より好ましくは520000〜2000000であり、さらに好ましくは550000〜1500000である。ポリマーAの重量平均分子量Mwが上記範囲内にあれば、粘着剤の残留による被着体の汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。
【0036】
ポリマーAの分散度Mw/Mnは、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは2.0〜7.0であり、さらに好ましくは3.0〜5.0である。ポリマーAの分散度Mw/Mnが上記範囲内にあれば、粘着剤の残留による被着体の汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。
【0037】
ポリマーPの酢酸エチルへの不溶分は、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上であり、さらに好ましくは97重量%以上である。ポリマーPの酢酸エチルへの不溶分が上記範囲内にあれば、粘着剤の残留による被着体の汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。
【0038】
本発明の表面保護シートにおいては、塗装板表面のセルフクリーニング性や反射防止機能を有する基板の反射率を損なわない表面保護シートを提供することを目的として、ポリマーAの重量平均分子量Mwが500000以上であり、ポリマーAの分散度Mw/Mnが8.0以下であり、ポリマーPの酢酸エチルへの不溶分が90重量%以上であることが特に好ましい。
【0039】
ポリマーPの酢酸エチルへの可溶分のGPC測定における、重量平均分子量Mwが2500以下の面積割合は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。ポリマーPの酢酸エチルへの可溶分のGPC測定における、重量平均分子量Mwが2500を超えるものは、被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が起こり、例えば、反射防止膜を有する基板に貼付けた場合には、反射防止膜の特性を損なうおそれがある。
【0040】
粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な粘着剤を採用し得る。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤として、特に好ましくは、アクリル系粘着剤である。
【0041】
アクリル系粘着剤に含まれる主成分としてのポリマーPの架橋前のポリマーAとしては、(メタ)アクリレートモノマーを主成分とするモノマー組成物を重合して得られるアクリル系ポリマーが好ましい。このようなアクリル系ポリマーをポリマーAとして採用することによって、粘着剤が残留することによる被着体の汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。なお、「(メタ)アクリレート」なる表現は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0042】
モノマー組成物中の(メタ)アクリレートモノマーの含有割合は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60〜99重量%であり、さらに好ましくは70〜98重量%であり、特に好ましくは80〜97重量%である。モノマー組成物中の(メタ)アクリレートモノマーの含有割合が上記範囲内にあれば、被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。
【0043】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
モノマー組成物中の(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0045】
モノマー組成物中には、架橋を目的とする官能基含有モノマーを含んでいることが好ましい。このような官能基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アジリジン基含有モノマーなどが挙げられる。このような官能基含有モノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」なる表現は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」なる表現は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0046】
モノマー組成物中の官能基含有モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0047】
モノマー組成物中の官能基含有モノマーの含有割合は、好ましくは1〜25重量%であり、より好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。モノマー組成物中の官能基含有モノマーの含有割合が上記範囲内にあれば、被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。
【0048】
モノマー組成物中には、剥離性コントロールを目的とするモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなどが含まれていても良い。このようなモノマーとしては、具体的には、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。モノマー組成物中のこのようなモノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0049】
粘着剤層を構成し得るアクリル系粘着剤のFOXの式におけるガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−80〜0℃であり、より好ましくは−70〜−10℃であり、さらに好ましくは−60〜−20℃である。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にあれば、粘着剤が残留することによる被着体の汚染が抑えられた表面保護シートを提供することができる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、使用するモノマー成分やそれらの組成比を適宜変更することにより調整することができる。
【0050】
ポリマーPはポリマーAを架橋して得られる。すなわち、ポリマーPとしては、例えば、ポリマーAと任意の適切な架橋剤を反応させた架橋ポリマー、ポリマーAに活性エネルギー線(紫外線や電子線など)を照射して架橋反応させた架橋ポリマーなどが挙げられる。
【0051】
ポリマーAを架橋してポリマーPとするために用い得る架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。このような架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、多官能イソシアネート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤などが挙げられる。なお、架橋剤の使用の有無にかかわらず、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射によって架橋構造を構築することも可能である。架橋剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0052】
架橋剤の使用量は、粘着剤の主成分であるポリマーPの架橋前のポリマーA100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは2〜10重量部である。架橋剤の含有割合が上記範囲を外れると、架橋剤自体や粘着剤に含まれる不溶分が汚染の原因となるおそれがある。
【0053】
特に好ましく用いられる架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、多官能イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0054】
エポキシ系架橋剤としては、好ましくは多官能性エポキシ化合物が用いられ、分子中に2個以上のエポキシ基を有する種々の化合物が含まれる。その代表的な例としては、例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフエノールなどが挙げられる。エポキシ系架橋剤の配合部数は、粘着剤ポリマーへの酸導入量やエポキシ系架橋剤の構造にもよるが、一般的には、ポリマーPの架橋前のポリマーA100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部であり、より好ましくは2〜10重量部である。
【0055】
イソシアネート系架橋剤としては、好ましくは多官能イソシアネート化合物が用いられ、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する種々の化合物が含まれる。その代表的な例としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。イソシアネート系架橋剤の配合部数は、粘着物性に影響を及ぼさない程度で配合すればよく、一般的には、ポリマーPの架橋前のポリマーA100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部であり、より好ましくは1〜5重量部が好適である。
【0056】
粘着剤層を構成する粘着剤中には、任意の適切な添加剤を含有し得る。このような添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料、溶剤などが挙げられる。
【0057】
粘着付与剤は、粘着力の向上、特に、粗面被着体への粘着性向上に有効である。粘着付与剤としては、任意の適切な粘着付与剤を採用し得る。このような粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テルぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物などが挙げられる。粘着付与剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0058】
粘着付与剤の含有割合は、粘着剤の主成分であるポリマーP100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは10重量部以下である。粘着付与剤の含有割合が上記範囲を外れると、低温時の粘着性に劣ったり、高温時での糊残りが顕著となったりするおそれがある。
【0059】
粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な方法によって製造し得る。粘着剤層を構成する粘着剤は、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、紫外線(UV)による重合など、ポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法を用いるとともに、任意の適切な架橋方法を採用し、必要に応じて任意の適切な添加剤を用いることによって製造し得る。
【0060】
重合方法としては、高分子量で且つ分散度の低い粘着剤が製造できる点で、溶液重合、乳化重合、縣濁重合、紫外線(UV)による重合が好ましい。例えば、溶液重合としては、モノマー組成物に、重合開始剤および溶剤を加え、必要により任意の適切な添加剤を加えて、溶液重合を行う。
【0061】
重合開始剤としては、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物や過酸化物などが挙げられる。このような重合開始剤としては、具体的には、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−t−ブチルハイドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカンなどが挙げられる。
【0062】
≪B.表面保護シートの製造方法≫
本発明の表面保護シートは、任意の適切な方法により製造することができる。このような製造方法としては、例えば、
(1)粘着剤の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する方法、
(2)それに準じ、セパレータ状に塗布、形成した粘着剤層を移着する方法、
(3)粘着剤層の形成材料を基材上に押出して形成塗布する方法、
(4)基材と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、
(5)基材上に粘着剤層を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともに粘着剤層を二層ラミネートする方法、
(6)粘着剤層とフィルムやラミネート層等の基材形成材とを二層または多層ラミネートする方法、
などの、任意の適切な粘着シートの製造方法に準じて行うことができる。
【0063】
上記塗布の方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【0064】
生産性およびコストの点からは、本発明の表面保護シートの製造方法としては、特に、粘着剤の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する方法が好ましい。
【0065】
≪C.表面保護シートの用途≫
本発明の表面保護シートは、被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染を抑えることができる。このため、本発明の表面保護シートは、任意の適切な用途に用い得るが、例えば、金属板、塗装板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板等の部材;偏光シート、液晶パネル等の光学部材;電子部材;などを運搬、加工または養生する際等に、それら部材の表面に貼り付けて該表面を保護する用途等に好ましく用いることができる。特に、金属板、樹脂板、ガラス板などの表面が親水性塗膜や表面処理により親水化された親水性部材や、反射防止をさせたい波長の1/4となる膜厚が形成された反射防止機能付き基板やナノレベルの凹凸構造による反射防止機能付き基板などの低汚染が求められる表面保護シートとして有用である。より具体的な用途としては、例えば、本発明の表面保護シートは、低汚染が要求される基板の表面の保護や、反射防止膜を有する基板の保護や、太陽電池用カバーガラスの表面の保護に、好適に用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、「部」は「重量部」を意味する。
【0067】
(引張弾性率)
JIS K7161に準拠して以下の条件で測定した。引張弾性率は、規定された2点のひずみε=1およびε=2の間の曲線の線形回帰によって求めた。試験片の幅は10mmで引張り速度は0.3m/min、チャック間距離が50mmの条件で、インストロン型引張試験機(島津製作所製、オートグラフ)を用いて25℃にて測定した。測定は実施例および比較例で得られた表面保護シートからポリエチレンフィルムを剥離した物を用いて行い、測定値は該表面保護シートの厚みの実測値から粘着剤の厚みを差し引いた厚みの値に基づいて、基材の断面積当たりの値に換算して求めた。なお、弾性率は直角に2方向測定し、その値の大きな方をその表面保護シートの引張弾性率とした。
【0068】
(可視光線透過率)
380〜780nmにおける反射防止膜を有するガラスの可視光線透過率を分光光度計(日立製作所社製、型式:U−4100)で測定し、可視光線透過率T(%)を求めた。なお、可視光線透過率はJIS R3106−1998に規定されている板ガラスの透過率に関する試験方法(可視光透過率)に準拠した。
次いで、該ガラスの片側に実施例または比較例で得られた表面保護シートを貼付け、160℃で1時間放置した後、23℃で30分放置して室温に戻し、23℃にて表面保護シートを剥離した後の該ガラスについても同様に可視光線透過率を測定し、可視光線透過率T%を求めた。得られた可視光線透過率の値を用いて可視光線透過率の差ΔT(%)(ΔT=T−T)を算出した。
【0069】
(重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mn)
重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mnの測定は,ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)において行い、HLC−8120(東ソー社製)による内径6.0mm、長さ150mmのカラム(東ソー社製、TSKgel SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000)を直列に接続して使用し、溶離液にテトラヒドロフランを用いて濃度1g/L、流量0.6ml/分、温度40℃、サンプル注入量20μlの条件で行い、検出器にはRI検出器を用いた。また分子量の検量線の作成には,TSK 標準ポリスチレン(東ソー社製)を用いた。
【0070】
(汚染性)
実施例または比較例の表面保護シートを反射防止膜を有するガラスに貼付け、160℃で1時間放置した後、23℃で30分間放置して室温に戻した後、23℃にて表面保護シートを剥離し、目視でガラスへの粘着剤の残留による汚染の有無を確認した。
○:表面保護シートの剥離後に、ガラスへの粘着剤の残留による汚染が認められない。
×:表面保護シートの剥離後に、ガラスへの粘着剤の残留による汚染が認められる。
【0071】
〔製造例1〕:基材1の作製
ポリプロピレン(PP)80部(樹脂密度0.905の結晶性ホモポリプロピレン(HPP)40部、樹脂密度0.900のランダムポリプロピレン(RPP)40部)とポリエチレン(PE)10部(東ソー製、商品名「ペトロセン205」)とエチレンプロピレン共重合体(EPR)10部(三井化学製「タフマーP0180」)をTダイ法にてダイス温度160℃となるように製膜し、厚みが35umの基材1を得た。
【0072】
〔製造例2〕:基材2の作製
ポリエチレン樹脂(東ソー製、ペトロセン183)100部を、インフレーション法にてダイス温度160℃となるように製膜し、厚みが60μmの基材2を得た。
【0073】
〔製造例3〕:基材3の作製
市販のポリエステルフィルム(東レ株式会社製品、ルミラー(登録商標)S−10、厚み38μm)を基材3として用いた。
【0074】
〔製造例4〕:基材4の作製
市販のポリエステルフィルム(東レ株式会社製品、ルミラー(登録商標)S−10、厚み25μm)を基材4として用いた。
【0075】
〔製造例5〕:ポリマーA(1)の作製
冷却管、窒素導入管、温度計、および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル95部、およびアクリル酸5部の混合溶液、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.40部、酢酸エチル300部を入れ、60℃で12時間重合して、ポリマーA(1)の溶液を得た。得られたポリマーA(1)の重量平均分子量Mwは60万、分散度Mw/Mnは4.0であった。
【0076】
〔製造例6〕:ポリマーA(2)の作製
アクリル酸ブチル97部およびアクリル酸3部の混合溶液、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.20部、酢酸エチル200部を使用した以外は、製造例5と同様に行い、ポリマーA(2)の溶液を得た。得られたポリマーA(2)の重量平均分子量Mwは100万、分散度Mw/Mnは3.9であった。
【0077】
〔製造例7〕:ポリマーA(3)の作製
冷却管、窒素導入管、温度計、および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル70部、アクリル酸エチル30部、アクリル酸5部、およびヒドロキシエチルアクリレート1部の混合溶液、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部、酢酸エチル250部を入れ、60℃で6時間重合して、ポリマーA(3)の溶液を得た。得られたポリマーA(3)の重量平均分子量Mwは140万、分散度Mw/Mnは4.9であった。
【0078】
〔製造例8〕:反射防止膜を有するガラス基板(1)の作製
(反射防止膜形成用塗料組成物の作製)
200mLのガラス製容器に、エタノール60g、ZnO微粒子の水分散ゾル(平均一次粒子径:20nm、平均凝集粒子径:40nm、固形分換算濃度:20質量%)30g、テトラエトキシシラン(SiO固形分濃度:29質量%)10gを入れ、アンモニア水溶液を添加してpHを10とし、20℃で6時間撹拌して、コア−シェル粒子の分散液(固形分濃度:6質量%)100gを得た。得られたコア−シェル粒子の分散液100gに、強酸性カチオン交換樹脂(総交換容量:2.0meq/mL以上)を100g加え、1時間撹拌してpHが4となった後、ろ過により強酸性カチオン交換樹脂を除去し、SiOからなる球状中空微粒子の分散液を得た。該分散液を限外ろ過により固形分濃度20質量%まで濃縮した。球状中空微粒子は二次凝集していた。球状中空微粒子の外殻の厚さは5nmであり、かつ平均一次粒子径の1/6であった。球状中空微粒子の平均凝集粒子径は40nm、アスペクト比は1.0であった。
200mLのガラス製容器に、該球状中空微粒子の分散液(固形分濃度:20質量%)2g、繊維状中実微粒子の分散液(日産化学工業社製、IPA−ST−UP、平均凝集粒子径(平均一次粒子径):90nm、アスペクト比:7.0、固形分濃度:15質量%)2g、エタノール90g、ケイ酸オリゴマー溶液(固形分濃度:5質量%)6gを入れ、10分間撹拌して、反射防止膜形成用塗料組成物を得た。
(ガラス基板上への反射防止膜の形成)
上記塗料組成物を、エタノール拭きしたガラス基板(100mm×100mm、厚さ3.5mm)の両面に塗布し、回転数200rpmで60秒間スピンコートして均一化した後、200℃で30分間乾燥し、膜厚100nmの反射防止膜を形成した。このようにして、反射防止膜を有するガラス基板(1)を得た。
【0079】
〔製造例9〕:反射防止膜を有するガラス基板(2)の作製
溶液に分散したガラス基板と異なる屈折率のガラス粒子を、乾燥後の膜厚が約100nmとなるようにガラス基板に塗布した後、200〜250℃で1時間乾燥し、可視光線透過率が92〜95%の、反射防止膜を有するガラス基板(2)を得た。
【0080】
〔実施例1〕
ポリマーA(1)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤8.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)を添加した混合溶液を、片面にコロナ処理が施された基材1に、乾燥後の粘着剤層の厚みが5μmとなるように塗布し、表面保護シートを作製した。また、乾燥時の条件は85℃、5分とした。得られた表面保護シートをポリエチレンフィルムに貼合をし、50℃で3日間放置した。このようにして得られた、ポリマーA(1)が架橋されたポリマーP(1)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(1)を備える表面保護シート(1)の評価結果を表1に示した。
【0081】
〔実施例2〕
ポリマーA(1)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤6.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)を添加した混合溶液を、片面にコロナ処理が施された基材3に、乾燥後の粘着剤層の厚みが5μmとなるように塗布し、表面保護シートを作製した。また、乾燥時の条件は85℃、5分とした。得られた表面保護シートを片面シリコーン処理されたポリエステルフィルムのシリコーン処理面に貼合をし、50℃で3日間放置した。このようにして得られた、ポリマーA(1)が架橋されたポリマーP(2)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(2)を備える表面保護シート(2)の評価結果を表1に示した。
【0082】
〔実施例3〕
ポリマーA(2)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤6.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)を添加した混合溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、表面保護シートを作製した。ポリマーA(2)が架橋されたポリマーP(3)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(3)を備える表面保護シート(3)の評価結果を表1に示した。
【0083】
〔実施例4〕
ポリマーA(2)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤3.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)を添加した混合溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、表面保護シートを作製した。ポリマーA(2)が架橋されたポリマーP(4)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(4)を備える表面保護シート(4)の評価結果を表1に示した。
【0084】
〔実施例5〕
ポリマーA(1)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤8.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)を添加した混合溶液を、片面にコロナ処理が施された基材4に、乾燥後の粘着剤層の厚みが3μmとなるように塗布した以外は実施例2と同様にして、表面保護シートを作製した。ポリマーA(1)が架橋されたポリマーP(1)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(5)を備える表面保護シート(5)の評価結果を表1に示した。
【0085】
〔実施例6〕
ポリマーA(3)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤11.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)とイソシアネート系架橋剤10.0部(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネート L)を添加した混合溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、表面保護シートを作製した。ポリマーA(3)が架橋されたポリマーP(6)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(6)を備える表面保護シート(6)の評価結果を表1に示した。
【0086】
〔比較例1〕
基材として基材2を用いた以外は実施例3と同様にして、表面保護シートを作製した。このようにして得られた、ポリマーA(1)が架橋されたポリマーP(C1)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(C1)を備える表面保護シート(C1)の評価結果を表1に示した。
【0087】
〔比較例2〕
ポリマーA(1)の固形分100部に対してエポキシ系架橋剤1.0部(三菱瓦斯化学社製、TETRAD C)を添加した混合溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、表面保護シートを作製した。このようにして得られた、ポリマーA(1)が架橋されたポリマーP(C2)を主成分とする粘着剤から構成される粘着剤層(C2)を備える表面保護シート(C2)の評価結果を表1に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
表1から明らかなように、本発明の表面保護シートは、被着体に良好に粘着し、かつ、容易に再剥離をすることができ、剥離後の被着体表面に粘着剤が残留することによる汚染が抑えられた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の表面保護シートは、金属板、塗装板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板等の部材;偏光シート、液晶パネル等の光学部材;電子部材;などを運搬、加工または養生する際等に、それら部材の表面に貼り付けて該表面を保護する用途等に用いられる。特に、親水性塗装板などの親水性部材や、反射防止をさせたい波長の1/4となる膜厚が形成された反射防止機能付き基板やナノレベルの凹凸構造による反射防止機能付き基板などの表面保護シートとして有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 基材層
2 粘着剤層
10 表面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層とを備える表面保護シートであって、
反射防止膜を有する透明基板の可視光線透過率T(%)と、該透明基板の片側に該表面保護シートを貼り付けて160℃で1時間放置した後に23℃の温度環境下において該表面保護シートを剥離した後の該透明基板の可視光線透過率T(%)との差ΔT(%)(ΔT=T−T)とが、
ΔT≦1.8の関係を満たす、
表面保護シート。
【請求項2】
前記粘着剤層を構成する粘着剤に含まれる主成分が、ポリマーAが架橋されたポリマーPである、請求項1に記載の表面保護シート。
【請求項3】
前記ポリマーAが、(メタ)アクリレートモノマーを主成分とするモノマー組成物を重合して得られるアクリル系ポリマーである、請求項1または2に記載の表面保護シート。
【請求項4】
前記表面保護シートの引張弾性率をE(GPa)としたときに、ΔT/E1/10≦2.0の関係を満たす、請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項5】
低汚染が要求される基板の表面の保護に用いる、請求項1から4までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項6】
反射防止膜を有する基板の表面の保護に用いる、請求項1から4までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項7】
太陽電池用カバーガラスの表面の保護に用いる、請求項1から4までのいずれかに記載の表面保護シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−131973(P2012−131973A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223823(P2011−223823)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】