説明

表面保護フィルム

【課題】本発明は、汚染防止性とインキの密着性の両特性を同時に満足する表面保護フィルムを提供するものである。
【解決手段】本発明は、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に積層された保護層を備えた表面保護フィルムである。保護層をフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩と、ポリビニルピロリドンの混合体で形成する。基材フィルムの他方の面に粘着層を有するのが好ましい。基材フィルムと粘着層の間に中間層を有するのが好ましい。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは部材の表面に貼着され、部材の表面を保護する。
偏光板用の表面保護フィルムがある。液晶パネルの最表面に使用される偏光板は流通過程や液晶表示装置の組み立て工程における損傷を防止する為に、フィルムの表面に粘着加工の施された表面保護フィルムが貼着される。表面保護フィルムには偏光板の製造工程内で、偏光板背面に塗布された粘着剤や手垢、指紋その他の汚れが付着することがある。これらの汚れが容易に拭き取れる汚染防止性能が求められる。
【0003】
汚れの付着を防ぎ、付着した汚れを容易に除去できるように表面保護フィルムの表面に汚染防止層を形成させる手段があり、例えば特許文献1から特許文献5にフッ素系化合物、長鎖アルキル系化合物や他の素材からなる層を設けた手法がある。
【0004】
偏光板の品質検査や,偏光板の情報を示すために表面保護フィルムの表面にインキ等により印をつけることがある。この場合、前記の汚れと異なり、インキは容易に表面保護フィルムにのり、多少擦るように拭き取っても脱落しないという、汚染防止性能とは相反する性能が要求される。印をつける方法には、手でスタンプインクを捺印する方法やインクジェット印字などが挙げられ、昨今では作業の効率化を目的とした後者が採用されるケースが多く見受けられる。
【特許文献1】特開平11−256115号公報
【特許文献2】特開平9−113726号公報
【特許文献3】特開2000−321423号公報
【特許文献4】特開2001−96698号公報
【特許文献5】国際公開第2004/052970号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は汚染防止性とインキの密着性の両特性を満足する表面保護フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材フィルム表面にフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの膜を有する表面保護フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
フィルムの最表面にベースフィルムとの接着力より低い凝集力を有するフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの膜を形成させることにより、汚染防止性とインキの密着性の両特性を満足することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(構成)
表面保護フィルムは粘着剤の層と基材フィルムを有する。粘着剤を基材フィルムに塗工してなる、基材フィルム/粘着剤の層という構成のものが好ましい。基材フィルムと粘着剤の層の間に中間層を有するものでもよい。
【0009】
(基材フィルム)
基材フィルムは熱可塑性樹脂を用いたものが好ましい。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂およびこれらをアロイ化させたものを使用することができる。中でも、腰強度や該表面保護フィルムを剥離する際のフィルムの変形の有無等、取扱いの面を考慮しポリエステルフィルムを用いることが好ましい。基材フィルムは単層が好ましく、複層であってもよい。その総厚は10〜200μmとすることができる。
【0010】
(フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの割合等)
フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの比率はその用途により調節することが可能であり、偏光板の表面保護フィルムに用いる場合、フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩がポリビニルピロリドンに対し1〜10倍の範囲となるように調節することが好ましい。フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの膜は低凝集性を有するものが好ましい。低凝集性とは、フィルム上に塗布、乾燥された界面活性剤の膜にニチバン社の粘着テープ「セロテープ(登録商標)CT405A−24」をJIS Z 0237:2000 10.4の180度引きはがし粘着力に準拠する方法にて貼着し、300mm/分の速度にて180度剥離した後に、フィルムの塗布面と粘着テープ表面にフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンが検出されることにより、フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの膜と基材フィルムの接着力がフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの膜の凝集力よりも大きいことの指標として定めたものである。成分の同定には赤外分光光度法等の表面分析法が挙げられるが特にこれに限定されない。該評価において粘着テープへの移行が確認されるような塗膜を表面に形成することにより、汚染防止性を有し、且つインキの表面密着性に優れたフィルムを得ることができる。
【0011】
(フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの混合液の塗工方法)
フッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの膜を基材フィルム表面に形成する方法には特に限定されない。例えばフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩からなる界面活性剤と、ポリビニルピロリドン樹脂水溶液の混合液を公知の塗工方法で基材フィルムに塗布することができる。グラビアコーター、エアーナイフコーター、ファウンテンダイコーター、リップコーター等汎用の塗工設備によるロールコート法がある。基材フィルムを該混合液を霧状に噴霧した中に通過させることで表面に膜を形成させるミスト法、またはスプレー法、バーコート法などを適用することもできる。混合液をフィルムに塗工し溶剤等の揮発分がある場合はそれを乾燥し、除去して塗膜を得る。乾燥後の塗膜の厚みは1〜500nmとすることが好ましい。塗膜の厚みがこの範囲内に収まるものであれば、同一若しくは2種以上の異なるフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩とポリビニルピロリドンの混合液を積層してフィルム上に塗布しても差し支えない。混合液を塗布する面の濡れ特性を改質する目的で、基材フィルムの表面にコロナ放電処理、化学処理、紫外線照射処理を施しても良い。
【0012】
(粘着剤)
粘着剤としては、例えばアクリル、ウレタン、ゴム、シリコーンを主成分とした粘着剤を使用することができる。透明性の高いものが好ましく、粘着特性を容易に調整できる点からアクリル粘着剤が好ましい。粘着剤には、適度な粘着性を付与するために、粘着付与剤等が含有されていてもよい。粘着付与剤としては、例えばロジン系、テルペン系、クマロン系、フェノール系、スチレン系、石油系等がある。
【0013】
アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに極性単量体成分を共重合したアクリルポリマーを用いたものである。上記アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0014】
アクリル粘着剤は架橋剤と配合してアクリルポリマーを架橋し得る組成として用いられる。架橋剤としては、例えば、脂肪族系ジイソシアネート、芳香族系ジイソシアネート、芳香族系トリイソシアネートのようなポリイソシアネート化合物などが用いられる。更に、架橋反応が遅いものに対しては有機金属化合物等からなる架橋促進剤を添加することができる。
【0015】
(可塑剤)
粘着剤には可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、例えばアジピン酸エステル系、グリコールエステル系、セバシン酸エステル系、トリメリット酸エステル系、ピロメリット酸エステル系、フタル酸エステル系、リン酸エステル系などがある。アクリル系粘着剤に対して使用する場合は、フタル酸エステル系が好ましいが、それに限定されるものではない。
【0016】
可塑剤の配合量は、表面保護フィルムの用途、粘着剤の種類等により異なる。偏光板の表面保護に用いられる場合、Ra=390nmの偏光板に対する300mm/minの剥離速度における180度剥離強度が0.01〜0.3N/25mm、5,000mm/minの剥離速度における180度剥離強度が0.1〜0.5N/25mm、初期剥離強度が1.0〜2.5N/φ5mmであり、Ra=390nmの偏光板に貼着した際の曇度が5%以下の範囲に入る量を配合するとよい。この範囲において、偏光板を用いたディスプレーにおいて、表面保護フィルムを貼着してもディスプレーの調整を容易にすることができ、表面保護フィルムが不要になったとき、容易に剥がすことができる。
【0017】
アクリル系粘着剤に対しフタル酸エステル系の可塑剤を添加した場合は、アクリル系粘着剤の固形分量100部に対し5〜50部の範囲であることが好ましい。
【0018】
(粘着剤の塗工方法)
粘着剤を塗布するには、公知のスクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等を適応することができるが、これに限定されない。塗工された粘着剤の厚みについては特に限定されるものではないが、乾燥後の厚みで1〜100μmとすることができる。
【0019】
(剥離性フィルム)
表面保護フィルムの粘着剤の層に剥離性フィルムを貼着することができる。剥離性フィルムとしては、例えば表面をシリコーン系剥離剤やその他の剥離剤で処理したもの、それ自体が剥離性を有するフィルムなどを用いることができる。剥離性フィルムの厚みは10〜100μm程度とすることが好ましい。剥離性フィルムを貼着した表面保護フィルムは巻き取って保管することができ、輸送するには便利である。剥離フィルムを有する表面保護フィルムは、剥離フィルムを剥がしてから粘着剤の層を偏光板等の保護するものの表面に貼着して使用される。剥離性フィルムの表面には帯電防止性物質を塗布することができる。
【実施例】
【0020】
以下に本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
(実施例1)
厚さが38μmの帯電防止性ポリエステル系フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、T100G)の帯電防止処理面にアクリル系粘着剤(綜研化学社製、SKダイン1496)100重量部に対して硬化剤(総研化学社製、硬化剤D−90)0.8重量部、促進剤(綜研化学社製、促進剤S)0.08重量部を混合した粘着性溶液をバーコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥した。乾燥後の粘着層の厚みは約18μmであった。更に粘着層側に厚さが25μmの剥離性フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF−25)を貼合した。その後、基材フィルムの粘着剤を塗工した面とは反対面に、グラビアロールコーターによりフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩からなる界面活性剤(ダイキン工業社製、ダイフリーME−313、固形分3.0%)とポリビニルピロリドン樹脂水溶液(大同化成工業社製、PVP−99、固形分36%)の固形分比率が65/35となるように混ぜ合わせたものを水/イソプロピルアルコールの比率が90/10となる溶液を用いて12倍に希釈し、乾燥後の塗膜の厚みが30nmとなるように塗布し、100℃の温度にて数秒加熱し希釈溶剤を除去した。
【0021】
(実施例2)
基材フィルムの粘着剤を塗工した面とは反対面に、グラビアロールコーターによりフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩からなる界面活性剤(ダイキン工業社製、ダイフリーME−313、固形分3.0%)とポリビニルピロリドン樹脂水溶液(大同化成工業社製、PVP−99、固形分36%)、ポリビニルピロリドン樹脂水溶液(大同化成工業社製、PVP−18、固形分20%)の固形分比率が60/20/20となるように混ぜ合わせたものを水/イソプロピルアルコールの比率が90/10となる溶液を用いて17倍に希釈し、乾燥後の塗膜の厚みが30nmとなるように塗布した以外実施例1と同様なフィルムを作成した。
【0022】
(比較例1)
基材フィルムの粘着剤を塗工した面とは反対面に何も処理を施していないフィルムを作成した。
【0023】
(比較例2)
基材フィルムの粘着剤を塗工した面とは反対面に、グラビアロールコーターによりフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩からなる界面活性剤(ダイキン工業社製、ダイフリーME−313、固形分3.0%)を水/イソプロピルアルコールの比率が90/10となる溶液を用いて12倍に希釈し、乾燥後の塗膜の厚みが30nmとなるように塗布した以外実施例1と同様なフィルムを作成した。
【0024】
実施例、比較例における凝集性、汚染防止性、インキの密着性の評価方法は次の通りである。
(凝集性の評価)
前記の凝集性の評価方法において、下記を基準に破壊形態の目安とした。
A;界面活性剤層内での凝集破壊(粘着テープを剥離後に表面処理フィルムの処理面、粘着テープの粘着面ともに界面活性剤成分が確認された。)
B;界面活性剤とベースフィルムとの界面における界面破壊(粘着テープを剥離後に粘着テープ側にのみ界面活性剤成分が確認された。)
C;層間、層内における破壊なし(粘着テープを剥離後に表面処理フィルムの処理面側にのみ界面活性剤成分が確認された。)
【0025】
(汚染防止性)
厚さが25μmであり片面に離型処理の施されたポリエステル系フィルム(東洋紡績社製、E7002)の離型処理面に、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、SKダイン1473H)100重量部に対して硬化剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL−45)1.0重量部を混合した粘着性溶液をバーコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥した。該粘着塗工フィルムの粘着面を実施例、比較例に記載のフィルムのコーティング層に擦りつけ、付着した粘着剤のみをクレシア社製のJKワイパー150−Sにより拭き取った際の拭き取り性を評価した。
良;表面に付着した粘着剤が全て拭き取れ、拭き取りの痕が残らない
不良;粘着剤が表面に残り、完全に拭き取れない
【0026】
(インキの密着性:スタンプインク)
シャチハタ社製の速乾性丸型印11号(色調;赤)を実施例、比較例に記載のフィルムのコーティング層の上から捺印し、室温にて5分間放置した後にクレシア社製のJKワイパー150−Sを用いて拭き取った際のインキの脱落の程度を評価した。
良;インキを捺印した形そのままに残る
不良;インキの一部、若しくは全部が脱落する
【0027】
(インキの密着性:インクジェットインク)
アジドベンゼン,アニリンを主成分としたインクジェットインク(色調;赤)を実施例、比較例に記載のフィルムのコーティング層の上から捺印し、室温にて5分間放置した後にクレシア社製のJKワイパー150−Sを用いて拭き取った際のインキの脱落の程度を評価した。
良;インキを捺印した形そのままに残る
不良;インキの一部、若しくは全部が脱落する
【0028】
以上の評価方法による評価結果を表1に示した。
【0029】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかる表面保護フィルムは、各種部材の表面保護に好適に用いることができる。特に偏光板、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー等の表面保護に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に積層された保護層を備え、保護層がフッ素系リン酸エステルのアンモニウム塩と、ポリビニルピロリドンの混合体で形成された表面保護フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの他方の面に粘着層を有する請求項1記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
基材フィルムと粘着層の間に中間層を有する請求項2記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項2又は請求項3記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
粘着剤が、アクリル系粘着剤に可塑剤を添加したものである請求項4に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の表面保護フィルムに剥離性フィルムが貼着されてなる表面保護フィルム。
【請求項8】
剥離性フィルムがシリコーン離型コートされたポリエステルフィルムである請求項7に記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
偏光板とその表面に貼着された請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項10】
偏光板用の請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2006−241385(P2006−241385A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61739(P2005−61739)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】