説明

表面保護フィルム

【課題】粘着剤を添加しなくても高強度の粘着性を有し、加熱処理後の接着強度の変化が少なく、部材表面の汚染性に優れる表面保護フィルムの提供。
【解決手段】基材層と粘着層からなる表面保護フィルムであって、粘着層は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10分、密度(D)が0.860〜0.915g/cm、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5未満、温度上昇溶離分別(TREF)測定における40℃までの溶出量(E)と密度(D)との関係が下記の式(1)を満たすエチレンとα−オレフィンとの共重合体からなり、粘着層の表面は活性化処理が施されていることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
E<354−386×D …(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の表面を保護するために部材表面に貼り合わせて使用する表面保護フィルムに関するものであり、特に、粘着剤を添加しなくても良好な部材表面への粘着性を有し、加熱処理による粘着強度の変化がなく、かつ部材表面への汚染性の少ない表面保護フィルムに関するものである。さらに、ガラス、導光板、偏光板、位相差板、プリズムシート等の光学材料の保護に使用される表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル板、ポリカーボネート板などのプラスチック材料やガラス基板などは、液晶テレビ、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ等の液晶部等の光学機器部材として幅広く用いられている。それらの部材は、加工時や輸送運搬時等の表面の傷つきや汚れ防止の観点から、表面保護フィルムが貼り付けられ、加工後又は輸送運搬後に係る表面保護フィルムを剥がして使用することが一般的である。
【0003】
従来、表面保護フィルムには粘着層にエチレン・酢酸ビニル共重合体(例えば、特許文献1、2参照。)、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(例えば、特許文献3、4参照。)が使用されている。しかしながら、粘着層にエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いたフィルムは、経時で粘着強度が上昇してしまう問題があった。また部材表面が平滑でない場合、フィルムに高強度の粘着性を付与させなければならず、粘着層に石油樹脂、種々エラストマー等の粘着付与剤を添加する必要がある。粘着付与剤は、フィルムを部材に貼付した後、部材を加熱処理した際、部材表面にブリードアウトし表面を汚染するという問題がある。また、粘着層にメタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体を用いたフィルムは、粘着性がそれほど高くなく、用途が限られる。フィルムに高強度の粘着性を付与させるためには、エチレン・酢酸ビニル共重合体を用いる場合と同様、粘着層に粘着付与剤を添加する必要があり、部材表面を汚染するという問題がある。
【特許文献1】特開平5−98224号公報
【特許文献2】特開平5−43849号公報
【特許文献3】特開平8−311419号公報
【特許文献4】特開平9−70931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前述した従来の技術の問題点に鑑み、粘着剤を添加しなくても高強度の粘着性を有し、加熱処理後の接着強度の変化が少なく、部材表面の汚染性に優れる表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため種々の研究を重ねた結果、粘着層に特定のエチレン・α−オレフィン共重合体を用いて表面の活性化処理を行うことにより、粘着剤を添加しなくても高強度の粘着性を有し、加熱処理後の接着強度の変化が少なく、部材表面の汚染性に優れる表面保護フィルムになり得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、基材層と粘着とからなる表面保護フィルムであって、粘着層は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10分、密度(D)が0.860〜0.915g/cm、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5未満、温度上昇溶離分別(TREF)測定における40℃までの溶出量(E)と密度(D)との関係が下記の式(1)を満たすエチレンとα−オレフィンとの共重合体からなり、粘着層の表面は活性化処理が施されていることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
E<354−386×D …(1)
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、活性化処理は、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ金属溶液処理、高周波スパツタエッチング処理のいずれかであることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、基材層が外層および中間層からなり、外層、中間層、粘着層の順に積層された少なくとも3層構成の表面保護フィルムであって、外層は、D硬度が55以上であるポリエチレン又はポリエチレン組成物からなり、中間層は、ポリエチレン又はポリエチレン組成物からなることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、外層が、低密度ポリエチレン95〜5重量%、高密度ポリエチレン5〜95重量%を含むポリエチレン組成物からなることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、導光板、偏光板、位相差板、プリズムシート等の光学材料の保護に使用する表面保護フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤を添加しなくても部材表面への高強度の粘着性を有し、加熱処理後の接着強度の変化が少なく、かつ部材表面への汚染性が少ないという特徴を有する。粘着層に表面処理を行うことにより、粘着剤を添加しなくても十分な粘着性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、基材層と粘着層からなる表面保護フィルムであって、粘着層はメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10分、密度(D)が0.860〜0.915g/cm、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5未満、温度上昇溶離分別(TREF)測定における40℃までの溶出量(E)と密度(D)との関係が、下記の式(1)を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、粘着層の表面は活性化処理が施されていることを特徴とする表面保護フィルムである。
E<354−386×D …(1)
以下、本発明の保護フィルムの各層の構成成分、保護フィルムの特性、製造法について詳細に説明する。
【0013】
1.粘着層
本発明の表面保護フィルムの粘着層は、エチレン・α−オレフィン共重合体が主成分として用いられる。
粘着層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜50g/10分であり、好ましくは0.5〜30g/10分であり、より好ましくは1.0〜10g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが0.1g/10分未満では樹脂圧力が高く成形性が悪いため好ましくない。一方、50g/10分を超えると溶融粘度が低くなり基材層と共押出フィルムを成形した際、層間荒れが起こりフィルム外観が悪化するので好ましくない。
ここで、MFRは、JIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0014】
また、粘着層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度(D)は、0.860〜0.915g/cm、好ましくは0.870〜0.910g/cm、より好ましくは0.880〜0.905g/cmである。密度が0.860g/cm未満であると粘着強度の経時変化が大きい。一方、密度が0.915g/cmより大きいと粘着強度が弱くなる。
ここで、密度は、JIS−K7112に準拠して測定する値である。
【0015】
さらに、粘着層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、3.5未満、好ましくは2.8未満、より好ましくは2.6未満である。Mw/Mnが3.5以上であると剥離後の部材表面の汚染性が悪化するので好ましくない。
ここで、Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。Mw/Mnの測定方法は、以下の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本
カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.723、logK=−3.407である。
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
【0016】
さらにまた、粘着層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、TREFにおける40℃までの溶出量(E)と密度(D)との関係が、下記式(1)を満たし、
E<354−382×D …(1)
好ましくは下記式(1’)を満たす。
E<352−382×D …(1’)
式(1)を満たさないエチレン・α−オレフィン共重合体を用いた表面保護フィルムは、粘着強度の経時変化が大きい。
【0017】
かかる関係式を定めた理由を以下に述べる。粘着層に用いる成分として数多くのエチレン・α−オレフィン共重合体を評価したところ、まず、粘着強度といった粘着性能はエチレン・α−オレフィン共重合体の密度(D)とある程度の相関があることを見出した。しかし、密度が同等のエチレン・α−オレフィン共重合体同士でも、粘着性能には差があって、特に粘着強度の経時変化について顕著であった。粘着強度の経時変化は、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる低結晶性の成分によるものと仮定し、結晶性ポリマーの結晶性分布評価手法である温度上昇溶離分別(TREF)により、エチレン・α−オレフィン共重合体の構造を解析して、粘着強度の経時変化との相関を調べたところ、TREFにおける40℃までの溶出量との相関関係が良好であることを見出すに至った。同等の密度ではTREFにおける40℃までの溶出量が多くなると、急激に粘着強度の経時変化が大きくなる。いくつかの密度領域で、粘着強度の経時変化の臨界領域を確認して、上述の関係式を得た。
低結晶性の成分が加熱により粘着層表面に移行することで、部材表面との接着力が強まるものと考えられる。
【0018】
ここで、温度上昇溶離分別(Temperature RisingElution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、Journal of Applied Polymer Science.Vol.126,4,217−4,231(1981)、高分子討論会予稿集2P1C09(昭和63年)等の文献に記載されている原理に基づいて実施される。すなわち、先ず対象とするポリマーを溶媒中で一度完全に溶解させる。その後、冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させる。次に、温度を連続又は段階的に昇温することにより、先ず、低温度では対象ポリエチレン組成中の非晶部分、すなわち、ポリエチレンの持つ短鎖分岐の分岐度の多いものから溶出する。溶出温度が上昇すると共に、徐々に分岐度の少ないものが溶出し、ついには分岐のない直鎖状の部分が溶出して測定は終了する。この各温度での溶出成分の濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(溶出曲線)のピークによって、ポリマーの組成分布を測定することができるものである。
【0019】
本発明の粘着層に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させて製造される。α−オレフィンは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても構わない。この中で特にメタロセン触媒を用いて高圧法、もしくは溶液法で製造されたものが分子量分布、結晶性分布とも狭いため好ましい。
【0020】
粘着層には、必要に応じて他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤、中和剤、粘着付与剤、着色剤等を挙げることができる。
また、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等を混合することもできる。
【0021】
2.基材層
本発明の表面保護フィルムの基材層としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂はそれぞれ単独でも2つ以上の組み合わせでも使用できる。
また、基材層は1層でも2層以上でもよく、外層、中間層からなるものが好ましい。本発明の表面保護フィルムが、外層、中間層、粘着層の順に積層された少なくとも3層構成の表面保護フィルムであるものが好ましい。以下、好ましい外層、中間層について説明する。
【0022】
(1)外層
本発明の表面保護フィルムの基材層の外層は、D硬度が55以上であるポリエチレン又はポリエチレン組成物からなるものが好ましい。
外層に用いるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の低密度ポリエチレン等が挙げられる。
高密度ポリエチレンは、一般的にチーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンまたはエチレンと少量のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを(共)重合させて製造される。
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、パーオキサイドなどのラジカル発生剤を重合開始剤として、高圧ラジカル重合法等のプロセスで、エチレン又はエチレンと少量のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを(共)重合させて製造される。
直鎖状低密度ポリエチレンは、一般的にチーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスでエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させて製造される。α−オレフィンは単独で使用してもよいが2種類以上を併用して使用してもかまわない。
低密度ポリエチレンは、成形性の点から高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
【0023】
外層に用いるポリエチレン組成物としては、上記のポリエチレンに添加剤等を配合した樹脂組成物、上記のポリエチレンを二種以上組み合わせた樹脂組成物、上記のポリエチレンに他の熱可塑性樹脂を配合した樹脂組成物やそれらに添加剤等を配合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンを二種以上組み合わせた樹脂組成物が好ましく、特に、低密度ポリエチレン95〜5重量%、高密度ポリエチレン5〜95重量%を含むポリエチレン樹脂組成物が好ましい。
【0024】
また、外層に用いられるポリエチレン又はポリエチレン組成物のD硬度は、55以上が好ましく、より好ましくは57以上である。D硬度が55以上であると、輸送運搬時にフィルム表面に傷がつきにくくなるので好ましい。
ここで、D硬度は、JIS K7215に準拠して測定する値である。
【0025】
ポリエチレンのD硬度は、ポリエチレン樹脂メーカーやポリエチレン樹脂販売会社作成の商品パンフレットに掲げられているので、それら市販品の中から選択することが可能である。ポリエチレンを二種以上組み合わせた樹脂組成物のD硬度は、各ポリエチレンのD硬度と組成割合から加成則計算で予測することができる。一般に、D硬度はポリエチレンの結晶化度に応じて変化すると考えられるので、ポリエチレン樹脂の中では高密度ポリエチレンが高く、密度が小さくなるにつれて低くなる傾向がある。
本発明においては、D硬度が55以上を満たす範囲内で、他の性能(透明性、成形性、中間層との層間強度等)を勘案しつつ選ぶことが好ましい。成形加工性の点から高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン5〜95重量%、高密度ポリエチレン5〜95%を含む樹脂組成物であることが好ましい。成形性が優れる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンと高いD硬度の高密度ポリエチレンとのブレンドにより、成形性が良好な硬度の高い外層とすることができる。その他の好ましい態様としては、密度が0.925g/cm以上の直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。その利点はフィルム強度が強くなることである。
【0026】
(2)中間層
本発明の表面保護フィルムの基材層の中間層は、ポリエチレン又はポリエチレン組成物からなるものが好ましい。
中間層に用いるポリエチレン又はポリエチレン組成物としては、特に制限がないが、上記外層で用いたポリエチレン又はポリエチレン組成物と同様なものが好ましいが、D硬度が外層のポリエチレン又はポリエチレン組成物のそれより小さいポリエチレン又はポリエチレン組成物を使用することが好ましく、D硬度が52以下であることがより好ましい。D硬度が外層のポリエチレン又はポリエチレン組成物のそれより小さいことにより、表面硬度と柔軟性のバランスが良好なものになる。
【0027】
3.保護フィルム
本発明の表面保護フィルムは、上記外層、中間層、粘着層の順に積層された少なくとも3層構成を持つ積層フィルムが好ましい。外層の役割は主に傷つきの防止であり、中間層の役割は主にフィルムの剛性の低下の抑制であり、粘着層の役割は主に部材との粘着である。
【0028】
本発明の表面保護フィルムは、上記粘着層の表面が活性化処理されていることが必要である。活性化処理は、エチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン構造単位あるいはα−オレフィン構造単位に酸素、窒素などを含む極性基を導入する処理であることが好ましい。このような活性化処理は、化学的活性化処理により行われる。
粘着層への化学的な表面処理としては、公知の方法、例えばコロナ放電処理(空気中、窒素中、炭酸ガス中など)やプラズマ処理(高圧、低圧)、アルカリ金属溶液処理、高周波スパツタエッチング処理といった化学的な表面処理方法が挙げられる。装置や処理の簡便性の観点から、コロナ放電処理が好ましい。
なお、表面処理の場合、処理強度は、特に限定されず、用途に応じて適切に所望の値とすることができるが、粘着強度の観点から、処理強度の目安として、JIS−K−6768に基づいて測定したフィルムの表面濡れ指数を36dyn/cm以上、好ましくは40dyn/cm以上とするのが望ましい。
【0029】
本発明の表面保護フィルムの厚さは、20〜100μmが好ましい。粘着剤層の厚みは1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜15μmである。各層の厚さの比率は三層フィルムの場合は、外層/中間層/粘着層=2〜30μm/16〜96μm/2〜30μmである。
【0030】
4.保護フィルムの製造
本発明の表面保護フィルムの製造方法における各層の形成ないし積層は、合目的的な任意のものであり得る。従来の多層フィルムの成形方法に従って、例えば、各層を予め別々にフィルム状に形成して、その後、それらを接着させて積層する方法、及び押出法によって各層の形成及び積層を同一工程で行う方法等がある。前者の場合において、フィルムの製造は、空冷インフレーション成形、空冷二段冷却インフレーション法、Tダイフィルム成形、水冷インフレーション成形法等を採用することができる。また、後者の押出方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出し法(接着層を設けない共押出し、接着層を設ける共押出し、接着樹脂を配合する共押出しを含む)等の方法がある。本発明では、いずれの方法によっても各種の多層フィルムを得ることができる。
【0031】
5.保護フィルムの用途
本発明の表面保護フィルムは、被着体表面に粘着層が接するように貼りあわされ、被着体表面の傷つきや汚れを防止する。表面保護フィルムの使用後は被着体から剥がされる、可剥性表面保護用粘着フィルムとして用いられる。
本発明の表面保護フィルムは、光学材料等の被着体の表面を保護することに用いることが好ましく、特に、導光板、偏光板、位相差板、プリズムシート等の光学材料の保護に使用することが好ましい。
被着体への貼り合わせ方法は、公知のいかなる方法でもよく、例えば、被着体とフィルムを二本のロール間を通して貼り合わせるラミネーターによる方法などが挙げられる。このようにして表面保護フィルムの粘着層が被着体表面に貼りあわされた光学材料が得られる。
【実施例】
【0032】
以下に示す実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた物性測定・評価方法、材料は以下の通りである。
【0033】
1.物性の測定と評価方法
(1)MFR:JIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:JIS−K7112に準拠して測定した。
(3)Mw/Mn:前述の方法で測定した。
(4)温度上昇溶離分別(TREF)による溶出量の測定:下記の結晶性分別を行うTREF部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成るクロス分別クロマトグラフ(CFC)方法による。
すなわち、まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
測定条件を以下に示す。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
データ解析:測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムは、装置付属のデータ処理プログラムにより処理され、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
(5)外層表面硬度:外層に使用している樹脂を温度160℃で2mmの厚みのプレスシートを作成しJIS K7215に準拠しD硬度を測定した。外層が樹脂の混合物である場合は予め40mmφの押出機で180℃で溶融混練して均質化した後、評価に使用した。
(6)表面濡れ指数:JIS−K−6768に基づいて測定した。
(7)粘着性:フィルムのタテ方向を長手方向にとり、幅25mm、長さ20cmに切断し、予め45℃に加温したアクリル樹脂板に貼りつけた。貼りつけたフィルムを温度23℃湿度50%の中で12時間エージングした後、JIS Z0237に準拠して引張速度300mm/分、引きはがし角度180℃にて25mm幅あたりの粘着強度を測定した。
(8)経時粘着性変化:フィルムのタテ方向を長手方向にとり、幅25mm、長さ20cmに切断し、予め45℃に加温したアクリル樹脂板に貼りつけた。貼りつけたフィルムを45℃のオーブンに1週間保管した後、温度23℃湿度50%の中で12時間エージングした後、JIS Z0237に準拠して引張速度300mm/分、引きはがし角度180℃にて25mm幅あたりの粘着強度を測定し、45℃のオーブンに保管していないフィルムとの粘着強度の差を比較した。
【0034】
2.材料
(1)外層、中間層用ポリエチレン
PE−1:高圧法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製LF240)、MFR0.7g/10分、密度0.924g/cm、D硬度52
PE−2:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製HJ560)、MFR7g/10分、密度0.964g/cm、D硬度66
(2)粘着層用エチレン・α−オレフィン共重合体
下記の製造例1〜3で得られた(PE−3)〜(PE−5)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA:日本ポリエチレン社製LV342(PE−6))、市販のメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製ハーモレックスNF324A(PE−7))を用いた。物性を表1に示す。
【0035】
(製造例1)
触媒の調製は、特開昭61−130314号公報に記載された方法で実施した。すなわち、錯体エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0ミリモルに、東洋ストファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対して1,000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
次に、以下の方法で重合を行なった。内容積1.5リットルの攪拌式オートクレーブ型連続反応器に、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が80重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1,000kg/cmに保ち、160℃の温度で反応を行なった。反応終了後、MFRが3.3g/10分、密度が0.905g/cm、Mw/Mnが2.3であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−3)を得た。
【0036】
(製造例2)
製造例1において、重合温度、重合圧力、エチレンと1−ヘキセンとの混合物中の1−ヘキセンの組成の条件を変更して、エチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−4)を得た。
【0037】
(製造例3)
製造例1において、重合温度、重合圧力、エチレンと1−ヘキセンとの混合物中の1−ヘキセンの組成の条件を変更して、エチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−5)を得た。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例1)
外層に(PE−1)60重量%と(PE−2)40重量%からなるポリエチレン樹脂組成物を用い、中間層に(PE−1)100重量%のポリエチレンを用い、粘着層に(PE−3)のエチレン・α−オレフィン共重合体を100重量%使用し、外層の押出機40mmφ、中間層の押出機40mmφ、粘着層の押出機40mmφを有する多層インフレーション成形機を使用して成形温度160℃で外層厚み10μm、中間層厚み30μm、粘着層厚み10μmの多層インフレーションフィルムからなる表面保護フィルムを作成した。作成したフィルムに春日電機(株)社製のコロナ処理機で粘着層に表面処理(処理条件:42dyn/cm)を施した。得られた、表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0040】
(実施例2)
粘着層に(PE−4)を100重量%使用する以外は実施例1と同様にして成形し、表面保護フィルムを作成した。得られた、表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0041】
(比較例1)
粘着層に(PE−5)を100重量%使用する以外は実施例1と同様にして成形し、表面保護フィルムを作成した。得られた、表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0042】
(比較例2)
粘着層に(PE−1)を100重量%使用する以外は実施例1と同様にして成形しコロナ処理を行わずに表面保護フィルムを作成した。得られた、表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0043】
(比較例3)
粘着層に(PE−6)100重量%を使用する以外は実施例1と同様にして成形し、表面保護フィルムを作成した。得られた、表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0044】
(比較例4)
粘着層に(PE−7)100重量%を使用する以外は実施例1と同様にして成形し、表面保護フィルムを作成した。得られた、表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、本発明の表面保護フィルムは、粘着性に優れ、経時粘着性変化がないフィルムである(実施例1、2)。一方、粘着層に本発明の範囲外のポリエチレンを用いたり、表面処理を行わないと、粘着性に劣り、加熱処理後の接着強度が低下する(比較例1〜4)。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤を添加しなくても良好な部材表面への粘着性を有し、加熱処理による粘着強度の変化がなく、かつ部材表面への汚染性の少ないため、導光板、偏光板、位相差板、プリズムシート等の光学材料の保護に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着層とからなる表面保護フィルムであって、粘着層は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10分、密度(D)が0.860〜0.915g/cm、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5未満、温度上昇溶離分別(TREF)測定における40℃までの溶出量(E)と密度(D)との関係が下記の式(1)を満たすエチレンとα−オレフィンとの共重合体からなり、粘着層の表面は活性化処理が施されていることを特徴とする表面保護フィルム。
E<354−386×D …(1)
【請求項2】
活性化処理は、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ金属溶液処理、高周波スパツタエッチング処理のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
基材層が外層および中間層からなり、外層、中間層、粘着層の順に積層された少なくとも3層構成の表面保護フィルムであって、外層は、D硬度が55以上であるポリエチレン又はポリエチレン組成物からなり、中間層は、ポリエチレン又はポリエチレン組成物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
外層が、低密度ポリエチレン95〜5重量%、高密度ポリエチレン5〜95重量%を含むポリエチレン組成物からなることを特徴とする請求項3に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
導光板、偏光板、位相差板、プリズムシート等の光学材料の保護に使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2009−148996(P2009−148996A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329585(P2007−329585)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】