説明

表面保護フィルム

【課題】粘着剤層の初期粘着力、剥離特性、経時安定性に優れ、剥離後の塗り残りが生じ難くい表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分を主成分とする粘着層が積層されている表面保護フィルムであって、ゴム系樹脂成分は、スチレン系重合体ブロック(A)とイソプレン系重合体ブロック(B)とのブロック重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソプレンのランダム系重合体ブロック(B’)とのブロック重合体から選ばれる1種以上のスチレン系エラストマーであり、粘着剤層は、ゴム系樹脂成分とゴム系樹脂成分100重量部に対して粘着付与材を5〜40重量部、界面活性剤を0.5〜5重量部含有することを特徴とする表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の傷つきを防止するための表面保護フィルムに関し、特に、ポリオレフィン系基材の片面にゴム系粘着剤層が積層されている表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物品や部材を保護するために、物品や部材の表面に表面保護フィルムが仮着されていることが多い。例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板、塗装鋼板、塗装樹脂板または各種銘板などの様々な被着体、中でも塗装鋼板や塗装樹脂板の表面に、加工時または運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するために、表面保護フィルムが多用されている。
【0003】
この種の表面保護フィルムは、フィルム基材の片面に粘着剤層を積層した構造を有する。上記フィルム基材としては、一般に、熱可塑性樹脂が用いられている。表面保護フィルムは、被着体表面に上記粘着剤層の粘着力を利用して貼付され、被着体表面の保護を図る。被着体が使用される際には、表面保護フィルムは被着体表面から剥離されることになる。従って、表面保護フィルムでは、被着体の表面に容易に仮着され得るのに適切な粘着性を有することが求められており、かつ使用後には、被着体表面から容易に剥離し得る程度の良好な剥離性を有することが求められている。
【0004】
さらに、表面に比較的軟質の塗膜が形成された自動車の車体や部品では、遠隔地への移送の際に風圧を受けたり、直射日光等の屋外の苛酷な条件に曝されることもあり、優れた耐候性とともに、特に剥離後の被着体表面に接着跡が残らないことが強く求められている。
【0005】
即ち、表面を塗装処理したカラー鋼板や自動車ボディ等の表面保護フィルムとしては、支持基材上にゴム系粘着剤層を設けたものが知られているが、時間の経過に伴って塗装面より保護フィルムを剥離した際、塗膜面に接着跡が残存するという問題があった。塗膜が柔らかいものになるほどこの接着跡は顕著に現れる。この接着跡は、屋外保管等による紫外線、温度上昇及び、酸性雨等の原因で発生し、特に温度上昇に伴うものが大きいと考えられており、例えば、80℃の雰囲気で1日経時させると、深さは0.1〜1μmにも達する。この接着跡の発生メカニズムとして、塗膜中の低分子量成分が表面保護フィルムの粘着剤層に吸収移行されることによる塗膜痩せ、あるいは、表面保護フィルム中の低分子量成分が塗膜に吸収されて起きる塗膜膨れがあるとされている。
【0006】
従って、このような表面保護フィルムには、1)初期接着力が十分であり、2)接着力の経時安定性が良好であり、3)風圧によって被着体から剥離し難く、さらに4)剥離時には被着体から容易に剥離でき、5)剥離後に被着体に糊残りが生じ難く、かつ6)目立つ接着跡が残らないことが求められる。
【0007】
上記要求1)〜5)を満たす表面保護フィルムとして、下記の特許文献1には、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体からなる表面保護フィルムが開示されている。スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体を使用し、特定の温度で特定の動的粘弾性を示す粘着剤を用いることで、上記要求1)〜5)が満たされている。しかしながら、粘着剤の弾性率が特定条件を満足するためには、低分子量成分を含有する粘着付与樹脂を配合する必要があるため、接着跡が発生しやすいという問題があった。
【0008】
【特許文献1】WO2006/32183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、剥離後の塗膜面に接着跡が形成され難い表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分を主成分とする粘着剤層が積層されている表面保護フィルムであって、ゴム系樹脂成分は、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体から選ばれる1種以上のスチレン系エラストマーであり、粘着剤層は、ゴム系樹脂成分とゴム系樹脂成分100重量部に対して粘着付与材5〜40重量部、界面活性剤を0.5〜5重量部含有することを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
(ゴム系樹脂成分)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着剤は、ゴム系樹脂成分を含む。ゴム系樹脂成分は、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体及び/またはスチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体である。言い換えると、上記ゴム系樹脂成分は下記の(1),(2)のブロック共重合体の少なくとも一方を含むものである。
【0013】
(1)スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体。このブロック共重合体としては、特に限定されず、例えばA−B、A−B−A、(A−B)または(A−B)Xなどで表わされる共重合体が挙げられる。なお、nは1以上の整数であり、Xはカップリング剤による残基である。
【0014】
(2)スチレン系重合体ブロック(A)と、スチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体。このようなブロック共重合体としては、下記の(2−1)〜(2−4)が挙げられる。
【0015】
(2−1)ブロック(A)とブロック(B’)とが結合したもの:A−B’ブロック共重合体
(2−2)スチレンとイソブチレンの内、スチレンが漸増するテーパーブロック(C)を含むもの:A−B’−Cブロック共重合体
(2−3)上記テーパーブロック(C)に代えてスチレン系重合体ブロック(A)を含むもの:A−B’−Aブロック共重合体
(2−4)(2−1)〜(2−3)の繰り返しやこれらが任意の割合で結合したもの:(A−B’)、(A−B’)X、(A−B’−C)X、(A−B’−A)Xなど。
なお、nは1以上の整数であり、Xはカップリング剤による残基である。
【0016】
上記ゴム系樹脂成分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、30000〜400000の範囲が好ましく、より好ましくは50000〜200000の範囲である。重量平均分子量が30000未満では、粘着剤層の凝集力が低下するため、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。重量平均分子量が400000を超えると、粘着力が不足するとともに、粘着剤層を構成する粘着剤組成物の調製や表面保護フィルムの製造時に、溶液粘度や溶融粘度の増大といった支障を生じることがある。
【0017】
(粘着付与材)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着剤層は、上記特定のゴム系樹脂成分に加えて、粘着付与材をさらに含む。
【0018】
上記粘着付与材としては、例えば、テルペン系樹脂、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液体ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン等が挙げられる。具体的には、テルペン系樹脂としては、ヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロン、パラフィン系プロセスオイルとしては、出光興産社製、商品名:ダイアナプロセスオイル、神戸油化学社製、商品名:SYNTAC、液体ポリイソブチレン樹脂としては、BASF社製、商品名:グリソパール、ポリブテンとしては、出光興産社製、商品名:出光ポリブテン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記粘着付与材のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、300〜5000の範囲が好ましく、より好ましくは300〜1500の範囲である。更に好ましくは300〜1000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると、粘着剤層の凝集力が低下するため、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。一方、重量平均分子量が5000を超えても、ゴム系樹脂成分との相溶性が悪くなり、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。
【0020】
上記粘着付与樹脂は、ゴム系樹脂成分100重量部に対し、5〜40重量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。5重量部未満では、上記剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎることがあり、さらに被着体に対する粘着力が不足することがある。40重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムとして使用した後、被着体から剥離し難いことがあり、また剥離に際し、糊残りが生じるおそれがある。
【0021】
(界面活性剤)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着剤層は、上記特定のゴム系樹脂成分に加えて、界面活性剤を含む。界面活性剤の種類としてはイオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤がある。
【0022】
イオン系界面活性剤としては、代表的に燐酸エステル系界面活性剤が挙げられる。燐酸エステル系界面活性剤としては、燐酸エステル、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、高級アルコール燐酸モノエステル、高級アルコール燐酸ジエステルなどが例示できる。
【0023】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールの高級アルコールエーテル、ポリアルキレングリコールの高級アルコールエーテルがある。具体的には、ポリエチレントリデシルエーテル、ポリアルキレンラウリルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
界面活性剤の添加量は、0.5重量部を下回ると、添加効果が発現されずに接着跡が抑制出来ない。また、界面活性剤の添加量が5重量部を超えると、界面活性剤が粘着剤層の表面から多量にブリードアウトし、接着力が低下して表面保護フィルムとして使用できなくなる。界面活性剤の添加量は好ましくは0.05〜3重量部である。
【0025】
また、使用する界面活性剤のHLBは5〜17であることが好ましい。より好ましくは8〜15である。HLBは親水性−親油性のバランスを表す指数であり、下記式により計算される。
HLB=7+11.7×log(Mw/Mo)
Mw:親水基の分子量
Mo:親油基の分子量
【0026】
HLBが17を超えると粘着剤との相溶性がなくなるため好ましくない。またHLBが5未満であると粘着剤との相溶性が良すぎるために好ましくない。HLBは使用する粘着剤により最適値があるため、その都度調整する必要がある。
【0027】
(粘着剤層に配合される他の成分)
本発明に係る表面保護フィルムでは、上記粘着剤層に必要に応じて耐光剤や酸化防止剤などの安定剤や接着昂進防止剤などが添加されてもよい。
【0028】
耐光剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の酸化防止剤が挙げられる。
【0029】
接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
【0030】
(ポリオレフィン基材)
上記ポリオレフィン系基材を構成するポリオレフィンについては特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンやポリオレフィンにオレフィン系エラストマーを混合したものなどを用いることができる。
【0031】
上記ポリオレフィン系基材の厚みは、使用目的によっても異なるが、20〜100μmが好ましい。20μm未満では、例えば塗膜のような被着体の保護性能を十分に発揮できないことがあり、100μmを越えると、ハンドリング性や貼り付け性が低下することがあり、コスト的にも不利である。
【0032】
本発明においては、ポリオレフィン系基材中には、この分野で通常配合される公知の添加剤が配合されることは任意である。添加剤としては上記粘着剤層に添加され得る耐光剤や酸化防止剤などの安定剤のほか、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、顔料等が例示できる。例えば、自動車用塗膜を保護する表面保護フィルムのように、紫外線に晒されるような表面保護フィルムの場合には、好ましくはポリオレフィン系基材に耐候剤が配合される。
【0033】
ポリオレフィン系基材に配合される耐候剤としては、紫外線遮蔽剤及び/または紫外線安定化剤が好ましく用いられる。
【0034】
紫外線遮蔽剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数のものをブレンドして用いてもよい。なかでも、紫外線遮蔽性に優れているため、酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0035】
紫外線安定化剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。
【0036】
これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
【0037】
(表面保護フィルム)
本発明に係る表面保護フィルムでは、粘着剤層の周波数10Hzにおける引張貯蔵弾性率は、−100℃で2.5×10Pa以上とされていることが好ましい。−100℃での引張貯蔵弾性率を2.5×10Pa以上とすることにより、人の手により円滑に被着体から剥離することができ、糊残りも生じ難い。
【0038】
また、−30℃における剪断貯蔵弾性率を5×10Pa以下とされていることが好ましい。冬場に屋外で保管した際に表面保護フィルムが被着体から剥離せず、仮着状態を十分に維持し、且つ輸送時の風圧による剥がれが生じ難い。
【0039】
本発明においては、上記粘着剤層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、23℃で2.5×10〜8×10Paの範囲とされていることが好ましい。8×10Paを超えると、粘着力不足により輸送中に表面保護フィルムが被着体から剥離し易くなり、2.5×10を下回ると、−100℃での引張貯蔵弾性率が低下して、剥離工程における作業性が悪くなったり、剥離時に糊残りしやすくなるおそれがある。
本発明に係る表面保護フィルムでは、粘着剤層の10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、70℃で3.2×10Pa以上とされていることが好ましい。70℃での剪断貯蔵弾性率が3.2×10Pa以上である場合には、粘着力の経時安定性により一層優れ、経時により粘着力がより一層変動し難い。70℃での剪断貯蔵弾性率が3.2×10Pa未満であると、経時により粘着力が変動することがある。
【0040】
粘着剤層の周波数10Hzにおける引張貯蔵弾性率及び剪断貯蔵弾性率を上記特定の範囲とすることで、表面保護フィルムの(1)初期接着力、(2)接着力の経時安定性、(3)耐風圧剥がれ性及び(4)剥離作業性をより一層良好なものとすることができる。
【0041】
本発明において、例えば自動車用塗膜などを保護するのに好適な表面保護フィルムは、前述した耐候剤を含むポリオレフィン系基材を有し、ポリオレフィン系基材の波長190〜370nmの範囲における紫外線透過率が10%以下であり、上述したゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着剤層を有する表面保護用フィルムである。
【0042】
塗膜保護用フィルム、特に自動車用塗膜保護用フィルムでは、波長190〜370nmの範囲における紫外線透過率が10%以下に設定されていることによって、十分な耐候性を有するものとなる。好ましい紫外線透過率は1%以下である。このような範囲を達成するには、紫外線遮断剤や紫外線吸収剤の配合量と基材厚みとを考慮しながら、表面保護フィルムを設計すればよい。なお、塗膜面の温度上昇を抑制できることから、酸化チタン等の熱線反射機能を併せ持った紫外線遮断剤を配合すると効果的である。
【0043】
本発明に係る塗膜保護用の表面保護フィルムは粘着剤層を介して塗膜に仮着される。例えば、仮着された表面保護フィルムに紫外線が照射された場合には、ポリオレフィン系基材を通じて塗膜に貼付された粘着剤層に紫外線が至ることになる。ポリオレフィン系基材の紫外線透過率が上記特定の範囲とされている場合には、ポリオレフィン系基材のみならず、塗膜に貼付された粘着剤層が劣化し難い。よって、塗膜に貼付された粘着剤層が劣化し難いので、塗膜から表面保護フィルムを剥離する際に塗膜表面に糊残りが生じ難い。さらに、表面保護フィルムを通過して塗膜に至る紫外線量も低減されるため、紫外線によって塗膜も劣化し難い。
【0044】
本発明の表面保護フィルムは、上記のように、塗膜保護用の表面保護フィルムとして好適に用いられるが、塗膜に限らず、様々な被着体に適用することができる。すなわち、アクリル系樹脂などの合成樹脂や金属などの極性を有する材料からなる被着体表面の保護にも好適に用いることができる。その場合においても、糊残りが生じ難く、良好な剥離性能を得ることができる。すなわち、本発明の表面保護フィルムが適用される被着体表面は特に限定されるものではない。
【0045】
表面保護フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着剤層を構成する粘着剤組成物と、ポリオレフィン系基材を構成する組成物とを共押出することにより積層一体化する方法、あるいは成膜されたポリオレフィン系基材上に粘着剤組成物をラミネートし、積層一体化する方法などが挙げられる。
【0046】
ポリオレフィン系基材と粘着剤組成物とを共押出により積層一体化する方法としては、インフレーション法やTダイ法などの公知の方法が用いられ得る。粘着剤組成物をポリオレフィン系基材にラミネートする方法としては、粘着剤溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出コーティング法などが用いられる。これらの中でも、品質を高めることができ、かつ経済的に製造し得るため、Tダイによる共押出法が好ましい。また、溶液塗工法が行われる場合には、基材層と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、ポリオレフィン系基材に予めプライマー塗布などし、表面処理を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る表面保護フィルムでは、ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着剤層が積層されており、ゴム系樹脂成分が上記特定のスチレン系エラストマーであり、該ゴム系樹脂成分100重量部に対して、粘着付与樹脂を5〜40重量部、界面活性剤を0.5〜5重量部の範囲で上記粘着剤層に含有されているので、上記のように1)初期接着力に優れ、被着体表面に対して確実に貼付することができ、それによって被着体表面への塵埃の付着を防止したり、傷つきを防止することができる。また、表面保護フィルムは、2)接着力の経時安定性が高められるとともに、3)輸送時等の風圧によって被着体から剥離し難く、5)剥離時には作業性が良好であり、4)剥離後に被着体に糊残りが生じ難く、6)接着跡も形成され難い。従って、1)初期接着力、2)接着力の経時安定性、3)風圧による剥がれ性能、4)剥離作業性、5)糊残り及び6)接着跡のいずれにおいても優れた表面保護フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにするが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例では、ポリオレフィン系基材の片面に粘着剤層が積層されている表面保護フィルムをTダイ共押出法により製造し、評価を行った。
【0049】
(使用した材料)
〔ゴム系樹脂成分〕
スチレンとイソブチレンのブロック共重合体(SIBS)、カネカ社製、品番:シブスター 102T
スチレンとエチレン・ブチレンのブロック共重合体(SEBS)、クレイトンポリマー社製、品番:G1657
ポリイソブチレン樹脂(PIB)、BASF社製、品番:オパノールB80(重量平均分子量 80万)
【0050】
〔粘着付与材〕
神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC PA95(重量平均分子量 400)
神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC PA100(重量平均分子量 600)
神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC P470(重量平均分子量 1400)
BASF社製、液状ポリイソブチレン樹脂、商品名:グリソパール V190(重量平均分子量 3400)
ヤスハラケミカル社製、水添テルペン樹脂、商品名:クリアロンLH(重量平均分子量 1000)
【0051】
〔界面活性剤〕
第一工業製薬社製、燐酸高級アルコールエステル系、商品名:プライサーフ A219B
第一工業製薬社製、燐酸高級アルコールエステル系、商品名:プライサーフ A212C
第一工業製薬社製、燐酸高級アルコールエステル系、商品名:プライサーフ AL
第一工業製薬社製、ポリエチレングリコールの高級アルコールエステル系、商品名:ノイゲン TDS−70
【0052】
〔ポリオレフィン系基材材料〕
サンアロマー社製ブロックポリプロピレン、商品名:PB170A
東京インキ社製酸化チタン、商品名:PEX6800A White
東京インキ社製ヒンダードアミン系光安定化剤、商品名:PPM UVT−52
【0053】
(実施例1)
ゴム系樹脂成分としてSIBSを100重量部、粘着付与材としてSYNTAC PA95を20重量部及び界面活性剤としてプライサーフ A212Cを含む粘着剤組成物と、ブロックポリプロピレンとしてPB170Aを100重量部、酸化チタンとしてPEX6800Aを20重量部及びヒンダードアミン系光安定化剤としてUVT−52を3重量部それぞれドライブレンドしてなるポリプロピレン基材用組成物とを、Tダイ法により共押出し、50μmの厚みのポリプロピレン基材上に10μmの厚みの粘着剤層が積層された表面保護フィルムを得た。
【0054】
(実施例2〜5及び比較例1〜4)
使用した粘着剤成分の種類とそれらの配合割合を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0055】
(評価)
上記のようにして得られた各表面保護フィルムについて以下の項目を評価し、結果を表1に併せて示した。
【0056】
(1)引張貯蔵弾性率
各粘着材組成物をシート状にプレス成形したものについて、それらの引張貯蔵弾性率を、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御社製、品番:DVA200)を用いて、−100℃〜+50℃の範囲を昇温速度6℃/分で昇温しながら周波数10Hzで測定し、−100℃における引張貯蔵弾性率を求めた。
【0057】
(2)剪断貯蔵弾性率
各粘着材組成物をシート状にプレス成形したものについて、それらの剪断貯蔵弾性率を、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御社製、品番:DVA200)を用いて、−50℃〜+150℃の範囲を昇温速度6℃/分で昇温しながら周波数10Hzで測定し、−30℃、23℃及び70℃における剪断貯蔵弾性率を求めた。
【0058】
(3)初期粘着力
各表面保護フィルムを25mm幅に細断した試験片を、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に、2kgのゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で圧着しながら貼り付け、その状態で30分間放置した後、JIS Z 0237に準拠し、180度剥離強度を300mm/分の剥離速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期粘着力とした。
【0059】
(4)初期剥離力
剥離速度を30m/分としたこと以外は(3)同様に180度剥離強度を測定した。このようにして測定された剥離強度を初期剥離力とした。
【0060】
(5)経時粘着力
貼り付け後。70℃のギアオーブン中に7日間放置するステップを追加したこと以外は(3)同様に180度剥離強度を測定し、これを経時粘着力とした。
【0061】
(6)被着体の汚染評価(糊残り)
(3)〜(5)の剥離試験後の被着体表面を目視で観察し、糊残りの有無で汚染を評価した。
【0062】
〔糊残りの評価基準〕
○:全ての場合で糊残り無し
×:いずれかで糊残り発生
【0063】
(7)塗膜面の接着跡
各表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に、2kgのゴムローラーを用いて、表面保護フィルムに皺を入れた状態で300mm/分の速度で圧着しながら貼り付けた。しかる後、85℃及び相対湿度85%のオーブン中に3日間放置し、表面保護フィルムを剥離した。表面保護フィルムの皺部における塗膜表面の段差を、表面形状測定装置(VE1000、日本Veeco社製)を用いて測定し、接着跡を下記評価基準で評価した。
【0064】
〔接着跡の評価基準〕
○:段差0.25μm未満
△:段差0.25μm以上0.4μm未満
×:段差0.4μm以上
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分を主成分とする粘着剤層が積層されている表面保護フィルムであって、ゴム系樹脂成分は、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体から選ばれる1種以上のスチレン系エラストマーであり、粘着剤層は、ゴム系樹脂成分とゴム系樹脂成分100重量部に対して粘着付与材を5〜40重量部、界面活性剤を0.5〜5重量部含有することを特徴とする表面保護フィルム。

【公開番号】特開2009−221254(P2009−221254A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64550(P2008−64550)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】