説明

表面保護フィルム

【課題】コシの強さと低粉性、優れた防汚性といったクリーン性を併せ持ち、さらには粘着力の経時安定性に優れた、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材層と粘着層とからなる表面保護フィルムであって、基材層が多層であり、少なくともその1層が線状ポリエチレンまたは線状ポリエチレンと熱可塑性樹脂の混合物からなり、該線状ポリエチレンが、密度が930kg/m3 以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上50g/10min以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上、10以下であり、該線状ポリエチレン中の換算分子量が105 以上106 以下の成分に含まれるメチル基量に対する換算分子量が103 以上104 以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満の線状ポリエチレンであることを特徴とする表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関するものである。さらに詳しくは、コシの強さと低粉性、優れた防汚性といったクリーン性を併せ持ち、さらには粘着力の経時安定性に優れた、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に表面保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフテタレート等の熱可塑性樹脂単体あるいはこれらを混合してなる樹脂組成物からなる1層または多層の基材層と粘着層とからなり、加工時、輸送時、保管時に外部から受ける傷や汚れ発生を防止することを目的として、金属板、樹脂板、木製化粧板、銘板、液晶部材、電気電子部品、建築資材、自動車部品などに貼って使用されている。
基材層がポリエチレンからなる場合には、ポリエチレンとして高密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンといった線状ポリエチレンを単体あるいは高圧法低密度ポリエチレンと混合して用いられることが知られている。例えば特許文献1には、高密度ポリエチレンを単体で基材層に使用する方法が、特許文献2には高密度ポリエチレンを高圧法低密度ポリエチレンと混合して使用する方法が、さらには特許文献3に直鎖状低密度ポリエチレンを単体で使用する方法がそれぞれ開示されている。
しかしながら、線状ポリエチレンを使用することで表面保護フィルムの機械的強度、打ち抜き加工性や鋸刃やルーターによる切削加工時の毛羽立ち性を改良することが可能となるものの、特に液晶部材用や電気電子部品用において要求レベルが高まってきているクリーン性を満足するには至ってないというのが現状である。
さらには、近年は液晶部材を中心に薄肉化が進み、表面保護フィルムは傷や汚れの発生を防止するだけではなく該部材の支持体としての役割も求められ、クリーン性とともにコシの強さも併せもつことが要求されるようになってきているが、それにも応えられていないという問題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−170056号公報
【特許文献2】特開昭54−133578号公報
【特許文献3】特開平06−328633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであって、コシの強さと低粉性、優れた防汚性といったクリーン性を併せ持ち、さらには粘着力の経時安定性に優れた、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の線状ポリエチレンを基材層に用いることで、上記の目的に適合することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]基材層と粘着層とからなる表面保護フィルムであって、基材層が多層であり、少な
くともその1層が線状ポリエチレンまたは線状ポリエチレンと熱可塑性樹脂の混合物からなり、該線状ポリエチレンが、密度が930kg/m3 以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上50g/10min以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上、10以下であり、該線状ポリエチレン中の換算分子量が105 以上106 以下の成分に含まれるメチル基量に対する換算分子量が103 以上104 以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満の線状ポリエチレンであることを特徴とする表面保護フィルム。[2]線状ポリエチレンが、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いる重合法で得られる線状ポリエチレンであることを特徴とする上記[1]記載の表面保護フィルム。
[3]線状ポリエチレンが、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない線状ポリエチレンであることを特徴とする上記[1]または[2]記載の表面保護フィルム。
[4]該熱可塑性樹脂が、高圧法低密度ポリエチレン、チーグラー触媒またはメタロセン触媒を用いて重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレン、チーグラー触媒を用いて重合して得られる高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、エチレン・アクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メタクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・エチルアクリレート共重合ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドからなる群から選ばれる1種以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コシの強さと低粉性、優れた防汚性といったクリーン性を併せ持ち、さらには粘着力の経時安定性に優れた、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面保護フィルムは、基材層が線状ポリエチレンからなり、該線状ポリエチレンは、密度が930kg/m3 以上、好ましくは932kg/m3 以上、メルトマスフローレイト(以下「MFR」と略す。)が0.1g/10min以上50g/10min以下、好ましくは0.3g/10min以上40g/10min以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略す。)で得られる数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上10以下であり、好ましくは3以上7以下であり、該線状ポリエチレン中の換算分子量が105 以上106 以下の成分に含まれるメチル基量に対する換算分子量が103 以上104 以下の成分に含まれるメチル基量の比(以下「メチル基量比」と略す。)が1.0未満、好ましくは0.9未満である。本発明の表面保護フィルムにおける、基材層の線状ポリエチレンの密度、MFR、分子量分布、メチル基量比が上記の範囲内である場合には、コシの強さと低粉性、優れた防汚性といったクリーン性を併せ持ち、さらには粘着力の経時安定性に優れ、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムを提供するという目的を達成できる。
【0008】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層の線状ポリエチレンの密度、MFR、分子量分布、メチル基濃度比が上記範囲外であるときの問題点について以下に述べる。
密度が930kg/m3 未満であるとフィルムのコシが不足して被保護物の支持体としての適性が損なわれ、また、フィルムにシワができ易くなるという不具合を発生する。MFRが0.1g/10min未満であると高速製膜性の低下や共押出性の低下をもたらす。MFRが50g/10minを超えるとインフレーション製膜時のバブルの不安定化、
Tダイ製膜時のネックイン増大、という成形加工上の問題を起こす。また、低粉性も損なわれる。
分子量分布が2未満だと成形時の押出負荷が大きくなり、10を超えると低粉性の悪化や成形加工時の発煙量が増えるという問題を招来する。さらに、メチル基量比が1.0以上だと低粉性や粘着力の経時安定性が悪化するということになる。
なお、メチル基量比は、後述するGPCによる分子量分布測定において、試料濃度を変更した以外は同様の方法で分子量分布の測定を行い、同時に溶出成分の赤外分光分析をパーキンエルマー社製;FT−IRスペクトラム2000で行ってメチレン基に帰属される吸光度I(メチレン)(吸収波数:2925cm-1)とメチル基に帰属される吸光度I(メチル)(吸収波数:2960cm-1)から両者の比、I(メチル)/I(メチレン)からメチル基濃度を求め、その溶出成分の重量%を乗じることで得ることができるが、詳細は後述する。
【0009】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層の線状ポリエチレンは、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いるポリエチレンの重合法で得る必要がある。重合法は公知の各種方法を使用でき、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合或いは攪拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などが挙げられるが、不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましい。
本発明の表面保護フィルムにおける基材層の線状ポリエチレンは、エチレン単独からなるホモポリマーであってもエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合ポリマーであってもよく、エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、6−メチル−ヘプテン−1などが挙げられる。また、これらを2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0010】
上記の重合法において用いられる担持型幾何拘束型シングルサイト触媒(以下「メタロセン触媒」と略す。)とは、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η性結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製される。(ウ)の環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物中の遷移金属原子としてチタニウムを用いることが特開平11−166009号公報に記載されている。
担体物質(ア)としては、有機担体、無機担体のいずれでもよい。有機担体としては、好ましくは(1)炭素数2〜20のα−オレフィンの重合体、例えば、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリブテン−1、エチレン・プロピレン共重合ポリマー、エチレン・ヘキセン−1共重合ポリマー、プロピレン・ブテン−1共重合ポリマー、エチレン・ヘキセン−1共重合ポリマー等、(2)芳香族不飽和炭化水素共重合ポリマー、例えば、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合ポリマー等、および(3)極性基含有重合体ポリマー、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート等である。無機担体としては(4)無機酸化物、例えば、SiO2 、Al2 2 、MgO,TiO2 、B2 3 、CaO、ZnO、BaO、ThO,SiO2 −MgO、SiO2 −Al2 3 、SiO2 −MgO、SiO2 −V2 5 など、(5)無機ハロゲン化合物、例えば、MgCl2 、AlCl3 ,MnCl2 等、(6)無機の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、例えば、Na2 CO3 ,K2 CO3 、CaCO3 、MgCO3 、Al2 (SO4 3 、BaSO4 、KNO3 、Mg(NO3 2 等、(7)水酸化物、例えば、Mg(OH)2 、Al(OH)3 、Ca(OH)3 等が例示される。最も好ましい担体はSiO2 である。
担体の粒子径は任意であるが、一般的には1μm〜3000μm、粒子の分散性の見地
から、粒子径分布は好ましくは10〜1000μmの範囲内である。
【0011】
上記担体物質は必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理される。好ましい有機アルミニウム化合物としては、一般式(−Al(R)O−)n で示される直鎖状、あるいは環状重合体(一般式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/またはRO基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)等が挙げられ、具体例としてRがメチル基、エチル基、イソブチルエチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルエチルアルモキサン等が挙げられる。
更にその他の有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルメニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、セスキアルキルハイドロアルミニウムなどが挙げられる。
【0012】
その他の有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキメチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド等のセスキアルキルハロゲノアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライド等を挙げることができる。これらの中で最も好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドである。
【0013】
担持触媒は、例えば、下記式(1)で示される(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物を含む。
【化1】

式中、Mは1つ以上の配位子Lとη5 結合をしている酸化数+2、+3、+4の長周期型周期律表第4族遷移金属であり、特に遷移金属としてはチタニウムが好ましい。
又Lは環状η結合性アニオン配位子であり、各々独立にシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、またはオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビ基、ヒドロカルビオルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカルバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、ジラジイル、ハロシラジイル、アミノシランなどの2価の置換基により結合されていてもよい。
【0014】
Xは各々独立に、60個までの非水素原子を有する1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、またはM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオンσ結合型配位子である。
X' は各々独立に炭素数4〜40からなるフォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン、及び/又は共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物である。
又、lは1または2の整数である。pは0、1又は2の整数であり、Xが1価のアニオ
ン性σ結合型配位子又はM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl以上少なく、またはXがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl+1以上少ない。又qは0、1または2である。遷移金属化合物としては上記式(1)でl=1の場合が好ましい。
【0015】
例えば、遷移金属化合物の好適な例は、下記式(2)で表される。
【化2】

式中、Mは形式酸化数+2、+3又は+4のチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特にチタニウムが好ましい。
また、R3 は各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20個までの非水素原子を有することができる。又近接するR3 同士がヒドロカルバジイル、ジラジイル、またはゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
X" は各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基、またはシリル基であり、各々20個までの非水素原子を有しており、また2つのX" が炭素数5〜30の中性共役ジエン、もしくは2価の誘導体を形成してもよい。
Yは、−O−、−S−、−NR* −、−PR* −であり、ZはSiR* 2 、CR* 2 、SiR* 2 SiR* 2 、CR* 2 CR* 2 、CR* =CR* 、CR* 2 SiR* 2 またはGeR* 2 であり、ここでR* は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基である。又、nは1乃至3の整数である。
【0016】
さらに、遷移金属化合物として、より好適な例は、下記式(3)および下記式(4)で表される。
【化3】

【化4】

【0017】
式中、R3 は各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20までの非水素原子を有することができる。また、遷移金属Mはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、チタニウムが好ましい。
Z、Y、X及びX' の定義は前出のとおりである。pは0、1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXはハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基またはこれらの複合基であり、20個までの非水素原子を有している。
また、pが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXはアリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基または2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子であるか、もしくはMの酸化数が+4であり、且つXが2価の共役ジエンの誘導体であるか、あるいはMとXがともにメタロシクロペンテン基を形成している。
また、pが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX' は中性の共役或いは非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素で置換されていてもよく、又該X' は40までの炭素原子を含み得るものであり、Mとπ型錯体を形成している。
【0018】
さらに、本発明において、遷移金属化合物として最も好適な例は、下記式(5)及び下記式(6)で表される。
【化5】

【化6】

【0019】
式中、R3 は各々独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基である。又Mはチタニウムであり、Yは−O−、−S−、−NR* −、−PR* −であり、Z* はSiR* 2 、CR* 2 、SiR* 2 SiR* 2 、CR* 2 CR* 2 、CR* =CR* 、CR* 2 SiR2 またはGeR* 2 であり、ここでR* は各々独立に水素、或いは炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基またはこれらの複合基である。該R* は20個までの非水素原子を有することができ、又必要に応じてZ* 中の2つのR* 同士またはZ* 中のR* とY中のR* が環状となっていてもよい。
pは0,1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXは各々独立にメチル基またはヒドロベンジル基である。
また、pが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXが2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基であるか、或いはMの酸化数が+4でありかつXが2−ブテン−1,4−ジイルである。
また、pが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX' は1,4−ジフェニル−1、3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンである。
【0020】
前記ジエン類は金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
また、メタロセン触媒は(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤を含む。通常メタロセン触媒においては、遷移金属化合物と上記活性化剤により形成される錯体が、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
活性化剤としては例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化7】

但し式中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mm t d-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又mは1乃至7の整数であり、tは2乃至14の整数であり、dは1乃至7の整数であり、t−m=dである。
【0021】
活性化剤のより好ましい例は下記式(8)で表される化合物である。
【化8】

但し式中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mm w (Gu (T−H)r z d-は相溶性の非配位性アニオンであ
り、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又GはM及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NRまたはPRであり、ここでRはヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、もしくは水素である。
又mは1乃至7の整数であり、wは0乃至7の整数でありuは0または1の整数であり、rは1乃至3の整数であり、zは1乃至8の整数であり、w+z−m=dである。
【0022】
活性化剤のさらに好ましい例は下記式(9)で表される化合物である。
【化9】

但し式中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[BQ3 * - は相溶性の非配位性アニオンであり、Bはホウ素原子、Qはペンタフルオロフェニル基であり、Q* は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリール基である。
【0023】
非配位性アニオンの具体例としては、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4’−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等があげられ、最も好ましいのは、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートである。
【0024】
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHRで置き換えられたボレートが挙げられる。ここでRは好ましくはメチル基、エチル基またはtert−ブチル基である。
また、プロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、およびトリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、又N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウムなどのようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
【0025】
本発明の表面保護フィルムにおける、基材層の線状ポリエチレンは、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない。充填剤としては、アルミノケイ酸塩、タ
ルク、珪藻土、カオリン、クレー等が挙げられ、スリップ剤としては、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が挙げられる。酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤があるが、フェノール酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタン等、リン系酸化防止剤としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−t−ブチルフェニルフォスファイト)等が挙げられる。
【0026】
ここでいう含有とは該線状ポリエチレンを改質あるいは改良することを目的として上記の充填剤、スリップ剤、酸化防止剤を該線状ポリエチレンに配合することであって、該線状ポリエチレンの製造中に不可避的に添加剤が微量混入するような場合、あるいは触媒や反応開始剤などが微量残存するような場合には含有しているとはいわない。
充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を含有していると、被保護物への防汚性を損なう、被保護物との粘着性が経時的に低下する、非保護物表面を傷つけるという問題を招来するので好ましくない。なお、帯電防止剤、中和剤、顔料、着色剤等の上記以外の添加剤は含有していてもよい。帯電防止剤としては、非イオン性活性剤、イオン性活性剤、両性活性剤やその混合物が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。中和剤としては、各種のステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。
【0027】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層の線状ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレン、チーグラー触媒またはメタロセン触媒を用いて重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレン、チーグラー触媒を用いて重合して得られる高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、エチレン・アクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メタクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・エチルアクリレート共重合ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を1種類または2種類以上ドライブレンド、あるいはメルトブレンドしてもよい。
本発明の表面保護フィルムは、共押出法によるインフレーション製膜、Tダイ製膜で基材層と粘着層を積層させて得ることができるし、あるいは基材フィルムをインフレーション製膜、Tダイ製膜で得た後に粘着剤を塗布して得ることもできるが、特に限定されるものではない。
【0028】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層は、多層であり、少なくともその1層に当該線状ポリエチレンを単体で、または上述の熱可塑性樹脂と混合して用い、好ましくは粘着層と接触する層に当該線状ポリエチレンを単体で、または上述の熱可塑性樹脂と混合して用いることが好ましい。なお、各層の厚み比は特に限定しない。
本発明の表面保護フィルムの粘着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンなどの公知の粘着性樹脂を単独であるいは高圧法低密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどのエラストマー、テルペン樹脂、石油樹脂などの粘着助剤などを混合してもよく、共押出法によるインフレーション製膜、Tダイ製膜で基材層と積層することができる。あるいは天然ゴム、アクリル系、ポリイソブチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、スチレン・ブチレン・スチレン共重合ポリマー、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合ポリマー等の粘着剤を基材層に塗布して粘着層とすることもできる。基材層に対する粘着層の厚み比は特に限定しない。
本発明の表面保護フィルムは、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材
用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用に好適に用いられるが、中でも液晶部材である光学系フィルムの表面保護フィルムとして極めて好適に用いられる。
【実施例】
【0029】
本発明について、以下具体的に説明する。
尚、物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
(1)密度
JIS−K−7112:1999
(2)メルトマスフローレイト(MFR)
JIS−K−7210:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)
(3)分子量分布
GPCから求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とする。GPC測定は、ウォーターズ社製;GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製;UT−807(1本)と東ソー(株)製;GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度140℃、流量1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml(TCB)、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行う。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMwが1050〜206万の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定する。
【0030】
(4)メチル基量比
上記の分子量分布測定において試料濃度を20mg/10ml(TCB)に変更した以外は同様の方法で分子量分布の測定を行い、同時に溶出成分の赤外分光分析をパーキンエルマー社製FT−IRスペクトラム2000で行ってメチレン基に帰属される吸光度I(メチレン)(吸収波数:2925cm-1)とメチル基に帰属される吸光度I(メチル)(吸収波数:2960cm-1)から両者の比、I(メチル)/I(メチレン)を得て、溶出成分のメチル基濃度を算出する(単位は個/1000(C)で表す。)。該線状ポリエチレン中の換算分子量が105 以上106 以下のエチレン系重合体のメチル基量は、同分子量を対数値で表し、すなわち同分子量が105 であれば5.0になるが、それから6.0に達するまで0.03〜0.04ずつ増やした分子量で区分される溶出成分のメチル基濃度を測定し、それに同溶出成分の重量分率を乗じ、それらを合計することによって得ることができる。換算分子量が103 以上104 以下のエチレン系重合体のメチル基量は同分子量を対数値で表し、すなわち同分子量が103 であれば3.0になるが、それから4.0に達するまで0.03から0.04ずつ増やした分子量で区分される溶出成分のメチル基濃度を測定し、それに同溶出成分の重量分率を乗じ、それらを合計することによって得ることができる。メチル基量比は換算分子量が103 以上104 以下のエチレン系重合体のメチル基量を同分子量が105 以上106 以下のエチレン系重合体のメチル基量で除して算出される。
【0031】
(5)コシ
後述するフィルムの製法にしたがって得られる厚みが0.06mmのインフレーション製膜フィルムを用いて、JIS−K−2127に準拠して縦方向、横方向の2%引張弾性率を測定し、それを平均する。平均値が190MPa以上であればコシが強いと評価する。一方でそれ未満であれば不良と評価する。
(6)低粉性
上記のコシ評価用のインフレーション製膜フィルムを50℃で24時間加熱し、23℃で24時間冷却した後に固定ロールに貼りつけた黒色のフェルト布に基材層面を接触させながら20m長走行させ、基材層面の粉をフェルト布上に集積させる。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、粉の発生がない、またはわずかに発生しているが集積が部分的で
ある場合には低粉性が優れると評価する。一方、粉が多く発生しており、フィルムとフェルト布が接触し始める部分に帯状に連続的に集積している場合には低粉性が劣ると評価する。粉の量や集積状態が両者の中間であれば、低粉性はやや優れると評価する。
【0032】
(7)防汚性
厚さ3mmのポリカーボネート板を60℃に加熱して、コシ評価用のインフレーション製膜フィルムを粘着層が接触するように貼り付け、23℃で24時間放置後、100℃で1時間再度加熱し、ついで23℃で24時間放置してからフィルムを剥がす。ポリカーボネート板の剥離面を目視観察し、汚れがなければ防汚性が優れると評価する。汚れがあれば防汚性が劣ると評価する。
(8)粘着力の経時安定性
コシ評価用のインフレーション製膜フィルムを粘着層が接触するように、60℃に加熱した厚さ3mmのポリカーボネート板に貼り付け、23℃で24時間放置後、剥離幅50mm、剥離角度180度、引張速度500mm/minの条件で剥離強力を測定し、初期粘着力とする。コシ評価用のインフレーション製膜フィルムを50℃で24時間加熱し、以下上記と同様にして剥離強力を測定し、経時粘着力とする。経時粘着力が初期粘着力の90%以上であれば粘着力の経時安定性に優れると評価し、90%未満であれば劣ると評価する。
【0033】
[メタロセン触媒を用いた線状ポリエチレンの製法]
6.2g(8.8mmol)のトリエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートを4リットルのトルエンに加え90℃、30分攪拌した。次にこの溶液に1mol/lのトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液40mlを加え90℃で分間攪拌した。一方シリカP−10(日本、富士シリシア社製:商品名)を500℃で3時間窒素気流内で処理し、その処理後のシリカを1.7lのトルエン中に入れ攪拌した。このシリカスラリー溶液に、上記トリエチルアンモニウムトリエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートとトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液を加え3時間90℃で攪拌した。
次に、1mol/lのトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液206mlを加え、さらに90℃で1時間攪拌した。その後、上澄み液を90℃のトルエンを用いて、デカンテーションを5回行い過剰のトリヘキシルアルミニウムを取り除いた。0.218mol/lの濃い紫色のtitaniumu(N−1,1−ジメチルエチル)ジメチル(1−(1,2,3,4,5−eta)−2,3,4,5−テトラメチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)シラナミナート)((2−)N−(η4−1,3−ペンタジエン)のISOPAR TME(米国 Exxon化学社製)溶液20mlを上記混合物に加え、3時間攪拌し緑色のメタロセン触媒を得た。
得られたメタロセン触媒は触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素を接触させて重合反応器に導入し、溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレン、必要に応じてブテン−1を用いて、所定のガス組成になるように各モノマーを供給し、反応温度75℃、全圧が0.8MPaで線状ポリエチレンを重合した。得られた線状ポリエチレンは日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径;65mm、L/D=28)を用い、200℃にて押出して造粒した。
【0034】
[チーグラー触媒による線状ポリエチレンの製法]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg6 (C2 5 3 (n−C4 9 6.4 (On−C4 9 5.6 で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥し
て分析した結果、固体1グラム当たり、Mg 7.45ミリモルを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルおよび四塩化チタン1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
上記で得られた触媒を用い、下記の要領で線状ポリエチレンを製造した。
単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合した。重合温度は86℃、重合圧力は0.98MPaである。この重合器に合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15ミリモル/hr、ヘキサンは60リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、必要に応じてブテン−1を所定のガス組成になるように導入して重合を行い、得られた線状ポリエチレンは日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径;65mm、L/D=28)を用いて、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、ステアリン酸カルシウムを添加し200℃にて押出して造粒した。
【0035】
[フィルムの製法]
スクリュー径50mmφの押出機3台、120mmφ、ギャップ2.5mmのダイスを備えた3層インフレーション製膜機で、内層を粘着層として酢酸ビニル濃度9重量%、MFR=1.0g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合ポリマーを用い、基材層としては粘着層と接触する中間層あるいは外層に当該線状ポリエチレンまたは当該線状ポリエチレン以外のその他のポリエチレンをそれぞれ単独で、あるいは混合して用いて、温度180℃で押出し、ブロー比2の条件で、内層、中間層、外層の厚み比が1:2:2、すなわち粘着層と基材層の厚み比が1:4のフィルムを製膜した。
【0036】
参考例1〜6、実施例1、2
表1および表2記載のエチレン、ブテン−1および水素のガス組成、ならびに、上記のメタロセン触媒による線状ポリエチレンを用いてインフレーション製膜をした。コシ、低粉性、防汚性、粘着力の経時安定性の評価結果を表1および表2に併せて示した。なお、基材層に用いた当該線状ポリエチレン以外の熱可塑性樹脂は密度が920kg/m3 、MFRが2.0g/10minの添加剤無添加の高圧法低密度ポリエチレンである。粘着層には上述の通り酢酸ビニル濃度9重量%、MFR=1.0g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合ポリマーを用いた。表1および表2に記載の使用樹脂Aは各実施例記載の線状ポリエチレン、使用樹脂Bは上記高圧法低密度ポリエチレン、使用樹脂Cは上記エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマーをそれぞれ表し、カッコ内の数字は混合して使用したときの重量%を示す。
【0037】
[比較例1〜4]
表3記載のエチレン、ブテン−1および水素のガス組成、ならびに、上記のチーグラー触媒による線状ポリエチレンの製法によって線状ポリエチレンを得て、次いで実施例1と同様にしてインフレーション製膜をした。コシ、低粉性、防汚性、粘着力の経時安定性の評価結果を表3に併せて示した。表3記載の使用樹脂A、B、Cは比較例記載の線状ポリエチレン、上記高圧法低密度ポリエチレン、上記エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマーをそれぞれ表し、カッコ内の数字は混合して使用したときの重量%を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の表面保護フィルムはコシの強さと低粉性、優れた防汚性といったクリーン性を併せ持ち、さらには粘着力の経時安定性に優れた、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着層とからなる表面保護フィルムであって、基材層が多層であり、少なくともその1層が線状ポリエチレンまたは線状ポリエチレンと熱可塑性樹脂の混合物からなり、該線状ポリエチレンが、密度が930kg/m3 以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上50g/10min以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上、10以下であり、該線状ポリエチレン中の換算分子量が105 以上106 以下の成分に含まれるメチル基量に対する換算分子量が103 以上104 以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満の線状ポリエチレンであることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
線状ポリエチレンが、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いる重合法で得られる線状ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
線状ポリエチレンが、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない線状ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
該熱可塑性樹脂が、高圧法低密度ポリエチレン、チーグラー触媒またはメタロセン触媒を用いて重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレン、チーグラー触媒を用いて重合して得られる高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、エチレン・アクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メタクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・エチルアクリレート共重合ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドからなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2012−122071(P2012−122071A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1041(P2012−1041)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2005−298532(P2005−298532)の分割
【原出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】