説明

表面修飾金属微粒子および該金属微粒子を含有するペースト

【課題】保存安定性に優れるとともに、リフロー特性、はんだ付け性、印刷性などの特性に優れ、はんだペーストとして好適な金属微粒子含有ペースト、及びそのための金属微粒子を提供すること。
【解決手段】金属微粒子の表面に、チオール化合物が修飾されてなる金属微粒子、および該チオール化合物が修飾されてなる金属微粒子を含有するペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子、及び金属微粒子を含むペーストに関する。本発明は特にはんだペースト用途として有用な金属微粒子、及び金属微粒子を含むペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ付けは、回路基板に電子部品を実装する場合などに利用されている。最近の電子機器では、回路基板上への部品の高密度実装を実現するために、表面実装技術が使われている。かかる部品の表面実装においては、いわゆるはんだペーストが使われている。
【0003】
一方、最近では電子製品の小型化のためファインピッチ化が要求されている。このため、はんだペースト中の金属微粒子の微細化がなされている。しかし、この金属微粒子の粒径を細かくした結果、はんだペーストの粘度が次第に増加するという保存安定性が低下するという問題点が出てきた。ペーストの粘度が高くなると取り扱い性が悪化するのみならず配線パターンを正確に形成できないため印刷特性が維持出来なくなる上に、リフロー時に溶解しなくなる。
【0004】
特に最近は環境問題から、鉛を含まない鉛フリーはんだペーストが検討されている。しかし鉛フリーはんだペーストの多くは、通常の鉛ベースのはんだペーストより更に保存安定性が悪い。このようにはんだペーストの経時的な粘度の上昇は解決しなければならない課題として顕在化してきた。
【0005】
このはんだペーストの保存安定性低下は、金属微粒子の比表面積が増大するため、保存中に金属微粒子の酸化が進行して金属の表面の水酸基とマトリックスを形成するフラックスとの反応が促進され、はんだペーストの粘度が増加してしまうためと考えられている。
【0006】
従来より、金属粒子含有ペーストの保存安定性を向上させるために、様々な提案がなされている。例えば、金属粒子表面の酸化物を除去する効果があるペーストを形成するフラックスの活性化剤を増量することが考えられるが、これらを多量にフラックスに添加すると、保存中にはんだ粒子と反応してしまい、同時にフラックス中のもう1つの有効成分である有機ハロゲン化合物の分解を引き起こし、はんだペーストを劣化させてしまう。
【0007】
金属微粒子の反応性を下げるために金属微粒子の表面を保護する方法も提案されている。例えば、特許文献1では金属微粒子の表面をグリセリンで修飾する方法が提案されている。また、特許文献2では、金属粒子表面を燐酸系、亜燐酸系、次亜燐酸系化合物で修飾する方法が、特許文献3には、、金属粒子表面を高級脂肪酸で修飾する方法が提案されている。しかし、これらの公知の方法ではペーストの保存安定性に対する充分な効果が得られていない。
【特許文献1】特公平5−26598号公報
【特許文献2】特開2000−345203号公報
【特許文献3】特開2000−345202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保存安定性に優れるとともに、リフロー特性、はんだ付け性、印刷性などの特性に優れ、はんだペーストとして好適な金属微粒子含有ペースト、及びそのための金属微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、金属微粒子の表面に、チオール化合物が修飾されてなる金属微粒子である。
【0010】
チオール化合物は、炭素数1〜20の炭化水素チオールであることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、金属微粒子の表面に、チオール化合物、およびシラン化合物が修飾されてなる金属微粒子である。
【0012】
金属微粒子の粒径は、0.1〜200μmの範囲にあることが好ましい。
【0013】
別の面から見ると、本発明は金属微粒子の表面に、チオール化合物が修飾されてなる金属微粒子を含有するペーストである。
【0014】
別の面から見ると、本発明は金属微粒子の表面に、チオール化合物、およびシラン化合物が修飾されてなる金属微粒子を含有するペーストである。
【0015】
本発明では、ペーストは、特にはんだペーストを対象としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属微粒子を用いた金属微粒子含有ペーストは、貯蔵時間経過による粘度増加がほとんどなく保存安定性に優れるとともに、リフロー特性、はんだ付け性、印刷性などの特性に優れる。従って、はんだペースト、導電ペーストとしてとして好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明につき詳しく説明する。本発明の第一の発明は、金属微粒子の表面に、チオール化合物、またはチオール化合物とシラン化合物が修飾されてなる金属微粒子である。
【0018】
本発明における金属微粒子の素材である金属は特に限定されないが、はんだ用金属、例えばSn−Pb系、Sn−Pb−Ag系、Sn−Pb−Bi系、Sn−Pb−Bi−Ag系、Sn−Pb−Cd系が挙げられる。また最近のPb排除の観点からPbを含まないSn−In系、Sn−Bi系、In−Ag系、In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Au系、Sn−Bi−Ag−Cu系、Sn−Ge系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Cu−Sb−Ag系、Sn−Ag−Zn系、Sn−Cu−Ag系、Sn−Bi−Sb系、Sn−Bi−Sb−Zn系、Sn−Bi−Cu−Zn系、Sn−Ag−Sb系、Sn−Ag−Sb−Zn系、Sn−Ag−Cu−Zn系、Sn−Zn−Bi系が挙げられる。
【0019】
これらはんだ用金属のうち、好ましい金属としては、金メッキの表面にはAu/Sn、Au/Ge、Au/Si、Au/Sb、Ag/Cu等の合金が採用されている。低融点が必要な用途にはIn/Al、In/Ge等のIn系合金が採用されている。その他錫系としては、錫/銀、錫/金、錫/アンチモン、錫/銅、錫/インジウムが、アルミニウム系ハンダとしては、アウミニウム/シリコン系合金が、ビスマス系としては、ビスマス/アンチモン系合金が採用されている。これらは120℃から350℃の融点を有している。
【0020】
本発明の金属微粒子ははんだ用に限定されるものではない。例えば、蓄電池の電極用途、導電性ペースト用あるいはビアホール用金属微粒子にも使用できる。このような内部電極用金属微粒子として用いられる金属としては、ニッケル、白金、パラジウム、銀−パラジウム、銅等を挙げることができる。ビアホール用ペーストには金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫、鉛これらの合金を用いることができる。
【0021】
用いられる金属粒子の直径は使用される用途によっても異なるが、一般に0.5〜500μm、はんだ用は20〜60μm、セラミックコンデンサー電極用は0.2〜1μm、ビアホール用は2〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【0022】
上記金属微粒子は、例えば溶融金属に高圧のガス流を噴射して粒状化するガスアトマイズ法、溶融金属に高圧の水流を噴射して粒状化する水アトマイズ法、遠心噴霧法、化学還元法、電解析出法等の公知の方法で製造することができる。このような方法で製造した金属微粒子は更に解砕、粉砕、磨砕もしくは分級等の工程で粒径、粒度分布を調整したものであってもよい。
【0023】
金属微粒子は、表面をチオール化合物等で修飾する前に表面に水酸基を形成しておくことができる。このように水酸基を形成するには、通常金属微粒子をアルカリ水溶液に浸漬することで達成することができる。アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を挙げることができる
【0024】
本発明の金属微粒子はチオール化合物、またはチオール化合物とシラン化合物で修飾されている。本発明におけるチオール化合物は、好ましくは炭化水素化合物の水素がチオール(SH)で置換されている化合物である。本発明で用いるチオール化合物におけるチオール基は1つで、かつチオール基は炭化水素鎖の末端に存在することが好ましい。
【0025】
チオール化合物を構成する炭化水素基としては、直鎖状あるいは分岐状飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環属炭化水素基、芳香族炭化水素基を挙げることができる。直鎖状あるいは分岐状飽和炭化水素基としては、炭素数1〜20の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル基を挙げることができる。また、不飽和炭化水素基としては、オレイル基を挙げることができる。
【0026】
脂環族炭化水素基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル等を挙げることができる。
【0027】
芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α- またはβ- ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリル等のアリール基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリール炭化水素基などを挙げることができる。
【0028】
これらのチオール化合物は、2種あるいはそれ以上を混合して用いることもできる。
【0029】
チオール化合物としては、具体的には、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、シクロペンチルジオール、ノルボニルチオール、フェニルチオール、トルイルチオール等を挙げることができる。これらの中では、ヘキサデカンチオール、及びオクタデカンチオールが好ましい。
【0030】
金属微粒子の表面にチオール化合物を修飾するには、例えば、チオール化合物を溶解した溶媒中に金属粒子を投入し、撹拌することで表面に修飾することができる。このような目的で使用しうる溶媒としては、チオール化合物を溶解しうる溶媒、例えば、アセトン、等のケトン類、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール類、エチルエーテル、トルエン、キシレン、テトロヒドロフラン等の有機溶媒を用いることができる。
【0031】
また、チオール化合物を融解させ、これに金属微粒子を投入し、撹拌することで表面に修飾することができる。また、その他にもチオール化合物を気化させ金属微粒子をその蒸気に晒す方法などを挙げることができる。
【0032】
チオール化合物の金属微粒子に対する修飾量は、金属微粒子に対し、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.05〜0.5重量%であることが一層好ましい。
【0033】
本発明の金属微粒子はチオール化合物とともにシラン化合物で修飾されていてもよい。本発明におけるシラン化合物とは、下記(1)式の構造を有する化合物をいう。
【0034】
【化1】

【0035】
(R1は炭素数1〜20の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、X1、X2、X3の少なくとも1つはBr基、Cl基、I基からなる群から選ばれるハロゲン基あるいはメトキシ(CH3O)基、エトキシ(CH3CH2O)基からなる群から選ばれるアルコキシ基))
【0036】
上記(1)式の構造式を有する化合物としては、具体的には、オクチルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、デカントリクロロシラン、ウンデカントリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、トリデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、ヘプタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリコロロシラン、ノナデシルトリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、ノルボニルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルジメチルメトキシシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの中では、オクチルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、及びオクタデシルトリクロロシランが好ましい。
【0037】
金属微粒子に対するシラン化合物の修飾量は、0.05〜5重量%の範囲とすることが好ましい。また、金属微粒子への修飾方法は、上記チオール化合物と同様の方法で行なうことができる。
【0038】
チオール化合物とシラン化合物とは、予め1つの溶媒に混合しておき、そこに金属微粒子を投入して修飾させてもよいが、最初にチオール化合物修飾処理をし、次いでシラン化合物での処理を行なうことが好ましい。
【0039】
本発明は、上記チオール化合物、またはチオール化合物とシラン化合物を修飾した金属微粒子を含むペースト、とくにはんだペーストまたは導電ペーストである。本発明で、はんだペーストとは、リフローにより金属微粒子を溶融して用いるためのペーストであり、導電ペーストはリフローさせずに導電性を持たせた状態で接着剤として用いることのできるペーストをいう。
【0040】
はんだペーストは、典型的には、はんだフラックス、有機溶媒、粘調剤、および界面活性剤とともに混合した材料である。また、フラックスとして、樹脂、有機酸成分、還元剤、有機ハロゲン化合物、溶剤、粘度調整剤等を配合したものである。
【0041】
フラックス用樹脂としては通常、ロジン、例えば天然ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジン、すなわちアビエチン酸とその誘導体が用いられている。ロジンはペースト中に10〜20重量%程度配合される。
【0042】
活性化剤としては、ハロゲン化物、例えば、弗化ナトリウム、弗化亜鉛、弗化アンモニウム等の弗化物、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化亜鉛、塩化錫、塩化銅、塩化ニッケル、塩化アンモニウム、塩酸アニリン、塩酸ヒドラジン等の塩化物、臭化物等を挙げることができる。好ましくは有機塩基のハロゲン化水素酸塩、例えばイソプロピルアミン臭化水素酸塩、ブチルアミン塩化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩等のハロゲン化水素酸アミン塩、1,3−ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩等が挙げられる。
【0043】
本発明のはんだペーストにおいて配合されるロジン以外の樹脂成分としては、従来フラックスやはんだに配合される周知の樹脂を用いることができ、例えば、合成樹脂としてはポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂その他が用いられる。
【0044】
溶剤としては、従来のフラックスやはんだペーストと同様にアルコール類、エーテル類、エステル類、又は芳香族系の溶剤が利用でき、例えばベンジルアルコール、ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジオクチルフタレート、テルピネオール、テトラリン、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン等が一種または混合して用いられる。
【0045】
粘度調整剤としては、グリセリン、ポリエチレンギリコール、ポリプロピレンギリコール、硬化ひまし油等を用いることができる。
【0046】
上記本発明のはんだペーストに用いることのできるフラックスにおいては、各成分の配合比は、例えば、ロジン100重量部に対して、溶媒50〜90重量部、粘調剤5〜20重量部を混合したものが好ましく使用される。
【0047】
本発明の金属微粒子含有ペーストの1実施態様である導電ペーストは、マトリックスを形成する樹脂とチオール化合物、あるいはチオール化合物とシラン化合物で表面が修飾された金属微粒子とからなるペーストである。このような導電ペーストにおいて用いることのできる樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース等のセルロース誘導体等を挙げることができる。導電ペーストは、樹脂、金属微粒子の他にガラスフリットを含有していてもよい。
【0048】
本発明の導電ペーストにおいて、樹脂と金属微粒子以外に還元剤、粘度調節剤、pH調節剤等を配合することができる。このうち、導電ペーストに配合しうる還元剤としては、通常樹脂などの酸化防止剤として使用されており、溶剤に溶解可能なフェノール系化合物、燐系化合物、硫黄系化合物、トコフェロール及びその誘導体、L−アスコルビン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0049】
フェノール系化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などを挙げることができる。
【0050】
燐系化合物としては、具体的には、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト等を挙げることができる。
【0051】
また硫黄系化合物としては、具体的には、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等を挙げることができる。
【0052】
また印刷性を改善するために添加される粘度調整剤としては、微細なシリカ粒子
、カオリン粒子などの無機系のもの、または水添ヒマシ油、アマイド化合物などの有機系のものを挙げることができる。
【0053】
pH調整剤としては、アルカノールアミン類、脂肪族第1〜第3アミン類、脂肪族不飽和アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類などのアミン化合物を用いることができる。
【0054】
これらアミン化合物の具体的な化合物としては、例えば、エタノールアミン、ブチルアミン、アミノプロパノール、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウレルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、エチルヘキシルアミン、エトキシプロピルアミン、エチルヘキシルオキシプロピルアミン、ビスプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミンなどを挙げることができる。
【0055】
本発明の金属微粒子含有ペーストは、上記の各成分を混合後、公知のようにボールミル、三本ロール、かいらい機等の混練機を用いて混練することにより製造することができる。
【0056】
本発明の金属微粒子含有ペースト、特にはんだペーストを塗布する対象物としては、回路基板や電子部品が挙げられ、導電性ペーストの接続対象物としては電子部品が挙げられる。このような塗布対象である基板はの材質がとくに限定されず、ガラスエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の有機材料、アルミナ等のセラミック材料であってもよい。
【0057】
上記方法で得られた本発明の金属微粒子を含むペースト、とくにはんだペーストは、例えばプリント基板上にスクリーン印刷またはディスペンサーにより塗布され、電子部品が載置され、ついでリフローして電子部品が固定化される。ここでリフローとは電子部品が載置された基板をはんだペーストの溶融温度以上に加熱し部品の接合を行う操作を言う。
【0058】
基板と電子部品の接合方法としては、具体的には、まずはんだペーストを印刷法により基板、例えば配線板上の所望する箇所に塗布する。次いで、チップ部品などの電子部品をはんだペースト上に載置し、リフロー熱源により金属を溶融させ、一括してはんだ付けする。リフロー熱源には、熱風炉、赤外線炉、蒸気凝縮はんだ付け装置、光ビームはんだ付け装置等を使用することができる。
【実施例】
【0059】
次ぎに実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、発明はこれらの実施例になんら制約されるものではない。なお、本発明の実施例における金属微粉末の接触角は、接触角計を用いて水の接触角を測定することで行なった。
【0060】
(実施例1)
(チオール化合物修飾金属微粒子の製造)
金属微粒子としては、材質がSn−3.0Ag−0.5CuのハンダボールAを用いた。また、チオール化合物としては、オクタデカンチオールを用いた。500mL容の容器にメタノール300mL、及びオクタデカンチオールを10重量%となる量で溶解させた。次にメタノール中に上記金属微粒子250gを入れ、メタノールの還流温度で3時間攪拌した。その後、吸引濾過により過剰の溶液を除去し、エーテルで洗浄したものを70℃で一晩乾燥して金属微粒子表面にオクタデカンチオールが修飾されている表面修飾金属微粒子Aを得た。
【0061】
得られた表面修飾金属微粒子Aの接触角は処理前の114°から137°に増加し、オクタデカンチオールが金属微粒子表面に修飾されていることが確認された。
【0062】
(実施例2)
上記方法で得たオクタデカンチオール修飾金属微粒子A90重量部、アビエチン酸10重量部、エチルセロソルブ200重量部とからなるはんだペーストAを作製した。このはんだペーストAの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図1に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1において表面修飾した金属微粒子の原料である表面修飾をしていない金属微粒子Bを用いる以外は実施例2と同様に行ない、はんだペーストBを作製した。このはんだペーストBの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図1に併記する。
【0064】
(実施例3)
金属微粒子として、材質がSn−3.5AgのハンダボールBを用いる以外は実施例1と同様にして表面にオクタデカンチオールが修飾されている表面修飾金属微粒子Cを得た。
【0065】
得られた表面修飾金属微粒子Cの接触角は処理前の93°から124°に増加し、オクタデカンチオールが金属微粒子C表面に修飾されていることが確認された。
【0066】
(実施例4)
上記方法で得たオクタデカンチオール修飾ハンダボールC90重量部、アビエチン酸10重量部、エチルセロソルブ200重量部とからなるはんだペーストCを作製した。このはんだペーストCの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図2に示す。
【0067】
(比較例2)
実施例3において表面修飾した金属微粒子の原料である表面修飾をしていない金属微粒子Dを用いる以外は実施例4と同様に行ない、はんだペーストDを作製した。このはんだペーストDの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図2に併記する。
【0068】
(実施例5)
金属微粒子として、材質がSn−3.0Ag−8.0In−0.5Biのハンダボールを用いる以外は実施例1と同様にして微粒子表面にオクタデカンチオールが修飾されている表面修飾金属微粒子Eを得た。
【0069】
得られた表面修飾金属微粒子Eの接触角は処理前の113°から125°に増加し、オクタデカンチオールが金属微粒子表面に修飾されていることが確認された。
【0070】
(実施例6)
上記方法で得たオクタデカンチオール修飾ハンダボールE90重量部、アビエチン酸10重量部、エチルセロソルブ200重量部とからなるはんだペーストEを作製した。このはんだペーストEの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図3に示す。
【0071】
(実施例7)
500mL容の容器にメタノール300mL、及びオクタデシルトリクロロシランを10重量%となる量で溶解させた。上記方法で得たオクタデカンチオール修飾ハンダボールE250gを入れ、メタノールの還流温度で24時間攪拌した。その後、吸引濾過により過剰の溶液を除去し、エーテルで洗浄したものを70℃で一晩乾燥して微粒子表面にオクタデシルトリクロロシランとオクタデカンチオールとが修飾されている表面修飾金属微粒子Fを得た。
【0072】
得られた表面修飾金属微粒子Fの接触角は、処理前の125°から140°に増加し、オクタデカンチオールとオクタデシルトリクロロシランにより金属微粒子表面が二重修飾されていることが確認された。
【0073】
(実施例8)
上記方法で得たオクタデカンチオールおよびオクタデシルトリクロロシランで二重修飾したハンダボールF90重量部、アビエチン酸10重量部、エチルセロソルブ200重量部とからなるはんだペーストFを作製した。このはんだペーストFの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図3に併記する。
【0074】
(比較例3)
実施例5において表面修飾した金属微粒子の原料である表面修飾をしていない金属微粒子Gを用いる以外は実施例2と同様に行ない、はんだペーストGを作製した。このはんだペーストGの粘度を10分毎に2時間、B型粘度計で測定した。結果を図3に併記する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の金属微粒子、該金属微粒子を含有するペースト電子部品の接合、ACF(異方導電性フイルム)、アルカリ蓄電池等の電極用芯材等の形成用に用いることができる。とくに本発明のはんだペーストを使用しうる電子部品としては、例えば、LSI、抵抗器、コンデンサ、トランス、インダクタンス、フィルタ、発振子・振動子等を挙げることができる。本発明の導電ペーストは、液晶ディスプレイの実装、ICカード、CSP(Chip Size Package)、MCM等の半導体パッケージに使用可能である。その他、プラズマディスプレイ除電物質、ビアホール充填用.ペースト、積層セラミックコンデンサー内部電極形成等の用途に好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の1実施例におけるはんだペーストの粘度の測定結果の経時変化を示したグラフである。
【図2】図2は、本発明の1実施例におけるはんだペーストの粘度の測定結果の経時変化を示したグラフである。
【図3】図3は、本発明の1実施例におけるはんだペーストの粘度の測定結果の経時変化を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子の表面に、チオール化合物が修飾されてなる金属微粒子。
【請求項2】
チオール化合物が、炭素数1〜20の炭化水素チオールであることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子。
【請求項3】
金属微粒子の表面に、チオール化合物、およびシラン化合物が修飾されてなる金属微粒子。
【請求項4】
金属微粒子の粒径が、0.1〜200μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3に記載の金属微粒子。
【請求項5】
金属微粒子の表面に、チオール化合物が修飾されてなる金属微粒子を含有するペースト。
【請求項6】
金属微粒子の表面に、チオール化合物、およびシラン化合物が修飾されてなる金属微粒子を含有するペースト。
【請求項7】
ペーストがはんだペーストであることを特徴とする請求項5〜6に記載の金属微粒子を含有するペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−9125(P2006−9125A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191330(P2004−191330)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(801000050)財団法人くまもとテクノ産業財団 (38)
【Fターム(参考)】