説明

表面処理された無機粒子粉末の製造方法

【課題】 本発明は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくいことにより長期間に亘り優れた疎水性を維持することができる疎水化された無機粒子粉末を提供する。
【解決手段】 本発明は、表面処理された無機粒子粉末の製造方法であって、シリカ、チタニア、アルミナ、含水酸化鉄、酸化鉄及び酸化錫から選ばれる1種以上の無機粒子粉末と表面改質剤とをあらかじめ混合し、次いで、高速せん断作用を有する装置で処理することを特徴とする表面処理された無機粒子粉末の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくいことにより長期間に亘り優れた疎水性を維持することができる疎水化された無機粒子粉末を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、無機粒子粉末は、ゴム・樹脂組成物、塗料、化粧料、磁気記録分野及び印刷記録分野等の各種用途において、補強剤、着色剤、フィラー剤、紫外線遮蔽剤、研磨剤、導電性付与剤あるいは磁性材等として、各種材料に様々な特性を付与するために広く用いられている。
【0003】
無機粒子粉末は、粒子表面に水酸基や吸着水分が存在しているため、一般に親水性であり、親油性に乏しいことが知られている。そのため、有機媒体への分散や樹脂への練り込みを行う場合には、無機粒子粉末の粒子表面を疎水化することが必要であり、分散性向上の点からも、より疎水化された材料が求められている。
【0004】
また、近年の化粧料分野においては、汗や皮脂、あるいは化粧料に配合されている油剤による化粧崩れ防止のために、高度に疎水化された材料が要求されている。
【0005】
更に、上記のような無機粒子粉末を配合した各種材料は、高温多湿あるいは低温低湿といった様々な環境で用いられるため、各種環境においても安定した疎水性を長期に亘って維持できる材料が求められている。
【0006】
従来、シリカなどの無機粒子粉末とシラン化合物などの表面改質剤とを混合して、疎水性、流動性等を改善することが知られている(特許文献1〜10)。
【0007】
【特許文献1】特開平5−97423号公報
【特許文献2】特開平7−166091号公報
【特許文献3】特開2000−95968号公報
【特許文献4】特開2000−327948号公報
【特許文献5】特開2002−256170号公報
【特許文献6】特開2004−123800号公報
【特許文献7】特開2004−155648号公報
【特許文献8】特開2004−168559号公報
【特許文献9】特開2006−117445号公報
【特許文献10】特開2006−273588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくい無機粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、これら諸特性を十分に満たすような無機粒子粉末を簡便に製造する方法は未だ提供されていない。
【0009】
そこで、本発明は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくい無機粒子粉末を提供することができる無機粒子粉末の製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0011】
即ち、本発明は、表面処理された無機粒子粉末の製造方法であって、無機粒子粉末と表面改質剤とをあらかじめ混合し、次いで、高速せん断作用を有する装置で処理することを特徴とする表面処理された無機粒子粉末の製造方法である(本発明1)。
【0012】
また、本発明は、無機粒子粉末が、シリカ、チタニア、アルミナ、含水酸化鉄、酸化鉄及び酸化錫から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の表面処理された無機粒子粉末の製造方法である(本発明2)。
【0013】
また、本発明は、表面改質剤が、有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面処理された無機粒子粉末の製造方法である(本発明3)。
【0014】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載された製造方法によって得られたことを特徴とする表面処理された無機粒子粉末である(本発明4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の製造方法は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくいことにより長期間に亘り優れた疎水性を維持できる無機粒子粉末が得られるため、表面処理された無機粒子粉末の製造方法として好適である。
【0016】
本発明に係る製造方法によって得られた表面処理された無機粒子粉末は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくいことにより長期間に亘り優れた疎水性を維持することができるため、塗料、樹脂練込み、トナー及び化粧料等各種用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0018】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の製造法について述べる。
【0019】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末は、表面改質剤と無機粒子粉末とをあらかじめ混合して後、高速せん断作用を有する装置で処理することによって得られる。
【0020】
本発明における芯粒子粉末となる無機粒子粉末は特に限定されないが、樹脂練込、塗料及び化粧料等の各用途において、着色剤あるいは機能性付与剤として汎用され、殊に粒子表面が親水性であるシリカ、チタニア、アルミナ、含水酸化鉄(ゲータイト、レピドクロサイト等)、酸化鉄(ヘマタイト、マグヘマイト、マグネタイト等)、酸化錫等を用いることができる。
【0021】
芯粒子粉末としては各種形状があり、球状、粒状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子粉末、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子粉末及び板状粒子粉末等があり、用途に応じて選べばよく、特に限定するものではない。
【0022】
本発明における芯粒子粉末は、平均粒子径0.01〜0.3μm、BET比表面積値1.0〜300m/gであり、疎水化度V90値は通常0.5mg/mを超える値を有している。
【0023】
本発明における芯粒子粉末である無機粒子粉末のうち、含水酸化鉄又は酸化鉄などの鉄化合物においては、必要により、あらかじめ粒子表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる中間被覆物によって被覆されていてもよい。
【0024】
本発明における芯粒子粉末を中間被覆物によって被覆することによって、疎水化剤の脱離をより抑制することができるとともに、脱着率評価後の疎水化度V90値をより低減することができる。
【0025】
前記中間被覆物の量は、芯粒子粉末に対してアルミニウムの水酸化物やアルミニウムの酸化物はAl換算で、ケイ素の水酸化物やケイ素の酸化物はSiO換算で、それぞれ0.01〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜30重量%、更により好ましくは0.1〜20重量%である。
【0026】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合には、芯粒子粉末に対して、Al換算量とSiO換算量との総和で0.01〜50重量%が好ましい。
【0027】
中間被覆物による被覆は、無機粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記シリカ粒子及び/又は無機粒子の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0028】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0029】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
【0030】
本発明における表面改質剤としては、無機粒子の粒子表面を疎水化できるものであれば何を用いてもよく、フルオロアルキルシラン、アルコキシシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が好適に用いられる。
【0031】
本発明における表面改質剤としては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン共重合体等のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサン、トリストリメチルシロキシシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、トリストリメチルシロキシフェニルシラン等の分岐状シロキサン、ステアロキシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0032】
疎水化剤の分子鎖が大きくなると、芯粒子粉末の凝集体の隙間にまで入り込んで粒子表面を均一に被覆することが困難となるため、疎水化剤としては、アルコキシ基を除く炭素数が15以下、好ましくは13以下、更に好ましくは11以下であるフルオロアルキルシラン及びアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0033】
より高い疎水性を有する無機粒子粉末を得るためには、疎水化剤としてフルオロアルキルシランとアルコキシシランを併用することが好ましく、先にフルオロアルキルシランで被覆した後にアルコキシシランを被覆することが好ましい。
【0034】
本発明においては、前記表面改質剤とともに、高級脂肪酸を併用しても良い。
【0035】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0036】
表面改質剤の添加量は、芯粒子である無機粒子粉末100重量部に対して1〜200重量部が好ましい。
【0037】
なお、高級脂肪酸の添加量は、芯粒子である無機粒子粉末100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。
【0038】
無機粒子粉末へ表面改質剤による被覆は、無機粒子粉末と表面改質剤とを機械的に混合攪拌したり、無機粒子粉末に表面改質剤成分を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。添加した表面改質剤は、ほぼ全量が無機粒子の粒子表面に被覆される。
【0039】
表面改質剤を均一に無機粒子の粒子表面に被覆するためには、無機粒子粉末の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0040】
無機粒子粉末と表面改質剤との混合するための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができる。本発明の実施にあたっては、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0041】
上記ホイール型混練機としては、具体的に、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、具体的に、振動ミル等がある。上記ブレード型混練機としては、具体的に、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサー等がある。上記ロール型混練機としては、具体的に、エクストルーダー等がある。
【0042】
混合時における条件は、無機粒子の粒子表面に表面改質剤に被覆されるように、例えば、シリカ粒子であれば、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5〜120分、好ましくは10〜90分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0043】
本発明において、高速で粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、例えば、高速せん断ミル、ブレード型混練機、遊星ミル等があり、好ましくは高速せん断ミルである。上記高速せん断ミルとしては、ハイブリダイザー、ノビルタ(ホソカワミクロン製)が挙げられる。
【0044】
高速で粉体層にせん断力を加えることのできる装置の処理条件としては、混合時における攪拌速度としては、100〜100000rpm、好ましくは1000〜50000rpmの範囲で適宜調整すればよい。処理時間としては1〜120分、好ましくは2〜90分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0045】
混合処理時又は混合処理終了後に加熱、乾燥処理を行ってもよい。加熱温度としては、50〜200℃範囲で適宜調整すればよい。
【0046】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の平均粒子径は、0.005〜0.3μmであり、好ましくは0.01〜0.25μmである。平均粒子径が0.005μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により、ビヒクル中又は樹脂組成物中における分散が困難となる。
【0047】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末のBET比表面積値は、1.0〜200m/gが好ましく、より好ましくは2.0〜180m/gである。BET比表面積値が1.0m/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となり、ビヒクル中や樹脂組成物中での分散性に悪影響を与えるので好ましくない。BET比表面積が200m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大によりビヒクル中や樹脂組成物中における分散が困難となる。
【0048】
本発明における疎水化度V90値(mg/m)は、温度25℃、相対湿度90%の雰囲気における水蒸気吸着量を測定した値である。
【0049】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の疎水化度V90値は、0.5mg/m以下である。無機粒子粉末の疎水化度V90値が0.5mg/mを超える場合は、無機粒子粉末の疎水性が十分とはいえず、ビヒクル中又は樹脂組成物中へ配合した場合、樹脂や有機媒体とのなじみが悪く均一な分散が困難となる。疎水化度V90値は好ましくは0.45mg/m以下、より好ましくは0.40mg/m以下である。疎水化度V90値の下限値は0.01mg/mである。
【0050】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の疎水化剤の脱着率は、10%以下が好ましい。脱着率が10%を超える場合には、疎水化剤が脱離した部分から吸湿が進み、長期に亘って疎水性を維持することが困難となる。より好ましくは、9%以下であり、より好ましくは8%以下である。
【0051】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の脱着率評価後の疎水化度V90値は、0.55mg/m以下である。脱着率評価後の疎水化度V90値が0.55mg/mを超える場合は、無機粒子粉末の疎水性が十分とはいえず、また、長期に亘って疎水性を維持することが困難となる。脱着率評価後の疎水化度V90値は好ましくは0.53mg/m以下、より好ましくは0.50mg/m以下である。
【0052】
フルオロアルキシシラン又はアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物による表面被覆量は、表面処理された無機粒子粉末に対してC換算で0.1〜40重量%であり、好ましくは、0.2〜20重量%である。
【0053】
表面被覆量が0.1重量%未満の場合、無機粒子粉末の粒子表面を十分に被覆することができないため、得られる無機粒子粉末は十分な疎水性を得られないとともに、長期に亘って疎水性を維持することが困難となる。40重量%を超える場合には、効果が飽和するため必要以上に被覆する意味が無い。
【0054】
次に、本発明に係る表面処理された無機粒子粉末は、ゴム又は熱可塑性樹脂に含有させて、ゴム・樹脂組成物としてもよい。
【0055】
ゴム・樹脂組成物における構成基材としては、本発明に係る表面処理された無機粒子粉末と周知のゴム又は熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0056】
ゴム・樹脂組成物における表面処理された無機粒子粉末の配合割合は、構成基材100重量部に対して0.5〜200重量部の範囲で使用することができ、ゴム・樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは1.0〜150重量部、更に好ましくは2.5〜100重量部である。
【0057】
添加剤の量は、表面処理された無機粒子粉末とゴム又樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0058】
ゴム・樹脂組成物の製造法としては、ゴム又は樹脂原料と表面処理された無機粒子粉末をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、表面処理された無機粒子粉末の凝集体を破壊し、ゴム又は樹脂中に表面処理された無機粒子粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0059】
<作用>
本発明において重要な点は、無機粒子粉末と表面改質剤とをあらかじめ混合し、次いで、高速せん断作用を有する装置で処理した場合には、表面改質剤がより均一に処理され、表面改質剤が疎水性を有する場合には、疎水化度が水蒸気吸着量V90値で0.5mg/m以下であり、脱着率評価後の疎水化度V90値が0.55g/m以下である表面処理された無機粒子粉末を得ることができ、該表面処理された無機粒子粉末は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくいという事実である。
【0060】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末が優れた疎水性を有する理由として、本発明者は、芯粒子粉末が凝集体を形成している場合でも、粉体層にへらなで、せん断力を加えることで凝集粒子を解砕し、更に、高速のせん断作用を有する装置で処理することによって、芯粒子粉末の粒子表面に疎水化剤を均一に被覆することができることによるものと考えている。
【0061】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末の製造方法は、全ての工程を乾式で行うことができ有機溶剤中で処理を行う必要が無く、また、短時間であっても高い疎水性を有する無機粒子粉末が得られるので、工業的にも優れている。
【実施例】
【0062】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0063】
芯粒子粉末及び表面処理された無機粒子粉末の平均粒子径は、電子顕微鏡写真(×20,000)を縦方向、横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個について定方向径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0064】
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0065】
無機粒子粉末の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
中間被覆物によって被覆された芯粒子粉末の粒子表面に存在するAl量及びSi量は「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業(株)製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0066】
芯粒子粉末及び表面処理された無機粒子粉末の疎水化度は、「水蒸気吸着装置BELSORP18」(日本ベル(株)製)を用いて、25℃、相対湿度90%における粒子粉末の単位表面積当たりの水蒸気吸着量V90値(mg/m)で示した。
【0067】
無機粒子粉末の疎水化剤の脱着率は、下記の方法により求めた値で示した。脱着率が0に近いほど、粒子表面からの疎水化剤の脱離量が少ないことを示す。
【0068】
無機粒子粉末3gとエタノール50mlとを50mlの三角フラスコに入れ、超音波分散機「SONOQUICK C10」(超音波工業(株)製)を用いて20分間超音波分散を行った後、10000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄み液と固型部分とを分離した。
【0069】
得られた固型部分とエタノール50mlを50mlの三角フラスコに入れ、上記と同様の操作を合計3回行った。
【0070】
得られた固型部分を100℃で1時間乾燥させた後、無機粒子粉末に含まれる炭素量の含有量(C換算)を「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、下記式に従って求めた値を疎水化剤の脱着率とした。
【0071】
疎水化剤の脱着率(%)={(Wa−We)/Wa}×100
Wa:無機粒子粉末の疎水化剤被覆量(C換算)
We:脱着テスト後の無機粒子粉末の疎水化剤被覆量(C換算)
【0072】
脱着率評価後の疎水化度は、前記測定法によって脱着率を評価した後の粒子粉末について、「水蒸気吸着装置BELSORP18」(日本ベル(株)製)を用いて、25℃、相対湿度90%における粒子粉末の単位表面積当たりの水蒸気吸着量V90値(mg/m)で示した。
【0073】
実施例1<表面処理された無機粒子粉末の製造>
シリカ粒子粉末(粒子形状:球状、平均粒子径0.01μm、BET比表面積値201.2m/g、疎水化度V90値6.24mg/m)10.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、294N/cm(30Kg/cm)で30分間混合撹拌を行い、粒子の凝集を軽く解きほぐした。
【0074】
次いで、メチルトリエトキシシラン(商品名:TSL8123:GE東芝シリコーン株式会社製)2000gを、エッジランナーを稼動させながら上記シリカ粒子粉末に添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
【0075】
次いで、得られた表面改質剤が被覆されたシリカ粒子粉末100gを高速せん断ミルに入れ、2450rpmの回転数で20分間、高速せん断処理を行った。得られた疎水化されたシリカ粒子粉末の平均粒子径は0.01μm、BET比表面積値は98.2m/g、疎水化度V90値は0.49mg/m、脱着率は5.0%、脱着率評価後のV90値は0.51mg/mであった。
【0076】
前記実施例にしたがって、表面処理された無機粒子粉末を製造した。
【0077】
芯粒子1〜3
芯粒子粉末として、表1に示す特性を有する無機粒子粉末及び無機粉末を準備した。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例2〜4、比較例1〜2
芯粒子粉末の種類、表面改質剤の種類及び添加量、エッジランナーによる処理条件及び高速せん断作用を有する装置の処理条件を種々変化させた以外は、前記実施例1と同様にして表面処理された無機粒子粉末を得た。
【0080】
このときの製造条件を表2に、得られた表面処理された無機粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る表面処理された無機粒子粉末は、優れた疎水性を有するとともに、疎水化剤が粒子表面から脱離しにくいことにより長期間に亘り優れた疎水性を維持することができるため、塗料、樹脂練込み、トナー及び化粧料等各種用途に好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理された無機粒子粉末の製造方法であって、無機粒子粉末と表面改質剤とをあらかじめ混合し、次いで、高速せん断作用を有する装置で処理することを特徴とする表面処理された無機粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
無機粒子粉末が、シリカ、チタニア、アルミナ、含水酸化鉄、酸化鉄及び酸化錫から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の表面処理された無機粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
表面改質剤が、有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面処理された無機粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された製造方法によって得られたことを特徴とする表面処理された無機粒子粉末。


【公開番号】特開2008−143725(P2008−143725A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329884(P2006−329884)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】