説明

表面処理方法及び電子写真感光体の製造方法

【課題】ホーニング処理による堆積膜等の付着物除去能力を高いレベルで維持しつつ、研磨材の残留防止及び被処理材から生じる微粉やバリの埋め込みや摺り込みを抑制して、清浄な被処理材表面を得るための表面処理方法を提供する。
【解決手段】ホーニング処理として、1つの処理容器内で1つの被処理材に対して少なくとも2つのホーニング処理のための噴射ガンを同時に用い、モース硬度が被処理材よりも大きい少なくとも1種以上の研磨材とモース硬度が被処理材よりも小さい少なくとも1種以上の研磨材を個別の噴射ガンから噴射し、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けて表面処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理材の表面に研磨材を多数吹き付けて被処理材表面に付着した膜を除去し、清浄な表面を得るための表面処理方法に関する。
また、本発明で処理した基体ホルダーを用いた電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、堆積膜製造装置部品等の被処理材表面に付着した錆、金属等の付着膜、堆積膜、酸化膜や汚れなどを除去する場合、ホーニング、ブラストなどのピーニング処理方法により処理される。
この種の処理方法では、例えば研磨材として微細なガラス粒子を用い、これを水と一緒に圧縮空気により被処理材表面に吹き付けて被処理材表面を研磨する。研磨材として、用途に応じてセラミック系、ガラス系、金属系、樹脂系、氷やドライアイス等の微小粒子が用いられる。
【0003】
そして、求められる表面の仕上がり状態に応じて、研磨材の形状、大きさ、硬さ、比重、吹き付け圧力、吹き付け速度、吹き付け量、懸濁液濃度等が適宜制御されている。しかし、付着膜の除去能力を大きくすると、以下の課題が生じる。即ち、被処理材の表面に研磨材残留物が残ったり、付着膜が被処理材に埋め込まれたり、摺り込まれたりする再付着の発生が多くなる(以下、「微粉付着」とも称する)。これを抑制するために、特許文献1にはホーニング処理後に微粉除去や付着物除去を行って清浄する方法が開示されている。また、特許文献2には、ホーニング処理で、研磨材や微粉等の研削屑を残留させないために、水に溶解するミョウバンを研磨材に用いる方法が開示されている。特許文献3には、被処理材に対して複数の噴射方向でホーニング処理することで、表面性の一様性を得る方法が開示されている。特許文献4には微小な平均粗さが一様でかつ平滑的な表面を得るために、2個の噴射ガンを用いて、1段目の衝撃力を2段目よりも大きくして複数回にわたって処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-108395号公報
【特許文献2】特開2004-314273号公報
【特許文献3】特開2002-361557号公報
【特許文献4】特開平6-67441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては以下のような課題が残されていた。特許文献1の方法では、微粉除去や付着物除去の効果は得られるものの、工程増が課題となることがあった。特許文献2の方法では、研磨材の残留防止効果は得られるものの、被処理材の付着膜除去能が不足することがあった。特許文献3の方法では、表面の一様性を得るという効果は認められるものの、微粉付着が課題になることがあった。特許文献4の方法では、平均粗さが一様な表面を得る効果は得られるものの、微粉付着が課題になることがあった。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決し、付着膜を効率よく除去し、清浄な表面を得るための表面処理方法を提供することを目的としている。
即ち、本発明は、ホーニング処理による堆積膜等の付着物除去能力を高いレベルで維持しつつ微粉付着を抑制して、清浄な被処理材表面を得るための表面処理方法を提供する事を目的とする。
【0007】
また、本発明はプラズマCVD法による堆積膜製造装置に用いる部品に付着した付着膜を効率的に除去し、清浄な被処理材表面を得ることができ、その結果、堆積膜形成時のダストによる膜欠陥発生を抑制可能な表面処理方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう膜欠陥とは、基板上に付着したダストを基点として膜が異常成長したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係わる表面処理方法は、研磨材を用いたホーニング処理により被処理材に対して表面剥離又は付着物除去をおこなう。1つの処理容器内で1つの被処理材に対して少なくとも2つのホーニング処理のための噴射ガンを同時に用い、モース硬度が被処理材よりも大きい少なくとも1種以上の研磨材とモース硬度が被処理材よりも小さい少なくとも1種以上の研磨材を個別の噴射ガンから噴射し、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表面処理方法によれば、極めて効率的に非常に良好な清浄状態の表面が得られる。プラズマCVD法の装置内で用いる部品、防着板や基板ステージ、基体ホルダー等の付着膜除去に適して用いることができる。
さらに、プラズマCVD法を用いたアモルファスシリコン電子写真感光体の製造方法において、本発明の表面処理方法により基体ホルダーの表面処理を行うことで画像欠陥の非常に少ない高画質対応の電子写真感光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の処理方法を行うための装置構成を説明する模式図
【図2】本発明の処理方法に用いることができるトレース処理を説明する模式図
【図3】電子写真感光体の製造装置の一例を示した模式図
【図4】基体ホルダーを表面処理するときの噴射ガンの配置を説明する模式図
【図5】電子写真感光体の層構成の一例を示す模式図
【図6】本発明の処理方法に用いることができるホーニング処理装置の一例を示した模式図
【図7】磁性研磨材の分離回収装置の例を説明する模式図
【図8】基体ホルダーの構成を説明する模式図
【図9】研磨材衝突質量を測定する際に用いることができる研磨材回収容器の概略図
【図10】噴流速度を測定するための羽根車式流速測定器の概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、被処理材とホーニング処理に用いる研磨材の硬度に注目して検討を行った。硬度にはロックウェル硬度、ビッカース硬度、モース硬度、マルテンス硬度、ビアネル硬度等がある。ロックウェル硬度やビッカース硬度は押込み硬さであり、モース硬度、マルテンス硬度やビアネル硬度は引っかき硬度である。本発明者らは微粉付着抑制の点からは引っかき硬度に注目すべきと考えた。なお、マルテンス硬度とビアネル硬度は、ダイヤモンド圧子の引っかき傷の大きさで判定するものである。本検討においては微粒子形状の研磨材が被処理材の微粉やバリを発生させる点に着目するため、定性的ではあるが材質を直接比較可能なモース硬度に着目して検討を行った。その結果、被処理材よりもモース硬度が小さい研磨材でホーニング処理を行うと、微粉付着が減少することが解った。
【0012】
しかし、モース硬度が小さい研磨材を用いた場合、付着膜除去能が小さくなり処理時間を延長しても十分に除去できない場合があった。一方、被処理材よりモース硬度が大きい研磨材を用いた場合、付着膜除去能は十分なものの微粉付着が多いことが解った。また、付着膜が除去された後もホーニング処理を続けると微粉付着が更に増加することが解った。
本発明者らは更に、微粉付着が生じた被処理材を被処理材よりもモース硬度が小さい研磨材でホーニング処理を行ったところ、処理後の微粉付着が減少することを確認した。これは以下のような作用によるものと考えられる。まず、被処理材よりも研磨材のモース硬度が小さいため被処理材のバリや微紛の発生が非常に少なくなっていると考えられる。そして、被処理材の微紛やバリが、被処理材に埋め込まれたり摺り込まれた状態においては、モース硬度が小さい研磨材を吹き付けると、埋め込まれたり摺り込まれた微紛やバリをかきとるように除去できるようである。さらに、かきとる際に、被処理材の表面に損傷を与えにくいので、新たなバリや微紛を発生させることがほとんどないと考えられる。
【0013】
そこで、本発明者らは、付着膜の除去が効率的になされ、微粉付着が抑制され、清浄な表面が得られる表面処理方法について更に鋭意検討を行った。
その結果、少なくとも2つのホーニング処理のための噴射ガンを同時に用い、少なくとも2つの研磨材を個別の噴射ガンから噴射し、各々の研磨材のモース硬度および被処理材のモース硬度を所定の関係とすることで前述した課題に対して大きな効果が得られることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、1つの処理容器内で1つの被処理材に対して少なくとも2つのホーニング処理のための噴射ガンを同時に用い、モース硬度が被処理材よりも大きい少なくとも1種以上の研磨材とモース硬度が被処理材よりも小さい少なくとも1種以上の研磨材を個別の噴射ガンから噴射し、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けて表面処理することを特徴とする。
【0015】
ここで、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けて表面処理するとは、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材を吹き付けて被処理材全面の処理を施し、それが終了した後に次の研磨材を吹き付けて処理を行うことのみを指すものではない。被処理材の被処理部において、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材を用いた処理が施され、続いて、モース硬度が先の研磨材よりも小さい研磨材を用いた処理が施されていれば良い。使用する研磨材が2種類の場合は、後から噴射する研磨材のモース硬度は被処理剤のモース硬度よりも小さい。
噴射ガンを3個以上使う場合も、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けて表面処理施されていれば良い。
【0016】
図1(a)に、本発明に用いることができる処理装置の一例を示す。表面処理装置内に、付着膜104が付着した被処理材101と第1の噴射ガン102、第2の噴射ガン103を図のように配置する。ここでは、第1の噴射ガン102はモース硬度が被処理材よりも大きい研磨材を噴射し、第2の噴射ガン103はモース硬度が被処理材よりも小さい研磨材を噴射するものとする。
【0017】
具体的には、被処理材101の法線方向にZ軸を取り、Z軸と直行する面にXY平面を取る。付着膜104側をZ軸プラス側として被処理材101を設置し、噴射ガンをZ軸プラス側に設置する。加えて、Y軸のマイナス方向(Y軸矢印と逆方向)に被処理材を動かして処理する場合に、Y軸プラス側から第1の噴射ガン102、第2の噴射ガン103の順に配置する。その際、被処理部が、まず第1の噴射ガン102からの吹き付けによって処理され、次に第2の噴射ガン103からの吹き付けによって処理がなされるように噴射ガンの中心線を考慮して配置する。具体的には、第1の噴射ガン102から吹き付けられる噴流と第2の噴射ガン103から吹き付けられる噴流が被処理面に当たる前、すなわちZ軸のプラス側空間で互いに衝突することの無いように、噴射ガンを配置する。
【0018】
また、図1(a)に示すように第1の噴射ガン102から吹き付けられる噴流の中心軸と第2の噴射ガン103から吹き付けられる噴流の中心軸とが被処理材上である程度以上の間隔105を有することが好ましい。これにより第1の噴射ガン102から吹き付けられる噴流と第2の噴射ガン103から吹き付けられる噴流が被処理材101に到達する前に互いに衝突して噴流の乱れが生じたり、研磨材が混合したりすることが防止される。
【0019】
第1の噴射ガン102の噴流が衝突する被処理材上の領域(衝突領域108)と、第2の噴射ガン103の噴流が衝突する被処理材上の領域(衝突領域109)が重なり合わないように間隔105を設定することが好ましい。間隔105は、第1の噴射ガン102から吹き付けられる噴流の中心軸が被処理材101と交わる点から、第2の噴射ガン103から吹き付けられる噴流の中心軸が被処理材101と交わる点までの距離である。具体的な間隔は、噴射ガンと被処理材との距離、ノズルからの単位時間あたりの吐出量などの条件により衝突領域の大きさが異なるため、一意に決まるものではなく、使用する装置、条件ごとに適宜調整する。
【0020】
このように本発明の表面処理方法は、1つの被処理材に対して少なくとも2つの噴射ガンを同時に用いる。そして、モース硬度が被処理材よりも大きい少なくとも1種以上の研磨材とモース硬度が被処理材よりも小さい少なくとも1種以上の研磨材を個別の噴射ガンから噴射することが必要である。
研磨材の粒径は100番〜1000番メッシュ相当、または10〜100μmの範囲にあるものが好ましい。また研磨材の比重が0.5〜10の範囲にある微粉末で、形状は球状のものが好ましく用いられる。好適に用いられる研磨材の材質としては、鉄、ステンレス、ガラス、アルミナ、フェライト、ジルコニア、酸化クロム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、エポキシ樹脂、ナイロン、氷粒、ドライアイスペレットが挙げられる。
【0021】
このような本発明の表面処理は、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材の吹き付けに続いてモース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けるという連続した表面処理を複数回に分けて行うことが好ましい。モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材の吹き付けによる付着膜除去は吹き付け時間が長くなるに従い、微紛およびバリの発生が増え、微粉付着が増加する傾向にある。更には、複数の微紛やバリが重なりあって埋め込まれたり摺り込まれたりしてしまう場合がある。このような状況においては、モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材の吹き付けでこれら微粉やバリの除去を行う際に、微粉やバリの量が多いこと及びそれらが重なりあっていることにより除去しにくい。特に重なりあった微粉やバリは、モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材の吹き付けによる除去効果を低減させる場合が多かった。
【0022】
これに対して、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けるという一連の表面処理を複数回に分けて行う場合、1回の吹き付け時間が短くなり微紛およびバリの発生量を抑えることができる。また、微紛やバリが重なりあって埋め込まれたり摺り込まれたりすることも少なくなる。即ち、微粉付着が少なくなる。そのため、続くモース硬度が被処理材よりも小さい研磨材の吹き付けによる処理が短時間であっても埋め込まれたり摺り込まれたりした微紛やバリをほぼすべて除去することができる。
【0023】
以上より、1回の吹き付け時間を短くして、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材の吹き付けに続いて、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けるという連続した表面処理を複数回に分けて施すことが、清浄な表面状態を得るために好ましい。
このような処理は研磨材ごとに別個の処理装置を用いて行うことも可能であるが、装置コストが高まり、装置設置面積が増大し、被処理材を移動する工程が必要なために処理時間が増加してしまう。このため同一容器内で、研磨材毎に個別の噴射ガンを同時に用いて表面処理する。
【0024】
本発明において用いる研磨材は、研磨材コスト低減のために研磨材の分離回収−再利用可能な研磨材の組み合わせが好ましい。例えば、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材は固体で、モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材は常温で液体または気体になる研磨材を冷却固化して用いることで、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材は回収して再利用可能となる。モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材は常温で液体または気体となるため、モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材に混入することが抑制され、効果維持に適している。なお、常温とは20℃±15℃(つまり、5℃以上35℃以下)の範囲を意味するものとする。
【0025】
常温で液体となる研磨材、または常温で気体となる研磨材としては、研磨材として使用可能な強度と必要なモース硬度、そして扱いやすさと入手しやすさ、コストの点から、氷またはドライアイスが好ましい。氷を研磨材として用いる場合は、氷塊を粉砕し、微細な氷粒にして、水とともに噴射して表面処理を行う。ドライアイスを研磨材として用いる場合は、ドライアイスペレット粒を気流で噴射して表面処理を行う。
【0026】
また、磁性材料で形成された研磨材(以下、単に「磁性の研磨材」とも称する)と非磁性材料で形成された研磨材(以下、単に「非磁性の研磨材」とも称する)とを用いることも、分離回収、再利用が可能で好ましい。
研磨材の選択以外にも、被処理部に吹き付ける研磨材の質量によっても、本発明の効果の程度が変化する。そこで、本発明者らは、被処理部に吹き付けられる単位時間における単位面積当たりの研磨材衝突エネルギー(以下、単に「研磨材衝突エネルギー」とも称する)と本発明の効果との関係を検討した。
【0027】
まず、被処理部に吹き付けられる単位時間における単位面積当たりの研磨材質量(以下、「研磨材衝突質量」とも称する)を以下のように算出した。噴射ガンの中心軸と被処理材が交わる点を求め、これを点110とした。次に、点110において被処理材に接する平面をXY平面とした。そして、XY平面において点110を中心とした直径1cmの円Sを決定し、その円S内に到達する単位時間あたりの研磨材の質量A(g)を測定して研磨材衝突質量を求めた。より具体的には、上記のようにして円Sに60秒間に到達する研磨材の質量Aを測定し、下記式より研磨材衝突質量を算出した。
【0028】
1平方cm当たりに1秒間で衝突する研磨材衝突質量(D)[g/cm・sec]=A/(0.5×0.5×π×60)
研磨材の質量の測定には例えば図9に示すような研磨材回収容器901を用いることができる。図9において開口部902は直径1cmの円形となっている。そして研磨材回収容器901の開口部902の中心が点110と重なるように、かつ開口部902の円形状の縁が上記XY平面上となるように研磨材回収容器901を設置する。この状態で噴射ガンより所定時間の研磨材の吹き付けを行い、所定時間後に研磨材回収容器901内の研磨材を回収し、研磨材の質量を求める。
【0029】
次に、被処理材に入射する噴流速度を図10(a)及び(b)のような羽根車式の速度計で計測した。噴射ガン1001からの噴流の中心軸1002を水平になるようにして羽根車1003に当てて、羽根車の回転数を計測して、噴流速度を算出した。羽根長10cm羽根幅2cmの長方形の羽根を8枚持つ羽根車1003を用いて、羽根幅2cmの中央かつ羽端から1cmのところ(図10(b)の1005の位置)に、噴流の中心軸1002が入射するように設置した。羽根車1003の中心軸1008と同軸に第1の歯車1009を設置し、第1の歯車1009とかみ合うように第2の歯車1006を設置し、第2の歯車1006の回転数を磁電式回転検出器1007(小野測器 AP−981)でカウントした。中心軸1008と第2の歯車1006の中心軸1010とは、平行である。
1秒あたりの回転数をBとしたときに、噴流速度は、下記式により算出した。
18×π×B [cm/sec]
【0030】
1cm当たり、1秒間での研磨材衝突エネルギー(E)は、噴流の中心軸線方向速度を噴流速度として、そのZ軸成分を算出し、下記式により求めた。
(1秒当たりの研磨材衝突質量)×(噴流速度のZ軸成分)×(噴流速度のZ軸成分)/2[g/sec
【0031】
研磨のエネルギーは被処理材に衝突するZ軸方向の速度の寄与がY軸方向の被処理材を摺擦する速度の寄与よりも大きいので、研磨材衝突エネルギーの算出には噴流速度のZ軸成分を用いた。なお、研磨材衝突エネルギーは噴射する研磨材の速度や量だけでなく、噴射ガンの傾きや距離、拡がり角度にも依存するためこれらも考慮して研磨材衝突エネルギーを最適に調整することが好ましい。
【0032】
モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材の研磨材衝突エネルギーE1が、モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材の研磨材衝突エネルギーE2よりも小さい(E1<E2)場合には、以下のようになる。E1を十分な付着膜除去能が得られる値に設定するとE2が大きすぎてモース硬度が被処理材よりも小さい研磨材の吹き付けによる埋め込みや摺り込みがわずかながらではあるものの同時に発生してしまう場合がある。そのため、表面処理後に微粉付着がE1>E2の場合よりも多くなることがある。また、E2を微粉付着が発生しない値に設定した場合にはE1が小さくて付着膜除去能が低下する場合があった。ここで、研磨材衝突エネルギーは、水と研磨材の混合液を噴射する場合には、その混合液中の研磨材の質量から求めるものとする。またエアーにより研磨材のみを噴射する場合には、その研磨材の質量から求めるものとする。
【0033】
被処理材に対する研磨材の噴射の角度によっても、本発明の効果の程度が変化する。具体的には、図1(a)に示すように、被処理材101の法線方向にとったZ軸と第1の噴射ガンの中心軸とで成す噴射角106(θ1)を0°<θ1≦45°とすることが好ましい。
XZ面に対してY軸(−)側に噴射ガンがあるときは、角度θを正の値で表記し、Y軸(+)側に噴射ガンがあるときは、角度θを負の値で表記するものとした。さらに、Z軸と第2の噴射ガンの中心軸で成す噴射角107(θ2)は、θ1≦θ2<90°とすることが好ましい。噴射角θ1が45°を超える場合には、噴流速度の被処理材垂直方向成分が減少してくるので付着膜除去に要する、処理時間が長くなることがあった。また被処理材に垂直となる噴射角0°では被処理材に一度衝突した研磨材が処理領域内に留まりやすく、そこから排出されるまでに時間がかかる。そのために被処理材に一度衝突した研磨材が繰り返し被処理材表面に衝突する場合が生じ微粉付着が多くなる場合がある。また、噴射角θ1が0°未満になると第1の噴射ガンの中心軸方向と第2の噴射ガンの中心軸方向が逆となり、各々のガンから吹き付けられた研磨材が衝突領域外へ排出される方向が対面する。そのために研磨材がお互いに衝突することになり、研磨材の残留や、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが増加する傾向にある。なお、噴流の拡がりにより、噴射角θ1が0°未満でなくても噴流の方向が対面する箇所が存在することがある。しかし、噴流の拡がりの外側ほど研磨材の密度や噴流速度が小さくなるために、中心軸の方向が対面しないように設置すれば上記のような現象はほとんど問題にならなかった。
【0034】
図1(b)のようにθ2<θ1となるように噴射ガンを設置すると装置構成上、間隔105が大きくなる。間隔105が大きくなると、被処理材の表面全てを処理するために被処理材または噴射ガンの移動距離が大きくなり処理時間の増大や、装置の大型化を伴ってしまう。このような観点からもθ1≦θ2が好ましい。また第1の噴射ガンの中心軸と第2の噴射ガンの中心軸が被処理材と噴射ガンの間のある一点で重なる様に配置した場合には、噴流の衝突により吹き付けが乱れ、安定した付着膜除去能や微粉付着抑制効果が得にくくなる。そのため被処理材の表面処理後の表面状態が不均一な仕上がりとなることがある。
【0035】
研磨材としては鉄またはステンレスで略球形の研磨材を用いることが特に好ましい。鉄またはステンレスは適度な延性があり、被処理材への埋め込みや摺り込みが発生しにくい。また、被処理材の微紛やバリの発生がSiCやアルミナ等のセラミック製の研磨材を用いた場合に比べて少ない傾向にある。また略球形な研磨材を選択することで被処理材の微紛やバリの発生を更に少なくすることができる。
【0036】
このような本発明は、アルミニウムやアルミニウム合金で構成された、プラズマCVD装置用の成膜炉内部品、例えば防着板や基板ホルダーの付着膜を除去して清浄な表面を得るために適して用いることができる。さらに、プラズマCVD法により、アモルファスシリコン系の電子写真感光体を製造するために用いるアルミニウム合金製の基体ホルダーの付着膜除去(表面剥離又は付着物除去)において、清浄な表面が得られる本発明の表面処理方法が適している。
【0037】
以下、アモルファスシリコン系の電子写真感光体の製造について説明する。
図3は、高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。この装置は大別すると、反応容器3122を有する堆積装置3100、原料ガス供給装置3200、および、反応容器3122を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。反応容器3122内には、アースに接続された基体ホルダー3121に装着された導電性基体3112、導電性基体加熱用ヒーター3113、および、原料ガス導入管3114が設置されている。さらにカソード電極3111には高周波マッチングボックス3115を介して高周波電源(不図示)が接続されている。
【0038】
原料ガス供給装置3200は、SiH,H,CH,NO,B,CF等の原料ガスボンベ3221〜3225、バルブ3231〜3235、圧力調整器3261〜3265、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255およびマスフローコントローラ3211〜3215から構成される。各原料ガスを封入した原料ガスボンベ3221〜3225は補助バルブ3260を介して反応容器3122内の原料ガス導入管3114に接続されている。
【0039】
次にこの装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。本発明の表面処理方法で処理した基体ホルダー3121にあらかじめ脱脂洗浄した導電性基体3112を装着し、その後、反応容器3122内に設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器3122内を排気する。真空計3119の表示を見ながら、反応容器3122内の圧力がたとえば1Pa以下の所定の圧力になったところで、基体加熱用ヒーター3113に電力を供給し、導電性基体3112を例えば50℃から350℃の所望の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置3200より、Ar、He等の不活性ガスを反応容器3122内に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。次に、ガス供給装置3200より堆積膜形成に用いるガスを反応容器3122内に供給する。すなわち、必要に応じバルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255を開き、マスフローコントローラ3211〜3215に流量設定を行う。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、真空計3119の表示を見ながらメインバルブ3118を操作し、反応容器3122内の圧力が所望の圧力になるように調整する。所望の圧力が得られたところで高周波電源(不図示)より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス3115を操作し、反応空間3110にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。このような操作を複数回行うことで複数の堆積層からなる電子写真感光体を形成することができる。
【0040】
図5は作成された電子写真感光体の層構成の一例について示した模式図である。図5に示す電子写真感光体500は、導電性基体501の上にアモルファスシリコン系光受容層502が堆積された構造であって、光受容層502は下部注入阻止層505、光導電層503、中間層506、表面層504を含む構成である。下部注入阻止層505は、導電性基体側からの電荷の注入を阻止するために設けることが好ましい。また、中間層506は、上部からの電荷注入を低減し、帯電性を向上させるために設けることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
<実施例1>
被処理材としてアルミニウム合金板(5052)を8枚、ステンレス板(SUS304)を2枚、チタン合金板(SSAT−64)を2枚用意した。被処理材は長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmの平板である。用意した金属平板上に図3に示すRFプラズマCVD法による堆積装置を用いて、表1に示す条件で水素化アモルファスシリコン(以後、「a−Si:H」とも称する)膜を約5μm堆積させて付着膜付の被処理材を作成した。その際、円筒状基体に金属平板を取り付けられるように加工した基体を用いて金属平板を取り付け、その基体を図3中の導電性基体3112の代わりに設置した。なお、アルミニウム合金板(5052)1枚、ステンレス板(SUS304)1枚、チタン合金板(SSAT−64)1枚は、膜を堆積させずに保管した。
【0042】
次に、a−Si:H膜が堆積された被処理材を表2に示す条件で、表面処理を行った。表2の処理条件は、第1の噴射ガンから噴射される研磨材を研磨材−1として示し、第2の噴射ガンから噴射される研磨材を研磨材−2として示している。前述した図1(a)における第1の噴射ガンの噴射角106(θ1)は30°、第2の噴射ガンの噴射角107(θ2)は45°とした。また、噴射ガンのノズルは拡がり角度15°、噴射口径20mmのものを用い、噴射ガンの噴射口から噴射ガンの中心軸が被処理材に交わる点までの距離を100mmとした。また、間隔105は120mmとなるように設置した。
【0043】
また、表2においては、第1の噴射ガンから吹き付けられる1cm当たりの研磨材衝突エネルギーをE1[g/sec]、第2の噴射ガンから吹き付けられる1cm当たりの研磨材衝突エネルギーをE2[g/sec]として示している。Mmは被処理材のモース硬度を、M1は研磨材−1のモース硬度を、M2は研磨材−2のモース硬度をそれぞれ示している。
【0044】
表面処理には、図1に示す構成の処理装置を用いた。実施例1では、被処理材と研磨材のモース硬度の関係を変えて表面処理を行った。研磨材と同時に噴射する水は2L/分とし、混合させる研磨材の量を調節してE1,E2を調整した。なお、研磨材がドライアイスの場合、水は用いずに空気と共に噴射させた。
第1の噴射ガンに用いる研磨材の粒径は、120番メッシュ相当のものを用いた。また、その形状はいずれも略球形の形状のものを用いた。第2の噴射ガンに用いる研磨材の粒径は氷やドライアイスは略楕円球形で30番メッシュを通過したものを用いた。鉄は、150番メッシュ相当で略球形のものを用い、ナイロンは30番メッシュ相当で略円柱形状のものを用いた。アクリルは60番メッシュ相当の大きさで樹脂を粉砕した粒子を用いた。
【0045】
被処理材への吹き付けは以下のように行った。図2(a)に噴射ガンの配置と被処理材の移動方向を示した表面処理装置内構成を示す。平板の長手方向127mmへ第1の噴射ガン202で処理を行い、続けて第2の噴射ガン203で処理されるように一方向(矢印207で示す方向)に被処理材201を動かすことにより被処理材の膜付着面全面の表面処理を行った。被処理材の移動速度は、5mm/秒とした。
【0046】
図2(b)には、被処理材表面における処理進行方向を、研磨材の衝突領域205の移動順として示している。被処理材201の右端からY軸のプラス方向に衝突領域205が移動するように、被処理材201をY軸のマイナス方向(矢印207で示す方向)に動かして処理した。被処理材201の左端まで処理が達したら、衝突領域205をX軸プラス方向(X軸矢印方向)に15mm平行移動するように、被処理材201を動かす。更に、被処理材201の右端に衝突領域がくるように動かした後(衝突領域205‘)、同様に被処理材201の右端から左端に向けて処理した。なお、図2(b)には示していないが、衝突領域206も同様とした。実線の矢印208は噴射ガンから研磨材を噴射中の衝突領域の移動方向を示し、破線の矢印209は噴射ガンから研磨材を非噴射中の衝突領域の移動方向を示す。
【0047】
このような処理をX軸方向の端部(X軸のマイナス側端部)から、もう一方の端部(X軸のプラス側端部)まで行い、これを1回の処理とした。このように、第1の噴射ガンの処理に続いて第2の噴射ガンでトレースするように処理するトレース処理を15回行って、処理終了とした。
実施例1−7では、被処理材の移動速度は、0.3mm/秒として、第1の噴射ガンの処理に続いて第2の噴射ガンでトレースするように処理するトレース処理を1回で、被処理材全面を処理した(1回処理)。つまり、トレース処理を1回行って、処理終了とした。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

実施例1で表面処理した被処理材を以下の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
【0050】
(付着膜除去能評価)
表面処理後の被処理材を(株)日立ハイテクノロジーズ社製の超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S4800に設置し、EDAX社製のGenesisを用いてEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により、Si元素の定性分析を行った。そして、GenesisソフトでSi元素のマッピング分析を行い、Si元素が検出された部分の面積を得た。
以下の測定条件で信号ピークを確認して評価した。
加速電圧:20kV
照射電流:20nA
【0051】
2mm×2mm視野を任意に5箇所選択して合計20mmを分析し、Si元素が検出された部分の合計面積と全評価面積の比(Si元素が検出された合計面積÷20mm)で評価した。Si元素が検出される面積は小さいほど、付着膜除去状態は良好として、以下のように評価した。
A:1%以下、B:1%より大きく3%以下、C:3%より大きく8%以下、D:8%より大きく15%以下、E:15%より大きい。E評価では明らかな膜残りが認められ、プラズマCVD装置用の成膜炉内部品の洗浄としては不十分と判断した。
【0052】
(微粉付着評価)
表面処理後の被処理材、及び膜堆積を行わず表面処理も施していない未処理の被処理材をともに純水のシャワー洗浄を行ったのち乾燥させた。シャワー洗浄は、純水を10L/分の流量で2分間おこなった。その後、表面処理後の被処理材、及び未処理の被処理材の表面全面に日新EM(株)のカーボン両面テープ(7314)を密着させて、カーボン両面テープに被処理材表面の付着物を転写させた。表面処理後の被処理材表面の付着物をカーボン両面テープに転写させた評価テープをT−1とした。また、表面処理を施していない被処理材表面の付着物をカーボン両面テープに転写させた評価テープをT−2とした。それぞれの評価テープを付着膜除去状態評価と同様に、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S4800に設置し、EPMAで分析した。被処理材の母体元素(Al、Fe、Ni、Cr、Ti)のマッピング分析を行った。評価テープ各々、2mm×2mm視野を任意に5箇所選択して合計20mmをマッピング分析し、母体元素が検出された部分の合計面積(以下、「検出合計面積」とも称する)を求めた。
【0053】
評価は、以下の式より算出される値を指標として行った。
((T−1の検出合計面積)-(T−2の検出合計面積))/(全評価面積(20mm))
指標は小さいほど良好で、A:2%以下、B:2%より大きく4%以下、C:4%より大きく7%以下、D:7%より大きく10%以下、E:10%より大きい、とした。E評価では、洗浄部品のハンドリング時に、例えば手袋への付着が認められることがある。そのような状況のためと考えているが、E評価の部材を用いると膜欠陥の発生頻度が多くなる。真空装置内で付着物の飛散によるものと考えられるので、プラズマCVD装置用の成膜炉内部品の洗浄としては不十分と判断した。
【0054】
<比較例1>
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)5枚を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を作成した。次に、表3に示す表面処理条件で、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面を表面処理した。研磨材の粒径および形状についても実施例1と同様とした。ただし、第1の噴射ガンの研磨材で、くるみは非球形である。
このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表4に示す。
【0055】
<比較例2>
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)1枚を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を作成した。次に、表3に示す表面処理条件で、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面を表面処理した。ただし、本比較例では第1の噴射ガンの吹き付けのみで表面処理を行った。研磨材の粒径および形状についても実施例1と同様とした。
このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表4に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表4の評価結果より、M1>Mm>M2として、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けをして表面処理することにより、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立し、清浄な表面が得られることがわかる。
実施例1−7では1回処理で表面処理するようにしたところ、第1の噴射ガンによる吹き付けに続いて第2の噴射ガンによる吹き付けを複数回に分けて行うトレース処理を施した実施例1−1よりも微粉付着が若干増加した。実施例1−8では、第1の研磨材であるアルミナが角のある形状のため微粉付着が若干増加するというという結果になった。
【0059】
比較例1−1、1−4、1−5、1−6,1−7,1−8,1−9では、M2>Mmとなる研磨材で処理しているため、微粉付着抑制効果がほとんど得られなかった。比較例1−2、1−3では、Mm>M1となる研磨材で処理しているため、付着膜除去能が不足して膜残りが発生した。比較例1−1、1−4では、Mm>M1とともにM2>Mmとなる研磨材で処理しているため、比較例1−2、1−3のMm>M1、Mm>M2とした場合に比べ付着膜除去能が向上したものの微粉付着の状態は悪化した。
比較例2では、第1の噴射ガンの吹き付けのみで表面処理したため、付着膜除去能は良好であったが、微粉やバリの発生が多く、微粉付着が多かった。
【0060】
以上のことから、以下の方法によって、付着膜除去と微粉付着抑制が両立して清浄な表面が得られることがわかった。
1)1つの被処理材に対して少なくとも2つのホーニング処理のための噴射ガンを同時に用いる。
2)モース硬度が被処理材よりも大きい少なくとも1種以上の研磨材とモース硬度が被処理材よりも小さい少なくとも1種以上の研磨材を個別の噴射ガンから噴射し、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けて表面処理する。
さらに、以下のトレース処理のほうが、1回処理より、付着膜除去能と微粉付着抑制が両立して清浄な表面が得られることがわかった。
1)モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材の吹き付けに続いて、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けるという連続した表面処理を複数回に分けて施す。
【0061】
<実施例2> 研磨材の再利用
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)2枚を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を2枚作成した。次に表5に示す表面処理条件で被処理材の付着膜表面を処理した。表5に示した以外の条件は実施例1と同様とした。
【0062】
また、実施例2では図6(a)に示す構成のホーニング処理装置を用いた。被処理材601を処理容器610に設置し、第1の噴射ガン602と第2の噴射ガン603を用いて表面処理を行った。吹き付けた後の2種の研磨材と水の混合液を回収タンク611に集めて研磨材の沈殿分離による回収を行った。そして、沈降した研磨材を混合液と共に回収タンク611の底部から第1の噴射ガン602の研磨材を調整タンク608に送る。次いで、所定の1cm当たりの研磨材衝突エネルギーE1となるように調整タンク608内で水や新規研磨材の補充調整をする。その後、第1の噴射ガン602の吹き付けポンプ604により第1の噴射ガン602に水と研磨材の混合液を送り、再利用するようになっている。
【0063】
表面処理した被処理材は実施例1と同様の評価方法で評価した。評価結果を表6に示す。
分離回収能力は表面処理終了直後に第1の噴射ガンから噴射された研磨材と水の混合液を採集し、第2の噴射ガンの研磨材である氷粒あるいはドライアイス粒が混合して浮遊しているかどうかを目視で確認した。その結果、氷粒、ドライアイス粒ともに確認できなかった。氷は回収タンク611で液体の水に、ドライアイスは気体になって、回収タンク611から第1の噴射ガン602に戻した研磨材はSUS430だけとなっており、分離回収能力は良好であることが確認された。
また、表6の結果から、再利用した研磨材を用いても実施例1−1および1−3と同様に良好な表面処理ができることが解る。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
<実施例3> 研磨材の回収分離
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)2枚、ステンレス板(SUS304)2枚、及びチタン合金板(SSAT−64)1枚を用いた。そして、実施例1と同様に付着膜付被処理材を5枚作成した。
次に、表7に示す表面処理条件で被処理材の付着膜表面を処理した。実施例3では、略球形で磁性の研磨材である鉄、SUS430と、非球形で非磁性の研磨材であるくるみ、SiC、ナイロン、略球形で非磁性の研磨材であるガラス、ジルコンを用いた。SUS430は120番メッシュ相当の略球形状、ガラスは150番メッシュ相当の略球形状のものを用いた。他の研磨材の大きさ、形状は実施例1と同じとした。
表7に示した以外の条件は、実施例1と同様とした。
【0067】
また、実施例3では図6(b)に示すような構成のホーニング処理装置を用いた。実施例3では吹き付けた後の2種の研磨材と水の混合液を回収タンク611に集めて研磨材の分離回収を行った。
図6(b)は第1の噴射ガン602に磁性の研磨材を用いる場合の構成例である。処理容器610で使用した研磨材は回収タンク611に集められる。ここで磁性の研磨材は回収タンク611内に設置した分離回収装置612により分離される。分離された磁性の研磨材は沈殿タンク613に送られ、そして調整タンク608に送られ、そこで所定のE1となるように、水や新規研磨材の補充調整を行う。その後、第1の噴射ガン602の吹き付けポンプ604により第1の噴射ガン602に水と研磨材の混合液を送り、再利用するようになっている。また、非磁性の研磨材は、回収タンク611の底部から沈殿タンク614に送られる。そして調整タンク609に送られ、そこで所定のE2となるように水や新規研磨材の補充調整を行う。その後、第2の噴射ガン603の吹き付けポンプ605により第2の噴射ガン603に水と研磨材の混合液を送り、再利用するようになっている。
【0068】
分離回収装置612は、簡単に説明すると、磁性の研磨材を磁力ローラーで回収し、磁石の攪拌棒で捕獲することで、磁性と非磁性の研磨材を分離回収するものである。例えば、図7(a)に示すような構成のものを用いることができる。図7(b)は図7(a)内の磁力ローラー702と剥ぎ取りブレード703部分を説明するための模式図である。回収タンク701内に設けられた磁力ローラー702と剥ぎ取りブレード703により磁性の研磨材と非磁性の研磨材を分離可能となっている。剥ぎ取った磁性の研磨材は再度タンク708内に沈降させて、タンクの底部から噴射ガンの研磨材として所定のE1となるように調整して再利用するようにした。また、回収タンク701内に残った非磁性の研磨材は再度別のタンク614内に導入し、磁石の攪拌棒(不図示)で攪拌して磁性の研磨材は捕獲した。また、沈降した非磁性の研磨材をタンクの底部から噴射ガンの研磨材として所定のE2となるように調整して、再利用するようにした。
【0069】
実施例3−2は、第2の噴射ガン603に用いる研磨材が磁性の研磨材なので、図6(b)の吹き付けポンプ604を第2の噴射ガン603に接続し、吹き付けポンプ605を第1の噴射ガン602に接続した構成に変更した。
表面処理した被処理材は実施例1と同様の評価方法で評価した。評価結果を表8に示す。
【0070】
分離回収能力は、表面処理終了直後に第1の噴射ガンから噴射された研磨材と水の混合液と、第2の噴射ガンから噴射された研磨材と水の混合液をそれぞれ採集して評価した。具体的には、研磨材の混合液をろ紙で濾して乾燥させて10gの研磨材を得る。その研磨材を磁石棒に振りかけて、磁石に付着した磁性の研磨材の質量と磁石につかなかった非磁性の研磨材の質量を求めた。
【0071】
分離回収能力の評価は、たとえば実施例3−1で説明すると、磁性の研磨材を噴射する第1の噴射ガンから採集した研磨材において、磁性の研磨材に対する非磁性の研磨材の質量比を求めた。具体的には、噴射ガンから噴射された研磨材を図9の研磨材回収容器を用いて集め、その内の10gをポリ容器に移す。次にポリ容器内の研磨材からネオジウム磁石を用いて磁性の研磨材を取り除いた。20回ほど繰り返してポリ容器の質量がほぼ減少しなくなった時点で残った研磨材の質量を求めた。(残った研磨材の質量)=(磁石につかなかった非磁性の研磨材の質量)とし、(10g−磁石につかなかった非磁性の研磨材の質量)=(磁石についた磁性の研磨材の質量)とした。質量比は(磁石につかなかった非磁性の研磨材の質量)/(磁石についた磁性の研磨材の質量)とした。
また、非磁性の研磨材を噴射する第2の噴射ガンから採集した研磨材においては、磁石につかなかった非磁性の研磨材に対する磁石についた磁性の研磨材の比として質量比を求めた。評価結果を表8に示す。質量比が小さいほど分離回収能力が良好となっている。
【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【0074】
実施例3−1、3−2、3−3、3−4、3−5のいずれも付着膜除去能および微粉付着評価は良好であった。実施例3−2の微粉付着評価がBなのは、第1の噴射ガンの研磨材であるSiCが非球形で微紛の発生がやや多かったためである。また、実施例3−5の微粉付着評価がBなのは、第1の噴射ガンの研磨材であるガラスが表面処理工程で破砕するものがあり、破砕の結果、鋭利な形状を有する研磨材ができてしまう。そのため微粉の発生、研磨材の刺さり等が増加したためである。分離回収能能力については、質量比で5%未満であり、良好であった。特に磁性の研磨材に混入した非磁性の研磨材は、質量比が1%未満であり、分離回収能能力は非常に良好であった。
【0075】
<実施例4> 研磨材衝突エネルギーの影響
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付被処理材を23枚作成した。
次に表9に示す表面処理条件とし、実施例1と同様にして付着膜付被処理材の付着膜表面の処理を行った。研磨材の粒径および形状についても実施例1と同様とした。
表面処理した被処理材を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表10に示す。
【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
表10より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにC以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例4−1から4−23は、第1の噴射ガンから噴射される研磨材の噴流速度V1を変えてE1を変えている。さらに、第2の噴射ガンから噴射される研磨材の噴流速度V2を変えることでE1とE2の大小関係を変えている。E1を小さくしていくと付着膜除去能が低下していくことがわかる。
【0079】
実施例4−1から4−5はE1が小さいため、同じトレース処理では付着膜除去能が実施例4−6以降に比べてやや低い結果となっている。実施例4−5はE1が同じ実施例4−1〜4−4に比べて付着膜除去能の評価が高い。これはE2が大きいために、やや付着膜除去能が改善しているためと考えられる。
また、E1が同じ条件での比較から、E2をE1>E2とすることにより微粉付着抑制の効果が向上していることがわかる。
【0080】
実施例4−6から4−23ではE1が十分大きいため付着膜除去能の評価が高い。
実施例4−2、4−9、4−15、4−22のように、E1=E2では微粉付着抑制の効果がやや低下している。
以上より付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面を得るためには、E1>E2とすることが好ましいことがわかる。
【0081】
<実施例5> 噴射ガンの噴射角の影響。E1>E2の場合。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付被処理材を26枚作成した。
次に、表11に示す表面処理条件とする以外は実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例では噴射角が表面処理に及ぼす影響を確認している。第1の噴射ガンの噴射角(θ1)とは図1で示すZ軸と第1の噴射ガンの中心軸で成す角106をさす。第2の噴射ガンの噴射角(θ2)とは図1で示すZ軸と第2の噴射ガンの中心軸で成す角107をさす。
このように表面処理した被処理材を実施例1と同様に評価した。評価結果を表12に示す。
【0082】
【表11】

【0083】
【表12】

【0084】
表12より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにC以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例5では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)及び第2の噴射ガンの噴射角(θ2)を変化させて比較した。E1、E2はそれぞれ一定になるように調整した。実施例5−11と5−19ではθ2を本装置構成上の上限83度にしたため噴流速度の被処理材垂直方向成分が小さくなり、研磨材衝突エネルギーが小さくなってしまったが、十分な付着膜除去能と微粉付着の効果的な抑制が両立できた。
【0085】
実施例5−25、5−26は第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が45度超となり、噴流速度の被処理材垂直方向成分が小さくなり、5−24までと同じ研磨材衝突エネルギーであっても僅かに研磨材が表面を滑る傾向になる。そのために付着膜除去能がやや低下した。
実施例5−1、5−2、5−3は第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0度のため、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。
【0086】
実施例5−5と5−13は第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。
以上より、E1>E2の条件において、0°<θ1≦45°かつθ1≦θ2<90°、とすることで、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着のより効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが分かる。
【0087】
<実施例6> 噴射ガンの噴射角の影響。E1<E2の場合。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を23枚作成した。
次に、表13に示すようにE1とE2の関係をE1<E2とし、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)と第2の噴射ガンの噴射角(θ2)を変えた表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。
このように表面処理した被処理材を実施例1と同様に評価した。評価結果を表14に示す。
【0088】
【表13】

【0089】
【表14】

【0090】
表14より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例6−1、6−2、6−3では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0度のため、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例6−5と6−13では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので微粉付着抑制効果が低下している。実施例6−22、6−23ではθ1が45°を超えているため、やや付着膜除去能が低下していることが分かる。
E1>E2である実施例5と比較すると微粉付着抑制効果は小さいものの、いずれの条件においても付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが分かる。そして、E1<E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°とすることがより好ましいことが分かる。
【0091】
<実施例7> 噴射ガンの噴射角の影響。E1=E2の場合。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を16枚作成した。
次に、表15に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例ではE1=E2となる条件として被処理材の付着膜表面の処理を行った。研磨材の粒径および形状についても実施例1と同様とした。
このように表面処理した被処理材を実施例1と同様に評価した。評価結果を表16に示す。
【0092】
【表15】

【0093】
【表16】

【0094】
表16より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例7−1、7−2では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0度のため、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例7−3と7−8では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。実施例7−15、7−16ではθ1が45°を超えているため、やや付着膜除去能が低下していることが分かる。
E1>E2である実施例5と比較すると微粉付着抑制効果は小さいものの、いずれの条件においても付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。そして、E1=E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°とすることがより好ましいことが解る。
【0095】
<実施例8> 研磨材−1:鉄球、研磨材−2:氷粒、E1に対してE2を変化。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を16枚作成した。
次に、表17に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例では研磨材−1を鉄球に、研磨材−2を氷粒に変更して、かつE1に対してE2を変化させて、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理した被処理材を実施例1と同様に評価した。評価結果を表18に示す。
【0096】
【表17】

【0097】
【表18】

【0098】
表18より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにC以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事がわかる。更に詳細には以下がわかる。
実施例8−1から8−6では噴射ガン1の全条件を一定としてE2を変化させた。E1>E2の条件の実施例8−1、8−2、8−3と比べ、E1=E2の条件である実施例8−4では微粉付着抑制効果がやや低下している。E1<E2の条件である実施例8−5、8−6では、さらに微粉付着抑制効果が低下していることが分かる。
【0099】
実施例8−7から8−11は噴射ガン1の全条件を一定としてE2を変化させた。E1=E2の条件の実施例8−10では微粉付着抑制効果がやや低下し、さらにE1<E2となる実施例8−11では、さらに微粉付着抑制効果が低下していることが解る。
また実施例8−12から8−16は噴射ガン1の全条件を一定としてE2を変化させた。E1=E2の条件の実施例8−16では微粉付着抑制効果がやや低下していることが解る。
以上より、研磨材−1を鉄球に、研磨材−2を氷粒にした場合も、E1>E2とすることが付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着抑制効果の両立に関してより効果的であることがわかった。
【0100】
<実施例9> 研磨材−1:鉄球、研磨材−2:氷粒、θ1に対してθ2を変化。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を14枚作成した。
次に、表19に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例では研磨材−1を鉄球に、研磨材−2を氷粒として、θ1に対してθ2を変化させて、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。評価結果を表20に示す。
【0101】
【表19】

【0102】
【表20】

【0103】
表20よりいずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにC以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例9−1では第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0°のため、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例9−5では第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。実施例9−14では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が45°を超えているため、噴流速度の被処理材垂直方向成分が小さくなり、付着膜除去能がやや低下している。
以上より、研磨材−1を鉄球に研磨材−2を氷粒にした場合も、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°、とすることで、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着のより効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。
【0104】
<実施例10> 研磨材−1:鉄球、研磨材−2:氷粒、E1<E2の条件で、θ1に対してθ2を変化。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を18枚作成した。
次に、表21に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例では研磨材−1を鉄球に、研磨材−2を氷粒とし、E1<E2の条件で、θ1に対してθ2を変化させて、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。評価結果を表22に示す。
【0105】
【表21】

【0106】
【表22】

【0107】
表22より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例10−1では第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0°のために、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例10−3、10−10では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。実施例10−18ではθ1が45°を超えているため、やや付着膜除去能が低下していることが分かる。
【0108】
E1>E2である実施例9と比較すると埋め込み摺り込み抑制効果は小さいものの、いずれの条件においても付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。そして、E1<E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°とすることがより好ましいことが解る。
以上より、研磨材−1を鉄球に研磨材−2を氷粒とし、E1<E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°、とすることで、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着のより効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが分かる。
【0109】
<実施例11> 研磨材−1:鉄球、研磨材−2:氷粒、E1=E2の条件で、θ1に対してθ2を変化。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を14枚作成した。
次に、表23に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例では研磨材−1を鉄球に、研磨材−2を氷粒とし、E1=E2の条件でθ1に対してθ2を変化させて、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。評価結果を表24に示す。
【0110】
【表23】

【0111】
【表24】

【0112】
表24より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例11−1では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0°のために、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例11−2と11−8では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。実施例11−14ではθ1が45°を超えているため、やや付着膜除去能が低下していることが分かる。
【0113】
E1>E2である実施例9と比較すると埋め込み摺り込み抑制効果は小さいものの、いずれの条件においても付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。そして、E1<E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°とすることがより好ましいことが分かる。
【0114】
<実施例12> 研磨材−1:鉄球、研磨材−2:氷粒、E1とE2の関係。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのチタン合金板(SSAT−64)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を16枚作成した。
次に、表25に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表26に示す。
【0115】
【表25】

【0116】
【表26】

【0117】
表26より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例12−1から12−5では、噴射ガン1の全条件を一定としてE2を変化させた。E1>E2の条件の実施例12−1、12−2と比べ、E1=E2の条件の実施例12−3では微粉付着抑制効果がやや低下し、さらにE1<E2の条件である実施例12−4、12−5では、さらに微粉付着抑制効果が低下していることが解る。
【0118】
実施例12−6から12−10は、噴射ガン1の全条件を一定としE2を変化させた。E1=E2の条件の実施例12−9では微粉付着抑制効果がやや低下し、さらにE1<E2となる実施例12−10では、さらに微粉付着抑制効果が低下していることが分かる。
また実施例12−11から12−16は、噴射ガン1の全条件を一定としてE2を変化させた。E1=E2の条件の実施例8−15では微粉付着抑制効果がやや低下していることが分かる。さらにE1<E2となる実施例12−16では、さらに微粉付着抑制効果が低下していることが解る。
以上より、研磨材−1を鉄球に、研磨材−2を氷粒にした場合も、E1>E2とすることが付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着抑制効果の両立に関してより効果的であることがわかった。
【0119】
<実施例13> 被処理材:チタン合金板(SSAT−64)、E1>E2の場合におけるθ1とθ2の関係。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのチタン合金板(SSAT−64)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を24枚作成した。
次に、表27に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表28に示す。
【0120】
【表27】

【0121】
【表28】

【0122】
表28より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにC以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例13−1、13−2では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0°のために、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例13−14,13−15,13−16、13−23では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。また、実施例13−23と13−24では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が45度超となり、噴流速度の被処理材垂直方向成分が小さくなり、僅かに研磨材が表面を滑る傾向になる。そのために付着膜除去能がやや低下した。
以上より、被処理材にチタン合金板(SSAT−64)を用いた場合も、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°、とすることで、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着のより効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。
【0123】
<実施例14> 被処理材:チタン合金板(SSAT−64)、E1<E2の場合におけるθ1とθ2の関係。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのチタン合金板(SSAT−64)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を23枚作成した。
次に、表29に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表30に示す。
【0124】
【表29】

【0125】
【表30】

【0126】
表30より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例14−1、14−2、14−3では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0度のために、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例14−5、14−13では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。また実施例14−22、14−23でθ1が50°では、やや付着膜除去能が低下していることが解る。
【0127】
E1>E2である実施例13と比較すると微粉付着抑制効果は小さいものの、いずれの条件においても付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。そして、E1<E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°とすることがより好ましいことが解る。
以上より、被処理材にチタン合金板(SSAT−64)を用い、E1<E2の条件としても、0°<θ1≦45°かつθ1≦θ2<90°、とすることで、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着のより効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。
【0128】
<実施例15> 被処理材:チタン合金板(SSAT−64)、E1=E2の場合におけるθ1とθ2の関係。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのチタン合金板(SSAT−64)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を16枚作成した。
次に、表31に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表32に示す。
【0129】
【表31】

【0130】
【表32】

【0131】
表32より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにD以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。更に詳細には以下が解る。
実施例15−1、15−2では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)が0°のために、被処理材表面に研磨材が残留したり、微紛、バリの埋め込み、摺り込みが多くなったりし、そのために、微粉付着抑制効果が小さくなっている。実施例15−3、15−4、15−8では、第1の噴射ガンの噴射角(θ1)よりも、第2の噴射ガンの噴射角(θ2)が小さいので、微粉付着抑制効果が低下している。実施例15−15、15−16ではθ1が45°を超えているため、やや付着膜除去能が低下していることが解る。
【0132】
E1>E2である実施例13と比較すると微粉付着抑制効果は小さいものの、いずれの条件においても付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着の効果的な抑制が両立した清浄な表面が得られることが解る。
以上より、被処理材にチタン合金板(SSAT−64)を用い、E1=E2の条件においても、0°<θ1≦45°、かつ、θ1≦θ2<90°とすることがより好ましいことが解る。
【0133】
<実施例16> 被処理材:ステンレス板(SUS304)の場合におけるE1とE2の関係。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのステンレス板(SUS304)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を19枚作成した。
次に、表33に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表34に示す。
【0134】
【表33】

【0135】
【表34】

【0136】
表34より、いずれの実施例においても付着膜除去能評価、微粉付着評価ともにC以上の評価結果であり、本発明の効果が得られている事が解る。また、被処理材にステンレス板(SUS304)を用いた場合もE1>E2とすることで、清浄な表面が得られ、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着抑制効果の両立がより効果的となることがわかる。
【0137】
<実施例17> 3個以上の噴射ガンを使用。
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmのアルミニウム合金板(5052)を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を3枚作成した。
次に、表35に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。本実施例では3つ以上のガンを配置して表面処理を行った。第1の噴射ガンの研磨材のモース硬度をM1とし、第2の噴射ガンの研磨材のモース硬度をM2とし、同様に、噴射する順に、研磨材のモース硬度をM1、M2、M3、M4とした。被処理材のモース硬度をMmとした。
【0138】
実施例17−1では3個の噴射ガンを用いて研磨材のモース硬度がM1=M2>Mm>M3となるようにした。実施例17−2では3個の噴射ガンを用いて研磨材のモース硬度がM1>Mm>M2>M3となるようにした。実施例17−3では4個の噴射ガンを用いて研磨材のモース硬度がM1=M2>Mm>M3>M4となるようにした。
また、いずれもモース硬度が小さい研磨材を吹き付ける噴射ガンほど、噴射角が大きくなるように配置した。
このように表面処理した被処理材を実施例1と同様に評価した。評価結果を表36に示す。
【0139】
【表35】

【0140】
【表36】

【0141】
表36に示した評価結果より、実施例17−1では、実施例17−2、実施例17−3と比べて微粉付着がやや多い結果となっている。これはモース硬度がMmよりも大きい研磨材を吹き付ける噴射ガンを2つ用いているのに対し、モース硬度がMmよりも小さい研磨材を吹き付ける噴射ガンは1つのため、微紛やバリの除去効果が実施例17−2、実施例17−3と比べて小さいためと考えられる。実施例17−2では、Mmよりも大きい研磨材を吹き付ける噴射ガンを1つにし、Mmよりも小さい研磨材を吹き付ける噴射ガンを2つにすることで、微粉付着抑制効果が顕著に得られている。
【0142】
さらに、実施例17―3で、Mmよりも大きい研磨材を吹き付ける噴射ガンを2つにしても、Mmよりも小さい研磨材を吹き付ける噴射ガンも2つにすることで、微粉付着抑制効果が顕著に得られている。
以上から、モース硬度がMmより小さい研磨材を噴射する噴射ガンの数を、モース硬度がMmより大きい研磨材を噴射する噴射ガンの数と同じか多くすることが付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着抑制の両立に関して特に効果的であることが確認された。
【0143】
<実施例18> 被処理材:アルミニウム合金
被処理材として長さ127mm、幅50mm、厚さ3mmの表37に示す3種類のアルミニウム合金板を用い、実施例1と同様に付着膜付の被処理材を3枚作成した。
次に、表37に示す表面処理条件とする以外は、実施例1と同様にして被処理材の付着膜表面の処理を行った。このように表面処理が成された被処理材を実施例1と同様の評価方法により評価した。評価結果を表38に示す。
【0144】
【表37】

【0145】
【表38】

【0146】
表38に示す評価結果より、本発明の表面処理を行うことで、いずれのアルミニウム合金系の被処理材においても清浄な表面が得られ、付着膜除去能の高レベルでの維持と微粉付着抑制効果の両立に関して効果的であることがわかった。
【0147】
<実施例19>
本実施例では、被処理材として図8で示すアルミニウム合金板(5052)で作成されたアモルファスシリコン電子写真感光体製造用の基体ホルダー801を2本用い、本発明の表面処理を行った。具体的にはプラズマCVD法により表39に示す条件で外径84mm、長さ381mmの電子写真感光体を2回作成し、作成に使用した2本の基体ホルダー801を実施例1-1と同様にして表面処理を行った。
【0148】
基体ホルダー801は、円筒形状の胴体803と胴体803より外径の大きな円筒形状のスカート部802からなるホルダー本体806、及びキャップ部804からなる。胴体803に導電性基体805を設置し、スカート部802とキャップ部804で導電性基体805を挟むようにキャップ部804を胴体803に設置する。スカート部802とキャップ部804は、導電性基体と同じ外径とし、本例では外径84mmとした。胴体803の外径は76mm、基体ホルダー801の長さは1000mmである。
【0149】
電子写真感光体を作成した後の基体ホルダー表面には、スカート部802、キャップ部804にアモルファスシリコン膜が付着している。図4に被処理材である基体ホルダーと噴射ガンの配置を示す。基体ホルダーの胴体部803表面でその母線方向接線にY軸をとり、胴体部803表面でY軸と直交するようにX軸をとり、胴体部803の中心軸を通りXY平面に垂直となるようにZ軸をとる。第1の噴射ガン402は、噴射ガン402から吹き付けられる噴流の中心軸がYZ平面にあり、その中心軸はZ軸に対して所定の角度406で設置されている。第2の噴射ガン403は、噴射ガン103から吹き付けられる噴流の中心軸がYZ平面にあり、その中心軸はZ軸に対して所定の角度407で設置されている。
【0150】
表面処理中は基体ホルダー401をY軸方向に移動させると共に、基体ホルダーの中心軸を回転軸として周方向に回転させた。また、基体ホルダー上でアモルファスシリコン膜が付着した部分はスカート部とキャップ部であるが、他の部分も清浄化のため表面処理を施した。なお、噴射ガンの噴射口から基体ホルダーの胴体部までの距離が100mmとなるようにした。
【0151】
このようにして表面処理がなされた基体ホルダーの清浄度を評価するために、表面処理を施した2本の基体ホルダーのうちの1本から評価用サンプルを切り出した。切り出し部分はスカート部とし、軸方向100mm、周方向20mmの大きさで切り出した。このようにして切り出された評価用サンプルを実施例1と同様に評価を行ったところ、実施例1−1と同じく付着膜除去能、埋込み摺込み評価ともに評価Aであった。
【0152】
次に、切断していない表面処理後の基体ホルダーを再利用して、アモルファスシリコン電子写真感光体を表39に示す条件で再度作成した。作成された電子写真感光体表面を幅360mmのラッピングテープ(レフライト(株)製 型番:GC4000)で研磨した。ラッピングテープはJISゴム硬度30の加圧ローラーでドラム表面に約0.8kgf/cmの圧力で押し付けられている。加圧ローラーの軸と電子写真感光体の軸は、平行になるようにして当圧させた。その状態でラッピングテープを50mm/分のスピードで電子写真感光体の接線方向に移動させながら電子写真感光体を回転速度40rpmで回転させることで表面を研磨した。
【0153】
次に、キヤノン株式会社製の電子写真装置Color imageRUNNER iR C6880Nに作成した電子写真感光体を設置し、A3の画像出力を行った。出力画像は、256階調の最大濃度を256と、白を0としたとき、64階調のハーフトーン濃度で、シアン単色画像と黒単色画像を各2枚出力した。出力した画像中に高濃度の点画像として現れる画像欠陥の有無を、ルーペを用いて評価した。その結果、0.05mm以上の画像欠陥は検出できなかった。
以上より、本発明の表面処理を行った清浄な基体ホルダーを用いることで、画像欠陥が抑制された良好な画像が得られるアモルファスシリコン電子写真感光体が得られた。
【0154】
【表39】

【符号の説明】
【0155】
101 被処理材
102 第1の噴射ガン
103 第2の噴射ガン
104 付着膜
105 間隔
106 第1の噴射ガンの噴射角(θ1)
107 第2の噴射ガンの噴射角(θ2)
108 第1の噴射ガンによる衝突領域
109 第2の噴射ガンによる衝突領域
201 被処理材
202 第1の噴射ガン
203 第2の噴射ガン
401 基体ホルダー
402 第1の噴射ガン
403 第2の噴射ガン
601 被処理材
602 第1の噴射ガン
603 第2の噴射ガン
604、605 噴射ガンの吹き付けポンプ
606、607 研磨材補給管
608、609 調整タンク
610 処理容器
611 回収タンク
701 回収タンク
702 磁力ローラー
703 剥ぎ取りブレード
704 搬送ローラー
705 攪拌羽根
706 処理後の混合液導入管
707 排出管
708 タンク
709 排出管調整タンク
801 基体ホルダー
802 スカート部
803 胴体
804 キャップ部
805 導電性基体
806 ホルダー本体
901 回収容器
902 開口
1001 噴射ガン
1002 中心軸
1003 羽根車
1004 噴射ガンから被処理材までの中心軸の長さ
1005 噴きつけ点
1006,1009 歯車
1007 磁電式回転検出器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材を用いたホーニング処理により、被処理材に対して表面剥離又は付着物除去をおこなう表面処理方法において、1つの処理容器内で1つの被処理材に対して少なくとも2つのホーニング処理のための噴射ガンを同時に用い、モース硬度が被処理材よりも大きい少なくとも1種以上の研磨材とモース硬度が被処理材よりも小さい少なくとも1種以上の研磨材を個別の噴射ガンから噴射し、モース硬度が大きい研磨材から順に被処理部に吹き付けることを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材が固体の研磨材であり、前記モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材が、常温で液体となる材料または常温で気体となる材料を冷却固化した研磨材であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
磁性の研磨材と非磁性の研磨材をそれぞれ個別の噴射ガンから噴射することを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記磁性の研磨材は、鉄およびSUS430からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記非磁性の研磨材は、ジルコン、くるみ、ナイロンおよびガラスからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の表面処理方法。
【請求項5】
前記噴射ガンから被処理材に吹き付けられる単位時間における単位面積当たりの研磨材衝突エネルギーが、大きいほうから順に被処理部に吹き付けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項6】
前記被処理部の法線と前記噴射ガンの中心軸で成す角を噴射角として、前記モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材を噴射する噴射ガンの噴射角をθ1としたとき0°<θ1≦45°であり、モース硬度が被処理材よりも小さい研磨材を噴射する噴射ガンの噴射角をθ2としたときθ1≦θ2<90°であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項7】
前記モース硬度が小さい研磨材を吹き付ける噴射ガンほど、噴射角が大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項8】
前記モース硬度が被処理材よりも大きい研磨材は、鉄またはステンレスで略球形の研磨材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項9】
前記常温で液体となる材料または常温で気体となる材料を冷却固化した研磨材は、氷またはドライアイスであることを特徴とする請求項2、5乃至8のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項10】
前記被処理材がアルミニウム及び又はアルミニウム合金で形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項11】
前記被処理材がプラズマCVD装置用の成膜炉内部品であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項12】
請求項11の表面処理方法で表面処理した基体ホルダーを用いて、プラズマCVD装置で電子写真感光体を製造することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−6258(P2013−6258A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142178(P2011−142178)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】