説明

表面処理装置、および、表面処理方法

【課題】被処理物の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させる。
【解決手段】表面処理装置100は、第1および第2の紫外線照射処理室10a,10bを備える。第1および第2の紫外線照射処理室10a,10b内には、それぞれ、複数の紫外線ランプ20a,20bが配置される。そして、第1の紫外線照射処理室10a内で被処理物50の表面に対して紫外線照射処理が施された後、第2の紫外線照射処理室10b内で被処理物50の表面に対して紫外線照射処理が施される。なお、紫外線ランプ20a,20bから放射される紫外線の強度は、互いに等しい。また、被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離と被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離とは、互いに等しい。また、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度は、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置、および、表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸素を含むガス中において、被処理物の表面に対して紫外線照射を行い、紫外線(UV;UltraViolet rays)およびオゾンの作用によって、表面処理を施す技術(UVオゾン処理)が知られている(例えば、下記特許文献1〜6参照)。このUVオゾン処理は、被処理物の表面の親水化や、ドライ洗浄に利用される。
【0003】
そして、従来、UVオゾン処理の処理効率を向上させるための技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、処理室内に酸素ガスを導入し、処理室内の酸素濃度を高くして処理を行うことによって、大気雰囲気中での処理よりもオゾン濃度を増加させ、処理時間を短縮する紫外線処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−225337号公報
【特許文献2】特開昭64−075539号公報
【特許文献3】特開2006−043646号公報
【特許文献4】特開2000−233129号公報
【特許文献5】特開平8−332371号公報
【特許文献6】特開2000−273229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された技術においても、処理効率の向上について、更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、被処理物の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
表面処理装置であって、
被処理物の表面に対して紫外線照射処理を施すための紫外線照射処理室と、
酸素に照射することによってオゾンを発生させる波長を有する紫外線を放射する紫外線ランプであって、前記紫外線照射処理室内に配置され、前記被処理物の表面に紫外線照射を行うための前記紫外線ランプと、
前記紫外線照射処理室内に酸素を含むガスを供給する酸素供給部と、
前記紫外線照射処理の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記紫外線照射処理として、
前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第1の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が第1の照射強度である第1の条件下で、前記被処理物の表面に対して第1の紫外線照射処理を施し、
前記第1の紫外線照射処理の後に、前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第2の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が前記第1の照射強度よりも高い第2の照射強度である第2の条件下で、前記被処理物の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すように、前記制御を行う、
表面処理装置。
【0009】
本願発明者は、被処理物の表面に対してUVオゾン処理を施すに際し、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的な場合と、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的な場合とが存在することを実験的に見出した。具体的には、本願発明者は、UVオゾン処理によって被処理物の表面を親水化する処理において、処理前の被処理物の表面の親水性が比較的低い場合には、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的であり、処理前の被処理物の表面の親水性が比較的高い場合には、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的であることを実験的に見出した。ここで、紫外線の作用とは、狭義には、被処理物の表面における分子鎖を切断する作用を意味している。また、オゾンの作用とは、狭義には、被処理物の表面に酸素リッチな官能基(親水基)を生成したり、有機物を分解したりする作用を意味している。
【0010】
適用例1の表面処理装置では、まず、上記第1の紫外線照射処理によって、被処理物の表面に紫外線よりもオゾンを作用させ、その後、上記第2の紫外線照射処理によって、被処理物の表面にオゾンよりも紫外線を作用させる。つまり、適用例1の表面処理装置では、まず、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的な場合に、被処理物の表面に対して上記第1の紫外線照射処理を施し、その後、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的な場合に、被処理物の表面に対して上記第2の紫外線照射処理を施すことができる。したがって、被処理物の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。
【0011】
なお、適用例1の表面処理装置において、上記第1の量は、被処理物の表面にオゾンを作用させる観点から、多いほど好ましい。一方、上記第2の量は、被処理物の表面にオゾンの作用が及ぶ程度の量であればよい。上記オゾンの量は、例えば、オゾン濃度センサによって、直接的に測定するようにしてもよいし、紫外線照射処理条件に基づいて、予め、シミュレーションによって求めるようにしてもよい。
【0012】
また、適用例1の表面処理装置において、上記第1の照射強度は、被処理物の表面に紫外線の作用が及ぶ照射強度であればよい。一方、上記第2の照射強度は、被処理物の表面に紫外線を作用させる観点から、高いほど好ましい。上記照射強度は、例えば、照度計によって、直接的に測定するようにしてもよいし、紫外線照射処理条件に基づいて、予め、シミュレーションによって求めるようにしてもよい。
【0013】
[適用例2]
適用例1記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理室は、
前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施すための第1の紫外線照射処理室と、
前記第1の紫外線照射が施された前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施すための第2の紫外線照射処理室と、を含み、
前記第1の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度と、前記第2の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度とは、互いに等しく、
前記第1の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離と、前記第2の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離とは、互いに等しく、
前記第2の紫外線照射処理室内の酸素濃度は、前記第1の紫外線照射処理室内の酸素濃度よりも低い、
表面処理装置。
【0014】
紫外線照射処理室内に配置された紫外線ランプから放射される紫外線の強度が互いに等しく、紫外線照射処理室内における被処理物と紫外線ランプとの距離が互いに等しい場合(ケース1)、紫外線照射処理室内の酸素濃度が高いほど、オゾンの発生量は増加し、被処理物の表面におけるオゾンの量も多くなる。換言すれば、ケース1では、紫外線照射処理室内の酸素濃度が低いほど、オゾンの発生量は低下し、被処理物の表面におけるオゾンの量も少なくなる。一方、ケース1では、紫外線照射処理室内の酸素濃度が高いほど、酸素に吸収される紫外線のエネルギが増加するため、被処理物の表面に照射される紫外線の照射強度は低くなる。換言すれば、ケース1では、紫外線照射処理室内の酸素濃度が低いほど、酸素に吸収される紫外線のエネルギが減少するため、被処理物の表面に照射される紫外線の照射強度は高くなる。したがって、適用例2の表面処理装置によって、第1の紫外線照射処理室において、被処理物の表面に対して、上記第1の紫外線照射処理を施し、その後、第2の紫外線照射処理室において、被処理物の表面に対して、上記第2の紫外線照射処理を施すことができる。
【0015】
[適用例3]
適用例1記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理室は、
前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施すための第1の紫外線照射処理室と、
前記第1の紫外線照射が施された前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施すための第2の紫外線照射処理室と、を含み、
前記第1の紫外線照射処理室内の酸素濃度と、前記第2の紫外線照射処理室内の酸素濃度とは、互いに等しく、
前記第1の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離と、前記第2の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離とは、互いに等しく、
前記第2の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度は、前記第1の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度よりも高い、
表面処理装置。
【0016】
紫外線照射処理室内の酸素濃度が互いに等しく、紫外線照射処理室内における被処理物と紫外線ランプとの距離が互いに等しい場合(ケース2)、紫外線ランプから放射される紫外線の強度が低いほど、被処理物の表面に照射される紫外線の照射強度も低くなる。換言すれば、ケース2では、紫外線ランプから放射される紫外線の強度が高いほど、被処理物の表面に照射される紫外線の照射強度も高くなる。したがって、適用例3の表面処理装置によって、第1の紫外線照射処理室において、被処理物の表面に対して、上記第1の紫外線照射処理を施し、その後、第2の紫外線照射処理室において、被処理物の表面に対して、上記第2の紫外線照射処理を施すことができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理室は、
前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施すための第1の紫外線照射処理室と、
前記第1の紫外線照射が施された前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施すための第2の紫外線照射処理室と、を含み、
前記第1の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度と、前記第2の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度とは、互いに等しく、
前記第1の紫外線照射処理室内の酸素濃度と、前記第2の紫外線照射処理室内の酸素濃度とは、互いに等しく、
前記第2の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離は、前記第1の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離よりも小さい、
表面処理装置。
【0018】
紫外線照射処理室内に配置された紫外線ランプから放射される紫外線の強度が互いに等しく、紫外線照射処理室内の酸素濃度が互いに等しい場合(ケース3)、被処理物と紫外線ランプとの距離が大きいほど、被処理物の表面に照射される紫外線の照射強度が低くなる。換言すれば、ケース3では、被処理物と紫外線ランプとの距離が小さいほど、被処理物の表面に照射される紫外線の照射強度が高くなる。したがって、適用例4の表面処理装置によって、第1の紫外線照射処理室において、被処理物の表面に対して、上記第1の紫外線照射処理を施し、その後、第2の紫外線照射処理室において、被処理物の表面に対して、上記第2の紫外線照射処理を施すことができる。
【0019】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれかに記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理は、前記被処理物の表面の親水化処理である、
表面処理装置。
【0020】
[適用例6]
適用例5記載の表面処理装置であって、
前記制御部は、
前記被処理物の表面における水の接触角が所定の閾値よりも大きい場合に、前記接触角が前記閾値よりも小さくなるまで、前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施し、
前記接触角が前記閾値よりも小さくなった後に、前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施す、
表面処理装置。
【0021】
適用例5,6の表面処理装置によって、上記親水化処理の処理効率を向上させることができる。なお、適用例6の表面処理装置において、被処理物の表面における水の接触角が、所定の閾値よりも大きいか小さいかは、被処理物の表面における水の接触角を、直接的に監視する必要はなく、例えば、処理条件および処理時間を用いて、間接的に監視するようにすればよい。また、上記所定の閾値は、例えば、被処理物の材質等に応じて、適宜、設定される。
【0022】
[適用例7]
表面処理方法であって、
酸素に照射することによってオゾンを発生させる波長を有する紫外線を放射する紫外線ランプであって、被処理物の表面に紫外線照射を行うための前記紫外線ランプが配置された紫外線照射処理室内に、酸素を含むガスを供給する酸素供給工程と、
前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第1の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が第1の照射強度である第1の条件下で、前記被処理物の表面に対して第1の紫外線照射処理を施す第1の紫外線照射処理工程と、
前記第1の紫外線照射処理工程の後に、前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第2の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が前記第1の照射強度よりも高い第2の照射強度である第2の条件下で、前記被処理物の表面に対して第2の紫外線照射処理を施す第2の紫外線照射処理工程と、
を備える表面処理方法。
【0023】
適用例7の表面処理方法によって、適用例1の表面処理装置と同様に、UVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。なお、適用例7の表面処理方法においても、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。また、本発明は、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例としての表面処理装置100の概略構成を示す説明図である。
【図2】紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、UVオゾン処理による被処理物50の表面における水の接触角の低下値との関係、および、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、被処理物50の表面における積算光量との関係を示す説明図である。
【図3】UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角とUVオゾン処理による被処理物50の表面における水の接触角の低下値との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施例としての表面処理装置100Aの概略構成を示す説明図である。
【図5】本発明の第3実施例としての表面処理装置100Bの概略構成を示す説明図である。
【図6】本発明の第4実施例としての表面処理装置100Cの概略構成を示す説明図である。
【図7】第1実施例の変形例としての表面処理装置100Dの概略構成および動作を示す説明図である。
【図8】第2実施例の変形例としての表面処理装置100Eの概略構成および動作を示す説明図である。
【図9】第3実施例の変形例としての表面処理装置100Fの概略構成および動作を示す説明図である。
【図10】第4実施例の変形例としての表面処理装置100Gの概略構成および動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての表面処理装置100の概略構成を示す説明図である。この表面処理装置100は、被処理物50の表面に対してUVオゾン処理を施すための装置である。すなわち、表面処理装置100は、酸素を含むガス中において、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行い、紫外線およびオゾンの作用によって、被処理物50の表面を親水化するための装置である。このことは、後述する他の実施例の表面処理装置についても同様である。ここで、紫外線の作用とは、狭義には、被処理物50の表面における分子鎖を切断する作用を意味している。また、オゾンの作用とは、狭義には、被処理物50の表面に酸素リッチな官能基(親水基)を生成したり、有機物を分解したりする作用を意味している。
【0026】
図示するように、第1実施例の表面処理装置100は、第1の紫外線照射処理室10aと、第2の紫外線照射処理室10bと、を備えている。第1の紫外線照射処理室10aは、被処理物50の表面に対して第1の紫外線照射処理を施すための処理室である。また、第2の紫外線照射処理室10bは、第1の紫外線照射処理が施された被処理物50の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すための処理室である。第1の紫外線照射処理、および、第2の紫外線照射処理については、後述する。
【0027】
第1の紫外線照射処理室10a内には、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行うための複数の紫外線ランプ20aが配置されている。また、第2の紫外線照射処理室10b内には、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行うための複数の紫外線ランプ20bが配置されている。紫外線ランプ20a,20bは、酸素に照射することによってオゾンおよび活性酸素原子を発生させる波長を有する紫外線を放射する。本実施例では、紫外線ランプ20a,20bとして、低圧水銀ランプを用いるものとした。低圧水銀ランプは、主要波長が約185(nm)および約254(nm)の紫外線を放射する。
【0028】
そして、第1実施例の表面処理装置100では、第1の紫外線照射処理室10a内に配置された紫外線ランプ20aから放射される紫外線の強度Waと、第2の紫外線照射処理室10b内に配置された紫外線ランプ20bから放射される紫外線の強度Wbとは、互いに等しいものとした。また、第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離L1と、第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2とは、互いに等しいものとした。
【0029】
第1の紫外線照射処理室10aと、第2の紫外線照射処理室10bとは、仕切扉12によって隔離されている。そして、第1の紫外線照射処理室10a内には、配管30aを介して、酸素濃度が比較的高い、酸素と窒素との混合ガスが供給される。本実施例では、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度は13(%)であるものとした。そして、第1の紫外線称照射処理開始時には、第1の紫外線照射処理室10a内の酸素濃度は13(%)となる。また、第2の紫外線照射処理室10bには、配管30bを介して、酸素濃度が比較的低い、酸素と窒素との混合ガスが供給される。本実施例では、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度は8(%)であるものとした。そして、第2の紫外線照射処理開始時には、第2の紫外線照射処理室10b内の酸素濃度は8(%)となる。上記各混合ガスは、酸素タンクと窒素タンクとを用意して、各タンクから供給される酸素と窒素とを所望の割合で混合するようにしてもよいし、各混合ガスが予め充填されたタンクを用意するようにしてもよい。第1の紫外線照射処理室10a、および、第2の紫外線照射処理室10bからの排気ガスは、それぞれ、図示しない排気系を介して排気される。
【0030】
表面処理装置100の動作は、制御ユニット40によって制御される。制御ユニット40は、まず、第1の紫外線照射処理室10a内において、被処理物50の表面に対して、第1の紫外線照射処理を施す。その後、制御ユニット40は、仕切扉12を開けて、第1の紫外線照射処理が施された被処理物50を第2の紫外線照射処理室10bに搬送し、仕切扉12を閉じる。そして、制御ユニット40は、第2の紫外線照射処理室10b内において、被処理物50の表面に対して、第2の紫外線照射処理を施す。制御ユニット40は、[課題を解決するための手段]における制御部に相当する。
【0031】
本実施例の表面処理装置100が上述した構成を備えることとしたのは、以下に示す2つの実験結果に基づく。
【0032】
<実験1>
実験1では、被処理物50の表面に対してUVオゾン処理を施す際の紫外線照射処理室内に供給する混合ガス中の酸素濃度を変化させたときの、UVオゾン処理による被処理物50の表面における水の接触角の低下値、および、被処理物50の表面における積算光量を、実験によって求めた。なお、この実験1は、紫外線ランプから放射される紫外線の強度は一定であり、被処理物50と紫外線ランプとの距離は一定であり、処理時間は一定である条件下で行った。また、この実験1は、表面における水の接触角が90度以上の被処理物50に対して行った。
【0033】
図2は、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、UVオゾン処理による被処理物50の表面における水の接触角の低下値との関係、および、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、被処理物50の表面における積算光量との関係を示す説明図である。紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、被処理物50の表面における水の接触角の低下値との関係を実線で示した。また、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、被処理物50の表面における積算光量との関係を破線で示した。
【0034】
被処理物50の表面における水の接触角の低下値は、UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角とUVオゾン処理後の被処理物50の表面における水の接触角との差である。そして、上述したように、この実験1において、紫外線ランプから放射される紫外線の強度は一定であり、被処理物50と紫外線ランプとの距離は一定であり、処理時間は一定である。したがって、上記低下値は、単位時間当たりの被処理物50の表面の親水化の度合い、すなわち、UVオゾン処理の処理効率に対応する。また、積算光量は、被処理物50の表面における紫外線の照射強度と照射時間との積である。そして、上述したように、この実験において、紫外線ランプから放射される紫外線の強度は一定であり、被処理物50と紫外線ランプとの距離は一定であり、処理時間は一定である。したがって、上記積算光量は、被処理物50の表面における紫外線の照射強度に対応する。
【0035】
図2に示した実験1の実験結果から、以下のことが分かる。
(1)紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が高いほど、UVオゾン処理の処理効率が高くなる。これは、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が高いほど、酸素への紫外線照射によるオゾンの発生量が増加し、被処理物50の表面におけるオゾンの量が多くなるためと考えられる。
(2)紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が低いほど、UVオゾン処理の処理効率が低くなる。これは、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が低いほど、酸素への紫外線照射によるオゾンの発生量が減少し、被処理物50の表面におけるオゾンの量が少なくなるためと考えられる。
(3)紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が高いほど、被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度が低くなる。これは、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が高いほど、酸素に吸収される紫外線のエネルギが増加するためと考えられる。
(4)紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が低いほど、被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度が高くなる。これは、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が低いほど、酸素に吸収される紫外線のエネルギが減少するためと考えられる。
【0036】
<実験2>
実験2では、被処理物50の表面に対してUVオゾン処理を施す際の紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的高い場合(酸素濃度:13(%))と比較的低い場合(酸素濃度:8(%))とについて、UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角を変化させたときの、UVオゾン処理による被処理物50の表面における水の接触角の低下値を、実験によって求めた。なお、この実験2も、先に説明した実験1と同様に、紫外線ランプから放射される紫外線の強度は一定であり、被処理物50と紫外線ランプとの距離は一定であり、処理時間は一定である条件下で行った。また、この実験2は、表面における水の接触角が70度以下の被処理物50に対して行った。
【0037】
図3は、UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角と、UVオゾン処理による被処理物50の表面における水の接触角の低下値との関係を示す説明図である。紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的高い13(%)の場合の上記関係を実線で示した。また、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的低い8(%)の場合の上記関係を破線で示した。
【0038】
なお、先に説明した実験1の実験結果から分かるように、紫外線照射処理室に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的高い13(%)の場合には、比較的低い8(%)の場合よりも、酸素への紫外線照射によるオゾンの発生量が多くなるため、被処理物50の表面におけるオゾンの量が多くなる(上記(1),(2)参照)。また、紫外線照射処理室に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的低い8(%)の場合には、比較的高い13(%)の場合よりも、酸素吸収される紫外線のエネルギが少なくなるため、被処理物50の表面における紫外線の照射強度が高くなる(上記(3),(4)参照)。
【0039】
図3に示した実験2の実験結果から、以下のことが分かる。
(5)UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角が約25度よりも大きい場合には、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的高い13(%)の場合の方が、比較的低い8(%)の場合よりも、UVオゾン処理の処理効率が高い。これは、UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角が約25度よりも大きい場合には、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的であるためと考えられる。
(6)UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角が約25度よりも小さい場合には、紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度が比較的低い8(%)の場合の方が、比較的高い13(%)の場合よりも、UVオゾン処理の処理効率が高い。これは、UVオゾン処理前の被処理物50の表面における水の接触角が約25度よりも小さい場合には、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的であるためと考えられる。
【0040】
以上の2つの実験結果(上記(1)〜(6)参照)から、本願発明者は、被処理物50の表面に対してUVオゾン処理を施すに際し、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的な場合と、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的な場合とが存在することを見出した。具体的には、本願発明者は、被処理物50の表面における水の接触角が所定の閾値よりも大きい場合には、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的であり、被処理物50の表面における水の接触角が所定の閾値よりも小さい場合には、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的であることを見出した。換言すれば、本願発明者は、被処理物50の表面の親水性が比較的低い場合には、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的であり、被処理物50の表面の親水性が比較的高い場合には、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的であることを見出した。なお、上記接触角についての所定の閾値は、被処理物の材質によって異なるため、被処理物に対して、実験2と同様の実験を行うことによって、上記所定の閾値を求めると良い。
【0041】
そこで、本願発明者は、被処理物50の表面における水の接触角が所定の閾値よりも大きい場合に、まず、第1の紫外線照射処理室10aにおいて、被処理物50の表面におけるオゾンの量が比較的多い第1の量であり、かつ、被処理物50の表面における紫外線の照度が被処理物50の表面に紫外線の作用が及ぶ第1の照度である第1の条件下で、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第1の紫外線照射処理)を施すものとした。そして、第1の紫外線照射処理によって、被処理物50の表面における水の接触角が所定の閾値よりも小さくなったときに、第2の紫外線照射処理室10bにおいて、被処理物50の表面におけるオゾンの量が被処理物50の表面にオゾンの作用が及ぶ第2の量であり、かつ、被処理物50の表面における紫外線の照射強度が第1の照射強度よりも高い第2の照射強度である第2の条件下で、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第2の紫外線照射処理)を施すものとした。そして、第1実施例の表面処理装置100では、被処理物50の表面に対して、上述した第1および第2の紫外線照射処理を施すために、先に説明した構成を採用した。
【0042】
以上説明した第1実施例の表面処理装置100によれば、まず、紫外線の作用よりもオゾンの作用の方が処理効率の向上に効果的な場合に、被処理物50の表面に対して第1の紫外線照射処理を施し、その後、オゾンの作用よりも紫外線の作用の方が処理効率の向上に効果的な場合に、被処理物50の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すことができる。したがって、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。
【0043】
B.第2実施例:
図4は、本発明の第2実施例としての表面処理装置100Aの概略構成を示す説明図である。第2実施例の表面処理装置100Aの構成は、第1実施例の表面処理装置100の構成とほぼ同じである。そして、第2実施例の表面処理装置100Aは、以下の点で、第1実施例の表面処理装置100と異なっている。すなわち、第2実施例の表面処理装置100Aは、第1実施例の表面処理装置100における紫外線ランプ20bの代わりに、紫外線ランプ20Abを備えている。そして、紫外線ランプ20Abから放射される紫外線の強度は、紫外線ランプ20bから放射される紫外線の強度よりも高い。また、第2実施例の表面処理装置100Aでは、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度とが、互いに等しい。本実施例では、第1の紫外線照射処理室10a、および、第2の紫外線照射処理室10bに供給される混合ガス中の酸素濃度は13(%)であるものとした。
【0044】
第2実施例の表面処理装置100Aでは、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度とは、互いに等しい。また、第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離L1と、第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20Abとの距離L2とは、互いに等しい。また、第2の紫外線照射処理室10b内に配置された紫外線ランプ20Abから放射される紫外線の強度Wbは、第1の紫外線照射処理室10a内に配置された紫外線ランプ20aから放射される紫外線の強度Waよりも高い。このため、第2の紫外線照射処理室10b内において被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度は、第1の紫外線照射処理室10a内において被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度よりも高くなる。したがって、第2実施例の表面処理装置100Aによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、第1の紫外線照射処理室10aにおいて、被処理物50の表面に対して第1の紫外線照射処理を施し、その後、第2の紫外線照射処理室10bにおいて、被処理物50の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すことができる。
【0045】
以上説明した第2実施例の表面処理装置100Aによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。
【0046】
C.第3実施例:
図5は、本発明の第3実施例としての表面処理装置100Bの概略構成を示す説明図である。第3実施例の表面処理装置100Bの構成は、第1実施例の表面処理装置100の構成とほぼ同じである。そして、第3実施例の表面処理装置100Bは、以下の点で、第1実施例の表面処理装置100と異なっている。すなわち、第3実施例の表面処理装置100Bでは、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度とが、互いに等しい。本実施例では、第1の紫外線照射処理室10a、および、第2の紫外線照射処理室10bに供給される混合ガス中の酸素濃度は13(%)であるものとした。また、第3実施例の表面処理装置100Bでは、第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2が、第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離L1よりも小さい。
【0047】
第3実施例の表面処理装置100Bでは、第1の紫外線照射処理室10a内に配置された紫外線ランプ20aから放射される紫外線の強度Waと、第2の紫外線照射処理室10b内に配置された紫外線ランプ20bから放射される紫外線の強度Wbとは、互いに等しい。また、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度と、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度とは、互いに等しい。また、第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2は、第1の紫外線照射処理室10a内における50被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L1よりも小さい。このため、第2の紫外線照射処理室10b内において被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度は、第1の紫外線照射処理室10a内において被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度よりも高くなる。したがって、第3実施例の表面処理装置100Bによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、第1の紫外線照射処理室10aにおいて、被処理物50の表面に対して第1の紫外線照射処理を施し、その後、第2の紫外線照射処理室10bにおいて、被処理物50の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すことができる。
【0048】
以上説明した第3実施例の表面処理装置100Bによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。
【0049】
D.第4実施例:
図6は、本発明の第4実施例としての表面処理装置100Cの概略構成を示す説明図である。第4実施例の表面処理装置100Cは、第1ないし第3実施例の表面処理装置100,100A,100Bの構成の一部を組み合わせたものであり、以下の点で、第1実施例の表面処理装置100と異なっている。すなわち、表面処理装置100Cは、第4実施例の表面処理装置100Cは、第1実施例の表面処理装置100における紫外線ランプ20bの代わりに、紫外線ランプ20Abを備えている。そして、紫外線ランプ20Abから放射される紫外線の強度は、紫外線ランプ20bから放射される紫外線の強度よりも高い。また、第4実施例の表面処理装置100Cでは、第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2が、第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離L1よりも小さい。
【0050】
第4実施例の表面処理装置100Cでは、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度は、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度よりも低い。また、第2の紫外線照射処理室10b内に配置された紫外線ランプ20Abから放射される紫外線の強度Wbは、第1の紫外線照射処理室10a内に配置された紫外線ランプ20aから放射される紫外線の強度Waよりも高い。また、第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2は、第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L1よりも小さい。このため、第2の紫外線照射処理室10b内において被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度は、第1の紫外線照射処理室10a内において被処理物50の表面に照射される紫外線の照射強度よりも高くなる。したがって、第4実施例の表面処理装置100Cによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、第1の紫外線照射処理室10aにおいて、被処理物50の表面に対して第1の紫外線照射処理を施し、その後、第2の紫外線照射処理室10bにおいて、被処理物50の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すことができる。
【0051】
以上説明した第4実施例の表面処理装置100Cによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。
【0052】
E.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0053】
E1.変形例1:
上記第1実施例では、表面処理装置100は、第1の紫外線照射処理室10aと、第2の紫外線照射処理室10bとを備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。
【0054】
図7は、第1実施例の変形例としての表面処理装置100Dの概略構成および動作を示す説明図である。図示するように、表面処理装置100Dは、1つの紫外線照射処理室10しか備えていない。そして、紫外線照射処理室10内には、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行うための複数の紫外線ランプ20が配置されている。また、紫外線照射処理室10内には、配管30を介して、酸素と窒素との混合ガスが供給される。表面処理装置100Dの動作は、図示しない制御ユニットによって制御される。
【0055】
そして、表面処理装置100Dでは、制御ユニットは、紫外線照射処理室10内に供給する混合ガス中の酸素濃度を切り替えることによって、被処理物50の表面に対して施す第1の紫外線照射処理と、第2の紫外線照射処理とを切り替える。すなわち、表面処理装置100Dでは、制御ユニットは、まず、紫外線照射処理室10内に、酸素濃度が13(%)の上記混合ガスを供給して、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第1の紫外線照射処理)を施す。その後、制御ユニットは、紫外線照射処理室10内に、酸素濃度が8(%)の上記混合ガスを供給して、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第2の紫外線照射処理)を施す。なお、第1および第2の紫外線照射処理中の、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度Wa、および、被処理物50と紫外線ランプ20との距離L1は、一定である。
【0056】
以上説明した第1実施例の変形例としての表面処理装置100Dによっても、第1実施例の表面処理装置100と同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。また、第1実施例の変形例としての表面処理装置100Dによれば、1つの紫外線照射処理室10しか備えないので、第1実施例の表面処理装置100よりも、装置の小型化を図ることができる。
【0057】
E2.変形例2:
上記第2実施例では、表面処理装置100Aは、第1の紫外線照射処理室10aと、第2の紫外線照射処理室10bとを備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。
【0058】
図8は、第2実施例の変形例としての表面処理装置100Eの概略構成および動作を示す説明図である。図示するように、表面処理装置100Eは、1つの紫外線照射処理室10しか備えていない。そして、紫外線照射処理室10内には、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行うための複数の紫外線ランプ20が配置されている。また、紫外線照射処理室10内には、配管30を介して、酸素と窒素との混合ガスが供給される。表面処理装置100Eの動作は、図示しない制御ユニットによって制御される。
【0059】
そして、表面処理装置100Eでは、制御ユニットは、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度を切り替えることによって、被処理物50の表面に対して施す第1の紫外線照射処理と、第2の紫外線照射処理とを切り替える。すなわち、表面処理装置100Eでは、制御ユニットは、まず、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度を、第2実施例の表面処理装置100Aにおける紫外線ランプ20aから放射される紫外線の強度Waと等しくして、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第1の紫外線照射処理)を施す。その後、制御ユニットは、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度を、第2実施例の表面処理装置100Aにおける紫外線ランプ20Abから放射される紫外線の強度Wb(>Wa)と等しくして、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第2の紫外線照射処理)を施す。なお、第1および第2の紫外線照射処理中の、紫外線照射処理室10内に供給される混合ガス中の酸素濃度(13(%))、および、被処理物50と紫外線ランプ20との距離L1は、一定である。
【0060】
以上説明した第2実施例の変形例としての表面処理装置100Eによっても、第2実施例の表面処理装置100Aと同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。また、第2実施例の変形例としての表面処理装置100Eによれば、1つの紫外線照射処理室10しか備えないので、第2実施例の表面処理装置100Aよりも、装置の小型化を図ることができる。
【0061】
E3.変形例3:
上記第3実施例では、表面処理装置100Bは、第1の紫外線照射処理室10aと、第2の紫外線照射処理室10bとを備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。
【0062】
図9は、第3実施例の変形例としての表面処理装置100Fの概略構成および動作を示す説明図である。図示するように、表面処理装置100Fは、1つの紫外線照射処理室10しか備えていない。そして、紫外線照射処理室10内には、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行うための複数の紫外線ランプ20が配置されている。また、紫外線照射処理室10内には、配管30を介して、酸素と窒素との混合ガスが供給される。表面処理装置100Fの動作は、図示しない制御ユニットによって制御される。
【0063】
そして、表面処理装置100Fでは、制御ユニットは、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離を切り替えることによって、被処理物50の表面に対して施す第1の紫外線照射処理と、第2の紫外線照射処理とを切り替える。すなわち、表面処理装置100Fでは、制御ユニットは、まず、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離を、第3実施例の表面処理装置100Bの第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離L1と等しくして、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第1の紫外線照射処理)を施す。その後、制御ユニットは、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離を、第3実施例の表面処理装置100Bの第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2(<L1)と等しくして、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第2の紫外線照射処理)を施す。なお、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離は、図示しない昇降装置を駆動して、被処理物50および紫外線ランプ20の少なくとも一方を昇降させることによって、切り替えることができる。また、第1および第2の紫外線照射処理中の、紫外線照射処理室10内に供給される混合ガス中の酸素濃度(13(%))、および、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度Waは、一定である。
【0064】
以上説明した第3実施例の変形例としての表面処理装置100Fによっても、第3実施例の表面処理装置100Bと同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。また、第3実施例の変形例としての表面処理装置100Fによれば、1つの紫外線照射処理室10しか備えないので、第3実施例の表面処理装置100Bよりも、装置の小型化を図ることができる。
【0065】
E4.変形例4:
上記第4実施例では、表面処理装置100Cは、第1の紫外線照射処理室10aと、第2の紫外線照射処理室10bとを備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。
【0066】
図10は、第4実施例の変形例としての表面処理装置100Gの概略構成および動作を示す説明図である。図示するように、表面処理装置100Gは、1つの紫外線照射処理室10しか備えていない。そして、紫外線照射処理室10内には、被処理物50の表面に対して紫外線照射を行うための複数の紫外線ランプ20が配置されている。また、紫外線照射処理室10内には、配管30を介して、酸素と窒素との混合ガスが供給される。表面処理装置100Gの動作は、図示しない制御ユニットによって制御される。
【0067】
そして、表面処理装置100Dでは、制御ユニットは、紫外線照射処理室10内に供給する混合ガス中の酸素濃度と、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度と、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離とを切り替えることによって、被処理物50の表面に対して施す第1の紫外線照射処理と、第2の紫外線照射処理とを切り替える。すなわち、表面処理装置100Dでは、制御ユニットは、まず、紫外線照射処理室10内に、酸素濃度が13(%)の上記混合ガスを供給し、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度を、第4実施例の表面処理装置100Cにおける紫外線ランプ20aから放射される紫外線の強度Waと等しくし、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離を、第3実施例の表面処理装置100Bの第1の紫外線照射処理室10a内における被処理物50と紫外線ランプ20aとの距離L1と等しくして、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第1の紫外線照射処理)を施す。その後、制御ユニットは、紫外線照射処理室10内に、酸素濃度が8(%)の上記混合ガスを供給し、紫外線ランプ20から放射される紫外線の強度を、第4実施例の表面処理装置100Cにおける紫外線ランプ20Abから放射される紫外線の強度Wb(>Wa)と等しくし、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離を、第3実施例の表面処理装置100Bの第2の紫外線照射処理室10b内における被処理物50と紫外線ランプ20bとの距離L2(<L1)と等しくして、被処理物50の表面に対して紫外線照射処理(第2の紫外線照射処理)を施す。なお、紫外線照射処理室10内における被処理物50と紫外線ランプ20との距離は、図示しない昇降装置を駆動して、被処理物50および紫外線ランプ20の少なくとも一方を昇降させることによって、切り替えることができる。
【0068】
以上説明した第4実施例の変形例としての表面処理装置100Gによっても、第4実施例の表面処理装置100Cと同様に、被処理物50の表面に対するUVオゾン処理の処理効率を向上させることができる。また、第4実施例の変形例としての表面処理装置100Gによれば、1つの紫外線照射処理室10しか備えないので、第4実施例の表面処理装置100Cよりも、装置の小型化を図ることができる。
【0069】
E5.変形例5:
上記第4実施例では、表面処理装置100Cは、第1実施例の表面処理装置100の構成の一部と、第2実施例の表面処理装置100Aの構成の一部と、第3実施例の表面処理装置100Bの構成の一部とを組み合わせるものとしたが、本発明は、これに限られない。第1実施例の表面処理装置100の構成の一部と、第2実施例の表面処理装置100Aの構成の一部と、第3実施例の表面処理装置100Bの構成の一部と、のうちの2つを組み合わせるものとしてもよい。このことは、上述した第4実施例の変形例の表面処理装置100Gについても同様である。
【0070】
E6.変形例6:
上記実施例では、紫外線ランプ20a,20b,20Abとして、低圧水銀ランプを用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。紫外線ランプ20a,20b,20Abは、酸素に照射することによってオゾンおよび活性酸素原子を発生させる波長を有する紫外線を放射する紫外線ランプであればよい。したがって、紫外線ランプ20a,20b,20Abとして、低圧水銀ランプの代わりに、例えば、キセノンエキシマランプを用いるようにしてもよい。
【0071】
E7.変形例7:
例えば、上記第1実施例では、第1の紫外線照射処理室10a内に供給される混合ガス中の酸素濃度を13(%)とし、第2の紫外線照射処理室10b内に供給される混合ガス中の酸素濃度を8(%)としたが、本発明は、これに限られない。紫外線照射処理室内に供給される混合ガス中の酸素濃度は、紫外線照射処理室内に配置された紫外線ランプから放射される紫外線の強度や、紫外線照射処理室内における被処理物50と紫外線ランプとの距離を考慮して、被処理物50の表面に対して、第1および第2の紫外線照射処理を施すことができる範囲内で、適宜、変更され得る。
【0072】
E8.変形例8:
上記各実施例では、紫外線照射処理室内に供給される混合ガスとして、酸素と窒素との混合ガスを用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。窒素の代わりに、UVオゾン処理に影響を及ぼさない他のガス(例えば、アルゴン等の不活性ガス等)を用いるようにしてもよい。
【0073】
E9.変形例9:
上記各実施例では、本発明の表面処理装置を、被処理物50の表面に対して親水化処理を施す表面処理装置に適用したが、本発明は、これに限られない。本発明の表面処理装置を、被処理物50の表面をドライ洗浄する表面処理装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
100,100A〜100G…表面処理装置
10…紫外線照射処理室
10a…第1の紫外線照射処理室
10b…第2の紫外線照射処理室
12…仕切扉
20,20a,20b,20Ab…紫外線ランプ
30,30a,30b…配管
40…制御ユニット
50…被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理装置であって、
被処理物の表面に対して紫外線照射処理を施すための紫外線照射処理室と、
酸素に照射することによってオゾンを発生させる波長を有する紫外線を放射する紫外線ランプであって、前記紫外線照射処理室内に配置され、前記被処理物の表面に紫外線照射を行うための前記紫外線ランプと、
前記紫外線照射処理室内に酸素を含むガスを供給する酸素供給部と、
前記紫外線照射処理の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記紫外線照射処理として、
前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第1の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が第1の照射強度である第1の条件下で、前記被処理物の表面に対して第1の紫外線照射処理を施し、
前記第1の紫外線照射処理の後に、前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第2の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が前記第1の照射強度よりも高い第2の照射強度である第2の条件下で、前記被処理物の表面に対して第2の紫外線照射処理を施すように、前記制御を行う、
表面処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理室は、
前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施すための第1の紫外線照射処理室と、
前記第1の紫外線照射が施された前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施すための第2の紫外線照射処理室と、を含み、
前記第1の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度と、前記第2の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度とは、互いに等しく、
前記第1の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離と、前記第2の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離とは、互いに等しく、
前記第2の紫外線照射処理室内の酸素濃度は、前記第1の紫外線照射処理室内の酸素濃度よりも低い、
表面処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理室は、
前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施すための第1の紫外線照射処理室と、
前記第1の紫外線照射が施された前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施すための第2の紫外線照射処理室と、を含み、
前記第1の紫外線照射処理室内の酸素濃度と、前記第2の紫外線照射処理室内の酸素濃度とは、互いに等しく、
前記第1の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離と、前記第2の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離とは、互いに等しく、
前記第2の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度は、前記第1の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度よりも高い、
表面処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理室は、
前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施すための第1の紫外線照射処理室と、
前記第1の紫外線照射が施された前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施すための第2の紫外線照射処理室と、を含み、
前記第1の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度と、前記第2の紫外線照射処理室内に配置された前記紫外線ランプから放射される前記紫外線の強度とは、互いに等しく、
前記第1の紫外線照射処理室内の酸素濃度と、前記第2の紫外線照射処理室内の酸素濃度とは、互いに等しく、
前記第2の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離は、前記第1の紫外線照射処理室内における前記被処理物と前記紫外線ランプとの距離よりも小さい、
表面処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の表面処理装置であって、
前記紫外線照射処理は、前記被処理物の表面の親水化処理である、
表面処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の表面処理装置であって、
前記制御部は、
前記被処理物の表面における水の接触角が所定の閾値よりも大きい場合に、前記接触角が前記閾値よりも小さくなるまで、前記被処理物の表面に対して前記第1の紫外線照射処理を施し、
前記接触角が前記閾値よりも小さくなった後に、前記被処理物の表面に対して前記第2の紫外線照射処理を施す、
表面処理装置。
【請求項7】
表面処理方法であって、
酸素に照射することによってオゾンを発生させる波長を有する紫外線を放射する紫外線ランプであって、被処理物の表面に紫外線照射を行うための前記紫外線ランプが配置された紫外線照射処理室内に、酸素を含むガスを供給する酸素供給工程と、
前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第1の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が第1の照射強度である第1の条件下で、前記被処理物の表面に対して第1の紫外線照射処理を施す第1の紫外線照射処理工程と、
前記第1の紫外線照射処理工程の後に、前記被処理物の表面における前記オゾンの量が第2の量であり、かつ、前記被処理物の表面に照射される前記紫外線の照射強度が前記第1の照射強度よりも高い第2の照射強度である第2の条件下で、前記被処理物の表面に対して第2の紫外線照射処理を施す第2の紫外線照射処理工程と、
を備える表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−110814(P2012−110814A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260824(P2010−260824)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】