説明

表面処理装置

【課題】表面処理、改質に使用されたガスにより装置が損傷することを抑止できる表面処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置100は、希釈ガスを供給する希釈ガス供給装置1と、フッ素ガスを供給するフッ素ガス供給装置2と、前記希釈ガスと、前記フッ素ガスとを混合し、混合ガスを発生させる混合器5と、前記混合ガスを被処理物に接触させる反応器6とを備えた表面処理装置100であって、前記反応器内から排気ガスを排出する排気装置7と、前記反応器6と前記排気装置7との間に設けられており、前記排気ガスを流通させる複数の流路19、20、21、22と、前記複数の流路の各々に設けられている複数の弁23、24、25、26とをさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ガスを用いて試料の表面処理、表面改質等を行う表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機物などをフッ素ガスによって処理する表面改質や表面処理が行われており、例えば、下記特許文献に示す表面処理装置が知られている。特許文献1に開示されている表面処理装置は、フッ素ガス源と不活性ガス源とにそれぞれ連絡している供給管を備えたガス調整槽と、前記ガス調整槽とガス導管で連絡されている処理槽と、排ガス処理装置とを備えたものであり、小規模な表面処理や希薄なフッ素ガスを用いて行う表面処理に好適な装置である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−319433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置においては、表面処理後の処理槽内のガスには、フッ素ガスが含まれていることが多く、処理槽が大きくなった場合は処理すべきフッ素ガス量が多くなることがある。このフッ素ガスは反応性、毒性及び腐食性の強いガスであることが知られており、処理槽から一時的に大量のフッ素ガスが含まれたガスが排出されると、フッ素ガスを処理する除害剤の発熱量が増大する等して、処理槽より下流に設けられている配管、部材、機器、除害剤等に負荷をかけ、部分的に発熱したり、結果として配管等が腐食したりするおそれがあった。特に、反応器の下流側には、反応器からガスを排気させる排気装置が設けられているものがあり、該排気装置に設けられているポンプが損傷するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、表面処理、改質に使用されたガスにより装置が損傷することを抑止できる表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の表面処理装置は、希釈ガスを供給する希釈ガス供給装置と、フッ素ガスを供給するフッ素ガス供給装置と、前記希釈ガスと、前記フッ素ガスとを混合し、混合ガスを発生させる混合器と、前記混合ガスを被処理物に接触させる反応器とを備えた表面処理装置であって、前記反応器内から排気ガスを排出する排気装置と、前記反応器と前記排気装置との間に設けられ、前記排気ガスを流通させる複数の流路と、前記複数の流路の各々に設けられている複数の弁とをさらに備えているものである。ここで、前記排気装置と接続されている除害装置をさらに備えていることが好ましい。
【0007】
上記構成であれば、各々の弁を適宜開閉することにより、配管径の異なる流路を適宜換えて利用したり、使用する流路の数を変えたりして、所望の流量のガスを排気装置及び除害装置へ導くことができる。これにより、反応器からフッ素ガスを含んだ大量のガスが排出された場合においても、複数の流路及び弁を利用して、大量のガスが一時的に排気装置及び除害装置へと導かれることを抑止でき、大量のフッ素ガスにより除害剤の発熱量が増大して、反応器の下流に設けられている配管、部材、機器、除害剤等に負荷をかけて、部分的な腐食や早い消耗による劣化を抑止することができる。また、排気装置を備えているので、反応器からガスを排気させやすくなる。さらに、反応器から排出されたガスに含まれているフッ素ガス及びフッ化水素ガスを、除害装置において除害できるとともに、所望の流量へ調整、制御されたガスを除害装置へ導入することができるため、除害装置に充填されている除害剤の消耗、交換をより効率よく正確に実施でき、表面処理装置の部品、部材等の交換のためのコストをさらに抑えることができる。以上より、表面処理後のガスの排気による装置の損傷を抑止することができる表面処理装置を提供することができる。
【0008】
また、本発明の表面処理装置においては、前記反応器出口から前記除害装置入口までの構成部材が、加熱・保温手段を有しているものであり、前記構成部材の内部温度がフッ化水素の沸点以上であることが好ましい。
【0009】
表面処理、表面改質によって生じたフッ化水素ガスがフッ素ガスに混入すると、配管や弁等を構成する金属部材の腐食や劣化が生じ、フッ化水素ガスが液化すると、この腐食や劣化がさらに促進される。上記構成によれば、前記反応器出口から前記除害装置入口までの配管及び構成部材の内部温度がフッ化水素の沸点以上に維持されているので、反応器から排出されるガスに含まれているフッ化水素ガスの液化を抑止でき、配管及び構成部材等を構成している金属部材等の腐食や劣化をより抑止できるとともに、フッ素ガス及びフッ化水素ガスを気体の状態で除害装置へ導くことができる。
【0010】
また、本発明の表面処理装置においては、前記除害装置が、複数の除害塔を有するものであり、前記複数の除害塔のうち、少なくとも1塔が独立して接続されていると共に、前記独立して接続されている除害塔を除く少なくとも2塔が直列に接続されていることが好ましい。
【0011】
上記構成であれば、除害装置において、2塔を連続して使用している間に、他の1塔の除害剤の交換やメンテナンス等を行うことができ、次の使用に備えることができる。また、2塔を連続して使用することができるので、表面処理装置の運転を継続しながら、除害塔を安全な状態で維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る表面処理装置の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る表面処理装置の主要部の概略構成図である。図2は、本発明の実施形態に係る表面処理装置の反応器の断面模式図である。
【0013】
図1において、表面処理装置100は、希釈ガス供給装置1と、フッ素ガス供給装置2と、希釈ガス供給装置1に配管を介して接続されているマスフローコントローラー(第1流量調整手段)3aと、フッ素ガス供給装置2に配管を介して接続されているマスフローコントローラー(第2流量調整手段)3bと、マスフローコントローラー3a、3bとにそれぞれ配管を介して接続されているエジェクター4と、エジェクター4と配管を介して接続され、エジェクター4の下流側に設けられている混合器5と、混合器5から供給される混合ガスによって被処理物を処理する反応器6と、反応器6からガスを排気する排気装置7と、反応器6から排気されたガスに含まれているフッ素ガス及びフッ化水素ガスを除害する除害装置8とを備えているものであり、マスフローコントローラー3aとエジェクター4との間には加熱器(加熱手段)9がさらに設けられている。また、マスフローコントローラー3aの上流側及び下流側にはそれぞれ圧力計10、11が設けられており、圧力計10のさらに上流には圧力調節用バルブ12と、圧力緩衝用タンク13とが設けられている。そして、混合器5と反応器6とに連通している第2連通管17と、第2連通管17の途中に設けられているガス導入弁18と、第2連通管17の途中から分岐して設けられている第1連通管14と、第1連通管14の途中に設けられている背圧弁15及びガス放出弁16とが備えられている。さらに、反応器6と排気装置7との間には、4本の流路19、20、21、22と、流路の各々の途中に設けられている弁23、24、25、26とが備えられている。そして、反応器6出口から前記除害装置8入口までの配管及び構成部材が、加熱・保温手段(図示せず)を有しているものであり、配管及び構成部材の内部温度がフッ化水素の沸点以上に維持されている。
【0014】
希釈ガス供給装置1は、フッ素ガスを希釈する不活性ガスを供給する装置である。希釈ガスとしては、例えば、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス等が挙げられるが、これらのガスに限定されるものではない。
【0015】
フッ素ガス供給装置2は、フッ素ガスを供給するものであり、例えば、図示しないフッ化水素供給装置等からフッ化水素を供給して電気分解し、フッ素ガスを発生させるものやガスボンベ等が挙げられる。
【0016】
マスフローコントローラー(第1流量調整手段、第2流量調整手段)3a、3bは、気体の質量流量を電気信号にて正確に制御するものである。これにより、温度・供給圧力の影響を受けることなく、より正確かつ安定に希釈ガス及びフッ素ガス流量の制御が可能なものとなる。マスフローコントローラー3a、3bは、流量制御するために本体の出入り口ガス圧力差が0.05〜0.10MPa必要である。この圧力差がないと、マスフローコントローラー3a、3b内部の圧力損失のために正確な流量制御が出来なくなる。その為にマスフローコントローラー3a、3bを経由して供給する希釈ガス及びフッ素ガスは、マスフローコントローラー3a、3bよりも下流側に設けられている反応器6の処理圧力(例えば、大気圧)と、マスフローコントローラー3a、3bの圧力損失(例えば、0.05〜0.10MPa)と、供給源である希釈ガス供給装置1又はフッ素ガス供給装置2から必要量の希釈ガス又はフッ素ガスを押し出すために必要な差圧(例えば、0.05〜0.10MPa)とを合計した圧力以上の入り口圧力(例えば、大気圧+0.10〜0.20MPa)が発生していないと正常な希釈ガス又はフッ素ガスの供給が出来ないことになる。そこで、エジェクター4とマスフローコントローラー3a、3bを組み合わせると、エジェクター4の吸引能力によってマスフローコントローラー3a、3bの出口圧力を低下することが出来、(この時、反応器6の圧力は影響しないため)結果としてマスフローコントローラー3a、3b入り口の駆動に必要な圧力も低減させることができる。その為に、フッ素ガスの保持・供給圧力もエジェクターの能力分だけ低減することができる。フッ素ガスは反応性の高いガスであり、保持圧力を低減することができると、その分だけ腐食やガス漏れの危険性を低減することができる。
【0017】
エジェクター4は、流速を速くすることにより減圧状態として気体を引き込むための器具であり、希釈ガスを駆動源としてフッ素ガスを確実に引き込むことができ、引き込んだガスは混合器5へと導かれる。ここで、エジェクター4の代わりに、例えば、バキュームジェネレーター等を用いてもよい。このエジェクター4を備えていることによって、フッ素ガス供給装置2の圧力上限は200kPa以下からでも問題なくフッ素ガスを供給でき、下限は−65kPa(G)まで使用可能である。
【0018】
混合器5は、エジェクター4によって引き込まれた希釈ガス及びフッ素ガスを混合して、生成された混合ガスを反応器6へ導くものである。なお、エジェクター4において、希釈ガスを駆動源として、フッ素ガスが引き込まれることによっても混合ガスを生成することができる。
【0019】
反応器6は、希釈ガス及びフッ素ガスの混合ガスを受け入れて、被処理物の表面処理、改質を行うものである。ここで、図2を用いて詳細に説明すると、反応器6は、混合ガス供給口27と混合ガス排出口28とを有するものであり、反応器6内には、板状部材29と、被処理物30と、可動部材31とが配置されている。また、反応器6に並設して加熱室32が設けられている。
【0020】
板状部材29は、反応器6内において、混合ガス供給口27と被処理物30との間に、供給されたガスを遮るようにして立設されているものである。なお、板状部材29は、可動部材31に設けられているものでも、取り外し可能なものでもよい。この板状部材29によって、反応器6内の混合ガス供給口27の近辺において、混合ガスが被処理物30へ直接接触しにくくなり、処理ムラや不適処理が生じることを抑止できる。
【0021】
可動部材31は、被処理物30を反応器6内又は反応器6外へ移動させることができるものであり、フッ素ガスに対する耐食性を有する金属材、例えば、ステンレス鋼等を用いたメッシュ又はパンチングメタルが用いられているものが好ましい。また、可動部材31には、車輪が取り付けられているが、一変形例として、車輪などが取り付けられていないものを用いてもよい。また、他の変形例として、上記金属材としてメッシュ又はパンチングメタルと金属フレームと車輪とを有しているものでもよい。
【0022】
加熱室32は、被処理物30と混合ガスとを接触させる前に、予め被処理物30を加熱するために設けられているものである。図2における点線図で示している部位は、加熱室32で加熱されている被処理物30と、被処理物を反応器6へ移動させることができる可動部材31とである。ここで、被処理物30は加熱された状態で混合ガスと接触して処理されることが好ましいため、加熱室32から反応器6へ被処理物30を早く移送することが好ましい。そこで、加熱室32は反応器6の近辺に設けられているものであることが好ましく、加熱室32と反応器6が連通しているものでもよい。ここで、一変形例として、加熱室32と反応器6とが隣接して設けられているものや、反応器6内に加熱室32が設けられているものを用いてもよい。
【0023】
排気装置7は、反応器6において被処理物の表面処理や表面改質等が終わると、反応器6内のガスを排気させて除害装置8へと導くものであり、ポンプを有しているものである。なお、フッ素ガスを用いた表面処理及び表面改質などにおいては被処理物30の表面からフッ化水素が生じるため、反応器6から排出されるガスには、フッ素ガスやフッ化水素ガスが含まれている。
【0024】
除害装置8は、反応器6の表面処理において被処理物30の表面から生じたフッ化水素ガス及びフッ素ガス等を除去して、反応器から排気されたガスを無害化するものであり、3塔の除害塔8a、8b、8cを備えているものである。除害塔8a、8b、8cには、除害剤が充填されており、除害剤として、例えば、フッ化水素ガスを吸着するフッ化ナトリウムを主成分とするものや、フッ素ガス及びフッ化水素ガスを吸着するソーダ石灰(ソーダライム)等が挙げられる。
【0025】
除害装置8において、弁の開閉により、3塔の除害塔8a、8b、8cのいずれか1塔が他の2塔と独立して接続されており、他の2塔が直列に接続されている。表面処理装置100を作動させた際、直列に接続している2塔の除害塔のうち1塔を使用し、もう1塔の除害塔は該1塔に補助的に接続しておき、該1塔で除去することのできなかったフッ素ガス及びフッ化水素ガスを2塔目で連続して除去することにより、1塔目を補完することができる。一方、独立して接続されている1塔は、他の2塔が使用されている間、メンテナンスや除害剤の交換等が行われている。なお、接続は、弁の切り替え(開閉)によって行われており、いずれの除害塔が独立の1塔又は他の2塔となるかは、除害剤の使用の状態に応じて適宜変更することができるものである。
【0026】
そして、除害装置8においてフッ素ガス及びフッ化水素ガスの除害されたガスは、表面処理装置100外へ排出されるが、表面処理に再び用いてもよい。なお、除害塔は、3塔に限られず、4塔以上有するものでもよい。
【0027】
加熱器(加熱手段)9は、希釈ガス供給装置1から供給された希釈ガスを、フッ素ガスと混合する前に加熱するものであり、エジェクター4と圧力計11とを接続している配管の途中に設けられているものである。加熱器(加熱手段)9として、例えば、ヒーター等を用いることができる。
【0028】
圧力計10は、マスフローコントローラー3aの上流側の圧力を測定するものであり、マスフローコントローラー3aの上流側に設けられている。圧力計11は、マスフローコントローラー3aの下流側の圧力を測定するものであり、マスフローコントローラー3aの下流側に設けられている。
【0029】
圧力調節用バルブ12は、圧力計10の圧力値と圧力計11の圧力値との差に対応して、マスフローコントローラー3aに一定の駆動差圧をかけるものであり、希釈ガス供給装置1と圧力緩衝用タンク13との間に配管を介して設けられている。これにより、圧力調節用バルブ12には、エジェクター4から下流側にかかる圧力の最大値、エジェクター4の駆動差圧、マスフローコントローラー3aの駆動差圧、表面処理装置100を構成している各要素の圧力損失値の和以上の圧力で、希釈ガスを供給することができる。また、希釈ガスをマスフローコントローラー3aによって固定して供給する場合、エジェクター4の上流側及び下流側には差圧が発生しておらず、希釈ガスを供給した場合にのみ圧力が発生する。このため、希釈ガス供給前のマスフローコントローラー3aの上流側及び下流側の差圧が駆動差圧を超えることが多く、マスフローコントローラー3aに設けられているバルブ(図示せず)が閉じてしまい、希釈ガスが供給できなくなる場合がある。この場合、圧力調節用バルブ12によって、希釈ガス流量を調整して、マスフローコントローラー3aの上流側及び下流側に一定の駆動差圧をかけて希釈ガスを供給することができる。
【0030】
ここで、マスフローコントローラー3aに設けられているバルブと圧力調節用バルブ12とのハンチングの現象を詳細に説明する。希釈ガス流量が少ないとき、マスフローコントローラー3aに設けられているバルブが開かれ、流量が増加する一方で、駆動差圧が低下する。これにより、圧力確保のため圧力調節用バルブ12が開かれ、圧力が増加するが、希釈ガス流量が設定値を超えてマスフローコントローラー3aに設けられているバルブ(図示せず)が閉じられる。そうすると、駆動差圧が高くなり、圧力調節用バルブ12が閉められる。その結果、駆動差圧は低下するが、希釈ガス流量もあわせて低下することとなる。
【0031】
圧力緩衝用タンク13は、圧力調節用バルブ12と圧力計10との間に配管を介して設けられており、希釈ガス供給装置1から供給された希釈ガスを貯留することができるものであり、例えば、設定流量、配管系、供給圧力、選定した機器の応答速度の組み合わせ等によって、マスフローコントローラー3aに設けられている図示しないバルブと圧力調節用バルブ12とがハンチングを引き起こした際、希釈ガスの流量精度が低下することを抑止することができるものである。この圧力緩衝用タンク13によって、マスフローコントローラー3aに設けられている図示しないバルブと圧力調節用バルブ12との相互影響が緩和されて、希釈ガスの流量精度をさらに向上させることができる。
【0032】
第1連通管14は、エジェクター4によって引き込まれ混合器を通過した希釈ガス、又は希釈ガス及びフッ素ガスが通過する管であり、第2連通管17に分岐して設けられているものである。また、第1連通管14の途中において、背圧弁15と、背圧弁15のさらに下流側にガス放出弁16とが設けられている。そして、第1連通管14において、ガス放出弁16のさらに下流側は、排気装置7及び除害装置8へと導かれている。
【0033】
背圧弁15は、弁を通過する流体の圧力を一定に保つための弁であり、背圧弁15によって圧力が調整されたガスは、ガス放出弁16を通過して除害装置8へ導かれる。エジェクター4によって引き込まれ混合器5を通過した希釈ガス及び/又はフッ素ガスは背圧弁15によって圧力が一定に調整される。ここで、背圧弁15の設定圧力値は、好ましくは、マスフローコントローラー3aによって設定した希釈ガスの流量を反応器6へ導入したときのエジェクター4の下流側の圧力安定値をあらかじめ測定しておいた値である。この値を設定すれば、反応器6へ混合ガスを供給する際に、供給開始直後から、流量及び濃度が一定に管理された混合ガスを反応器6へ供給することができる。また、さらに好ましくは、混合ガスの設定流量を反応器6へ導入したときのエジェクター4の下流側の圧力安定値をあらかじめ測定しておいた値である。この値を設定すれば、流量及び濃度の管理精度をさらに向上させることができる。
【0034】
ガス放出弁16は、希釈ガスの流量が安定するまで開かれており、希釈ガスの流量が安定すると閉じられるものである。これは、エジェクター4に十分な真空を発生させるために駆動差圧が必要とされ、希釈ガスが供給された直後は、駆動差圧まで昇圧が徐々に起こるので、希釈ガスの流量が安定するまでに時間を要するからである。なお、フッ素ガスは、フッ素ガス供給装置2において圧力変動が小さいため、供給を開始すると、瞬時に流量が安定する。ガス放出弁16が開かれているときは、希釈ガス及び/又は混合ガスは、第1連通管14を通過して排気装置7へと導かれる。一方、ガス放出弁16が閉じられているときは、希釈ガス及び/又は混合ガスが、第2連通管17を通過して反応器6へと導かれる。
【0035】
第2連通管17は、希釈ガスの流量が安定した後に、希釈ガス及びフッ素ガスを反応器6へと導く管である。
【0036】
ガス導入弁18は、希釈ガスの流量が安定して、十分な真空度が得られた後に開かれるもので、ガス放出弁16が閉じられると同時に開かれる。なお、希釈ガスの流量が安定するまでは、閉じられている。
【0037】
ガス放出弁16及びガス導入弁18は、希釈ガスの流量が安定してエジェクター4に十分な真空度が得られると、瞬時に、ガス放出弁16が閉じられてガス導入弁18が開かれ、希釈ガス及びフッ素ガスは、第1連通管14から第2連通管17へと流路を変えて、反応器6へ導かれる。このとき、ガス放出弁16とガス導入弁18との切り替えは瞬時に行われるので、希釈ガスおよびフッ素ガスの流量や真空度の乱れは極めて小さい。なお、フッ素ガス供給装置2においては、圧力変動が小さいため、供給を開始すると、瞬時にフッ素ガスの流量が安定する。従って、ガス放出弁16とガス導入弁18との切り替えと同時にフッ素ガスの供給を開始することが好ましい。この場合、背圧弁15に、マスフローコントローラー3aによって設定した希釈ガスの流量を反応器6へ導入したときのエジェクター4の下流側の圧力安定値をあらかじめ測定しておいたものを、設定しておくことが好ましい。また、最初に希釈ガスのみを供給して、ガス放出弁16とガス導入弁18との切り替えを行う前にフッ素ガスを供給し、流量及び濃度が一定に管理された混合ガスを第1連通管14から放出し、その後、ガス放出弁16を閉じるとともにガス導入弁18を開いてもよい。このようにすると、流量及び濃度の精度がさらによく管理された混合ガスを反応器6へ供給することができる。この場合、背圧弁15に、混合ガスの設定流量を反応器6へ導入したときのエジェクター4の下流側の圧力安定値をあらかじめ測定しておいたものを、設定しておくことが好ましい。
【0038】
流路19、20、21、22は、反応器6と排気装置7との間に、分岐して設けられているものであり、反応器6から排出される排出ガスが通過する流路である。ここで、流路19、20、21、22は、それぞれ異なる配管系を有しているものを用いてもよく、複数又は全て同じ配管径を有しているものを用いてもよい。異なる配管径を有している流路の場合、最初に配管系の小さい流路を使用して、ガスの排気の進捗に応じて徐々に配管系の大きな流路へ替えて使用することができる。また、複数又は全て同じ配管系を有している流路の場合、最初に1つの流路だけを使用し、ガスの排気の進捗に応じて徐々に流路の使用数を増加させて使用することができる。なお、流路19、20、21、22は、4流路に限らず、5流路以上でもよく、2流路や3流路でもよい。
【0039】
弁23、24、25、26はそれぞれ、流路19、20、21、22のそれぞれの途中に設けられているものである。なお、弁23、24、25、26は、例えば、自動弁を用いてもよく、手動弁等を用いてもよい。
【0040】
ここで、図2の反応器6における混合ガス排出口28から排出されたガスの一例について詳細に説明する。全て異なる配管径を有する流路19、20、21、22(配管径の小さいものから順に、19、20、21、22とする)において、まず、弁23、24、25、26のうち、1番小さい配管径を有する流路19に設けられている弁23を開き、その他の弁24、25、26を閉じる。これにより、ガスは流路19のみを通過するので、小流量のガスが排気装置7へ導かれる。その後、ガスの排気の進捗に応じて徐々に配管系の大きな流路へ替えていく。すなわち、2番目に小さい配管径を有する流路20に設けられている弁24を開くとともに弁23を閉じて、ガスの流路を流路19から流路20へと換える。なお、ここで、弁24を開く際に、弁23を開いた状態のまま、流路19、20の両方を使用したり、最初は弁23のみを開いてしばらくして弁24も開き、流路19→流路20→流路19、20の順に使用してもよい。そして、その後のガスの排気の進捗に応じて、上記と同じように、次に配管系の大きな流路21へ替えていく。すなわち、弁23、24を閉じて、弁25、26を順に開き、流路21、22へと順次ガス流路を換える。なお、複数のバルブを開いて、ガスが複数の流路を通過できるようにしてもよい。
【0041】
また、他の変形例として、全て同じ配管径を有する流路19、20、21、22において、まず、いずれかの弁、例えば、弁23を開き、その他の弁24、25、26を閉じて、ガスを排気させ、その後、ガスの排気の進捗に応じて徐々にガスの流路の数を、1本から2本、3本、4本へと替えていく。すなわち、既に開いている弁23を閉じることなく、他の弁24、25、26を開いて、ガスの流路を増加させていく。さらに、例えば、いずれか2本の流路が同じ配管径を有しているものであり、他の2本の流路も同じ配管径を有する流路を用いた場合や、他の2本の流路がそれぞれ異なる配管径を有する流路を用いた場合も、ガスの排気の進捗に応じて、上記と同様に、ガスの流路を換えることができる。
【0042】
さらに、反応器6出口から前記除害装置8入口までにおいては、配管及び構成部材、特に、配管及び構成部材を構成している金属部材が、加熱・保温手段を有しているもの(図示せず)であり、外管及び構成部材の内部温度がフッ化水素の沸点以上、すなわち、約19度以上に維持されている。なお、加熱手段として、例えば、ヒーター等を用いてもよい。また、保温手段として、例えば、断熱材を用いてもよい。
【0043】
次に、表面処理装置100の作動について説明する。希釈ガス供給装置1から供給された希釈ガスは、圧力調節用バルブ12が開かれていると、圧力調節用バルブ12を通過して圧力緩衝用タンク13へと導かれる。そして、一部の希釈ガスが、圧力緩衝用タンク13に貯留され、その他の希釈ガスは、圧力計10を介して、マスフローコントローラー3aへと導かれる。マスフローコントローラー3aでは、質量流量が制御され、流量の調整された希釈ガスが、圧力計11を介して、加熱器9へと導かれる。
【0044】
ここで、圧力調節用バルブ12が開かれているときとは、マスフローコントローラー3aの上流側の圧力計10と下流側の圧力計11との圧力値の差が低い場合、すなわち、マスフローコントローラー3aの駆動差圧が生じていない場合である。一方、圧力調節用バルブ12が閉じられているときは、希釈ガス供給装置1から供給される希釈ガスが、圧力調節用バルブ12に遮られ、圧力緩衝用タンク13へ導かれることがない。この圧力調節用バルブ12が閉められているときとは、マスフローコントローラー3aの上流側の圧力計10と下流側の圧力計11との圧力値の差が高い場合、すなわち、マスフローコントローラー3aの駆動差圧が生じている場合である。この場合、圧力緩衝用タンク13に貯留されている希釈ガスが、マスフローコントローラー3aへ導かれていく。
【0045】
一方、フッ素ガス供給装置2からは、フッ素ガスが、希釈ガスを駆動源として、マスフローコントローラー3bを通過して、エジェクター4によって引き込まれる。なお、フッ素ガスも希釈ガスと同様に、マスフローコントローラー3bで質量流量が制御され、流量の調整された希釈ガスが、エジェクター4によって引き込まれる。そして、これら希釈ガス及びフッ素ガスは混合器5へ導かれ混合器5において混合され、希釈ガスとフッ素ガスとの混合ガスが生成される。
【0046】
その後、混合ガスは、第2連通管17へと導かれる。ここで、初めは希釈ガスの流量が安定するまで、ガス導入弁18が閉じられてガス放出弁16が開かれており、希釈ガス及び/又はフッ素ガスは第1連通管14へ導かれる。第1連通管14へと導かれた希釈ガス及び/又はフッ素ガスは、背圧弁15によって圧力が調整されて、その後、ガス放出弁16を通過して排気装置7へと導かれる。
【0047】
そして、希釈ガスの流量が安定してエジェクター4に十分な真空度が得られると、瞬時に、ガス放出弁16が閉じられガス導入弁18が開かれて、希釈ガス及びフッ素ガスは、第1連通管14から流路を変えて、第2連通管17を通過して反応器6へ導かれる。
【0048】
反応器6内には、加熱室32であらかじめ加熱された被処理物30(図2における点線部位参照)が、可動部材31によって搬送されて配置されている。そして、混合ガス供給口27から供給された混合ガスは、反応器6において板状部材29に衝突して被処理物30へ接触し表面処理や表面改質が行われる。その後、所定の処理時間が経過すると、反応器6内のガスは、排気装置7により混合ガス排出口28から排出される。
【0049】
混合ガス排出口28から排出されたガスは、流路19、20、21、22のいずれか1以上の流路を通過して、排気装置7へと導かれる。ここで、混合ガス排出口28から排出されたガスの一例について説明すると、例えば、最初は、弁23が開かれ弁24、25、26を閉じられている状態にして、ガスが流路19のみを利用して排気装置7へ導かれるようにする。そして、ガスの排気の進捗に応じて、徐々に、開く弁を変えたり、開く弁の数を増やしたりしていき、ガスの通過する流路を小さな配管径を有する流路から大きな配管径を有する流路へ換えたり、流路の数を増やしたりしていく。このようにして、弁23、24、25、26及び流路19、20、21、22を通過したガスは、排気装置7を通過して、除害装置8へと導かれる。
【0050】
なお、反応器6出口から前記除害装置8入口までの配管及び構成部材は、加熱・保温手段を有しているものであるため、混合ガス排出口28から排出されたガスに含まれたフッ素ガスやフッ化水素ガスは、液化することなく除害装置8へと導かれる。
【0051】
除害装置8へと導かれたガスは、除害塔8a、8b、8cにおいて、フッ素ガス及びフッ化水素ガスが除害される。ここで、除害装置8へと導かれたガスの一例について説明する。図示しないバルブ及び配管で直列に接続されている除害塔8b及び除害塔8cのうち、除害塔8bへと導かれたガスは、除害塔8bに充填されているソーダライムによりフッ素ガス及びフッ化水素ガスの成分が吸着除去されて、表面処理装置100外へ排出される。なお、除害塔8bの出口から排出されるガス中の酸性分を検知して、破過の判定を行い、除害塔8bの破過が確認されると、除害装置に設けられている配管及び弁(図示せず)を利用して、ガスは除害塔8cへと導かれて、除害塔8cに充填されているソーダライムによりフッ素ガス及びフッ化水素ガスの成分が吸着除去されて、表面処理装置100外へ排出される。なお、フッ素ガス及びフッ化水素ガスが除害されたガスを、再び表面処理に用いてもよい。
【0052】
本実施形態によると、希釈ガスとフッ素ガスとを混合する前に、加熱器9であらかじめ希釈ガスを加熱し、加熱した希釈ガスと、フッ素ガスとを混合することができる。これにより、フッ素ガスを希釈ガスによって間接的に加熱することができるので、フッ素ガスが高温となりにくくなり、フッ素ガスによる表面処理装置100の腐食等の損傷が生じることを抑止できる。また、加熱された混合ガスを反応器6へ供給することができるので、被処理物30の処理ムラが生じることを抑止できる。
【0053】
また、エジェクター4により、希釈ガスを駆動源として、フッ素ガス供給装置2からフッ素ガスを引き込むことができる。これにより、フッ素ガスの供給圧力を低減することができるので、フッ素ガスの高圧貯蔵を抑止でき、より安全にフッ素ガスを貯蔵することができる。また、希釈ガスよりも供給量の少ないフッ素ガスをさらに正確な量で供給できる。
【0054】
また、圧力調節用バルブ12によってマスフローコントローラー3aに一定の駆動差圧をかけることができるので、希釈ガス供給装置1及びマスフローコントローラー3aの下流側に設けられている配管や、反応器6内圧等の圧力による影響に関係なく、一定の流量で希釈ガスを供給することができる。また、圧力緩衝用タンク13によって、圧力調節用バルブ12及びマスフローコントローラー3aに設けられているバルブ(図示せず)との相互影響を緩和して流量精度をさらに向上させることができる。さらに、マスフローコントローラー3aを利用することにより、温度・供給圧力の影響を受けず、正確かつ安定なガス流量制御が可能なものとなる。
【0055】
また、マスフローコントローラー3bにより、フッ素ガスの質量流量を電気信号にて正確に制御できるため、温度・供給圧力の影響を受けず、正確かつ安定なフッ素ガスの流量制御が可能なものとなる。
【0056】
また、エジェクター4に十分な真空を発生させるための駆動差圧が生じて希釈ガスの流量が安定するまで、ガス導入弁18を閉じるとともにガス放出弁16を開いて、第1連通管14を通じて希釈ガス及び/又はフッ素ガスを排気装置7及び除害装置8等へ放出することができる。そして、希釈ガスの流量が安定した後に、ガス放出弁16を閉じるとともにガス導入弁18を開いて、第2連通管17を通じて混合ガスを反応器6へ導くことができる。これにより、混合ガスを反応器6へ供給する際、供給開始直後から流量、濃度が一定に調整された混合ガスを供給することができる。
【0057】
また、被処理物30を、混合ガスに接触させる前に予め加熱室32で加熱させることができるので、処理むらや不適処理を抑止できる。また、被処理物30を予め加熱しておくことによって、反応器6内における被処理物30の加熱時間を短縮でき、コストを抑えることができるとともに、処理効率をさらに向上させることができる。
【0058】
また、フッ素ガスに耐食性を有する金属材を用いた可動部材31を用いているので、被処理物30を反応器6への搬送や搬出が容易にでき、なおかつ、混合ガスに含まれるフッ素ガスにより、可動部材31から不純物が発生する等の影響が生じることを抑止できる。
【0059】
また、被処理物30と反応器6に供給された混合ガスとの間に板状部材29が備えられているので、反応器6内の混合ガス導入部の近辺において、混合ガスが被処理物30へ直接接触しにくくなり、被処理物30の処理むらが生じることを抑止でき、被処理物30への処理を均一に行うことができる。
【0060】
また、各々の弁23、24、25、26を適宜開閉することにより、配管径の異なる流路19、20、21、22を適宜換えて利用したり、使用する流路19、20、21、22の数を変えたりして、所望の流量のガスを排気装置7及び除害装置8へ導くことができる。これにより、反応器6からフッ素ガスを含んだ大量のガスが排出された場合においても、流路19、20、21、22及び弁23、24、25、26を利用して、大量のガスが一時的に排気装置7及び除害装置8へと導かれることを抑止でき、大量のフッ素ガスにより除害剤の発熱量が増大して、反応器6の下流に設けられている配管、部材、機器、除害剤等に負荷をかけて、部分的な腐食や早い消耗による劣化を抑止することができる。また、排気装置7を備えているので、反応器6からガスを排気させやすくなる。さらに、反応器6から排出されたガスに含まれているフッ素ガス及びフッ化水素ガスを、除害装置8において除害できるとともに、所望の流量へ調整、制御されたガスを除害装置8へ導入することができるため、除害装置8に充填されている除害剤の消耗、交換をより効率よく正確に実施でき、表面処理装置100の部品、部材等の交換のためのコストをさらに抑えることができる。以上より、表面処理後のガスの排気による装置の損傷を抑止することができる。
【0061】
また、表面処理、表面改質によって生じたフッ化水素ガスがフッ素ガスに混入すると、配管や弁等を構成する金属部材の腐食や劣化が生じ、このフッ化水素ガスが液化すると、腐食や劣化がさらに促進される。しかしながら、反応器6出口から除害装置8入口までの配管及び構成部材の内部温度がフッ化水素の沸点以上に維持されているので、反応器6から排出されるガスに含まれているフッ化水素ガスの液化を抑止でき、配管及び構成部材等を構成している金属部材等の腐食や劣化をさらに抑止できるとともに、フッ素ガス及びフッ化水素ガスを気体の状態で除害装置8へと導くことができる。
【0062】
また、除害装置8において、2塔の除害塔8b、8cが直列に接続され、他の1塔の除害塔8aが独立して接続されているので、2塔を連続して使用している間に、他の1塔の除害剤の交換やメンテナンス等を行うことができ、次の使用に備えることができる。また、2塔の除害塔8b、8cを連続して使用することができるので、表面処理装置100の運転を継続しながら、除害塔8a、8b、8cを安全な状態で維持できる。
【0063】
次に、本実施形態に係る反応器の変形例について説明する。図3は、図2の反応器の変形例を示す図である。
【0064】
図3に示したように反応器36内に、板状部材42がさらに設けられており、板状部材42によって反応室36a及び加熱室36bの2室が形成されている。なお、混合ガス供給口37と、混合ガス排出口38と、板状部材39と、被処理物40と、可動部材41とは、上記実施形態に係る混合ガス供給口27と、混合ガス排出口28と、板状部材29と、被処理物30と、可動部材31と同様の構成からなり、上記実施形態において符号27〜31がふられている各部と、本変形例において符号37〜41がふられている各部とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0065】
上記構成の反応器36を表面処理装置100における反応器6及び加熱室32の代りに用いれば、上記表面処理装置100と同様の効果を得ることができるとともに、反応室36aと加熱室36bとが隣接して設けられているので、被処理物を加熱室36bで加熱後、より早く反応室36aへ移動させることができる。ここで、板状部材42を取り外すことのできるものであれば、さらに容易に反応室36aへ移動させることができる。なお、板状部材42は、取り外すことのできるものでも、取り外すことのできないものでもよい。また、例えば、反応室36aと加熱室36bとの間を連通している開閉可能な開口部が設けられているものでもよい。このような構成であれば、該開口部を利用して被処理物40を加熱室36bから反応室36aへと移動させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態の表面処理装置について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態において、エジェクターと混合器との間の連通管の途中又は混合器の下流側の配管に保温材が設けられているものでもよい。この保温材により、外気温の影響が受けにくくなり、混合ガスを高温のまま反応器へ供給することができる。これにより、処理ムラなどが生じることを抑止できるとともに、処理効率をさらに向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態において、反応器を2つ以上備えているものでもよい。この場合、表面処理装置において、少なくとも1つの反応器を反応器として用いるものとし、他方の反応器を加熱室として用いてもよい。
【0068】
また、本実施形態において、表面処理装置を構成する機器を、夫々遮断可能な弁がさらに設けられているものでもよい。この弁は、一部又は全部に自動弁や手動弁等を用いてもよい。
【0069】
また、本実施形態において、混合ガスと被処理物との間に設けられている板上部材は取り外し可能なものを用いてもよく、反応器又は可動部材に固設されているものを用いてもよい。
【0070】
また、本実施形態において、反応器から排出されるガスがフッ素ガス供給装置及び希釈ガス供給装置へ導かれる配管がさらに設けられているものでもよい。これにより、反応器から排出されたガスに含まれているフッ素ガス及び希釈ガスを再び利用することができるとともに、除害装置において処理するフッ素ガスの量を減少させることができる。
【0071】
また、本実施形態において、除害装置は、除害塔を3塔有するものであるが、3塔に限られず、4塔以上有しているものを用いてもよい。そして、直列的に接続されている除害塔は2塔に限られず、3塔以上でもよい。さらに、独立して接続されている除害塔は1塔に限られず、2塔以上でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る表面処理装置の主要部の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表面処理装置の反応器の概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表面処理装置の他の変形例に係る反応器の概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 希釈ガス供給装置
2 フッ素ガス供給装置
3a マスフローコントローラー(第1流量調整手段)
3b マスフローコントローラー(第2流量調整手段)
4 エジェクター
5 混合器
6、36 反応器
7 排気装置
8 除害装置
8a、8b、8c 除害塔
9 加熱器(加熱手段)
10、11 圧力計
12 圧力調節用バルブ
13 圧力緩衝用タンク
14 第1連通管
15 背圧弁
16 ガス放出弁
17 第2連通管
18 ガス導入弁
19、20、21、22 流路
23、24、25、26 弁
27、37 混合ガス供給口
28、38 混合ガス排出口
29、39、42 板状部材
30、40 被処理物
31、41 可動部材
32、36b 加熱室
36a 反応室
100 表面処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈ガスを供給する希釈ガス供給装置と、
フッ素ガスを供給するフッ素ガス供給装置と、
前記希釈ガスと、前記フッ素ガスとを混合し、混合ガスを発生させる混合器と、
前記混合ガスを被処理物に接触させる反応器とを備えた表面処理装置であって、
前記反応器内から排気ガスを排出する排気装置と、
前記反応器と前記排気装置との間に設けられており、前記排気ガスを流通させる複数の流路と、
前記複数の流路の各々に設けられている複数の弁とをさらに備えていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記排気装置と接続されている除害装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記反応器出口から前記除害装置入口までの構成部材が、加熱・保温手段を有しているものであり、
前記構成部材の内部温度がフッ化水素の沸点以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記除害装置が、複数の除害塔を有するものであり、
前記複数の除害塔のうち、少なくとも1塔が独立して接続されていると共に、前記独立して接続されている除害塔を除く少なくとも2塔が直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−213947(P2009−213947A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56952(P2008−56952)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【出願人】(502386835)高松帝酸株式会社 (4)
【Fターム(参考)】