説明

表面実装用部品

【課題】エラストマー材料からなる基体の表面に、密着性の高い金属パターンが比較的簡単な工程で精度よく形成された表面実装用部品を提供する。
【解決手段】表面実装用部品1は、基体3と、基体3の表面に形成されたパターン5とを備えている。基体3は、導電性を有するエラストマー材料によって形成されたもので、導電性を有するエラストマー材料としては、シリコーン系エラストマーをベースにして導電材として機能する銀フィラーを配合してなる材料が利用されている。パターン5は、銅によって形成されたもので、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン5に相当する形状の印刷を基体3の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板へ実装可能な表面実装用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基体の表面に金属パターンを設ける技術として、基体の表面にインクジェット方式でパターンを描いておいて、そのパターンに対して金属めっきを施す技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
下記特許文献1に記載の技術の場合、インクジェット方式により、モノマー重合能を有する触媒を含むパターンを基板上に形成し、その触媒に導電性高分子を生成するモノマー成分を接触させて導電性高分子のパターンを形成し、さらに導電性高分子のパターンに対して金属めっきを施すことにより、所期の金属パターンを形成している。
【0004】
また、下記特許文献2に記載の技術の場合、インクジェット方式により、金属超微粒子を含有した液体で基板上にパターンを形成し、その基板を焼成して下地導電パターンを形成し、さらに下地導電パターンに対して無電解めっきを施すことにより、所期の金属パターンを形成している。
【特許文献1】特開2004−31392号公報
【特許文献2】特開2005−142420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1,2に記載の技術は、比較的硬質な材料からなる基板に対してパターンを形成する技術であったため、エラストマー材料からなる基体の表面にパターンを形成するための技術としては、必ずしも好適なものではなかった。
【0006】
特に、上記特許文献1に記載の技術の場合、触媒層からなるパターンをインクジェットにて形成し、そこへ導電性高分子を生成させ、更に電気メッキにより導電性パターンを形成するので、これらの工程に手間がかかり、また、均一な導電性高分子のパターンを形成できないことがあり、その場合、最終的な金属のパターンも厚さや細部の形状が不均一なものとなりやすく、パターンの精度が悪くなることがあった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の技術の場合、金属超微粒子を液体中に均一に分散させることが容易ではないため、インクジェット方式で形成したパターン内における金属超微粒子の分布密度を均一化することも難しい、という問題があった。また、焼成時の熱でエラストマー材料からなる基体がダメージを受けやすい、という問題もあった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、エラストマー材料からなる基体の表面に、密着性の高い金属パターンが比較的簡単な工程で精度よく形成された表面実装用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の表面実装用部品は、エラストマー材料によって形成された基体の表面に、金属材料によって形成されたパターンを設けてなる表面実装用部品であって、前記パターンが、無電解めっき法で前記金属材料の析出を促すために用いられる触媒成分を含有する触媒成分含有液を用いて、前記基体の表面に印刷を施すとともに、当該印刷が施された箇所に前記金属材料を含有する金属成分含有液を接触させて、前記金属材料を析出させることによって形成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された表面実装用部品によれば、基体の表面に金属材料のパターンが形成されているので、このパターンの一部を半田付け用の領域として利用して、表面実装用部品をプリント配線板上に実装することができる。基体の表面のパターンは、電気回路の一部を構成するために利用されていてもよいし、単に表面実装用部品をプリント配線板上に固定するために利用されているだけでもよい。
【0011】
また、この表面実装用部品において、基体はエラストマー材料によって形成されているので、この表面実装用部品をプリント配線板上に実装した後、他の部材と接触させて使用する際に、他の部材との接触圧を受けて基体が変形し、他の部材との接触を良好に維持することができる。したがって、例えば、他の部材との接触に伴って他の部材と電気的に接続されるコンタクトのような部品として好適なものとなる。
【0012】
さらに、この表面実装用部品において、パターンは、無電解めっき法で金属材料の析出を促すために用いられる触媒成分を含有する触媒成分含有液を用いて、基体の表面に印刷を施すとともに、当該印刷が施された箇所に金属材料を含有する金属成分含有液を接触させて、金属材料を析出させることによって形成されている。したがって、基体が変形しやすいエラストマー材料で形成されているにもかかわらず、基体の表面に精度よく密着性の高い金属パターンを形成することができる。
【0013】
また、基体上に触媒成分含有液を塗布し、その表面を化学的に活性化させたものを電解液につけることで塗布面に金属を発生させるだけの単純な工程を利用しているので、より多くの工程を必要とする製法に比べ、金属パターンを簡単に得ることができる。
【0014】
しかも、高温、長時間の熱処理を必要としないため、生産時間が短く現実性のある量産性に富み、また、熱処理に耐えうる基体が限定されてしまう、といった問題を招くこともない。
【0015】
ところで、本発明の表面実装用部品において、触媒成分含有液を印刷する方法については、様々な方法を考えることができるが、一例を挙げれば、前記触媒成分含有液を、インクジェット方式にて前記基体の表面に印刷すると好ましい。このような構成を採用すれば、専用の版などを用いることなく比較的簡単に所期のパターンを印刷することができるので好ましい。
【0016】
また、本発明の表面実装用部品において、触媒成分含有液を印刷した後、この印刷が施された箇所に金属成分含有液を接触させる方法についても、様々な方法を考えることができるが、一例を挙げれば、印刷が施された基体を金属成分含有液槽内に浸漬すると好ましい。
【0017】
あるいは、別の一例を挙げれば、前記金属成分含有液をインクジェット方式にて前記印刷が施された箇所に重ねて印刷することにより、前記印刷が施された箇所に前記金属成分含有液を接触させてあると好ましい。このような構成を採用すれば、金属材料を析出させる必要のない箇所に金属成分含有液が付着することはないので、その分だけ金属成分含有液の消費量を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の表面実装用部品において、パターンを形成するために用いられる金属材料としては、Cu、Sn、Auなどが好ましい。これらの金属材料を用いれば、半田付け用の領域あるいは電気回路の一部として好適なパターンを形成することができる。
【0019】
また、本発明の表面実装用部品において、基体を形成するために用いられるエラストマー材料としては、シリコーン系エラストマー、またはエポキシ系エラストマーがベース材として配合されているものが好ましい。このようなエラストマー材料であれば、基体の耐熱性を高くすることができるので、プリント配線板上への実装時に表面実装用部品が高温環境下に置かれても、基体が備えるエラストマーとしての特性を良好に維持することができる。
【0020】
さらに、本発明の表面実装用部品において、基体を形成するために用いられるエラストマー材料中には、表面実装用部品の使用目的等に応じて、様々な機能性フィラーを配合することができる。
【0021】
例えば、本発明の表面実装用部品において、前記エラストマー材料は、導電材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、基体に導電性を付与することができる。導電材として機能するフィラーとしては、例えば、銀、アルミニウム、銅、カーボンなどのフィラーを挙げることができる。
【0022】
また、本発明の表面実装用部品において、前記エラストマー材料は、磁性材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、基体に磁性を付与することができる。磁性材として機能するフィラーとしては、例えば、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al合金、アモルファス合金などのフィラーを挙げることができる。
【0023】
また、本発明の表面実装用部品において、前記エラストマー材料は、誘電材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、基体の誘電率を向上させることができる。誘電材として機能するフィラーとしては、例えば、チタン酸バリウム、炭化ケイ素などのフィラーを挙げることができる。
【0024】
また、本発明の表面実装用部品において、前記エラストマー材料は、熱伝導材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、基体の熱伝導率を向上させることができる。熱伝導材として機能するフィラーとしては、例えば、アルミナ、マグネシアなどのフィラーを挙げることができる。
【0025】
さらに、本発明の表面実装用部品において、前記触媒成分は、パラジウム化合物であると好ましい。このような構成を採用すれば、パラジウムの触媒作用により、金属材料を効率よく析出させることができる。
【0026】
加えて、本発明の表面実装用部品において、前記触媒成分含有液は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化樹脂成分を含有していてもよく、この場合、前記パターンは、前記触媒成分含有液を用いて前記基体の表面に印刷を施した後、当該印刷が施された箇所に紫外線を照射して液状成分を硬化させてから、当該印刷が施された箇所に前記金属材料を含有する金属成分含有液を接触させることによって形成されているとよい。
【0027】
このように構成すれば、触媒成分含有液による印刷を、より確実に硬化させることができるので、精度のよいパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について具体的な例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図である。
【0029】
この表面実装用部品1は、基体3と、基体3の表面に形成されたパターン5とを備えている。
基体3は、導電性を有するエラストマー材料によって形成されたもので、導電性を有するエラストマー材料としては、シリコーン系エラストマーをベースにして導電材として機能する銀フィラーを配合してなる材料が利用されている。
【0030】
パターン5は、銅によって形成されたもので、より詳しくは後述するが、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン5に相当する形状の印刷を基体3の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0031】
以上のように構成された表面実装用部品1は、例えば、パターン5をプリント配線板7の上に形成された金属部9に対して半田付けすることにより、プリント配線板7上に実装される。金属部9は、プリント配線板7上においてグランド電位を持つ部分である。そして、基体3の一面3aを図示しない電子機器の筐体に接触させて、その筐体とプリント配線板7との間に表面実装用部品1を挟み込むようにして、プリント配線板7を筐体内で固定することにより、金属部9と筐体とを電気的に接続することができる。
【0032】
次に、基体3の表面にパターン5を形成する手順について説明する。
まず、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液として、下記表1に示す配合比で各物質が混合された溶液を用意した。
【0033】
【表1】

上記表1中、酢酸パラジウムは、後の工程で金属を析出させるための触媒として機能する成分である。UV光重合開始剤A,B、UV硬化型反応性希釈モノマー、六官能性モノマー、反応性四官能性ポリエステルアクリレートオリゴマーは、紫外線硬化樹脂成分である。UV光重合開始剤Aとしては、製品名:Irgacure1700(イギリス・Ciba Specialty Chemicals社製)を使用し、UV光重合開始剤Bとしては、製品名:Irgacure819(イギリス・Ciba Specialty Chemicals社製)を使用した。また、UV硬化型反応性希釈モノマーとしては、ジプロピレングリコールジアクリレート(ベルギー・UCB社製)を使用した。また、六官能性モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ベルギー・UCB社製)を使用した。また、反応性四官能性ポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、製品名:Actilane505(イギリス・Akzo Nobel UV Resins社製)を使用した。ジアセトンアルコールは、他の固形分とともに基体に付着した後、他の固形分を残して蒸発する揮発性の成分である。ポリビニルピロリドンとしては、製品名:PVP K30(イギリス・ISP社製)を使用した。
【0034】
以上のような触媒成分含有液を、インクジェット方式のプリントヘッド(製品名:XJ500/180、イギリス・Xarr社)にて180×250dpiの記録密度で、基体3の表面に印刷して試料を得た。その後、試料の印刷面に対して紫外線を照射して(Fusion 500 Watt H-bulb使用)、触媒成分含有液中の固形分を硬化させた。
【0035】
続いて、脱イオン水中にジメチルアミンボラン1.6%溶液を含む浴中に試料を浸漬し、40±2℃で2分間処理した後、脱イオン水を洗い流して試料を乾燥させた。この処理により、試料表面の酢酸パラジウムはパラジウムに還元され、触媒として活性化されることになる。
【0036】
続いて、銅を含有する金属成分含有液に試料を浸漬した。銅を含有する金属成分含有液としては、75%脱イオン水と25%の銅めっき用溶液との混合物を用いた。銅めっき用溶液は、市販の無電解銅めっき用溶液3種(製品名:Enplate 872A、Enplate 872B、Enplate 872C、いずれもイギリス・Enthone-OMI社製)を3:3:1の比で配合したものである。なお、Enplate 872Aには、めっき用の金属源となる硫酸銅が含まれている。また、Enplate 872Bには、シアン化物錯化剤およびホルムアルデヒドが含まれている。また、Enplate 872Cには、水酸化ナトリウムが含まれている。
【0037】
金属成分含有液に試料を浸漬する際には、金属成分含有液を攪拌するとともに、金属成分含有液の温度を45±2℃に保ち、2分間にわたって試料を浸漬した。その結果、基体3の表面に銅のパターン5が形成された。
【0038】
以上説明した表面実装用部品1によれば、基体3が変形しやすいエラストマー材料で形成されているにもかかわらず、基体3の表面に精度よく密着性の高い金属のパターン5を形成することができる。
【0039】
[第2実施形態]
図2は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図である。
この表面実装用部品11は、基体13と、基体13の表面に形成されたパターン15とを備えている。
【0040】
基体13は、導電性を有するエラストマー材料によって形成されたもので、導電性を有するエラストマー材料としては、シリコーン系エラストマーをベースにして導電材として機能する銀フィラーを配合してなる材料が利用されている。
【0041】
パターン15は、銅によって形成されたもので、上記第1実施形態同様、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン15に相当する形状の印刷を基体13の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0042】
以上のように構成された表面実装用部品11も、パターン15をプリント配線板の上に形成された金属部に対して半田付けすることにより、プリント配線板上に実装される。
また、表面実装用部品11は、パターン15が設けられた4箇所においてプリント配線板に固定できるので、同等なパターンを2箇所に設けたもの以上に、部品の回転を防止する効果が高くなる。すなわち、リフローソルダリング方式での実装の際、半田による製品の固定箇所が2箇所しかない場合には、半田面の多少の濡れ性の違いにより、製品設置位置のずれや回転など発生することがある。この点、表面実装用部品11においては、パターン15を4箇所に分けた構造になっており、その分だけプリント配線板への固定箇所を増やすことができるので、部品の回転防止を図ることができる。この他、パターン15の形状を工夫しても、部品回転防止を図ることができる。こうしたパターン15の形状や数は、印刷により任意の形状や数とすることができる。
【0043】
[第3実施形態]
図3(a)は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図、同図(b)は表面実装用部品の使用状態を示す説明図である。
【0044】
この表面実装用部品21は、基体23と、基体23の表面に形成されたパターン25とを備えている。
基体23は、導電性を有するエラストマー材料によって形成されたもので、導電性を有するエラストマー材料としては、シリコーン系エラストマーをベースにして導電材として機能する銀フィラーを配合してなる材料が利用されている。
【0045】
パターン25は、銅によって形成されたもので、上記第1実施形態同様、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン25に相当する形状の印刷を基体23の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0046】
以上のように構成された表面実装用部品21も、パターン25をプリント配線板27の上に形成された金属部29に対して半田付けすることにより、プリント配線板27上に実装される。そして、基体3を電子機器の筐体30に接触させて、その筐体30とプリント配線板27との間に表面実装用部品21を挟み込むようにして、プリント配線板27を筐体30内で固定することにより、金属部29と筐体30とを電気的に接続することができる。
【0047】
また、第3実施形態においては、基体23が中空構造とされているので、第1実施形態のものよりも圧縮変形させやすく、筐体30とプリント配線板27との間に表面実装用部品21を挟み込んだ際に、筐体30、プリント配線板27、および表面実装用部品21の各部に過大な応力が作用しないようにすることができる。
【0048】
[第4実施形態]
図4は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図である。
この表面実装用部品31は、基体33と、基体33の表面に形成されたパターン35a,35bとを備えている。
【0049】
基体33は、シリコーン系エラストマーをベースにして磁性材として機能するFe−Si−Cr合金のフィラーを配合してなる材料が利用されている。
パターン35a,35bは、銅によって形成されたもので、上記第1実施形態同様、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン35a,35bに相当する形状の印刷を基体33の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0050】
以上のように構成された表面実装用部品31は、パターン35aを半田付け部として利用して、プリント配線板上に半田付けすることができる。また、パターン35bは、電気回路として利用される。このような表面実装用部品31は、インダクターとして利用することが可能である。
【0051】
[第5実施形態]
図5(a)は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図、同図(b)は、同表面実装用部品の階層構造を示す分解図である。
【0052】
この表面実装用部品41は、基体43と、基体43の表面に形成されたパターン45a,45b,45cと、パターン45bを被覆する絶縁膜46を備えている。
基体43は、シリコーン系エラストマーをベースにして誘電材として機能する炭化ケイ素のフィラーを配合してなる材料が利用されている。
【0053】
パターン45a,45b,45cは、銅によって形成されたもので、上記第1実施形態同様、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン45a,45b,45cに相当する形状の印刷を基体43の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0054】
絶縁膜46は、絶縁性物質を印刷することによって形成されたもので、この絶縁膜46により、パターン45bとプリント配線板が電気的に接触しないようになっている。
以上のように構成された表面実装用部品41は、パターン45aがプリント配線板上に半田付けされ、これにより、パターン45bが電気回路として利用される。
【0055】
また、パターン45cが、プリント配線板上のグランド電位を持つ箇所に半田付けされる。これにより、パターン45bに流れる高周波ノイズが、誘電体として機能する基体43を通してグランドに落とされるようになる。
【0056】
[第6実施形態]
図6(a)は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図、同図(b)は、同表面実装用部品の使用状態を示す説明図である。
【0057】
この表面実装用部品51は、基体53と、基体53の表面に形成されたパターン55とを備えている。
基体53は、エポキシ系エラストマーをベースにして熱伝導材として機能するアルミナのフィラーを配合してなる材料が利用されている。
【0058】
パターン55は、銅によって形成されたもので、上記第1実施形態同様、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン55に相当する形状の印刷を基体53の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0059】
以上のように構成された表面実装用部品51は、パターン55がプリント配線板57上の金属部59に対して半田付けされることにより、プリント配線板57上に実装される。プリント配線板57上への実装は、自動実装機により簡単に実施できる。
【0060】
そして、表面実装用部品51をプリント配線板57上へ実装した後に、板金60とIC62との間に潰して挟み込むことにより、IC62の熱対策を行うことができる。
[第7実施形態]
図7は、本発明の一実施形態として例示する表面実装用部品の斜視図である。
【0061】
この表面実装用部品71は、基体73と、基体73の表面に形成されたパターン75とを備えている。
基体73は、エポキシ系エラストマーをベースにして導電材として機能する銀フィラーを配合してなる材料が利用されている。
【0062】
パターン75は、銅によって形成されたもので、上記第1実施形態同様、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液を用いて、パターン75に相当する形状の印刷を基体73の表面に施すとともに、当該印刷が施された箇所に銅を含有する金属成分含有液を接触させて、無電解めっき法にて銅を析出させることによって形成されている。
【0063】
以上のように構成された表面実装用部品71は、一方の側にあるパターン75aをプリント配線板上のグランド電位を持つ箇所に対して半田付けすることにより、プリント配線板上に実装される。そして、他方の側にあるパターン75bを図示しない電子機器の筐体に接触させて、その筐体とプリント配線板との間に表面実装用部品71を挟み込むようにして、プリント配線板を筐体内で固定することにより、プリント配線板上のグランド電位を持つ箇所と筐体とを電気的に接続することができる。
【0064】
この第7実施形態のように、パターン75は、基体73の表裏両面に形成することが可能である。
[第8実施形態]
さて、上記第1実施形態〜第7実施形態では、主に表面実装用部品の形態や材質について様々な具体例を示したが、以下に説明する第8実施形態以降においては、金属のパターンを形成する手順について様々な具体例を説明する。なお、第8実施形態以降において説明するパターンの形成手順は、上記第1実施形態〜第7実施形態において例示した各表面実装用部品を製造する際に利用可能である。
【0065】
第1実施形態において説明したパターン形成手順は、触媒成分含有液に紫外線硬化樹脂成分を配合し、紫外線照射によって触媒成分のパターンを固化する方式を採用していたが、第8実施形態として説明するパターン形成手順は、触媒成分含有液を印刷後、赤外線ヒーターによって乾燥させるか自然乾燥させる方式を採用したものである。また、第1実施形態では、触媒成分含有液を印刷後、金属成分含有液に浸漬する方式を採用していたが、第8実施形態においては、金属成分含有液に相当する成分を3つの溶液に分けて、これらを重ねて印刷することにより、基体上で金属成分含有液を生成する方式としてある。以下、詳しく説明する。
【0066】
まず、第8実施形態において、パラジウム化合物を含有する触媒成分含有液としては、下記表2に示す配合比で各物質が混合された溶液を用意した。
【0067】
【表2】

上記表2中、酢酸パラジウムは、後の工程で金属を析出させるための触媒として機能する成分である。ジアセトンアルコールとメトキシプロパノールは、他の固形分とともに基体に付着した後、他の固形分を残して蒸発する揮発性の成分である。ポリビニルブチラールは、触媒成分の基体への密着性を高めるために配合されているもので、分子量15000〜25000程度のものが好適である。水酸化カリウムは、後述する還元剤を活性化させる塩基として機能する成分である。
【0068】
また、金属成分含有液に相当する成分を3つの溶液に分けたものとして、下記表3〜表5に示す溶液A〜Cを用意した。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

以上のような用意を行った後、まず、上記表2に示した触媒成分含有液を、インクジェット方式のプリントヘッド(製品名:XJ128-200、イギリス・Xarr社)に注入し、基体の表面に印刷して試料を得た。プリントヘッドからは、80pL(ピコリットル)の液滴を噴出、噴出周波数は1〜2kHz、噴射距離は1〜2mmとした。
【0072】
触媒成分含有液で基体に対する印刷を行った後、基体の近傍に配置された赤外線ヒーターを用いて、印刷された触媒成分含有液を乾燥させた。なお、赤外線ヒーターを用いた場合、30秒程度で乾燥させることができるが、それ以上の時間を要しても構わない場合は、赤外線ヒーターを用いることなく自然乾燥させてもよい。
【0073】
次に、上記表3〜表5に示した溶液A〜Cを使用して、印刷された触媒成分含有液に重ねて印刷を行った。溶液A〜Cは同量ずつ使用して印刷を行い、溶液A〜Cを重ねて印刷することにより、これらの溶液A〜Cが基体上で混合されて金属成分含有液が基体上で生成されるようにした。なお、溶液A〜Cを印刷する範囲は、印刷可能な範囲全体としてもよいし、触媒成分含有液による印刷に重なる範囲のみを対象にして選択的に印刷を行ってもよい。
【0074】
この後、5分程度放置することにより、基体上に銅を析出させて、銅のパターンを形成することができた。パターン形成後は、余分な溶液や乾燥済みの塩を基体から拭き取るか水洗いし、基体の表面に所期のパターンが形成された表面実装用部品を得ることができた。
【0075】
以上説明した手順でも、基体の表面に精度よく密着性の高い金属のパターンを形成することができる。
[第9実施形態]
次に、金属のパターンを形成する手順について、さらに別の実施形態を説明する。
【0076】
第9実施形態として説明するパターン形成手順は、金属成分含有液に相当する成分を2つの溶液に分けて、これらを重ねて印刷することにより、基体上で金属成分含有液を生成する方式としてあり、この点で第8実施形態とは相違する。
【0077】
より具体的には、第8実施形態において表3および表4に示した溶液A,Bに代えて、第9実施形態においては、下記表6に示した溶液ABを用意した。
【0078】
【表6】

そして、上記第8実施形態において溶液A,Bを印刷していた工程に代えて、上記溶液ABを印刷する工程を採用し、その他の工程はすべて上記第8実施形態と同じ工程として、基体の表面に所期のパターンが形成された表面実装用部品を得ることができた。このような手順でも、基体の表面に精度よく密着性の高い金属のパターンを形成することができる。
【0079】
[第10実施形態]
次に、金属のパターンを形成する手順について、さらに別の実施形態を説明する。
第10実施形態として説明するパターン形成手順は、金属成分含有液に相当する成分を複数の溶液に分けない方式としたものであり、この点で第8,9実施形態とは相違する。
【0080】
より具体的には、第10実施形態においては、金属成分含有液として下記表7に示した溶液を用意した。
【0081】
【表7】

上記表7中、無電解銅めっき用溶液A〜Cとしては、市販の無電解銅めっき用溶液3種(製品名:Enplate 872A、Enplate 872B、Enplate 872C、いずれもイギリス・Enthone-OMI社製)を使用した。エチレングリコールは、湿潤剤として配合されているものであり、表面張力を低下させる作用がある。また、t−ブタノールは、表面張力を低下させ濡れ性を向上させる作用がある。N−オクチル−2−ピロリドン(製品名:Surfadone LP-100)も湿潤剤である。
【0082】
そして、上記第8実施形態において溶液A〜Cを印刷していた工程に代えて、上記表7に示した溶液を印刷する工程を採用し、その他の工程はすべて上記第8実施形態と同じ工程として、基体の表面に所期のパターンが形成された表面実装用部品を得ることができた。このような手順でも、基体の表面に精度よく密着性の高い金属のパターンを形成することができる。
【0083】
[第11実施形態]
次に、金属のパターンを形成する手順について、さらに別の実施形態を説明する。
第11実施形態は、触媒成分含有液の別の例を示す実施形態である。
【0084】
より具体的には、第11実施形態においては、触媒成分含有液として下記表8に示した溶液を用意した。
【0085】
【表8】

上記表8中、ポリビニルピロリドンは、分子量60000〜70000程度のもの(製品名:K30、International Specialty Products社製)を使用した。このような触媒成分含有液を使用し、他は上記第8実施形態〜上記第10実施形態と同様の工程で処理を行っても、基体の表面に精度よく密着性の高い金属のパターンを形成することができる。
【0086】
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0087】
例えば、上記各実施形態では、基体の表面に触媒成分含有液で印刷を施すに当たって、特に基体表面に対する前処理を行う旨の説明を行わなかったが、触媒成分と基体との密着性を改善するため、あるいは、最終的に形成される金属パターンと基体との密着性を改善するために、基体表面に対する前処理を行っておいてもよい。このような前処理の具体例としては、例えば、コロナ放電処理、プライマー処理、シリカ皮膜形成処理などの表面改質処理を挙げることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、無電解めっきを施す際に利用する金属材料の一例として銅を挙げたが、無電解めっき法で用いられる金属材料であれば任意に利用することができる。中でも、表面実装用部品において金属パターンを設ける上で有益な金属としては、銅の他、Sn、Auなどを挙げることができる。
【0089】
さらに、上記実施形態では、触媒成分含有液をインクジェット方式で印刷することにより、パターンに相当する領域のみに触媒成分含有液を付着させていたが、印刷の方法は他の方法を採用してもよい。
【0090】
一例を挙げれば、触媒成分含有液が紫外線硬化樹脂成分を含有する場合、あらかじめ触媒成分含有液を基体の表面全体に付着させておいて、パターンに相当する領域のみに紫外線を照射して当該領域の触媒成分含有液を硬化させ、その後、未硬化の領域について触媒成分含有液を洗い流してもよい。このような手法でも、パターンに相当する領域のみに触媒成分含有液による印刷を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1実施形態において例示した表面実装用部品の斜視図。
【図2】第2実施形態において例示した表面実装用部品の斜視図。
【図3】第3実施形態において例示した表面実装用部品を示し、(a)は、その斜視図、(b)はその使用状態を示す説明図。
【図4】第4実施形態において例示した表面実装用部品の斜視図。
【図5】第5実施形態において例示した表面実装用部品を示し、(a)は、その斜視図、(b)は、その階層構造を示す分解図。
【図6】第6実施形態において例示した表面実装用部品を示し、(a)は、その斜視図、(b)はその使用状態を示す説明図。
【図7】第7実施形態において例示した表面実装用部品の斜視図。
【符号の説明】
【0092】
1,11,21,31,41,51,71・・・表面実装用部品、3,13,23,33,43,53,73・・・基体、5,15,25,35a,35b,45a,45b,45c,55,75,75a,75b・・・パターン、46・・・絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料によって形成された基体の表面に、金属材料によって形成されたパターンを設けてなる表面実装用部品であって、
前記パターンが、無電解めっき法で前記金属材料の析出を促すために用いられる触媒成分を含有する触媒成分含有液を用いて、前記基体の表面に印刷を施すとともに、当該印刷が施された箇所に前記金属材料を含有する金属成分含有液を接触させて、前記金属材料を析出させることによって形成されている
ことを特徴とする表面実装用部品。
【請求項2】
前記触媒成分含有液を、インクジェット方式にて前記基体の表面に印刷してある
ことを特徴とする請求項1に記載の表面実装用部品。
【請求項3】
前記金属成分含有液をインクジェット方式にて前記印刷が施された箇所に重ねて印刷することにより、前記印刷が施された箇所に前記金属成分含有液を接触させてある
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面実装用部品。
【請求項4】
前記金属材料が、Cu、Sn、またはAuである
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項5】
前記エラストマー材料は、シリコーン系エラストマー、またはエポキシ系エラストマーがベース材として配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項6】
前記エラストマー材料は、導電材として機能するフィラーが配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項7】
前記エラストマー材料は、磁性材として機能するフィラーが配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項8】
前記エラストマー材料は、誘電材として機能するフィラーが配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項9】
前記エラストマー材料は、熱伝導材として機能するフィラーが配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項10】
前記触媒成分が、パラジウム化合物である
ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の表面実装用部品。
【請求項11】
前記触媒成分含有液は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化樹脂成分を含有しており、
前記パターンは、前記触媒成分含有液を用いて前記基体の表面に印刷を施した後、当該印刷が施された箇所に紫外線を照射して液状成分を硬化させてから、当該印刷が施された箇所に前記金属材料を含有する金属成分含有液を接触させることによって形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の表面実装用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−53644(P2008−53644A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231067(P2006−231067)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】