説明

表面層のスプレー塗布方法、表面層塗布用のスプレー塗布装置、インクジェット記録用紙

【課題】 支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、塗布液をスプレー塗布装置にて塗設し、表面層を形成し記録用紙を製造する際、スプレー状態の確認が容易で支持体及び塗布液のロスが少なく、塗布中に液滴の落下及び支持体のバタツキによる塗布故障を防止し、長時間の塗布が安心して行うことが可能な記録用紙の表面層のスプレー塗布方法、表面層塗布用のスプレー塗布装置、記録用紙の提供。
【解決手段】 支持体上に形成されたインク吸収層上に、スプレー塗布装置により表面層を形成するスプレー塗布方法において、該スプレー塗布装置は、乾燥工程の外部に配設され、スプレーコータと、塗布液飛散防止手段と、移動手段とを有し、塗布する前に、該スプレーコータを待機位置に移動し、塗布液のスプレー状態を監視手段により確認した後、塗布位置に移動し、塗布した後、該待機位置に戻すことを特徴とするスプレー塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に形成されたインク吸収層上に塗布液をスプレーすることでインク吸収層上に表面層を形成する、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の表面層のスプレー塗布方法、表面層塗布用のスプレー塗布装置、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。特に、最近ではプリンタの高画質化が進み写真画質に到達していることから、記録用紙も写真画質を実現し、かつ銀塩写真の風合い(光沢性、平滑性、コシなど)を再現することが求められている。
【0003】
銀塩写真の風合いを再現する方法の1つとして、支持体上にゼラチンやポリビニルアルコールなどの親水性バインダを塗設した、いわゆる膨潤型の記録用紙が知られている。しかしながら、この方法で作製された記録用紙は、インク吸収速度が遅い、プリント後に表面がべたつきやすい、保存中に湿度の影響を受けて画像がにじみやすい等の欠点を有している。特に、インク吸収速度が遅いため、吸収される前にインクの液滴同士が混ざり合い、異色間のにじみ(ブリーディング)や同色内の色むら(ビーディング)を発生させやすく、銀塩写真と同程度の画質を得るのは非常に困難となっている。
【0004】
上記膨潤型に代わり主流となりつつあるのがいわゆる空隙型であり、インク吸収層に多孔質の無機微粒子を有しており、この多孔質の無機微粒子にインクを吸収させるため、吸収速度が速いのが特徴である。このような空隙型の記録用紙の例としては、特開平10−119423号、同10−119424号、同10−175364号、同10−193776号、同10−193776号、同10−217601号、同11−20300号、同11−106694号、同11−321079号、同11−348410号、同10−178126号、同11−348409号、特開2000−27093、同2000−94830、同2000−158807、同2000−211241等に記載されている。
【0005】
一方、画質や風合いに加え、耐久性や画像保存性に対する要求もより高度になり、耐光性、耐湿性、耐水性なども銀塩写真レベルに到達させる試みが数多くなされている。耐光性向上の例としては、特開昭57−74192号、同57−87989号、同57−74193号、同58−152072号、同64−36479号、特開平1−95091号、同1−115677号、同3−13376号、同4−7189号、同7−195824号、同8−25796号、同11−321090号、同11−277893号、特開2000−37951等に記載されている多数の技術が開示されている。
【0006】
空隙型の記録用紙の場合は、耐光性だけでなく、その空隙構造に起因してオゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスにより変褪色を起こし易い問題がある。特に、一般のカラーインクジェットプリンタに採用されているフタロシアニン系水性染料で変褪色が起こりやすい。
【0007】
この様にインク吸収層の空隙構造に起因する問題の対策の一つとしてインク吸収層上に表面層を設ける方法が検討がなされている。表面層を設けることで、空隙構造中にオゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスを入り込ませないことから効果的であり、特開平7−237348号公報に記載されている様に0.5〜30μmの厚さの透明高分子膜を設ける技術が知られている。
【0008】
表面層を設ける方法としては、塗布液をブロック塗布、グラビアロール塗布、押し出し塗布等によりインク吸収層上に塗布しているが、これらの塗布方式の欠点としては次の事項が挙げられる。
【0009】
1)塗布速度が50m/min以上にすることが困難であるため稼働率が低い。
【0010】
2)塗布面に干渉ムラが発生し易く、商品価値が低くなる。
【0011】
3)膜厚分布が不安定で均一な膜厚層が得られにくく、有害ガスの侵入を防止するためには不利である。
【0012】
4)膜厚が5〜20μmの薄膜塗布が難しいため、記録用紙が膜厚の影響を受け着色してしまう。又、乾燥工程での負荷が大きくなる。
【0013】
これらのことから、有害ガスの侵入を防止する表面層に対しては、薄く且つ均一な塗設方法としてスプレーコータを使用したスプレー塗布による表面層の塗布が行われている。例えば、基体の搬送方向と交差する方向の塗布幅に渡ってスプレー装置により塗布液を噴霧し、基体上に塗布液層(表面層)を形成する際、噴霧した塗布液の飛散を防止するためにスプレーコータを減圧に保持した筐体内に配設したスプレー装置を使用するスプレー塗布方法及びスプレー塗布装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0014】
特許文献1に記載のスプレー塗布装置の場合、塗布工程全体に噴霧した塗布液の飛散防止には効果があるが、しかしながら、次の問題点を有している。
【0015】
1)スプレー塗布装置が密閉筐体内に配設されているため、スプレーコータの塗布液のスプレー状態の調整を、実際に基体上に塗布した状態を確認しながら行わなければならないため、基体と塗布液のロスが大きい。
【0016】
2)塗布中に筐体内の壁に付着した塗布液が液滴が塗膜上に落下し、故障の原因となる危険性がある。
【0017】
3)スプレー塗布装置を収容する筐体と支持体との間隙から、塗布に使用されなかった噴霧状の塗布液の液滴が飛散し、飛散した液滴が支持体に再付着して塗布ムラを発生させる危険がある。又、飛散した液滴がスプレー塗布工程内を汚す場合もある。
【0018】
4)スプレー塗布時の噴霧圧により、支持体がバタツキを起こし、支持体の搬送不良及び筐体との接触によるインク吸収層及び塗布直後の塗布液面を削り落とす危険性がある。
【0019】
この様な状況から、支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、塗布液をスプレー塗布装置にて塗設し、表面層を形成し記録用紙を製造する際、スプレーコータの条件設定が容易で支持体及び塗布液のロスが少なく、塗布中に液滴の落下及び支持体のバタツキによる塗布故障を防止し長時間の塗布が安心して行うことが可能な記録用紙の表面層のスプレー塗布方法、表面層塗布用のスプレー塗布装置、記録用紙を開発することが望まれている。
【特許文献1】特開2004−90330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、塗布液をスプレー塗布装置にて塗設し、表面層を形成し記録用紙を製造する際、スプレーコータのスプレー状態の確認が容易で、支持体及び塗布液のロスが少なく、塗布中に液滴の落下及び支持体のバタツキによる塗布故障を防止し長時間の塗布が安心して行うことが可能な記録用紙の表面層のスプレー塗布方法、表面層塗布用のスプレー塗布装置、記録用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0022】
(請求項1)
バックアップロールに支持され連続搬送する支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、該支持体の搬送方向と交差する位置に配設されたスプレー塗布装置により、該インク吸収層の幅方向の全幅に塗布液をスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層のスプレー塗布方法において、
該スプレー塗布装置は、乾燥工程の外部に配設され、スプレーコータと、塗布液飛散防止手段と、移動手段とを有し、
該塗布液を該インク吸収層上に塗布する前に、
該移動手段により該スプレーコータを待機位置に移動し、前記スプレーコータの塗布液のスプレー状態を監視手段により確認した後、
前記移動手段により前記スプレーコータを塗布位置に移動し、前記インク吸収層上に該塗布液をスプレー塗布し、この後、
前記移動手段により前記スプレーコータを該待機位置に戻すことを特徴とする表面層のスプレー塗布方法。
【0023】
(請求項2)
前記待機位置と塗布位置との間に、スプレーコータの移動と同期して開閉するシャッターが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【0024】
(請求項3)
前記塗布液飛散防止手段は、スプレーコータ側に開口部を有する箱体構造の本体と、該本体に繋がった吸引手段と、回収手段と、バックアップロール上のインク吸収層を有する支持体と該本体の下面との間隙に気体を供給する気体供給手段とを有し、該開口部を該スプレーコータの幅方向の壁面に接触させ、該バックアップロールの外周面に近接するように配設し、前記スプレーコータの上流側と下流側とにそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【0025】
(請求項4)
前記上流側に配設された塗布液飛散防止手段はスプレーコータの待機位置へ移動する側に配設された本体の上面が該スプレーコータの移動と連動し移動することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【0026】
(請求項5)
前記スプレーコータを塗布後に待機位置に移動するとき、塗布液をスプレーしている状態であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【0027】
(請求項6)
前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【0028】
(請求項7)
前記インク吸収層が少なくとも1層の無機微粒子と、バインダとを含有する多孔質層で構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【0029】
(請求項8)
バックアップロールに支持され連続搬送する支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、塗布液をスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層塗布用のスプレー塗布装置において、
該バックアップロールに近接し、乾燥工程の外部に配設され、スプレーコータと、塗布液飛散防止手段と、移動手段とを有し、
該塗布液飛散防止手段は、該スプレーコータの上流側と下流側とに前記バックアップロールの外周面に近接して設けられ、
前記移動手段により、前記スプレーコータは塗布開始時に待機位置より塗布位置まで移動し、塗布終了後に塗布位置より待機位置に移動し、
該待機位置に前記スプレーコータを監視する監視機構とを有することを特徴とする表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【0030】
(請求項9)
前記待機位置と塗布位置との間に、スプレーコータの移動と同期して開閉するシャッターが配設されていることを特徴とする請求項8に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【0031】
(請求項10)
前記塗布液飛散防止手段は、スプレーコータ側に開口口を有する箱体構造の本体と、該本体に繋がった吸引手段と、回収手段と、バックアップロール上の基体と該本体の下面との間隙に気体を供給する気体供給手段とを有し、
該開口口を該スプレーコータの幅方向の壁面に接触させ、
前記本体の下面を該バックアップロールの外周面に近接するように配設されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【0032】
(請求項11)
前記塗布液飛散防止手段はスプレーコータの待機位置へ移動する側に配設された本体の上面が該スプレーコータの移動と連動し移動することを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【0033】
(請求項12)
前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【0034】
(請求項13)
前記インク吸収層が少なくとも1層の無機微粒子と、バインダとを含有する多孔質層で構成されていることを特徴とする請求項8〜12の何れか1項に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【0035】
(請求項14)
請求項1〜7の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法により製造されたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【発明の効果】
【0036】
支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、塗布液をスプレー塗布装置にて塗設し、表面層を形成し記録用紙を製造する際、スプレーコータの条件設定が容易で支持体及び塗布液のロスが少なく、塗布中に液滴の落下及び支持体のバタツキによる塗布故障を防止し長時間の塗布が安心して行うことが可能な記録用紙の表面層のスプレー塗布方法、表面層塗布用のスプレー塗布装置、記録用紙を提供することが出来、コスト低減、生産効率の向上、品質向上が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態を図1〜図7を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
図1はスプレー塗布装置を記録用紙置した塗布製造ラインの一例を示す模式図である。図中、1は塗布製造ラインを示す。塗布製造ライン1は、支持体の繰り出し部2と、インク吸収層を形成する塗布液を塗布する第1塗工部3と、冷却部4と、乾燥部5と、インク吸収層の上に表面層を形成する塗布液をスプレー塗布する第2塗工部6と、巻き取り部7とを有している。
【0039】
202は支持体201の元巻きロールを示す。繰り出し部2から繰り出された支持体201は第1塗工部3でバックアップロール301に巻回された支持体201上にコータ302により少なくとも1層のインク吸収層を形成するための塗布が行われる。インク吸収層としては少なくとも1層の無機微粒子と、バインダとを含有する多孔質層で構成されていることが好ましい。コータ302としては同時に多層の塗布液が塗布出来ることから流量規制型のスライドビード塗布装置が好ましい。
【0040】
支持体201上にインク吸収層を形成する塗布液層を有する支持体は、インク吸収層用の塗布液が親水性バインダを含有しているので冷却部4で冷却装置401により固定化された状態で乾燥部5に搬送され、溶媒が除去されてインク吸収層203が形成される。501は乾燥箱を示し、502は搬送用のロールを示し、503は塗布面の接触を避けるため支持体を浮かせて搬送するための気体を吹き出し塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサを示す。これにより、塗布面の接触を避け乾燥することが可能となっている。
【0041】
乾燥部5で、塗布液層中の溶媒が除去されインク吸収層203が形成された段階で、乾燥部5の外側に配置された第2塗工部6で、バックアツプロール602に巻回された支持体のインク吸収層203の上に表面層用の塗布液がスプレー塗布装置601によりスプレー塗布される。表面層用の塗布液が塗布された支持体は再度乾燥箱に入り乾燥が行われ、表面層用の塗布液の溶媒の除去が行われ表面層204が形成され乾燥箱から出て、巻き取り部7で巻き芯701に巻き取られロール状の記録用紙702が製造される。尚、乾燥部における乾燥は、温風を吹き付け乾燥する方式が好ましい(温風吹きつけ手段は不図示)。尚、本発明においてインク吸収層上に形成される表面層は、塗布液がインク吸収層上にスプレー塗布されたとき一部はインク吸収層中に浸透している状態も含めるものとする。
【0042】
第2塗工部6の配設する位置は乾燥工程の途中、好ましくは減率乾燥以降の位置で、且つ、乾燥部の外部で、塗工後に再度乾燥を行うことが可能であれば特に限定はない。例えば、本図に示す乾燥部を第1乾燥部と第2乾燥部との2つ分割し、第1乾燥部と第2乾燥部の間に配設しても良いし、本図に示す様に乾燥部の乾燥箱の上部に配設しても良いが、工程を大きくすることなく第2塗工部6構成する部材を納める関係から乾燥部の乾燥箱の上部に配設することが好ましい。第2塗工部6のスプレー塗布装置601は搬送方向と直交する方向である支持体の塗布面に対向するように配置されている。第2塗工部6の詳細については、図2で説明する。第2塗工部6を乾燥部の外に出し、バックアップロールに支持された支持体上のインク吸収層上に表面層を塗布することにより次の効果が得られる。
【0043】
1)スプレー塗布に伴う塗布液の飛沫により、搬送ロール、乾燥箱内壁の汚染が防止出来るため、搬送ロールに付着した異物の転写による異物付着、乾燥箱内壁からの異物落下による異物付着を防止することが可能となり製品性能が安定する。
【0044】
2)乾燥部を大きくすることがないため、乾燥に必要とするエネルギーのロスを必要最低限に抑えることが可能となる。
【0045】
3)スプレー塗布装置のメンティナンスが容易になる。
【0046】
4)バックアップロールに支持された状態で塗布するため、支持体のバタツキが無くなり安定した塗布が可能になり、製品性能が安定する。
【0047】
図2は図1のXで示される部分の拡大概略図である。図2の(a)は図1のXで示される部分の拡大概略平面図である。図2の(b)は図2の(a)のA−A′に沿った概略断面図である。
【0048】
図中、601はスプレー塗布装置を示す。スプレー塗布装置601は、スプレーコータの中でも本発明に係る記録用紙の表面層塗布に好ましいカーテンスプレーコータ601aと、カーテンスプレーコータ601aの下流側に配設された塗布液飛散防止手段603と、カーテンスプレーコータ601aの上流側に配設された塗布液飛散防止手段604と、
カーテンスプレーコータ601aが待機位置(点線で示されるカーテンスプレーコータの位置)に移動手段(不図示)により移動したとき、塗布位置(実線で示されるカーテンスプレーコータの位置)と待機位置との間を遮断(点線で示される位置のシャッター)するシャツター609と、カーテンスプレーコータ601aが待機位置に移動したときにカーテンスプレーコータ601aのスプレー状態を監視するための監視機構610とを有している。
【0049】
601bはカーテンスプレーコータ601aの塗布液供給管を示す。塗布液飛散防止手段603はカーテンスプレーコータ601a側に開口部603aを有する箱体構造の本体603bと、本体603bの内側を減圧にするための吸引手段である吸引管603c、吸引管603dと、塗布に使用されず本体603b内に集められた塗布液の回収手段である塗布液回収管603eと、バックアップロール602上のインク吸収層203を有する支持体201(図1を参照)と本体603bの下面603b1との間隙605に気体を供給する気体供給手段606とを有している。
【0050】
気体供給手段606からの気体の供給量としては、例えば、本体603bの内側の減圧度が−3KPaのときは、3m3/min〜6m3/minが好ましい。気体の供給量が3m3/min未満では、塗布液の供給量が多い場合、噴霧状の液滴をカバー内の吸引だけでは吸引できず、支持体とカバーの間隙から噴霧状の液滴が漏れてしまい、支持体に付着し塗布ムラを起こす場合がある。また、本体603bの内側に付着した液滴がコンデンスして、雫状になり支持体に垂れ落ちて濃度ムラとなる場合がある。気体の供給量が6m3/minを超えると、ノズルから噴霧された塗布液に過度の抵抗を与え、塗布液が一定の噴霧状態とならず濃度ムラとなる場合がある。
【0051】
吸引管603c、吸引管603dは真空ポンプ(不図示)へ繋がっており、本体603bの内側を減圧にすることを可能にしている。塗布液回収管603eは回収容器(不図示)へ繋がっている。本体603bの内側の減圧度は、−2〜−6KPaが好ましい。減圧度が−2KPa未満の場合は、インク吸収層上へ塗着されなかった塗布液の噴霧状の液滴が回収されずに周囲に飛散し、インク吸収層上へ再付着し塗布ムラを発生させたり、周囲を汚したりする場合がある。減圧度が−6KPaを越える場合は、噴霧された塗布液の大半が回収されてしまい、インク吸収層上への塗着率が低下し、塗布不良となる場合がある。又、搬送中の支持体がバタツキを起こし、搬送不良及び塗布液飛散防止手段による接触が発生し故障を発生させる場合がある。
【0052】
吸引管603c、吸引管603dにより吸引することでカーテンスプレーコータ601aよりスプレーされ塗布に関与しなかった噴霧状態の塗布液は飛散することなく本体603bの内側に付着し液滴となり、塗布液回収管603eを介して回収容器(不図示)へ回収される。603fは本体603bの開口部603aの内側の近傍に張られた吸着部材を示す。
【0053】
吸着部材としてては、高分子吸収材(Superabsorbent Polymer:SAP)例えば、デンプン系のグラフト重合体、カルボキシルメチル化体、セルロース系のグラフト重合体、カルボキシルメチル化体、合成ポリマーとしてのポリアクリル酸系、ポリアクリル酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系、イソブチレンマレイン酸塩系等の単体もしくはこれら各々の合成体、又は、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の各混合体等が挙げられる。一例としてポリアクリル酸ナトリウム系樹脂を用いる場合、水分を吸収するとナトリウムイオンがポリマの網目から排出され、ポリマ側鎖のカルボン酸イオン間の電子反発で大きくなったポリマ網目の間隙に水が流出して吸収効果が生じる。又、その他の吸水性担体として、例えば、雑誌「表面、Vol.33、No.4、52−59、(1995)」に記述されているような紙おむつや生理用品などの衛生用品、土壌保水材などの農業園芸用品等に使用される各種の高吸水性高分子がを使用することも可能である。
【0054】
吸着部材603fにより開口部603aの内側に付着した塗布液の液滴がバックアップロール602上の支持体上のインク吸収層203上に落下することを防止することを可能にしている。
【0055】
塗布液飛散防止手段604はカーテンスプレーコータ601a側に開口部604aを有する箱体構造の本体604bと、本体604bの内側を減圧にするための吸引手段である吸引管604cと、塗布に使用されず本体604b内に集められた塗布液の回収手段である塗布液回収管604dと、バックアップロール602上のインク吸収層203を有する支持体201と本体604bの下面604b1との間隙607に気体を供給する気体供給手段608とを有している。気体供給手段608からの気体の供給量は気体供給手段606と同じであることが好ましい。
【0056】
吸引管604cは真空ポンプ(不図示)へ繋がっており、本体604bの内側を減圧にすることを可能にしている。塗布液回収管604dは回収容器(不図示)へ繋がっている。本体604bの内側の減圧度は、塗布液飛散防止手段603の本体603bと同じであることが好ましい。吸引管604cにより吸引することでカーテンスプレーコータ601aよりスプレーされ塗布に関与しなかった噴霧状態の塗布液は飛散することなく本体604bの内側に付着し液滴となり、塗布液回収管604dを介して回収容器(不図示)へ回収される。604eは本体604bの開口部604aの内側の近傍に張られた吸着部材を示す。吸着部材としては、塗布液飛散防止手段603に使用した吸着部材と同じである。吸着部材604eにより開口部604aの内側に付着した塗布液の液滴がバックアップロール602上の支持体上のインク吸収層204上に落下することを防止することを可能にしている。
【0057】
カーテンスプレーコータ601aは塗布開始時に待機位置(点線で示されるスプレーコータの位置)から塗布位置(実線で示されるスプレーコータの位置)に移動し、塗布終了後に塗布位置から待機位置へ移動手段(不図示)により移動が可能となるように塗布装置のフレーム(不図示)に配設されている。又、バックロール602も回転可能(図中の矢印方向)にフレーム(不図示)に軸支されている。塗布液飛散防止手段604の本体604bの上面604b2は、カーテンスプレーコータ601aの移動に連動して移動(図中の矢印方向)と、開閉(図中の矢印方向)が可能となっている。
【0058】
シャッター609は、カーテンスプレーコータ601aが待機位置(点線で示されるスプレーコータの位置)に移動手段(不図示)により移動したとき、塗布位置(実線で示されるスプレーコータの位置)と待機位置との間を遮断(点線で示される位置のシャッター)する様にカーテンスプレーコータ601aの移動と同期して移動(図中の矢印方向)する様にスプレー塗布装置601のフレーム(不図示)に配設されている。
【0059】
610はスプレーコータ601が待機位置に移動したときにカーテンスプレーコータ601aの塗布液のスプレー状態を設定した条件と合っているかを監視するための監視機構を示す。監視機構610は監視手段610a1の移動用のガイドレール610aと、監視手段610b1の移動用のガイドレール610bとを有している。ガイドレールはカーテンスプレーコータ601aの幅方向に平行となるようにスプレー塗布装置6のフレーム(不図示)に配設されており、且つ、カーテンスプレーコータ601aが待機位置に移動した時に、カーテンスプレーコータ601aの塗布液のスプレー状態を監視する位置(図中の点線で示される位置)まで降りる様になっている。監視機構610によるカーテンスプレーコータ601aのスプレー状態の監視方法に関しては図6で説明する。監視手段はガイドレールに沿ってカーテンスプレーコータ601aの幅方向の移動(図中の矢印方向)と、ガイドレールの昇降により、カーテンスプレーコータ601aのスプレー状態を監視することが可能となっている。
【0060】
図3は図2に示されるスプレー塗布装置の支持体に対する配置の状態を示す概略図である。尚、本図では塗布液飛散防止手段は省略してある。
【0061】
図中、θ1はカーテンスプレーコータ601aと支持体201との交差する角度を示す。本発明において、交差するとは、スプレー塗布装置601のカーテンスプレーコータ601aのスプレー口P(図6を参照)を形成するラインが支持体と平行で、且つ支持体の進行方向に対して交差する角度を言う。即ち、スプレー塗布装置601は支持体の搬送方向(図中の矢印方向)と交差する位置に配設されていることを意味する。角度θ1は70〜110°が好ましい。本図の場合は、カーテンスプレーコータ603と支持体との交差する角度が90°の場合を示している。角度θ1が70°未満の場合は、塗布液の塗布する範囲が広がり、塗布液のスプレー条件の設定が困難になる場合がある。角度θ1が110°を越える場合も、角度θ1が70°未満の場合と同じである。
【0062】
カーテンスプレーコータ601aの塗布液のスプレー口P(図6を参照)は、少なくとも帯状の支持体上のインク吸収層203の塗布幅(帯状の支持体の搬送方向と交差する方向における帯状の支持体の被塗布部の長さのことを指す)に対応する長さを有していることが好ましい。このように配置することで、カーテンスプレーコータに対して帯状の支持体を搬送させ、帯状の支持体上のインク吸収層203に塗布液を塗布幅にわたって噴霧することにより、乾燥負荷も少なく、膜厚均一性が高く、薄い塗布膜を塗布できることが可能となる。
【0063】
図4は図1に示すスプレー塗布装置の塗布開始前から塗布開始までのスプレーコータと、監視機構と、シャッターとの動きを示す概略フロー図である。
【0064】
S1ではカーテンスプレーコータ601aは待機位置にあり、この場所で塗布液のスプレー状態を監視機構により監視し、設定条件からずれている場合は、設定条件になるように調整する。監視機構を構成している一対のガイドレール610a(610b)と一対の監視手段610a1(610b1)はカーテンスプレーコータ601aのスプレー状態が監視可能な位置まで降りている。監視手段610a1(610b1)による情報に基づき、制御手段(不図示)によりカーテンスプレーコータ601aへの塗布液の供給量、エアー量が調整される様になっている。具体的な監視の内容に関しては図6で説明する。
【0065】
S2では監視手段610a1(610b1)による情報に基づきカーテンスプレーコータ601aの塗布液のスプレー状態が調整された後、塗布液飛散防止手段604の本体604bの上面604b2が開放され、シャッター609と、監視機構610が上げられる。
【0066】
S3では塗布液飛散防止手段604の本体604bの上面604b2が閉められ、カーテンスプレーコータ601aは塗布位置まで移動する。同時に上面604b2も移動し、本体604b上に設置され、本体604bの内側を減圧にすることが可能となる。
【0067】
図5は図2に示すカーテンスプレーコータの塗布状態を示す拡大概略図である。本図ではカーテンスプレーコータの上流側と下流側に配設してある塗布液飛散防止手段は省略してある。
【0068】
図中、601aはカーテンスプレーコータを示し、601bはカーテンスプレーコータ601aへ塗布液を供給する塗布液供給管を示し、601c、601dはカーテンスプレーコータ601aに供給された表面層用塗布液を液滴状にスプレーし、連続搬送される(図中の矢印方向)帯状の支持体201上のインク吸収層203上にスプレー塗布するための一対の加圧空気供給管を示す。
【0069】
204は、帯状の支持体201上のインク吸収層203上に形成された表面層を示す。帯状の支持体201は、カーテンスプレーコータ601aの塗布液吐出部に対して相対的に移動させ(搬送させ)、連続的に塗布製造を行う。カーテンスプレーコータ601aの塗布液のスプレー口P(図6を参照)は、少なくとも帯状の支持体201の塗布幅(帯状の支持体の搬送方向と交差する方向における帯状の支持体の被塗布部の長さのことを指す)に対応する長さを有し、帯状の支持体201の搬送方向と交差するように配置(図3を参照)させることが好ましい。このように配置することで、カーテンスプレーコータに対して帯状の支持体を搬送させ、帯状の支持体上に塗布液を塗布幅にわたって液滴として噴霧することにより、乾燥負荷も少なく、膜厚均一性が高く、薄い塗布膜を塗布できることが可能となる。
【0070】
601e〜601hはカーテンスプレーコータ601aを構成している各ブロックを示す。601iは、ブロック601eとブロック601fとから構成される加圧空気ポケットを示し、601kはブロック601eとブロック601fとの間隙に形成される空気用ノズルを示す。601jはブロック601gとブロック601hとから構成される加圧空気ポケットを示し、601lはブロック601gとブロック601hとから構成される空気用ノズルを示す。
【0071】
加圧空気供給源(不図示)より、各加圧空気供給管601c、601dを介して供給された加圧空気は、各加圧空気ポケット601i、601jに一旦溜められた後、各空気用ノズル601k、601lを介して各開口端601k1、601l1より噴出される。
【0072】
601mは、ブロック601fとブロック601gとから構成され、塗布液供給管より供給される塗布液を一次的に溜める塗布液ポケットを示す。601nは、ブロック601iとブロック601gとの間隙に挟持された櫛型部材601oとにより形成される塗布液用ノズルを示す。塗布液ポケット601mに溜められた塗布液は塗布液用ノズル601nの開口端601n1より吐出されると同時に各空気用ノズル601k、601lの開口端601k1、601l1より噴出する加圧空気により噴霧状にスプレーされ帯状の支持体201上のインク吸収層203上に塗布される。また、カーテンスプレーコータのスプレー口P(図6を参照)とインク吸収層との距離は、概ね2〜50mmの範囲で、適宜選択することができる。8は噴霧状にスプレーされる液滴を示す。櫛型部材601oに関しては図7で説明する。
【0073】
インク吸収層203上にスプレー塗布する塗布液の面積範囲は、常に均一であることが好ましいが、特に、液滴径分布が均一であること、搬送方向における長さLが塗布幅にわたって均一であることが好ましい。また、スプレー口P(図6を参照)を基点として帯状の支持体に対し、スプレーされる液滴群の広がり角度θは、塗布幅にわたって均一であることが好ましい。インク吸収層203上に落ちる衝突速度が均一であることが好ましい。これらによって、より塗布膜厚の均一性を確保することが可能となる。塗布幅方向において液滴径分布が均一であるとは、具体的には、塗布幅方向で、平均液滴径の変動が、±20%以下であることを言う。より好ましくは±10%以下である。
【0074】
図6は図4のS1のYで示される部分の拡大概略図である。
【0075】
図中の符号は図4、図5と同義である。監視手段610a1(610b1)としては、市販されている各種の装置を使用することが可能である。例えば、レーザー解析式流度ブンプ測定装置(MALVERN社製)、高速度ビデオカメラ(PHOTRON社製)等が挙げられる。本図の場合は、レーザーを使用した場合の一例を示しており、監視手段610a1がレーザー発光部を示し、監視手段610b1がレーザー受光部を示す。監視手段610a1(610b1)はガイドレール610a(610b)に移動可能に配設され、ガイドレール610a(610b)はカーテンスプレーコータ601aの軸芯に平行に上下方向に移動(図中の矢印方向)するようにスプレー塗布装置のフレーム(不図示)に配設されている。監視手段610a1(610b1)によりカーテンスプレーコータ601aの開口端601k1、601l601n1より構成されるスプレー口Pから噴霧状にスプレーされる塗布液の液滴8の大きさ、液滴8の大きさの分布、液滴8の密度がカーテンスプレーコータ601aの幅方向と、スプレーされる塗布液の高さ方向について観察される。監視手段610a1(610b1)による情報は制御手段(不図示)のCPUに入力され、予めメモリーに入力されている設定条件(使用する塗布液毎の塗布速度、塗布時の塗布膜厚に応じて、塗布液の液滴8の大きさ、液滴8の大きさの分布、液滴8の密度)に関する情報と演算処理され、メモリーに入力されている情報に一致するようにカーテンスプレーコータ601aへの塗布液の供給量、エアー量が調整される様になっている。
【0076】
カーテンスプレーコータ601aを用いて、次の表面層用の塗布液のスプレー状態のレーザー光を使用した監視方法の条件の一例を次に示す。
以下の組成からなる表面層用の塗布液を調製した。
【0077】
分散液−1 99ml
有機微粒子エマルジョン−1 250ml
アクリル系エマルジョン 11ml
水 575ml
粘度は40℃で1.74mPa・s(B型粘度計で測定)であった。
【0078】
分散液−1としては、カチオン性ポリマ(P−1)15%水溶液100gに1次粒子の平均粒子径が12nmの微粒子シリカ(トクヤマ製、QS−20)の25質量%%水分散液500g、ついで硼酸3.0g、ホウ砂0.7gを添加し、高速ホモジナイザーで分散し調製した。
【0079】
有機微粒子エマルジョン−1としては、n−ブチルアクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:t−ブチルメタクリレート=10:50:20:20(質量比)のモノマーを用い乳化重合して、有機微粒子エマルジョン−1を調製した。用いた活性剤はステアリルトリメチルアンモニウムクロライドである。ガラス転位点(Tg)は76℃、レーザー散乱法で得られたエマルジョンの粒子径は30μmである。
【0080】
アクリル系エマルジョンとしては、第一工業株式会社製の粒子径30μmで、非イオン性界面活性剤を使用し、ガラス転位点(Tg)が−30℃であるアクリル系エマルジョンを使用した。
【0081】
【化1】

【0082】
監視条件
インク吸収層の幅1540mm、支持体の搬送速度300m/min、塗布液の湿潤膜厚が50μm、塗布膜厚のバラツキ±5μmでインク吸収層上にスプレー塗布する様に条件設定したカーテンスプレーコータのスプレー状態をレーザー解析式流度ブンプ測定装置(MALVERN社製)を使用して確認した結果、塗布液の液滴の大きさ、液滴の大きさの分布、液滴の密度が初期の設定値より外れていることが確認され、カーテンスプレーコータの空気用のノズルからの圧力、塗布液供給量を調整し、空気用のノズルからの圧力を0.4MPa、塗布液供給量を3L/minに修正することで塗布液の液滴の大きさ、液滴の大きさの分布、液滴の密度を初期の設定値に合わせた。
【0083】
図2、図3、図5に示される様に待機位置で図6に示されるカーテンスプレーコータ601aの塗布液のスプレー状態を監視し、目的とするスプレー状態に調整することで次の効果が得られる。
【0084】
1)実際に塗布する必要がないため、支持体のロスがなくなり、塗布液のロスも抑えることが可能になりコストを下げることが可能となった。
【0085】
2)粘度や表面張力等の異なる物性値の塗布液に変えた場合でも、設定した塗布液のスプレー条件(液滴の大きさ、液滴の大きさの分布、液滴の密度)に対し、塗布時のスプレー状態を監視し修正することが容易になったため、塗布液の変更に対する対応が容易になり、毎回安定した塗布が可能となった。
【0086】
3)塗布時のスプレー状状態を監視することで、噴霧中の異物を塗布前に見つけることが可能となり、異物付着故障及び混入した異物が搬送ローラ等に付着して発生するスジ故障を未然に防止することが出来、生産効率の向上が可能となった。
【0087】
図7は、図1〜図6のに示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
図中、601fおよび601gは、所定の距離を有する塗布液用ノズル601n(図4を参照)を形成し、この塗布液用ノズルに塗布液を流下させるためのブロックである。片方のブロック601fは、図示しない塗布液供給源から供給される塗布液を受け入れ、塗布液ポケット601mまで連通する塗布液供給管601bを有している。塗布液ポケット601bに滞留した塗布液は、ブロック601fおよび601gの間に形成された塗布液用ノズルを流下することになる。601oは、ブロック601fおよびブロック601gに挟まれた櫛型部材であり、2つのブロック601fおよびブロック601gの間隙にスリットを垂直方向に分断して塗布幅方向に複数の塗布液用ノズルを形成する。601o1は櫛刃を示す。
【0088】
また、ブロック601eはブロック601fとで塗布液用ノズル601n(図4を参照)の先端に空気を送る空気用ノズル601kを形成するブロックである。ブロック601hはブロック601gとで塗布液用ノズル601n(図4を参照)の先端に空気を送る空気用ノズル601l(図4を参照)を形成するブロックである。空気用ノズル601k及び空気用ノズル601lは塗布幅方向に形成されている。
【0089】
空気供給源(不図示)から圧縮空気が加圧空気供給管601c(601d)に供給され、一端加圧空気ポケット601i(601j)に滞留した後、空気用ノズル601k(601l)を圧力をもって流下する。
【0090】
櫛型部材601oを有する塗布液用ノズル601n(図5を参照)を流下してきた塗布液と、2つの空気用ノズル601k(601l)を流下してきた圧縮空気とは、噴出口P(図6を参照)において衝突し、液滴を形成して、被塗布対象物である基体上に飛翔する。
【0091】
本発明に用いられるカーテンスプレーコータにおいて、塗布液用ノズル601n(図5を参照)の間隙の幅としては50〜300μmの範囲で用いることが好ましい。塗布液用ノズル601n(図5を参照)の開口端の形状としては、塗布幅に延びるスリット状でもよく、本図に示す様に櫛形部材を入れて、円形でも矩形にしてもかまわない。開口端の形状は櫛形部材の形状により変えることが可能となっている。開口端の形状を円形又は矩形とした場合、塗布液用ノズル601nの間隙の幅内に収まる形状とし用いることができ、それらのピッチ(間隔)は、100〜3000μm(櫛形部材601oの櫛刃601o1(図7を参照)の間隔に相当する)とすることが好ましい。
【0092】
一方、空気用ノズル601k(601l)(図5を参照)の間隙の幅としては50〜500μmの範囲で用いることが好ましい。空気用ノズル601k(601l)(図5を参照)の開口端の形状としては、塗布幅に延びるスリット状でもよく、本図に示す様に櫛形部材を入れて、円形でも矩形にしてもかまわない。開口端の形状は櫛形部材の形状により変えることが可能となっている。開口端の形状を円形又は矩形とした場合、空気用ノズル601k(601l)(図5を参照)の間隙の幅内に収まる形状とし用いることができ、それらのピッチ(間隔)は、100〜3000μm(櫛形部材601oの櫛刃601o1(図7を参照)の間隔に相当する)とすることが好ましい。
【0093】
塗布液用ノズルに対する空気用ノズルの角度としては、5〜50degの範囲が好ましい。塗布液用ノズルからの塗布液の供給量は、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定できないが、概ね基体上の塗設量として、1〜50g/m2の範囲が好ましい。1g/m2未満では、安定で均一な塗布膜を形成するのが難しくなる場合があり、逆に50g/m2を越えると乾燥負荷が大きくなり乾燥工程を長くしたり、温度を上げる必要が生じ、無駄なコストが掛かる場合がある。塗布液の湿潤膜厚としては、1〜50μmであることが特徴であり、好ましくは5〜30μmである。
【0094】
一方、空気用ノズルから噴出される気体は、塗布に適して入れば特に限定はなく、一般には空気を用いるが、ガスの供給条件としては、概ね1〜50CMM/m(塗布幅あたりの流量)の範囲が好ましく、その時のガスノズルでの内圧としては、塗布の均一性の観点から、10kPa以上であることが好ましい。
【0095】
空気の線速度vは、塗布乾燥性及び塗布収率の観点から126〜400m/sが好ましい。空気の線速度とは、空気用ノズルの出口直後における空気の線速度であり、レーザードップラ風速計、例えば、KANOMAX社製の1D FLV system8851により測定して求めることができる。また、塗布収率とは、インク吸収層上に塗布された塗布液量/供給した全塗布液量×100(%)であり、質量法により算出する。すなわち、インク吸収層上に塗布された塗布液量は、インク吸収層上への塗布前後の質量変化から算出し、供給した全塗布液量はカーテンスプレーコータへ送液、供給した質量、すなわち、送液流量×塗布時間より求めることができる。
【0096】
本発明に係る表面層を形成する塗布液には、特開2004−906号公報、同2004−122705号公報に記載の塗布液を使用することが好ましい。
本発明におけるインク吸収層に付き説明する。インク吸収層が多孔質であるとは、5〜200nm程度の孔径をもつ空隙を多数有することを指す。空隙同士は単独に孤立するのではなく、連続的にお互いに導通していることが好ましい。この場合の空隙径の定義としては、例えば、水銀圧入法による測定値を用いることができる。以下、好ましい多孔質層について説明する。
【0097】
多孔質層は、主に親水性バインダと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。本発明においては、多孔質層に、平均液滴径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが、特に好ましい。
【0098】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0099】
無機微粒子の平均液滴径は、粒子そのものあるいは多孔質層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0100】
無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0101】
本発明で用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0102】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均液滴径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0103】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均液滴径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0104】
本発明においては、インク吸収層に水溶性バインダを用いることができる。本発明で用いることのできる水溶性バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダは、二種以上併用することも可能である。
【0105】
本発明で好ましく用いられる水溶性バインダは、ポリビニルアルコールである。
【0106】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0107】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0108】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0109】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0110】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0111】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0112】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0113】
本発明においては、染料定着剤として多価金属化合物を用いることが好ましく、本発明の目的効果を達成する範囲において、それらの化合物と共に、カチオン性ポリマを併用することを妨げるものではない。
【0114】
カチオン性ポリマの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0115】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマ、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0116】
インク吸収層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、多孔質層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性バインダの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0117】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性バインダの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0118】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0119】
多孔質層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0120】
インク保持能を有する多孔質層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0121】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0122】
本発明においては、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤は、インクジェット記録用紙作製の任意の時期に添加することができ、例えば、インク吸収層形成用の塗布液中に添加しても良い。
【0123】
本発明においては、インク吸収層形成後に、水溶性バインダの硬化剤を供給する方法を単独で用いても良いが、好ましくは、上述の硬化剤をインク吸収層形成用の塗布液中に添加する方法と併用して用いることである。
【0124】
本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性バインダが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0125】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0126】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0127】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダ1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0128】
本発明に係る記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0129】
インク吸収層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらのインク吸収層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
【0130】
上記のような多孔質層は、特に、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。インクジェット記録方法に好ましい多孔質層の空隙容量は10〜30ml/m2である。
【0131】
本発明の記録用紙における塗工層は、従来公知の塗布方法で塗設することができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法、スロットノズルスプレー塗布方法あるいは、米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が、好ましく用いられる。
【0132】
本発明に係る記録用紙の各層には各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0133】
本発明で用いることのできる支持体としては、従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもよいが、非吸水性支持体であることが好ましい。すなわち、吸水性支持体の場合よりも非吸水性支持体の場合の方が、記録用紙中に顔料インク中の水溶性有機溶媒が多量に残留し、有機微粒子溶解等に対し効果的に作用するため、本発明の効果を顕著に奏することができると推定している。尚、正確には、「インク中の水溶性有機溶媒を吸収しない支持体」を使用するのが好ましいのであるが、ここでは非吸水性支持体を用いても、本発明の効果を顕著に奏することができると考えている。
【0134】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば、一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に、紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0135】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0136】
紙支持体は、前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。又、必要に応じて抄紙段階又は抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0137】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体及び不透明支持体がある。透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用として使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50〜200μmが好ましい。
【0138】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆる、RCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0139】
前記各種支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明に係る記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0140】
本発明に係る記録用紙では、特開2004−122705号公報に記載の原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。
【0141】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。インク吸収層としては、特開2004−122705号公報に記載の多孔質層で構成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】スプレー塗布装置を記録用紙置した塗布製造ラインの一例を示す模式図である。
【図2】図1のXで示される部分の拡大概略図である。
【図3】図2に示されるスプレー塗布装置の支持体に対する配置の状態を示す概略図である。
【図4】図1に示すスプレー塗布装置の塗布開始前から塗布開始までのスプレーコータと、監視機構と、シャツターとの動きを示す概略フロー図である。
【図5】図2に示すカーテンスプレーコータの塗布状態を示す拡大概略図である。
【図6】図4のS1のYで示される部分の拡大概略図である。
【図7】図1〜図6のに示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
【符号の説明】
【0143】
1 塗布製造ライン
2 繰り出し部
201 支持体
203 インク吸収層
204 表面層
3 第1塗工部
301、602 バックアップロール
4 冷却部
5 乾燥部
6 第2塗工部
601 スプレー塗布装置
601a カーテンスプレーコータ
603、604 塗布液飛散防止手段
603a、604a 開口部
603b、604b 本体
603c、603d、604c 吸引管
603e、604d 塗布液回収管
603f、604e 吸着部材
606、608 気体供給手段
609 シャッター
610 監視機構
610a1、610b1 監視手段
610a、610b ガイドレール
7 巻き取り部
8 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップロールに支持され連続搬送する支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、該支持体の搬送方向と交差する位置に配設されたスプレー塗布装置により、該インク吸収層の幅方向の全幅に塗布液をスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層のスプレー塗布方法において、
該スプレー塗布装置は、乾燥工程の外部に配設され、スプレーコータと、塗布液飛散防止手段と、移動手段とを有し、
該塗布液を該インク吸収層上に塗布する前に、
該移動手段により該スプレーコータを待機位置に移動し、前記スプレーコータの塗布液のスプレー状態を監視手段により確認した後、
前記移動手段により前記スプレーコータを塗布位置に移動し、前記インク吸収層上に該塗布液をスプレー塗布し、この後、
前記移動手段により前記スプレーコータを該待機位置に戻すことを特徴とする表面層のスプレー塗布方法。
【請求項2】
前記待機位置と塗布位置との間に、スプレーコータの移動と同期して開閉するシャッターが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【請求項3】
前記塗布液飛散防止手段は、スプレーコータ側に開口部を有する箱体構造の本体と、該本体に繋がった吸引手段と、回収手段と、バックアップロール上のインク吸収層を有する支持体と該本体の下面との間隙に気体を供給する気体供給手段とを有し、該開口部を該スプレーコータの幅方向の壁面に接触させ、該バックアップロールの外周面に近接するように配設し、前記スプレーコータの上流側と下流側とにそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【請求項4】
前記上流側に配設された塗布液飛散防止手段はスプレーコータの待機位置へ移動する側に配設された本体の上面が該スプレーコータの移動と連動し移動することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【請求項5】
前記スプレーコータを塗布後に待機位置に移動するとき、塗布液をスプレーしている状態であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【請求項6】
前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【請求項7】
前記インク吸収層が少なくとも1層の無機微粒子と、バインダとを含有する多孔質層で構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法。
【請求項8】
バックアップロールに支持され連続搬送する支持体上に形成された少なくとも1層のインク吸収層上に、塗布液をスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層塗布用のスプレー塗布装置において、
該バックアップロールに近接し、乾燥工程の外部に配設され、スプレーコータと、塗布液飛散防止手段と、移動手段とを有し、
該塗布液飛散防止手段は、該スプレーコータの上流側と下流側とに前記バックアップロールの外周面に近接して設けられ、
前記移動手段により、前記スプレーコータは塗布開始時に待機位置より塗布位置まで移動し、塗布終了後に塗布位置より待機位置に移動し、
該待機位置に前記スプレーコータを監視する監視機構とを有することを特徴とする表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【請求項9】
前記待機位置と塗布位置との間に、スプレーコータの移動と同期して開閉するシャッターが配設されていることを特徴とする請求項8に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【請求項10】
前記塗布液飛散防止手段は、スプレーコータ側に開口口を有する箱体構造の本体と、該本体に繋がった吸引手段と、回収手段と、バックアップロール上の基体と該本体の下面との間隙に気体を供給する気体供給手段とを有し、
該開口口を該スプレーコータの幅方向の壁面に接触させ、
前記本体の下面を該バックアップロールの外周面に近接するように配設されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【請求項11】
前記塗布液飛散防止手段はスプレーコータの待機位置へ移動する側に配設された本体の上面が該スプレーコータの移動と連動し移動することを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【請求項12】
前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【請求項13】
前記インク吸収層が少なくとも1層の無機微粒子と、バインダとを含有する多孔質層で構成されていることを特徴とする請求項8〜12の何れか1項に記載の表面層塗布用のスプレー塗布装置。
【請求項14】
請求項1〜7の何れか1項に記載の表面層のスプレー塗布方法により製造されたことを特徴とするインクジェット記録用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−51413(P2006−51413A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233132(P2004−233132)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】