説明

表面弾性波素子の製造方法

【課題】配線パッドの厚さを均一に形成することができるとともに、併せて櫛歯電極などの焦電破壊を防止すること。
【解決手段】金属膜をエッチングして圧電基板12上に反射器及び櫛歯電極13,14を形成するとともに、金属膜21の残りによって導通パターンを形成するエッチング工程と、圧電基板の全面にSiO膜23を成膜するSiO膜形成工程と、SiO膜23のうち電極形成領域に相当する部分を除去し、露出した金属膜の一部によって電極形成領域を形成するSiO膜除去工程と、電解めっきを用いて電極形成領域上に配線電極16を形成する配線電極形成工程と、導通パターンのうち配線パターンとして残すべき部分、反射器19及び櫛歯電極13,14以外の領域のSiO膜23及び補助パターン99を除去する膜除去工程とを有する表面弾性波素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面弾性波フィルタ等に利用される表面弾性波素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波フィルタは、小型化、高周波化、量産性などに優れているため、近年、携帯電話装置を始めとする無線機に多く採用されている。この表面弾性波フィルタは、特に最近のGSM(Global Systems for Mobile communications)、CDMA(Code Division Multiple Access)などのデジタル通信方式の無線機に内蔵されているIFフィルタとして用いられている。
【0003】
表面弾性波フィルタは表面弾性波素子を有しており、この表面弾性波素子は、圧電基板上に、櫛歯電極、反射器、配線パターン及び配線パッド(「配線電極」に相当)などが形成されている(特許文献1参照)。この表面弾性波素子の製造方法としては、例えば、LT(タンタル酸リチウム:LiTaO),LN(ニオブ酸リチウム:LiNbO)等の圧電基板の主面上に、アルミニウム合金を蒸着などの手段を用いて付着させ、フォトリソグラフィ技術を用いていわゆる櫛歯電極(IDT:Interdigital Transducer)、リード電極及びボンディング用パッドなどを形成するものがある。なお、ここでいうボンディング用パッドは、上記配線パッドに相当する。
【特許文献1】特開平10−284969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボンディング用パッドを電解めっき及びフォトリソグラフィ技術によって形成した場合においては、リード電極上に形成したボンディング用パッドの厚さが部分的に薄くなってしまい、全体として均一な厚さとすることが難しかった。このように配線パッドが配線パターン上において不均一な厚さとなると、配線パッドと配線パターンとの間の抵抗が部分的に異なってしまうことになり、表面弾性波素子の共振特性に影響を与えてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、配線パッドの厚さを均一にして形成することができるとともに、表面弾性波素子の良好な共振特性を得ることができる表面弾性波素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1の発明は、次の各工程から構成される。すなわち、圧電基板ウェハの全面に金属膜を形成する金属膜形成工程、金属膜をエッチングすることにより、完成品の状態で櫛歯電極として利用されるべき原型パターンを形成するとともに、この原型パターンに導通させた状態で原型パターン以外の領域について金属膜を導通パターンとして残存させるエッチング工程、このエッチング工程の後、金属膜が残存する状態で圧電基板ウェハの全領域にSiO膜を形成するSiO膜形成工程、SiO膜のうち、完成品の状態で配線パターンの電極形成領域に相当する部分の金属膜を覆う除去予定領域を残し、この除去予定領域以外の領域に第1のレジストを形成する第1レジスト形成工程、SiO膜のうち除去予定領域内の部分を除去することで金属膜の表面の一部を露出させ、この露出部分を電極形成領域として確保するSiO膜除去工程、SiO膜除去工程で確保された電極形成領域に電解めっきを用いて配線電極を形成する配線電極形成工程である。なお、表面弾性波素子が反射器を有する場合、上記のエッチング工程では、完成品の状態で反射器として利用されるべき原型パターンを合わせて形成してもよい。
【0007】
さらに第1の発明には、配線電極形成工程の後に第1のレジストを剥離する第1レジスト剥離工程、この第1レジスト剥離工程の後、完成品の状態で原型パターンのうち櫛歯電極として圧電基板ウェハ上に残存させるべき部分及び導通パターンのうち配線パターンに相当する部分の領域に第2のレジストを形成する第2レジスト形成工程、第2のレジストが形成された領域以外の領域に残存する前記SiO膜及び金属膜をそれぞれ除去する膜除去工程、そして第2のレジストを剥離する第2レジスト剥離工程が追加される。
【0008】
第1の発明に係る表面弾性波素子の製造方法(以下単に「製造方法」と呼称する)によれば、エッチング工程において圧電基板上に櫛歯電極の原型となるパターンを形成した後においても、櫛歯電極の原型がその他の金属膜の一部である導通パターンによって導通した状態となっている。なお原型パターンとは、互いに向き合う櫛歯状の電極が交互に配列されたパターンであり、表面弾性波素子の完成状態では櫛歯電極となる。
【0009】
これら櫛歯電極の原型パターンと導通パターン(金属膜の一部)との導通状態は、その後、SiO膜形成工程及びレジスト形成工程を経て、少なくとも配線電極形成工程に至るまで継続している。このように配線電極形成工程に至るまで櫛歯電極の原型パターンが金属膜の一部である導通パターンと電気的に接続されていると、この配線電極形成工程では、電解めっきを行う際に、圧電基板上のいずれの部分の配線パターンにおいても電流密度が均一となる。
【0010】
このため配線パターン上には、そのいずれの部分においても、電解めっきによって均一な厚さの配線電極を形成することができる。このように配線パターンのいずれの部分においても、均一な厚さの配線電極を形成することができることから、配線電極は、配線パターンのいずれの箇所に形成されていても、配線パターンとの抵抗が均一となる。このため、この表面弾性波素子の製造方法によれば、このような配線電極を有する表面弾性波素子は共振特性が良好なものとなる。
【0011】
ここで、一般的な表面弾性波素子の製造方法においては、各工程において熱を加えることがある。このような加熱の際には、圧電基板の表面に電荷が蓄積し、圧電基板に形成した微細な櫛歯電極の部分が、蓄積した電荷によっていわゆる焦電破壊(電荷集中による破壊)を生ずるおそれがあることが知られている。しかしながら、この表面弾性波素子の製造方法では、配線電極形成工程に至るまで、櫛歯電極の原型パターンが導通パターン(金属膜の一部)に電気的に接続されているため、櫛歯電極の原型部分だけに電荷が集中することなく、導通パターンにまで電荷が分散する。このため、この表面弾性波素子の製造方法の各工程においては、加熱を伴っても櫛歯電極などに焦電破壊が生じにくくなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の構成において、第2レジスト剥離工程及び膜除去工程は、配線電極形成工程の後に圧電基板に対する加熱を伴って実行される後工程よりも後に実行されることを特徴とする。なお、ここでいう加熱を伴う後工程としては、例えば、配線電極形成工程で配線電極を形成した後のアニール工程を挙げることができる。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、膜除去工程が実行される前に、圧電基板が加熱されて圧電基板の表面に電荷が集中的に蓄積しそうになっても、その電荷は導通パターンによって広く分散するようになる。このため圧電基板上に形成された櫛歯電極の原型部分で焦電破壊を生じることはない。
【0014】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の構成において、膜除去工程では、SiO膜とともに金属膜を除去することで、原型パターン及び導通パターンからそれぞれ櫛歯電極及び配線パターンが形成されることを特徴とする。
【0015】
第3の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、配線パターンを形成するための特別な工程を新たに追加しなくても、残りの金属膜を除去すれば、これと同時に所望の配線パターンを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線パッドの厚さを均一にして形成することができるとともに、併せて櫛歯電極などの焦電破壊を防止することができる。このため、良好な共振特性の表面弾性波素子を安定して製造することができ、製品の品質や製造効率の向上に大きく寄与する

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。表面弾性波素子の製造方法について説明する前に、この製造方法により製造された表面弾性波素子の構成について説明する。
図1は、一実施形態の表面弾性波素子の製造方法により製造された表面弾性波素子11を簡略化して図示した構成例を示す平面図である。この表面弾性波素子11は表面弾性波フィルタに内蔵される素子であり、いわゆる共振器として用いられるものである。表面弾性波素子11は、その圧電基板12上に反射器19、電極部17,18及び配線パターン99aが形成されている。圧電基板12は、例えばLT(LiTaO)又はLN(LiNbO)材質とする基板である。
【0018】
電極部17は、櫛歯電極13及び配線パッド15を有し、電極部18は、櫛歯電極14及び配線パッド16を有する。櫛歯電極13は、基部13b及び、この基部13bから圧電基板12の表面に沿って櫛歯状に延びる各櫛歯部13aを有する。櫛歯電極14は、櫛歯電極13とほぼ同様の構成であり、基部14b及び、この基部14bから圧電基板12の表面に沿って櫛歯状に延びる各櫛歯部14aを有する。これら櫛歯部13aと櫛歯部14aとは、一定の間隔を持って互いに交互に位置するように配列されている。
【0019】
配線パッド15,16は、銅(Cu)などを材質とする電極であり、その表面にはニッケル(Ni)及び金(Au)の薄膜が形成されている。配線パッド15,16は、各々表面弾性波素子11を外部の回路(図示せず)と接続するための配線パッドである。この外部の回路は、配線パッド15,16のいずれかに高周波信号を入力するための回路である。なお、以下の説明では、この高周波信号を「高周波入力信号」と呼称する。これら配線パッド15,16は、その製造過程において電解めっきにより形成される。配線パターン99aは、圧電基板12の表面に形成された導電性を有するいわゆる外周パターンと呼ばれる配線であり、例えば胴(Cu)を材質としている。
【0020】
反射器19は、細長い長方形状の電極が表面弾性波伝搬方向に沿って垂直となるように、複数本配列した構成となっている。なお、ここでいう表面弾性波伝搬方向とは、表面弾性波が伝搬する主要な方向を意味している。反射器19は、櫛歯電極14などから圧電基板12の表面を伝搬してくる表面弾性波を反射して、この表面弾性波のエネルギーが外部に逃げるのを抑える機能を有する。
【0021】
表面弾性波素子11の概要は以上のような構成であり、次に図1を参照しつつ表面弾性波素子11の動作例について簡単に説明する。 配線パッド16には、図示しない外部の回路からの高周波入力信号が配線パターン99aを経由して供給されている。配線パッド16は櫛歯電極14に接続されており、この櫛歯電極14には、この配線パッド16を経由してこの高周波入力信号が供給されている。
【0022】
櫛歯電極14に高周波入力信号が供給されると、この櫛歯電極14を構成する櫛歯部14aは、この高周波入力信号による電界によって逆圧電効果を生じさせ、圧電基板12の表面に変位を生じさせる。すると、この圧電基板12上には表面弾性波が生じ、主として表面弾性波伝搬方向に沿って伝搬する。このとき反射器19は、伝搬してくる表面弾性波を反射し、表面弾性波のエネルギー損失を防止している。
【0023】
表面弾性波は櫛歯部14aと対をなす櫛歯部13aに伝達され、この櫛歯部13aは、伝達された表面弾性波による圧電基板12の表面の変位に基づく圧電効果によって、その変位に応じた特定帯域の周波数信号(以下「特定帯域周波数信号」と呼称する)を検出することができる。この特定帯域周波数信号は、基部13bを経由して櫛歯電極13に接続された配線パッド15から取り出すことができる。
【0024】
図2は、表面弾性波素子11の製造方法の手順例を示すフローチャートであり、図3〜図8は、それぞれ表面弾性波素子11を製造する様子の一例を示す断面図(図1中A−A’断面)である。なお、図2に示す表面弾性波素子11の製造方法の様子では、本発明に関係する部分を主として詳細に図示している。
【0025】
<金属膜形成工程> まず、図2のステップS1では、圧電基板12の全面に、金属膜(後述する金属膜21に相当)を成膜する。具体的には、ステップS1では、この金属膜として、数nmの薄いCr膜を形成した後、さらに薄いCr膜を形成する。さらにステップS1では、その上層に、数十〜数百nmの厚いCuAg膜を形成してから、数nmの薄いTiN膜を形成し、その後に更に薄いCr膜を形成することで、層状の金属膜21を形成している。
【0026】
<エッチング工程> 次に図2のステップS2では、先の金属膜形成工程で形成された金属膜をエッチングすることにより、図3に示すように圧電基板12上に残った金属膜21の一部によって櫛歯電極13や櫛歯電極14、反射器となる部分の原型パターン(主に櫛歯部13a,櫛歯部14aの周囲を抜いたパターン)を形成している。なお、本実施形態では、主として櫛歯電極13,14を例示して説明するため、図3〜図13において反射器の図示を省略するとともに反射器の説明を一部省略している。
【0027】
またステップS2では、このようなエッチング後、図3に示すように、金属膜21のうちこれら櫛歯電極13,14(及び反射器)となる部分以外の部分が、配線パッド16として形成される部分とともに補助パターン99として残存している。この補助パターン99は、後で形成される配線パターン(上記配線パターン99aに相当)とともに、金属膜21の一部がエッチングにより残存したパターン(以下「導通パターン」と呼称する)を構成している。
【0028】
この状態においては、櫛歯電極13,14(及び図示しない反射器)は、図示しない箇所で、配線パターン99a及び補助パターン99が一体化された導通パターン(金属膜21の一部)と電気的に接続された状態となっている。ここで、図4においてSiO膜23の上層側に図示した櫛歯電極13,14、配線パッド16及び補助パターン99の位置は、各々、図1に示す櫛歯電極13,14、配線パッド16及び補助パターン99が形成される予定の位置を示している。
【0029】
<SiO形成工程> 次に図2のステップS3では、図4に示すように、これら形成された櫛歯電極13,14及び補助パターン99を覆うように、圧電基板12の全面に、例えば0.4〜1.0μmの厚さでSiO膜23を形成する。櫛歯電極13,14上に形成されたSiO膜23は、伝搬される表面弾性波の励振状態に対して外部からの影響を低減するための保護機能を有している。
【0030】
<第1レジスト形成工程> 次に図2のステップS4では、図5に示すように、圧電基板12上に形成されたSiO膜23のうち、配線パッド(上記配線パッド16)を形成しない領域(以下「電極非形成領域」と呼称する)23a上に、レジスト25(第1のレジスト)を部分的に形成している。具体的には、このステップS4では、まず、圧電基板12上に形成されたSiO膜23の全面にわたり、レジスト25を形成する。次にこのステップS4では、配線パッド(上記配線パッド16)を形成すべき位置(以下「電極形成領域」と呼称する)23bにドライエッチングを行い、レジスト25に開口部25aを形成する。このとき図示の例では、レジスト25が櫛歯電極13,14(及び図示しない反射器)の上層及び補助パターン99の上層に形成されている。
【0031】
<SiO膜除去工程> 次に図2のステップS5では、図6に示すように、圧電基板12上に形成されたSiO膜23のうち、配線パッド(上記配線パッド16)を形成すべき領域に相当する部分を除去することで、露出した金属膜21の一部(配線パターン99a)の表面である電極形成領域21bを形成している。
【0032】
<配線電極形成工程及び第1レジスト剥離工程> 次に図2のステップS6では、電解めっきを用いて、図7に示すようにその電極形成領域(金属膜21の一部)21b上に、例えば銅(Cu)を材質とする配線パッド16(配線電極)を形成する。このように電解めっきを用いて配線パッド16を形成すると、この配線パッド16は、断面積が大きく、シート抵抗(表面抵抗)が低くなる。さらに、このように配線パッド16が形成された後、図8に示すようにレジスト25が剥離される。この状態では、配線パッド16がそのまま露出した状態となっている。そして、図9に示すように配線パッド16の表面には、例えばニッケル(Ni)層16a及び金(Au)層16bのめっきが施される。ニッケル層16aは銅(Cu)の酸化防止及び拡散防止に有効である。
【0033】
<第2レジスト形成工程> 次に図2のステップS7では、櫛歯電極13,14(及び図示しない反射器)の原型パターン上の領域にレジスト27(第2のレジスト)を形成する。具体的にはステップS7では、まず、図10に示すように櫛歯電極13の原型パターンを覆うようにレジスト27を成膜する。さらにステップS7では、図11に示すようにレジスト27の一部をミリングし、SiO膜23に到達する開口部27aを形成する。このとき開口部27aの底部には、上記SiO膜23の一部が露出することとなる。この開口部27aは、補助パターン99のうちエッチング後に残して上記配線パターン99aとするべき部分である。
【0034】
<膜除去工程及び第2レジスト剥離工程> 次に図2のステップS7では、エッチングによって、図12に示すように配線パターン(上記配線パターン99a)とすべき部分、櫛歯電極13,14及び図示しない反射器以外の領域に形成されているSiO膜23を除去するとともに、併せて導通パターンのうちの補助パターン99を除去している。この状態では、開口部27aの底部に圧電基板12の表面の一部が露出していることになる。そして、図13に示すようにレジスト27が全て除去される。この後、必要に応じて圧電基板12の背面を研磨し、圧電基板12をダイシングすることで表面弾性波素子11が得られる。ダイシング時に、ダイシングラインに沿って形成されている補助パターン99は取り除かれる。
【0035】
本実施形態では、エッチング工程において圧電基板12上に櫛歯電極13,14及び反射器の原型パターンを形成した後にも、この原型パターンが補助パターン99を含む導通パターンによって導通した状態となっている。
【0036】
これら櫛歯電極13,14や反射器等の原型パターンと導通パターン(金属膜21の一部)との導通状態は、その後、SiO膜形成工程及びレジスト形成工程を経て、少なくとも配線電極形成工程に至るまで継続している。このように配線電極形成工程に至るまで、櫛歯電極13,14や反射器等が金属膜21の一部である導通パターンと電気的に接続されていると、この配線電極形成工程では、電解めっきを行う際に、圧電基板12上のいずれの部分の配線パターン99aにおいても電流密度が均一となる。
【0037】
このため配線パターン99a上には、そのいずれの部分においても、電解めっきによって均一な厚さの配線パッド16を形成することができる。このように配線パターン99aのいずれの部分においても、均一な厚さの配線パッド16を形成することができることから、配線パッド16は、配線パターン99aのいずれの箇所に形成されていても、配線パターン99aとの抵抗が均一となる。このような配線パッド16を有する表面弾性波素子11は、その共振特性が良好なものとなる。
【0038】
ここで、一般的な表面弾性波素子の製造方法においては、各工程において熱を加えることがある。この場合、加熱の際に圧電基板12の表面に電荷が蓄積し、圧電基板12に形成した微細な櫛歯電極等が、その蓄積した電荷によっていわゆる焦電破壊を生ずるおそれがあることが知られている。しかしながら、本実施形態では、少なくとも配線電極形成工程に至るまで、櫛歯電極13,14や反射器19等が補助パターン99(金属膜21の一部)を含む導通パターンに電気的に接続されているため、櫛歯電極13,14等だけに電荷が集中することなく、補助パターン99を含む導通パターンにまで電荷が分散することになる。このため、この表面弾性波素子11の製造方法の各工程においては、加熱を伴っても櫛歯電極13,14や反射器等に焦電破壊が生じることがない。
【0039】
また本実施形態では、膜除去工程及び第2レジスト剥離工程は、圧電基板12に対する加熱を伴う後工程よりも後に実行して
もよい。なお、ここでいう加熱を伴う後工程としては、パッド電極16の形成後に行われるアニール工程を例示することができる。このようにすると、本実施形態では、膜除去工程が実行される前に、圧電基板12が加熱処理された場合でも、圧電基板12の表面に電荷が集中的に蓄積されることがなく、補助パターン99を含む導通パターンに電荷が分散するようになる。このため圧電基板12上に形成された櫛歯電極13,14などは、確実にいわゆる焦電破壊を生ずることがなくなる。
【0040】
また本実施形態では、膜除去工程では、SiO膜23とともにこの補助パターン99を除去した際に、同時に導通パターンの残り部分から配線パターン99aを形成している。このようにすると、本実施形態では、配線パターン99aを形成する特別な工程を新たに追加しなくても、配線パターン99aを一部に含む導通パターンから補助パターン99を部分的に除去すれば、圧電基板12上に所望の配線パターン99aを容易に形成することができる。
【0041】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】表面弾性波素子の製造方法によって製造された表面弾性波素子を簡素化して図示した構成例を示す平面図である。
【図2】表面弾性波素子の製造方法の手順例を示すフローチャートである。
【図3】エッチング工程で残った金属膜の一部によって櫛歯電極となる予定の部分(原型)が形成された様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図4】圧電基板全面にSiO膜を形成した様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図5】圧電基板上に形成されたSiO膜のうち、電極非形成領域上にレジストを部分的に形成した様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図6】形成されたSiO膜のうち、配線パッドを形成すべき領域に相当する部分を除去し、電極形成領域を形成している様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図7】電極形成領域上に配線パッドを形成した様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図8】配線パッドを形成した後、レジストが剥離された様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図9】配線パッドの表面に、めっきが施された様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図10】櫛歯電極などを覆うようにレジストを成膜した様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図11】成膜されたレジストの一部に、エッチングによって開口部を形成する様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図12】SiO膜、及び補助パターンを除去することによって、開口部の底部に圧電基板の表面が一部露出している様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【図13】成膜されたレジストが全て除去された様子を示す断面図(図1に示されるA−A’線に沿う断面図)である。
【符号の説明】
【0043】
11:表面弾性波素子 12:圧電基板 13:櫛歯電極 14:櫛歯電極 16:配線パッド(配線電極) 19:反射器 21:金属膜 21b:電極形成領域 23:SiO膜 23a:電極非形成領域 99:補助パターン 99a:配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、 前記圧電基板の表面上に形成され、前記圧電基板に生じる表面弾性波と電気信号とを相互に変換する機能を有した櫛歯電極と、 前記圧電基板の表面上に前記櫛歯電極に接続された状態で形成された配線パターンと、 前記配線パターンの電極形成領域に形成された入出力端としての配線電極とを有した状態で完成品となる表面弾性波素子の製造方法において、 圧電基板ウェハの全面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、 前記金属膜をエッチングすることにより、完成品の状態で前記櫛歯電極として利用されるべき原型パターンを形成するとともに、この原型パターンに導通させた状態で前記原型パターン以外の領域について前記金属膜を導通パターンとして残存させるエッチング工程と、 前記エッチング工程の後、前記金属膜が残存する状態で前記圧電基板ウェハの全領域にSiO膜を形成するSiO膜形成工程と、 前記SiO膜のうち、完成品の状態で前記配線パターンの電極形成領域に相当する部分の前記金属膜を覆う除去予定領域を残し、この除去予定領域以外の領域に第1のレジストを形成する第1レジスト形成工程と、 前記SiO膜のうち前記除去予定領域内の部分を除去することで前記金属膜の表面の一部を露出させ、この露出部分を前記電極形成領域として確保するSiO膜除去工程と、 前記SiO膜除去工程で確保された前記電極形成領域に電解めっきを用いて前記配線電極を形成する配線電極形成工程と、 前記配線電極形成工程の後に前記第1のレジストを剥離する第1レジスト剥離工程と、 前記第1レジスト剥離工程の後、完成品の状態で前記原型パターンのうち前記櫛歯電極として前記圧電基板ウェハ上に残存させるべき部分及び前記導通パターンのうち前記配線パターンに相当する部分の領域に第2のレジストを形成する第2レジスト形成工程と、 前記第2のレジストが形成された領域以外の領域に残存する前記SiO膜及び前記金属膜をそれぞれ除去する膜除去工程と、 前記第2のレジストを剥離する第2レジスト剥離工程とを有することを特徴とする表面弾性波素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面弾性波素子の製造方法において、 前記第2レジスト剥離工程及び前記膜除去工程は、前記配線電極形成工程の後に前記圧電基板に対する加熱を伴って実行される後工程よりも後に実行されることを特徴とする表面弾性波素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面弾性波素子の製造方法において、 前記膜除去工程では、前記SiO膜とともに前記金属膜を除去することで、前記原型パターン及び前記導通パターンからそれぞれ前記櫛歯電極及び前記配線パターンが形成されることを特徴とする表面弾性波素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−325034(P2007−325034A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153971(P2006−153971)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】