説明

表面形状認識用センサおよびその製造方法

【課題】本発明の目的は、優れた耐久性、優れた認識精度および安定した認識性能を有する表面形状認識用センサの製造工程を簡略化し、低コスト化すること。
【解決手段】認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する本発明の表面形状認識用センサ1において、容量センサ電極5と、該容量センサ電極5を覆う容量膜2と、該容量膜2を覆う保護膜3と、該容量膜2に形成されたスルーホール7と、その開口部辺縁とを覆うように形成され、接地された電極パターンとしてのグランド電極4とを備え、該グランド電極4は、該保護膜3における認識対象物の接触面において露出し、該容量膜2の該グランド電極4に覆われた部分は、該容量膜2の該グランド電極4に覆われていない部分よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されている。このため、優れた耐久性、優れた認識精度および安定した認識性能を有する表面形状認識用センサの製造工程の簡略化および低コスト化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状認識用センサおよびその製造方法に関するものであり、より詳細には、人間の指紋や動物の鼻紋などの微細な凹凸を感知する表面形状認識用センサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の進展と社会環境の変化に伴い、セキュリティ技術に対する関心が高まっている。例えば、電子マネーなどのシステム構築に必要となる本人認識技術が、大きく注目を集めている。また、クレジットカードの不正利用を防止するための認識技術についても研究開発が活発に行われており、これまでに多くの技術が提案されている。
【0003】
本人であることの認識手段としては、指紋や声紋などを用いる手段があるが、指紋を用いる手段については、特に多くの技術が開発されている。指紋の認識に用いるためには、指紋の形状をデータとして読み取り、記憶されているデータと比較する必要がある。指紋の形状をデータとして読み取る方式には、レンズや照明などの光学系を備えた光学式や、感圧シートなどを用いた圧力式、半導体基板の上にセンサを配置した半導体式などがある。これらの内、小型化が容易で汎用性を有するのは、半導体式である。
【0004】
半導体式のセンサとしては、LSI(large−scale integration)製造技術を用いた静電容量式の表面形状認識用センサがある。この表面形状認識用センサは、センサ素子をLSIチップ上に2次元的に配列した構造を備えており、このセンサ素子の帰還静電容量を検出することにより、指紋の表面などが有する微細な凹凸パターンを検出する。
【0005】
静電容量式の表面形状認識用センサにより指紋を認識する場合、指が電極としての機能を果たす。このため、指がセンサに接触する時に発生する静電気によってLSIが静電破壊され易いという問題がある。この問題を解決することができる表面形状認識用センサとして、センサ電極を囲むよう、チップ表面に格子状のグランド電極を形成した構造を有する表面形状認識用センサの製造方法が特許文献1に開示されている。
【0006】
また、指をセンサ面に接触させるため、皮脂などが付着することや、指紋の痕が残ることによりセンサ面が汚れる。このセンサ面の汚れが原因となり、センシングの際のノイズとなり認識性能を低下させるという問題がある。この問題を解決する方法として、疎水性、撥油性を有するポリイミド膜をセンサ面の保護膜として形成することが提案されている。
【0007】
これ以外にも、センサ表面に段差がある場合、指に付着した微細な異物がセンサ表面の段差に付着し易くなる。上述のようにセンサ表面への異物の付着は認識性能を低下させるため、センサ表面は平坦に形成されていることが好ましい。特許文献2には、センサ表面を平坦に形成した構造を有する表面形状認識センサの製造方法が開示されている。
【0008】
LSIの静電破壊を回避するグランド電極を備える従来の静電容量式の表面形状認識用センサの製造方法について図4(a)〜(e)を参照して以下に説明する。
【0009】
従来の静電容量式の表面形状認識用センサは、図4(a)に示すように、まず、半導体基板101上に、最上層が絶縁膜103で覆われた多層配線層102が形成される。ここで、多層配線層102は、複数の素子およびこれら複数の素子を接続する複数の配線などから形成され、センサ回路などを含むLSIを備えている。
【0010】
上記多層配線層102の最上層に形成された絶縁膜103上に、上記センサ回路に接続された配線104が形成される。
【0011】
次に、絶縁膜103および配線104を覆うように層間絶縁膜105が形成される。また、上記層間絶縁膜105には、公知のパターニング方法を用いてスルーホールが形成される。
【0012】
ここで、上記スルーホールは、上記配線104上の所望の箇所に到達するように形成される。
【0013】
上記スルーホールにタングステン(W)からなるWプラグ106などの導電体を埋め込むことにより上記配線層と接続させる。この後、層間絶縁膜105上に複合膜からなる金属膜がスパッタ法を用いて形成される。
【0014】
上記金属膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることによりパターニングし、センサ電極107、接続電極108が形成される。
【0015】
図4(b)に示すように、上記センサ電極107、上記接続電極108および層間絶縁膜105を覆うように容量膜109が形成される。上記容量膜109は、プラズマCVD(chemical vapor deposition)法を用い、厚さが0.4〜1.2μm程度となるように形成される。
【0016】
ここで、上記容量膜109には、容量膜109を貫通して接続電極108の所望の箇所に到達するスルーホール110が形成される。
【0017】
上記スルーホール110を含む容量膜109に対して、スパッタ法を用いて2層からなる金属膜111を形成する。なお、金属膜111は、下層の厚さが0.25μm、上層の厚さが0.05μm程度となるよう形成される。
【0018】
図4(c)に示すように、上記金属膜111の形成後、グランド電極が形成されることを所望する領域を除く上記金属膜の領域に対して、レジストパターン114は、フォトリソグラフィ技術を用いて形成される。ここで、レジストパターン114は、厚さが5μm程度となるように形成される。
【0019】
次いで、レジストパターン114が形成されていない上記金属膜111の表面に、電解メッキ法を用いてAuまたはCuを3μm程度成長させることにより電極柱201を形成させる。
ここで、電極柱201を3μm程度の高さに形成するのは、十分な厚さの保護膜を形成し、かつ電極柱を含むセンサ表面を平坦化するためである。
なお、電極柱201は、無電解メッキ法を用いて金や銅を成長することにより形成してもよい。レジストパターン114は、電極柱201の形成後、除去される。
【0020】
図4(d)に示すように、電極柱201をマスクとして用い、金属膜111の選択的なエッチング行う。これにより、金属膜111のエッチング受けなかった部分115と、電極柱201とからなるグランド電極を、容量膜109上に形成することができる。
【0021】
なお、グランド電極(電極柱201)は、上記配線104を介して接地されている。このため、センサ表面への指の接触などにより発生する静電気を上記接地に逃がすことができる。
【0022】
図4(e)に示すように、上記グランド電極の側部が露出しないように、ポリイミドからなる保護膜112が容量膜109上に形成される。保護膜112の形成は以下のように行われる。
(1)容量膜109上にポリイミド材料を塗布してポリイミド膜を形成する。
このとき、ポリイミド膜は、電極柱201および容量膜109を覆い、かつ表面が平坦になるよう十分な厚さを有するように形成される。
(2)(1)において形成したポリイミド膜を、310℃程度に加熱して熱硬化させる。
(3)硬化したポリイミド膜をグランド電極(電極注201)の上面が露出するまでエッチングすることにより平坦な表面を有する保護膜112が形成することができる。
【0023】
ここで、電極柱201が3μm程度の厚さに形成されているので、エッチバック量のばらつきにより保護膜112をエッチバックし過ぎた場合でも、剥がれなどの劣化を起こすほど薄くはならない。
【0024】
以上の方法を用いることより、LSIの静電破壊を防止するグランド電極を備える従来の静電容量式の表面形状認識用センサを製造することができる。
【特許文献1】特開2000−230801号公報(平成12年8月22日公開)
【特許文献2】特開2003−269907号公報(平成15年9月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、センサ表面への異物の付着を解決する手段について何ら考慮されていない。また、特許文献2に記載の方法および図を用いて説明した上述の表面形状認識用センサの製造方法を用いた場合、LSIの静電破壊を防止するためのグランド電極として、電極柱を形成する必要がある。電極柱を形成しない場合、十分な厚さの保護膜を形成することできず、結果として、センサ表面を平坦化および保護することにより表面形状認識用センサの耐久性を高めることができなくなる。また、エッチバック量の制御が困難となり、生産歩留まりを低下させる原因ともなる。
【0026】
つまり、従来の製造方法は、製造工程数が多く、かつ製造コストが高いという問題がある。静電容量式の表面形状認識用センサが備えるシリコン基板が高価であるため、製造コストが高いことは、特に表面形状認識用センサを携帯電話などに搭載する場合、致命的な問題となる。
【0027】
また、センサの認識精度を向上させるためには、容量膜および保護膜は薄く形成される方が好ましい。しかし、上述の製造方法では、センサ表面の平坦化は、電極柱の高さの分だけ、厚い保護膜を形成する必要がある。従って、センサの感度の向上と、センサ表面の平坦化とは、相反する課題となっている。
【0028】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、優れた耐久性、優れた認識精度および安定した認識性能を有する表面形状認識用センサの製造工程を簡略化し、かつ低コスト化することである。また、本発明の他の目的として、耐久性および認識精度に優れ、かつ安定した認識性能を有する表面形状認識用センサの製造工程の簡略化および低コスト化を実現する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の課題を解決するために、本発明の表面形状認識用センサは、
認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する表面形状認識用センサであって、容量センサ電極と、該容量センサ電極を覆う容量膜と、該容量膜を覆う保護膜と、該容量膜に形成されたスルーホールと、その開口部辺縁とを覆うように形成され、接地された電極パターンとを備え、該電極パターンは、該保護膜における認識対象物の接触面において露出し、該容量膜の該電極パターンに覆われた部分は、該容量膜の該電極パターンに覆われていない部分よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されていることを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、本発明の表面形状認識用センサは、その認識対象物が接触する表面側から順に保護膜、容量膜が形成されており、容量センサ電極は容量膜に覆われた構造を有している。また、電極パターンは、容量膜および保護膜を貫通し、その一部をセンサ表面上に露出させている。これにより、センサ表面は、保護膜と、電極パターンの一部とから構成される。
【0031】
また、「電極パターンが保護膜における認識対象物の接触面において露出する」とは、電極パターンの一部が、少なくとも保護膜と同一平面上に存在するか、保護膜よりやや突出した状態を含んでいる。つまり、センサ表面はほぼ平坦な状態であるということである。
【0032】
センサ表面が平坦になるよう保護膜を形成することにより、認識対象物がセンサ表面の凹凸に引っかかることによりセンサ表面の特定の箇所に応力が加わり、センサ表面を破壊されることを回避することができる。また、センサ表面が有する凹凸が少なくなるため、センサ表面に対する異物の付着が起こりにくい。よって、異物の付着によるノイズの発生に伴う認識性能の低下が起こりにくくなる。
【0033】
また、センサ表面の大部分は、保護膜から構成されている。保護膜は、例えば、疎水性および撥油性を有するポリイミド系樹脂などから形成することにより、認識対象物である指の皮脂などがセンサ表面に付着することを抑制できる。よって、ノイズの発生を抑制することによりセンサの認識性能を、長期間に渡って維持することができる。
【0034】
ここで、容量膜の電極パターンに覆われる部分(保護膜を形成する部分)は、該容量膜の該電極パターンに覆われていない部分よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されている。言い換えると、容量膜の該電極パターンに覆われていない部分とは、保護膜を形成する部分を意味しているから、その保護膜が形成される容量膜の部分は、他の部分よりも0.1μm以上薄く(低く)なっているということである。
【0035】
容量膜の内、保護膜を形成する部分を0.1μm以上薄くするためには、例えば、電極パターンの形成後に電極パターンをマスクとして用い、容量膜をエッチングすればよい。容量膜のエッチング量を調節することで、保護膜を所望の厚さに形成することできるため、センサ表面の平坦化および保護膜の劣化の防止を容易に達成することができる。
また、保護膜を所望の厚さに形成することできるため、エッチングによりセンサ表面を平坦化するとき、エッチング量にばらつきが生じても容量膜が露出するおそれがない。
さらに、所望の厚さを有する保護膜を形成することが容易であり、かつ容量膜の厚さを調節することができるため、容量センサ電極と、センサ表面との距離を容易に調節することができる。
【0036】
ここで、表面形状認識センサの動作について説明する。センサ表面(保護膜および電極パターン)に認識対象物(例えば、指など)が接触した場合、容量膜の厚さ、保護膜の厚さ、およびセンサ表面と、指との距離に応じてそれぞれ容量が形成される。上記容量のそれぞれは、容量センサ電極によって検出される。(1)センサ表面に対して認識対象物の凸部が接触した場合と、(2)センサ表面を認識対象物の凹部が覆う場合とでは、センサ電極から認識対象物表面までの距離が異なる。このため、(1)と、(2)とにおいて形成される容量が異なる。
【0037】
また、表面形状認識センサは、通常、複数の容量センサ電極を備えており、それぞれの容量センサ電極が検出する容量は、(1)の直下にある容量センサ電極と、(2)の直下にある容量センサ電極とでは検出される容量が異なる。例えば、(1)の直下にある容量センサ電極に検出された容量は、回路内においてON信号に変換され、(2)の直下にある容量センサ電極に検出された容量は、回路内においてOFF信号に変換される。複数の上記ON信号および上記OFF信号に基づき、認識対象物の表面が有する凹凸の形状を描画することができる。
【0038】
よって、容量膜および保護膜の厚さを調節できるということは、認識感度を高めることも容易であるといえる。
【0039】
また、認識対象物と、センサ表面とが接触する際、静電気が発生することがある。この静電気により表面形状認識用センサに備えられているLSIが破壊されることがある。しかし、電極パターンは、配線などを介して接地されているので、静電気を逃がすことができ、LSIの破壊を防止することができる。
【0040】
以上のように、電極パターンが、容量膜および保護膜を貫通し、その一部がセンサ表面に露出している構造を有しており、かつ容量膜の該電極パターンに覆われる部分が、容量膜の電極パターンに覆われていない部分よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されているため、耐久性および認識精度に優れ、かつ安定した認識性能を有する表面形状認識用センサを製造することができる。
【0041】
さらに、従来の表面形状認識用センサと比較して、LSIの静電破壊防止用の電極は、電極パターンから構成されており、電極パターン上にAuまたはCuなどから構成される電極柱を備える必要がない。
【0042】
よって、耐久性および認識精度に優れ、かつ安定した認識性能を有する表面形状認識用センサの製造工程の簡略化および製造コストの削減を実現できるという効果を奏する。
【0043】
また、本発明の表面形状認識用センサにおいて、
上記電極パターンの側壁部に接する上記保護膜の膜厚は、上記電極パターンの膜厚よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されていることが好ましい。
【0044】
前述したように、保護膜が形成される容量膜の部分は、電極パターンに覆われた容量膜の部分よりも0.1μm以上薄く(低く)なっているから、上記の構成のとおり、電極パターンの側壁部に接する上記保護膜の膜厚を、上記電極パターンの膜厚よりも0.1μm以上厚くなるよう形成することができる。
【0045】
これにより、保護膜の膜厚を十分に確保できるので、エッチングによりセンサ表面を平坦化するとき、エッチング量にばらつきが生じても、電極パターンの側壁部が、保護膜の表面から突出する状態を抑制することができ、保護膜と、電極パターンとの高低差を小さくすることができる。つまり、センサ表面の平坦化が容易になる。
【0046】
このため、従って、センサ表面への異物などの付着を抑制することができ、局所的に応力が加わることを回避することができる。
【0047】
よって、表面形状認識用センサの耐久性および認識性能の安定性をさらに高めることができるという効果を奏する。
【0048】
また、本発明の表面形状認識用において、
上記電極パターンは、上記スルーホール内にて、当該表面形状認識用センサの表面に開口する開口部を有し、該開口部が、上記保護膜と同一の材料により充填されていることが好ましい。
【0049】
上記構成により、電極パターンが溝形状などの開口部を有する場合であっても、その開口部が保護膜と同一の材料により充填されているので、センサ表面の平坦化をより高度に達成することができる。
【0050】
従って、センサ表面へ局所的に応力が加わることを回避することができ、かつ異物などの付着を抑制することができる。
【0051】
よって、表面形状認識用センサの耐久性および認識性能の安定性をさらに高めることができるという効果を奏する。
【0052】
また、本発明の表面形状認識用センサにおいて、
上記容量膜は、0.3μm〜1.0μmの厚さを有することが好ましい。
【0053】
容量膜の厚さが、0.3μmを下回る場合、センサ内部(LSI)への水分の侵入などを十分に防ぐことができず、センサの耐久性を損ない易い。
【0054】
一方、容量膜の厚さが1.0μmを上回る場合、上述のように容量の大きさは電極と絶縁物との距離に反比例するため、認識精度を低下させ、正確に認識を行うことができない恐れがある。
【0055】
また、容量膜の厚さが1.0μmを上回る場合、容量膜(プラズマCVD法などにより形成した窒素化シリコン膜など)内部における応力が増大するため、容量膜に覆われたメタル配線に対しても応力(膜ストレス)が加わる。この結果、ボイド(大きな間隙)がメタル配線に生じ易くなるため、メタル配線の信頼性(耐久性)が低下する恐れがある。
【0056】
よって、上記構成を有することにより、優れた耐久性および認識精度を有する表面形状認識用センサを実現できるという効果を奏する。
【0057】
また、本発明の表面形状認識用センサにおいて、
上記保護膜は、0.3μm〜1.0μmの厚さを有することが好ましい。
【0058】
保護膜の厚さが0.3μmを下回る場合、センサ表面を構成する保護膜は、認識対象物との接触時に生じる機械的ストレスを受けることにより、剥がれやすくなる恐れがある。このため、保護膜としての機能を損ない、センサの耐久性を低下させる。
【0059】
一方、保護膜の厚さが1.0μmを上回る場合、容量の大きさは電極と絶縁物との距離に反比例するので、認識対象物がセンサ表面に接触したときに形成される保護膜の容量が小さくなる。このため、認識精度を低下させ、正確に認識を行うことができない恐れがある。
【0060】
よって、上記構成を有することにより、優れた耐久性および認識精度を有する表面形状認識用センサを実現できるという効果を奏する。
【0061】
また、本発明の表面形状認識用センサにおいて、
上記電極パターンは、0.15μm〜0.4μmの厚さを有することが好ましい。
【0062】
電極パターンの厚さが0.15μmを下回る場合、電極パターンの厚さの範囲内に保護膜の表面を位置させることが困難になる。
【0063】
例えば、保護膜をエッチングすることにより、電極パターンを露出させるとする。このとき、保護膜がエッチングされる量には、ばらつきが生じる。このばらつきにより、保護膜が予定していた厚さよりも過剰にエッチングされる可能性があり、電極パターンを露出させ過ぎてしまうおそれがある。
【0064】
これにより、センサ表面は、電極パターンが極端に突出した状態となり、認識対象物の接触時に電極パターンへ応力が集中する、またセンサ表面に汚れが付着しやすくなる。
【0065】
また、電極パターンと、容量膜との境界が露出してしまい、電極パターンが側面から加わる力に弱くなり、剥がれの原因となる。
【0066】
一方、電極パターンの厚さが、0.4μmを上回る場合、センサ表面の平坦化には、保護膜を極端に厚く形成する必要が生じる。
【0067】
ここで、センサ表面へ認識対象物が接触すると、上述のように保護膜には容量が形成される。この容量の大きさは、厚さに反比例する。つまり、保護膜が厚ければ厚いほど形成される容量は小さくなる。また、静電容量式の表面形状認識用センサは、認識対象物が接触したときに形成される容量の大きさの変化を検出することにより、認識対象物の表面の凹凸を認識する。従って、保護膜が厚いほど認識精度を低下させる。
【0068】
また、電極パターンを形成するための材料コストの増大に繋がること、金属膜をパターニングすることにより電極パターンを形成する場合、十分にパターニングされず金属膜の一部が残ってしまう恐れがあるなど、不都合な点が多い。
【0069】
厚さが上記の範囲内に収まるよう電極パターンを形成することにより、センサ表面の局所的な応力の集中の回避、センサ表面への異物などの付着の抑制、および電極パターンと、容量膜との境界の保護を達成し、同時に認識対象物表面の形状の認識を正確に行うことができる。
【0070】
よって、優れた耐久性、優れた認識精度および安定した認識性能を有する表面形状認識用センサを実現することができるという効果を奏する。
【0071】
上記課題を解決するために、
認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する表面形状認識用センサの製造方法において、
容量センサ電極を覆う容量膜にスルーホールを形成し、該スルーホールと、その開口部辺縁とを覆うように、接地された電極パターンを形成する工程と、
上記電極パターンをマスクとして、上記容量膜を0.1μm〜0.6μmエッチバックした後に、該容量膜上に保護膜を堆積させる工程とを含むことを特徴とする。
【0072】
上記製造方法によれば、まず、スルーホールを有する容量膜上に形成された金属膜をエッチングすることなどの方法により電極パターンを形成する。このとき、金属膜上の所望の位置(例えば、金属膜上の容量膜に形成されたスルーホールと、その周囲とを覆う位置)にレジストパターンなどによりマスクを形成することで、所望の形状を有する電極パターンを形成することができる。
【0073】
この電極パターンをマスクとして用い、連続して容量膜のエッチングを行い、容量膜の厚さを0.1μm〜0.6μm減少させるエッチバックを行う。これにより、保護膜をエッチングして表面形状認識用センサの表面を平坦化する場合においても、十分に機能を果たすような厚さ(認識対象物との接触時に生じる機械的ストレスにより剥がれが起こらないために必要な厚さ)に形成することができる。保護膜の機能については、上述の通りである。
【0074】
容量膜のエッチングを行った後、電極パターンおよび容量膜上に保護膜を堆積させる。ここで、保護膜を十分な厚さに堆積させているので、容量センサ電極、電極パターンおよび容量膜などが形成されたことによる生じた凹凸は吸収され、表面が平坦化されている。
【0075】
つまり、上述の製造工程を経ることにより、耐久性および認識精度に優れ、かつ安定した認識性能を有する表面形状認識用センサを製造することができる。
【0076】
さらに、従来の表面形状認識用センサと比較して、LSIの静電破壊防止用の電極は、電極パターンから構成されていればよく、電極パターン上にAuまたはCuなどから構成される電極柱を備える必要がない。
【0077】
よって、上述の表面形状認識用センサと同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0078】
以上のように、本発明の表面形状認識用センサは、認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する表面形状認識用センサであって、容量センサ電極と、該容量センサ電極を覆う容量膜と、該容量膜を覆う保護膜と、該容量膜に形成されたスルーホールと、その開口部辺縁とを覆うように形成され、接地された電極パターンとを備え、該電極パターンは、該保護膜における認識対象物の接触面において露出し、該容量膜の該電極パターンに覆われた部分は、該容量膜の該電極パターンに覆われていない部分よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されているため、耐久性および認識精度に優れ、かつ安定した認識性能を有する表面形状認識用センサの製造工程の簡略化および製造コストの削減を実現できるという効果を奏する。
【0079】
また、本発明の表面形状認識用センサの製造方法は、認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する表面形状認識用センサの製造方法であって、容量センサ電極を覆う容量膜にスルーホールを形成し、該スルーホールと、その開口部辺縁とを覆うように、接地された電極パターンを形成する工程と、上記電極パターンをマスクとして、上記容量膜を0.1μm〜0.6μmエッチバックした後に、該容量膜上に保護膜を堆積させる工程と、を含むため、上述の表面形状認識用センサと同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
本発明に係る表面形状認識用センサの構造について、以下の実施の形態1において説明する。また、本発明に係る表面形状認識用センサの製造方法について、後述の実施の形態2において説明する。
【0081】
なお、以下の実施の形態1および2において同一の部材および構成要素には、それぞれ、同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、本発明の表面形状認識用センサおよびその製造方法は、以下の実施の形態において説明されるものに限定されず、「特許請求の範囲」に記載した請求項の範囲内において適宜変更が可能である。
【0082】
〔実施の形態1〕
本発明に係る表面形状認識用センサ構造について図2、図1(a)および図1(b)を参照して以下に説明する。
【0083】
図2は、本実施の形態の表面形状認識用センサ1の平面図であり、図2に示すように本実施の形態の表面形状認識用センサ1は、等間隔に複数の容量センサ電極5が整列し、かつ複数の容量センサ電極5をそれぞれ取り囲むようにグランド電極4が格子状に形成されている。
【0084】
このため、認識対象物がセンサ表面に接触したとき、格子状に形成されたグランド電極4に確実に接触するため、認識対象物がセンサ表面に接触したときに発生する静電気を確実にグランド電極4を介して逃がすことができる。
【0085】
しかし、グランド電極4は、認識対象物の表面の凹凸を認識する際に発生する静電気を確実に逃がすことできるような形状に形成されていればよく、本実施の形態において示したようにグランド電極4は、格子状に形成されている必要はない。
【0086】
また、グランド電極4が有する溝およびグランド電極4が形成されていない部分には、グランド電極4が露出し、かつグランド電極4との高低差が少なくなるように、好ましくは高低差が無いように保護膜3が形成されている。この平坦性のため、センサ表面への認識対象物が接触する際の汚れの付着およびセンサ表面への局所的な応力の集中を抑制することができる。
【0087】
図1(a)は、図2に示す線分X−X’における断面図であり、本発明に係る表面形状認識用センサ1における、認識対象物の表面の凹凸を検出する最小単位の構造を示している。
【0088】
図1(a)に示すように、本実施の形態の表面形状認識用センサ1は、半導体基板17上に、多層配線層14が形成されている。多層配線層14は、最上層に形成された絶縁膜15と、電気的機能を有する層16とを含んでいる。電気的機能を有する層16には、例えば、MOSトランジスタなどの複数の素子およびこれらを接続する複数の配線などが形成されており、センサ回路などを含む集積回路が備えられている。また、電気的機能を有する層16の最下層には、半導体基板17と、集積回路とを絶縁するための絶縁層が形成されていてもよい。
【0089】
多層配線層14の絶縁膜15上には、上記集積回路に接続された複数の配線13が形成されている。上記複数の配線13を覆うように絶縁膜15上に層間絶縁膜12が形成されている。また、上記層間絶縁膜12には、複数の配線13のそれぞれが露出するようにスルーホールが形成される。これらのスルーホールのそれぞれに、例えば、タングステン(W)からなるWプラグ11などの導電体を埋設することにより、配線13と、層間絶縁膜12上に形成される構造とを接続することができる。
【0090】
上記層間絶縁膜12上には、スルーホールに埋設したWプラグ11のそれぞれを覆うように複数の金属膜が形成されている。上記複数の金属膜をパターニングすることにより容量センサ電極5および接続電極10が形成される。
【0091】
容量センサ電極5は、図示していないが、多層配線層14に備えられているセンサ回路と接続している。このため、認識対象物の接触時に上記容量センサ電極5により検出された容量は、センサ回路において、その容量の大きさに応じて認識対象物の凹凸を決定する信号に変換される。
【0092】
また、接続電極10は、Wプラグ11および配線13に接続されており、かつ、これも図示していないが、多層配線層14を介して接地され、同電位かつ接地電位になっている。一方で、接続電極10は、後述するセンサ表面を形成するグランド電極4と接続しているので、グランド電極4も同様に同電位かつ接地電位となっている。
【0093】
これにより、センサ表面に認識対象物が接触したときに発生する静電気を、グランド電極4から逃がすことができるため、該静電気による集積回路内の電気的機能の破壊から保護することができる。
【0094】
さらに、上記層間絶縁膜12上には、容量膜2が形成されている。上記容量膜2には、上記接続電極10が露出するようスルーホールが形成されている。上記容量膜2のスルーホールおよびその開口部周囲を覆うように金属膜から構成されるグランド電極4が形成されており、グランド電極4は、上記接続電極10と接続されている。なお、容量センサ電極5は、容量膜2に覆われている。
【0095】
ここで、上記容量膜2は、容量センサ電極5を覆う部分において、グランド電極4に覆われている部分よりも薄くなるように形成されている。これにより、後述するセンサ表面を保護するための保護膜3を、認識対象物との接触などの機械的ストレスによる劣化(剥がれなど)に耐え得る十分な厚さに形成することができる。また、保護膜3を十分厚く形成することができるため、容量センサ電極5などを形成することにより生じた表面の凹凸を吸収し、センサ表面を平坦化することができる。
【0096】
なお、上記容量膜2は、グランド電極4に覆われている部分(厚みW1)において、容量センサ電極5を覆う部分(厚みW2)よりも0.1μm〜0.6μm厚くなるように形成されていることが好ましい。
【0097】
(厚みW1)−(厚みW2)が0.1μmを下回る場合、保護膜3(特に、グランド電極4と接する部分)を十分厚く形成することができないため、センサ表面(保護膜および電極パターン)の平坦化が困難であること、認識対象物との接触により保護膜3が劣化しやすくなることなどの問題がある。また、(厚みW1)−(厚みW2)が0.6μmを上回る場合、容量膜2が薄くなり過ぎるため、LSIをカバーするための膜としての機能(センサ内部(LSI)への水分の侵入を防ぐこと)を損なうこと、保護膜3が厚くなり過ぎることによりセンサの認識性能が低下することなどの問題がある。
【0098】
さらに、上記容量膜2は、容量センサ電極5を覆う部分において、0.3μm〜1.0μmの厚さを有することが好ましい。
【0099】
容量センサ電極5を覆う部分における容量膜2の厚さが0.3μmを下回る場合、センサ内部(LSI)への水分の侵入を十分に防ぐことができない。
【0100】
一方、容量センサ電極5を覆う部分における容量膜2の厚さが1.0μmを上回る場合、容量膜2に形成される容量が小さくなり、センサの認識精度を低下させる。また、容量膜の厚さが1.0μmを上回る場合、容量膜内部における応力が増大するため、容量膜に覆われたメタル配線に対しても応力(膜ストレス)が加わる。この結果、ボイド(大きな間隙)がメタル配線に生じ易くなるため、メタル配線の信頼性(耐久性)が低下する恐れがある。
【0101】
上記容量膜2上には、上記グランド電極4が露出するように保護膜3が形成されている。つまり、センサ表面は、上記保護膜3および上記グランド電極4から構成されているということである。
【0102】
さらに、本実施の形態の表面形状認識用センサ1は、グランド電極として、接続電極と直に接続されているグランド電極4を備えるだけでよく、静電破壊を防止する構造を有する従来の表面形状認識用センサ1と比較して、製造工程を簡略化することができ、製造コストを削減することができる。
【0103】
ここで、保護膜3は、0.3μm〜1.0μmの厚さに形成されることが好ましい。
【0104】
保護膜3の厚さが0.3μmを下回る場合、センサ表面を構成する保護膜3は、認識対象物との接触時に生じる機械的ストレスを受けることにより、剥がれやすくなる恐れがある。このため、保護膜3としての機能を損ない、センサの耐久性を低下させる。
【0105】
一方、保護膜3の厚さが1.0μmを上回る場合、容量の大きさは電極と絶縁物との距離に反比例するので、認識対象物がセンサ表面に接触したときに形成される保護膜3の容量が小さくなる。このため、認識精度を低下させ、正確に認識を行うことができない恐れがある。
【0106】
よって、保護膜3を0.3μm〜1.0μmの厚さに形成することにより、優れた耐久性および認識精度を有する表面形状認識用センサ1を実現することができる。
【0107】
次に、グランド電極4の周囲を拡大した断面図である図1(b)を用いて、本実施の形態の表面形状認識用センサ1の構造をさらに詳細に説明する。
【0108】
図1(b)に示すように、グランド電極4は、保護膜3から露出している。ここで、保護膜3は、グランド電極4と近接する部分(W3)において、グランド電極4の厚さ(W4)より0.1μm以上厚くなるように形成されている。すなわち、W3は、0.3μm≦W3、かつW4+0.1μm≦W3の両方を満たす値をとり得る。また、上述したように上記容量膜2は、容量センサ電極5を覆う部分において、グランド電極4に覆われている部分よりも薄くなるように形成されている。
【0109】
これにより、保護膜3の表面を、矢印で示したグランド電極4の厚みW4の範囲内で形成することができるため、センサ表面を形成する保護膜3と、グランド電極4の高低差を小さくすることができる。従って、センサ表面へ局所的に応力が加わることを回避することができ、異物などの付着を抑制することができる。また、グランド電極4の上部側面4aを保護することができる。
【0110】
さらに、グランド電極4は、中央付近に溝を有しており、この溝は、保護膜3によって充填されている。よって、センサ表面(保護膜3およびグランド電極4)の凹凸を少なくすることができ、異物などの付着を抑制することができる。
【0111】
これ以外にも、図1(b)の矢印で示されているグランド電極4の厚さW4は、0.15μm〜0.4μmであることが好ましい。
【0112】
グランド電極4の厚さW4が、0.15μmを下回る場合、グランド電極4のセンサ表面と直交する面(上部側面4a)の少なくとも一部と、保護膜3とを接触させることが困難になる。
【0113】
例えば、保護膜3をエッチングすることにより、グランド電極4を露出させるとする。このとき、保護膜3がエッチングされる量には、ばらつきが生じる、このばらつきにより、保護膜3が予定していた厚さよりも過剰にエッチングされる可能性があり、下部側面4bが露出することにより容量膜2と、グランド電極4との境界が露出してしまうおそれがある。
【0114】
これにより、センサ表面は、グランド電極4が極端に突出した状態となり、認識対象物の接触時にグランド電極4へ応力が集中する、またはグランド電極4に汚れが付着しやすくなる。
【0115】
一方、グランド電極4の厚さが、0.4μmを上回る場合、センサ表面の平坦化には、保護膜3を極端に厚く形成する必要が生じる。
【0116】
ここで、センサ表面へ認識対象物が接触すると、上述のように保護膜3には容量が形成される。この容量の大きさは、厚さに反比例する。つまり、保護膜3が厚ければ厚いほど形成される容量は小さくなる。また、静電容量式の表面形状認識用センサ1は、認識対象物が接触したときに形成される容量の大きさの変化を検出することにより、認識対象物の表面の凹凸を認識する。従って、保護膜3が厚いほど認識精度を低下させる。
【0117】
また、グランド電極4の厚さが、0.4μmを上回る場合、グランド電極4を形成するための材料コストの増大に繋がること、金属膜をパターニングすることによりグランド電極4を形成する場合、十分にパターニングされず金属膜の一部が残ってしまう恐れがあるなど、不都合な点が多い。
【0118】
厚さが上記の範囲内に収まるようグランド電極4を形成することにより、センサ表面の局所的な応力の集中の回避、センサ表面への異物などの付着の抑制、およびグランド電極4のセンサ表面と直交する面の保護を達成し、同時に認識対象物表面の形状の認識を正確に行うことができる。
【0119】
ここまでにおいて、本発明に係る表面形状認識用センサ1の構造について説明を行った。以下の記載においては、本発明の表面形状認識用センサ1に好適に用い得る各部材について説明する。
【0120】
本発明に好適に用い得る半導体基板17としては、基板上にMOSトランジスタなどの複数の素子およびこれらを接続する複数の配線などが形成されており、センサ回路などを含む集積回路することができるものであればよく、従来公知の材料を用いることができる。例えば、半導体基板17の材料としてシリコンを用いた場合、基板を酸化させることにより容易に均一な絶縁膜を形成することができる。
【0121】
本発明の表面形状認識用センサ1の多層配線層14は、上述のように絶縁層15および電気的機能を有する層16から構成されていればよく、従来公知の様々な材料または方法により形成することができる。また、多層配線層14の内、電気的機能を有する層16は、半導体基板17と接しており、絶縁層15は、16とは反対側の最も外側の層を構成していればよい。
【0122】
本発明の表面形状認識用センサ1の複数の配線13は、上記絶縁膜15上にアルミニウム膜を形成し、公知の技術(例えば、フォトリソグラフィおよびエッチングの組み合わせなど)によりパターニングすることにより形成することができる。これ以外にも、多層配線層14が有する集積回路と接続できればよく、従来公知の様々な方法および材料を好適に用いることができる。
【0123】
本発明の表面形状認識用センサ1の層間絶縁膜12は、それぞれの配線13を絶縁することができればよく、従来公知の材料および方法を用いることができる。例えば、CVD(chemical vapor deposion)法などにより絶縁材料を堆積することにより形成することができる。
【0124】
また、層間絶縁膜12には、配線13のそれぞれが露出するようスルーホールを形成する必要があるが、スルーホールの形成には、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を組み合わせてパターニングするなど、従来公知の様々な方法を採用することができる。
【0125】
配線13と、容量センサ電極5または接続電極10とを接続する必要があるので、上記スルーホールのそれぞれに導電体を埋設することなどにより配線13のそれぞれと接続させ、層間絶縁膜12の表面に露出させる。この導電体としては、Wプラグ11など、従来公知の部品または材料を用いることができる。
【0126】
本発明の表面形状認識用センサ1の容量センサ電極5および接続電極10は、上記の導電体と接続するように層間絶縁膜上に金属膜を堆積させ、所望の大きさにパターニングすることにより形成することができる。金属膜は、例えば、Ti/TiN/AlCu/TiN/Tiの複合膜をスパッタ法により堆積させればよい。堆積させた金属膜を、フォトリソグラフィおよびエッチングを組み合わせてパターニングすることにより所望の位置に、所望の形状を有する容量センサ電極5および接続電極10を形成することができる。容量センサ電極5および接続電極10の形成には、従来公知の様々な材料および方法を採用することができる。
【0127】
本発明の表面形状認識用センサ1の容量膜2は、容量センサ電極5と、認識対象物とを絶縁し、認識対象物がセンサ表面に接触したとき容量を形成するものであればよい。容量膜2は、例えば、窒化シリコンを材料として、プラズマCVD法により形成すればよい。
【0128】
また、容量膜2にグランド電極4と、接続電極10とを接続させるためのスルーホールを形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィおよびエッチングの組み合わせのような従来公知の様々な方法を用いることができる。
【0129】
さらに、容量膜2をグランド電極4に覆われる部分よりも、容量センサ電極5を覆う部分が薄くなるよう形成するためには、容量膜2のグランド電極4に覆われていない部分を選択的に薄くすることができればよい。この方法として、例えば、グランド電極4の形成後、グランド電極4をマスクとして、リアクティブイオンエッチングなどのドライエッチング法を用いて容量膜2をエッチングする方法を用いることができる。
【0130】
本発明の表面形状認識用センサ1のグランド電極4としては、容量膜2の一部を覆い、接続電極10と接続された金属膜から形成されていればよい。よって、例えば、容量膜2全体を覆うTi/TiNから構成される金属膜をスパッタ法により堆積させ、グランド電極4の形成を所望する位置にレジストパターンなどをマスクとして用いて、リアクティブイオンエッチングなどのドライエッチング法により選択的にエッチングを行うことによりグランド電極4を形成することができる。
【0131】
本発明の表面形状認識用センサ1の保護膜3は、グランド電極4とともにセンサ表面を構成し、センサ表面を平坦化するよう形成されていればよい。つまり、グランド電極4との高低差が少なくなるよう形成されればよいので、グランド電極4および容量センサ電極5の形成により生じる凹凸を吸収するよう十分な厚さに堆積させた後に、例えば、エッチングなどによりグランド電極4との高低差が少なくなるよう形成する方法などを採用することができる。
【0132】
また、保護膜3の材料としては、疎水性および撥油性を有するものであればよく、例えば、ポリベンザオキサゾール前駆体をベースとしたポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0133】
〔実施の形態2〕
本実施の形態において、本発明の表面形状認識用センサ1の製造方法について、図3(a)〜(e)を用いて詳細に説明する。なお、図3(a)〜(e)は、図2の線分X−X’における断面部分の製造工程を示している。
【0134】
図3(a)〜(e)は、本発明の表面形状認識用センサ1の製造工程を示す断面図である。
【0135】
図3(a)に示す半導体基板17、多層配線層14(絶縁膜15および層16)、層間絶縁膜12、配線13、Wプラグ11、接続電極10ならびに容量センサ電極5は、実施の形態1において説明したものと同様であり、従来公知の方法および材料を用いて形成することができるため、ここでは、説明を省略する。
【0136】
図3(b)は、図3(a)において形成した構造を覆うように容量膜19を形成し、容量膜19にスルーホール7を形成した後の状態を示している。容量膜19は、層間絶縁膜12、容量センサ電極5および接続電極10の一部をそれぞれ覆い、厚さが0.4μm〜1.2μmとなるようにプラズマCVD法を用いて堆積させることにより形成される。
【0137】
容量膜19を形成する厚さは、0.4μm〜1.2μmの範囲内で、後述するエッチバック量、容量膜2の厚さ(図1(a)のW2)、保護膜3の厚さ(図1(b)のW3)およびグランド電極5の厚さ(図1(b)のW4)に応じて決定すればよい。例えば、エッチバック量を0.4μm、W2を0.4μm、W3を0.5μm、W4を0.2μmと設定した場合には、容量膜19は、0.8μmに形成すればよい。つまり、容量膜19の厚さは、所望のW2、W3、W4およびエッチバック量に合わせて上記範囲内から選択すればよい。
【0138】
また、容量膜19の厚さが上記範囲を下回る場合、W3を十分に確保するためには、容量膜19のエッチバック量を大きくする必要がある。このとき、W2を十分に確保できなくなり、センサ内部(LSI)への水分の侵入などを十分に防ぐことができないため、センサの耐久性を損ない易い。
一方、容量膜19の厚さが上記範囲を上回る場合、容量膜19の厚さと同じ高さを有するスルーホールを形成する必要があるため、スルーホールに対するグランド電極5のカバレージ(被膜性)が悪化する。また、高いセンシング特性を得るためにW2+W3を小さくしようとすると、センサ表面の凹凸(保護膜3とグランド電極5との高低差)が大きくなってしまい、センサ表面に異物が付着し易くなる。
【0139】
また、容量膜19には、スルーホール7が形成されているため、接続電極10の上面が露出している。スルーホール7は、フォトリソグラフィおよびエッチングを組み合わせることにより所望の位置に形成することができる。
【0140】
図3(c)に示すように、スルーホール7を有する容量膜19の全体および接続電極10の露出部分を覆うように金属膜6が形成される。金属膜6は、Ti層およびTiN層の2層の膜から形成されており、下層のTiは0.25μm、上層のTiNは0.05μmとなるようにスパッタ法を用いて形成されている。
【0141】
ここで、金属膜6は、0.3μmの厚さに形成されているが、0.15μm〜0.4μmの厚さに形成されていることが好ましい。
【0142】
金属膜6の厚さが上記範囲を下回る場合、センサ表面を構成する保護膜3と、グランド電極4との高低差を小さくして平坦化することが困難となる。
また、金属膜6の厚さが上記範囲を上回る場合、金属膜6を形成するための材料コストが高くなる、後述する金属膜6のパターニングにおいて、金属膜6の一部がエッチングにより完全に除去されずに残ってしまい製造効率が低下する恐れがある。
【0143】
次に、図3(d)には、金属膜6を選択的にエッチングすることによりグランド電極4を形成し、さらにグランド電極4をマスクとして、容量膜19を選択的にエッチバックした状態が示されている。
【0144】
金属膜6の内、グランド電極4が形成されることを所望する位置にレジストパターン18を形成し、レジストパターン18をマスクとして、金属膜6を選択的にエッチングする。ここで、レジストパターン18は、従来公知のフォトリソグラフィにより位置選択的に形成することができる。
【0145】
金属膜6の選択的エッチングに続いて、次は、グランド電極4をマスクとして用い、容量膜19のエッチバックを行うことによって容量膜2が形成される。このとき、容量膜19は、0.1μm〜0.6μm程度エッチングされる。なお、19aの破線は、エッチングされる前の容量膜19の表面を示している。
【0146】
これにより、センサ表面を平坦化し得る、かつ剥がれなどの劣化に耐え得るのに十分な厚さを有する保護膜3を形成することができる。十分な厚さの保護膜3を形成することができるので、認識対象物と接触することにより静電気を逃がすグランド電極4の側面を保護することができる。さらに、容量膜2と、保護膜3とを合わせた厚みが大きくなり過ぎることがないため、認識対象物がセンサ表面に接触する際に容量膜2および保護膜3に形成される容量を大きくすることができる。よって、表面形状認識用センサ1の認識精度を高めることができる。
【0147】
容量膜19のエッチングを行ったあと、レジストパターン18は除去される。
【0148】
図3(e)には、グランド電極4の一部がセンサ表面に露出するように保護膜3が形成された状態が示されている。
【0149】
容量膜19のエッチング後、センサの認識対象物が接触する側の全体(容量膜2およびグランド電極4)を覆うように保護膜3の材料を回転塗布することにより膜を形成する。ここでは、保護膜3の材料として、ポリベンザオキサゾール前駆体をベースとしたポリイミド樹脂を用いた場合について説明する。
【0150】
ポリイミド樹脂を塗布することにより形成したポリイミド膜は、容量センサ電極5、接続電極10を形成することにより生じた容量膜2上の凹凸を吸収できるよう十分な厚さを有するように形成される。このため、ポリイミド膜は、ほぼ平坦な表面を有する。
【0151】
次に、ほぼ平坦な表面を有するポリイミド膜を約310℃に加熱することにより熱硬化させる。熱硬化させたポリイミド膜をグランド電極4が露出するまでエッチバックすることにより図3(e)に示すような平坦な表面を有し、かつグランド電極4との高低差の少ない保護膜3を形成することができる。
【0152】
上記ポリイミド膜をエッチバックする方法としては、例えば、ポリイミド膜が有機材料から形成されていることから、酸素ガスのプラズマを用いたドライエッチングにより全体をエッチングする方法が挙げられる。これ以外にも現像液を用いたウェットエッチングおよび化学的研磨方法などを用いることができる。
【0153】
ここで、図1(b)に示しているように、容量膜2は0.1μm〜0.6μm程度エッチバックすることにより形成されているため、グランド電極4と近接する部分においても保護膜3は、厚さ0.3μm〜1.0μmに形成することができる。
容量膜19をエッチバックする厚さが上記範囲を上回る場合、容量センサ電極5が露出する可能性があり、認識対象物と、容量センサ電極5とを確実に絶縁することができなくなる恐れがある。
一方、容量膜19をエッチングする厚さが上記範囲を下回る場合、容量膜2上に形成される保護膜3を、認識対象物との接触などの機械的ストレスによる劣化(剥がれなど)に耐え得る十分な厚さに形成することができなくなる。
上記保護膜3が上記厚さの範囲を有することが好ましい理由については、実施の形態1において説明したとおりである。
【0154】
また、グランド電極4の厚さが0.15μm〜0.40μmとなるよう形成されているため、保護膜3の表面が矢印で示しているグランド電極4の厚さの範囲内に表面が収まるよう制御することができる。
上記グランド電極4が上記厚さの範囲を有することが好ましい理由については、実施の形態1において説明したとおりである。
【0155】
実施の形態1において説明したようにグランド電極4は、接続配線10、Wプラグ11および配線13を介して集積回路の接地に接続されているため、認識対象物と、センサ表面とが接触する際に発生する静電気を逃がすことができるため、集積回路の静電破壊を防止することができる。
【0156】
以上において説明した製造方法を用いることにより、耐久性および認識精度に優れ、かつ安定した認識性能を有する表面形状認識用センサ1を容易にかつ低コストで製造することができる。
【0157】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0158】
〔その他の構成〕
なお、本発明は、以下の構成によっても実現することができる。
【0159】
(第1の構成)
半導体基板の上に形成された複数の容量センサ電極と、
これら複数の容量センサ電極の上に配置された容量膜とを備え、
容量膜上に形成されたスルーホールを覆うグランド電極パターンを備え、
グランド電極下の容量膜厚がセンサ電極上の容量膜厚よりも厚く、かつグランド電極側壁部に接する保護膜の膜厚が、グランド電極膜厚よりも0.1μm以上厚い表面形状認識用センサ。
【0160】
(第2の構成)
第1の構成に係る表面形状認識用センサにおいて、
容量膜に形成したスルーホール内に形成したグランド電極の窪み部分にも表面保護膜を形成する表面形状認識用センサ。
【0161】
(第3の構成)
半導体基板の上に形成された複数の容量センサ電極と、
これら複数の容量センサ電極の上に配置された容量膜とを備え、
容量膜上に形成されたスルーホールを覆うグランド電極パターンを形成後、連続して下地容量膜を0.1μm以上エッチバックする工程と、
全面に表面保護膜を形成した後、表面保護膜をグランド電極表面が露出するまでエッチバックする表面形状認識用センサの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明によれば、優れた耐久性、優れた認識精度および認識性能を有する静電容量式の表面形状認識用センサを容易にかつ低コストで実現することができる。例えば、指紋認識用のセンサとして応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】(a)は、図2に示す線分X−X’における断面図、(b)は、グランド電極周囲の拡大断面図である。
【図2】本発明の表面形状認識用センサの平面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明の表面形状認識用センサの製造工程を示す断面図である。
【図4】従来の表面形状認識用センサの製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0164】
1 表面形状認識用センサ
2 容量膜
3 保護膜
4 グランド電極(電極パターン)
4a 上部側壁部(電極パターン側壁部)
5 容量センサ電極
6 金属膜
7 スルーホール
19 容量膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する表面形状認識用センサにおいて、
容量センサ電極と、
該容量センサ電極を覆う容量膜と、
該容量膜を覆う保護膜と、
該容量膜に形成されたスルーホールと、その開口部辺縁とを覆うように形成され、接地された電極パターンとを備え、
該電極パターンは、該保護膜における認識対象物の接触面において露出し、
該容量膜の該電極パターンに覆われた部分は、該容量膜の該電極パターンに覆われていない部分よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されている
ことを特徴とする表面形状認識用センサ。
【請求項2】
上記電極パターンの側壁部に接する上記保護膜の膜厚は、上記電極パターンの膜厚よりも0.1μm以上厚くなるよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面形状認識用センサ。
【請求項3】
上記電極パターンは、上記スルーホール内にて、当該表面形状認識用センサの表面に開口する開口部を有し、該開口部が、上記保護膜と同一の材料により充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面形状認識用センサ。
【請求項4】
上記容量膜は、0.3μm〜1.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面形状認識用センサ。
【請求項5】
上記保護膜は、0.3μm〜1.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面形状認識用センサ。
【請求項6】
上記電極パターンは、0.15μm〜0.4μmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面形状認識用センサ。
【請求項7】
認識対象物に接触して、認識対象物の表面形状を認識する表面形状認識用センサの製造方法において、
容量センサ電極を覆う容量膜にスルーホールを形成し、該スルーホールと、その開口部辺縁とを覆うように、接地された電極パターンを形成する工程と、
上記電極パターンをマスクとして、上記容量膜を0.1μm〜0.6μmエッチバックした後に、該容量膜上に保護膜を堆積させる工程と、
を含むことを特徴とする表面形状認識用センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−8674(P2008−8674A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177069(P2006−177069)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】