表面性状測定装置および表面性状測定方法
【課題】周囲温度の変化に対しても、設定した一定の測定力で測定を行うことができ、その結果、高精度化、使い勝手向上および信頼性向上が図れる表面性状測定装置および表面性状測定方法を提供。
【解決手段】スタイラス、加振素子4、検出素子5を有するセンサ1と、これを被測定物に対して相対移動させる駆動用アクチュエータ11と、設定周波数の加振信号を発振し出力する発振器34と、発振器からの加振信号の振幅を設定ゲインに応じて補正してセンサの加振素子に与える第1可変アンプ35と、制御手段31とを備える。制御手段は、検出素子からの検出信号を検出し、検出信号の振幅が最大となる周波数に発振器の設定周波数を補正する周波数補正手段と、この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて第1可変アンプ35の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段とを備える。
【解決手段】スタイラス、加振素子4、検出素子5を有するセンサ1と、これを被測定物に対して相対移動させる駆動用アクチュエータ11と、設定周波数の加振信号を発振し出力する発振器34と、発振器からの加振信号の振幅を設定ゲインに応じて補正してセンサの加振素子に与える第1可変アンプ35と、制御手段31とを備える。制御手段は、検出素子からの検出信号を検出し、検出信号の振幅が最大となる周波数に発振器の設定周波数を補正する周波数補正手段と、この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて第1可変アンプ35の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定装置に関する。例えば、加振型センサにより被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状を測定する表面性状測定装置および表面性状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面を走査して被測定物の形状や表面粗さなど表面性状を測定する表面性状測定装置として、粗さ測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。
このような測定機において、接触部が被測定物の表面に接触した微小変位に基づいて被測定物表面を検出するセンサとして、加振型力センサが利用されている。
【0003】
<加振型力センサについて>
加振型力センサ1は、図7に示すように、金属製のベース2と、このベース2と一体的に形成されたスタイラス3と、このスタイラス3を振動(軸方向へ振動)させる加振素子4と、スタイラス3の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子5とから構成されている。スタイラス3の先端には、ダイヤモンドチップやルビーなどで構成された接触部としての触針6が接着固定されている。加振素子4および検出素子5は、1枚の圧電素子によって構成され、ベース2の表裏にそれぞれ1枚ずつ接着固定されている。
【0004】
いま、図8に示すように、力センサ1の加振素子4に対して、特定の周波数と振幅をもつ加振信号Pi(電圧信号)を与えると、検出素子5では、特定の周波数と振幅の検出信号Qo(電圧信号)が得られる。
被測定物Wとの接触に伴う検出信号Qoの振幅変化を図9に示す。スタイラス3が被測定物Wと非接触状態にあるとき、スタイラス3の共振周波数で一定の振幅をもつ加振信号Piを加振素子4に加えると、スタイラス3が共振し、検出素子5に振幅Aoの検出信号Qoが得られる。スタイラス3が被測定物Wに接触すると、検出信号Qoの振幅がAoからAxに減衰する。
【0005】
この減衰率k(Ax/Ao)と測定力との間には、図10に示す関係がある。
ここで、スタイラス3(力センサ1)が被測定物Wに接触したときの検出信号Qoが非接触時の90%に減衰している場合(減衰率k=0.9の状態)を例にとる。図10の関係より、この接触状態における測定力は135[μN]であることがわかる。
従って、力センサ1を被測定物Wに接触させる際、減衰率kが常に一定となるように、駆動用アクチュエータなどを用いて力センサ1と被測定物Wとの距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物Wの形状や粗さを測定することができる。
【0006】
図11は、力センサ1を用いた形状測定システムの一例である。この形状測定システムは、プローブ10と、このプローブ10を制御するコントローラ20とから構成されている。
プローブ10は、力センサ1と、この力センサ1を被測定物Wに対して進退させる駆動用アクチュエータ11と、この駆動用アクチュエータ11による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する検出器(スケールと検出ヘッドからなる)12とから構成されている。
【0007】
コントローラ20は、力センサ1を振動させるために力センサ1に加振信号を与える発振器21と、力センサ1からの検出信号を直流信号に変換するピークホールド回路22と、このピークホールド回路22からの出力(力センサ信号)と目標測定力との偏差を演算する演算器23と、この演算器23からの出力を入力とした力制御補償器24と、この力制御補償器24からの出力を基に駆動用アクチュエータ11を駆動させる駆動アンプ25と、検出器12からの信号をカウントし力センサ1の測定位置情報を位置測定値として出力するカウンタ26とから構成されている。
なお、この形状測定システムにおいて、減衰率が所望の値になったときに、現在位置をラッチする回路を組み込めば、測定力一定の超高精度接触センサとして使用することもできる。
【0008】
ところが、上述した構造の力センサ1を用いた形状測定システムでは、次のような課題がある。
<周囲温度の変化による測定力の変動>
図12は、温度変化と非接触時の検出信号(出力電圧)の関係を示したものである。図 12より、非接触状態であるにも拘わらず検出信号が変化していることがわかる。
周囲温度Td0℃のときに測定力を135[μN]にするための減衰率kを求めると、図 10より、測定力135[μN]のときの減衰率は90%(k=0.9)である。そのときの電圧は、図12より、
Vd0[V]×0.9=0.9Vd0[V]
である。
ここで、周囲温度がΔT[%]上昇してTd1℃に変化すると、非接触時における検出信号は、図12より、Vd1[V]となり、この状態で測定力135[μN]で測定を行おうとして、検出信号が0.9Vd0[V]になるようにスタイラス3の接触を制御すると、
減衰率k=0.9Vd0/Vd1
となる。Vd0<Vd1であるから、減衰率kは0.9より小さくなる。
この減衰率k(0.9より小さい減衰率k)を用いて、図10の関係から測定力を求めると、測定力は、135[μN]よりも大きくなり、当初の目論見の測定力135[μN]で測定することができない。
【0009】
<周囲温度の変化による共振周波数の変動>
周囲温度の変化による測定力の変動の原因は、周囲温度が変化したことによりスタイラスの共振周波数が変化し、加振信号周波数とずれが生じることで、検出信号の電圧が低下することが主原因と考えられる。この現象に関しては、物体の共振周波数は温度に対して次のような関係があり、周囲温度が変化することで共振周波数が変化することは物理的に避けることができない。
【0010】
まず、物体の共振周波数fは、音速νと共振波長λから次式により求まる。
共振周波数f=音速ν/共振波長λ
この式中の音速は、その物体のヤング率Eと密度ρから次式により求まる。
音速ν=√ヤング率E/密度ρ
この式中の密度ρは物体の体積あたりの質量であり、物体の体積は温度変化で熱伸縮して変化する。
このことから、温度が変化し体積が変化すると、共振周波数が変化してしまうことは物理的現象として避けられないことがわかる。
【0011】
以上述べた検出信号の温度変化と共振周波数の温度変化を解決するために、
(i)温度変化に対して、出力電圧が変化しにくい材料で力センサを作成する。
(ii)温度変化に対して、力センサの形状や構造の鈍感なものにする。
などのことが考えられる。
しかしながら、力センサの材質や形状、加振素子ならびに検出素子、これらを固定するために使用する接着剤などの関係が複雑に影響を及ぼしあうため、問題解決は困難であった。また、電気回路の温度変化に対する特性変動も無視できない要因と考えられていた。
【0012】
そこで、上述した周囲温度の変化によるスタイラスの共振周波数の変化に対して、加振信号の周波数を補正する出願が提案されている。
特許文献1に記載の微小内径測定方法では、測定中断中にスタイラスの共振周波数を再計測し、共振振幅が最大となるように、加振する周波数を微調整するようにした構成である。
特許文献2に記載の表面形状測定装置では、スタイラスやスタイラス近傍の温度を測定し、この測定した温度に応じて変化したスタイラスの固有振動数に相当する周波数を加振信号として与えるようにした構成である。
【0013】
【特許文献1】特開2003−4433号公報
【特許文献2】特開2004−61322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1および特許文献2では、周囲温度の変化に応じて変化したスタイラスの固有振動数に相当する周波数で加振信号を与えることができるが、加振信号の周波数を変えると、予め所定温度条件下で設定していた周波数とずれが生じる。すると、スタイラスの振動エネルギーに差が生じ、設定測定力との間に差が生じてしまうという問題が残る。つまり、設定した一定の測定力で測定を行うことが困難になる。
【0015】
本発明の目的は、周囲温度の変化に対しても、設定した一定の測定力で測定を行うことができ、その結果、高精度化、使い勝手向上および信頼性向上が図れる表面性状測定装置および表面性状測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表面性状測定装置は、先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、設定周波数の加振信号を発振し出力する発振手段と、前記発振手段からの加振信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して前記センサの加振素子に与える加振信号振幅補正手段と、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて前記加振信号振幅補正手段の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、検出素子からの検出信号が設定値に一致すると、位置検出手段の測定位置情報が取り込まれ、この測定位置情報から被測定物の表面性状が測定される。
たとえば、検出素子からの検出信号が設定値に一致するように、相対移動手段を制御して、センサと被測定物との相対距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物表面の形状や粗さなどを倣い測定することができる。また、スタイラスの接触部を被測定物の任意の点に接触させ、検出素子からの検出信号が設定値に一致したときの位置検出手段の測定位置情報を取り込めば、接触点の座標値を求めることができる。そして、これら複数の接触点の座標値を基に被測定物の形状などを測定できる。
【0018】
ところで、周囲温度が変化すると、センサを構成する部材材質の温度特性などに依存して共振周波数が変化する。すると、検出素子からの検出信号の振動振幅が減少するため、検出感度が変動し、安定した測定が行えない。
本発明では、周波数補正手段を備えているので、たとえば、測定開始前において、検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数を求め、これを発振手段の設定周波数として設定することができるため、検出感度を高く維持することができる。
これによって、新たに設定された設定周波数で加振素子が振動されるが、その周波数が所定温度条件下で設定された設定周波数とずれが生じた場合、スタイラスの振動エネルギーに差が生じ、設定測定力との間に差が生じてしまう。
本発明では、加振用ゲイン調整手段を備えているので、周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて加振信号振幅補正手段の設定ゲインを調整することにより、これらの差を補正できる。つまり、周波数の差による影響を加振信号の振幅を補正することによって解消できる。
その結果、検出感度を一定に保つことができるので、高精度化を達成できる。また、使用環境温度範囲も大幅に拡大できるので、使い勝手の向上にも寄与でき、しかも、低測定力で一定した測定も可能となるので、被測定物の損傷も防止でき、信頼性向上につながる。
【0019】
本発明の他の表面性状測定装置は、先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、設定周波数の加振信号を発振し前記センサの加振素子に与える発振手段と、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、前記検出素子からの検出信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して出力する検出信号振幅補正手段と、 前記検出手段からの検出信号の振幅と予め設定した基準振幅との比を基に、前記検出信号の振幅が基準振幅になるように前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインを補正する検出用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
上記表面性状測定装置において、前記検出用ゲイン調整手段は、前記検出手段からの検出信号を取り込み、この検出信号の振幅と前記基準振幅との比を、前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインに乗じて、これを前記検出信号振幅補正手段の補正後の設定ゲインとすることが好ましい。
この発明によれば、検出用ゲイン調整手段を備えているから、検出手段からの検出信号の振幅と基準振幅との比を基に、前記検出信号の振幅が基準振幅になるように検出信号振幅補正手段の設定ゲインを補正することができる。これにより、例えば前述した加振信号振幅補正手段のゲイン調整によって加振信号の振幅が補正されても、検出信号の振幅を一定の基準振幅に調整できるほか、周囲温度の変化によって電気回路などの特性が変動しても、この電気回路などの温度変化による特性変動も含めて、より正確に補正を行うことができる。
【0021】
本発明の表面性状測定装置において、前記周波数補正手段は、基準周波数の前後所定範囲を一定間隔刻みで抽出した複数の第1次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第1次ピーク周波数を求めたのち、この第1次ピーク周波数の前後の第1次抽出周波数範囲を前記一定間隔刻みよりも細かい間隔で抽出した複数の第2次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第2次ピーク周波数を求め、この第2次ピーク周波数、または、第2次ピーク周波数を中心として第2次抽出周波数よりも細かい間隔で求めた第3次以降のピーク周波数を前記発振手段の設定周波数として設定することが好ましい。
この発明によれば、まず、基準周波数を基準とした前後所定範囲を一定間隔刻みで抽出した複数の第1次抽出周波数を順次設定して第1ピーク周波数を求め、続いて、この第1ピーク周波数を基準とした前後の狭い範囲を、更に狭い間隔刻みで抽出した複数の第2次抽出周波数を順次設定して第2次ピーク周波数を求め、この第2次ピーク周波数、または、同様にして求めた第3次以降のピーク周波数を発振手段の設定周波数として設定するようにしたので、共振周波数を効率的にかつ精度よく探索できる。
【0022】
本発明の表面性状測定方法は、先端に接触部を有するスタイラス、加振信号を受けて前記スタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号の減衰が予め設定した減衰率まで低下したときの前記位置検出手段の測定位置情報を取り込み、この測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定方法であって、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記加振信号の周波数を補正する周波数補正工程と、この周波数補正工程によって加振信号の周波数が補正された際、前記スタイラスが被測定物との接触によって受ける測定力が略一定になるように、前記検出信号の減衰率を補正する減衰率補正工程とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、周囲温度が変化しても、検出素子からの検出信号が検出され、この検出信号の振幅が最大となる周波数に加振信号の周波数が補正されるから、検出感度を高く維持することができる。
しかも、加振信号の周波数が補正されても、測定力が略一定になるように、検出信号の減衰率が補正されるから、常に一定の測定力で測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<全体構成(図1)の説明>
図1は、本発明に係る表面形状測定装置の一実施形態を示すブロック図である。なお、同図の説明にあたって、図11と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
本実施形態の表面形状測定装置は、プローブ10と、このプローブ10を制御するコントローラ30とから構成されている。
プローブ10は、図11と同様に、力センサ1と、この力センサ1を被測定物Wに対して相対移動(進退)させる相対移動手段としての駆動用アクチュエータ11と、この駆動用アクチュエータ11による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する位置検出手段としての検出器(スケールと検出ヘッドからなる)12とから構成されている。
【0024】
コントローラ30は、制御手段(Digital Signal Processor)31と、ROM(Read Only Memory)/RAM(Random Access Memory)を有する記憶手段32と、インターフェース(I/F)33と、発振手段としての発振器(Direct Digital Synthesizer)34と、加振信号振幅補正手段としての第1可変アンプ(Amp1)35と、検出信号振幅補正手段としての第2可変アンプ(Amp2)36と、ピークホールド回路37と、ADコンバータ(Analog Digital Converter)38と、DAコンバータ(Digital Analog Converter)39と、接触検知回路40と、アクチュエータ駆動回路41と、カウンタ42とから構成されている。
【0025】
制御手段(DSP)31は、マイクロプロセッサとしての機能を持ち、ROMやRAMを有する記憶手段32とともにシステム全体をコントロールする役目を果たす。また、制御手段(DSP)31は、検出素子5からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に発振器34の設定周波数を補正する周波数補正手段、この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて第1可変アンプ35の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段、検出素子5からの検出信号の振幅と予め設定した基準振幅との比を基に、検出信号の振幅が基準振幅になるように第2可変アンプ35の設定ゲインを補正する検出用ゲイン調整手段などを構成している。
【0026】
インターフェース(I/F)33は、PCなどのホストとの通信機能をもつ。
発振器(DDS)34は、設定周波数の加振信号を発振し第1可変アンプ35に与えるもので、制御手段(DSP)31により発振周波数が設定される。
第1可変アンプ35は、発振器(DDS)34の発振振幅を目的の測定力に合わせた加振振幅に調整し加振素子4に与えるもので、DAコンバータ39を介して制御手段(DSP)31によりゲインが設定される。
第2可変アンプ36は、加振信号振幅により変化する検出素子5の信号を、加振信号振幅によらない一定振幅の信号に変換するもので、DAコンバータ39を介して制御手段(DSP)31によりゲインが設定される。
ピークホールド回路37は、第2可変アンプ36からの検出信号(交流信号)を直流信号に変換し、ADコンバータ38へ与える。
【0027】
ADコンバータ38は、ピークホールド回路37から与えられる直流信号をデジタル信号に変換して制御手段(DSP)31へ与える。
DAコンバータ39は、制御手段(DSP)31からの指令に基づいて、アクチュエータ駆動回路41に対して粗動駆動信号を出力するとともに、第1可変アンプ35および第2可変アンプ36のゲイン設定を行う。また、接触検知回路40における接触(タッチ)レベルを設定する。
接触検知回路40は、ピークホールド回路37からの検出信号(直流信号)とDAコンバータ39によって設定された接触レベルとから、カウンタ42をラッチするラッチ信号(タッチ信号)を発生しカウンタ42へ与える。
アクチュエータ駆動回路41は、DAコンバータ39からの粗動部駆動信号によって駆動用アクチュエータ11を駆動させる。
カウンタ42は、検出器12からの信号をカウントし、力センサ1の先端測定位置とプローブ駆動制御用フィードバックを算出するため、力センサ1の変位量をカウントする。
【0028】
<測定準備>
上述した表面性状測定装置において、測定力一定を実現する場合、基準温度条件下でのスタイラス3の共振周波数、減衰率と測定力との関係を予め測定しておく。この情報を基に所望の測定力に応じた発振器(DDS)34の発振周波数、第1可変アンプ35および第2可変アンプ36のゲインを求めておく。
これらの設定状態は、制御手段(DSP)31の記憶手段32内に設定データとして保存しておき、測定時に所望の測定力に応じて発振器(DDS)34の発振周波数、第1可変アンプ35および第2可変アンプ36のゲイン設定を行う。ただし、測定時の周囲温度が基準温度と異なっている場合は、
(a)共振周波数が変化
(b)減衰率と測定力の関係が変化
するので、測定開始前に次のような方法により、発振器(DDS)34、第1可変アンプ35、第2可変アンプ36の設定状態を補正する。
【0029】
<(1)共振周波数補正>
予め設定されている基準周波数を中心に、ある範囲内で加振周波数を可変して、そのときの検出信号振幅を観測し、最も検出信号振幅が大きくなった周波数に共振周波数を補正する。
図2および図3は、基準周波数を中心に−1000[Hz]〜+1000[Hz]の範囲を、最小分解能1[Hz]で共振周波数を探索するプログラムの一例を示すフローチャートである。
ステップ1(ST1と略す)においてi=0とし、ST2においてi<21であることを条件に、「基準周波数−1000Hz+(i×100Hz)」を発振器(DDS)34にセットして加振(ST3)、DATA[i]=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST4)、「i=i+1」(ST5)を繰り返す。ST2においてi<21でないこと(i=21)を条件に、DATA[0]〜DATA[20]のうち最大を探してそのときの周波数を第1次ピーク周波数としてのピーク周波数1とする(ST6)。つまり、ST1〜ST6において、基準周波数を中心に−1000Hz〜+1000Hzまでを100Hz刻みでピーク周波数1を探索する。
【0030】
続いて、ST11においてi=0とし、ST12においてi<21であることを条件に、「ピーク周波数1−100Hz+(i×10Hz)」を発振器(DDS)34にセットして加振(ST13)、DATA[i]=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST14)、「i=i+1」(ST15)を繰り返す。ST12においてi<21でないこと(i=21)を条件に、DATA[0]〜DATA[20]のうち最大を探してそのときの周波数を第1次ピーク周波数としてのピーク周波数2とする(ST26)。つまり、ST11〜ST16において、ピーク周波数1を中心に−100Hz〜+100Hzまでを10Hz刻みでピーク周波数2を探索する。
【0031】
最後に、ST21においてi=0とし、ST22においてi<21であることを条件に、「ピーク周波数2−10Hz+(i×1Hz)」を発振器(DDS)34にセットして加振(ST23)、DATA[i]=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST24)、「i=i+1」(ST25)を繰り返す。ST22においてi<21でないこと(i=21)を条件に、DATA[0]〜DATA[20]のうち最大を探してそのときの周波数を探索後周波数とする(ST26)。つまり、ST21〜ST26において、ピーク周波数2を中心に−10Hz〜+10Hzまでを1Hz刻みで探索後周波数を探索する。これを発振器(DDS)34の設定周波数としてセットすることにより、共振周波数の補正を実現できる。
【0032】
<(2)加振信号振幅補正(第1可変アンプのゲイン補正)>
本システムでは、測定力一定を実現するために、基準温度条件下でのスタイラス3の共振周波数、減衰率と測定力との関係を予め測定しておき、その情報を基に所望の測定力に応じた共振周波数で加振を行っている。しかし、前述の方法で共振周波数を探索し、その周波数が予め設定していた周波数とずれが生じた場合、スタイラス3の振動エネルギーに差が生じ、設定測定力との間に差が生じてしまう。
そこで、前述の方法で探索した共振周波数と、予め求めておいた共振周波数(基準温度条件下での共振周波数)との差を求め、この差の割合に応じて、第1可変アンプ35のゲインを調整して補正を行う。
【0033】
具体的には、次のようにして行う。
周波数がずれたときに、同一加振信号電圧を印加すると、力センサ1の特性は、図4に示すように変化する。図4において、
f :基準周波数fで共振させているときの力センサの特性、
+Δf:基準周波数fに対して+Δfだけ周波数がずれたときの力センサの特性、
−Δf:基準周波数fに対して−Δfだけ周波数がずれたときの力センサの特性
である。
あらかじめ、加振信号電圧をV1〜V10まで所定ピッチ間隔で変化させ、図4に示すグラフを取得しておく。つまり、加振信号電圧V1〜V10毎のグラフを取得しておく。
また、±Δfの特性を取得するにあたって、プローブの精度保証環境温度の範囲外の温度、例えば、20±10℃(10℃、20℃、30℃)について取得しておく。
ここで、例えば、減衰率k(センサ信号の振幅比)が85%の条件下において、−Δfのときの測定力(図4の場合100μN)、fのときの測定力(図4の場合150μN)、+Δfのときの測定力(図4の場合200μN)を求める。これら3つのデータから、測定力と周波数の関係(例えば、3点の近似直線の傾き)を各加振信号電圧毎に得る。これから、加振信号電圧と、単位周波数当たりの変化測定力と、標準測定力(振幅比85%時の測定力)との関係を得る。つまり、次の表1を得る。
【0034】
【表1】
【0035】
いま、周囲温度が変化し、例えば、周波数が図5のようにfからf’に変化した場合を考える。例として、加振信号電圧がV2、f−f’=−400Hzであったとする。
加振信号電圧がV2のままだと、測定力が150μNから130μNになってしまう。
ここで、表1の2列目から、次の表2を得る。
【0036】
【表2】
【0037】
測定力を150μNに設定したければ、加振信号電圧をV2〜V3の間にすればよいことがわかる。なお、加振信号電圧V2〜V3の間は、線形補間で近似したり、多点近似で補間したりすることで求めることできる。
このようにすれば、周波数の差による影響を加振信号の振幅を補正することによって解消できる。従って、周波数変動による測定力の変動を補正できる。
【0038】
<(3)検出信号振幅補正(第2可変アンプのゲイン補正)>
電気回路の温度変化による特性変動なども含めて、より正確に補正を行うため、第2可変アンプ36のゲインを調整して補正する。発振器(DDS)34による加振周波数の設定は共振周波数探索プログラムにより補正した周波数に設定し、加振信号振幅を決定する第1可変アンプ35のゲインも補正後の設定値に設定する。
第2可変アンプ36のゲインは、検出信号レベルを比例して変化させることができる回路として構成されている。第2可変アンプ36の現在の検出信号振幅と予め設定した検出信号の基準振幅との比を、現在の第2可変アンプ36のゲインに乗算することで第2可変アンプ36のゲイン補正を行う。これにより、周囲温度の変化に対しても、検出信号の振幅を一定の基準振幅に調整できるから、電気回路の温度変化による特性変動なども含めて、より正確に補正を行うことができる。
さらに、補正精度を向上させるため、次の処理を行う。
(a)ランダムノイズ成分の除去を目的にサンプリング値の平均化処理を行う。
(b)補正処理を複数回繰り返す。
【0039】
図6は、検出信号振幅補正プログラムの一例を示すフローチャートである。
まず、第2可変アンプ36のゲインに標準設定値を設定(ST31)、DATA OLD=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST32)、「i=0」(ST33)とし、ST34においてi<繰返し回数であることを条件に、「第2可変アンプ36の補正後ゲイン=(DATA OLDと基準振幅の比)×第2可変アンプ36の現在のゲイン」(ST35)、DATA OLD=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST36)を行ったのち、ST37においてDATA OLD=基準振幅でないことを条件に、「i=i+1」(ST38)の処理を繰り返す。ST34においてi<繰返し回数でないこと、および、ST37においてDATA OLD=基準振幅であることを条件に、検出信号振幅補正処理を終了する。
【0040】
<(4)共振周波数補正および信号振幅補正のタイミング>
本発明において、問題となっている温度変化の主要因は、力センサ1の使用環境の周囲温度の変化である。この周囲温度の変化は、力センサ1を用いて行う測定時間に比べて、変化時定数が長いため、今回提案している補正を行う測定開始前に行うことで、さらに、精度のよい測定を行うことが可能である。
また、本補正方式は力センサ1が被測定物に接触していないときならば、何時でも補正可能なので、測定時間の長いパートプログラム使用時には、被測定物と接触していない移動区間などを利用して補正することもできる。
【0041】
<変形例の説明>
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれる。
上記実施形態では、(1)共振周波数補正、(2)加振信号振幅補正(第1可変アンプのゲイン補正)、(3)検出信号振幅補正(第2可変アンプのゲイン補正)を上げたが、(1)共振周波数補正の後、(2)加振信号振幅補正(第1可変アンプのゲイン補正)、または、(3)検出信号振幅補正(第2可変アンプのゲイン補正)を行うだけでもよい。もとより、(1)の後、(2)および(3)を実行するのがより好ましい。
【0042】
上記実施形態において、(2)加振信号振幅補正にあたって、
a)予め、加振信号電圧と、単位周波数当たりの変化測定力と、標準測定力との関係を表す表を作成しておき、
b)検出した周波数変化から各加振信号電圧における変化測定力を算出し、
c)各加振信号電圧における標準測定力から変化測定力を加減し、
d)目標測定力を実現できる加振信号電圧を求める、
手順で周波数変動による測定力の変動を補正したが、(3)検出信号振幅補正にあたっても、同様に行うことが可能である。
【0043】
つまり、
a)予め、検出信号振幅比と、単位周波数当たりの変化測定力と、標準測定力との関係を表す表を作成しておき、
b)検出した周波数変化から各振幅比における変化測定力を算出し、
c)各振幅比における標準測定力から変化測定力を加減し、
d)目標測定力を実現できる振幅比を求める、
手順でも、電気回路の温度変化による特性変動なども含めて、より正確に補正を行うことができる。
【0044】
また、周波数の補正に対して測定力を一定に保つための方法としては、上記実施形態で述べた方法に限らず、次のような方法であってもよい。
まず、検出素子4からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に加振信号の周波数を補正し(周波数補正工程)、これによって加振信号の周波数が補正された際、測定力(スタイラスが被測定物との接触によって受ける測定力)が略一定になるように、検出信号の減衰率を補正する(減衰率補正工程)ようにしてもよい。つまり、図5に示すように、周波数が変化すると、同じ減衰率では、測定力が変化してしまうので、測定力が同じになるように、減衰率を補正する。
このようにすれば、周囲温度が変化しても、検出素子からの検出信号が検出され、この検出信号の振幅が最大となる周波数に加振信号の周波数が補正されるから、検出感度を高く維持することができる、しかも、加振信号の周波数が補正されても、測定力が略一定になるように、検出信号の振幅の減衰率が補正されるから、常に一定の測定力で測定を行うことができる。
【0045】
上記実施形態では、センサ1のベース2とスタイラス3とを一体的に構成したが、これに限らず、別体であってもよい。つまり、ベース2とスタイラス3とを別体として構成し、ベース2に対してスタイラス3を接着固定するようにしてもよい。
上記実施形態では、スタイラス3を軸方向へ振動させるようにしたが、これに限らず、スタイラス3の軸に対して交差する方向に振動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機、形状測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などに適用可能である。とくに、微細形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る表面形状測定装置の一実施形態を示すブロック図。
【図2】同上実施形態の共振周波数探索処理の手順(ST1〜16)を示すフローチャート。
【図3】同上実施形態の共振周波数探索処理の手順(ST21〜26)を示すフローチャート。
【図4】同上実施形態において、周波数がずれた際に同一加振信号電圧を印加したときの力センサの特性を示す図。
【図5】図4において、周囲温度が変化し、基準周波数が変化したときの力センサの特性を示す図。
【図6】同上実施形態の検出信号振幅補正の手順を示すフローチャート。
【図7】力センサの構成を示す分解斜視図。
【図8】力センサに与える加振信号と検出信号を示す図。
【図9】力センサが被測定物と接触した際の検出信号の変化を示す図。
【図10】力センサの検出信号の減衰率と測定力との関係を示す図。
【図11】力センサを用いた形状測定システムを示すブロック図。
【図12】力センサが使用される周囲温度と検出信号との関係を示す図。
【符号の説明】
【0048】
1…加振型力センサ、
3…スタイラス
4…加振素子
5…検出素子
10…プローブ
30…コントローラ
31…制御手段(周波数補正手段、加振用ゲイン調整手段、検出用ゲイン調整手段)
34…発振器(発振手段)
35…第1可変アンプ(加振信号振幅補正手段)
36…第2可変アンプ(検出信号振幅補正手段)
Pi…加振信号
Qo…検出信号
W…被測定物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定装置に関する。例えば、加振型センサにより被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状を測定する表面性状測定装置および表面性状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面を走査して被測定物の形状や表面粗さなど表面性状を測定する表面性状測定装置として、粗さ測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。
このような測定機において、接触部が被測定物の表面に接触した微小変位に基づいて被測定物表面を検出するセンサとして、加振型力センサが利用されている。
【0003】
<加振型力センサについて>
加振型力センサ1は、図7に示すように、金属製のベース2と、このベース2と一体的に形成されたスタイラス3と、このスタイラス3を振動(軸方向へ振動)させる加振素子4と、スタイラス3の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子5とから構成されている。スタイラス3の先端には、ダイヤモンドチップやルビーなどで構成された接触部としての触針6が接着固定されている。加振素子4および検出素子5は、1枚の圧電素子によって構成され、ベース2の表裏にそれぞれ1枚ずつ接着固定されている。
【0004】
いま、図8に示すように、力センサ1の加振素子4に対して、特定の周波数と振幅をもつ加振信号Pi(電圧信号)を与えると、検出素子5では、特定の周波数と振幅の検出信号Qo(電圧信号)が得られる。
被測定物Wとの接触に伴う検出信号Qoの振幅変化を図9に示す。スタイラス3が被測定物Wと非接触状態にあるとき、スタイラス3の共振周波数で一定の振幅をもつ加振信号Piを加振素子4に加えると、スタイラス3が共振し、検出素子5に振幅Aoの検出信号Qoが得られる。スタイラス3が被測定物Wに接触すると、検出信号Qoの振幅がAoからAxに減衰する。
【0005】
この減衰率k(Ax/Ao)と測定力との間には、図10に示す関係がある。
ここで、スタイラス3(力センサ1)が被測定物Wに接触したときの検出信号Qoが非接触時の90%に減衰している場合(減衰率k=0.9の状態)を例にとる。図10の関係より、この接触状態における測定力は135[μN]であることがわかる。
従って、力センサ1を被測定物Wに接触させる際、減衰率kが常に一定となるように、駆動用アクチュエータなどを用いて力センサ1と被測定物Wとの距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物Wの形状や粗さを測定することができる。
【0006】
図11は、力センサ1を用いた形状測定システムの一例である。この形状測定システムは、プローブ10と、このプローブ10を制御するコントローラ20とから構成されている。
プローブ10は、力センサ1と、この力センサ1を被測定物Wに対して進退させる駆動用アクチュエータ11と、この駆動用アクチュエータ11による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する検出器(スケールと検出ヘッドからなる)12とから構成されている。
【0007】
コントローラ20は、力センサ1を振動させるために力センサ1に加振信号を与える発振器21と、力センサ1からの検出信号を直流信号に変換するピークホールド回路22と、このピークホールド回路22からの出力(力センサ信号)と目標測定力との偏差を演算する演算器23と、この演算器23からの出力を入力とした力制御補償器24と、この力制御補償器24からの出力を基に駆動用アクチュエータ11を駆動させる駆動アンプ25と、検出器12からの信号をカウントし力センサ1の測定位置情報を位置測定値として出力するカウンタ26とから構成されている。
なお、この形状測定システムにおいて、減衰率が所望の値になったときに、現在位置をラッチする回路を組み込めば、測定力一定の超高精度接触センサとして使用することもできる。
【0008】
ところが、上述した構造の力センサ1を用いた形状測定システムでは、次のような課題がある。
<周囲温度の変化による測定力の変動>
図12は、温度変化と非接触時の検出信号(出力電圧)の関係を示したものである。図 12より、非接触状態であるにも拘わらず検出信号が変化していることがわかる。
周囲温度Td0℃のときに測定力を135[μN]にするための減衰率kを求めると、図 10より、測定力135[μN]のときの減衰率は90%(k=0.9)である。そのときの電圧は、図12より、
Vd0[V]×0.9=0.9Vd0[V]
である。
ここで、周囲温度がΔT[%]上昇してTd1℃に変化すると、非接触時における検出信号は、図12より、Vd1[V]となり、この状態で測定力135[μN]で測定を行おうとして、検出信号が0.9Vd0[V]になるようにスタイラス3の接触を制御すると、
減衰率k=0.9Vd0/Vd1
となる。Vd0<Vd1であるから、減衰率kは0.9より小さくなる。
この減衰率k(0.9より小さい減衰率k)を用いて、図10の関係から測定力を求めると、測定力は、135[μN]よりも大きくなり、当初の目論見の測定力135[μN]で測定することができない。
【0009】
<周囲温度の変化による共振周波数の変動>
周囲温度の変化による測定力の変動の原因は、周囲温度が変化したことによりスタイラスの共振周波数が変化し、加振信号周波数とずれが生じることで、検出信号の電圧が低下することが主原因と考えられる。この現象に関しては、物体の共振周波数は温度に対して次のような関係があり、周囲温度が変化することで共振周波数が変化することは物理的に避けることができない。
【0010】
まず、物体の共振周波数fは、音速νと共振波長λから次式により求まる。
共振周波数f=音速ν/共振波長λ
この式中の音速は、その物体のヤング率Eと密度ρから次式により求まる。
音速ν=√ヤング率E/密度ρ
この式中の密度ρは物体の体積あたりの質量であり、物体の体積は温度変化で熱伸縮して変化する。
このことから、温度が変化し体積が変化すると、共振周波数が変化してしまうことは物理的現象として避けられないことがわかる。
【0011】
以上述べた検出信号の温度変化と共振周波数の温度変化を解決するために、
(i)温度変化に対して、出力電圧が変化しにくい材料で力センサを作成する。
(ii)温度変化に対して、力センサの形状や構造の鈍感なものにする。
などのことが考えられる。
しかしながら、力センサの材質や形状、加振素子ならびに検出素子、これらを固定するために使用する接着剤などの関係が複雑に影響を及ぼしあうため、問題解決は困難であった。また、電気回路の温度変化に対する特性変動も無視できない要因と考えられていた。
【0012】
そこで、上述した周囲温度の変化によるスタイラスの共振周波数の変化に対して、加振信号の周波数を補正する出願が提案されている。
特許文献1に記載の微小内径測定方法では、測定中断中にスタイラスの共振周波数を再計測し、共振振幅が最大となるように、加振する周波数を微調整するようにした構成である。
特許文献2に記載の表面形状測定装置では、スタイラスやスタイラス近傍の温度を測定し、この測定した温度に応じて変化したスタイラスの固有振動数に相当する周波数を加振信号として与えるようにした構成である。
【0013】
【特許文献1】特開2003−4433号公報
【特許文献2】特開2004−61322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1および特許文献2では、周囲温度の変化に応じて変化したスタイラスの固有振動数に相当する周波数で加振信号を与えることができるが、加振信号の周波数を変えると、予め所定温度条件下で設定していた周波数とずれが生じる。すると、スタイラスの振動エネルギーに差が生じ、設定測定力との間に差が生じてしまうという問題が残る。つまり、設定した一定の測定力で測定を行うことが困難になる。
【0015】
本発明の目的は、周囲温度の変化に対しても、設定した一定の測定力で測定を行うことができ、その結果、高精度化、使い勝手向上および信頼性向上が図れる表面性状測定装置および表面性状測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表面性状測定装置は、先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、設定周波数の加振信号を発振し出力する発振手段と、前記発振手段からの加振信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して前記センサの加振素子に与える加振信号振幅補正手段と、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて前記加振信号振幅補正手段の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、検出素子からの検出信号が設定値に一致すると、位置検出手段の測定位置情報が取り込まれ、この測定位置情報から被測定物の表面性状が測定される。
たとえば、検出素子からの検出信号が設定値に一致するように、相対移動手段を制御して、センサと被測定物との相対距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物表面の形状や粗さなどを倣い測定することができる。また、スタイラスの接触部を被測定物の任意の点に接触させ、検出素子からの検出信号が設定値に一致したときの位置検出手段の測定位置情報を取り込めば、接触点の座標値を求めることができる。そして、これら複数の接触点の座標値を基に被測定物の形状などを測定できる。
【0018】
ところで、周囲温度が変化すると、センサを構成する部材材質の温度特性などに依存して共振周波数が変化する。すると、検出素子からの検出信号の振動振幅が減少するため、検出感度が変動し、安定した測定が行えない。
本発明では、周波数補正手段を備えているので、たとえば、測定開始前において、検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数を求め、これを発振手段の設定周波数として設定することができるため、検出感度を高く維持することができる。
これによって、新たに設定された設定周波数で加振素子が振動されるが、その周波数が所定温度条件下で設定された設定周波数とずれが生じた場合、スタイラスの振動エネルギーに差が生じ、設定測定力との間に差が生じてしまう。
本発明では、加振用ゲイン調整手段を備えているので、周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて加振信号振幅補正手段の設定ゲインを調整することにより、これらの差を補正できる。つまり、周波数の差による影響を加振信号の振幅を補正することによって解消できる。
その結果、検出感度を一定に保つことができるので、高精度化を達成できる。また、使用環境温度範囲も大幅に拡大できるので、使い勝手の向上にも寄与でき、しかも、低測定力で一定した測定も可能となるので、被測定物の損傷も防止でき、信頼性向上につながる。
【0019】
本発明の他の表面性状測定装置は、先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、設定周波数の加振信号を発振し前記センサの加振素子に与える発振手段と、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、前記検出素子からの検出信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して出力する検出信号振幅補正手段と、 前記検出手段からの検出信号の振幅と予め設定した基準振幅との比を基に、前記検出信号の振幅が基準振幅になるように前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインを補正する検出用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
上記表面性状測定装置において、前記検出用ゲイン調整手段は、前記検出手段からの検出信号を取り込み、この検出信号の振幅と前記基準振幅との比を、前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインに乗じて、これを前記検出信号振幅補正手段の補正後の設定ゲインとすることが好ましい。
この発明によれば、検出用ゲイン調整手段を備えているから、検出手段からの検出信号の振幅と基準振幅との比を基に、前記検出信号の振幅が基準振幅になるように検出信号振幅補正手段の設定ゲインを補正することができる。これにより、例えば前述した加振信号振幅補正手段のゲイン調整によって加振信号の振幅が補正されても、検出信号の振幅を一定の基準振幅に調整できるほか、周囲温度の変化によって電気回路などの特性が変動しても、この電気回路などの温度変化による特性変動も含めて、より正確に補正を行うことができる。
【0021】
本発明の表面性状測定装置において、前記周波数補正手段は、基準周波数の前後所定範囲を一定間隔刻みで抽出した複数の第1次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第1次ピーク周波数を求めたのち、この第1次ピーク周波数の前後の第1次抽出周波数範囲を前記一定間隔刻みよりも細かい間隔で抽出した複数の第2次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第2次ピーク周波数を求め、この第2次ピーク周波数、または、第2次ピーク周波数を中心として第2次抽出周波数よりも細かい間隔で求めた第3次以降のピーク周波数を前記発振手段の設定周波数として設定することが好ましい。
この発明によれば、まず、基準周波数を基準とした前後所定範囲を一定間隔刻みで抽出した複数の第1次抽出周波数を順次設定して第1ピーク周波数を求め、続いて、この第1ピーク周波数を基準とした前後の狭い範囲を、更に狭い間隔刻みで抽出した複数の第2次抽出周波数を順次設定して第2次ピーク周波数を求め、この第2次ピーク周波数、または、同様にして求めた第3次以降のピーク周波数を発振手段の設定周波数として設定するようにしたので、共振周波数を効率的にかつ精度よく探索できる。
【0022】
本発明の表面性状測定方法は、先端に接触部を有するスタイラス、加振信号を受けて前記スタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号の減衰が予め設定した減衰率まで低下したときの前記位置検出手段の測定位置情報を取り込み、この測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定方法であって、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記加振信号の周波数を補正する周波数補正工程と、この周波数補正工程によって加振信号の周波数が補正された際、前記スタイラスが被測定物との接触によって受ける測定力が略一定になるように、前記検出信号の減衰率を補正する減衰率補正工程とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、周囲温度が変化しても、検出素子からの検出信号が検出され、この検出信号の振幅が最大となる周波数に加振信号の周波数が補正されるから、検出感度を高く維持することができる。
しかも、加振信号の周波数が補正されても、測定力が略一定になるように、検出信号の減衰率が補正されるから、常に一定の測定力で測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<全体構成(図1)の説明>
図1は、本発明に係る表面形状測定装置の一実施形態を示すブロック図である。なお、同図の説明にあたって、図11と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
本実施形態の表面形状測定装置は、プローブ10と、このプローブ10を制御するコントローラ30とから構成されている。
プローブ10は、図11と同様に、力センサ1と、この力センサ1を被測定物Wに対して相対移動(進退)させる相対移動手段としての駆動用アクチュエータ11と、この駆動用アクチュエータ11による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する位置検出手段としての検出器(スケールと検出ヘッドからなる)12とから構成されている。
【0024】
コントローラ30は、制御手段(Digital Signal Processor)31と、ROM(Read Only Memory)/RAM(Random Access Memory)を有する記憶手段32と、インターフェース(I/F)33と、発振手段としての発振器(Direct Digital Synthesizer)34と、加振信号振幅補正手段としての第1可変アンプ(Amp1)35と、検出信号振幅補正手段としての第2可変アンプ(Amp2)36と、ピークホールド回路37と、ADコンバータ(Analog Digital Converter)38と、DAコンバータ(Digital Analog Converter)39と、接触検知回路40と、アクチュエータ駆動回路41と、カウンタ42とから構成されている。
【0025】
制御手段(DSP)31は、マイクロプロセッサとしての機能を持ち、ROMやRAMを有する記憶手段32とともにシステム全体をコントロールする役目を果たす。また、制御手段(DSP)31は、検出素子5からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に発振器34の設定周波数を補正する周波数補正手段、この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて第1可変アンプ35の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段、検出素子5からの検出信号の振幅と予め設定した基準振幅との比を基に、検出信号の振幅が基準振幅になるように第2可変アンプ35の設定ゲインを補正する検出用ゲイン調整手段などを構成している。
【0026】
インターフェース(I/F)33は、PCなどのホストとの通信機能をもつ。
発振器(DDS)34は、設定周波数の加振信号を発振し第1可変アンプ35に与えるもので、制御手段(DSP)31により発振周波数が設定される。
第1可変アンプ35は、発振器(DDS)34の発振振幅を目的の測定力に合わせた加振振幅に調整し加振素子4に与えるもので、DAコンバータ39を介して制御手段(DSP)31によりゲインが設定される。
第2可変アンプ36は、加振信号振幅により変化する検出素子5の信号を、加振信号振幅によらない一定振幅の信号に変換するもので、DAコンバータ39を介して制御手段(DSP)31によりゲインが設定される。
ピークホールド回路37は、第2可変アンプ36からの検出信号(交流信号)を直流信号に変換し、ADコンバータ38へ与える。
【0027】
ADコンバータ38は、ピークホールド回路37から与えられる直流信号をデジタル信号に変換して制御手段(DSP)31へ与える。
DAコンバータ39は、制御手段(DSP)31からの指令に基づいて、アクチュエータ駆動回路41に対して粗動駆動信号を出力するとともに、第1可変アンプ35および第2可変アンプ36のゲイン設定を行う。また、接触検知回路40における接触(タッチ)レベルを設定する。
接触検知回路40は、ピークホールド回路37からの検出信号(直流信号)とDAコンバータ39によって設定された接触レベルとから、カウンタ42をラッチするラッチ信号(タッチ信号)を発生しカウンタ42へ与える。
アクチュエータ駆動回路41は、DAコンバータ39からの粗動部駆動信号によって駆動用アクチュエータ11を駆動させる。
カウンタ42は、検出器12からの信号をカウントし、力センサ1の先端測定位置とプローブ駆動制御用フィードバックを算出するため、力センサ1の変位量をカウントする。
【0028】
<測定準備>
上述した表面性状測定装置において、測定力一定を実現する場合、基準温度条件下でのスタイラス3の共振周波数、減衰率と測定力との関係を予め測定しておく。この情報を基に所望の測定力に応じた発振器(DDS)34の発振周波数、第1可変アンプ35および第2可変アンプ36のゲインを求めておく。
これらの設定状態は、制御手段(DSP)31の記憶手段32内に設定データとして保存しておき、測定時に所望の測定力に応じて発振器(DDS)34の発振周波数、第1可変アンプ35および第2可変アンプ36のゲイン設定を行う。ただし、測定時の周囲温度が基準温度と異なっている場合は、
(a)共振周波数が変化
(b)減衰率と測定力の関係が変化
するので、測定開始前に次のような方法により、発振器(DDS)34、第1可変アンプ35、第2可変アンプ36の設定状態を補正する。
【0029】
<(1)共振周波数補正>
予め設定されている基準周波数を中心に、ある範囲内で加振周波数を可変して、そのときの検出信号振幅を観測し、最も検出信号振幅が大きくなった周波数に共振周波数を補正する。
図2および図3は、基準周波数を中心に−1000[Hz]〜+1000[Hz]の範囲を、最小分解能1[Hz]で共振周波数を探索するプログラムの一例を示すフローチャートである。
ステップ1(ST1と略す)においてi=0とし、ST2においてi<21であることを条件に、「基準周波数−1000Hz+(i×100Hz)」を発振器(DDS)34にセットして加振(ST3)、DATA[i]=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST4)、「i=i+1」(ST5)を繰り返す。ST2においてi<21でないこと(i=21)を条件に、DATA[0]〜DATA[20]のうち最大を探してそのときの周波数を第1次ピーク周波数としてのピーク周波数1とする(ST6)。つまり、ST1〜ST6において、基準周波数を中心に−1000Hz〜+1000Hzまでを100Hz刻みでピーク周波数1を探索する。
【0030】
続いて、ST11においてi=0とし、ST12においてi<21であることを条件に、「ピーク周波数1−100Hz+(i×10Hz)」を発振器(DDS)34にセットして加振(ST13)、DATA[i]=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST14)、「i=i+1」(ST15)を繰り返す。ST12においてi<21でないこと(i=21)を条件に、DATA[0]〜DATA[20]のうち最大を探してそのときの周波数を第1次ピーク周波数としてのピーク周波数2とする(ST26)。つまり、ST11〜ST16において、ピーク周波数1を中心に−100Hz〜+100Hzまでを10Hz刻みでピーク周波数2を探索する。
【0031】
最後に、ST21においてi=0とし、ST22においてi<21であることを条件に、「ピーク周波数2−10Hz+(i×1Hz)」を発振器(DDS)34にセットして加振(ST23)、DATA[i]=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST24)、「i=i+1」(ST25)を繰り返す。ST22においてi<21でないこと(i=21)を条件に、DATA[0]〜DATA[20]のうち最大を探してそのときの周波数を探索後周波数とする(ST26)。つまり、ST21〜ST26において、ピーク周波数2を中心に−10Hz〜+10Hzまでを1Hz刻みで探索後周波数を探索する。これを発振器(DDS)34の設定周波数としてセットすることにより、共振周波数の補正を実現できる。
【0032】
<(2)加振信号振幅補正(第1可変アンプのゲイン補正)>
本システムでは、測定力一定を実現するために、基準温度条件下でのスタイラス3の共振周波数、減衰率と測定力との関係を予め測定しておき、その情報を基に所望の測定力に応じた共振周波数で加振を行っている。しかし、前述の方法で共振周波数を探索し、その周波数が予め設定していた周波数とずれが生じた場合、スタイラス3の振動エネルギーに差が生じ、設定測定力との間に差が生じてしまう。
そこで、前述の方法で探索した共振周波数と、予め求めておいた共振周波数(基準温度条件下での共振周波数)との差を求め、この差の割合に応じて、第1可変アンプ35のゲインを調整して補正を行う。
【0033】
具体的には、次のようにして行う。
周波数がずれたときに、同一加振信号電圧を印加すると、力センサ1の特性は、図4に示すように変化する。図4において、
f :基準周波数fで共振させているときの力センサの特性、
+Δf:基準周波数fに対して+Δfだけ周波数がずれたときの力センサの特性、
−Δf:基準周波数fに対して−Δfだけ周波数がずれたときの力センサの特性
である。
あらかじめ、加振信号電圧をV1〜V10まで所定ピッチ間隔で変化させ、図4に示すグラフを取得しておく。つまり、加振信号電圧V1〜V10毎のグラフを取得しておく。
また、±Δfの特性を取得するにあたって、プローブの精度保証環境温度の範囲外の温度、例えば、20±10℃(10℃、20℃、30℃)について取得しておく。
ここで、例えば、減衰率k(センサ信号の振幅比)が85%の条件下において、−Δfのときの測定力(図4の場合100μN)、fのときの測定力(図4の場合150μN)、+Δfのときの測定力(図4の場合200μN)を求める。これら3つのデータから、測定力と周波数の関係(例えば、3点の近似直線の傾き)を各加振信号電圧毎に得る。これから、加振信号電圧と、単位周波数当たりの変化測定力と、標準測定力(振幅比85%時の測定力)との関係を得る。つまり、次の表1を得る。
【0034】
【表1】
【0035】
いま、周囲温度が変化し、例えば、周波数が図5のようにfからf’に変化した場合を考える。例として、加振信号電圧がV2、f−f’=−400Hzであったとする。
加振信号電圧がV2のままだと、測定力が150μNから130μNになってしまう。
ここで、表1の2列目から、次の表2を得る。
【0036】
【表2】
【0037】
測定力を150μNに設定したければ、加振信号電圧をV2〜V3の間にすればよいことがわかる。なお、加振信号電圧V2〜V3の間は、線形補間で近似したり、多点近似で補間したりすることで求めることできる。
このようにすれば、周波数の差による影響を加振信号の振幅を補正することによって解消できる。従って、周波数変動による測定力の変動を補正できる。
【0038】
<(3)検出信号振幅補正(第2可変アンプのゲイン補正)>
電気回路の温度変化による特性変動なども含めて、より正確に補正を行うため、第2可変アンプ36のゲインを調整して補正する。発振器(DDS)34による加振周波数の設定は共振周波数探索プログラムにより補正した周波数に設定し、加振信号振幅を決定する第1可変アンプ35のゲインも補正後の設定値に設定する。
第2可変アンプ36のゲインは、検出信号レベルを比例して変化させることができる回路として構成されている。第2可変アンプ36の現在の検出信号振幅と予め設定した検出信号の基準振幅との比を、現在の第2可変アンプ36のゲインに乗算することで第2可変アンプ36のゲイン補正を行う。これにより、周囲温度の変化に対しても、検出信号の振幅を一定の基準振幅に調整できるから、電気回路の温度変化による特性変動なども含めて、より正確に補正を行うことができる。
さらに、補正精度を向上させるため、次の処理を行う。
(a)ランダムノイズ成分の除去を目的にサンプリング値の平均化処理を行う。
(b)補正処理を複数回繰り返す。
【0039】
図6は、検出信号振幅補正プログラムの一例を示すフローチャートである。
まず、第2可変アンプ36のゲインに標準設定値を設定(ST31)、DATA OLD=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST32)、「i=0」(ST33)とし、ST34においてi<繰返し回数であることを条件に、「第2可変アンプ36の補正後ゲイン=(DATA OLDと基準振幅の比)×第2可変アンプ36の現在のゲイン」(ST35)、DATA OLD=検出素子からの振幅を確保(含む平均化処理)(ST36)を行ったのち、ST37においてDATA OLD=基準振幅でないことを条件に、「i=i+1」(ST38)の処理を繰り返す。ST34においてi<繰返し回数でないこと、および、ST37においてDATA OLD=基準振幅であることを条件に、検出信号振幅補正処理を終了する。
【0040】
<(4)共振周波数補正および信号振幅補正のタイミング>
本発明において、問題となっている温度変化の主要因は、力センサ1の使用環境の周囲温度の変化である。この周囲温度の変化は、力センサ1を用いて行う測定時間に比べて、変化時定数が長いため、今回提案している補正を行う測定開始前に行うことで、さらに、精度のよい測定を行うことが可能である。
また、本補正方式は力センサ1が被測定物に接触していないときならば、何時でも補正可能なので、測定時間の長いパートプログラム使用時には、被測定物と接触していない移動区間などを利用して補正することもできる。
【0041】
<変形例の説明>
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれる。
上記実施形態では、(1)共振周波数補正、(2)加振信号振幅補正(第1可変アンプのゲイン補正)、(3)検出信号振幅補正(第2可変アンプのゲイン補正)を上げたが、(1)共振周波数補正の後、(2)加振信号振幅補正(第1可変アンプのゲイン補正)、または、(3)検出信号振幅補正(第2可変アンプのゲイン補正)を行うだけでもよい。もとより、(1)の後、(2)および(3)を実行するのがより好ましい。
【0042】
上記実施形態において、(2)加振信号振幅補正にあたって、
a)予め、加振信号電圧と、単位周波数当たりの変化測定力と、標準測定力との関係を表す表を作成しておき、
b)検出した周波数変化から各加振信号電圧における変化測定力を算出し、
c)各加振信号電圧における標準測定力から変化測定力を加減し、
d)目標測定力を実現できる加振信号電圧を求める、
手順で周波数変動による測定力の変動を補正したが、(3)検出信号振幅補正にあたっても、同様に行うことが可能である。
【0043】
つまり、
a)予め、検出信号振幅比と、単位周波数当たりの変化測定力と、標準測定力との関係を表す表を作成しておき、
b)検出した周波数変化から各振幅比における変化測定力を算出し、
c)各振幅比における標準測定力から変化測定力を加減し、
d)目標測定力を実現できる振幅比を求める、
手順でも、電気回路の温度変化による特性変動なども含めて、より正確に補正を行うことができる。
【0044】
また、周波数の補正に対して測定力を一定に保つための方法としては、上記実施形態で述べた方法に限らず、次のような方法であってもよい。
まず、検出素子4からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に加振信号の周波数を補正し(周波数補正工程)、これによって加振信号の周波数が補正された際、測定力(スタイラスが被測定物との接触によって受ける測定力)が略一定になるように、検出信号の減衰率を補正する(減衰率補正工程)ようにしてもよい。つまり、図5に示すように、周波数が変化すると、同じ減衰率では、測定力が変化してしまうので、測定力が同じになるように、減衰率を補正する。
このようにすれば、周囲温度が変化しても、検出素子からの検出信号が検出され、この検出信号の振幅が最大となる周波数に加振信号の周波数が補正されるから、検出感度を高く維持することができる、しかも、加振信号の周波数が補正されても、測定力が略一定になるように、検出信号の振幅の減衰率が補正されるから、常に一定の測定力で測定を行うことができる。
【0045】
上記実施形態では、センサ1のベース2とスタイラス3とを一体的に構成したが、これに限らず、別体であってもよい。つまり、ベース2とスタイラス3とを別体として構成し、ベース2に対してスタイラス3を接着固定するようにしてもよい。
上記実施形態では、スタイラス3を軸方向へ振動させるようにしたが、これに限らず、スタイラス3の軸に対して交差する方向に振動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機、形状測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などに適用可能である。とくに、微細形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る表面形状測定装置の一実施形態を示すブロック図。
【図2】同上実施形態の共振周波数探索処理の手順(ST1〜16)を示すフローチャート。
【図3】同上実施形態の共振周波数探索処理の手順(ST21〜26)を示すフローチャート。
【図4】同上実施形態において、周波数がずれた際に同一加振信号電圧を印加したときの力センサの特性を示す図。
【図5】図4において、周囲温度が変化し、基準周波数が変化したときの力センサの特性を示す図。
【図6】同上実施形態の検出信号振幅補正の手順を示すフローチャート。
【図7】力センサの構成を示す分解斜視図。
【図8】力センサに与える加振信号と検出信号を示す図。
【図9】力センサが被測定物と接触した際の検出信号の変化を示す図。
【図10】力センサの検出信号の減衰率と測定力との関係を示す図。
【図11】力センサを用いた形状測定システムを示すブロック図。
【図12】力センサが使用される周囲温度と検出信号との関係を示す図。
【符号の説明】
【0048】
1…加振型力センサ、
3…スタイラス
4…加振素子
5…検出素子
10…プローブ
30…コントローラ
31…制御手段(周波数補正手段、加振用ゲイン調整手段、検出用ゲイン調整手段)
34…発振器(発振手段)
35…第1可変アンプ(加振信号振幅補正手段)
36…第2可変アンプ(検出信号振幅補正手段)
Pi…加振信号
Qo…検出信号
W…被測定物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、
設定周波数の加振信号を発振し出力する発振手段と、
前記発振手段からの加振信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して前記センサの加振素子に与える加振信号振幅補正手段と、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、
この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて前記加振信号振幅補正手段の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、
設定周波数の加振信号を発振し前記センサの加振素子に与える発振手段と、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、
前記検出素子からの検出信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して出力する検出信号振幅補正手段と、
前記検出手段からの検出信号の振幅と予め設定した基準振幅との比を基に、前記検出信号の振幅が基準振幅になるように前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインを補正する検出用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表面性状測定装置において、
前記検出用ゲイン調整手段は、前記検出手段からの検出信号を取り込み、この検出信号の振幅と前記基準振幅との比を、前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインに乗じて、これを前記検出信号振幅補正手段の補正後の設定ゲインとすることを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面性状測定装置において、
前記周波数補正手段は、基準周波数の前後所定範囲を一定間隔刻みで抽出した複数の第1次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第1次ピーク周波数を求めたのち、この第1次ピーク周波数の前後の第1次抽出周波数範囲を前記一定間隔刻みよりも細かい間隔で抽出した複数の第2次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第2次ピーク周波数を求め、この第2次ピーク周波数、または、第2次ピーク周波数を中心として第2次抽出周波数よりも細かい間隔で求めた第3次以降のピーク周波数を前記発振手段の設定周波数として設定することを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項5】
先端に接触部を有するスタイラス、加振信号を受けて前記スタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号の減衰が予め設定した減衰率まで低下したときの前記位置検出手段の測定位置情報を取り込み、この測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定方法であって、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記加振信号の周波数を補正する周波数補正工程と、
この周波数補正工程によって加振信号の周波数が補正された際、前記スタイラスが被測定物との接触によって受ける測定力が略一定になるように、前記検出信号の減衰率を補正する減衰率補正工程とを備えることを特徴とする表面性状測定方法。
【請求項1】
先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、
設定周波数の加振信号を発振し出力する発振手段と、
前記発振手段からの加振信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して前記センサの加振素子に与える加振信号振幅補正手段と、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、
この周波数補正手段によって新たに設定された新設定周波数と旧設定周波数との差に応じて前記加振信号振幅補正手段の設定ゲインを調整する加振用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、
設定周波数の加振信号を発振し前記センサの加振素子に与える発振手段と、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する周波数補正手段と、
前記検出素子からの検出信号の振幅を設定ゲインに応じて補正して出力する検出信号振幅補正手段と、
前記検出手段からの検出信号の振幅と予め設定した基準振幅との比を基に、前記検出信号の振幅が基準振幅になるように前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインを補正する検出用ゲイン調整手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表面性状測定装置において、
前記検出用ゲイン調整手段は、前記検出手段からの検出信号を取り込み、この検出信号の振幅と前記基準振幅との比を、前記検出信号振幅補正手段の設定ゲインに乗じて、これを前記検出信号振幅補正手段の補正後の設定ゲインとすることを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面性状測定装置において、
前記周波数補正手段は、基準周波数の前後所定範囲を一定間隔刻みで抽出した複数の第1次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第1次ピーク周波数を求めたのち、この第1次ピーク周波数の前後の第1次抽出周波数範囲を前記一定間隔刻みよりも細かい間隔で抽出した複数の第2次抽出周波数を前記発振手段に設定周波数として順次設定し、前記検出信号の振幅が最も大きい第2次ピーク周波数を求め、この第2次ピーク周波数、または、第2次ピーク周波数を中心として第2次抽出周波数よりも細かい間隔で求めた第3次以降のピーク周波数を前記発振手段の設定周波数として設定することを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項5】
先端に接触部を有するスタイラス、加振信号を受けて前記スタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号の減衰が予め設定した減衰率まで低下したときの前記位置検出手段の測定位置情報を取り込み、この測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定方法であって、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記加振信号の周波数を補正する周波数補正工程と、
この周波数補正工程によって加振信号の周波数が補正された際、前記スタイラスが被測定物との接触によって受ける測定力が略一定になるように、前記検出信号の減衰率を補正する減衰率補正工程とを備えることを特徴とする表面性状測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−271337(P2007−271337A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94615(P2006−94615)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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