説明

表面改質装置及び表面改質方法

【課題】気化室に対して改質剤化合物を供給する際の温度変化の影響を排除し、ひいては、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少ない表面改質装置等を提供する。
【解決手段】改質剤化合物を貯蔵するための貯蔵室と、所定温度下に蒸発させ、気体状態の改質剤化合物を生成するための気化部と、気化部に、キャリアガスを導入し、気体状態の改質剤化合物を、噴射部に移送するための移送部と、改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けるための噴射部と、を含む表面改質装置等であって、気化部が、少なくとも第1の気化室及び第2の気化室を含む複数の気化室を備えるとともに、当該第1の気化室及び第2の気化室を交互使用するための切替装置を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質装置及びそれを用いた表面改質方法に関する。特に、複数の気化室を備え、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少ない表面改質装置及びそれを用いた表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体物質、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレン樹脂等の表面は、疎水性や撥水性であることが多く、他部材の接着、印刷、紫外線塗装等の表面処理が一般に困難である。
また、ステンレスやマグネシウム等の金属表面は、金属の中では密着力や表面平滑性が不足しており、紫外線硬化型塗料等を直接的に適用した場合には、塗膜が容易に剥離してしまうという問題点が見られる。
また、高分子材料に対して、光触媒としての酸化チタンや酸化ジルコニウム等の無機粒子を分散させることが試みられているが、これらの無機粒子は分散性が乏しく、取り扱いが容易でないという問題が見られる。
【0003】
そこで、これらの問題を解決すべく、所定の表面改質装置を用いた固体物質の表面改質方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図9に示すように、固体物質250に対して、特定沸点を有する改質剤化合物214を含む燃料ガスの火炎234を吹き付け処理(ケイ酸化炎処理等)することにより、ケイ素含有化合物等を含有する改質剤化合物を比較的多量に使用した場合であっても、燃焼しやすくし、酸化炎処理工程を省いた場合であっても、固体物質250に対する表面改質を均一かつ十分に実施できる固体物質の表面改質方法が開示されている。
【0004】
また、供給される改質剤化合物による気化室の温度変化を解決すべく、貯蔵室の温度と、気化室の温度とが、所定の関係式を満足するように規定した表面改質装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、気化室の温度をT1(℃)とし、貯蔵室の温度をT2(℃)としたときに、当該T1及びT2が、下記温度関係式(1)を満足するように制御し、より好ましくは、気化室の温度(T1)および貯蔵室の温度(T2)を10〜40℃未満の範囲内の値とした表面改質装置が開示されている。
T2−15℃≦T1≦T2+15℃ (1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO03/069017号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2008−50629号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された固体物質の表面改質方法の場合、貯蔵室から改質剤化合物214を追加混合した場合には、一般に貯蔵室中に貯蔵されている改質剤化合物214の温度は制御されていないため、図10中にラインBに示すように、気化室212の温度が変化しやすいという問題が見られた。
その結果、気化室212中における蒸発状態が不安定になるとともに、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度が不安定になり、ひいては、安定的に固体物質の表面を改質することが困難になるという問題が見られた。
【0007】
また、特許文献2に記載された表面改質装置は、気化室の温度のみならず貯蔵室の温度まで常に制御しなければならないため、装置の構造が複雑になりやすい上に、維持管理が容易でないという問題が見られた。
また、貯蔵室から気化室に対して、改質剤化合物を追加混合したような場合や、環境温度が大きく変化したような場合に、気化室内部での温度変化が生じ、その結果、気化室内の蒸発状態が大きく変化しやすいという問題も見られた。
【0008】
そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、気化室を複数設けることによって、一つの気化室に対して改質剤化合物を供給しながらであっても、別の気化室を利用して、所定のケイ酸化炎処理を連続的に実施できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、気化部における温度変化や濃度変化の影響を排除し、ひいては、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少なく、安定的かつ連続的に固体物質の表面を改質できる表面改質装置及びそれを用いた表面改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、改質剤化合物としてのケイ素含有化合物を貯蔵するための貯蔵室と、
貯蔵室から、改質剤化合物が供給されるとともに、所定温度下にて蒸発させ、気体状態の改質剤化合物を生成するための気化部と、
気化部に、キャリアガスを導入し、気体状態の改質剤化合物を、燃料ガスの一部として、噴射部に移送するための移送部と、
改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けるための噴射部と、
を含む表面改質装置であって、
気化部が、少なくとも第1の気化室及び第2の気化室を含む複数の気化室を備えるとともに、当該第1の気化室及び第2の気化室を交互使用するための切替装置を備えることを特徴とする表面改質装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の表面改質装置であれば、複数の気化室を備えることから、第1の気化室及び第2の気化室のいずれかに対して改質剤化合物を供給しつつ、所定温度下にて、もう一方の気化室を動作させながら、移送部および噴射部の協働において、所定のケイ酸化炎処理を連続的に実施することができる。
したがって、所定のケイ酸化炎処理を実施しながら、気化部に対して改質剤化合物を供給した場合であっても、気化室が一つの場合と比較して、気化部における温度変化や濃度変化の影響を排除し、ひいては、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少なく、安定的かつ連続的に固体物質の表面を改質することができる。
【0010】
また、本発明の表面改質装置を構成するにあたり、第1の気化室及び第2の気化室における一つあたりの容積を、それぞれ10〜200cm3の範囲内の値とすることが好まし
い。
このように構成することにより、改質剤化合物が供給されたいずれかの気化室の温度を、短時間で所定温度に調節することができ、迅速かつ安定的に所定の蒸発状態を回復させることができる。
また、このように構成すると、相対的に、気化室において、空気に対して露出した改質剤化合物の表面積を狭め、例えば、0.1〜10cm2の範囲内の値とできることから、改質剤化合物の消費量を少なく制御することができる。
なお、従来の表面改質装置における気化室の容積は、通常、1500cm3以上であって、空気に対して露出した改質剤化合物の表面積についても相対的に大きく、通常、30cm2以上であることが判明している。
【0011】
また、本発明の表面改質装置を構成するにあたり、貯蔵室からの改質剤化合物の供給口が、第1の気化室及び第2の気化室の底部に設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、気化室の上方から改質剤化合物を滴下した場合に生じる液面の波打ちを抑制することができるため、迅速に所定の蒸発状態を回復させることができる。
【0012】
また、本発明の表面改質装置を構成するにあたり、第1の気化室及び第2の気化室が、円柱状または角柱状であることが好ましい。
このように構成することにより、キャリアガスと、改質剤化合物とを、長さ方向の空間を利用して、より安定的に混合させることができ、その結果、所定の蒸発状態を安定的に維持することができる。
また、このように気化室を構成することにより、サイクロン状のキャリアガスの場合、壁を伝わって滑らかに上昇しやすくなり、改質剤化合物を、さらに均一に混合することができる。
【0013】
また、本発明の表面改質装置を構成するにあたり、第1の気化室及び第2の気化室におけるキャリアガス導入口が、気化室の中心軸に対して、偏心位置に設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、キャリアガスをサイクロン状にして供給することができることから、改質剤化合物を、さらに均一に混合することができ、キャリアガスの導入中であっても、所定の蒸発状態を、より安定的に維持することができる。
【0014】
また、本発明の表面改質装置を構成するにあたり、第1の気化室が、主気化室であって、改質剤化合物を補充する時以外は、常時動作しており、第2の気化室が、予備気化室であって、第1の気化室に、改質剤化合物を補充する際のみに動作していることが好ましい。
このように構成することにより、第1の気化室と、第2の気化室との態様を変えることができ、その結果、予備気化室の第2の気化室から、高価なセンサー類(圧力センサーや液面センサー等)については省略したり、構成材料を比較的安価かつ軽量なものとしたりすることができる。
【0015】
また、本発明の別の態様は、改質剤化合物としてのケイ素含有化合物を貯蔵するための貯蔵室と、
貯蔵室から、前記改質剤化合物が供給されるとともに、所定温度下にて蒸発させ、気体状態の改質剤化合物を生成するための気化部と、
気化部に、キャリアガスを導入し、気体状態の改質剤化合物を、燃料ガスの一部として、噴射部に移送するための移送部と、
改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けるための噴射部と、を含むとともに、
気化部が、少なくとも第1の気化室及び第2の気化室を含む複数の気化室を備え、かつ、交互使用するための切替装置を備えた表面改質装置を用いてなる表面改質方法であって、
下記工程(a)及び(b)を同時実施する工程を含むことを特徴とする表面改質方法である。
(a)第1の気化室及び第2の気化室のいずれかに対して、貯蔵室から改質剤化合物を供給する工程。
(b)第1の気化室及び第2の気化室のうち、工程(a)が実施されている気化室とは別の気化室に対して、キャリアガスを導入しながら、気化した改質剤化合物を移送し、噴射部において、気化した改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を、被処理物に対して噴射する工程。
すなわち、本発明の表面改質方法であれば、複数の気化室を備えた表面改質装置を用いていることから、工程(a)及び工程(b)を、同時実施した場合であっても、気化室が一つの場合と比較して、気化部における温度変化や濃度変化の影響を排除し、ひいては、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少なく、安定的かつ連続的に固体物質の表面を改質することができる。
【0016】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、第1の気化室及び第2の気化室に、それぞれ液面計を備えるとともに、改質剤化合物が所定基準以下の液面であると検知された気化室において、工程(a)を実施することが好ましい。
このように実施することにより、工程(a)及び工程(b)が実施されるそれぞれの気化室の交互使用を、より確実に行うことができる。
【0017】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、工程(a)において、気化室の温度を35〜80℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、工程(b)を実施するための所定の蒸発状態を、容易に回復することができる。
【0018】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、工程(b)において、気化室に対して、キャリアガスを、気化室の中心軸に対して偏心位置からサイクロン状にして導入することが好ましい。
このように実施することにより、工程(b)が実施されている気化室において、キャリアガスと、改質剤化合物とを、より確実かつ均一に混合することができることから、所定の蒸発状態を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)〜(b)は、本発明の表面改質装置及びそれを用いた表面改質方法の概略を説明するために供する図である。
【図2】図2は、気化室の容積と、改質剤化合物の供給安定性と、の関係を説明するために供する図である。
【図3】図3は、複数の気化室を備えた気化部を説明するために供する図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、サイクロン方式の気化室におけるキャリアガスの導入状態を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、プリズムセンサーを説明するために供する図である。
【図6】図6(a)〜(b)は、マイクロポンプを説明するために供する図である。
【図7】図7は、IRセンサーを説明するために供する図である。
【図8】図8(a)〜(b)は、非サイクロン方式の気化室におけるキャリアガスの導入状態を説明するために供する図である。
【図9】図9は、従来の表面改質装置の構造を説明するために供する図である。
【図10】図10は、従来の表面改質装置における気化室の温度変化を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)〜(b)に示すように、改質剤化合物23としてのケイ素含有化合物を貯蔵するための貯蔵室21と、貯蔵室21から、改質剤化合物23が供給されるとともに、所定温度下にて蒸発させ、気体状態の改質剤化合物23´を生成するための気化部11(11a、11b)と、気化部11(11a、11b)に、キャリアガス41を導入し、気体状態の改質剤化合物23´を、燃料ガスの一部として、噴射部50に移送するための移送部30と、改質剤化合物23´を含む燃料ガスに由来した火炎51を吹き付けるための噴射部50と、を含む表面改質装置10であって、気化部11が、少なくとも第1の気化室11a及び第2の気化室11bを含む複数の気化室を備えるとともに、当該第1の気化室11a及び第2の気化室11bを交互使用するための切替装置60(60a、60b、60c、60d、60e、60f)を備えることを特徴とする表面改質装置10である。
以下、第1の実施形態としての表面改質装置を、構成要件ごとに具体的に説明する。
【0021】
1.基本的構成
本発明の表面改質装置10は、図1(a)〜(b)に示すように、特定の改質剤化合物23を貯蔵する貯蔵室21と、少なくとも第1の気化室11a及び第2の気化室11bを含む複数の気化室を備えた気化部11と、移送部30と、噴射部50と、第1の気化室11aおよび第2の気化室11bを交互使用するための切替装置60と、を基本的に含んで構成される。
ここで、本発明の表面改質装置10において、図1(a)に示すように、第1の気化室11aに対して改質剤化合物23を供給している場合には、切替装置60a、60b、60c、60d、60e、60fを動作させ、別の気化室である第2の気化室11bに対してキャリアガス41を導入するとともに、噴射部50において、ケイ酸化炎処理を実施することができる。
逆に、例えば、図1(b)に示すように、第2の気化室11bに対して改質剤化合物23を供給している場合には、切替装置60a、60b、60c、60d、60e、60fを動作させ、別の気化室である第1の気化室11aに対してキャリアガス41を導入するとともに、噴射部50において、ケイ酸化炎処理を実施することができる。
したがって、本発明の表面改質装置であれば、気化部に対して改質剤化合物を供給しながら表面改質を実施した場合であっても、改質剤化合物が供給されている気化室と、表面改質の実施に供されている気化室とが別であることから、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少なくなり、安定的に固体物質の表面を改質することができる。
なお、切替装置の動作としての複数の気化室に対する改質剤化合物やキャリアガスの選択的供給または導入は、電磁弁やコック等を用いて、適宜行うことができ、しかも、それらの切替動作は手動であってもコンピュータ制御であってもよい。
また、噴射部は、図1(a)〜(b)に示すように、基本的に1つで十分であるが、複数の気化室ごとに異なる改質剤化合物を用いる場合や、表面改質を実施しつつ噴射部に堆積するケイ素含有化合物を除去したい場合等には、複数の気化室ごとに噴射部を複数設けてもよい。
【0022】
2.気化部
(1)気化室
本発明における気化部11は、少なくとも第1の気化室11a及び第2の気化室11bを含む複数の気化室を備えるとともに、これらを交互使用するための切替装置60(60a、60b、60c、60d、60e、60f)を備えることを特徴とする。
この理由は、このように複数の気化室を備えることにより、第1の気化室及び第2の気化室を交互使用することができるためである。
より具体的には、第1の気化室11a及び第2の気化室11bの交互使用として、第1の気化室を動作させながら、第2の気化室に対して、所定量の改質剤化合物を供給することができ、あるいは、第1の気化室に対して、所定量の改質剤化合物を供給しながら、第2の気化室を動作させることができる。
したがって、所定量の改質剤化合物を供給する際の気化室における温度変化や濃度変化等の影響を実質的に排除することができる。
その上、第1の気化室11a及び第2の気化室11bのいずれかに不具合が生じたような場合であっても、所定の表面改質処理操作を中断することなく、気化室の修理や交換を行うことができる。
なお、気化室に収容する改質剤化合物については、第2の実施形態において、詳述する。
【0023】
また、第1の気化室11a及び第2の気化室11bの交互使用として、第1の気化室を主気化室として動作させながら、当該第1の気化室において不具合が生じた場合においてのみ、予備的な第2の気化室に切り替えることもできる。
したがって、表面改質装置10の一部に不具合が生じた場合であっても、所定の表面改質処理操作を中断することなく、連続的に実施することができる。
【0024】
さらに、第1の気化室11a及び第2の気化室11bの交互使用として、異なる表面改質剤をそれぞれ収容し、表面改質する対象としての固体物質の種類や態様に応じて、いずれかの表面改質剤を用いたケイ酸化炎処理を施すこともできる。
したがって、第1段階において、第1の気化室11aを利用して、例えば、沸点が相対的に低い表面改質剤に基づくケイ酸化炎処理を施し、さらに、第2段階において、第2の気化室11bを利用して、例えば、沸点が相対的に高い表面改質剤に基づくケイ酸化炎処理を施し、全体として、表面改質効果に優れた表面処理とすることができる。
【0025】
(2)気化室の容積
また、第1の気化室及び第2の気化室の少なくとも一つの容積を、それぞれ10〜200cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、気化室の容積をかかる範囲とすることで、改質剤化合物が供給された気化室の温度を、短時間で所定の温度に調節することができ、容易に所定の蒸発状態を回復させることができるためである。
また、このような容積であれば、相対的に、改質剤化合物の蒸発面積が小さくなることから、所定の蒸発状態を保持しやすくなるとともに、キャリアガスとの混合比率の精度を高めることができる。
より具体的には、気化室の容積が10cm3未満の値になると、改質剤化合物の減少や、
導入されるキャリアガスの影響によって、液面位置の変動が過度に激しくなるばかりか、改質剤化合物の収容量が低下し、供給頻度が過度に多くなる場合があるためである。
また、気化室の容積が10cm3未満の値になると、改質剤化合物の蒸発面積が過度に小さくなって、キャリアガスとの混合比率の精度が低下したり、所定の蒸発状態を安定的に維持することが困難になったりする場合があるためである。
一方、気化室の容積が200cm3を超えた値になると、改質剤化合物が供給された気化室の温度を、短時間で所定の温度に回復させることが困難になったり、改質剤化合物の蒸発面積が過度に大きくなって、キャリアガスとの混合比率の精度が逆に低下したりする場合があるためである。
したがって、気化室の容積を、12〜100cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜80cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
次いで、図2を用いて、気化室の容積と、改質剤化合物の供給安定性と、の関係を説明する。
すなわち、図2には、横軸にキャリアガスの流量(L/分)を採り、縦軸に改質剤化合物の消費量(mL/時)を採った特性曲線A〜Cが示してある。
ここで、特性曲線A〜Cは、気化室の容積を、それぞれ20、100及び500cm3とした場合(蒸発面積:それぞれ2、10及び50cm2)の特性曲線である。
【0027】
かかる特性曲線A〜Cより理解されるように、気化室の容積が大きくなるほど、キャリアガスの流量と、改質剤化合物の消費量と、が正比例に近い相関関係を示すようになる。
一方、気化室の容積が小さくなるほど、キャリアガスの流量の増加に伴う改質剤化合物の消費量の増加が小さくなり、特性曲線が寝ていることが分かる。
したがって、かかる特性曲線A〜Cより、気化室の容積を比較的小さくすることで、たとえキャリアガスの流量に変動があった場合であっても、例えば、8〜15mL/時といった、表面改質を実施するにあたり過不足無い改質剤化合物の消費量を、安定的に維持しやすくなることが分かる。
【0028】
(3)改質剤化合物の供給口
また、図3に示すように、貯蔵室21からの改質剤化合物の供給口12a、12bが、複数の気化室11a、11bの底部にそれぞれ設けてあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、気化室の上方から改質剤化合物を滴下した場合と比較して、液面の波打ちを抑制できるとともに、気化室に残存している改質剤化合物との間で迅速かつ均一に混合することができるためである。
したがって、気化室の容積や改質剤化合物の蒸発面積が相対的に小さくなった場合であっても、所定の蒸発状態を迅速に回復させることができる。
【0029】
(4)気化室の形状
また、複数の気化室のうち、少なくとも一つが、円筒状(シリンダー状)または角柱状であることが好ましい。
この理由は、気化室をこのような形状とすることによって、キャリアガスと、改質剤化合物とを、より確実かつ安定的に混合させることができるためである。
また、このような形状とすることによって、サイクロン状のキャリアガスを生成しやすくなって、キャリアガスと、改質剤化合物との間の混合性をさらに良好なものとすることができる。
したがって、キャリアガスの導入中であっても、所定の蒸発状態を安定的に維持することができる。
すなわち、複数の気化室のうち、少なくとも一つが、所定形状であれば、導入されたキャリアガスがその内壁に沿った方向の気流を生じやすくなって、キャリアガスと、改質剤化合物とを、より安定的に混合させることができるためである。
【0030】
なお、気化室が円筒状(シリンダー状)の場合、その直径を0.5〜5cmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜4cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜3cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、気化室が円筒状の場合、その高さを3〜30cmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜20cmの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜15cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
一方、気化室が角柱状の場合、その断面の一辺を0.5〜5cmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜4cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜3cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、気化室が角柱状の場合、その高さを3〜30cmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜20cmの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜15cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0031】
(5)キャリアガス導入口
また、図4に示すように、複数の気化室11a、11bのうち、少なくとも一つの気化室におけるキャリアガス導入口13が、気化室の中心軸14に対して、偏心位置に設けてあることが好ましい。
すなわち、例えば、円柱状または角柱状の気化室の中心軸を想定した場合、その中心軸に向かって、キャリアガスを導入するのではなく、キャリアガスの導入方向が中心軸と一致しない位置、いわゆる偏心位置に向かって、サイクロン状のキャリアガスを導入することが好ましい。
この理由は、キャリアガスの供給口をかかる位置に設けることで、キャリアガスをサイクロン状にして供給することができることから、キャリアガスの導入中であっても、所定の蒸発状態を、より安定的に維持することができるためである。
よって、キャリアガスをサイクロン状にして供給することにより、キャリアガスと、改質剤化合物とを、より安定的に混合させることができるためである。
【0032】
(6)液面計
また、複数の気化室には、それぞれ改質剤化合物の液面レベルを測定するための液面計を設けることが好ましい。
このような液面計としては、静電容量式液面計、フロー式液面計、超音波式液面計、圧力式液面計、プリズムセンサー(プリズム式液面計)等が挙げられる。
但し、設備の小型化や、軽量化が容易であることから、図5(a)および(b)に示すように、プリズムセンサー15を用いることが好ましい。
かかるプリズムセンサー15は、図5(b)に示すように、発光素子15aと、受光素子15bとから基本的に構成されており、ステンレス等の防錆材料から構成してあることが好ましい。
また、センサーを設ける箇所としては、図5(a)に示すように、気化室11と連通した外部箇所16とすることが好ましい。
この理由は、気化室の外周面は、ヒーターや、断熱材等によって被覆される場合が多いため、気化室の外周面を貫通した形で液面計を設けると、気化室の温度調節を阻害する場合があるためである。
【0033】
(7)送液ポンプ
また、複数の気化室は、移送部から気化室へ改質剤化合物を循環させるに際して使用する送液ポンプを備えることが好ましい。
例えば、送液ポンプとして、ギヤポンプ、渦流ポンプ、渦流タービンポンプ等が挙げられるが、特に、図6(a)に示すように、マイクロポンプ17を備えることが好ましい。
この理由は、このようなマイクロポンプ17であれば、移送路から気化室への改質剤化合物の量を微調節し、移送することができるためである。
なお、かかるマイクロポンプ17は、図6(b)に示すように、基本的に、一定速度で動いて、所定方向に移動するピストン17aによって、シリンダー17b内部に収容された改質剤化合物を、微量であって、かつ、一定速度で送液できるように構成されている。
さらに、気化室には、図3に示すように、温度センサー18(18a、18b)を設けることも好ましい。
【0034】
(8)温度調節装置
また、複数の気化室には、気化室内の温度を調節するためのサーモスタットやヒーターを備えることが好ましい。
また、図3に示すように、かかるサーモスタットやヒーター19(19a、19b)は、気化室11の外周面に設けてもよいし、気化室11の内部に設けてもよい。
また、サーモスタットやヒーターの種類としては、シースヒーター、投込みヒーター、フィンヒーター、カートリッジヒーター、スーパーフラットヒーター、鋳込みヒーター、マイクロヒーター、およびIHヒーター等が好適に使用される。
その他、気化室の外周面を、断熱材により被覆し、環境温度の影響を低減させることも好ましい。
【0035】
3.貯蔵室
また、図1(a)〜(b)に示すように、貯蔵室21は、複数の気化室11a、11bに対してそれぞれ改質剤化合物23を供給するために、当該改質剤化合物23を貯蔵しておくための部材である。
かかる貯蔵室21は、基本的に、それぞれの気化室11a、11bに対して、電磁弁60a〜f等により改質剤化合物23の供給を制御可能なように管構造70にて連結してあれば、構成上、特に限定されるものではないが、図3に示すように、改質剤化合物補充口25、残圧抜き24及び液面計22等が設けてあることが好ましい。
【0036】
4.移送部
また、図1(a)〜(b)に示すように、移送部30は、いずれかの気化室11a、11bから移送されてきた気体状の改質剤化合物23´と、圧縮空気源から供給される空気42、及び炭化水素ガス源から供給される炭化水素ガス43と、を均一に混合して燃料ガスとし、噴射部50に移送するための部材である。
したがって、気体状の改質剤化合物と、圧縮空気源から移送されてきた空気等と、を混合して燃料ガスとするための混合室であるミキサ31a、31bを備えるとともに、流量を制御するための電磁弁や流量計、あるいは燃料ガスの圧力を制御するための圧力計を備えた管構造であることが好ましい。
【0037】
また、噴射部へ移送される燃料ガス中の改質剤化合物の濃度を測定するために、ガス濃度計を備えていることが好ましく、図7に示すように、赤外線を用いたIRセンサー52およびそのモニター等を含む制御部52aを備えることが好ましい。
この理由は、IRセンサーからのデータ信号を利用して、非接触であっても燃料ガス中の改質剤化合物の濃度を測定することができ、それから改質剤化合物の濃度を調整することによって、噴射部への燃料ガスの供給量をコントロールすることができるためである。したがって、IRセンサーからの信号をもとに、燃料ガス中の改質剤化合物の濃度を微妙かつ迅速に調整することが可能となる。
より具体的には、所定波長領域に赤外線を照射して、燃料ガス中の改質剤化合物に帰属した赤外線の吸収ピークの高さを測定し、予め作成しておいた検量線(改質剤化合物の濃度と、所定波長ピークの高さ)に照らして、燃料ガス中の改質剤化合物の濃度を算出することができる。
【0038】
5.噴射部
また、図1(a)〜(b)に示すように、噴射部50は、移送部30を経て送られてきた燃料ガスを燃焼させ、得られた火炎51を、被処理物80である固体物質に吹き付けるためのバーナーを備えた部材である。
かかるバーナーの種類も特に制限されるものでないが、例えば、予混合型バーナー、拡散型バーナー、部分予混合型バーナー、噴霧バーナー、蒸発バーナー、微粉炭バーナー等のいずれであっても良い。
また、バーナーの形態についても特に制限されるものでなく、例えば、図1(a)〜(b)に示すように、先端部に向かって拡大し、全体として扇型の構成であっても、長方形
等であっても良い。
【0039】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図1(a)〜(b)に示すように、第1の実施形態としての表面改質装置を用いてなる表面改質方法であって、下記工程(a)及び(b)を同時実施する工程を含むことを特徴とする表面改質方法である。
(a)複数の気化室のうち、いずれかの気化室に対して、貯蔵室から改質剤化合物を供給する工程。
(b)複数の気化室のうち、工程(a)が実施されている気化室とは別の気化室に対して、キャリアガスを導入するとともに、気化した改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を、被処理物に対して噴射する工程。
以下、第2の実施形態としての表面改質方法を、第1の実施形態と重複する点は省略しつつ、具体的に説明する。
【0040】
1.工程(a)
工程(a)は、いずれかの気化室に対して、貯蔵室から改質剤化合物を供給する工程である。
【0041】
(1)気化室
工程(a)に供される気化室は、表面改質の実施により気化室中の改質剤化合物量が減少し、新たに改質剤化合物の供給が必要とされている状態の気化室である。
例えば、図1(a)における第1の気化室11a、あるいは図1(b)における第2の気化室11bが該当する。
なお、いずれかの気化室が改質剤化合物の供給を受けている間における表面改質の実施は、後述する工程(b)として、別の気化室が担うことになる。
したがって、本発明であれば、改質剤化合物の供給と、表面改質と、を同時に行った場合であっても、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少なく、安定的に固体物質の表面を改質することができる。
【0042】
また、図3に示すように、複数の気化室11a、11bに、それぞれ液面計15a、15bを備えるとともに、改質剤化合物が所定基準以下の液面であると検知された気化室において、工程(a)を実施することが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、工程(a)及び工程(b)が実施されるそれぞれの気化室の交換を、より確実に行うことができるためである。
なお、改質剤化合物の供給基準は、特に限定されるものではないが、一般に、改質剤化合物(液体)の体積が、気化室の容積の1/10以下まで減少する以前とすることが好ましい。
【0043】
また、工程(a)を実施する際に、最終的な気化室の温度を、35〜80℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、最終的な気化室の温度をかかる範囲とすることで、工程(b)を実施するための所定の蒸発状態を、容易に回復することができるためである。
すなわち、最終的な気化室の温度が35℃未満の値となると、改質剤化合物の沸点にもよるが、燃料ガス中に十分量の改質剤化合物を供給することが困難になる場合があるためである。一方、最終的な気化室の温度が80℃を超えた値になると、気化室に対する改質剤化合物の供給終了後、工程(b)を実施できる蒸発状態に至るまでの時間が過度に長くなって、工程(a)及び工程(b)を同時に実施することが困難になる場合があるためである。
したがって、工程(a)を実施する際に、最終的な気化室の温度を、40〜70℃の範囲内の値とすることが好ましく、45〜60℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、工程(a)を実施する際の最終的な気化室の温度は、言うまでもなく、次に工程(b)を実施する際の気化室の温度でもある。
【0044】
(2)改質剤化合物
(2)−1 沸点
また、改質剤化合物の沸点(大気圧下)を10〜200℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる改質剤化合物の沸点が10℃未満の値であっては、揮発性が激しくて、取り扱いが困難となる場合があるためである。
一方、かかる改質剤化合物の沸点が200℃を超えると、空気流との混合性が低下し、固体物質の表面改質が不均一になったり、長時間にわたって、改質効果を持続させることが困難になったりする場合があるためである。
したがって、かかる改質剤化合物の沸点を15〜180℃の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜120℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる改質剤化合物の沸点は、改質剤化合物自体の構造を制限することによっても調整することができるが、その他、共沸現象を利用して、比較的沸点が低いアルキルシラン化合物等と、比較的沸点が高いアルコキシラン化合物等とを適宜混合使用することによっても調整することができる。
【0045】
あるいは、後述する改質剤化合物とともに、アルコール化合物、例えば、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、アミノアルコール、ベンジルアルコール、グリコール等を添加することも好ましい。
この理由は、このようなアルコール化合物を添加することにより、改質剤化合物の沸点を調整することができるとともに、改質剤化合物と比較して蒸発しやすいために、安定的に表面改質を行うことができるためである。
また、このようなアルコール化合物を添加することにより、炎色反応によって、確実に、固体物質の表面に対して、改質剤化合物が吹き付けていることを目視で確認することができるためである。
なお、後述する改質剤化合物にアルコール化合物を添加する場合、改質剤化合物100重量部に対して、アルコール化合物を1〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜50重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、8〜30重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(2)−2 種類
また、改質剤化合物として、ケイ
素含有化合物を用いることを特徴とする。
この理由は、ケイ素含有化合物であれば、キャリアガスとの混合性が向上するとともに、水酸基が表面に現われやすくなって、固体物質の表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子を均一に形成することができ、固体物質を効果的に表面改質させることができるためである。
このようなケイ素含有化合物としては、例えば、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物等が挙げられる。
また、これらの化合物のうち、アルキルシラン化合物は、一般に沸点が低いものが多く、加熱により容易に気化して、空気等と均一に混合できることから好ましい改質剤化合物である。
このようなアルキルシラン化合物の好適例としては、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジフェニルシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジフェニルシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリフェニルシラン、ジメチルジエチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0047】
また、ケイ素含有化合物は、分子内または分子末端に窒素原子、ハロゲン原子、ビニル基及びアミノ基の少なくとも一つを有する化合物、あるいは分子内にシロキサン結合を有する化合物であることがより好ましい。
より具体的には、ヘキサメチルジシラザン(沸点:126℃)、ビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)、ビニルトリエトキシシラン(沸点:161℃)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(沸点:144℃)、トリフルオロプロピルトリクロロシラン(沸点:113〜114℃)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(沸点:215℃)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:217℃)、ヘキサメチルジシロキサン(沸点:100〜101℃)、及び3−クロロプロピルトリメトキシシラン(沸点:196℃)の少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
この理由は、このようなケイ素含有化合物であれば、キャリアガスとの混合性がより向上するとともに、水酸基が表面に現われやすくなって、固体物質の表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子をさらに均一に形成することができるためである。
また、これらの化合物における沸点等の関係で、かかるケイ素含有化合物が固体物質の表面に一部残留しやすくなるため、固体物質と、各種紫外線硬化型樹脂等からなる塗膜との間で、より優れた密着力を得ることができるためである。
【0048】
(2)−3 平均分子量
また、改質剤化合物の平均分子量を、マススペクトル測定において、50〜1、000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる改質剤化合物の平均分子量が50未満となると、揮発性が高くて、取り扱いが困難となる場合があるためである。一方、かかる改質剤化合物の平均分子量が1、000を超えると、加熱により気化して、空気等と容易に混合することが困難となる場合があるためである。
したがって、改質剤化合物の平均分子量を、マススペクトル測定において、60〜500の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜200の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
(2)−4 密度
また、改質剤化合物の液体状態での密度を、0.3〜0.9g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる改質剤化合物の密度が0.3g/cm3未満となると、取り扱いが困難となる場合があるためである。一方、かかる改質剤化合物の密度が0.9g/cm3を超えると、気化しにくくなる場合があるためである。
したがって、改質剤化合物の密度を0.4〜0.8g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜0.7g/cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
2.工程(b)
工程(b)は、複数の気化室のうち、工程(a)が実施されている気化室とは別の気化室に対して、キャリアガスを導入するとともに、気化した改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を、被処理物に対して噴射する工程である。
【0051】
(1)キャリアガスの導入
(1)−1 気化室
工程(b)に供される気化室は、工程(a)が実施されている気化室とは別の気化室であるから、言い換えれば、既に改質剤化合物が十分に供給された状態の気化室である。
例えば、図1(a)における第2の気化室11b、あるいは図1(b)における第1の気化室11aが該当する。
したがって、本発明においては、いずれかの気化室において工程(b)、すなわち表面改質が実施されている間に、先に表面改質に供されて、改質剤化合物が減少してしまった別の気化室に対し、新たな改質剤化合物が供給され、次の表面改質に供される準備がなされることになる。
【0052】
(1)−2 キャリアガス
また、工程(b)における気化室に対するキャリアガスの導入は、図1(a)〜(b)に示すように、キャリアガス源から供給されるキャリアガス41を、管構造71によって直接的に導入することで行われる。
これにより、気化室11a、11b中において、所定温度下に気化している改質剤化合物23´と、キャリアガス41と、が混合しながら移送部30へと移送されることになる。
なお、キャリアガスの種類は、特に限定されないが、安価であって、安全性が高いことから空気を用いることが好ましい。
【0053】
また、このとき、図4(a)〜(b)に示すように、気化部11における気化室11a、11bに対して、キャリアガス41を、気化室の中心軸14から偏心位置に導入し、サイクロン状にして供給することが好ましい。
この理由は、一部上述したが、このようにキャリアガスを導入することで、工程(b)が実施されている気化室において、キャリアガスと、改質剤化合物とを、より安定的に混合させることができるためである。
したがって、改質剤化合物の使用量が比較的少ない場合であっても、所定の表面改質効果を有効に得ることができる。
【0054】
(2)火炎の噴射
(2)−1 流体フロー
また、図1(a)〜(b)に示すように、キャリアガス41の導入により気化室11a、11bから移送されてきた改質剤化合物23´及びキャリアガス41の混合気体は、移送部30に設けられた第1のミキサ31aにおいて、圧縮空気源から供給される燃焼用空気42と、さらに混合される。
次いで、さらに第2のミキサ31bにおいて、炭化水素ガス源から供給される炭化水素ガス43と混合され、最終的な燃料ガスとなり、最後に、かかる燃料ガスが燃焼しながら噴射部50より被処理物80に対して噴射される。
なお、気化室、圧縮空気源、及び炭化水素源のそれぞれの出口部分には、流量計付き流量調節バルブを設け、それぞれの流体物の流量を適宜調節可能とすることが好ましい。
【0055】
また、炭化水素ガスの種類としては、例えば、プロパンガスまたはLPG(プロパンガス単独以外の液化石油ガス)を用いることが好ましい。
この理由は、このような種類の炭化水素ガスであれば、安価である一方、所定温度で燃焼することができるためである。
したがって、ケイ素含有化合物等を安定的に熱分解させて、いずれの固体物質に対しても、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子を、強固かつ均一に積層することができる。
なお、LPGとしては、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ブタン/プロパンの混合ガス、エタン、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)等が挙げられる。
【0056】
(2)−2 改質剤化合物の含有量
また、燃料ガスにおける改質剤化合物の含有量を、燃料ガス全体量を100モル%としたときに、1×10-10〜10モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる改質剤化合物の含有量が1×10-10モル%未満の値になると、固体物質に対する改質効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる改質剤化合物の含有量が10モル%を超えると、改質剤化合物と空気等との混合性が低下し、それにつれて改質剤化合物の酸化が不十分となる場合があるためである。
したがって、燃料ガスにおける改質剤化合物の含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、1×10-9〜5モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、1×10-8〜1モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
(2)−3 空気の含有量
また、燃料ガスにおける最終的な空気の含有量を、燃料ガス全体量を100モル%としたときに、80〜99.9モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる空気の含有量が80モル%未満となると、ケイ素含有化合物の燃焼が不完全になるばかりか、水酸基の生成が不十分となる場合があるためである。一方、かかる空気の含有量が99.9モル%を超えると、表面改質効果が十分に発揮されない場合があるためである。
したがって、燃料ガスにおける空気の含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、90〜99.5モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、93〜99モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
(2)−4 炭化水素ガスの含有量
また、燃料ガスにおける炭化水素ガスの含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、0.1〜10モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭化水素ガスの含有量が0.1モル%未満となると、火炎温度が低下して、ケイ素含有化合物等の燃焼が不完全になるばかりか、水酸基の生成が不十分となる場合があるためである。一方、かかる炭化水素ガスの含有量が10モル%を超えると、不完全燃焼して、同様に、表面改質効果が十分に発揮されない場合があるためである。
したがって、燃料ガスにおける炭化水素ガスの含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、0.5〜8モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜5モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0059】
(2)−5 空気/炭化水素ガスの混合モル比
また、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を、23〜45の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる混合モル比の値が23未満の値となると、表面改質効果が安定的に発揮されなかったり、火炎が失火しやすくなったり、あるいは、不完全燃焼が生じやすくなったりする場合があるためである。一方、かかる混合モル比が45を超えた値となると、被処理物の濡れ指数がばらつきやすくなったり、火炎が不安定になり失火しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を、25〜40の範囲内の値とすることがより好ましく、28〜35の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
(2)−6 被処理物
噴射工程で表面改質処理する被処理物は、通常、固体物質である。
かかる固体物質としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、オレフィンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレンープロピレン−ジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも一つのゴム類が挙げられる。
また、別な固体物質として、ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高圧法ポリエチレン、中圧法ポリエチレン、低圧法ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、高圧法線状低密度ポリエチレン、超固体量ポリエチレン、架橋ポリエチレン)、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリフェニレンサルファイド樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロクロロエチレン樹脂、およびエチレン−トリフルオロクロロエチレン共重合体等が挙げられる。
また、固体物質として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、
グアナミン樹脂等の熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0061】
また、固体物質として、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス、ニッケル、クロム、タングステン、金、銅、鉄、銀、亜鉛、スズ、鉛等の一種単独または二種以上の金属材料の組み合わせが挙げられる。
例えば、アルミニウムは軽量金属として多用されているが、表面に酸化膜を形成しやすく、紫外線硬化型塗料等を直接適用しても容易に剥離してしまうという問題が見られた。
そこで、アルミニウム表面に対してケイ酸化炎処理等を施すことにより、紫外線硬化型塗料等を直接適用しても剥離することを有効に防止することができるようになった。
また、マグネシウムはリサイクル可能な金属部材として、パ−ソナルコンピューター等の筐体に近年多用されているが、表面の平滑性が乏しいことから、紫外線硬化型塗料等を直接適用しても容易に剥離してしまうという問題が見られた。そこで、マグネシウム表面に対してケイ酸化炎処理等を施すことにより、紫外線硬化型塗料等を直接適用した場合であっても、剥離することを有効に防止することができ、カラー化マグネシウム板等を提供できるようになった。
さらに、従来、半導体素子における金バンプや半田バンプを、フィルムキャリアや回路基板に電気接続した場合、高温高湿条件で、界面剥離が生じるという問題が見られた。そこで、金バンプや半田バンプにケイ酸化炎処理等を施すことにより、あるいは、フィルムキャリアや回路基板の導体部分にケイ酸化炎処理等を施すことにより、これらの界面剥離を有効に防止することができるようになった。
なお、ケイ酸化炎処理等とは、ケイ素原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む火炎を用いた処理であって、基材の炎熱分解によって、基材の全部または一部に、酸化ケイ素層、酸化チタン層あるいは酸化アルミナ層を形成することができる火炎処理のことである。
【0062】
また、固体物質として、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、石灰、ゼオライト、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、半田、ガラス、セラミック等の一種単独または二種以上の組み合わせも挙げられる。
このように無機フィラーを添加することにより、無機フィラーの種類によって、固体物質の機械的強度、耐熱性、導電性あるいは電気絶縁性等の物理特性を向上させることができる。
なお、固体物質に対して、無機フィラーを添加する場合、全体量に対して、その添加量を0.01〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜50重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜30重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
さらに、被処理物である固体物質の形態は特に制限されるものではないが、例えば、板状、シート状、フィルム状、テープ状、短冊状、パネル状、紐状などの平面構造を有するものであってもよいが、筒状、柱状、球状、ブロック状、チューブ状、パイプ状、凹凸状、膜状、繊維状、織物状、束状等の三次元構造を有するものであっても良い。
例えば、繊維状のガラスやカーボンファーバーに対して、ケイ酸化炎処理等を施すことにより、表面改質をして、活性化することができ、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等のマトリクス樹脂中に均一に分散することができる。したがって、FRPやCFRPにおいて、優れた機械的強度や耐熱性等を得ることができる。
【0064】
また、このような被処理物の形態として、このような固体物質からなる構造体と、金属部品、セラミック部品、ガラス部品、紙部品、木部品等と組み合わせた複合構造体であることも好ましい。
例えば、金属管やセラミック管の内面に、ケイ酸化炎処理等を施すことにより、表面改質をして、活性化することができ、樹脂ライナーが極めて強固に積層されたパイプを得ることができる。
また、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、あるいはCRT等における基板としてのガラス基板やプラスッチク基板の全面または一部に、ケイ酸化炎処理等を施すことにより、カラーフィルター、偏向板、光散乱板、ブラックマトリクス板、反射防止膜、帯電防止膜等の有機フィルムを極めて均一かつ強固に積層することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
但し、以下の説明は本発明を例示的に示すものであり、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
図1に示すように、円筒状の第1の気化室11a(直径1.5cm、長さ10cm、容積17.7ml)および円筒状の第2の気化室11b(直径1.5cm、長さ10cm、容積17.7ml)を備えるとともに、図4(a)〜(b)に示すように、キャリアガス導入口13が、気化室の中心軸14に対して偏心位置に設けてあるサイクロン方式を採用した表面改質装置10を準備した。
次いで、表面改質装置10に備えてあるバーナ50を移動させながら、ケイ素含有化合物23としてヘキサメチルジシロキサン(沸点:101℃)100重量部に対して、10重量部のエタノールを添加した混合物を含む燃焼ガスに由来したケイ酸化炎処理を行い、表面処理効果を確認した。
環境温度 :25℃
気化室温度 :40℃
燃料ガス :流量1(空気流量)80リットル/分
流量2(プロパンガス流量)2.5リットル/分
流量3(ケイ素含有化合物/キャリア流量)2リットル/分
(ヘキサメチルジシロキサン濃度:約0.00045モル)
バーナ移動速度:20m/分
処理回数 :1回
バーナとの距離:20mm
【0067】
すなわち、第1の気化室を動作させ、金属板に対してケイ酸化炎処理を1時間連続的に行った後、被処理物をポリプロピレン板(100mm×50mm×2mm)に変えて、ポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を標準液を用いて測定した(第1回測定)。
次いで、第2の気化室を動作させるとともに、移動部における電磁弁を切り替え、さらに、金属板に対してケイ酸化炎処理を1時間連続的に行った後、被処理物をポリプロピレン板に変えて、ポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した(第2回測定)。
そして、第2の気化室を動作中に、第1の気化室に、所定量のケイ素含有化合物を充填した。
次いで、第1の気化室を再び動作させるとともに、移動部における電磁弁を切り替え、金属板に対してケイ酸化炎処理を1時間連続的に行った後、被処理物をポリプロピレン板に変えて、ポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した(第3回測定)。
【0068】
[実施例2〜4]
実施例2〜4において、流量3(ケイ素含有化合物/キャリアガス流量)を1.5リットル/分(実施例2)、2.5リットル/分(実施例3)、3.0リットル/分(実施例4)としたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
なお、表においては、「リットル/分」を「L/分」と表記する。
【0069】
[実施例5〜8]
実施例5〜8において、燃焼ガスに含まれるケイ素含有化合物として、テトラメチルシラン(沸点:27℃)を用いるとともに、流量3.0リットル/分(ケイ素含有化合物/キャリアガス流量)を、3.5リットル/分(実施例5)、4.0リットル/分(実施例6)、4.5リットル/分(実施例7)、5.0リットル/分(実施例8)としたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
【0070】
[比較例1]
比較例1において、実施例1で用いた表面改質装置のかわりに、図9に示す従来の表面改質装置を用い、金属板に対してケイ酸化炎処理を3時間連続的に行うとともに、1時間おきに、所定量のケイ素含有化合物を充填し、その直後に、実施例1と同様に、ポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。得られた結果を、表1等に示す。
【0071】
【表1】

流量1:空気流量
流量2:プロパンガス流量
流量3:ケイ素含有化合物/キャリア流量
【0072】
[実施例9〜12]
実施例9において、空気流量を70リットル/分とするとともに、燃焼ガスに含まれるプロパンガス流量を、2.5リットル/分としたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例10において、空気流量を75リットル/分とするとともに、燃焼ガスに含まれるプロパンガス流量を、1.25リットル/分としたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例11において、空気流量を80リットル/分とするとともに、燃焼ガスに含まれるプロパンガス流量を、2.25リットル/分としたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例12において、空気流量を85リットル/分とするとともに、燃焼ガスに含まれるプロパンガス流量を、2.5リットル/分としたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
【0073】
【表2】

流量1:空気流量
流量2:プロパンガス流量
流量3:ケイ素含有化合物/キャリア流量
【0074】
[実施例13〜16]
実施例13〜16において、気化室の温度および環境温度の影響を検討した。
すなわち、実施例13および14においては、気化室の温度を30℃および50℃としたほかは、それぞれ実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例15〜16において、環境温度を10℃および15℃としたほかは、それぞれ実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
【0075】
【表3】

流量1:空気流量
流量2:プロパンガス流量
流量3:ケイ素含有化合物/キャリア流量
【0076】
[実施例17〜20]
実施例17〜20において、気化室の容積の影響を検討した。
すなわち、実施例17において、円筒状の気化室の直径を1cmとしたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例18において、円筒状の気化室の直径を1.25cmとしたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例19において、円筒状の気化室の直径を2cmとしたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
また、実施例20において、円筒状の気化室の直径を2.5cmとしたほかは、実施例1と同様に、第1回〜第3回のポリプロピレン板の表面における濡れ指数(25℃)を測定した。
【0077】
【表4】

流量1:空気流量
流量2:プロパンガス流量
流量3:ケイ素含有化合物/キャリア流量
【0078】
[実施例19〜22]
実施例19〜22において、サイクロン方式を採用した表面改質装置のかわりに、図8(a)〜(b)に示す気化部11(11a,11b)において、キャリアガス導入口13が、気化室の中心軸14に対して偏心していない非サイクロン方式を採用した表面改質装置(図示せず)を用いたほかは、実施例1〜4と同様に、それぞれポリプロピレン板の表面における第1回〜第3回の濡れ指数(25℃)を測定した。
なお、図8(a)〜(b)に、参考のため、非サイクロン方式における気化部11(11a,11b)におけるキャリアガス41の流れを示す
【0079】
【表5】

流量1:空気流量
流量2:プロパンガス流量
流量3:ケイ素含有化合物/キャリア流量
【産業上の利用可能性】
【0080】
本願発明の表面改質装置及びそれを用いた表面改質方法によれば、気化室を複数設けるとともに、いずれかの気化室に対して改質剤化合物を供給しつつ、別の気化室に対してキャリアガスを導入することにより、気化部に対して改質剤化合物を供給しながらであっても、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化を抑制できるようになった。
これにより、気化部に対して改質剤化合物を供給しながら表面改質を実施した場合であっても、燃料ガス中に含まれる改質剤化合物の濃度変化が少なく、表面改質処理を継続的に実施しても、安定的に固体物質の表面を改質できるようになった。
したがって、本発明の表面改質装置及びそれを用いた表面改質方法は、表面処理技術の高品質化及び効率化に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0081】
10:表面改質装置、11:気化部、11a:第1の気化室、11b:第2の気化室、12(12a、12b):改質剤化合物の供給口、13(13a、13b):キャリアガス導入口、14:気化室の中心軸、15:プリズムセンサー、15a:発光素子、15b:受光素子、17:マイクロポンプ、17a:ピストン、17b:シリンダー、18(18a、18b):温度センサー、19:ヒーター(19a、19b)、21:貯蔵室、22:液面計、23:改質剤化合物、23´:気体状態の改質剤化合物、24:残圧抜き、25:改質剤化合物補充口、30:移送部、31(31a、31b):ミキサ、41:キャリアガス、50:噴射部、51:火炎、52:IRセンサー、52a:制御部、60(60a、60b、60c、60d、60e、60f):切替装置(電磁弁)、70:管構造、80:被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質剤化合物としてのケイ素含有化合物を貯蔵するための貯蔵室と、
前記貯蔵室から、前記改質剤化合物が供給されるとともに、所定温度下に蒸発させ、気体状態の改質剤化合物を生成するための気化部と、
前記気化部に、キャリアガスを導入し、前記気体状態の改質剤化合物を、燃料ガスの一部として、噴射部に移送するための移送部と、
前記改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けるための噴射部と、
を含む表面改質装置であって、
前記気化部が、少なくとも第1の気化室及び第2の気化室を含む複数の気化室を備えるとともに、当該第1の気化室及び第2の気化室を交互使用するための切替装置を備えることを特徴とする表面改質装置。
【請求項2】
前記第1の気化室及び第2の気化室における一つあたりの容積を、それぞれ10〜200cm3の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の表面改質装置。
【請求項3】
前記貯蔵室からの前記改質剤化合物の供給口が、前記第1の気化室及び第2の気化室の底部に設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の表面改質装置。
【請求項4】
前記第1の気化室及び第2の気化室が、円柱状または角柱状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面改質装置。
【請求項5】
前記第1の気化室及び第2の気化室におけるキャリアガス導入口が、前記気化室の中心軸に対して、偏心位置に設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面改質装置。
【請求項6】
前記第1の気化室が、主気化室であって、前記改質剤化合物を補充する時以外は、常時動作しており、
前記第2の気化室が、予備気化室であって、前記第1の気化室に、前記改質剤化合物を補充する際のみに動作していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面改質装置。
【請求項7】
改質剤化合物としてのケイ素含有化合物を貯蔵するための貯蔵室と、
前記貯蔵室から、前記改質剤化合物が供給されるとともに、所定温度下に蒸発させ、気体状態の改質剤化合物を生成するための気化部と、
前記気化部に、キャリアガスを導入し、前記気体状態の改質剤化合物を、燃料ガスの一部として、噴射部に移送するための移送部と、
前記改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けるための噴射部と、を含むとともに、
前記気化部が、少なくとも第1の気化室及び第2の気化室を含む複数の気化室を備え、かつ、当該第1の気化室及び第2の気化室を交互使用するための切替装置を備えた表面改質装置を用いてなる表面改質方法であって、
下記工程(a)及び(b)を同時実施する工程を含むことを特徴とする表面改質方法。
(a)前記第1の気化室及び第2の気化室のいずれかに対して、前記貯蔵室から前記改質剤化合物を供給する工程。
(b)前記第1の気化室及び第2の気化室のうち、前記工程(a)が実施されている気化室とは別の気化室に対して、前記キャリアガスを導入しながら、気化した改質剤化合物を含む燃料ガスに由来した火炎を、被処理物に対して噴射する工程。
【請求項8】
前記第1の気化室及び第2の気化室に、それぞれ液面計を備えるとともに、前記改質剤化合物が所定基準以下の液面であると検知された気化室において、前記工程(a)を実施することを特徴とする請求項7に記載の表面改質方法。
【請求項9】
前記工程(a)において、前記気化室の温度を35〜80℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項7または8に記載の表面改質方法。
【請求項10】
前記工程(b)において、前記気化室に対して、前記キャリアガスを、前記気化室の中心軸に対して偏心位置からサイクロン状にして導入することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の表面改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−68920(P2011−68920A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218469(P2009−218469)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000150512)株式会社仲田コーティング (40)
【Fターム(参考)】