説明

表面検査装置

【課題】ラインセンサを利用し、かつ被検体の表面欠陥を高精度に検出することができる表面検査装置を提供する。
【解決手段】被検体12を搬送する搬送部14と、搬送部14にて搬送される被検体12の表面に所定の繰り返し明暗パターンを照射する照射部16と、被検体12に照射された明暗パターンを被検体12の幅方向に移動させる動力伝達機構18と、被検体12の明暗パターンが照射された部位を撮像するラインセンサ20と、ラインセンサ20にて撮像された信号に基づいて被検体12の表面に欠陥が存在するか否かを判定する欠陥判定部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の表面欠陥を検出するための表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種フィルム(表面塗工されたものを含む)、磁気テープ、光沢紙などの製品(被検体)には、製造工程において表面に凹凸状の欠陥(表面欠陥)が生じることがある。
【0003】
被検体の表面欠陥を検出するための装置として、明暗パターンを被検体に照射して、これを撮像し、明暗パターンの歪みから表面欠陥を検出するものが知られている(特許文献1参照)。この装置では、明暗パターンの例として、市松模様(チェッカーパターン)などが記載されている。また、撮像手段としてラインセンサを用いることも記載されている。さらに、ストライプパターンであれば、被検体を搭載しているステージをラインセンサの素子と直交する方向に駆動することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−329428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、明暗パターンの種類において、ストライプパターン以外を使用する場合はエリアセンサで2次元画像として取り込む必要がある。そのため、画像視野の範囲で被検体を平面に保つ必要があり、材料のシワ、ばたつき、カールなどが生じ易い腰の弱い材料の被検体(例えば、薄いフィルム)には適さない。また、カメラ分解能をラインセンサ並に高くしようとすると、エリアセンサでは視野が狭くなるため高感度化が難しい。
【0006】
一方、どのような明暗パターンであっても、ラインセンサと明暗パターンとの相対位置が固定されている限り、ラインセンサの視野は明暗パターン上の1ラインであり、受光信号を2次元画像化した時に、縦縞模様しかならない。このように2次元画像化した時に縦縞模様しかならないような明暗パターン(1次元ストライプパターン)であれば、ステージを駆動してラインセンサを使え、ラインセンサの視野のみでよいので、検査ロールなどで被検体を保持する手法もとることができる。しかし、この1次元ストライプパターンでは、搬送方向に筋状に延びた欠陥(筋状欠陥)が被検体の表面に存在していた場合、ストライプパターンの明暗と欠陥の位置関係で画像上の歪み量が大きく異なり(バラツキ)、検出できないことがある。その結果、表面欠陥の検出精度が落ちるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、ラインセンサを利用し、かつ被検体の表面欠陥を高精度に検出することができる表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面検査装置は、被検体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段にて搬送される前記被検体の表面に所定の繰り返し明暗パターンを照射する照射手段と、前記被検体に照射された前記明暗パターンを前記被検体の幅方向に移動させる移動手段と、前記被検体の前記明暗パターンが照射された部位を撮像するラインセンサと、前記ラインセンサにて撮像された信号に基づいて前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定する欠陥判定部と、を備えることにより上述した課題を解決する。
【0009】
本発明の表面検査装置によれば、被検体の表面に照射された明暗パターンが被検体の幅方向に移動するので、搬送方向の筋状欠陥が被検体の表面に存在していた場合でも、筋状欠陥が明暗パターンに跨り易くなる。これにより、表面欠陥による明暗パターンの歪みを効率的に表示させることができる。また、ラインセンサを用いているので、エリアセンサを用いた場合と比較してカメラの分解能を高めることができる。従って、被検体の表面欠陥を高精度に検出することができる。また、欠陥判定部で被検体の表面欠陥の有無が判定されるので、その判定結果に基づいて表面欠陥が存在している被検体を排除することができる。これにより、製品品質の向上を図ることができる。さらに、本発明の表面検査装置を製造工程中の搬送ラインに適用すれば、表面欠陥の発生を早期に検出することも可能である。そのため、不良品を大量に生産するといった懸念を排除することができる。
【0010】
本発明の表面検査装置は、材料のシワ、ばたつき、及びカールなどが生じ易い腰の弱い材料の被検体(薄いフィルム)などに対しても適用される。この場合、前記被検体はウエブであり、前記搬送手段には、前記被検体の幅方向に延びる回転軸線の回りに回転し、かつ前記被検体を搬送方向に搬送する搬送ロールが設けられ、前記照射手段は、前記被検体のうち前記搬送ロールと接触する検査部位に前記明暗パターンを照射してもよい。この形態によれば、搬送ロールにて被検体(ウエブ)が保持されるので、被検体の検査部位においてシワ、ばたつき、カールなどが生じ難くなる。これにより、被検体が例えば腰の弱い材料の被検体(薄いフィルム)であっても対応することができる。
【0011】
上記形態において、前記照射手段には、前記検査部位に光を照射する光源部と、前記光源部と前記検査部位との間に位置し、かつ前記検査部位に照射される前記明暗パターンに対応する模様を有する明暗表示部と、が設けられ、前記移動手段は、前記搬送ロールの回転力を利用して前記明暗表示部の模様を移動させてもよい。この形態によれば、光源部から出力された光が明暗表示部を透過して被検体の検査部位に導かれるので、明暗表示部の模様が明暗パターンとして検査部位に照射される。また、明暗表示部の模様を移動させることで、検査部位に照射される明暗パターンを被検体の幅方向に移動させることができる。さらに、搬送ロールの回転力を利用することで、明暗表示部の模様の移動を効率的に行うことができる。
【0012】
本発明の表面検査装置の一形態において、前記照射手段には、前記検査部位に光を照射する光源部と、前記光源部と前記検査部位との間に位置し、かつ前記検査部位に照射される前記明暗パターンに対応する模様を有する明暗表示部と、前記搬送ロールの駆動源とは別体に設けられて前記明暗表示部の模様を移動させる駆動部と、が設けられ、前記駆動部は、前記搬送ロールの回転と同期して前記明暗表示部の模様を駆動させてもよい。
【0013】
搬送ロールと明暗表示部とを1つの駆動源で駆動する場合、搬送ロールの回転と明暗表示部の模様の移動とに必要な動力を1つの駆動源で同時に発生させる必要がある。本形態によれば、搬送ロールの駆動源とは別体に駆動部を設けているので、搬送ロールの回転に必要な動力は搬送ロールの駆動源で、明暗表示部の模様の移動に必要な動力は駆動部でそれぞれ対応することができる。これにより、搬送ロールと明暗表示部とを1つの駆動源で駆動する場合と比較して、搬送ロールの駆動源と駆動部のそれぞれの大きさを小型化することができる。
【0014】
本発明の表面検査装置の一形態においては、前記ラインセンサにて撮像された信号に基づいて2次元の明暗パターン画像を生成する画像処理部をさらに備え、前記移動手段は、前記被検体の搬送と連動して前記被検体に照射された前記明暗パターンを移動させてもよい。この形態によれば、被検体に照射された明暗パターンを被検体の搬送と連動して移動させるので、画像処理部は、ラインセンサにて撮像された信号を時系列に並べるだけ(ラスタスキャン方式)で、被検体に存在する表面欠陥の位置と2次元の明暗パターン画像上に表示される表面欠陥の位置とを対応づけることができる。これにより、被検体に表面欠陥が検出された時に、その欠陥の位置を容易に特定することができる。
【0015】
上記形態において、前記欠陥判定部は、前記画像処理部にて生成された明暗パターン画像から正常状態の前記被検体を前記ラインセンサにて撮像した時に得られる明暗パターン画像を消去することにより、前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定してもよい。この形態によれば、画像処理部にて生成された明暗パターン画像から正常状態(表面欠陥が無い状態)の被検体をラインセンサにて撮像した時に得られる明暗パターン画像を消去することで、表面欠陥による明暗パターンの歪みのみを抽出することができる。これにより、被検体の表面欠陥の有無を容易に判定することができる。
【0016】
本発明の表面検査装置の一形態において、前記欠陥判定部は、前記画像処理部にて生成された明暗パターン画像において、所定距離だけ離れた画素の差分を抽出することにより、前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定してもよい。画像処理部にて生成された明暗パターン画像において、表面欠陥上に位置する画素の信号と正常面に位置する画素の信号とが異なっているので、所定距離だけ離れた画素の差分を抽出することで、表面欠陥による明暗パターンの歪みを抽出することができる。これにより、正常状態の被検体をラインセンサで撮像した時に得られる明暗パターン画像を予め作成する必要がない。
【0017】
本発明の表面検査装置の一形態において、前記照射手段には、前記検査部位と対向する位置に配置され、かつ前記検査部位に照射される前記明暗パターンに対応する模様を映像として表示する映像表示部が設けられ、前記移動手段には、前記映像表示部に表示された模様が移動するように前記映像表示部を制御する映像制御部が設けられてもよい。この形態によれば、映像表示部に表示された模様が明暗パターンとして検査部位に照射される。また、映像表示部に表示されている模様を映像制御部にて移動させることで、検査部位に照射された明暗パターンを被検体の幅方向に容易に移動させることができる。
【0018】
上記形態においては、前記ラインセンサにて撮像された信号に基づいて2次元の明暗パターン画像を生成する画像処理部をさらに備え、前記欠陥判定部は、前記画像処理部にて生成された明暗パターン画像と前記映像表示部に表示される模様とに基づいて、前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定してもよい。この形態によれば、表面欠陥の有無の判定に映像表示部に表示される模様を利用することができる。これにより、被検体の表面欠陥の有無を容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の表面検査装置によれば、被検体の表面に照射された明暗パターンが被検体の幅方向に移動するので、表面欠陥による明暗パターンの歪みを効率的に表示させることができる。また、ラインセンサを用いているので、エリアセンサを用いた場合と比較してカメラの分解能を高めることができる。従って、被検体の表面欠陥を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態に係る表面検査装置の要部を示す図である。
【図2】第1制御ルーチンに係るフローチャートを示す図である。
【図3】点欠陥を有する被検体をラインセンサにて撮像した時に得られる明暗パターン画像を示す図である。
【図4】搬送方向の筋状欠陥を有する被検体をラインセンサにて撮像した時に得られる明暗パターン画像を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る表面検査装置の要部を示す図である。
【図6】第2制御ルーチンに係るフローチャートを示す図である。
【図7】第3の実施の形態に係る表面検査装置の要部を示す図である。
【図8】第3制御ルーチンに係るフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る表面検査装置の形態例を図1〜図3を参照しながら説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
先ず、第1の実施の形態に係る表面検査装置(第1検査装置)10は、被検体の表面に存在する凹凸状の欠陥(表面欠陥)を検出するための装置であり、被検体の製造工程中の搬送ラインに組み込まれる。
【0023】
そして、第1検査装置10は、被検体12を搬送する搬送部14と、照射部16と、動力伝達機構18と、ラインセンサ20と、制御部22とを有する。被検体12としては、例えば各種フィルム(表面塗工されたものを含む)、磁気テープ、光沢紙などが用いられる。また、被検体12は、ウエブとして構成されている。
【0024】
搬送部14は、被検体12の幅方向(図1の矢印Aの方向)に延びる回転軸線の周りに回転する搬送ロール24と、搬送ロール24を回転駆動する搬送モータ25とを有する。搬送ロール24は、被検体12を搬送方向に搬送する。被検体12は、搬送ロール24に巻きかけられるように設定される。
【0025】
照射部16は、被検体12のうち搬送ロール24と接触する検査部位Xに明暗パターンを照射する。照射部16は、光源部26と、明暗表示部28とを有する。
【0026】
光源部26は、不図示のランプが内蔵された光源ボックス30と、光源ボックス30に接続されて被検体12の幅方向に延びたロッド部32とを有する。つまり、光源部26は、いわゆるロッド照明として構成されている。ランプは、ロッド部32内に光を入射する。ロッド部32は、ランプから入射された光をライン状に出射する。ロッド部32は、被検体12の検査部位Xと対向する位置に配置されている。また、ロッド部32は、その長手方向の長さが被検体12の幅よりも幾らか大きく形成されている。
【0027】
明暗表示部28は、被検体12の幅方向に延びた状態でロッド部32の周囲を覆う回転円筒体34と、回転円筒体34と一体回転する支持部36とを有する。回転円筒体34の外周面には、所定の繰り返し明暗パターンが形成されている。明暗パターンとしては、被検体12の幅方向及び搬送方向と交差する方向の明暗パターン(傾斜ストライプパターン)が用いられる。また、明暗パターンは、ロッド部32から出射される光を透過する透明部38とロッド部32から出射される光を遮蔽する遮光部40とが交互に並ぶようにして構成されている。回転円筒体34及び支持部36の径は、搬送ロール24の径と略同一に設定されている。
【0028】
動力伝達機構18は、搬送ロール24の回転力を支持部36に伝達する。動力伝達機構18としては、搬送ロール24と支持部36とに巻きかけられたVベルト等が用いられる。これにより、搬送ロール24の回転と連動して支持部36が回転する。
【0029】
ラインセンサ20は、被検体12の検査部位Xを撮像するカメラとして構成されている。ラインセンサ20は、その視野が被検体12の幅全域を含むように設定されている。また、ラインセンサ20のフォーカスは、検査部位Xを反射面としてその検査部位Xに照射される明暗パターンに合わされている。ラインセンサ20にて撮像された撮像信号はデジタル信号としてリアルタイム的に出力される。
【0030】
制御部22は、光源ボックス30、搬送モータ25及びラインセンサ20を制御する。制御部22は、光源制御部42と、タイミング発生部43と、搬送モータ制御部44と、ラインセンサ制御部45と、画像処理部46と、記憶部48と、欠陥判定部50とを有する。
【0031】
光源制御部42は、ランプを点灯してロッド部32内に入射される光を調整する。
【0032】
タイミング発生部43は、クロック信号に基づいて被検体12の搬送動作とラインセンサ20の撮像動作とのタイミングを取るためのタイミング信号を出力する。詳しくは、タイミング発生部43は、搬送モータ制御部44に対して搬送用タイミング信号を出力し、ラインセンサ制御部45に対してラインセンサ用タイミング信号を出力する。
【0033】
搬送モータ制御部44は、タイミング発生部43から出力された搬送用タイミング信号に基づいて搬送モータ25を駆動し、搬送ロール24を回転する。
【0034】
ラインセンサ制御部45は、タイミング発生部43から出力されたラインセンサ用タイミング信号に基づいてラインセンサ20を作動し、検査部位Xに照射された明暗パターンを撮像する。
【0035】
画像処理部46は、ラインセンサ20から出力される撮像信号に基づいて2次元の明暗パターン画像を生成する。
【0036】
記憶部48には、判定用明暗パターン画像が記憶されている。判定用明暗パターン画像は、正常状態(表面欠陥が無い状態)の被検体12の検査部位Xを撮像した時のラインセンサ20の撮像信号に基づいて生成される明暗パターン画像に対応する画像が用いられる。
【0037】
欠陥判定部50は、画像処理部46にて生成された明暗パターン画像と判定用明暗パターン画像とに基づいて被検体12の検査部位Xに表面欠陥が存在するか否かを判定する。
【0038】
次に、第1検査装置10の動作について図2の第1制御ルーチンに係るフローチャートも参照しながら説明する。第1制御ルーチンは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0039】
先ず、光源制御部42は、ランプを点灯して、ロッド部32内に光を入射させる(ステップS1)。ランプがロッド部32内に光を照射すると、ロッド部32からはライン状の光が出射される。そして、ロッド部32から出射された光のうち、回転円筒体34の透明部38に導かれた光が透過し、回転円筒体34の遮光部40に導かれた光が遮蔽される。つまり、透明部38を透過した光のみが被検体12の検査部位Xに照射される。これにより、被検体12の検査部位Xには、回転円筒体34に形成されている明暗パターンが照射される。
【0040】
その後、搬送モータ制御部44は、搬送モータ25を駆動して搬送ロール24を回転させる(ステップS2)。搬送ロール24が回転すると、被検体12が搬送方向に搬送される。このとき、搬送ロール24の回転力が動力伝達機構18を介して支持部36に伝達されて、回転円筒体34が搬送ロール24と同じ方向に回転する。回転円筒体34が回転すると、回転円筒体34に形成されている傾斜ストライプパターンも回転するので、検査部位Xに照射されている明暗パターンが被検体12の幅方向に移動する。
【0041】
また、ラインセンサ制御部45は、ラインセンサ20を作動して検査部位Xに照射された明暗パターンを撮像する(ステップS3)。
【0042】
その後、画像処理部46は、ラインセンサ20から出力された撮像信号に基づいて明暗パターン画像を生成する(ステップS4)。画像処理部46は、いわゆるラスタスキャン方式によって2次元の明暗パターン画像を生成する。つまり、画像処理部46は、ラインセンサ20で撮像された撮像信号(ライン信号)を時系列に並べることにより明暗パターン画像を生成する。このとき、検査部位Xに照射されている明暗パターンが被検体12の幅方向に移動するので、画像処理部46にて生成される明暗パターン画像は傾斜ストライプパターン画像となる。なお、ラインセンサ20で撮像された撮像信号は、リアルタイム的に画像処理部46に送られている。また、例えば、被検体12の表面に円形の点欠陥(表面が凹状になった押しキズや内部異物による凸状欠陥など)が存在していた場合、その点欠陥での反射角度は正常面(表面欠陥が無い面)の反射角度と異なるので、画像処理部46で生成される明暗パターン画像は点欠陥上で歪んだものとなる(図3参照)。同様にして、被検体12の表面に搬送方向の筋状欠陥が存在していた場合、画像処理部46で生成される明暗パターン画像は筋状欠陥上で歪んだものとなる(図4参照)。
【0043】
その後、欠陥判定部50は、画像処理部46にて生成された明暗パターン画像と判定用明暗パターン画像とに基づいて被検体12の検査部位Xに表面欠陥が存在しているか否かを判定する(ステップS5)。詳しくは、欠陥判定部50は、明暗パターン画像から判定用明暗パターン画像を消去する。これにより、表面欠陥による明暗パターンの歪みのみを抽出することができる。そして、欠陥判定部50は、消去後に画像が存在していない場合に、表面欠陥が存在していないと判定し、消去後に画像が存在している場合に、表面欠陥が存在していると判定する。制御部22は、表面欠陥が存在していないと欠陥判定部50により判定された時に、繰り返しこの処理を実行する。この繰り返し処理期間は、適宜に設定すればよい。一方、第1制御ルーチンは、表面欠陥が存在していると欠陥判定部50により判定された時に、ステップS6に進む。
【0044】
その後、制御部22は、搬送モータ25の駆動を停止して搬送ロール24の回転を停止する(ステップS6)。ステップS6の処理後、今回の第1制御ルーチンは終了する。
【0045】
本形態の表面検査装置10では、検査部位Xに照射された明暗パターンが被検体12の幅方向に移動するので、搬送方向の筋状欠陥が被検体12の表面に存在していた場合でも、筋状欠陥が明暗パターンに跨り易くなる。そのため、ラインセンサ20で撮像した撮像信号に基づいて生成された明暗パターン画像において、筋状欠陥による明暗パターンの歪みを効率的に表示させることができる。よって、欠陥判定部50で明暗パターン画像から判定用明暗パターン画像を消去したときに、筋状欠陥による歪みを効率的に残すことができる。また、ラインセンサ20を用いているので、エリアセンサを用いた場合と比較してカメラの分解能を高めることができる。従って、被検体12の表面欠陥を高精度に検出することができる。
【0046】
また、欠陥判定部50で表面欠陥が存在していると判定された時に制御部22が搬送ロール24の回転を停止するので、不良品を排除することができる。これにより、製品品質の向上を図ることができる。さらに、第1検査装置10が製造工程中の搬送ラインに組み込まれているので、表面欠陥の発生を早期に検出することができる。そのため、不良品を大量に生産するといった懸念を排除することができる。
【0047】
第1検査装置10は、材料のシワ、ばたつき、及びカールなどが生じ易い腰の弱い材料の被検体(薄いフィルム)12などに対しても適用される。本形態では、搬送ロール24にて被検体(ウエブ)12が保持されるので、被検体12の検査部位Xにおいてシワ、ばたつき、カールなどが生じ難くなる。これにより、被検体12が薄いフィルム(腰の弱い材料)であっても対応することができる。
【0048】
また、本形態では、搬送ロール24の回転力を利用して回転円筒体34を回転しているので、検査部位Xに照射される明暗パターンの移動を効率的に行うことができる。
【0049】
さらに、本形態では、動力伝達機構18としてVベルトを利用し、かつ搬送ロール24の径と支持部36の径とが略同一に設定されているので、被検体12の搬送速度と検査部位Xに照射される明暗パターンの移動速度とを略同一にすることができる。これにより、画像処理部46で生成される明暗パターン画像の縦横比が、エリアセンサを用いて撮像した場合に得られる画像の縦横比と同じになる。つまり、被検体12に存在する表面欠陥の位置と明暗パターン画像上で表示される表面欠陥の位置とを対応づけることができる。これにより、被検体12に表面欠陥が検出された時に、その欠陥の位置を容易に特定することができる。
【0050】
第1の実施の形態は、上述した実施の形態例に限定されない。光源部は、ロッド照明を利用した例に限られず、蛍光灯や他の照明器具を利用してもよい。動力伝達機構は、Vベルトに替えてチェーンや歯車機構などを利用してもよい。明暗表示部の回転は、搬送ローラの回転力を利用した構成に限られない。例えば、動力伝達機構を省略して、支持部を回転駆動する回転モータを新たに追加してもよい。この場合、支持部の回転速度は任意に設定してよい。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る表面検査装置(第2検査装置)100について、図5を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0052】
第2検査装置100では、第1検査装置10における照射部16及び制御部22の構成が異なるとともに、動力伝達機構18が省略されている。
【0053】
照射部116は、検査部位Xと対向する位置に配置され、被検体12の幅方向(図5の矢印Aの方向)に延びた映像表示部52を有している。映像表示部52としては、例えば液晶ディスプレイなどが用いられる。映像表示部52には、所定の繰り返し明暗パターンを映像として表示する表示部54を備えている。明暗パターンとしては、被検体12の幅方向の明暗パターン(ストライプパターン)が用いられる。表示部54の長手方向の長さは、被検体12の幅と同程度の大きさに設定されている。
【0054】
制御部122は、映像表示部52も制御する。制御部122には、第1検査装置10の光源制御部42及び記憶部48が省略されて、映像制御部56及び比較用画像処理部58が追加されている。
【0055】
タイミング発生部143は、クロック信号に基づいて上述した搬送用タイミング信号、ラインセンサ用タイミング信号を出力する他、映像制御部56に対して映像用タイミング信号を出力する。これにより、被検体12の搬送動作、ラインセンサ20の撮像動作及び明暗パターンの移動動作のタイミングを取ることができる。
【0056】
映像制御部56は、タイミング発生部143から出力された映像タイミング信号に基づいて映像表示部52に表示されている明暗パターンを被検体12の幅方向に移動させる。なお、明暗パターンの移動速度と被検体12の搬送速度とは、略同一になるように設定してもよい。
【0057】
比較用画像処理部58は、比較用明暗パターン画像を生成する。詳しくは、比較用画像処理部58は、映像表示部52に表示される明暗パターンの形態情報を映像制御部56から取得し、光学系の補正を考慮した上で、正常な状態の被検体12の検査部位Xに照射された明暗パターンをラインセンサ20で撮像した時に得られるはずの2次元の明暗パターン画像を比較用明暗パターン画像として生成する。
【0058】
また、欠陥判定部150は、画像処理部46にて生成された明暗パターン画像と比較用明暗パターン画像とに基づいて被検体12の検査部位Xに表面欠陥が存在しているか否かを判定する。
【0059】
次に、第2検査装置100の動作について図6の第2制御ルーチンに係るフローチャートも参照しながら説明する。第2制御ルーチンでは、第1制御ルーチンのステップS1とステップS5の処理が変更される。よって、第1制御ルーチンと共通する処理に関しては、説明を省略する。
【0060】
先ず、ステップS21において、制御部122は、映像表示部52の電源を入力する。これにより、映像表示部52の表示部54に明暗パターンが表示される。このとき、映像制御部56は、映像表示部52に表示されている明暗パターンを移動させる。
【0061】
そして、ステップS25において、欠陥判定部150は、画像処理部46にて生成された明暗パターン画像と比較用明暗パターン画像とに基づいて被検体12に表面欠陥が存在しているか否かを判定する。詳しくは、欠陥判定部150は、画像処理部46にて生成された明暗パターン画像と比較用明暗パターン画像とを比較し、相違点を解析することで欠陥を抽出する。
【0062】
本形態の第2検査装置100では、映像表示部52に表示された明暗パターンが被検体12の検査部位Xに照射される。また、映像表示部52に表示されている明暗パターンを映像制御部56にて移動させることで、検査部位Xに照射された明暗パターンを被検体12の幅方向に容易に移動させることができる。
【0063】
また、本形態では、欠陥判定の際に映像表示部52に表示されている明暗パターン画像を比較用明暗パターンとして利用することができる。よって、正常な状態の被検体12の検査部位Xをラインセンサ20で撮像して比較用明暗パターン画像を予め作成する必要がない。
【0064】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係る表面検査装置(第3検査装置)200について、図7を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態は、第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0065】
第3検査装置200では、第1検査装置10における照射部16の構成が異なるとともに、動力伝達機構18が省略されている。
【0066】
照射部216は、光源部226と、明暗表示部228とを有する。
【0067】
光源部226は、被検体12の検査部位Xと対向する位置に配置された蛍光部70と、蛍光部70に接続されたケーブル部72と、ケーブル部72に接続されて蛍光部70に電力を供給するための電源部74とを備えている。蛍光部70は、被検体12の幅方向に延びており、光をライン状に照射する。
【0068】
明暗表示部228は、被検体12の幅方向に延びて被検体12と蛍光部70との間に位置するベルト部76と、ベルト部76を支持するベルト駆動支持部78とを備えている。ベルト部76は、光を遮蔽する材料で形成されており、例えば、金属やゴム等で構成されている。また、ベルト部76としては、エンドレスベルトを用いることができる。ベルト部76には、被検体12の幅方向に並ぶようにして複数の孔部80が形成されている。これら孔部80は、ベルト部76の幅方向に縦長に形成されている。これにより、蛍光部70から照射された光はベルト部76の孔部80を介して被検体12の検査部位Xに照射される。よって、検査部位Xには、明暗パターンが形成される。ベルト駆動支持部78は、ベルト部76をその長手方向に移動させる駆動軸82と、駆動軸82を回転させるための駆動部としての駆動モータ84と、駆動軸82と対向する位置に配置されてベルト部76を支持する支持軸86とを有する。また、駆動軸82及び支持軸86は、ベルト部76を内側から外側に引き延ばすようにして配置されている。これにより、ベルト部76が撓むことを防止できる。支持軸86は、ベルト部76を介して伝達される駆動軸82の回転力によって回転可能に構成されている。
【0069】
制御部222は、駆動モータ84も制御する。制御部222には、駆動モータ84を制御する駆動モータ制御部88が追加される。
【0070】
タイミング発生部243は、クロック信号に基づいて上述した搬送用タイミング信号、ラインセンサ用タイミング信号を出力する他、駆動モータ制御部88に対して駆動用タイミング信号を出力する。これにより、被検体12の搬送動作、ラインセンサ20の撮像動作及びベルト部76の移動動作のタイミングを取ることができる。
【0071】
駆動モータ制御部88は、タイミング発生部243から出力された駆動用タイミング信号に基づいて駆動モータ84を駆動し、ベルト部76を移動する。
【0072】
次に、第3検査装置200の動作について図8の第3制御ルーチンに係るフローチャートも参照しながら説明する。第3制御ルーチンでは、第1制御ルーチンのステップS2とステップS6の処理が変更され、その他の第1制御ルーチンと共通する処理に関しては説明を省略する。
【0073】
ステップS31に続くステップS32において、搬送モータ制御部44が搬送モータ25を駆動して搬送ロール24を回転させるのに加えて、駆動モータ制御部88が駆動モータ84を駆動して駆動軸82を回転させる。駆動軸82が回転するとベルト部76が被検体12の幅方向に移動する。これにより、検査部位Xに照射されている明暗パターンが被検体12の幅方向に移動する。そして、ラインセンサ制御部45は、ラインセンサ20を作動して検査部位Xに照射された明暗パターンを撮像し(ステップS33)、画像処理部46は、ラインセンサ20から出力された撮像信号に基づいて明暗パターン画像を生成する(ステップS34)。欠陥判定部50は、画像処理部46にて生成された明暗パターン画像と判定用明暗パターン画像とに基づいて被検体12の検査部位Xに表面欠陥が存在しているか否かを判定し(ステップS35)、表面欠陥が存在していると判定された時に、続くステップS36において、制御部222は、搬送モータ25及び駆動モータ84の駆動を停止して、搬送ロール24の回転及びベルト部76の移動を停止する。ステップS36の処理後、今回の第3制御ルーチンは終了する。
【0074】
搬送ロールと明暗表示部とを1つの駆動源で駆動する場合、搬送ロールの回転と明暗表示部の模様の移動とに必要な動力を1つの駆動源で同時に発生させる必要がある。本形態の表面検査装置200では、搬送モータ25と駆動モータ84とを設けているので、搬送ロール24の回転に必要な動力は搬送モータ25で、駆動軸82の回転(明暗表示部228の模様の移動)に必要な動力は駆動モータ84でそれぞれ対応することができる。これにより、搬送ロール24と明暗表示部228とを1つの駆動源で駆動する場合と比較して、搬送モータ25と駆動モータ84のそれぞれの大きさを小型化することができる。
【0075】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。本発明に係る表面検査装置の明暗パターンは、傾斜ストライプパターンやストライプパターンに限らない。例えば、明暗パターンとして、市松模様(チェッカーパターン)、格子状、六角形状などあらゆる2次元パターンを用いることができる。欠陥判定部は、画像処理部にて生成された明暗パターン画像と判定用(比較用)明暗パターン画像とに基づいて表面欠陥が存在するか否かの判定を行う例に限らない。欠陥判定部は、画像処理部にて生成された明暗パターン画像において、所定距離だけ離れた画素の差分を抽出することにより、被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定してもよい。この場合、画像処理部にて生成された明暗パターン画像において、表面欠陥上に位置する画素の信号と正常面に位置する画素の信号とが異なっているので、所定距離だけ離れた画素の差分を抽出することで、表面欠陥による明暗パターンの歪みを抽出することができる。これにより、判定用(比較用)明暗パターン画像を生成する必要がない。
【符号の説明】
【0076】
10、100、200…表面検査装置
12…被検体
14…搬送部(搬送手段)
16、116、216…照射部(照射手段)
18…動力伝達機構(移動手段)
20…ラインセンサ
22、122、222…制御部
24…搬送ロール
26、226…光源部
28、228…明暗表示部
46…画像処理部
50、150…欠陥判定部
52…映像表示部
56…映像制御部(移動手段)
84…駆動モータ(駆動部)
X…検査部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段にて搬送される前記被検体の表面に所定の繰り返し明暗パターンを照射する照射手段と、
前記被検体に照射された前記明暗パターンを前記被検体の幅方向に移動させる移動手段と、
前記被検体の前記明暗パターンが照射された部位を撮像するラインセンサと、
前記ラインセンサにて撮像された信号に基づいて前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定する欠陥判定部と、を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記被検体はウエブであり、
前記搬送手段には、前記被検体の幅方向に延びる回転軸線の回りに回転し、かつ前記被検体を搬送方向に搬送する搬送ロールが設けられ、
前記照射手段は、前記被検体のうち前記搬送ロールと接触する検査部位に前記明暗パターンを照射することを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の表面検査装置において、
前記照射手段には、前記検査部位に光を照射する光源部と、
前記光源部と前記検査部位との間に位置し、かつ前記検査部位に照射される前記明暗パターンに対応する模様を有する明暗表示部と、が設けられ、
前記移動手段は、前記搬送ロールの回転力を利用して前記明暗表示部の模様を移動させることを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
請求項2記載の表面検査装置において、
前記照射手段には、前記検査部位に光を照射する光源部と、
前記光源部と前記検査部位との間に位置し、かつ前記検査部位に照射される前記明暗パターンに対応する模様を有する明暗表示部と、
前記搬送ロールの駆動源とは別体に設けられて前記明暗表示部の模様を移動させる駆動部と、が設けられ、
前記駆動部は、前記搬送ロールの回転と同期して前記明暗表示部の模様を駆動させることを特徴とする表面検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面検査装置において、
前記ラインセンサにて撮像された信号に基づいて2次元の明暗パターン画像を生成する画像処理部をさらに備え、
前記移動手段は、前記被検体の搬送と連動して前記被検体に照射された前記明暗パターンを移動させることを特徴とする表面検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の表面検査装置において、
前記欠陥判定部は、前記画像処理部にて生成された明暗パターン画像から正常状態の前記被検体を前記ラインセンサにて撮像した時に得られる明暗パターン画像を消去することにより、前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定することを特徴とする表面検査装置。
【請求項7】
請求項5記載の表面検査装置において、
前記欠陥判定部は、前記画像処理部にて生成された明暗パターン画像において、所定距離だけ離れた画素の差分を抽出することにより、前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定することを特徴とする表面検査装置。
【請求項8】
請求項2記載の表面検査装置において、
前記照射手段には、前記検査部位と対向する位置に配置され、かつ前記検査部位に照射される前記明暗パターンに対応する模様を映像として表示する映像表示部が設けられ、
前記移動手段には、前記映像表示部に表示された模様が移動するように前記映像表示部を制御する映像制御部が設けられていることを特徴とする表面検査装置。
【請求項9】
請求項8記載の表面検査装置において、
前記ラインセンサにて撮像された信号に基づいて2次元の明暗パターン画像を生成する画像処理部をさらに備え、
前記欠陥判定部は、前記画像処理部にて生成された明暗パターン画像と前記映像表示部に表示される模様とに基づいて、前記被検体の表面に欠陥が存在するか否かを判定することを特徴とする表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79986(P2013−79986A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−20271(P2013−20271)
【出願日】平成25年2月5日(2013.2.5)
【分割の表示】特願2009−87733(P2009−87733)の分割
【原出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】