説明

表面欠陥検査方法および表面欠陥検査装置

【課題】ライン光源を円筒状の被検査体に対して傾斜して配置することによって、明度差を発生させる、ラインセンサによる検査方法において、周方向の凹凸に対する感度を高くすることを目的とし、被検査体に対して平行なライン光源によって照射する検査方法では観察できない周方向の微小凹凸を観察する。
【解決手段】円筒状被検査体を回転させながらその表面画像を取得する表面欠陥検査方法について、被検査体の中心軸に対して傾けて配置したライン状光源から被検査体にライン状の光を照射し、その反射光に対して略平行となるように配した撮像手段により表面画像を取得し、その表面画像を画像処理することにより表面欠陥を検出し、また、前記ライン状光源と被検査体の間に配置されたシリンドリカルレンズを通して検査光を照射し、被検査体表面での周方向の光量変化量を大きくすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学的手段を使用して円筒状被検査体表面の二次元画像を得て、これを画像処理をすることにより、その表面の凹凸を検査する欠陥検査方法および欠陥検査装置に関するものであり、被検査体表面の切削加工の痕跡による凹凸、異物による凸部、汚れによる凹凸欠陥、被覆層の厚さのばらつきに伴う凹凸欠陥の検査、特に円筒体表面の周方向の微小凹凸の欠陥に対する検査に有効に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
光学的手段を用いて円筒体表面、又は板状体表面の二次元画像を得て、これを画像処理することにより表面を検査する欠陥検査方法、欠陥検査装置に関する従来技術として、次の特許文献1乃至特許文献4に記載されているものがある。これらの特許文献に記載されている表面検査技術の概要は次のようなものである。
【0003】
(1)特許文献1(特開2006−177789号公報)
特許文献1のものは円筒体表面の検査方法であり、点光源の光を斜めから当て、エリアセンサでその凹凸による明暗を検出しているものであり、円筒体に対しては、エリアセンサの検出位置によって凹凸に対する感度が異なるので、微妙な凹凸の欠陥を高精度で検出するのは困難である。
【0004】
(2)特許文献2(特開2005−127747号公報)
特許文献2のものは板状体表面の検査方法であり、カメラの焦点から放射状に存在するヘアライン状の浅い疵をも検出できるようにするために、板状被検査物の両側を挟む形で一対の面光源を配置することで、疵の乱反射をその方向に関係なく検出することができる。しかし、この方式は、面光源を用いており、基本的には一様光源下での現象をみるものであるから、ライン光源のエッジ部で検出する方式のものに比べて、微小な欠陥についての検出感度が低い。
【0005】
(3)特許文献3(特開2005−300512号公報)
このものは円筒体表面の検査方法であり、ライン状の光源を用いるもので、回転に伴う検査表面の振れに合わせてラインセンサの位置を追従することによって、高感度に凹凸欠陥を検出するものである。しかし、このもので周方向の微小凹凸を高精度で検出するのは難しい。
【0006】
(4)特許文献4(特開2004−144612号公報)
このものは平行光を軸方向から斜めに照射し、反射光の平行成分のみを通すレンズを介して撮像することにより、緩やかな表面の凹凸欠陥を精度良く検査するものである。これは、軸方向から斜めに照射するため、一度に検査できる範囲(被検査面積)が小さく、したがって、撮像処理を複数回行うことが必要であり、長い検査時間を要する。
【0007】
〔従来技術の問題点〕
円筒形状の被検査体の表面画像を高速で取得する方法として、円筒状検査表面にライン状の光を照射し、被検査体を回転させながらラインセンサにて全面を副走査し、全面画像を画像処理装置に入力する方法が一般的に行われているが、この方法では、ラインセンサの副走査方向、円筒状検査表面の周方向の微小凹凸を検出することは困難である。
【0008】
被検査体が電子写真用感光体ドラムの場合、アルミニウムの基体に表面加工を施し、その上に塗布(又は塗装)による被覆層を設けている。このアルミニウム基体の表面加工は当該表面を平滑にする鏡面加工であったり、逆に光を拡散させるための粗面加工であったりする。さらに、当該アルミニウム基体を塗布液に浸して塗膜層を形成し、これを複数回繰り返すことで複数回重ねて塗膜層を形成する。
【0009】
上記の切削加工に用いる工具の切削性能や振動等により、それによる切削幅や切削深さがばらつくことがあり、このため、感光体ドラム基体の周方向に凹凸が生じてしまう。また、感光体ドラム基体の表面に切削加工による凹凸があると、そのために円筒面に付着された塗膜層の厚さが部分的に均一にならないという問題があり、また、感光体ドラム基体が塗布液から引き上げられるときに、振動や液はね等の影響により塗布液面のゆれが生じた場合、これに浸し引き上げられて形成される塗膜層の厚さにむらが生じるという問題がある。
以上のような感光体ドラム基材表面(加工面)の凹凸および塗膜層による被覆層の厚さのむらは、感光体ドラム表面の周方向凹凸となり、このため、印刷された画像の品質にむらが生じる。
また、電子写真用定着ローラドラムについても、同様にアルミニウム管に切削加工を施す場合があり、切削むらによる線状の周方向凹凸の欠陥を生じる。
【0010】
特許文献4に、平行光を軸方向から斜めに照射し、反射光の平行成分のみを通すレンズを介して撮像することにより、緩やかな表面の凹凸欠陥を精度良く検査するという方法が記載されている。これによる場合は、部分的な検出となり表面全体を高速で走査することは困難である。また、凹凸以外の欠陥、例えば、キズ、被検査面の色の濃淡むらの欠陥をも検出する場合は、そのための手段が別途必要である。
【0011】
従来のラインセンサ方式で上記の周方向凹凸を検出するのは困難である。これは、図1に示すように、ライン状光源1から被検査体2、ラインカメラ(ラインセンサ)3へと導かれる光量が周方向凹凸の変化方向に対して一様であり、このために、凹凸による光量の変化を検出できないからである。
一方、被検査体の軸方向に生じた凹凸に関しては、図2に示すように、ライン状光源1から被検査体2、ラインカメラ3へと導かれる光量が軸方向凹凸の変化方向に対して変化しているため、この凹凸を上記ラインカメラ3への光量の変化で検出することができる。この変化量は直接反射光に近いところほど大きくなるため、特許文献3のものは、より直接反射光に近いところを常時観察できるような手法を用いている。それでも、周方向に生じた微小な凹凸(周方向欠陥11)の変化の方向(周方向)は、光量変化が生じない方向であるので、反射光量の変化でこれを検出するのは困難である。
【0012】
【特許文献1】特開2006−177789号公報
【特許文献2】特開2005−127747号公報
【特許文献3】特開2005−300512号公報
【特許文献4】特開2004−144612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、ライン光源を円筒状の被検査体に対して傾斜して配置することによって、明度差を発生させる、ラインセンサによる検査方法において、周方向の凹凸に対する感度を高くすることを目的とし、被検査体に対して平行なライン光源によって照明する検査方法では観察できない周方向の微小凹凸を観察するために、回転による被検査対表面の振れに合わせてラインセンサの位置を追従させることによって高感度に凹凸欠陥を検出する手法を、ラインセンサによる方法にそのまま展開できるようにすることをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔手段1〕
上記課題を解決するための検査方法についての手段は、円筒状被検査体を回転させながらその表面画像を取得する表面欠陥検査方法について、次の(イ)〜(ハ)によるものである。
(イ)被検査体の中心軸に対して傾けて配置したライン状光源から被検査体にライン状の光を照射し、
(ロ)その反射光に対して略平行となるように配した撮像手段により表面画像を取得し、
(ハ)その表面画像を画像処理することにより表面欠陥を検出すること。
【0015】
また、(ニ)前記ライン状光源と被検査体の間に配置されたシリンドリカルレンズを通して検査光を照射し、被検査体表面での周方向の光量変化量を大きくすること。
【0016】
〔手段2〕
また、上記課題を解決するための検査装置に関する手段は、円筒体等の円筒形状を有する被検査体を回転しながら、表面画像を取得する表面検査装置について、
次の(a),(b)によるものである。
(a)ライン状光源が被検査体の中心軸に対して傾けて配置されており、
(b)その反射光に対して略平行となるように撮像手段が配されていること。
また、
(c)前記ライン状光源と被検査体の間に、円筒体周方向の光量変化量を大きくするためのシリンドリカルレンズが配されていること。
【発明の効果】
【0017】
この発明の効果は次のとおりである。
(1)発明1(請求項1に対応)
ライン状光源を円筒状被検査体に対して傾けることにより、欠陥変化方向である軸方向に対して光量が変化する。これにより、従来から可能である微小な点状凹凸の欠陥や軸方向凹凸の欠陥に加えて、従来技術は検出できなかった周方向凹凸の欠陥に対する感度を向上させることができ、当該欠陥を高精度で検出することができる。
【0018】
(2)発明2(請求項2に対応)
ライン状光源と被検査体との間にシリンドリカルレンズを配置したことにより、凹凸欠陥による反射光の光量の変化の度合いを大きくすることができ、これにより、周方向凹凸の欠陥に対する検出能力を向上させることができる。
【0019】
(3)発明3(請求項3,4に対応)
発明1、発明2と同様に、ライン状光源を円筒状被検査体に対して傾けたことで、微小凹凸の欠陥や軸方向凹凸の欠陥、また周方向凹凸の欠陥を検出することができ(発明3)、また、前記ライン状光源と被検査体の間にシリンドリカルレンズを配置したとにより、周方向の凹凸欠陥を高精度で検出することができる(発明4)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次いで、図面を参照して実施形態を説明する。
従来、図1のように被検査体の中心軸方向に略平行であったライン状光源1を、図4に示すように被検査体2の中心軸と、ライン状光源1の発光部を同一平面とするように回転して設置したものが、図3の左図(図3(a))に示されている。このときにラインカメラ3の方向から見た図が右図の正面図(図3(c))であり、被検査体2の中心軸に対してライン状光源が傾きを生じる。この傾きによって、周方向の欠陥の形状が変化する方向である軸方向に対して光量の分布に変化が生じる。この結果として、軸方向に対して光量の分布に変化が生じるので、図3(b)のように、表面側の暗部20が周囲よりも暗く撮像されるようにすることが可能である。
【0021】
また、この場合、ラインカメラ(ラインセンサ)3を反射光の分布に対してほぼ平行な向きに配置することにより、被検査体2の表面に凹凸欠陥が存在しない場合は従来法と同様の画像を得ることができる。したがって、従来と同じ画像処理方法を用いることにより被検査体2の表面形状に起因する欠陥と、表面の濃度変化(表面反射率の差による濃淡欠陥)との、原因が異なり種類が違う欠陥を同じ光学系で同時に検出できる。
なお、ライン状光源1を被検査体2に対して傾けて配置している分、入力画像が斜方に一次変換されている画像となるため、これが欠陥の面積や欠陥の形状の解析において問題となるような用途においては、処理画像が正方になるように画像変換を行うことも有効である。
また、ライン状光源1を被検査体2に対して傾ける方向は、切削加工のスパイラルの方向と平行に近くなる方向が好ましい。これは、欠陥の凹凸に因り光量変化が大きくなる方向であるからである。
【0022】
さらに図5に示すようにライン状光源1と被検査体2の間に、集光作用のあるシリンドリカルレンズ4を配置すると、軸方向に対する光量の変化の度合いが大きくなるため、周方向欠陥を画像上で顕著にして、これを確実に検出することが可能となる(請求項2に対応)。
【0023】
この方式は、円筒形の被検査体の検査における周方向欠陥という、加工工程において一定の方向に向って形成されてしまう凹凸欠陥を感度良く検出するように、ライン光源、ラインセンサを配置することを特徴としており、ラインセンサが傾けられたとき、ラインセンサに対して垂直方向に長く伸びるような欠陥が被検査体表面に発生しにくいことから、特に切削により加工されたものの周方向欠陥を検出するのに有効である。
【0024】
なお、その他、発生頻度の高い、異物の付着等による点状の凹凸欠陥においては、ラインカメラ(ラインセンサ)3を傾けても全方位的に形状が変化しているため、従来と同程度の精度で検出することが可能となる。
また、この方式のように、ライン状光源1を被検査体2に対して傾けて配置した場合にも、特許文献3に記載のような輝線部分(正反射光成分)に近いところに検出用のラインカメラ(ラインセンサ)3を追従させることにより、周方向の凹凸欠陥に対する感度をより高くすることが可能になる。
【0025】
図6に従来方式と本方式の撮像を示す。このものの被検査体2は定着ローラドラムである。図における矢印の延長先に欠陥の映像があり、この周方向凹凸の欠陥部は図面における画像の上端から下端までの直線状に延びた欠陥、すなわち、明暗欠陥として撮像される凹凸欠陥である。また、図6(a),(b)の画像についての縦方向の画素値の積算値が同図(c)にグラフで示されている。
また、同じ凹凸欠陥を、従来方式による場合の画像と、本方式による場合の画像との違いを、誇張して図7に示している。
本方式の方が、上記のような周方向の凹凸欠陥をもコントラスト良く検出できることが図6、図7から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】は、従来技術による周方向欠陥の検出モデルであり、(a)は平面図、(b)は被検査体の表面を拡大して示す模式図、(c)はラインカメラ方向から見た図。
【図2】は、従来法による軸方向欠陥の検出モデル、(a)は平面図、(b)は被検査体の表面を拡大して示す模式図、(c)はラインカメラ方向から見た図。
【図3】は、この発明の方式による周方向欠陥の検出モデル、(a)は平面図、(b)は被検査体の表面の断面を拡大して示す模式図、(c)はラインカメラ方向から見た図。
【図4】は、図3の周方向欠陥の検出モデルにおける、光源と被検査体の上面視における配置図。
【図5】は、図3の周方向欠陥の検出モデルにおいて、ライン状光源にシリンドリカルレンズを入れた場合の、光源と被検査体の上面視における配置図。
【図6】(a)はそれぞれ従来方式による検出画像のサンプル、(b)は本方式による検出画像サンプル、(c)は縦方向の画素値の積算グラフ。
【図7】は、上下方向に伸びる欠陥の画像を誇張して示す模擬図、(a)は従来方式、(b)は本方式による図。
【符号の説明】
【0027】
1:ライン状光源
2:被検査体
3:ラインカメラ
4:シリンドリカルレンズ
11:周方向欠陥
12:軸方向欠陥
20:暗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の被検査体を回転しながら、表面画像を取得する表面欠陥検査方法において、
被検査体の中心軸に対して傾けて配置したライン状光源から被検査体にライン状の光を照射し、その反射光に対して略平行となるように配した撮像手段により表面画像を取得し、その表面画像を画像処理することにより表面欠陥を検出することを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1の表面欠陥検査方法であって、前記ライン状光源と被検査体の間に配置されたシリンドリカルレンズを通して検査光を照射し、被検査体表面での周方向の光量変化量を大きくすることを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項3】
円筒状の被検査体を回転しながら、表面画像を取得する表面欠陥検査装置において、
ライン状光源が被検査体の中心軸に対して傾けて配置されており、その反射光に対して略平行となるように撮像手段が配されていることを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項3の表面欠陥検査装置であって、前記ライン状光源と被検査体の間に、被検査周方向の光量変化量を大きくするためのシリンドリカルレンズが配されていることを特徴とする表面欠陥検査装置。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−68870(P2009−68870A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235007(P2007−235007)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】