説明

被処理物の水熱処理装置

【課題】反応器内への水蒸気の導入から水熱処理の開始までの時間を短縮することができ、さらには導入される水蒸気の量を低減することができる水熱処理装置を提供すること。
【解決手段】被処理物を水熱処理するための耐圧性の反応器、前記反応器に連結され、該反応器に投入される被処理物を収容するための第一の耐圧容器、前記反応器に連結され、該反応器から排出される水熱処理物を収容するための第二の耐圧容器、及び前記反応器と第二の耐圧容器との間を連結し、前記反応器から第二の耐圧容器へ廃蒸気を導入するための単数又は複数の配管、を備える、被処理物を水熱処理して水熱処理物を得るための水熱処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミ等の被処理物の水熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全や資源循環に対する意識が高まり、生ゴミ等の被処理物の焼却処理といった既存の処理手法に変わる手法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1では、生ゴミ(食品残渣)、木くず、紙くず等の被処理物を高温高圧の水蒸気にて加水分解し、飼料や堆肥を製造している。
【0003】
さらに、高含水廃棄物を処理するための装置が特許文献2に開示されている。特許文献2に開示の装置おいては、水熱処理用の一対の反応器が配置され、各反応器間には、一方の反応器内から他方の反応器内へ水蒸気を移動させるための配管が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−47409号公報
【特許文献2】特開2009−120746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生ゴミ等の被処理物の水熱処理では、水熱処理の反応器内に被処理物が投入された後、反応器内に水蒸気が導入される。そして、導入された水蒸気により反応器内の温度及び圧力が所定値まで高められ、被処理物の水熱処理が行われる。被処理物の水熱処理が完了した後、反応器内から水蒸気が脱気される。
【0006】
特許文献2には、一方の反応器内の水蒸気の一部が他方の反応器内へ移動することが開示されている。特許文献2に記載の装置においては、各反応器から水熱処理物が取り出される前に、各反応器内の圧力が大気圧相当になるまで、反応器内の水蒸気が外部へ排出される。そのため、水熱処理終了後に、反応器に新たな被処理物が投入されて次の水熱処理が行われる際には、反応器内に水蒸気を導入して当該反応器内の圧力を大気圧程度から必要な値にまで高める必要がある。その結果、反応器内への水蒸気の導入から水熱処理の開始までに長時間を要していた。
【0007】
従って、本発明の課題は、反応器内への水蒸気の導入から水熱処理の開始までの時間を短縮することができる水熱処理装置及び水熱処理方法を提供することにある。さらに本発明の課題は、導入される水蒸気の量を低減することができる水熱処理装置及び水熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕 被処理物を水熱処理するための耐圧性の反応器、
前記反応器に連結され、該反応器に投入される被処理物を収容するための第一の耐圧容器、
前記反応器に連結され、該反応器から排出される水熱処理物を収容するための第二の耐圧容器、及び
前記反応器と第二の耐圧容器との間を連結し、前記反応器から第二の耐圧容器へ廃蒸気を導入するための単数又は複数の配管、
を備える、被処理物を水熱処理して水熱処理物を得るための水熱処理装置;
〔2〕 第一の耐圧容器に被処理物を供給する工程(工程1)、
反応器に被処理物を投入する工程(工程2)、
反応器に水蒸気を導入して被処理物の水熱処理を行う工程(工程3)、
第一の耐圧容器に、被処理物の水熱処理後に残存する廃蒸気を導入する工程(工程4)、
第二の耐圧容器に、被処理物の水熱処理後に残存する廃蒸気を導入する工程(工程5)、
反応器から水熱処理物を排出する工程(工程6)、
反応器に次の被処理物を投入する工程(工程7)、及び
反応器に水蒸気を導入して次の被処理物の水熱処理を行う工程(工程8)、
をこの順序で含む、被処理物の水熱処理方法;並びに
〔3〕 前記〔2〕に記載の被処理物の水熱処理方法によって得られた被処理物の水熱処理物を、さらに生物処理して生物処理物を得る工程を含む、被処理物の生物処理方法;に関するものである。
【0009】
本発明の上記構成によれば、被処理物の水熱処理反応だけでなく、水熱処理反応用の反応器への被処理物の投入及び反応器からの水熱処理物の回収を耐圧容器内で行うことにより、反応器内が大気圧相当を超える圧力に維持された状態で、被処理物の反応器への投入及び水熱処理物の反応器からの排出を行うことができる。その結果、水熱処理を連続して行う場合において、水熱処理後に新たに水熱処理を行う時に、反応器内に導入される追加の水蒸気の量を低減させることができると共に、追加の水蒸気の導入から水熱処理の開始までに要する時間を短縮することができる。従って、本発明の装置又は方法によれば、被処理物の水熱処理をより低コストでかつより短時間で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の水熱処理装置の一例の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の水熱処理装置の主要部の概略構成を示す図である。
【図3】図3は本発明の工程1を模式的に示す図である。
【図4】図4は本発明の工程2を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の工程3を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の工程4を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の工程5を模式的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の工程6を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の工程7を模式的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の工程8を模式的に示す図である。
【図11】図11は、生物処理プラントを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の水熱処理装置>
本発明の水熱処理装置及び水熱処理方法の処理対象物(被処理物)としては有機性廃棄物が好ましい例であり、その具体例としては、生ゴミ(食品残渣)、食品加工残渣、畜産廃棄物、水産廃棄物等が挙げられる。
【0012】
次に、図面に基づいて、本発明の水熱処理装置をより詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る水熱処理装置100の一例の概略構成を示す図である。
【0013】
図示するように、本実施形態に係る水熱処理装置100は、耐圧性の反応器11と、反応器11に連結され、反応器11に投入される被処理物を収容するための第一の耐圧容器1と、反応器11に連結され、反応器11から排出される水熱処理物を収容するための第二の耐圧容器21とを備えることを特徴とする。各容器間は弁(1a及び11a)を経由して連結されており、被処理物、水熱処理物及び水蒸気の移動がかかる弁を介して行われる。本発明に用いられる耐圧容器としては、耐圧性と耐温性を備えた鋼製の容器又はステンレス製の容器が挙げられる。耐圧容器の形状は特に限定されないが、耐圧性に優れていることから、球形状が好ましい。
【0014】
反応器11と第二の耐圧容器21との間には、さらに、反応器11から第二の耐圧容器21へ廃蒸気を導入するための単数又は複数の配管を設ける。かかる配管を設けることにより、水蒸気の効率的な利用を達成することができる。複数の配管を設ける場合、各配管の内径に差を設けることがより好ましい。例えば、図1に示されるように、弁12aが設けられた小径配管12及び/又は弁13aが設けられた大径配管13を設けてもよい。小径配管12の内径としては、例えば1〜5cmが好ましい。また、大径配管13の内径としては、例えば、小径配管2の内径の1〜3倍が好ましい。
【0015】
被処理物や水熱処理物を簡便な操作で各容器内に投入し排出する観点から、第一の耐圧容器1を反応器11の上部に設けることが好ましく、第二の耐圧容器21を反応器11の下部に設けることが好ましい。
【0016】
第一の耐圧容器1及び第二の耐圧容器21の容積は、反応器11の容積よりも小さいことが好ましい。このような構成とすることにより、反応器11から各耐圧容器に導入される水蒸気の量を少なくすることができ、反応器11内に残存する水蒸気(廃蒸気)の量をより多く確保することができるからである。各耐圧容器の容積としては、例えば、それぞれが反応器11の20〜100%であることが好ましく、30〜60%であることがより好ましい。
【0017】
反応器11から水熱処理物を第二の耐圧容器21に排出するために、反応器11には開口部(図示せず)が設けられる。弁11aは、開口部と第二の耐圧容器21との間に位置することになる。かかる開口部は、反応器11内の水熱処理物の液面(表面)よりも下に設けることが好ましく、反応器11の底部に設けることがより好ましい。このように開口部を設けることにより、反応器11から水熱処理物を容易に排出することができる。
【0018】
反応器11に、反応器11内を加熱するための加熱手段(図示せず)をさらに設けてもよい。かかる加熱手段により、例えば、水熱処理時の反応器11内の温度を調整したり、又は水熱処理物を反応器11内で乾燥させることができる。この場合において、水熱処理物を乾燥させた後、第二の耐圧容器21に排出してもよい。
【0019】
さらに、本発明の水熱処理装置においては、第二の耐圧容器21に連結された水熱処理物回収タンク31を備えることが好ましい。第二の耐圧容器21と水熱処理物回収タンク31との連結は、弁21aを介して行うことが好ましい。かかる水熱処理物回収タンク31を設けることにより、水熱処理物の回収を効率的に行うことができる。水熱処理物を簡便な操作で水熱処理物回収タンク31に排出する観点から、水熱処理物回収タンク31を反応器11の下部に設けることが好ましい。
【0020】
さらに、第一の耐圧容器1及び第二の耐圧容器21に連結された水蒸気回収タンク41を備えることが好ましい。第一の耐圧容器1と水蒸気回収タンク41との連結は、弁42aを備えた配管42を介して行うことが好ましく、第二の耐圧容器21と水蒸気回収タンク41との連結は、弁22aを備えた配管22を介して行うことが好ましい。かかる水蒸気回収タンク41を設けることによって、水蒸気の効率的な利用を行うことができるため、好ましい。具体的には、弁42aを開放して第一の耐圧容器1内の水蒸気を水蒸気回収タンク41内に回収することができ、弁22aを開放して第二の耐圧容器21内の水蒸気を水蒸気回収タンク41内に回収することができる。なお、水熱処理物回収タンク31と水蒸気回収タンク41は耐圧容器である必要はない。
【0021】
第一の耐圧容器1と反応器11との間には、さらに、反応器11で生じた廃蒸気を第一の耐圧容器1に導入するための単数又は複数の配管を設けてもよい。かかる配管を設けることにより、水蒸気の効率的な利用を達成することができる。複数の配管を設ける場合、各配管の内径に差を設けることがより好ましい。例えば、図1に示されるように、弁2aが設けられた小径配管2及び/又は弁3aが設けられた大径配管3を設けてもよい。小径配管2の内径としては、例えば、1〜5cmが好ましい。また、大径配管3の内径としては、例えば、小径配管2の内径の1〜3倍が好ましい。
【0022】
反応器11内には、図2に示されるように、回転自在の単数又は複数の攪拌羽根113を備えることが好ましい。攪拌羽根113によって、反応器11内の被処理物を攪拌するとともに磨り潰すことができる。反応器11の内部は高温高圧の水蒸気が導入されて水蒸気と当該水蒸気由来の熱水で充満されていることから、攪拌羽根113は、回転して被処理物を攪拌することで、被処理物を満遍なく水蒸気と熱水に接触させつつ、被処理物へのより一律な熱の伝搬を図ることができる。さらに、攪拌羽根113は、被処理物を磨り潰して当該被処理物の固形分を破壊し、水熱処理を促進することができる。
【0023】
反応器11には、内部の温度を検出する温度センサ(図示せず)と内部の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)が装着される。これらのセンサは制御装置(図示せず)に検出信号を出力する。
【0024】
制御装置(図示せず)は、本実施形態の水熱処理装置100の制御を統括的に行うものであり、論理演算を実行するCPUやプログラムやデータを記憶したROM、データの一時的な読み書きを可能とするRAM等を有するコンピュータで構成される。そして、制御装置には種々のセンサからの検出信号が入力され、こうした検出信号や図示しない操作盤からの運転条件設定パラメータに応じて、種々の弁やボイラ等の機器の駆動制御を実行する。
【0025】
反応器に水蒸気を供給する配管(図示せず)にアキュムレータを接続し、当該アキュムレータ内に水蒸気を蓄積させた後、アキュムレータから反応器内へ水蒸気を急速に供給してもよい。この場合、反応器内の雰囲気を短時間で高温および高圧にすることができ、水熱処理の立ち上がりを早くすることができる。
【0026】
<本発明の被処理物の水熱処理方法>
以下に、本発明の水熱処理装置及び本発明の水熱処理方法に関する、被処理物の水熱処理フローを説明する。
【0027】
(工程1)第一の耐圧容器に被処理物を供給する工程
図3に示されるように、第一の耐圧容器1に被処理物51aを供給する。
【0028】
(工程2)反応器に被処理物を投入する工程
図4に示されるように、第一の耐圧容器1から反応器11に、被処理物51aを投入する。第一の耐圧容器1は反応器11の上部に設けられているので、弁1aを開くことにより、重力を利用して被処理物51aを落下させる。
【0029】
(工程3)反応器に水蒸気を導入して被処理物の水熱処理を行う工程
図5に示されるように、水蒸気導入用の配管(図示せず)を経由して、反応器11内に水蒸気61を導入する。導入された水蒸気61により、被処理物51aに所定の温度、圧力が加えられて水熱処理が行われる。この時、弁1a、11a、12a及び13aは閉じられている。さらに、図5に示されるように、本工程において第一の耐圧容器1に次の被処理物51bを供給してもよい。
【0030】
本工程における水熱処理時の反応器内の温度としては、100〜300℃が好ましく、100〜250℃がより好ましく、150〜200℃がさらに好ましい。誘電率の観点から、反応器内の温度は100℃以上であることが好ましく、イオン積の観点から、反応器内の温度は300℃以下であることが好ましい。本工程における水熱処理時の反応器内の圧力としては、0.1〜4.0MPaが好ましい。
【0031】
さらに、水熱処理の時間としては、0.5〜60分間が好ましく、1.5〜30分間がより好ましく、3〜15分間がさらに好ましい。液状化の観点から、水熱処理の時間としては0.5分間以上であることが好ましく、生分解性の観点から、水熱処理の時間としては30分間以下であることが好ましい。
【0032】
導入される水蒸気の温度は、水熱処理時の反応器内の温度よりも数℃高い温度とすることが好ましい。また、水熱処理操作全体の時間を短縮するために、反応器11内への水蒸気の導入速度は速い方が好ましく、例えば、0.2〜2MPa/minとすることが好ましい。反応器11内の温度が所定の温度・圧力に達した時点で水蒸気の導入を停止する。次いで、必要に応じて攪拌羽根(図示せず)を回転させて被処理物を攪拌することが好ましい。
【0033】
(工程4)第一の耐圧容器に、被処理物の水熱処理後に残存する廃蒸気を導入する工程
図6に示されるように、被処理物の水熱処理の終了後に反応器11内に残存する水蒸気(廃蒸気62)を第一の耐圧容器1に導入する。この操作によって、第一の耐圧容器1内の圧力と反応器11内の圧力とがほぼ等しくなる。廃蒸気62には、水の気化により生じる水蒸気だけでなく、当該水蒸気の液化により得られ、水蒸気中に漂う水滴も含む。
【0034】
廃蒸気62を第一の耐圧容器1に導入する際、弁1a、2a、3a及び42aを閉じた後に、まず最初に弁2aを開いて小径配管2を経由して廃蒸気62を導入し、その後、弁3aを開いて大径配管3を経由して廃蒸気62を導入することが好ましい。このような操作を行うことにより、第一の耐圧容器1内の圧力と反応器11内の圧力との差に由来する各部材の負荷を軽減することや、反応器11内の水熱処理物52の飛散を抑制することができる。
【0035】
(工程5)第二の耐圧容器に、被処理物の水熱処理後に残存する廃蒸気を導入する工程
図7に示されるように、廃蒸気62を第二の耐圧容器21に導入する。この操作においては、反応器11内の圧力を第二の耐圧容器21内の圧力よりも高くなるように、例えば0.01〜1MPa高くなるように、廃蒸気62を導入することが好ましい。よって、廃蒸気62の導入後の各容器内の圧力は、第一の耐圧容器1内の圧力>反応器11内の圧力>第二の耐圧容器21内の圧力、という順序となる。
【0036】
廃蒸気62を第二の耐圧容器21に導入する際、弁1a、2a、3a、11a、12a、13a及び22aを閉じた後に、まず最初に弁12aを開いて小径配管12を経由して廃蒸気62を導入し、その後、弁13aを開いて大径配管13を経由して廃蒸気62を導入することが好ましい。このような操作を行うことにより、第二の耐圧容器21内の圧力と反応器11内の圧力との差に由来する各部材の負荷を軽減することや、反応器11内の水熱処理物52の飛散を抑制することができる。
【0037】
(工程6)反応器から水熱処理物を排出する工程
図8に示されるように、弁11aを開いて反応器11内の水熱処理物52を第二の耐圧容器21内に排出する。
【0038】
第二の耐圧容器21は反応器11の下部に設けることが好ましいが、工程5において、反応器11内の圧力>第二の耐圧容器21内の圧力となっているので、かかる圧力差を利用して水熱処理物52が排出されることになる。また、この操作によって、第二の耐圧容器21内の圧力と反応器11内の圧力とがほぼ等しくなる。
【0039】
(工程7)反応器に次の被処理物を投入する工程
図9に示されるように、第一の耐圧容器1から反応器11に、次の被処理物51bを投入する。
【0040】
弁1aを開くことにより、重力と圧力差とを利用して次の被処理物51bを落下させる。また、この操作によって、第一の耐圧容器1内の圧力と反応器11内の圧力とがほぼ等しくなる。
【0041】
本工程において、第二の耐圧容器21内より廃蒸気62及び水熱処理物52を排出してもよい。これらの操作を行う場合、まず最初に弁22aを開放して、配管22を経由して水蒸気回収タンク41内に廃蒸気62を排出した後、弁21aを開放して水熱処理物回収タンク31内に水熱処理物52を排出する。
【0042】
(工程8)反応器に水蒸気を導入して次の被処理物の水熱処理を行う工程
図10に示されるように、水蒸気導入用の配管(図示せず)を経由して、反応器11内に追加の水蒸気64を導入する。導入された追加の水蒸気64と、残存する廃蒸気62とにより、次の被処理物51bに所定の温度、圧力が加えられて水熱処理が行われる。この時、弁1aは閉じられている。廃蒸気62は本工程の水熱処理に再利用されるため、水熱処理に用いられる水蒸気の量を低減させることや、水熱処理の開始までの時間を短縮化することができる。
【0043】
さらに、図10に示されるように、本工程において第一の耐圧容器1に次の被処理物51cを供給してもよい。この場合においては、まず最初に弁42aを開放して、第一の耐圧容器1内に残存する廃蒸気62を、配管42を経由して水蒸気回収タンク41内に排出する。この時、第一の耐圧容器1内はほぼ常圧となる。次いで、第一の耐圧容器1に次の被処理物51cを供給する。
【0044】
以降、(工程4)〜(工程8)をこの順序に従って繰り返し行うことによって、被処理物の水熱処理を連続的に行うことができる。
【0045】
<本発明の生物処理方法>
本発明の水熱処理方法で得られた水熱処理物を、さらに生物処理して生物処理液を得てもよい。かかる生物処理液は、有機物等の量が大幅に低減したものであるので、下水等への放流基準を満たすことを確認した後、下水等へ放流することができる。水熱処理物をさらに生物処理して生物処理液を得る工程((c)工程とする)を含む被処理物の生物処理方法も、本発明に包含される。以下、本発明における(c)工程について説明する。
【0046】
被処理物の水熱処理液を(c)工程に供給する前に、水熱処理物をオゾン処理してもよい。このオゾン処理により、液体中の油分が分解される。その結果、液体の生物処理における汚泥への負荷を下げることができ、より安定して生物処理を行うことができる。更に、オゾン処理により液体の脱色を行うことができる。オゾン処理の方法としては、公知の処理方法が挙げられる。
【0047】
被処理物の水熱処理物、又は必要に応じてさらにオゾン処理された液体が(c)工程に供される。この場合において、例えば流量調整槽(バッファー槽)を設けて、この槽にて、水熱処理後の廃蒸気と上記液体とを混合した後、(c)工程に供してもよい。
【0048】
本工程における生物処理では、好気的処理でも嫌気的処理でも構わないが、好気性細菌による好気的な生物処理の方が好ましい。好気的処理の場合、例えば好気性細菌を含む活性汚泥の存在下、空気等で曝気しながら処理対象物を生物処理する方法が挙げられる。以下、好気的処理の態様を説明する。
【0049】
(c)工程により、導入された液体中の成分が処理される。生物処理の際に、液体中の成分の一部が汚泥中の菌叢等により消費されて二酸化炭素などのガスとして系外に放出され、残部が汚泥中に取り込まれる。本実施形態では、液体中の成分を例えば、TOC負荷(kg/日)で3〜6kg/日のときに、一日に2〜4kgの量の炭素を二酸化炭素として系外に放出することができ、余剰汚泥の発生率を40%以下に抑えることができる。
【0050】
更に、生物処理により増加した汚泥の一部を抜き取り、水熱処理に供することにより、余剰汚泥の発生率を更に下げることができる。
【0051】
生物処理に用いられる汚泥としては、系外で馴養された後に生物処理に用いてもよく、又は予め馴養されることなく生物処理に用いられ、馴養と生物処理とを同時に行ってもよい。
【0052】
曝気を行う場合において、処理槽内の液体の溶存酸素量としては、0.5mg/L以上であることが好ましく、1mg/L以上であることがより好ましい。また、定常的に生分解処理を行うのに必要な溶存酸素量の観点から、上限が8mg/L以下であることが好ましく、7mg/L以下であることがより好ましく、6mg/L以下であることがさらに好ましい。かかる溶存酸素量は、DOメーターOM12(株式会社堀場製作所製)等を用いて測定することができ、処理槽内へ空気を送るファンの回転数の調整等により容易に制御することができる。溶存酸素量が足りない場合は酸素溶解装置を使用してもよい。
【0053】
本実施形態に用いられる活性汚泥中の好気性細菌としては、公知の活性汚泥法において通常見られる好気性細菌であれば特に限定されない。
【0054】
さらに本実施形態においては、処理槽における水熱処理物の分解時の臭気を防止することができる。臭気を防止できる理由として、通常、嫌気性細菌による生分解処理時には硫化水素、アンモニア等の臭気物質が発生するが、本実施形態では、処理槽内が好気性であることが臭気の防止に大きく寄与していると考えられる。
【0055】
本実施形態は、水熱処理物が含まれる処理槽内の溶存酸素量を制御する方法を採用してもよい。
【0056】
本実施形態において、生物処理を行う生物処理槽は、被処理物を水熱処理して得られる水熱処理物が含まれる槽であって、水熱処理物を好気的に生物処理する槽である。具体的には、曝気槽などが処理槽として使用されるが、生物処理槽は、1つまたは複数を使用してもよく、廃液を溜めておく原水槽と組み合わせてもよい。
【0057】
生物処理後に得られる生物処理物から、例えば、膜処理により液体成分を分離して、膜処理液を得てもよい。本願において、この膜処理液を得る工程を(d)工程と称する。
【0058】
膜処理液について、その数平均分子量としては、例えば250〜2000の範囲である。また、膜処理液の重量平均分子量としては、例えば250〜3000である。膜処理液の上記平均分子量はGPC法による分子量分布の測定結果から算出することができる。
【0059】
生物処理液又は膜処理液の分子量分布を測定し、水熱処理物のそれと比較することによって、生物処理の進行程度を評価することができる。
【0060】
以下、本実施形態に係る(c)工程及び(d)工程を図面に基づいて説明する。
【0061】
水熱処理物を図11に示される処理プラントで処理する。以下、各部材の符号は、図11に基づく。具体的には、水熱処理工程Aで得られた水熱処理物を、一旦流量調整槽301に貯蔵し、次いで生物処理槽302に供給する。ここでの生物処理槽302は、曝気のための散気管303を具備する曝気槽である。なお、図11に示す処理プラントにおいては、生物処理槽302は一槽であるが、複数の生物処理槽302を設けてもよい。生物処理槽302においては、pH計304、DO計305及び/又はORP計306を設けて、各測定値をモニタリングしてもよい。生物処理槽302においては、25重量%水酸化ナトリウム又は18重量%硫酸を適宜添加することにより、pHを所定値に調整することができる。
【0062】
生物処理槽302においては、曝気下で攪拌しながら生物処理を行う。生物処理槽302には、例えば好気性細菌を含む活性汚泥が導入されている。なお、生物処理槽302に水位センサを設けて、生物処理槽302における液体の滞留時間を所定の時間に設定することができる。
【0063】
(d)工程をさらに実施する場合、生物処理槽302で処理された生物処理液を、膜処理槽311に供給する。膜処理において用いられる膜としては、本発明分野で用いられている公知の膜を特に制限すること無く採用することができ、中空糸膜でもよく、平膜でもよい。本実施形態においては、膜処理槽311は、生物処理液をろ過するための中空糸膜(例えば、1m2、東レ株式会社製、商品名:SUR134)10枚からなる中空糸膜ユニット312を設け、必要に応じて曝気するための散気管303を設けてもよい。散気管303からの曝気によって、膜処理槽311内が溶存酸素量を所定の程度(例えば2mg/L以上)に保つことができる。さらに、汚泥返送ライン307を設けて、膜処理槽311に蓄積する汚泥を生物処理槽302に戻してもよい。
【0064】
中空糸膜ユニット312は、膜処理槽311において、散気管303の直上に、散気管303からのエアー曝気を十分うけるように配置されることが好ましい。散気管303は膜処理槽311の下部に配置され、曝気により、膜処理槽311の全体を攪拌することができる。膜処理槽311において、曝気は、散気管303から供給されるエアーが中空糸膜ユニット312を通り、膜処理槽311の壁面上を降下する。
【0065】
膜処理槽311内の生物処理液、即ち汚泥と処理対象物との混合液におけるMLSSとしては、膜処理槽311内を数回測定した平均値で10000mg/L以上が好ましく、20000mg/L以上がより好ましい。また、MLVSSの平均値は10000mg/L以上が好ましく、20000mg/L以上がより好ましい。
【0066】
膜処理槽311での膜処理により分離された液体成分(膜処理液)は、例えば、一旦処理水槽313に貯蔵してもよい。膜処理液が、下水等への放流基準を満たすことを確認した後、膜処理液を下水C等へ放流することができる。あるいは、システムの装置の洗浄液や、水蒸気製造用の水として利用する水再生プロセスBに供給してもよい。
【0067】
本実施形態においては、(d)工程で得られた膜処理液を、逆浸透(RO)処理、ヒドロキシアパタイト(HAP)処理、凝集沈殿処理、及びオゾン処理からなる群より選択される一種以上の処理により、さらに処理してもよい。RO処理により、膜処理液中の不純物を高度に除去することができる。HAP処理を行うことにより、膜処理液に含まれるリンを回収することができる。さらに、例えばRO処理前の膜処理液中に次亜塩素酸を添加し、膜処理液中に残存する有機物を除去してもよい。
【0068】
HAP処理された液体成分は下水に放流するのに適した水質となっており、そのまま下水に放流することができる。RO処理により得られる非濃縮液の一部を、例えば、本方法を利用するシステムの装置の洗浄液として再利用した後、流量調整槽301に導入してもよい。非濃縮液の残部をボイラにより加熱して水蒸気を製造し、水熱処理に利用してもよい。また、水熱処理前、水熱処理中又は水熱処理後の水蒸気から例えば熱交換器を用いて熱を取り出して再利用してもよい。水熱処理後に排出される水蒸気を、例えば水道水と混合して冷却した後に脱気した後、流量調整槽301に導入してもよい。
【0069】
<本発明の被処理物の生物処理装置>
上記の本発明の水熱処理装置と、当該水熱処理装置の反応器から排出された水熱処理物を生物処理して生物処理液を得るための生物処理手段を備えてなる被処理物の生物処理装置も、本発明に包含される。生物処理手段としては、上記の(c)工程の実施のための手段が挙げられ、さらには上記の(d)工程の実施のための手段も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、被処理物を効率的に処理することができる水熱処理装置、生物処理装置、水熱処理方法及び生物処理方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 第一の耐圧容器反応器
1a 弁
2 小径配管
2a 弁
3 大径配管
3a 弁
11 反応器
11a 弁
12 小径配管
12a 弁
13 大径配管
13a 弁
21 第二の耐圧容器
21a 弁
22 配管
22a 弁
31 水熱処理物回収タンク
41 水蒸気回収タンク
42 配管
42a 弁
51a 被処理物
51b 次の被処理物
51c 次の被処理物
52 水熱処理物
61 水蒸気
62 廃蒸気
64 追加の水蒸気
100 水熱処理装置
113 攪拌羽根
301 流量調整槽
302 生物処理槽
303 散気管
304 pH計
305 DO計
306 ORP計
307 汚泥返送ライン
311 膜処理槽
312 中空糸膜ユニット
313 処理水槽
A 水熱処理工程
B 水再生プロセス
C 下水
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を水熱処理するための耐圧性の反応器、
前記反応器に連結され、該反応器に投入される被処理物を収容するための第一の耐圧容器、
前記反応器に連結され、該反応器から排出される水熱処理物を収容するための第二の耐圧容器、及び
前記反応器と第二の耐圧容器との間を連結し、前記反応器から第二の耐圧容器へ廃蒸気を導入するための単数又は複数の配管、
を備える、被処理物を水熱処理して水熱処理物を得るための水熱処理装置。
【請求項2】
第二の耐圧容器に連結された水熱処理物回収タンクをさらに備える、請求項1に記載の水熱処理装置。
【請求項3】
第一の耐圧容器と第二の耐圧容器とが水蒸気回収タンクを介して連結されてなる、請求項1に記載の水熱処理装置。
【請求項4】
前記反応器と第一の耐圧容器との間を連結し、前記反応器から第一の耐圧容器へ廃蒸気を導入するための単数又は複数の配管をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水熱処理装置。
【請求項5】
前記反応器内に回転自在の単数又は複数の攪拌羽根をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水熱処理装置。
【請求項6】
被処理物が有機性廃棄物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水熱処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水熱処理装置と、前記反応器から排出された水熱処理物を生物処理して生物処理物を得るための生物処理手段とをさらに備える、被処理物の生物処理装置。
【請求項8】
第一の耐圧容器に被処理物を供給する工程(工程1)、
反応器に被処理物を投入する工程(工程2)、
反応器に水蒸気を導入して被処理物の水熱処理を行う工程(工程3)、
第一の耐圧容器に、被処理物の水熱処理後に残存する廃蒸気を導入する工程(工程4)、
第二の耐圧容器に、被処理物の水熱処理後に残存する廃蒸気を導入する工程(工程5)、
反応器から水熱処理物を排出する工程(工程6)、
反応器に次の被処理物を投入する工程(工程7)、及び
反応器に水蒸気を導入して次の被処理物の水熱処理を行う工程(工程8)、
をこの順序で含む、被処理物の水熱処理方法。
【請求項9】
工程3における水熱処理時の反応器内の温度が100〜300℃であり、反応器内の圧力が0.1〜4.0MPaであり、水熱処理の時間が0.5〜60分間である、請求項8に記載の水熱処理方法。
【請求項10】
工程7において、第二の耐圧容器より廃蒸気及び水熱処理物を排出する操作をさらに実施する、請求項8又は9に記載の水熱処理方法。
【請求項11】
工程8において、第一の耐圧容器に次の被処理物を供給する操作をさらに実施する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の水熱処理方法。
【請求項12】
工程8の後に工程4に戻り、工程4〜工程8を繰り返し行う、請求項8〜11のいずれか1項に記載の水熱処理方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の被処理物の水熱処理方法によって得られた被処理物の水熱処理物を、さらに生物処理して生物処理物を得る工程を含む、被処理物の生物処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−206755(P2011−206755A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79987(P2010−79987)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】