説明

被印刷体に画像を印刷する方法、および印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置

【課題】出力の高いエネルギー源によって、印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置を提供する。
【解決手段】印刷インキ担体10にエネルギーを注入する装置80は、個別に制御可能な複数のレーザ光源82を備えており、このレーザ光源はサブアレイ86でモジュール形式に構成されるアレイ84として配置されており、さらに、回転軸88が付属し、表面にレーザ光源の複数の画点810を生成可能である印刷インキ担体10を備えている。レーザ光源のサブアレイ86はVCSELバー84であり、VCSELバーの画点12の並びは回転軸88に対して傾いて位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ担体へのエネルギー注入によって流動性の印刷インキからなる複数の部分が生成され、流動性の印刷インキが被印刷体に転移される、被印刷体に画像を印刷する方法に関する。さらに、本発明は、個別に制御可能な複数のレーザ光源を備え、このレーザ光源はサブアレイからモジュール形式に構成されるアレイとして配置されており、さらに、回転軸が付属し、表面にレーザ光源の複数の画点を生成可能である印刷インキ担体を備える、印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル式または可変式の印刷方法は、試し刷りのたびに、またはプリントアウトのたびに、異なる内容や絵柄を被印刷体に転移することを可能にする印刷方法である。一般に知られているデジタル式の印刷方法は、たとえば電子写真やインクジェットプリンタである。しかしそれ以外にも、流動性の印刷インキによって、あるいは着色された液体状の印刷インキによって、画像、テキスト、絵柄などを被印刷体へ可変に転移させる取組がなされている。このような取組のいくつかは、すでに文献のなかで詳細に紹介されている。
【0003】
たとえば特許文献1より、溶融可能な印刷インキがたとえば胴などの版支持体に塗布される、可変式の印刷をする方法および装置が公知であり、この場合、室温では固体であるが熱の供給によって溶融可能な印刷インキを、粘性のある閉じた薄膜として塗布し、引き続いて、その部位で冷却によって硬化させる。次いで、硬化した薄膜に、レーザまたはレーザの列の放射が点ごとまたはピクセルごとに当てられ、照射された領域にある印刷インキが液化され、液体の状態のままで被印刷体に転移されて、そこで再び硬化する。
【0004】
さらに、特許文献2より、熱転写記録方式と呼ばれる可変式の印刷方法が公知である。この場合、印刷インキ担体としての胴に、遅れて硬化する印刷インキを比較的厚い層として塗布して硬化させるか、または胴自体が硬化した印刷インキでできている。次いで、胴の上で硬化したインキを、たとえばレーザなどのエネルギー放射によって、局所的に軟化させる。そして軟化した部位を、被印刷体に転移させることができる。転移の後に残ったインキ層は、印刷担体に転移された層厚に相当する厚さまで削り取られる。
【0005】
吸込圧力方式と呼ばれるさらに別の可変式の印刷方法が、特許文献3に記載されている。印刷インキ担体は、印刷をする領域として凹部を有しているのに対して、印刷をしない領域は一定のレベルに位置している。印刷インキ担体の表面全体は、次のようなやり方で印刷前にインキ着けされ、すなわち印刷インキで満たされる。すなわち、凹部にある空気が印刷インキを受け取るまえに的確かつ選択的に加熱され、その結果、空気は体積が温度に強く依存しているので凹部から追い出される。そして、印刷インキによって凹部への入口を閉じてから、凹部にある空気の残りを冷却すると、空気が冷却につれて収縮し、それによって印刷インキが凹部の中へ吸引される。この現象は、凹部内の温度の変動が大きいほど強く生じる。原則として、凹部内の温度を制御することで、吸収される印刷インキの量を制御することができる。印刷インキ担体は、新たな印刷サイクルの前ごとに熱画像によって、すなわち凹部への選択的なエネルギーの照射によって、最初の画像または次の画像を書き込むことができる。印刷インキが被印刷体に転移される前に、ワイパー、ドクター等によって、印刷をしない領域から印刷インキが除去され、すなわち、印刷インキが凹部の中だけに残される。被印刷体とインキとの間の高い押圧力と付着力が、凹部から被印刷体へのインキ転移を引き起こす。
【0006】
特許文献4には、印刷をする方法と、これに付属する装置とが開示されている。ライトハイドロリック現象(lichthydraulischen Effekt)を利用しながら、レーザ光源によって、印刷インキの部分が剥がされて被印刷体に転移されるように、圧力パルスを印刷インキ担体の上のインキ層に注入する。
【0007】
別の可変式の印刷方法、およびこれを実施する装置が特許文献5に記載されている。版支持体には、印刷インキで充填することができる凹部が設けられている。印刷インキの複数の部分の選択または生成が、デジタル制御されるエネルギービームの作用によって行われる。インキの転移は、凹部から追い出された印刷インキが被印刷体と接触したときに、付着力によって行われる。
【0008】
これらの取組はすべて、画点を生成するために、ある程度のエネルギー量が、生成されるべき印刷点と相関関係にある印刷インキ担体の狭く局限された空間領域へ、場合により非接触に、方法に応じて注入されなければならないという必要性がある。エネルギーの形態としては、多くの場合、紫外スペクトル帯域、可視スペクトル帯域、または赤外スペクトル帯域のレーザ放射が、高いスペクトル出力密度、指向性、およびその他の特性を備えているという理由から用いられる。画像の個々の点がすべて、特にできるだけ短いプリントアウト時間の画像付けの間に生成されなくてはならないので、必要なエネルギー源の全出力が比較的高くなる。
【0009】
被印刷体の二次元の表面を可変式の印刷方法で画像付けするために、被印刷体は、画像を生成するときに、表面を通って広がる各方向のうちの少なくとも1つの方向へ、画像生成装置に対して相対的に移動するのが普通である。表面を通って広がる第2の方向への相対運動、いわゆるスキャニングも、原則として行うことができる。あるいは、横幅とも呼ばれる画像の幅全体にわたって、時間的および空間的に並行して画像を生成することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許明細書4205636C2
【特許文献2】ドイツ特許出願公開明細書3625592A1
【特許文献3】国際特許出願公開明細書WO00/40423
【特許文献4】欧州特許出願公開明細書0947324A1
【特許文献5】ドイツ特許明細書19746174C1
【特許文献6】国際特許出願公開明細書WO00/12317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
スキャニングをする場合の明らかな欠点は、限られた最大速度しか得られないということにある。偏向ミラーの運動と用紙の搬送を、極端に異なる速度で正確に同期化することは、高いコストをかけなければ実現不可能であり、たとえば圧電ミラーを用いなくてはならない。一般に、広い構造スペースが必要である。1回のエネルギー注入ごとに短い時間しか利用できないときは、レーザ光源の高い出力密度を必要とする、迅速なエネルギー注入が必要となる。光学部品の損傷する危険や、関与する材料、たとえば印刷インキ自体が、望ましくない変性をする可能性が増えてしまう。高い出力密度をきわめて迅速に変調しなければならない。横幅が34cm、600dpi、印刷速度が1m/sの場合、200MHz以上が必要である。複数の光源、たとえばレーザ光源のラインを用いることによって、出力、変調周波数、スキャニングの速度に関する要求レベルは低くなるとはいえ、ポリゴンスキャナーに2本の光線を注入するだけでも、技術的には具体化が非常に難しい。たとえば、それぞれ4MHzの変調がなされる50本の光線などは、きわめて難しいと考えられる。
【0012】
たとえば電子写真印刷機で広く普及している、発光ダイオード(LED)からなる横幅の広いアレイまたは機構は、放射特性が劣っているために、40マイクロメートル×40マイクロメートルの範囲で、すなわち600dpiの場合の印刷点の大きさの範囲で、わずか数ミリワットの光出力しか生成することができない。このような光学出力は、多くの可変式の印刷方法にとって不十分である。しかも、量子効果が原理的に小さいために、光学出力の何倍もの出力を、使われない熱出力として排出しなければならない。特殊な幾何学構成によって、あるいは空洞(cavity)LEDを用いることによって効率を高めることも、これまでのところ対処法となっていない。
【0013】
可変式の印刷方法との関連で、たとえば特許文献6より、ファイバーまたは光導波路からなる横幅の広いアレイまたは機構を利用し、このようなアレイまたは機構によって、通常はレーザ光源である1つまたは複数の離れた光源から印刷インキ担体へ、光を誘導することも公知である。このようなファイバーの機構に要する位置決めコストは、非常に高い長期安定性のある、高い空間的な精度が必要であるために、非常に大きくなる。組立のときの個々のチャンネルの割当は、高いコストを生じさせる。しかも、レーザをファイバー結合するためのコスト、ならびに、レーザと印刷機を接続するためにチャンネルごとに必要となる、数メートル程度の長さが必要な光導波路のコストが非常に高いので、デジタル式の印刷機で印刷インキ担体へエネルギーを注入する装置が不経済に高価になる。
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点に鑑みて、出力の高いエネルギー源によって被印刷体に画像を印刷する方法、および印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置を提供することである。特に、エネルギーを注入する装置は、画像付けされるべき各々の線について独自の光源を備えており、高い密度で線を書き込むことができるのが望ましい。さらに、この装置は高い出力パワーと、十分な分解能および焦点深度(Tiefenschaerfe)を有しているのが望ましい。さらに、この装置は比較的安価に製造、保守整備することができ、高い信頼度を備えているのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備える、被印刷体に画像を印刷する方法によって達成され、および、請求項6および7に記載の、印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置によって達成される。本発明の有利な発展例は、従属請求項に記載されている。
【0016】
本発明によれば、個別に制御可能なVCSEL光源のアレイの複数の画点を用いてエネルギーを注入することによって流動性印刷インキの複数の部分を印刷インキ担体上に生成するステップと、流動性の印刷インキを被印刷体に転写するステップと、を有し、前記エネルギーは、複数のVCSELバーの複数のサブアレイを含む前記アレイを有する装置によって生成され、印刷インキ担体は、回転軸と、VCSEL光源の複数の画点を受け取る表面を有し、複数の画点の列は、複数のVCSELバーが同時に起動されたとき、回転軸線に対して傾き、流動性の印刷インキからなる複数の部分が、印刷インキ担体の上にある固体の印刷インキが点ごとに溶融することによって生成される、請求項1に記載の特徴を備える、被印刷体に画像を印刷する流動性の印刷インキが被印刷体に転移される。流動性の印刷インキは、特に液体であってよい。
【0017】
流動性の印刷インキの1つの部分は、1つの画点を生成する量の印刷インキであり、被印刷体の表面および/または内部で受けいれられるのに適した粘性を有している。
【0018】
VCSEL光源のアレイは、特に、個別に制御可能な複数のVCSEL光源を備えるVCSELバー(Barren)であってよく、または、このような種類の複数のVCSELバーの機構であってよい。被印刷体に複数の画点を同時におよび/または場所的に並行して生成することができる。本発明の方法は、印刷をする可変式またはデジタル式の方法とも呼ぶことができる。特に、印刷インキ担体にエネルギー注入をすることによって、流動性の印刷インキからなる暫定的、一時的、または過渡的な中間画像を生成することができる。印刷インキ担体は、中間画像担体であってよい。このような状況で、一時的な中間画像の印刷インキを画像担体へ転移する作業が、刷りによって行われる。通常の被印刷体は紙、板紙、ボール紙、有機ポリマーフィルムなどである。被印刷体は、画像担体とも呼ぶことができる。
【0019】
換言すると、可変式またはデジタル式の印刷方法において、個別に制御可能なVCSEL光源のアレイ、特にVCSELバーを利用または適用することが本発明の思想と関連する。
【0020】
従来式の半導体レーザはエッジエミッタであり、すなわち、光の伝搬はpn接合の面に対して垂直に行われ、光はチップのスリット面から垂直に射出されるのに対して、面発光レーザダイオード(VCSEL光源、VCSELレーザダイオード、Vertical−Cavity−Surface−Emitting−Laser(垂直共振器型面発光レーザ))からは、ウェーハ表面に対して垂直方向に光が放射される。共振器の軸は、pn接合の面と平行である。本明細書の説明、本発明の方法、および本発明の装置の関連では、VCSEL光源という用語は、放射方向が活性領域に対して垂直である、あらゆるダイオードレーザを意味していると解することができる。これは特に、共振器の長さが活性領域の厚さに比べて短い面発光体、共振器がモノリシックに延長されている面発光体、あるいは、外部の共振器または結合された共振器を有する面発光体(NECSELとも呼ばれる)であってよい。さらに、VCSEL光源は、共振器が活性領域と実質的に平行であり、レーザ放射を活性領域に対して垂直に射出する回折構造部または反射構造部を有するダイオードレーザであってよい。
【0021】
VCSEL光源の機能性や一連の特性は、すでに製造時または製造の直後に、ウェーハ上で検査することができる。発光面が広くなるので、特にエッジ発光をする従来型の半導体レーザに比べて、小さい発散角で放射が放出される。一般にVCSEL光源について言えるのは、共振器の活性長さが非常に短くてよく、通常はわずか数マイクロメートルであり、少ない限界電流を得るために、高度に反射をする共振器ミラーが必要だということである。必要なミラーは、エピタキシャル成長させたものであってよい。しばしば長さが10マイクロメートル以下である極端に短い共振器によって、レーザ閾値よりも上側で単一モード発光を促進する、長手方向の大きなモード間隔が得られる。ただし、本発明の思想との関連では、多モードVCSEL光源も用いることができるので、単一モード発光が絶対に必要というわけではない。回転対称な共振器によって、円形の近視野と、(直径が比較的大きいことに起因する)少ないビーム発散とが得られる。ビーム品質や、放出される光線の形状は、主として射出ファセット(Auskoppelfacette)の広さによって規定される。正しい広さを選択することによって(直径の制限)、VCSELは、焦点深度が大きいので画像生成のための管理されたエネルギー注入にとって好都合な基本モード(ガウスビーム)を生成する。高い光出力パワーのためには、射出ファセットの比較的大きい直径が有利な場合がある。さらに、レーザの構造形態は、二次元のVCSELレーザダイオードアレイを、簡単にモノリシックに統合することを可能にする。最後に、製造後にウェーハ円板の上で直接、レーザを検査することが可能である。
【0022】
面発光レーザの通常の層構造は当業者に周知であり、関連する文献からも読み取ることができる。これに関しては、たとえばK.J.Ebeling著"Integrierte Optoelektronik"(集積オプトエレクトロニクス)、Springer−Verlag,ベルリン、1992年を参照されたい。この文献を掲げることにより、この文献を本明細書の開示に含める。VCSEL光源のアレイは、二次元の機構として製作することができる。たとえば、欧州特許出願公開明細書0905835A1には、個別にアドレス指定可能もしくは制御可能なVCSEL光源の二次元アレイが記載されている。実現可能な出力パワーを高めるために、および、基本モードでレーザ振動を強制するために、米国特許明細書5,838,715には、VCSEL層構造のための特殊な共振器形態が開示されている。
【0023】
可変式の印刷方法における通常の分解能である600dpiの分解能のためには、回折限界のあるビーム品質よりも低いビーム品質をもつレーザで十分である。出力パワーが90mWのVCSELは、40マイクロメートル×40マイクロメートル(600dpiに相当)に焦点合わせすることができる。VCSELの射出ファセットにおける光強度は、エッジ発光型半導体レーザの射出面で生じる光強度の何分の1かにすぎないので、ファセット破壊のおそれは小さい。エッジ発光型半導体レーザと比べてVCSEL光源の信頼度は、原則としてはるかに高い。このように高い信頼度は、多数の光源を用いた印刷方法で、印刷担体にエネルギーを注入する装置を採用しようとする場合に特に有利である。
【0024】
有利な実施態様では、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法において、流動性の印刷インキからなる複数の部分が、印刷インキ担体の上にある固体状の印刷インキの点ごとの溶融または軟化によって作成される。印刷インキは、特別な実施態様では、冷却時に凝結遅延(Estarrungsverzug)を有している。換言すれば、融点は、凝固点(Festpunkt)よりも高い温度のところにある。凝結遅延により印刷インキは、接触によって被印刷体に転写されるまで液体の状態にとどまる。
【0025】
本発明の印刷方法の上記に代わる実施態様では、複数の部分が、エネルギー注入によって加熱された凹部の容積部が冷却するときに流動性の印刷インキが点ごとに凹部に吸い込まれることによって生成される。次いで、流動性の印刷インキが被印刷体に転写される。換言すれば、この印刷方法は吸込圧力方式のステップを含んでいる。
【0026】
本発明による印刷方法のさらに別の実施態様では、流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷インキ層からの剥離によって生成される。流動性の印刷インキの部分は、エネルギー注入によって非接触で被印刷体に転移される。換言すると、本発明による方法のこの別の実施態様は、ライトハイドロリック現象を利用したものである。
【0027】
印刷方法の上記に代わる別の実施態様では、流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷インキ担体にある凹部からの追い出しによって生成される。流動性の印刷インキの部分は、接触時に(このほうが好ましい)、または非接触で被印刷体に転移される。
【0028】
複数のサブアレイからモジュール形式で構成されるアレイに配置され、個別に制御可能な複数のレーザ光源と、回転軸が付属し、表面にレーザ光源の複数の画点を生成可能である印刷インキ担体を備え、印刷インキ担体にエネルギーを注入する本発明の装置も、本発明の思想と関連している。レーザ光源のサブアレイはVCSELバーである。VCSELバーは、画像付けモジュールに装着されていてよい。VCSELバーの画点の配列、すなわち行および/または列は、同時に起動される場合(光源が同時にオンになる)、印刷インキ担体の上で回転軸に対して傾いて位置し、記光源がVCSELバーの上でデカルト座標の規則的な二次元格子の交点に配置されている。あるいは、VCSELバーの画点の配列、すなわち行および/または列は、同時に起動される場合(光源が同時にオンになる)、印刷インキ担体の上で回転軸に対して傾いて位置し、VCSELバーの画点の列のスパン方向と、回転軸との間の傾斜角が、回転軸と平行な線上における画点の投影された点が、隣接する点の規則的な間隔を有するように選択されている。
【0029】
ここで付言しておくと、光源のアレイをサブアレイの個々のモジュールで構成できることが、たとえば米国特許明細書5,477,259などの刊行物から公知となっている。これは、通常、光源の二次元のアレイが成立するように収納部材に相並んで固定された、1列すなわち一次元に配置されているレーザダイオードである。米国特許明細書5,477,259に示されている光源のアレイは、平行四辺形の格子の交点に位置している。
【0030】
特に、印刷インキ担体は中間画像担体であってよい。アレイは、規則的および/または一次元または二次元(このほうが好ましい)であり、特にデカルト座標であってよい。レーザ光源がVCSELバーの上で、規則的なデカルト座標(kartesisch)の二次元の格子の交点上に配置されており、それにより、回転軸に対する傾きがどの光源にも同じ作用を及ぼすようになっていると特に有利である。二次元の配置では、個々のVCSEL光源、チャンネル、および放出される光線の間に広い間隔をあけることができるので、視準(Kollimation)が簡単になるという点も言及しておく価値がある。
【0031】
VCSEL光源では、エッジ発光型半導体レーザとは異なり、ビーム直径と発散角が、発せられる光の伝搬方向に対して垂直な両方の横方向で等しいので、視準や焦点合わせを、後に配置された比較的単純な光学系によって、たとえばミクロレンズアレイによって、特に1つまたは複数の放出される光線用のミクロレンズによって、実現することができる。
【0032】
印刷インキ担体にエネルギーを注入する本発明の装置の有利な実施態様では、VCSELバーの画点の列のスパン方向(Aufspannungsrichtung)と、回転軸との間の傾斜角は、または傾斜角の余角は、画点の投影された点が、回転軸と平行な線上で、隣接する点の規則的な間隔を有するように選択される。
【0033】
n個の画点が位置している方向が、回転軸に対する垂線との間で傾斜角αを有している場合における、n×m個の画点の二次元の規則的なデカルト座標の配置については、tanα=1/nであるときに、投影される画点の1つの列が、隣接する点の間に規則的または均等な間隔を有していると言える。二次元の配置がデカルト座標にあるが、n個の画点の方向では隣接する画点の間隔aを有し、m個の画点の方向では隣接する画点の間隔bを有している場合には、tanα=b/naが成り立つ。
【0034】
本発明による装置の発展例では、印刷インキ担体が下面からレーザ光源によって照明される。換言すれば、印刷インキ担体は、レーザ光がこれを印刷インキまで通過できるように透明であってよく、または印刷インキ担体は、レーザ光のエネルギーを少なくとも部分的に吸収して印刷インキに放出できるようにつくられていてよい。
【0035】
エネルギーを注入する本発明の装置の有利な実施態様では、実質的に平行な少なくとも2つの列のVCSELバーが、互いにオフセットされた状態で配置される。
【0036】
これに代わる実施態様では、VCSELバーが、トップエミッタ(pサイドアップエミッタ、p型ドーピング層上面)またはボトムエミッタ(pサイドダウンエミッタ、p型ドーピング層下面)を有している。換言すると、エネルギーを注入する本発明の装置のpサイドアップの実施態様では、光の放出が装置の上面で行われるのに対して、pサイドダウンの実施態様では、エネルギー注入に利用されるレーザ放射を、複数のVCSELバーのうち少なくとも1つのVCSELバーの半導体基板によって、特にすべてのVCSELバーの半導体基板によって、行うことができる。これに加えて、またはこれに代えて、エネルギーを注入する本発明の装置の実施態様では、少なくとも1つのVCSELバーが少なくとも1つのドライバー電子装置を有しており、そのうち少なくとも一部は基板の上またはVCSELバーのウェーハに装着されている、そのうち少なくとも一部はVCSELバーとともに共通のヒートシンクに装着されている、そのうちの少なくとも一部は共通の冷却回路を有している、の少なくとも1つである。これに加えて、またはこれに代えて、本発明による装置の実施態様では、少なくとも1つのVCSELバー、特にすべてのVCSELバーと、そのドライバー電子装置の一部とが基板から、または基板上で、もしくはウェーハ上で、またはウェーハから製作されている。特に、1つの実施態様では、少なくとも1つのVCSELバー、特にすべてのVCSELバーが、ダイヤモンドおよび/または窒化アルミニウムを有する表面に装着されていてよい。これに加えて、またはこれに代えて、1つの実施態様では、少なくとも1つのVCSELバーに、条導体(Leiterbahnen)が2つの側から接触していてよい。これに加えて、またはこれに代えて、エネルギーを注入する本発明の装置の実施態様では、少なくとも1つのVCSELバー、特にすべてのVCSELバーが、個々の光源を制御する条導体が内部または表面に装着された表面の上に載っていてよい。上に述べた個々の方策は、単独で、または共働して、光源のアレイのコンパクトな構造を可能にするという利点がある。
【0037】
印刷インキ担体にエネルギーを注入する本発明の方法の特に有利な実施態様は、VCSELバーからなる、印刷されるページの横幅と同じ横幅のアレイを有している。この場合、回転軸と平行な線上における画点の投影された点は密に位置しており、すなわち、画点の間隔は最小の印刷点間隔または画像のスクリーン幅に相当しているので、面全体を生成することができる。換言すると、本発明による装置の特別な実施態様により、密に位置する画点の列を、印刷されるページの横幅と同じ横幅で版支持体に書き込み、画像付けし、もしくは付けることが可能であり、その結果、流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷されるページの横幅と同じ横幅で密接した状態に生成される。
【0038】
本発明による装置の実施態様および/またはその発展例は、この説明の中で前述した本発明の方法および/またはその発展例で、特にこの説明の中で言及した実施態様で、適用または利用するのが特に好ましい。換言すれば、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法は、本発明の装置によってエネルギー注入の生成を行うことを特徴としている。
【0039】
本発明の印刷方法によって作動する印刷機も、本発明の思想と関連している。特に、この印刷機は本発明の方法の実施態様に応じて、グラビア印刷機または平版印刷機と呼ぶことができる。印刷機はウェブ処理機械、または枚葉紙処理機械(このほうが好ましい)であり、特に両面印刷機であってよい。印刷機は1つまたは複数の印刷ユニットを有している。換言すると、本発明による印刷ユニットまたは本発明による印刷機は、印刷インキ担体にエネルギーを注入する本発明の装置を少なくとも1つ備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】印刷インキ担体にエネルギーを注入する本発明の装置において、印刷インキ担体の上の複数の画点の相対位置を説明するための図である。
【図2】印刷担体にエネルギーを注入する本発明の装置において、画像付けモジュールの配置の有利な実施形態を示す図である。
【図3】本発明の装置における画像付けモジュールの有利な実施形態を示す図である。
【図4】流動性の印刷インキからなる複数の部分が、凝結遅延を伴う、印刷インキ担体の上にある固体の印刷インキの点ごとの溶融によって作成される、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法を説明するための概略図である。
【図5】複数の部分が、エネルギー注入によって加熱された凹部の容積の冷却時に、流動性の印刷インキが凹部へ点ごとに吸い込まれることによって作成される、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法を説明するための概略図である。
【図6】流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷インキ層からの剥離によって作成される、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法を説明するための概略図である。
【図7】流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷インキ担体にある凹部からの追い出しによって作成される、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法を説明するための概略図である。
【図8】印刷機の印刷ユニットにおける本発明の装置の実施形態を示す概略図である。
【図9】印刷インキ担体の内部に配置され、印刷インキ担体をその下面から照明する本発明の装置の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0042】
図1Aと図1Bは、印刷インキ担体10にエネルギーを注入する本発明の装置において、印刷インキ担体10の上の複数の画点12の相対位置の説明のために示されている。図1Aには、印刷インキ担体10の有利な実施形態が示されている。この印刷インキ担体10は胴本体であり、部分的または全面的に胴の外套表面をなしており、もしくは胴の上に載っている。版支持体10は、回転軸16を中心として回転可能につくられている。版支持体10の表面の部分11は、VCSELバーの画点が同時に制御されながら位置することになる領域である。画点はデカルト座標の格子の交点に規則的に配置される。格子を通って延びる軸は、回転軸16に対して、および回転軸16に対する法線(垂線)18に対して、傾斜角αだけ回転している。すなわち、スパン方向17と法線18は傾斜角αをなしている。
【0043】
図1Bは図1Aの部分拡大図を示している。図1Bは、VCSEL光源が同時に起動または作動したときにデカルト座標に規則的に配置される画点12を備える、印刷インキ担体10の表面の部分11を示している。画点を生成する画像付けビーム、特に光源と、印刷インキ担体の表面とが互いに相対的に動くと、スパン方向17に沿って位置する画点12の列が、線14の上で、VCSEL光源を遅れてまたは早めに起動しまたは作動させることによって投影される。線14が回転軸16と平行であり、n×m個の画点12(スパン直線17に沿ったn個の画点)からなるデカルト座標の格子のスパン直線との間で傾斜角αをなしている場合、画点12の投影される点13は密に位置し、すなわち、条件tanα=1/nが満たされるときに最小の印刷点間隔を有する。
【0044】
図2は、印刷担体にエネルギーを注入する本発明の装置における、画像付けモジュール20の配置の有利な実施形態の図面である。VCSEL光源のアレイを、このような画像付けモジュール20から構成することができる。図2に示す実施形態では、画像付けモジュール20は、一例として256個のVCSEL光源またはエミッタを備えるVCSELバーを有している。VCSELバーにおけるエミッタの幾何学構成は、たとえば32×8個のエミッタがデカルト座標に規則的に配置されおり、すなわち、隣接する光源同士の中心にそれぞれ320マイクロメートルの間隔をおきながら、長方形のスクリーンまたは長方形の格子に配置されている。判型の幅が34センチ、画点サイズが40マイクロメートルの場合には、256個のエミッタを含む34個のVCSELバーが必要である。VCSELバー上の光源の個数は、2の累乗であるのが好ましい。画像付けモジュール、すなわちVCSELバーまたはサブアレイは、円筒状の印刷インキ担体の回転軸に対して、印刷インキ担体の外套面上の投影されたエミッタの画点の点が等しい間隔を有するように、傾いて配置されている(これに関しては図1も参照)。
【0045】
ボトムエミッタの実施形態については、たとえばダイヤモンド基板などの電気絶縁された基板に設けられた条導体を介して、エミッタの接触が行われる。ボトムエミッタの場合、複数のボンディングワイヤが光の射出側に配置されて、光の射出を妨げてしまうという可能性をなくすのが有利である。光源のn型ドーピング面が上にあり、光源のp型ドーピング面が下にある場合、p型ドーピング面に向かい合う基板の面は構造化されていなければならない。基板そのものは、ヒートシンク、特に構造化されたヒートシンク、たとえばマイクロチャネル冷却器に取り付けられ、それにより、基板とヒートシンクの間で十分に良好かつ効率的な熱伝達が行われる。VCSEL光源の電源は、本実施形態では光源のすぐ近辺で、VCSELと同じ基板に取付けまたは装着されていてよく、あるいは同一または別個のヒートシンクの上で独自の基板に取付けまたは装着されていてよい、1つまたは複数の半導体デバイス上にある。
【0046】
エミッタから出てくるレーザ光のビームフォーミングは、ミクロ光学部品(VCSELバーの1つまたは複数の光線にだけ作用する)および/またはマクロ光学部品(VCSELバーのすべての光線に作用する)によって行うことができる。特に、ビームフォーミングには、個々の部品の間の間隔が2つのレーザエミッタの間隔またはその倍数に相当する、ミクロ光学部品のアレイ、たとえばマイクロレンズアレイが適している。
【0047】
隣接する2つの画像付けモジュール、および隣接するVCSELバーは、隣接する線を密に書き込む(600dpiの場合には40マイクロメートル)のに十分な程度に互いに密接して配置することができないので、図2に示す2列の配置が特に好ましい。円筒状の印刷インキ担体の円周方向で、隣接する2つの画像付けモジュール20のVCSELバーの間隔ができるだけ短いような、2列の配置が有利である。第1のVCSELバー21と、第2のVCSELバー22と、第3のVCSELバー23と、第4のVCSELバー24とを備える図2に示す画像付けモジュール20は、互いに密接して印刷インキ担体10の上に位置する帯状部を画像付けする。すなわち、第1の帯状部25は第1のVCSELバー21によって画像付けされ、第2の帯状部26は第2のVCSELバー22によって、第3の帯状部27は第3のVCSELバー23によって、第4の帯状部28は第4のVCSELバー24によって、それぞれ画像付けされる。
【0048】
図3は、本発明の装置における画像付けモジュール20の有利な実施形態を模式的に表したものである。バーの上にあるVCSEL光源の二次元の配置に電流を供給するときの難しさは、縁部にある各列のエミッタの間に、条導体を十分に密接して挿通させることにある。この場合には、エミッタの一方の半分に対する供給が一方の方向から来るようにし、エミッタの他方の半分に対する供給は他方の方向から来るようにするのが有利である。図3は、このような有利な幾何学形態または配列を詳しく説明するためのものである。図3は、VCSELバー31を備える画像付けモジュール20の実施形態の構造を示している。VCSELバー31は、バーの上にある複数のVCSEL光源の第1の半分のための第1のドライバー電子装置32(ドライバーチップ)と接続されるとともに、バーの上にある複数のVCSEL光源の第2の半分のための第2のドライバー電子装置33(ドライバーチップ)と接続されている。第1のドライバー電子装置32は、第1のエレクトロニクス配線板36と相互作用をするように第1の接続線37によって接続されている。第2のドライバー電子装置33は、第2のエレクトロニクス配線板35と相互作用をするように第2の接続線34によって接続されている。第1および第2のエレクトロニクス配線板35,36は、必要な接続部、電流供給部、および光源を制御するためのクロック生成部を備えている。第1および第2のドライバー電子装置32,33は、並列の条導体38によって、VCSELバー31の上にあるVCSEL光源と接続されている。条導体38は、VCSELバーに2つの側から接触している。
【0049】
図4には、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法の実施形態を説明するための模式図が示されており、ここでは、流動性の印刷インキからなる複数の部分が、印刷インキ担体の上にある固体の印刷インキが点ごとにまたはピクセルごとに、凝結遅延を伴いながら溶融することによって作成される。図示されているのは、印刷インキ担体の回転方向に対して垂直な断面図である。印刷インキ担体10は、固体の印刷インキ40の層を、特に均一かつ平滑な状態で有している。印刷インキは溶融可能、軟化可能、または液化可能であり、遅延して硬化し、もしくは遅れて硬化する(相移行の温度ヒステリシス、もしくは粘性の温度ヒステリシス)。印刷インキ担体10の回転軸と実質的に平行な、本図には見ることができないVCSELバーの列にある光源42が、選択的かつ制御可能なレーザ光44を発して、このレーザ光が固体の印刷インキ40に当る。光源は印刷インキ担体10の外部に配置されている。レーザ光44の熱作用によって、選択的かつ制御によって、流動性の印刷インキの溶融した部分46が生成される。構造化が行われる。相移行の温度ヒステリシスにより、溶融した部分46は液体状のままに保たれるのに対して、流動性の印刷インキは、印刷ニップ414に至る道程ですでに冷える。印刷ニップ414では、印刷インキ担体10が圧胴412とが協働して、被印刷体410が印刷インキに押し付けられる。流動性の印刷インキの部分46は、印刷ニップ414で被印刷体410へ部分的または全面的に転移することができる。固体の印刷インキ40の均一な層を回復させることができる再生装置416が設けられている。溶融した部位で転移されたインキ量の損失分が補われて、表面が平滑にされる。このようにして、固体の印刷インキ40をあらためて画像付けすることができるので、画像付けと再生の循環プロセスが成立する。上に説明した印刷方法は可変式であり、デジタル式である。
【0050】
図4に示す状況に代えて、光源が印刷インキ担体10の内部に配置されていてもよい。選択的かつ制御される溶融が、印刷ニップ414のすぐ近くで、被印刷体410に接触する前に行われれば、凝結遅延しない印刷インキを使って上述の方法を実施することもできる。
【0051】
図5は、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法の実施形態を、説明のために模式的に示しており、ここでは複数の部分が、エネルギー注入によって加熱された凹部の容積部が冷却するときに流動性の印刷インキが点ごとに、またはピクセルごとに凹部に吸い込まれることによって生成される(吸込圧力方式)。図示しているのは、印刷インキ担体の回転方向に対して垂直な断面図である。印刷インキ担体10は、凹部52のある表面50を有している。凹部52は、容積の規則的かつ微細なスクリーンを表面に形成している。印刷インキ担体の回転軸と実質的に平行な、本図には見ることができないVCSELバーの列にあるレーザ光源54が、選択的かつ制御可能にレーザ光56を発し、このレーザ光が凹部52の容積部に当る。凹部52を備える表面50は、印刷インキ担体10が回転する間に、流動性の印刷インキ510が入った備蓄容器58を通過する。図5に示す状況に代えて、レーザ光源54が、厳密に言えばVCSELバーが、印刷インキ担体10の内部に配置されていてもよい。レーザ光56は、備蓄容器58に入る直前に凹部52の容積部に照射されるのが好ましい。レーザ光56の選択的かつ制御された作用によって、さまざまな凹部52で異なる空気加熱が行われ、それに伴って、さまざまな空気の追い出しが行われる。凹部52の容積部の空気が冷却されると、流動性の印刷インキが凹部52の中へ選択的に、かつ量に関して制御されながら吸い込まれる。余った印刷インキを表面50の隆起部分から除去するスクレーパ手段(ドクター、ワイパーなど)が設けられている。印刷インキで充填された凹部512は、印刷インキ担体10の回転によって印刷ニップ518に到達する。印刷インキ担体10と圧胴520が協働しながら、被印刷体516が凹部52のある表面50に押し付けられ、特に、印刷インキが充填された凹部512のある表面50に押し付けられ、それによって、印刷インキを被印刷体516に転移させることができる。転移された印刷インキ514は、被印刷体516の上で硬化する。印刷インキで充填された凹部512は、印刷インキが転移されるときに部分的または全面的に空になる。最後に、この印刷方法の各ステップをあらためて進行させるために、表面50の前処理をする役目を果たす洗浄装置522が設けられている。表面50の凹部52からインキの残りが除去され、それにより、表面50が本方法の初期状態に戻される。したがって、上述した印刷方法は可変式またはデジタル式の方法である。
【0052】
図6には、被印刷体に画像を印刷する本発明の方法の実施形態を説明するための模式図を見ることができ、ここでは、流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷インキ層60からの剥離によって作成される。図示されているのは、印刷インキ担体の回転方向に対して垂直な断面図である。印刷インキ担体10は、表面に印刷インキ層60を有している。印刷インキ層60は、固体または液体(このほうが好ましい)であってよい。軸を中心として回転する印刷インキ担体10の内部には、印刷インキ担体の回転軸と実質的に平行に配置された、本図には見ることができないVCSELバーの列のレーザ光源62がある。光源62は、レーザ光64を選択的に、かつ制御のもとで発する。レーザ光64は、印刷インキ層60が均一で、構造化されていない領域で、印刷インキ層60に当る。レーザ光のエネルギーは、ライトハイドロリック現象によって、直接的に(印刷インキ層60で)または間接的に(音響エネルギーへの変換により、印刷インキ担体10で熱エネルギーの生成およびこれに伴って生じる容積変化を通じて)、流動性の印刷インキ66の部分の剥離を可能にする。流動性の印刷インキ66の部分はインパルスも有しているので、部分は被印刷体68の表面に向かって投げ出される。再生装置610により、均一で構造化されていない表面を回復させることによって、印刷インキ層60の表面を次の使用のために準備することができる。剥離したインキ量は、新たな印刷インキの塗布によって補うことができ、表面を同時に平滑化することができる。このように、上述した印刷方法は、再び得られる初期状態が印刷プロセスをあらためて実行することを可能にするので、可変式またはデジタル式の方法である。
【0053】
図7は、被印刷体712に画像を印刷する本発明の方法の実施形態を説明するための模式図であり、ここでは、流動性の印刷インキの複数の部分が、印刷インキ担体10の表面70にある凹部72からの追い出しによって生成される。図示しているのは、印刷インキ担体10の回転方向に対して垂直な断面図である。印刷インキ担体10は、凹部72を備える、特に印刷インキで充填された凹部74を備える表面70を有しており、軸を中心として回転可能である。印刷インキ担体10の内部には、印刷インキ担体の回転軸と実質的に平行に配置された、本図には見ることができないVCSELバーの列のレーザ光源76が図示されている。レーザ光源76はレーザ光78を選択的に、かつ制御のもとで発する。レーザ光76は、凹部が印刷インキで均一に充填されている領域で、凹部をもつ表面70に当る。印刷インキで充填された凹部74には、印刷インキが凹部74から押し出され、追い出され、もしくは投げ出されるようにエネルギー注入が行われるのに対して、被印刷体712は印刷インキ担体10の表面70に触れ、接触し、もしくは表面に押し当てられる。印刷インキが被印刷体712に転移されることによって、印刷インキで充填された凹部74は選択的に、かつ制御のもとで、部分的または全体的に空になる。凹部72は、回転が進むうちに再生装置714を通過する。凹部72は再び印刷インキで均一に充填され、それにより、上述した印刷方法を繰返し実施することが可能である。この印刷方法は可変式またはデジタル式である。
【0054】
図8は、印刷機818の印刷ユニット816における本発明の装置80の実施形態を示しており、ここでは、印刷インキ担体10は胴または胴の表面であり、もしくは胴の上に載っている。本実施形態では、VCSELバー86からなるVCSEL光源の横幅の広いアレイ84が、チャンネルまたは画像付けビームの二次元の配置で、図4、図5、図6、および図7を参照して説明した可変式の印刷方法のために用いられる。可変式の印刷方法は、印刷インキ担体の上にある溶融可能な印刷インキがレーザ放射によって液状化または軟化し、それによって流動性の印刷インキを液体の状態で被印刷体に転移することができる、デジタル式の印刷プロセスであるのが好ましい(これに関しては図4も参照)。各々のVCSEL光源、または各々のエミッタは、十分な光学的品質をもつビームで、通常は200mWである十分に高い出力パワーを生成する。VCSEL光源は個別に制御可能である。アレイは、小型のモジュールまたはサブアレイから組み立てられる。それぞれのチャンネルは密接して位置しており、すなわち、胴の回転中にモジュールによって書き込むことができる線は面全体を形成する。
【0055】
図8は、個別に制御可能な複数のレーザ光源82を、サブアレイからなるアレイ84の形態で備える、エネルギーを注入する本発明の装置80の実施形態を示しており、サブアレイはVCSELバー86であり、もしくはVCSELバー86を含んでいる。個別に制御可能な複数のレーザ光源82に対向するように、回転軸88を中心として回転可能な円筒状の印刷インキ担体10が配置されている。VCSELバーは、印刷インキ担体10の回転軸88に対して傾斜角の分だけ傾いて配置されている。レーザ光源82は、特に光出力パワー、時間的な作動状態(オンとオフ)、光放出の時間などに関して選択的に、かつ互いに独立して制御することができる。レーザ光源82は制御ユニット814と接続されている。レーザ光源82が遅延制御または先行制御されるとき、すなわち時間的に可変に作動するとき、射出されるレーザ光は、すでに図1を参照して詳しく説明した手順に従って、付けられた画点の線810を表面に生成する。アレイ84の横幅は、印刷されるページの横幅と同じである。換言すると、印刷インキ担体10の、印刷されるページの横幅と同じ横幅の表面領域812は、レーザ光源82の画点によって密接に照明されるので、印刷点を生成するためのエネルギー注入が横幅全体にわたって可能である。印刷機818の印刷ユニット816の内部には、エネルギー注入によって生成された印刷インキ担体の構造、もしくは流動性の印刷インキの部分を、被印刷体に転写または転移する、ここには詳しくは図示しない手段が設けられている。レーザ光源82の作動は、印刷インキ担体10の回転に合わせて調節される。そのために、機械制御部と、印刷インキ担体10の回転のための駆動部と、制御ユニット814とが、データおよび/または制御信号を交換するために接続されている。
【0056】
この関連でさらに付け加えておくと、たとえば老化などの原因で、バーまたはアレイのVCSEL光源の出力特性曲線に生じる可能性のある誤差を補償するために、制御ユニット814による自動的な較正を定期的に実施することができる。バーのVCSEL光源では、アレイの個々のエミッタの出力特性曲線の誤差が生じることが稀であり、もしくは非常にわずかなので、このような較正をそのつどサブアレイのただ1つのエミッタに限定し、もしくはわずかな個数のエミッタに限定することさえ可能である。その結果として生じる電流値は、どの光源についても十分な精度で利用することができる。
【0057】
図9には、印刷インキ担体10の内部に配置され、印刷インキ担体10をその下面90から照明する、本発明の装置の実施形態が示されている。本実施形態では、VCSELバー86からなるVCSEL光源の横幅の広いアレイ84が、チャンネルまたは画像付けビームの二次元の配置で、図4、図5、図6、および図7を参照して説明した可変式の印刷方法のために用いられる。印刷機818の印刷ユニット816の内部には、エネルギー注入によって生成された印刷インキ担体の構造、もしくは生成された流動性の印刷インキの部分を、被印刷体に転写または転移する、ここには詳しくは図示しない手段が設けられている。円筒状の印刷インキ担体10は、回転軸88を中心として回転可能である。光源82のVCSELバーは、印刷インキ担体10の回転軸88に対して傾斜角の分だけ傾いて配置されている(これに関しては図1と図8も参照)。レーザ光源82は、特に光出力パワー、時間的な作動(オンとオフ)、光放出の時間などに関して選択的に、かつ互いに独立して制御することができる。レーザ光源は、ここには詳しくは図示しない制御ユニットと接続されている。レーザ光源82が遅延制御または先行制御されるとき、すなわち時間的に可変に作動するとき、射出されるレーザ光は、すでに図1を参照して詳しく説明した手順に従って、付けられた画点の線810を表面に生成する。印刷インキ担体10は、VCSELバーのレーザ光の適用される波長に対して透過性であるように製作されており、それにより、印刷インキ担体10の表面にある印刷インキ、もしくは印刷インキ担体10の表面の凹部に、レーザ光が達する。アレイ84は横幅が広くなっている。換言すると、印刷インキ担体10の横幅の広い表面領域812は、レーザ光源82の画点によって密接に照明されるので、印刷点を生成するためのエネルギー注入が横幅全体にわたって可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 印刷インキ担体
11 部分
12 画点
13 投影された点
16 回転軸
17 スパン方向
18 法線
20 画像付けモジュール
21 第1のVCSELバー
22 第2のVCSELバー
23 第3のVCSELバー
24 第4のVCSELバー
25 第1の帯状部
26 第2の帯状部
27 第3の帯状部
28 第4の帯状部
31 VCSELバー
32 第1のドライバー電子装置
33 第2のドライバー電子装置
34 第2の接続回線
35 エレクトロニクス配線板
36 エレクトロニクス配線板
37 第1の接続回線
38 条導体
40 印刷インキ
44 レーザ光
46 部分
50 表面
52 凹部
54 レーザ光源
56 レーザ光
58 備蓄容器
60 印刷インキ層
62 レーザ光源
64 レーザ光
66 流動性の印刷インキ
68 被印刷体
70 表面
72 凹部
74 充填された凹部
76 レーザ光源
80 本発明の装置
82 レーザ光源
84 アレイ
86 VCSELバー
88 回転軸
90 下面
410 被印刷体
412 圧胴
414 印刷ニップ
416 再生装置
510 流動性の印刷インキ
512 充填された凹部
514 印刷インキ
516 被印刷体
518 印刷ニップ
520 圧胴
522 再生装置
610 再生装置
712 被印刷体
714 再生装置
810 線
812 表面領域
814 制御ユニット
816 印刷ユニット
818 印刷機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体に画像を印刷する方法であって、
個別に制御可能なVCSEL光源のアレイ(84)の複数の画点(810)を用いてエネルギーを注入することによって流動性印刷インキの複数の部分を印刷インキ担体(10)上に生成するステップと、
前記の流動性の印刷インキを前記被印刷体(410)に転写するステップと、
を有し、
前記エネルギーは、複数のVCSELバーの複数のサブアレイを含む前記アレイを有する装置によって生成され、前記印刷インキ担体(10)は、回転軸と、前記VCSEL光源の前記複数の画点を受け取る表面を有し、前記の複数の画点の列は、前記の複数のVCSELバーが同時に起動されたとき、前記回転軸線に対して傾
流動性の印刷インキ(46)からなる前記の複数の部分が、前記印刷インキ担体(10)の上にある固体の印刷インキ(40)が点ごとに溶融することによって生成される、
被印刷体に画像を印刷する方法。
【請求項2】
前記印刷インキが凝結遅延性を有している、請求項1に記載の被印刷体に画像を印刷する方法。
【請求項3】
前記の複数の部分が、エネルギー注入によって加熱された凹部(52)の容積部が冷却するときに流動体の印刷インキ(510)が前記凹部(52)に点ごとに吸い込まれることによって生成され、前記の流動性の印刷インキ(510)が前記被印刷体(516)に転写される、請求項1に記載の被印刷体に画像を印刷する方法。
【請求項4】
流動性の印刷インキ(66)の前記複数の部分が、印刷インキ層(60)からの剥離によって生成され、流動性の印刷インキ(66)の前記部分はエネルギー注入によって被印刷体(68)へ非接触に転移される、請求項1に記載の被印刷体に画像を印刷する方法。
【請求項5】
流動性の印刷インキの前記複数の部分が、前記印刷インキ担体(10)にある凹部(72)からの追い出しによって生成される、請求項1に記載の被印刷体に画像を印刷する方法。
【請求項6】
複数のサブアレイ(86)からモジュール形式で構成されるアレイ(84)に配置された、個別に制御可能な複数のレーザ光源(82)と、回転軸(88)が付属し、表面に前記レーザ光源の複数の画点(810)を生成可能である印刷インキ担体(10)を備え、前記印刷インキ担体(10)にエネルギーを注入する装置(80)において、
前記レーザ光源のサブアレイがVCSELバー(84)であり、画点(12)の列は、前記複数のVCSELバーが同時に起動されるときは前記回転軸(88)に対して傾いて位置し、前記光源が前記VCSELバー(84)の上でデカルト座標の規則的な二次元格子の交点に配置されていることを特徴とする、印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項7】
複数のサブアレイ(86)からモジュール形式で構成されるアレイ(84)に配置された、個別に制御可能な複数のレーザ光源(82)と、回転軸(88)が付属し、表面に前記レーザ光源の複数の画点(810)を生成可能である印刷インキ担体(10)を備え、前記印刷インキ担体(10)にエネルギーを注入する装置(80)において、
前記レーザ光源のサブアレイがVCSELバー(84)であり、画点(12)の列は、前記複数のVCSELバーが同時に起動されるときは前記回転軸(88)に対して傾いて位置し、前記VCSELバーの画点の列のスパン方向(17)と、前記回転軸(16)との間の傾斜角(α)が、前記回転軸(16)と平行な線(14)上における画点(12)の投影された点(13)が、隣接する点の規則的な間隔を有するように選択されていることを特徴とする、印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項8】
前記印刷インキ担体(10)がその下面(90)から前記レーザ光源によって照明される、請求項6または7に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項9】
前記VCSELバー(84)が、実質的に平行な少なくとも2つの列に互いにオフセットされて配置されている、請求項6から8までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項10】
エネルギー注入に用いられるレーザ放射が、複数の前記VCSELバー(84)の少なくとも1つのVCSELバー(84)の半導体基板によって放出される、請求項6から9までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項11】
少なくとも1つのVCSELバー(84)が少なくとも1つのドライバー電子装置(32,33)を有しており、そのうち少なくとも一部は、前記VCSELバーの基板の上に載っている、前記VCSELバーとともに共通のヒートシンクの上に載っている、共通の冷却回路を有している、のうちの少なくとも1つである、請求項6から9までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項12】
少なくとも1つのVCSELバー(84)と、そのドライバー電子装置(32,33)の一部とが1つの基板から製作されている、請求項6から11までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項13】
少なくとも1つのVCSELバー(84)が、ダイヤモンドおよび/または窒化アルミニウムを有する表面の上に載っている、請求項6から12までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項14】
少なくとも1つのVCSELバー(84)に2つの側から条導体(38)が接触している、請求項6から13までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項15】
少なくとも1つのVCSELバー(84)が、個々の光源を制御するための条導体(38)が内部または表面に装着された表面に取り付けられている、請求項6から14までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項16】
VCSELバー(84)からなる前記アレイの横幅が、印刷されるページの幅と同じであり、画点の投影された前記点は、前記回転軸(88)と平行な線(810)の上に密に位置している、請求項6から15までのいずれか1項に記載の印刷インキ担体にエネルギーを注入する装置。
【請求項17】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の被印刷体に画像を印刷する方法において、
請求項6から16までのいずれか1項に記載の装置(80)によってエネルギー注入を生成することを特徴とする、被印刷体に画像を印刷する方法。
【請求項18】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の印刷方法で作動する印刷機(818)において、
請求項6から16までのいずれか1項に記載の装置(80)を少なくとも1つ備えることを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−292159(P2009−292159A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219230(P2009−219230)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2003−314129(P2003−314129)の分割
【原出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】