説明

被検体の複数の断層画像から被検体内の線状部の3次元座標を抽出する方法

【課題】被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する。
【解決手段】被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得るステップと、複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、第1の構成点の3次元座標を得るステップと、第1の断層画像に対して所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、被検体内の線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、第2の構成点の3次元座標を得るステップと、第1の断層画像内で特定した第1の構成点から、第2の断層画像内で特定した第2の構成点を結ぶベクトルを、線状部のベクトルとして特定するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の複数の断層画像から、被検体内の物体、特に、ワイヤ等の線状部の3次元座標を抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、半導体チップの周囲から多くのワイヤが伸びており、半導体チップ及びワイヤの部分がモールド樹脂等で封止されている。樹脂封止後には半導体パッケージ内のワイヤの状態を確認することができない。このため、外観検査工程や電気的特性の検査工程等を行って、半導体パッケージの良否が判断されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO2008/059982パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】東京電機大学出版局、村上伸一著「3次元画像処理入門」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、半導体パッケージの良否判断において、電気的特性に問題があった場合、その原因が、チップ回路に原因があるのか、それともワイヤ部分に原因があるのかを知ることができなかった。原因を特定するため、半導体パッケージ内のワイヤの状態を知ろうとすれば、半導体パッケージ自体を切断するか、パッケージングを剥ぎ取る等の破壊的検査が必要であり、これまで、半導体パッケージ内のワイヤの状態を非破壊的に直接的に把握することができなかった。
【0006】
また、半導体パッケージとは異なる分野であるが、上記と同様に、生物の血管や神経系の三次元座標を非破壊的に直接的に抽出するなども求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、被検体内部の線状部の3次元座標を非破壊的に直接的に抽出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する装置は、
被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得る断層画像取得部と、
前記複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、前記被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、前記第1の構成点の3次元座標を得る第1構成点座標抽出部と、
前記第1の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得る第2構成点座標抽出部と、
前記第1の断層画像内で特定した前記第1の構成点から、前記第2の断層画像内で特定した前記第2の構成点を結ぶベクトルを、前記線状部のベクトルとして特定する線状部ベクトル抽出部と、
を含む。
【0009】
本発明に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法は、
被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得るステップと、
前記複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、前記被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、前記第1の構成点の3次元座標を得るステップと、
前記第1の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得るステップと、
前記第1の断層画像内で特定した前記第1の構成点から、前記第2の断層画像内で特定した前記第2の構成点を結ぶベクトルを、前記線状部のベクトルとして特定するステップと、
を含む。
【0010】
また、前記第1の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得るステップと、
前記第1の断層画像内で特定した前記第1の構成点から、前記第2の断層画像内で特定した前記第2の構成点を結ぶベクトルを、前記線状部のベクトルとして特定するステップと、
を順次繰り返して、前記線状部の前記各構成点の3次元座標を抽出してもよい。
【0011】
さらに、前記第1の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する前記第1の構成点を特定して、前記第1の構成点の3次元座標を得るステップは、前記第1の断層画像から検出した円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第1の断層画像から検出した多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を求め、前記点を、前記線状部の断面に対応する前記第1の構成点として特定して、前記点の座標を前記第1の構成点の3次元座標としてもよい。
【0012】
またさらに、前記第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する前記第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得るステップは、前記第2の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第2の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、前記第1の構成点の座標からの距離が最も短い点を、前記線状部の断面に対応する前記第2の構成点として特定して、前記点の座標を前記第2の構成点の3次元座標としてもよい。
【0013】
さらに、前記第2の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第3の断層画像上において、前記第3の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第3の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、前記第1の構成点から前記第2の構成点へのベクトルを延長した前記第3の断層画像上の投影点からの距離が最も短い点を、前記線状部の断面に対応する前記第3の構成点として特定して、前記点の座標を前記第3の構成点の3次元座標とするステップをさらに含んでもよい。
【0014】
またさらに、前記断層画像を得るステップは、X線CTによって断層画像を得てもよい。あるいは、前記断層画像を得るステップは、MRIによって断層画像を得てもよい。
【0015】
また、被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得るステップは、
(1)前記被検体内部の3次元画像を取得するステップと、
(2)前記被検体内部の前記3次元画像から3次元化する線状部の画像を特定し、前記線状部に対して任意の位置で前記線状部の延在する方向と交差する複数の断層画像を取得するステップと、
を含んでもよい。
【0016】
本発明に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法は、
(1)前記被検体内部の3次元画像を取得するステップと、
(2)前記被検体内部の前記3次元画像から3次元化する線状部の画像を特定し、前記線状部に対して任意の位置で前記線状部の延在する方向と交差する断層画像を前記3次元画像から取得するステップと、
(3)得られた前記断層画像から検出した円形形状又は楕円形状から得られた重心、あるいは前記断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、前記線状部の断面に対応する構成点として特定し、前記点の座標を前記線状部の構成点の3次元座標として取得するステップと、
(4)前記線状部が延在する一方向に対して、前記断層画像から所定間隔だけ離間させて、前記3次元画像から前記断層画像に隣接する断層画像を取得するステップと、
(5)前記線状部の前記一方向の端部に達したか否か判断するステップであって、前記線状部の前記一方向の端部に達したと判断されるまで、前記(3)及び(4)の各ステップを順に繰り返す、ステップと、
(6)前記線状部が延在する前記一方向と逆方向に対して、前記(2)のステップで得られた前記最初の断層画像から所定間隔だけ離間させて、前記最初の断層画像に隣接する断層画像を前記3次元画像から取得するステップと、
(7)得られた前記断層画像から検出した円形形状又は楕円形状から得られた重心、あるいは前記断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、前記線状部の断面に対応する構成点として特定し、前記点の座標を前記線状部の構成点の3次元座標として取得するステップと、
(8)前記線状部が延在する前記一方向と逆方向に対して、前記断層画像から所定間隔だけ離間させて、前記断層画像に隣接する断層画像を前記3次元画像から取得するステップと、
(9)前記線状部の前記一方向と逆方向の端部に達したか否か判断するステップであって、前記線状部の前記一方向と逆方向の端部に達したと判断されるまで、前記(7)及び(8)の各ステップを順に繰り返す、ステップと、
を含む。
【0017】
また、前記被検体内部の線状部の3次元座標を抽出するためのコンピュータプログラムは、前記被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法の前記各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
さらに、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法によれば、複数の断層画像に基づいて、被検体内の線状部の各構成点の3次元座標を非破壊的に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体パッケージのX線CTによる3次元画像の概略図である。
【図2】図1の3次元画像で一つのワイヤの延在方向と交差する切断面を示す概略図である。
【図3】図2の切断面から得られた断層画像の概略図である。
【図4】図1の3次元画像で一つのワイヤの延在方向について、図2の切断面と所定間隔だけ離間した切断面を示す概略図である。
【図5】図4の切断面から得られた断層画像の概略図である。
【図6】各ワイヤの両端までの3次元座標によって得られたベクトルデータである。
【図7】(a)は、実施の形態1に係る被検体の複数の断層画像を用いて被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する装置の機能的構成を示すブロック図であり、(b)は、(a)の装置の物理的な構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2に係る被検体の複数の断層画像を用いて被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法のフローチャートである。
【図9】実施の形態3に係る被検体の複数の断層画像を用いて被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法のフローチャートである。
【図10】実施の形態4に係る被検体の複数の断層画像を用いて被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る被検体の複数の断層画像を用いて被検体内部の線状部の3次元座標を非破壊的に直接的に抽出する方法について添付図面を用いて説明する。
【0022】
実施の形態1
図7(a)は、本発明の実施の形態1に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する装置10の機能的構成を示すブロック図である。図7(b)は、図7(a)の物理的構成を示すブロック図である。この被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する装置は、図7(a)に示すように、断層画像取得部12と、第1構成点座標抽出部14と、第2構成点座標抽出部16と、線状部ベクトル抽出部18と、を備える。なお、この装置10の物理的構成としては、通常のコンピュータの構成と同様のものであって、例えば、CPU21、メモリ22、記憶部23、表示部24、インタフェース25、入力部26を含んでいればよい。この装置によって、被検体内部の線状部の3次元座標を非破壊的に直接的に抽出することができる。
【0023】
以下に、各構成部材について説明する。
断層画像取得部12によって、被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得る。具体的には、X線CTから断層画像を得てもよい。あるいは、MRIから断層画像を得てもよい。
第1構成点座標抽出部14によって、複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、第1の構成点の3次元座標を得る。具体的には、第1の断層画像から検出した円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第1の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、線状部の断面に対応する第1の構成点として特定して、前記点の座標を第1の構成点の3次元座標とすることができる。
なお、線状部とは、例えば、半導体パッケージではワイヤであってもよく、生体では、血管や神経等であってもよい。
【0024】
第2構成点座標抽出部16は、第1の断層画像に対して所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、被検体内の線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、第2の構成点の3次元座標を得る。具体的には、第2の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第3の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、第1の構成点からの距離が最も短い点を、線状部の断面に対応する第2の構成点として特定して、前記点の座標を第2の構成点の3次元座標とすることができる。
線状部ベクトル抽出部18によって、第1の断層画像内で特定した第1の構成点から、第2の断層画像内で特定した第2の構成点を結ぶベクトルを、線状部のベクトルとして特定する。
以上によって、被検体内部の線状部の3次元座標を非破壊的に、且つ、直接的に抽出することができる。
【0025】
なお、医療用途などでX線CT等の断層画像を得る方法が知られている(国際公開第WO2008/0599882)。半導体チップ自体はX線CTによる断層画像を得るには適していない。しかし、半導体パッケージ内の樹脂封止された部分はX線が透過するので、ワイヤの状態を把握することができる。
この場合、半導体パッケージ内のワイヤの座標を抽出する場合、例えば、CTスキャナの走査で得られた断層画像群の中から、ファーストボンディングあるいはセカンドボンディングの3次元座標を目視で見つけ、そこを起点に他方のボンディング位置に向かって、座標を1点ずつ指定し、手作業で座標情報を積み上げる方法がある。
【0026】
しかし、上記方法では1本のワイヤの3次元座標情報を得るのにも多大な時間を要し、さらには、半導体パッケージに含まれるワイヤ全体の3次元座標を得るには、ワイヤの本数分だけ、上記操作を実施しなければならないという課題がある。
【0027】
そこで、本発明では、各断層画像から目視ではなく、コンピュータ上で、例えばパターンマッチングによって円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を検出して、線状部の断面に対応する構成点として特定することを特徴とする。これによって、線状部の断面に対応する構成点の座標を非破壊的に、且つ、直接的に抽出できることに加えて、迅速、且つ、正確に線状部の構成点を特定し、その3次元座標を得ることができる。
【0028】
実施の形態2
図8は、本発明の実施の形態2に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法のフローチャートである。この方法によって、被検体内部の線状部の3次元座標を非破壊的に直接的に抽出することができる。この方法について、以下に説明する。
(a)被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得る(S01)。具体的には、X線CTによって断層画像を得てもよい。あるいは、MRIによって断層画像を得てもよい。
(b)複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、第1の構成点の3次元座標を得る(S02)。具体的には、第1の断層画像から検出した円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは第1の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、線状部の断面に対応する第1の構成点として特定して、上記点の座標を第1の構成点の3次元座標とすることができる。
なお、線状部とは、例えば、半導体パッケージではワイヤであってもよく、生体では、血管や神経等であってもよい。
(c)第1の断層画像に対して所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、被検体内の線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、第2の構成点の3次元座標を得る(S03)。具体的には、第2の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは第2の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、第1の構成点からの距離が最も短い点を第2の構成点として特定して、上記点の座標を第2の構成点の3次元座標とすることができる。
(d)第1の断層画像内で特定した第1の構成点から、第2の断層画像内で特定した第2の構成点を結ぶベクトルを、線状部のベクトルとして特定する(S04)。
以上によって、被検体内部の線状部の3次元座標を抽出することができる。
【0029】
なお、上記ステップS03及びステップS04を順次繰り返して、線状部の延在する方向に沿った各構成点の3次元座標を抽出することができる。
【0030】
さらに、第2の断層画像に対して所定の方向について隣接する第3の断層画像上において、第3の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは第3の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、第1の構成点から前記第2の構成点へのベクトルを延長した第3の断層画像上の投影点からの距離が最も短い点を、線状部の断面に対応する前記第3の構成点として特定して、上記点の座標を第3の構成点の3次元座標とするステップをさらに含むことを特徴とする。この場合、一つの構成点の断面の楕円形状で線状部の延在方向を特定するのではなく、少なくとも2つの構成点を結ぶベクトルを延長した方向を線状部の延在方向として用いている。これによって、複数の線状部をより正確に識別できる。
【0031】
実施の形態2に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法によれば、複数の断層画像に基づいて、被検体内の線状部の各構成点の3次元座標を非破壊的に抽出することができる。
なお、上記被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法をコンピュータプログラムとして実現してもよい。この場合、上記各ステップをコンピュータに実行させて、被検体内部の線状部の3次元座標を抽出することができる。また、このコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。
【0032】
実施の形態3
図9は、実施の形態3に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法の被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得るステップを構成する2つのサブステップのフローチャートである。実施の形態3に係る方法は、実施の形態2に係る方法と比較すると、複数の断層画像をそれぞれ個々に得るのではなく、まず3次元画像を得た後、逆に、個々の断層画像を得ることを特徴とする。各サブステップについて以下に説明する。
(1)被検体内部の3次元画像を取得する(S11)。例えば、X線CTによって3次元画像を得ることができる。
(2)被検体内部の3次元画像から3次元化する線状部の画像を特定し、線状部に対して任意の位置で線状部の延在する方向と交差する複数の断層画像を取得する(S12)。
以上によって、まず3次元画像を得た後、複数の断層画像を得ることができる。
【0033】
実施の形態4
図10は、実施の形態4に係る被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法のフローチャートである。実施の形態4に係る方法は、実施の形態3に係る方法と同様に、まず3次元画像を得た後、断層画像を得ている。しかし、実施の形態3では、3次元画像から一度に複数の断層画像を得た後、線状部の構成点の3次元座標を抽出していくのに対して、この実施の形態4に係る方法では、線状部の構成点の座標を抽出するステップと並行して断層画像を得ている点で相違する。以下にこの方法を説明する。
(1)被検体内部の3次元画像を取得する(S21)。例えば、図1は半導体パッケージの樹脂封止された端部の複数のワイヤを含む部分のX線CTによる3次元画像の概略図である。なお、図1の概略図では、ワイヤ以外の部分を省略して示している。
(2)被検体内部の3次元画像から3次元化する線状部の画像を特定し、線状部に対して任意の位置で線状部の延在する方向と交差する断層画像を3次元画像から取得する(S22)。図2は、図1の3次元画像に対して、線状部としての一つのワイヤを特定し、矢印で示されたワイヤの延在方向と交差する切断面から最初の断層画像を得る概略図である。図3は、図2の3次元画像から得られた断層画像の概略図である。
(3)得られた断層画像から検出した円形形状又は楕円形状から得られた重心、あるいは得られた断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、線状部の断面に対応する構成点として特定し、その点の座標を線状部の構成点の3次元座標として取得する(S23)。図3の断層画像中で、ほぼ円形形状の複数の光点がワイヤの断面に対応する構成点である。
(4)線状部が延在する一方向に対して、断層画像から所定間隔だけ離間させて、3次元画像から断層画像に隣接する断層画像を取得する(S24)。図4は、図2で最初の断層画像を得るための切断面に対して、矢印で示すワイヤの延在方向に所定間隔だけ離間した切断面から隣接する断層画像を得るための概略図である。図5は、図4の切断面から得られた図3の断層画像と隣接する断層画像の概略図である。
(5)線状部の一方向の端部に達したか否か判断する(S25)。この場合、線状部の一方向の端部に達したと判断されるまで、(3)及び(4)の各ステップを順に繰り返す。
(6)線状部が延在する一方向と逆方向に対して、(2)のステップで得られた最初の断層画像から所定間隔だけ離間させて、最初の断層画像に隣接する断層画像を3次元画像から取得する(S26)。
(7)得られた断層画像から検出した円形形状又は楕円形状から得られた重心、あるいは得られた断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を線状部の断面に対応する構成点として特定し、その点の座標を線状部の構成点の3次元座標として取得する(S27)。
(8)線状部が延在する一方向と逆方向に対して、断層画像から所定間隔だけ離間させて、断層画像に隣接する断層画像を3次元画像から取得する(S28)。
(9)線状部の一方向と逆方向の端部に達したか否か判断する(S29)この場合、線状部の一方向と逆方向の端部に達したと判断されるまで、(7)及び(8)の各ステップを順に繰り返す。
以上によって、被検体内部の線状部の延在する一方向および逆方向の両端までの各構成点の3次元座標を抽出することができる。例えば、図6は、各ワイヤの両端までの3次元座標によって得られたベクトルデータである。
【0034】
なお、上記被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法をコンピュータプログラムとして実現してもよい。この場合、上記各ステップをコンピュータに実行させて、被検体内部の線状部の3次元座標を抽出することができる。また、このコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る方法は、樹脂封止後の半導体パッケージのワイヤの3次元座標を抽出する方法に関する技術として利用できる。また、本発明に係る方法は、繊維物質のベクトル化にも利用可能である。さらに、本発明に係る方法は、生物の血管や神経系の三次元座標を抽出する方法にも利用できる。その他、断層画像が得られる被検体内部の線状部の三次元座標を得るために利用できる。
【符号の説明】
【0036】
10 線状部座標抽出装置
12 断層画像取得部
14 第1構成点座標抽出部
16 第2構成点座標抽出部
18 線状部ベクトル抽出部
21 CPU
22 メモリ
23 記憶部
24 表示部
25 インタフェース
26 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得る断層画像取得部と、
前記複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、前記被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、前記第1の構成点の3次元座標を得る第1構成点座標抽出部と、
前記第1の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得る第2構成点座標抽出部と、
前記第1の断層画像内で特定した前記第1の構成点から、前記第2の断層画像内で特定した前記第2の構成点を結ぶベクトルを、前記線状部のベクトルとして特定する線状部ベクトル抽出部と、
を含む、被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する装置。
【請求項2】
被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得るステップと、
前記複数の断層画像のうちの第1の断層画像上において、前記被検体内の線状部の断面に対応する第1の構成点を特定して、前記第1の構成点の3次元座標を得るステップと、
前記第1の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得るステップと、
前記第1の断層画像内で特定した前記第1の構成点から、前記第2の断層画像内で特定した前記第2の構成点を結ぶベクトルを、前記線状部のベクトルとして特定するステップと、
を含む、被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法。
【請求項3】
前記第1の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得るステップと、
前記第1の断層画像内で特定した前記第1の構成点から、前記第2の断層画像内で特定した前記第2の構成点を結ぶベクトルを、前記線状部のベクトルとして特定するステップと、
を順次繰り返して、前記線状部の前記各構成点の3次元座標を抽出することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する前記第1の構成点を特定して、前記第1の構成点の3次元座標を得るステップは、前記第1の断層画像から検出した円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第1の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、前記線状部の断面に対応する前記第1の構成点として特定して、前記点の座標を前記第1の構成点の3次元座標とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の断層画像上において、前記被検体内の前記線状部の断面に対応する前記第2の構成点を特定して、前記第2の構成点の3次元座標を得るステップは、前記第2の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第2の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、前記第1の構成点の座標からの距離が最も短い点を、前記線状部の断面に対応する前記第2の構成点として特定して、前記点の座標を前記第2の構成点の3次元座標とすることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の断層画像に対して前記所定の方向について隣接する第3の断層画像上において、前記第3の断層画像から検出された円形形状又は楕円形状の画像から得られた重心、あるいは前記第3の断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうち、前記第1の構成点から前記第2の構成点へのベクトルを延長した前記第3の断層画像上の投影点からの距離が最も短い点を、前記線状部の断面に対応する前記第3の構成点として特定して、前記点の座標を前記第3の構成点の3次元座標とするステップをさらに含むことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記断層画像を得るステップは、X線CTによって断層画像を得る、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記断層画像を得るステップは、MRIによって断層画像を得る、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
被検体の所定の方向と交差する複数の断層画像を得るステップは、
(1)前記被検体内部の3次元画像を取得するステップと、
(2)前記被検体内部の前記3次元画像から3次元化する線状部の画像を特定し、前記線状部に対して任意の位置で前記線状部の延在する方向と交差する複数の断層画像を取得するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(1)前記被検体内部の3次元画像を取得するステップと、
(2)前記被検体内部の前記3次元画像から3次元化する線状部の画像を特定し、前記線状部に対して任意の位置で前記線状部の延在する方向と交差する断層画像を前記3次元画像から取得するステップと、
(3)得られた前記断層画像から検出した円形形状又は楕円形状から得られた重心、あるいは前記断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、前記線状部の断面に対応する構成点として特定し、前記点の座標を前記線状部の構成点の3次元座標として取得するステップと、
(4)前記線状部が延在する一方向に対して、前記断層画像から所定間隔だけ離間させて、前記3次元画像から前記断層画像に隣接する断層画像を取得するステップと、
(5)前記線状部の前記一方向の端部に達したか否か判断するステップであって、前記線状部の前記一方向の端部に達したと判断されるまで、前記(3)及び(4)の各ステップを順に繰り返す、ステップと、
(6)前記線状部が延在する前記一方向と逆方向に対して、前記(2)のステップで得られた前記最初の断層画像から所定間隔だけ離間させて、前記最初の断層画像に隣接する断層画像を前記3次元画像から取得するステップと、
(7)得られた前記断層画像から検出した円形形状又は楕円形状から得られた重心、あるいは前記断層画像から検出された多角形形状の中点又は頂点、のうちの1点を、前記線状部の断面に対応する構成点として特定し、前記点の座標を前記線状部の構成点の3次元座標として取得するステップと、
(8)前記線状部が延在する前記一方向と逆方向に対して、前記断層画像から所定間隔だけ離間させて、前記断層画像に隣接する断層画像を前記3次元画像から取得するステップと、
(9)前記線状部の前記一方向と逆方向の端部に達したか否か判断するステップであって、前記線状部の前記一方向と逆方向の端部に達したと判断されるまで、前記(7)及び(8)の各ステップを順に繰り返す、ステップと、
を含む、被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法。
【請求項11】
請求項2から10のいずれか一項に記載の前記被検体内部の線状部の3次元座標を抽出する方法の前記各ステップをコンピュータに実行させて、前記被検体内部の線状部の3次元座標を抽出するためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の前記コンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32293(P2012−32293A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172603(P2010−172603)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(505018740)株式会社ビームセンス (5)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】