説明

被膜付き樹脂基板

【課題】優れた耐候性を有することで、長期間にわたってその樹脂が有する透明性、耐破壊性等の特性を維持することができる被膜付き樹脂基板を提供することを目的とする。
【解決手段】芳香環を含む樹脂からなる基板の少なくとも一方の面上に、酸価が1mgKOH/g以下、ガラス転移点が60〜150℃、質量平均分子量が9万〜100万であるアクリル系ポリマーと、波長領域350〜380nmの吸光係数が、平均値で、3.5〜100g/(mg・cm)である、紫外線吸収性基を有するポリマーおよび紫外線吸収剤から選ばれる紫外線吸収成分とを含む被膜が形成された被膜付き樹脂基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性を有する被膜付き樹脂基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車輌用の窓ガラスや家屋、ビル等の建物に取り付けられる建材用の窓ガラスとして、これまでの無機ガラス板に代わって透明樹脂板の需要が高まっている。特に、自動車等の車両では軽量化のために、窓材に透明樹脂板を用いることが提案されており、とりわけ芳香族ポリカーボネート系の透明樹脂板は、耐破壊性、透明性、軽量性、易加工性などに優れるため、有望な車両用窓材としてその使用が検討されている。しかしながら、このような透明樹脂板は、ガラス板の代わりに使用すると紫外線により劣化し変色してしまい耐候性の点で問題があった。そこで、透明樹脂板の耐候性を向上させる目的で、種々のコート剤を用いて透明樹脂板の表面に被膜を形成することが以前から提案されている。
【0003】
このような提案の例として、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂基材上に紫外線吸収剤を含有する透明熱可塑性プラスチック被膜を形成させることでポリカーボネート樹脂基材の紫外線による変色を防止する技術が記載されている。また、特許文献2には、所定の割合で紫外線吸収剤を含有するポリカーボネートシート上にそれぞれの割合で紫外線吸収剤を含有するポリカーボネート系組成物層とアクリレート系組成物層を積層した3層積層プラスチックシートの技術が提案されている。ところが、上記特許文献1および特許文献2に示される被膜付き基材や積層体に用いられる紫外線吸収剤では、十分な紫外線吸収能を得るためには多量に添加する必要があり、このため、コストが高くなったり、成形性が低下したりする。また、紫外線吸収剤と被膜を形成する樹脂との相溶性が十分でないため、成形体表面から紫外線吸収剤が経時的にブリードアウトするという問題もあった。
【0004】
そこで、特許文献3には、紫外線吸収剤として特殊なベンゾトリアゾール系化合物を含有する被膜層を設けた耐候性樹脂積層体が提案されているが、このような紫外線吸収剤を使用してもポリカーボネート等からなる樹脂基材に十分な耐候性が付与されているとは言い難かった。
【0005】
このため、各種窓材、特に車両用窓材として有望なポリカーボネート系樹脂等からなる透明樹脂基材に十分な耐候性を付与し、透明性や耐破壊性といったその優れた特性を長期にわたって維持できる被膜の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭44−29756号公報
【特許文献2】特開平8−72208号公報
【特許文献3】特開平11−320768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、優れた耐候性を有することで、長期間にわたってその樹脂が有する透明性、耐破壊性等の特性を維持することができる被膜付き樹脂基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の被膜付き樹脂基板は、芳香環を含む樹脂からなる基板の少なくとも一方の面上に、(1)アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を主なモノマー単位とするアクリル系ポリマーと(2)紫外線吸収性基を有するポリマーおよび紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種からなる紫外線吸収成分とを含む被膜が形成された被膜付き樹脂基板であって、
前記(1)(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が1mgKOH/g以下、ガラス転移点が60℃〜150℃、かつ質量平均分子量が9万〜100万であり、
前記(2)紫外線吸収成分の波長領域350nm〜380nmの光に対する吸光係数が、平均値で、3.5g/(mg・cm)〜100g/(mg・cm)であることを特徴とする。
【0009】
ここで、本明細書においては、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから選ばれるモノマーを「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と総称する。また同様に、「(メタ)アクリロイルオキシ基」等の「(メタ)アクリル……」なる表記は、「アクリル……」と「メタクリル……」の両方を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被膜付き樹脂基板によれば、被膜が優れた耐候性を有することで、樹脂基板はそれ自体が有する透明性、耐破壊性等の特性を長期間にわたって維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の被膜付き樹脂基板に適用可能な紫外線吸収剤の3例と不適な紫外線吸収剤の1例の各波長における吸光係数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の被膜付き樹脂基板の実施の形態について、以下に説明する。
<樹脂基板>
本発明の被膜付き樹脂基板において、少なくともその一方の面に本発明の特徴を有する被膜が形成される樹脂基板は、芳香環を含む樹脂からなる基板である。このような芳香環を含む樹脂として、具体的には、芳香環を有するポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香環を有するポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等の従来公知の種々な芳香環を含む樹脂が挙げられる。これらの中でも、本発明においては、特に紫外線による劣化が顕著であるポリカーボネート系樹脂が好適に用いられる。
【0013】
なお、樹脂基板は、これらの樹脂を含むブレンド樹脂でもよいし、これらの樹脂を用いて、2層以上積層された積層基板であってもよい。また、樹脂基板の形状は、特に限定されず、平板であってもよいし、湾曲していてもよい。また、樹脂基板の厚みも特に限定されるものではなく、樹脂の種類、機械的強度、被膜付き樹脂基板の用途等の観点から適宜設定することができる。さらに、樹脂基板の色調は無色透明または着色透明であることが好ましい。
【0014】
<被膜>
本発明の被膜付き樹脂基板の被膜は、以下の(1)アクリル系ポリマーと、(2)紫外線吸収性基を有するポリマーおよび紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種からなる紫外線吸収成分を含む。
【0015】
(1)アクリル系ポリマー
本発明の被膜付き樹脂基板において被膜が含む(1)アクリル系ポリマーは、酸価が1mgKOH/g以下であり、ガラス転移点が60℃〜150℃であり、かつ質量平均分子量が9万〜100万のアクリル系ポリマーである。なお、後述の紫外線吸収性基を有するポリマーが(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を含むポリマーであっても、紫外線吸収性基を有するポリマーは本発明におけるアクリル系ポリマー以外のポリマーとみなす。
【0016】
上記本発明に用いるアクリル系ポリマーの酸価は、1mgKOH/g以下であり、この酸価が、1mgKOH/gを越えると得られる被膜にクラック等が発生して外観上問題である。なお、アクリル系ポリマーの酸価は好ましくは、0.8mgKOH/g以下であり、0mgKOH/gであることがより好ましい。ここで、酸価とは、試料1g中の樹脂酸などを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいい、JIS K 0070の測定方法に準じて測定することができる値である。
【0017】
上記本発明に用いるアクリル系ポリマーのガラス転移点(以下、必要に応じて「Tg」と表すこともある)は、60℃〜150℃である。ガラス転移点が、60℃未満であると、得られる被膜に肌荒れ等が起こり、また、150℃を越えると得られる被膜の平滑性が十分でなく、いずれも外観上問題である。なお、アクリル系ポリマーのガラス転移点(Tg)は、好ましくは70℃〜120℃、より好ましくは90℃〜110℃である。
【0018】
本発明に用いるアクリル系ポリマーは、酸価、ガラス転移点が上記範囲であり、かつ、質量平均分子量が9万〜100万のアクリル系ポリマーである。質量平均分子量が9万より小さいと得られる被膜に白濁等が生じ外観上問題である。また、質量平均分子量が100万より大きいと被膜形成時に用いる被膜組成物(溶液)の粘度が高くなり樹脂基板上への被膜組成物の塗工が困難となる。なお、アクリル系ポリマーの質量平均分子量は、好ましくは9万〜80万である。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値をいう。以下、本明細書中に記載の質量平均分子量は、前記同様の測定方法により測定した値である。
【0019】
本発明において用いるアクリル系ポリマーとしては、各種(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を主なモノマー単位として重合して得られるホモポリマーまたはコポリマーのうち上記特性を有するものが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上をアクリル系ポリマーの「主なモノマー単位とする」とは、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー単位に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上の合計モノマー単位が、90〜100モル%であることをいうが、前記割合は好ましくは、95〜100モル%である。以下、本明細書において「主なモノマー単位とする」とは、前記同様の意味で用いられる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシルが挙げられる。アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリルが挙げられる。
【0021】
本発明に用いるアクリル系ポリマーとしては、アルキル基の炭素数が6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を主なモノマー単位とするホモポリマーやそれらモノマー同士のコポリマーが好ましい。また、炭素数が6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの少なくとも1種とそれ以外の(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種とのコポリマーも好ましい。前記それ以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、少量の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなど)を共重合して得られるコポリマーも使用できる。(メタ)アクリル酸などの酸基を有するモノマーを共重合させると酸価の高いアクリル系ポリマーとなるおそれがあるが、前記酸価の範囲となる限り酸基を有するモノマーを少量共重合させたコポリマーを使用することもできる。
上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルが挙げられる。
【0022】
これらのなかでも、本発明に用いるアクリル系ポリマーとしては、メタクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種または2種以上を主なモノマー単位として重合して得られるポリマーが好ましい。さらに、メタクリル酸メチル(以下、必要に応じて「MMA」と表すこともある)、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル等から選ばれるアルキル基の炭素数が6以下のメタクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を主なモノマー単位として重合して得られるホモポリマーまたはコポリマーが好ましく、MMA、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチル等のホモポリマー、MMAと、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチルから選ばれる1種または2種以上とのコポリマーがより好ましい。
【0023】
本発明においては、酸価、ガラス転移点および質量平均分子量がともに上記範囲にあるアクリル系ポリマーを、単独で、または2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0024】
このような本発明に用いる酸価が1mgKOH/g以下、ガラス転移点が60℃〜150℃、かつ質量平均分子量が9万〜100万のアクリル系ポリマーは、上記各種(メタ)アクリル酸アルキルエステルを原料モノマーとして、必要に応じて、全原料モノマー量に対して10モル%未満の上に例示したような(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマー、分子量調節剤、重合開始剤、懸濁安定剤、乳化剤等とともに、通常(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合する方法、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法によって製造することができる。
【0025】
なお、酸価、ガラス転移点および質量平均分子量がともに上記範囲にあるアクリル系ポリマーは、市販もされているので、このような市販品を用いることも可能である。市販品としては、例えば、下記表1に示されるアクリル系ポリマーを挙げることができる。なお、表中のアクリル系ポリマーの欄には原料モノマー名と原料組成におけるそのモノマーの占める割合をモル%で示した。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明の被膜付き樹脂基板の被膜は、酸価、ガラス転移点および質量平均分子量がともに上記範囲にあるアクリル系ポリマーを主成分として含有し、さらに、後述の(2)紫外線吸収成分やその他任意成分を含有するものである。このような被膜における酸価、ガラス転移点および質量平均分子量がともに上記範囲にあるアクリル系ポリマーの含有量(ただし、被膜が紫外線吸収成分として紫外線吸収性基を有するポリマーを含有する場合には、アクリル系ポリマーと前記紫外線吸収性基含有ポリマーの紫外線吸収性基を除くポリマー鎖部分(詳細は、後述する)との合計の含有量)は、被膜の構成成分全量に対して、50〜97質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
【0028】
上記アクリル系ポリマーの含有量(ただし、被膜が紫外線吸収成分として紫外線吸収性基を有するポリマーを含有する場合には、アクリル系ポリマーと前記紫外線吸収性基含有ポリマーの紫外線吸収性基を除くポリマー鎖部分との合計の含有量)が、被膜の構成成分全量に対して、50質量%未満ではポリマー成分が少なすぎ被膜物性が低下することがあり、また、97質量%を越えると被膜の紫外線カット能が不足することがある。
なお、被膜が紫外線吸収成分として紫外線吸収性基含有ポリマーを含有する場合、被膜構成成分中のアクリル系ポリマーに対する前記紫外線吸収性基含有ポリマーの紫外線吸収性基を除くポリマー鎖部分の割合が50質量%以下であることが、製膜性の観点から好ましい。
【0029】
(2)紫外線吸収成分
本発明の被膜付き樹脂基板において被膜が含む(2)紫外線吸収性基を有するポリマーおよび紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種からなる紫外線吸収成分は、波長領域350nm〜380nmの光に対する吸光係数が、平均値で、3.5g/(mg・cm)〜100g/(mg・cm)である。
【0030】
ここで、本発明において、波長領域350〜380nmにおける吸光係数の平均値とは、前記波長領域において、1nm毎に求めた吸光係数の平均値をいう。なお、吸光係数εは、以下の関係式、数1から求められる値である。
【0031】
(数1)
E=ε・c・d=log(Io/I)
(E:吸光度、ε:吸光係数(g/(mg・cm))、c:吸光成分濃度(mg/g)、d:セルの厚さ(cm)、Io:入射光強度、I:透過後の光強度)
【0032】
本発明の被膜付き樹脂基板において被膜が含有する紫外線吸収成分は、紫外線のうちでも350〜380nmという比較的長波長の領域において、吸光係数が、平均値で、3.5g/(mg・cm)〜100g/(mg・cm)の範囲で、紫外線を吸収することが可能な化合物である。この350〜380nmにおける吸光係数の平均値が、3.5g/(mg・cm)より小さいと、得られる被膜が樹脂基板に十分な耐候性を付与することができなくなる。また、100g/(mg・cm)を越えると可視光領域にも吸収があるため、着色してしまう。
【0033】
本発明に用いる紫外線吸収成分としては、上記吸光特性を有していれば、特に制限なく用いることが可能であるが、具体的には、上記吸光特性を有する、ベンゾフェノン類、トリアジン類、およびベンゾトリアゾール類から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤や、紫外線吸収性基として、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、またはベンゾトリアゾール骨格を有する基から選ばれる少なくとも1種を有するポリマーが挙げられる。
【0034】
上記本発明の被膜付き樹脂基板の被膜が含有する紫外線吸収剤としては、例えば、基本構造(骨格)として、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、またはベンゾトリアゾール骨格を有する化合物に、その骨格に結合する有機基の種類や数、位置等を、得られる化合物における吸光特性が本発明に適用可能な範囲となるように適宜調整して導入した紫外線吸収剤を、特に制限なく用いることが可能である。
このような本発明に用いる紫外線吸収剤の具体例を、構造式、吸光特性、市販品の例とともに以下に示す。なお、吸光特性は、吸光係数ε(350−380)aveとして、波長領域350〜380nmにおける1nm毎に求めた吸光係数の平均値(単位:g/(mg・cm))を示すものである。以下、本明細書において、「吸光係数ε(350−380)ave」の用語は、全て前記同様の意味で用いられる。
【0035】
上記トリアジン類に分類される紫外線吸収剤として、具体的には、構造式が下記化1に示される、2−[4−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシ−フェノキシ]−プロピオン酸 6−メチル−ヘプチル エステル(2-[4-(4,6-Bis-biphenyl-4-yl-[1,3,5]triazin-2-yl)-3-hydroxy-phenoxy]-propionic acid 6-methyl-heptyl ester、吸光係数ε(350−380)ave:12.4、市販品としては、TINUVIN 479(商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)、
【0036】
【化1】

【0037】
構造式が下記化2に示される、2−[4−(4,6−ビス−{2−ヒドロキシ−4−[1−(6−メチル−ヘプチルオキシカルボニル)−エトキシ]−フェニル}−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシ−フェノキシ]−プロピオン酸 6−メチル−ヘプチル エステル((2-[4-(4,6-Bis-{2-hydroxy-4-[1-(6-methyl-heptyloxycarbonyl)-ethoxy]-phenyl}-[1,3,5]triazin-2-yl)-3-hydroxy-phenoxy]-propionic acid 6-methyl-heptyl ester、吸光係数ε(350−380)ave:31.0、市販品としては、CGL777(商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)、
【0038】
【化2】

【0039】
構造式が下記化3に示される、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物(吸光係数ε(350−380)ave:4.5、市販品としては、TINUVIN 400((商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)、
【0040】
【化3】

【0041】
構造式が下記化4に示される、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(吸光係数ε(350−380)ave:37.0、市販品として、TINUVIN 460(商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)、
【0042】
【化4】

【0043】
構造式が下記化5に示される、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルへキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物(吸光係数ε(350−380)ave:6.3、市販品としては、TINUVIN 405(商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)等が挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
上記ベンゾフェノン類に分類される紫外線吸収剤として、具体的には、構造式が下記化6で示される、4,6−ジベンゾイルレゾルシノール(4,6-Dibenzoylresorcinol、以下、DBRということもある、吸光係数ε(350−380)ave:4.1)、
【0046】
【化6】

【0047】
構造式が下記化7で示される2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(2,4-dihydroxybenzophenone、以下、DHBPということもある、吸光係数ε(350−380)ave:5.5)等が挙げられる。
【0048】
【化7】

【0049】
また上記ベンゾトリアゾール類に分類される紫外線吸収剤として、具体的には、構造式が下記化8で示される、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)プロピル]プロピオネート(Octyl-3-[3-t-butyl-4-hydroxy-5-(5-chloro-2H-benzotriazol-2-yl)phenyl]propionate、吸光係数ε(350−380)ave:17.2、市販品としては、TINUVIN 109(商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)、
【0050】
【化8】

【0051】
構造式が下記化9で示される、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(2-(2H-benzotriazol-2-yl)-6-(1-methyl-1-phenylethyl)-4-(1,1,3,3,tetramethylbutyl)phenol、吸光係数ε(350−380)ave:16.3、市販品としては、TINUVIN 928(商品名、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる)等が挙げられる。
【0052】
【化9】

【0053】
なお、本発明の被膜付き樹脂基板においては、これらの紫外線吸収剤のうちでも、2−[4−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシ−フェノキシ]−プロピオン酸 6−メチル−ヘプチル エステル(市販品としては、TINUVIN 479等)、2−[4−(4,6−ビス−{2−ヒドロキシ−4−[1−(6−メチル−ヘプチルオキシカルボニル)−エトキシ]−フェニル}−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシ−フェノキシ]−プロピオン酸 6−メチル−ヘプチル エステル(市販品としては、CGL777等)、4,6−ジベンゾイルレゾルシノール、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)プロピル]プロピオネート(市販品としては、TINUVIN 109等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(市販品としては、TINUVIN 928等)が好ましく用いられる。
【0054】
本発明の被膜付き樹脂基板に適用可能な紫外線吸収剤の紫外線吸光特性を具体的に示す例として、次の3種類の紫外線吸収剤の各波長における吸光係数のグラフを図1に示す。図1には、本発明に適用可能な紫外線吸収剤として、トリアジン類については、TINUVIN 479(TN479)の、ベンゾフェノン類については、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)の、およびベンゾトリアゾール類については、TINUVIN 109(TN109)の、それぞれ吸光係数を測定した結果が示されている。さらに、本発明の被膜付き樹脂基板に不適な紫外線吸収剤の例として、後述の比較例で用いた紫外線吸収剤、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(4−イソデシルフェニル)−(シュウ酸アニリド)(商品名:Sanduvor3206(S3206)、クラリアント社製、吸光係数ε(350−380)ave:0.4)の吸光係数のグラフを併せて図1に示す。
【0055】
また、本発明において紫外線吸収成分として上記紫外線吸収剤と同様に用いられる、紫外線吸収性基を有するポリマーとしては、紫外線吸収性基とエチレン性二重結合を有する化合物である紫外線吸収性基含有モノマー(以下、必要に応じてモノマー(A)という)が重合したポリマー、紫外線吸収性基含有モノマーと紫外線吸収性基を有しないエチレン性二重結合を有する化合物であるモノマー(以下、必要に応じてモノマー(B)という)が共重合したコポリマー等が挙げられる。このような紫外線吸収性基を有するポリマーにおいては、ポリマーの状態での吸光係数の特徴が、上記本発明の範囲、すなわち、波長領域350nm〜380nmの光に対する吸光係数が、平均値で、3.5g/(mg・cm)〜100g/(mg・cm)である。
【0056】
上記紫外線吸収性基を有するポリマーが有する紫外線吸収性基、言い換えれば、原料モノマーであるモノマー(A)が有する紫外線吸収性基として、具体的には、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、またはベンゾトリアゾール骨格を有する基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ポリマーが有する紫外線吸収性基は、これらの1種であってもよく、または2種以上であってもよい。
また、上記モノマー(A)が有するエチレン性二重結合として、具体的には、(メタ)アクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基等の付加重合性の不飽和基や、これら付加重合性不飽和基の水素原子の一部またはすべてが、炭化水素基により置換されている基等が挙げられるが、本発明において好ましくは、前記エチレン性二重結合を有する基は(メタ)アクリロイルオキシ基である。
【0057】
このようなモノマー(A)の具体例としては、紫外線吸収性基がベンゾトリアゾール骨格を有する基である下記の化合物が挙げられる。なお、下記化合物におけるメタクリロイルオキシ基はアクリロイルオキシ基であってもよい。
2−(2−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メタクリロイルオキシメチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−メチル−5−(8−メタクリロイルオキシオクチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール。
紫外線吸収性基がベンゾフェノン骨格を有する基である下記の化合物が挙げられる。なお、下記化合物におけるメタクリロイルオキシ基はアクリロイルオキシ基であってもよい。
2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(4−メタクリロイルオキシブトキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシ−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−1−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0058】
これらのうちでも、本発明においては、2−(2−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’,4−トリヒドロキシ−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0059】
本発明に用いる紫外線吸収成分のうち紫外線吸収性基を有するポリマーを得るために、上記モノマー(A)と共重合させてもよいモノマー(B)のエチレン性二重結合としては、上記モノマー(A)で例示したのと同様のものが挙げられる。なお、モノマー(B)における好ましいエチレン性二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイルオキシ基であり、モノマー(B)の具体例としては、上記(1)のアクリル系ポリマーを製造するためのモノマーとして例示した(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0060】
このようなモノマー(A)から選ばれる少なくとも1種と必要に応じてさらにモノマー(B)から選ばれる少なくとも1種とを重合して得られる紫外線吸収性基含有ポリマーのうち紫外線に対して上記本発明において適用可能な吸光特性を有するポリマーが、本発明の被膜付き樹脂基板の被膜が含有する紫外線吸収成分として用いられる。モノマー(A)および任意に加えられるモノマー(B)の重合は、必要に応じて添加される分子量調節剤、重合開始剤、懸濁安定剤、乳化剤等とともに、通常の付加重合性のモノマーを重合する方法、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法によって製造することができる。ここで、本発明に用いる紫外線吸収性基を有するポリマーについては、質量平均分子量が1万〜50万程度のものが好ましく、2万〜20万程度のものがより好ましい。
【0061】
紫外線吸収性基含有ポリマーにおける紫外線吸収性基の含有割合は、紫外線吸収性基含有ポリマー全体に対して、20〜80質量%となる割合が好ましく、30〜70質量%となる割合がさらに好ましい。紫外線吸収性基含有ポリマー中の紫外線吸収性基の含有割合が20質量%より少ないと紫外線吸収作用が十分でない場合があり、80質量%を超えると紫外線吸収性基含有ポリマーの物性が低下する場合がある。
ここで、紫外線吸収性基含有ポリマーにおける紫外線吸収性基とは、上記モノマー(A)において重合、すなわちポリマー鎖形成に関与するエチレン性二重結合を含む基を除く部分をいう。本発明に好ましく用いられるモノマー(A)である2−(2−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを例にすれば、メタクリロイルオキシフェニル基を除く部分が紫外線吸収性基であり、2,2’,4−トリヒドロキシ−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノンにおいては、メタクリロイルオキシエトキシ基を除く部分が紫外線吸収性基である。
一方、本発明に用いる紫外線吸収性基含有ポリマーにおいて、ポリマー鎖部分とは、上記で紫外線吸収性基と定義された部分を除く部分全てをいう。
【0062】
なお、上記本発明に適用可能な紫外線吸光特性の条件を満たす、紫外線吸収性基含有ポリマーとしては市販品もあり、これらを本発明に使用することも可能である。このような市販品として、具体的には、UVA935LH(商品名、BASF社製、吸光係数ε(350−380)ave:33.9)等が挙げられる。
【0063】
本発明の被膜付き樹脂基板の被膜は、上記紫外線吸収剤および紫外線吸収性基を有するビニル系ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する。本発明の被膜付き樹脂基板の被膜における上記(2)紫外線吸収成分の含有量は、紫外線吸収剤と紫外線吸収性基を有するポリマー中の紫外線吸収性基の合計量として、被膜構成成分全量に対して1〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。紫外線吸収成分の含有量が、1質量%未満であると耐候性が不十分となる場合があり、30質量%を越えると、紫外線吸収成分のブリードアウトなどが発生する場合がある。
【0064】
また、本発明において樹脂基板が有する被膜は、その他任意成分として、さらに光安定剤等を含んでもよい。光安定剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。被膜中の光安定剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択されるが、被膜構成成分全量に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましい。
【0065】
さらに、本発明の被膜付き樹脂基板が有する被膜は、基板上への被膜の形成に際して必要に応じて用いられるレベリング剤、消泡剤、粘性調整剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、含んでいてもよい。
【0066】
<被膜形成のための塗膜組成物の調製と被膜の形成>
本発明の被膜付き樹脂基板は、上記樹脂基板の少なくとも一方の面に上記(1)アクリル系ポリマーと(2)紫外線吸収成分を含む被膜が形成されてなる。このような本発明の被膜付き樹脂基板を得るには、樹脂基板上にアクリル系ポリマーを主成分とする被膜を形成させるための通常の被膜形成方法を適用すればよい。アクリル系ポリマーを主成分とする被膜を樹脂基板上に形成させる具体的方法としては、被膜構成成分を含有する塗膜組成物を調製し、樹脂基板上に前記塗膜組成物からなる塗膜を形成させ、必要に応じて乾燥後、主成分であるアクリル系ポリマーを加熱硬化させる方法が挙げられる。
【0067】
本発明の被膜付き樹脂基板作成のための塗膜組成物は、上記(1)アクリル系ポリマーおよび(2)紫外線吸収成分のそれぞれ所定量を含有し、必要に応じて任意成分を適当量含有するものであって、好ましくは、これらを均一に塗布するための溶媒をさらに含有する。このような塗膜組成物が含有する溶媒は、上記(1)アクリル系ポリマーおよび(2)紫外線吸収成分を安定に溶解することが可能であれば、特に限定されない。
【0068】
本発明において使用可能な溶媒として、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル1−プロパノール、2−メトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類;アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
本発明において、上記溶媒は、好ましくは、酢酸n−ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコールから選ばれる少なくとも1種である。
【0070】
また、用いる溶媒の量は、アクリル系ポリマーの量(ただし、被膜が紫外線吸収成分として紫外線吸収性基を有するポリマーを含有する場合には、アクリル系ポリマーと前記紫外線吸収性基含有ポリマーの紫外線吸収性基を除くポリマー鎖部分との合計量)に対して、質量で1〜50倍量であることが好ましく、1〜20倍量が特に好ましい。なお、塗膜組成物中の固形分の含有量は、1〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることが特に好ましい。
【0071】
上記塗膜組成物は上記各成分を合わせて十分に混合し均一な組成物とした後、樹脂基板上に塗布される。塗布の方法としては、特に限定されないが、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法等が挙げられる。このようにして樹脂基板上に塗膜組成物からなる塗膜を形成させ、必要に応じて乾燥を行った後、加熱により溶媒を除去して被膜を形成させる。加熱の条件は、特に限定されないが、50〜140℃で5分〜3時間であることが好ましい。
【0072】
このようして形成される被膜は、厚さが0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、3μm以上8μm以下であることが特に好ましい。被膜の厚さが0.5μm未満であると、耐候性が不足することがあり、10μmを超えると、基板の反りなどの不具合が発生することがある。
【0073】
本発明の被膜付き樹脂基板は、このままで耐候性の樹脂基板として各種用途に用いることが可能であるが、さらに、上記被膜上にハードコート層を設けて使用することも可能である。前記ハードコート層としては、従来公知のハードコート層を特に制限なく用いることが可能である。
このようなハードコート層の材質は特に制限されないが、耐候性及び耐摩耗性の点からシリコーン系ハードコート層が好ましく、生産性の点からは紫外線硬化型アクリル系ハードコート層が好ましい。シリコーン系ハードコート層は、例えば、加水分解性シラン化合物の一部又は全部が加水分解した加水分解物およびこの加水分解物が縮合した加水分解縮合物と溶媒と、必要に応じ添加剤を含む硬化性シリコーン系ハードコート材料を本発明の被膜付き樹脂基板の被膜上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜中の硬化性化合物を硬化させることにより形成できる。紫外線硬化型アクリル系ハードコート層は、例えば、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性二重結合を有する化合物と溶媒と、必要に応じ添加剤を含む紫外線硬化型アクリル系ハードコート材料を本発明の被膜付き樹脂基板の被膜上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜中の重合性化合物を紫外線によって硬化させることにより形成できる。ハードコート材料を塗布する方法としては、特に限定されないが、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スピンコート法等が挙げられる。
【0074】
シリコーン系ハードコート材料が塗布された被膜付き樹脂基板は、通常、常温〜樹脂基板の熱変形温度未満の温度条件下で溶媒を乾燥、除去した後、加熱硬化する。かかる熱硬化反応は樹脂基板の耐熱性に問題がない範囲において高い温度で行う方がより早く硬化を完了させることができ好ましい。紫外線硬化型アクリル系ハードコート材料が塗布された被膜付き樹脂基板は、通常、常温〜樹脂基板の熱変形温度未満の温度条件下で溶媒を乾燥、除去した後、紫外線により硬化する。
【0075】
本発明の被膜付き樹脂基板においては、被膜自体に紫外線カット性能があり耐候性が高く、これにより被膜の下の樹脂基板の紫外線による劣化を抑制することができる。つまり、樹脂基板は耐候性の高い被膜により保護され、それ自体が有する透明性や耐破壊性といった優れた特性を長期にわたって維持することが可能である。また、本発明の被膜付き樹脂基板の被膜は、従来のラミネートによる耐候性積層体との比較において、膜厚が薄くリサイクルが容易である。このような特性を有する本発明の被膜付き樹脂基板は、自動車や各種交通機関に取り付けられる車輌用の窓ガラス、家屋、ビル等の建物に取り付けられる建材用の窓ガラス、として使用できる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0077】
まず、実施例および比較例で用いた原材料について説明する。
(1)アクリル系ポリマー
実施例および比較例で用いたアクリル系ポリマーの種類と、略号、その物性を表2に示す。表2に示す通り、アクリル系ポリマー、AP−1〜AP−4は、質量平均分子量、ガラス転移温度、酸価がいずれも本発明の範囲内であり実施例として使用可能なアクリル系ポリマーである。これに対して、アクリル系ポリマー、AP−5〜AP−10は、質量平均分子量、ガラス転移温度、酸価の少なくとも1つが本発明の範囲外の比較例用のアクリル系ポリマーである。以下、実施例、比較例においては、アクリル系ポリマーを、AP−1〜AP−10の略号で示す。
【0078】
【表2】

【0079】
(2)紫外線吸収成分(紫外線吸収剤)
実施例および比較例で用いた紫外線吸収剤の種類と、略号、吸光特性を表3に示す。表3に示す通り、紫外線吸収剤、UVA1〜UVA6は、吸光特性が本発明の範囲内であり実施例として使用可能な紫外線吸収剤である。これに対して、紫外線吸収剤、UVA7〜UVA10は、吸光特性が本発明の範囲外の比較例用の紫外線吸収剤である。また、紫外線吸収剤、UVA7〜UVA10の構造式をそれぞれ化10〜化13に示す。なお、以下の実施例、比較例においては、紫外線吸収剤を、UVA1〜UVA10の略号で示す。
【0080】
【表3】

【0081】
<UVA7の化学構造式>
【化10】

【0082】
<UVA8の化学構造式>
【化11】

【0083】
<UVA9の化学構造式>
【化12】

【0084】
<UVA10の化学構造式>
【化13】

【0085】
次に、実施例および比較例で得られた被膜付き樹脂基板サンプルについて実施した耐候試験の方法について説明する。
[耐候試験の方法]
光源にメタルハライドランプを用いた促進耐候性試験機(ダイプラ・ウインテス社製、ダイプラ・メタルウェザー KU−R4)を用い、下記実施例および比較例で得られた被膜付き樹脂基板サンプルに対し、光の照射、暗黒、結露の3条件を連続で負荷した。なお、前記照射の条件は、照度90mW/cm、ブラックパネル温度63℃、相対湿度70%の条件下で4時間光を照射するものであり、前記結露の条件は、光を照射せずに相対湿度98%の条件下でブラックパネル温度を70℃から30℃に自然冷却させて4時間保持するものであり、前記暗黒の条件は光を照射せずにブラックパネル温度70℃、相対湿度90%の条件下で4時間保持するものである。
【0086】
前記の負荷を与えて600時間経過後、目視によって外観の観察を行った。また、JIS K7105の方法に準拠して耐候試験後のYI値(YI600)を求め、このYI600と、耐候試験前のYI値(YI)との差(ΔYI=YI600−YI)を算出した。総合判定は、外観およびΔYIを以下の基準により評価し、両方が合格の場合を合格(○)とした。また、外観およびΔYIの何れか一方で不合格と評価されたものは、総合判定を不合格(×)とした。
【0087】
外観:目視で被膜のクラック、剥離、白濁などを評価し、不具合がない場合を合格(ok)とする。クラック、剥離、白濁等が確認されたものは不合格として、結果の欄に不具合の内容を記載する。
【0088】
ΔYI:5以下を合格とし、5より大きい場合を不合格とする(なお、ΔYIによる評価においては、ΔYIが5以下であれば、実用上十分な性能を有する。)。
【0089】
[実施例1]
ポリマー溶液1(アクリル系ポリマー(AP−1)が30質量%、キシレンが42質量%、2−ブタノールが7質量%、メチルイソブチルケトンが21質量%の割合で混合された溶液)(60g)、UVA1(1.8g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(3g)を均一になるまで混合し塗工液1を調製した。塗工液1をディップコートによってポリカーボネートシート(カーボグラス(登録商標)ポリッシュ クリヤー(商品名、旭硝子社製)、厚さ3mm)に塗工し、室温で10分間乾燥後、120℃のオーブンで30分間乾燥を行ってサンプル1を得た。乾燥後の膜厚は4.8μmであった。サンプル1について上記耐候試験を行ったところ、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.3であったため合格と判定した。
【0090】
[実施例2]
ポリマー溶液1(60g)、UVA2(1.8g)、1−メトキシ−2−プロパノール(15g)、および2−ブタノール(15g)を均一になるまで混合し、塗工液2を調製した。塗工液2を用いて実施例1と同様にしてサンプル2を得た。乾燥後の膜厚は5.4μmであった。サンプル2について上記耐候試験を行ったところ、外観上の不具合が無く、ΔYIが2.0であったため合格と判定した。
【0091】
[実施例3]
ポリマー溶液1(60g)、UVA3(1.8g)、1−メトキシ−2−プロパノール(15g)、および2−ブタノール(15g)を均一になるまで混合し、塗工液3を調製した。塗工液3を用いて実施例1と同様にしてサンプル3を得た。乾燥後の膜厚は5.7μmであった。サンプル3について上記耐候試験を行ったところ、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.9であったため合格と判定した。
【0092】
[実施例4]
ポリマー溶液1(60g)、UVA4(1.8g)、1−メトキシ−2−プロパノール(15g)、および2−ブタノール(15g)を均一になるまで混合し塗工液4を調製した。塗工液4を用いて実施例1と同様にしてサンプル4を得た。乾燥後の膜厚は5.3μmであった。サンプル4について上記耐候試験を行ったところ、外観上の不具合が無く、ΔYIが3.2であったため合格と判定した。
【0093】
[実施例5]
ポリマー溶液1(60g)、UVA5(2.7g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(30g)を均一になるまで混合し塗工液5を調製した。塗工液5を用いて実施例1と同様にしてサンプル5を得た。乾燥後の膜厚は5.7μmであった。サンプル5について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが1.6であったため合格と判定した。
【0094】
[実施例6]
ポリマー溶液1(60g)、UVA1(1.4g)、UVA2(1.4g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(30g)を均一になるまで混合し、塗工液6を調製した。塗工液6を用いて実施例1と同様にしてサンプル6を得た。乾燥後の膜厚は4.9μmであった。サンプル6について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.3であったため合格と判定した。
【0095】
[実施例7]
ポリマー溶液1(60g)、UVA1(1.4g)、UVA6(1.4g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(30g)を均一になるまで混合し、塗工液7を調製した。塗工液7を用いて実施例1と同様にしてサンプル7を得た。乾燥後の膜厚は6.0μmであった。サンプル7について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.4であったため合格と判定した。
【0096】
[実施例8]
ポリマー溶液1(60g)、UVA1(1.4g)、UVA4(1.4g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(30g)を均一になるまで混合し、塗工液8を調製した。塗工液8を用いて実施例1と同様にしてサンプル8を得た。乾燥後の膜厚は6.1μmであった。サンプル8について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.9であったため合格と判定した。
【0097】
[実施例9]
ポリマー溶液2(アクリル系ポリマー(AP−2)が5質量%、1−メトキシ−2−プロパノールが74質量%、ジアセトンアルコールが21質量%の割合で混合された溶液)(60g)、およびUVA2(0.3g)を均一になるまで混合し、塗工液9を調製した。塗工液9を用いて実施例1と同様にしてサンプル9を得た。乾燥後の膜厚は5.0μmであった。サンプル9について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが2.1であったため合格と判定した。
【0098】
[実施例10]
ポリマー溶液2(60g)、およびUVA2(0.45g)を均一になるまで混合し、塗工液10を調製した。塗工液10を用いて実施例1と同様にしてサンプル10を得た。乾燥後の膜厚は5.0μmであった。サンプル10について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.0であったため合格と判定した。
【0099】
[実施例11]
ポリマー溶液3(アクリル系ポリマー(AP−3)が6質量%、1−メトキシ−2−プロパノールが73質量%、ジアセトンアルコールが21質量%の割合で混合された溶液)(60g)、およびUVA2(0.54g)を均一になるまで混合し、塗工液11を調製した。塗工液11を用いて実施例1と同様にしてサンプル11を得た。乾燥後の膜厚は6.3μmであった。サンプル11について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.3であったため合格と判定した。
【0100】
[実施例12]
ポリマー溶液4(アクリル系ポリマー(AP−4)が20質量%、酢酸n−ブチルが40質量%、2−プロパノールが40質量%の割合で混合された溶液)(100g)、およびUVA1(2g)を均一になるまで混合し、塗工液12を調製した。塗工液12を用いて実施例1と同様にしてサンプル12を得た。乾燥後の膜厚は5.4μmであった。サンプル12について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合が無く、ΔYIが0.5であったため合格と判定した。
【0101】
[比較例1]
ポリマー溶液5(アクリル系ポリマー(AP−5)が15質量%、メチルエチルケトンが17質量%、2−ブタノールが26質量%、ジアセトンアルコールが42質量%の割合で混合された溶液)(100g)、UVA7(3g)を均一になるまで混合し、塗工液13を調製した。塗工液13を用いて実施例1と同様にしてサンプル13を得た。乾燥後の膜厚は10μmであった。サンプル13について上記耐候試験を行った結果、ΔYIは3.5であったが、膜の剥離が発生したため不合格と判定した。
【0102】
[比較例2]
ポリマー溶液1(60g)、UVA8(1.8g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(3g)を均一になるまで混合し、塗工液14を調製した。塗工液14を用いて実施例1と同様にしてサンプル14を得た。乾燥後の膜厚は5.3μmであった。サンプル14について上記耐候試験を行った結果、ΔYIが16.0であり、膜にクラックが発生したため不合格と判定した。
【0103】
[比較例3]
ポリマー溶液1(60g)、UVA9(1.8g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(3g)を均一になるまで混合し、塗工液15を調製した。塗工液15を用いて実施例1と同様にしてサンプルを得た。乾燥後の膜厚は5.0μmであった。サンプル15について上記耐候試験を行った結果、ΔYIが14.9であり、膜にクラックが発生したため不合格と判定した。
【0104】
[比較例4]
ポリマー溶液1(60g)、UVA10(1.8g)、酢酸n−ブチル(15g)、および2−プロパノール(3g)を均一になるまで混合し、塗工液16を調製した。塗工液16を用いて実施例1と同様にしてサンプル16を得た。乾燥後の膜厚は5.0μmであった。サンプル16について上記耐候試験を行った結果、外観上の不具合は無かったが、ΔYIが14.0であったため不合格と判定した。
【0105】
[比較例5]
ポリマー溶液6(アクリル系ポリマー(AP−6)が15質量%、1−メトキシ−2−プロパノールが66質量%、ジアセトンアルコールが19質量%の割合で混合された溶液)(60g)、UVA2(0.9g)を均一になるまで混合し、塗工液17を調製した。塗工液17を用いて実施例1と同様にしてサンプル17を得た。乾燥後の膜厚は5.5μmであった。サンプル17について上記耐候試験を行った結果、ΔYIが5.9であり、膜に白濁が発生したため不合格と判定した。
【0106】
[比較例6]
ポリマー溶液7(アクリル系ポリマー(AP−7)が15質量%、1−メトキシ−2−プロパノールが66質量%、ジアセトンアルコールが19質量%)(60g)、およびUVA2(0.9g)を均一になるまで混合し、塗工液18を調製した。塗工液18を用いて実施例1と同様にしてサンプル18を得た。乾燥後の膜厚は5.0μmであった。サンプル18について上記耐候試験を行った結果、ΔYIが13.1であり、膜にクラックが発生したため不合格と判定した。
【0107】
[比較例7]
ポリマー溶液8(アクリル系ポリマー(AP−8)が15質量%、1−メトキシ−2−プロパノールが66質量%、ジアセトンアルコールが19質量%の割合で混合された溶液)(60g)、およびUVA2(0.9g)を均一になるまで混合し、塗工液19を調製した。塗工液19を用いて実施例1と同様にしてサンプル19を得た。乾燥後の膜厚は5.2μmであった。サンプル19について上記耐候試験を行った結果、ΔYIが14.8であり、膜に白濁が発生したため不合格と判定した。
【0108】
[比較例8]
ポリマー溶液9(アクリル系ポリマー(AP−9)が15質量%、1−メトキシ−2−プロパノールが66質量%、ジアセトンアルコールが19質量%の割合で混合された溶液)(60g)、およびUVA2(0.9g)を均一になるまで混合し、塗工液20を調製した。塗工液20を用いて実施例1と同様にしてサンプル20を得た。乾燥後の膜厚は6.2μmであった。サンプル20について上記耐候試験を行った結果、ΔYIが7.4であり、膜に白濁が発生したため不合格と判定した。
【0109】
[比較例9]
ポリマー溶液10(アクリル系ポリマー(AP−10)が20質量%、酢酸n−ブチルが40質量%、2−プロパノールが40質量%の割合で混合された溶液)(100g)、およびUVA1(2g)を均一になるまで混合し、塗工液21を作成した。塗工液21を用いて実施例1と同様にしてサンプル21を得た。乾燥後の膜厚は5.4μmであった。サンプル21について上記耐候試験を行った結果、ΔYIは0.8であったが、膜に肌荒れが発生したため不合格と判定した。
【0110】
上記実施例1〜12および比較例1〜9について、得られた被膜付き樹脂基板サンプルの被膜を構成する成分、アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収成分の特性と配合量、および被膜付き樹脂基板サンプルの耐候性試験の結果を表4にまとめた。
【表4】

【0111】
この結果から、アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収成分の物性が本発明の範囲内である実施例の被膜付き樹脂基板サンプルが耐候性試験の総合判定で全て合格であるのに対し、物性が本発明の範囲にないアクリル系ポリマーおよび/または紫外線吸収成分を用いて被膜が形成された比較例のサンプルはいずれも耐候性試験の結果において変色および/または外観に不具合が生じ総合判定が不合格であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の被膜付き樹脂基板は、十分な耐候性を有するものであって、自動車や各種交通機関に取り付けられる車輌用の窓ガラス、家屋、ビル等の建物に取り付けられる建材用の窓ガラス、として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を含む樹脂からなる基板の少なくとも一方の面上に、(1)アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を主なモノマー単位とするアクリル系ポリマーと(2)紫外線吸収性基を有するポリマーおよび紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種からなる紫外線吸収成分とを含む被膜が形成された被膜付き樹脂基板であって、
前記(1)アクリル系ポリマーの酸価が1mgKOH/g以下、ガラス転移点が60℃〜150℃、かつ質量平均分子量が9万〜100万であり、
前記(2)紫外線吸収成分の波長領域350nm〜380nmの光に対する吸光係数が、平均値で、3.5g/(mg・cm)〜100g/(mg・cm)であることを特徴とする被膜付き樹脂基板。
【請求項2】
前記(1)アクリル系ポリマーが、炭素数6以下のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを主なモノマー単位とするホモポリマーまたはコポリマーからなる、請求項1に記載の被膜付き樹脂基板。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン類、トリアジン類、およびベンゾトリアゾール類から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の被膜付き樹脂基板。
【請求項4】
前記紫外線吸収性基を有するポリマーが、紫外線吸収性基とエチレン性二重結合を有する化合物に由来するモノマー単位を含むポリマーである、請求項1または2に記載の被膜付き樹脂基板。
【請求項5】
前記紫外線吸収性基が、紫外線吸収性基がベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、またはベンゾトリアゾール骨格を有する基から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の被膜付き樹脂基板。
【請求項6】
前記被膜における前記(2)紫外線吸収成分の含有量が、紫外線吸収剤と紫外線吸収性基を有するポリマー中の紫外線吸収性基の合計量として、被膜構成成分全量に対して、1質量%〜30質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の被膜付き樹脂基板。
【請求項7】
前記被膜の膜厚が0.5μm〜10μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の被膜付き樹脂基板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−201789(P2010−201789A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49862(P2009−49862)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】