説明

被覆シートの敷設方法

【課題】不織布と遮水シートとを重ねて敷設展張する際に、容易に位置決め可能とし、また、その位置決め後には、不織布と遮水シートとを互いに高摩擦で接触対向状態とし、ずれの無い積層状態を維持させる。
【解決手段】不織布9の展張後に低摩擦性シート材15を展張して不織布9上面を覆い、展張された低摩擦性シート材15の上に遮水シート7を展張し、遮水シート7の端縁を隣接する他の遮水シート7の端縁に沿わせて位置調整を行って互いに隣り合う端縁同士を接合し、その後、低摩擦性シート材15を不織布9と遮水シート7との間から取り除き、不織布9と遮水シート7とを積層配置とする。遮水シート7には、不織布9に対向する面に凹凸面13を有し、不織布9に対して高摩擦に接触となってずれ防止となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物処分場などの低段地よりなる貯留部の底面や周面、調整池や人工池等の底部などに敷設され、これら底面や周面を被覆する被覆シートの敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物最終処分場や調整池、人工池等には、地面に対して、廃棄物から浸出する汚水等が土壌汚染、地下水汚染、公共水域汚染などが発生することのないように、その底面や周面に遮水構造を施す必要が有る。この遮水構造としては、塩化ビニル樹脂製シート材やオレフィン系樹脂シート材などの遮水性のある遮水シート材と、不織布などからなるシート状緩衝材を展張し、層状に重合させて地面を被覆し構成させるものである。
【0003】
このような遮水構造は、一般的に、下地地面上に、下層保護マット(シート状緩衝材)、下層遮水シート材、中間保護マット(シート状緩衝材)、上層遮水シート、上層保護マット(シート状緩衝材)の5層構造とされ、上層保護マットの上に砂を数十cmの厚さで覆う構成とされ、収容する廃棄物などによる破損の防止が施されており、各層の遮水シートは、帯状の原反を展張施工しその展張作業中に隣り合う左右縁部を熱溶着で接合している。展張作業としては、通常の遮水シートは、平滑で摩擦の少ない素材よりなることから、先に展張敷設されている不織布上で遮水シートを滑らせることが可能であり、敷設が容易であり、また互いに接合する際の位置の微調整なども遮水シートを動かすことが容易であることから可能となっている。
【0004】
しかしながら、上記のような平滑で摩擦の少ない素材よりなる遮水シートでは、不織布上での取り扱いが容易ではあるが、各シート及ぶ不織布の敷設完了後、実際に運用を開始すると、廃棄物や水などを収容した状態で、遮水シートと不織布との間で滑りが生じ、シートの滑落が発生し、層状に構成される各シートの損傷などが起きる不具合がある。
【0005】
このような滑落などの不具合を低減するために、シート表面に凹凸を設けて摩擦係数を高めたものが下記特許文献1にある。この土木用遮水シートによれば、表面に形成した凹凸面が、積層される不織布に対して高摩擦で接触対向状態となり、互いの滑りが無く、積層状態を維持することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−316117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の凹凸面を形成した高摩擦遮水シートでは、その敷設施工時に、遮水シート上で配置位置をズレることなく整然と並べることが可能であるが、施工現場によっては、地山側の凹凸などもあり、遮水シート同士を接合する際に互いの位置を微調整し、すなわち遮水シートの位置を不織布上で滑らせることで、好ましい位置へと移動させる必要があるが、シート表面の凹凸が不織布に噛み込み移動が不可能となることがある。また、遮水シート上に不織布を展設する際にも、位置ずれを修復しようにも、遮水シート表面の凹凸が不織布に絡まって滑らず、ズレ修復が不可能となって、取り扱いが容易ではなくなる不具合がある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、保護マットとなる不織布の上に遮水シートを敷設展張する際、及び遮水シートの上に不織布を敷設展張する際に、不織布と遮水シートとの間に大きな摩擦を発生させず、互いを滑らせて容易に位置修正や位置決めができ、その展張作業及び接合作業後には、不織布と遮水シートとの互いを高摩擦で接触対向状態として、ずれの生じない積層状態を維持することができる被覆シートの敷設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の請求項1記載の被覆シートの敷設方法は、緩衝層3となる不織布9と、遮水層5となる遮水シート7とをそれぞれ順次展張し積層させるとともに、前記各層3,5の少なくとも遮水シート7の隣り合う端縁を互いに接着して、保護対象面19を覆う被覆シート1の敷設方法であって、
前記不織布9の展張後、又は前記遮水シート7の展張後に、低摩擦性シート材15を展張して前記不織布9又は遮水シート7の上面を覆い、
展張された前記低摩擦性シート材15の上に、前記不織布9が下層となる場合には遮水シート7を、前記遮水シート7が下層となる場合には不織布9を展張し、
前記低摩擦性シート材15の上面に展張される前記不織布9又は遮水シート7の端縁を、隣接する他の不織布9又は遮水シート7の端縁に沿わせて位置調整を行い、
その後、前記低摩擦性シート材15を前記不織布9と遮水シート7との間から引き抜き、
該不織布9と遮水シート7とを積層配置とすることを特徴とする。
【0010】
この被覆シートの敷設方法によれば、不織布9の展張後の遮水シート7の展張以前、或いは遮水シート7の展張後の不織布9の展張以前に、低摩擦性シート材15を挟み込むように展張配置することで、それぞれの後工程側において、不織布9や遮水シート7の展張位置の調整を行うことが可能となるとともに、その展張作業時においても下側に位置する不織布9或いは遮水シート7との間に大きな摩擦を発生させることがなく、低摩擦性シート材15上の遮水シート7或いは不織布9を滑らせることが可能となり、展張作業に煩雑さがなくなり、そして展張後には低摩擦性シート材15を引き抜くように取り除くことで、不織布9と遮水シート7との互いをずれの生じにくい積層状態とすることが可能となる。
【0011】
請求項2記載の被覆シートの敷設方法は、緩衝層3となる不織布9と、遮水層5となる遮水シート7とをそれぞれ順次展張し積層させるとともに、前記各層3,5の少なくとも遮水シート7の隣り合う端縁を互いに接着して、保護対象面19を覆う被覆シート1の敷設方法であって、
前記不織布9の展張後、又は前記遮水シート7の展張後に、低摩擦性シート材15を展張して前記不織布9又は遮水シート7の上面を覆い、
展張された前記低摩擦性シート材15の上に、前記不織布9が下層となる場合には遮水シート7を、前記遮水シート7が下層となる場合には不織布9を展張し、
前記低摩擦性シート材15の上面に展張される前記不織布9又は遮水シート7の端縁を、隣接する他の不織布9又は遮水シート7の端縁に沿わせて位置調整を行い、
該位置調整後に、前記低摩擦シート材15の上に前記遮水シート7が展張状態である場合では、該遮水シート7の互いに隣り合う端縁同士を接合し、
その後、前記低摩擦性シート材15を前記不織布9と遮水シート7との間から引き抜き、
該不織布9と遮水シート7とを積層配置とすることを特徴とする。
【0012】
この被覆シートの敷設方法によれば、不織布9の展張後の遮水シート7の展張以前、或いは遮水シート7の展張後の不織布9の展張以前に、低摩擦性シート材15を挟み込むように展張配置することで、それぞれの後工程側において、不織布9や遮水シート7の展張位置の調整を行うことが可能となるとともに、その展張作業時においても下側に位置する不織布9或いは遮水シート7との間に大きな摩擦を発生させることがなく、低摩擦性シート材15上の遮水シート7或いは不織布9を滑らせることが可能となり、展張作業に煩雑さがなくなり、そして展張し互いを接合した後には低摩擦性シート材15を引き抜くように取り除くことで、不織布9と遮水シート7との互いをずれの生じにくい積層状態とすることが可能となる。
【0013】
請求項3記載の被覆シートの敷設方法は、緩衝層3となる不織布9と、遮水層5となる遮水シート7とをそれぞれ順次展張し積層させるとともに、前記各層3,5の少なくとも遮水シート7の隣り合う端縁を互いに接着して、保護対象面19を覆う被覆シート1の敷設方法であって、
前記不織布9の展張後、又は前記遮水シート7の展張後に、低摩擦性シート材15を展張して前記不織布9又は遮水シート7の上面を覆い、
展張された前記低摩擦性シート材15の上に、前記不織布9が下層となる場合には遮水シート7を、前記遮水シート7が下層となる場合には不織布9を展張し、
前記低摩擦性シート材15の上面に展張される前記不織布9又は遮水シート7の端縁を、隣接する他の不織布9又は遮水シート7の端縁に沿わせて位置調整を行い、
該位置調整後に前記低摩擦シート材15を前記不織布9と遮水シート7との間から引き抜き、
その後、前記不織布9の上に前記遮水シート7が展張状態である場合では、該遮水シート7の互いに隣り合う端縁同士を接合し、
該不織布9と遮水シート7とを積層配置とすることを特徴とする。
【0014】
この被覆シートの敷設方法によれば、不織布9の展張後の遮水シート7の展張以前、或いは遮水シート7の展張後の不織布9の展張以前に、低摩擦性シート材15を挟み込むように展張配置することで、それぞれの後工程側において、不織布9や遮水シート7の展張位置の調整を行うことが可能となるとともに、その展張作業時においても下側に位置する不織布9或いは遮水シート7との間に大きな摩擦を発生させることがなく、低摩擦性シート材15上の遮水シート7或いは不織布9を滑らせることが可能となり、展張作業に煩雑さがなくなり、そして展張した後には低摩擦性シート材15を引き抜くように取り除くことで、不織布9と遮水シート7との互いをずれの生じにくい積層状態とすることが可能となる。そして、遮水シート7は、互いに隣り合う端縁同士の接合が行われるが、位置決めされた状態となることで、その接合時に微調整を行うなどの煩雑さがなくなる、
【0015】
請求項4記載の被覆シートの敷設方法は、請求項1又は2又は3記載の被覆シートの敷設方法において、前記遮水シート7は、前記不織布9に対向する面に、該不織布9に対して高摩擦に接触となる凹凸面13を有することを特徴とする。
【0016】
この被覆シートの敷設方法によれば、展張後に低摩擦性シート材15を取り除くことで、遮水シート7の凹凸面13が、不織布9に対して高摩擦で接触対向状態となり、ずれの生じない積層状態を維持させることが可能となる。
【0017】
請求項5記載の被覆シートの敷設方法は、請求項4記載の被覆シートの敷設方法において、前記凹凸面13は、樹脂シートの押出成形直後に溶融樹脂をランダムに吹き付けて得ることを特徴とする。
【0018】
この被覆シートの敷設方法によれば、遮水シート7となる樹脂シートの押出成形の直後に凹凸面13が形成され、その凹凸面13は溶融樹脂よりなることから、吹き付け時に樹脂シートへ容易に接着し、この凹凸面13を備える遮水シート7として展張され敷設された状態で不織布9に対して高摩擦であり、遮水シート7に成型加工などや不織布9に対しての接着構造などを新たに追加することなく、積層するのみで互いのずれが防止される。
【0019】
請求項6記載の被覆シートの敷設方法は、請求項4又は5記載の被覆シートの敷設方法において、前記遮水シート7は、前記凹凸面13と、該凹凸面13の無い平滑面とを備え、該平滑面は、他の遮水シート7との接合に用いることを特徴とする。
【0020】
この被覆シートの敷設方法によれば、遮水シート7に平滑な面を備えることで、この平滑面を他の遮水シート7や不織布9に対しての接着面となる接合代17を構成することができ、遮水シート7同士の連接構造を可能とする。また、この接合代17にて不織布9との接着も可能であり、不織布9との積層構成を確実にする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による被覆シートの敷設方法では、不織布の展張後の遮水シートの展張以前、或いは遮水シートの展張後の不織布の展張以前に、低摩擦性シート材を挟み込むように展張配置することで、それぞれの後工程側において、展張位置の調整を行うことが可能となるとともに、その展張作業時においても下側に位置する不織布或いは遮水シートとの間に大きな摩擦を発生させることがなく、低摩擦性シート材上の遮水シート或いは不織布を滑らせることが可能となり、展張作業に煩雑さがなくなり、そして展張後には低摩擦性シート材を取り除くことで、不織布と遮水シートとの互いをずれの生じにくい積層状態とすることが可能となる。そして、位置決めされた状態で、隣り合う遮水シートの端縁同士が接合されることとなり、接合の度に微調整を行うことがなく、煩雑さのない接合作業を行うことが可能となる。
【0022】
また、請求項4記載の被覆シートの敷設方法では、展張後に低摩擦性シート材を取り除くことで、遮水シートの凹凸面が、不織布に対して高摩擦で接触対向状態となり、ずれの生じない積層状態を維持させることが可能となる。
【0023】
請求項5記載の被覆シートの敷設方法では、樹脂シートの押出成形の直後に凹凸面が形成され、その凹凸面は溶融樹脂よりなることから、遮水シートとして展張され敷設された状態で不織布に対して高摩擦であり、遮水シートに成型加工などや不織布に対しての接着構造などを新たに追加することなく、積層するのみで互いのずれが防止される。
【0024】
請求項6記載の被覆シートの敷設方法では、遮水シートに平滑な面を備えることで、この平滑面を他の遮水シートや不織布に対しての接着面を構成することができ、遮水シート同士の連接構造を可能とするとともに、不織布との積層構成を確実にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による敷設方法にて使用される被覆シートの概略断面図である。
【図2】同被覆シートの拡大断面図である。
【図3】同被覆シートを構成する遮水シートの一部拡大斜視図である。
【図4】本発明の被覆シートの敷設手順を(a)(b)(c)示した断面図である。
【図5】同被覆シートの敷設手順を(a)(b)(c)示した断面図である。
【図6】同被覆シートの敷設手順を(a)(b)(c)示した断面図である。
【図7】同被覆シートの敷設手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず始めに、本発明の方法で敷設される被覆シートの構造について説明する。
図1は本発明による被覆シートの構造の一実施の形態を示す概略側断面図、図2は同被覆シートの断面図の拡大図である。
被覆シート1は、緩衝層3と遮水層5とが積層され、本実施の形態では、図1に示すように、緩衝層3に遮水層5が挟まれて、これらが交互に複数積層された5層構造とされている。
【0027】
遮水層5とされる遮水シート7は、オレフィン系樹脂やポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂よりなり、幅2〜9m、長さ20〜200m、厚さ1.0〜2.5mm、例えば幅7m、長さ約130m、厚さ1.5mmの矩形状に形成される。また、緩衝層3とされる不織布9は、遮水シート7と略同長、略同幅な、すなわち略同面積とされ、厚さ約10mmのポリエステル系樹脂などを素材とする。
【0028】
本実施の形態の遮水シート7としては、メタロセン系ポリエチレンよりなる遮水シートが用いられ、積層される際に緩衝層である不織布に対して高摩擦となって対向するように、表裏両面に凸部11が設けられ凹凸面13を構成している。この凸部11は、シート表面に付着形成される粒子であり、遮水シート7の素材と同一または同様の樹脂素材からなる樹脂粒子とされる。これら樹脂粒子は、遮水シート7の成形直後に溶融状態の樹脂を吹き付けることで得られ、同素材とすることで遮水シート7との接着性が良好となる。粒子の形状は、特に制限はなく、吹き付けによる不定形なランダム状とされるが、例えば針状、チップ状、角柱状、球状等の成形形状でも良く、尖りがある形状のものが不織布9に対する摩擦係数が大きくなるので好ましい。また粒子形状や大きさは、同一のものがシート表面に分布していてもよく、またその分布も均一であっても不均一であってもよく、すなわち平滑な表面に異形状の凸部11が多数突設されることとすればよく、不織布9と重ねた際に、この不織布9に対して摩擦が生じて互いに滑ることがなければ良い。
【0029】
不織布9としては、そのウエブ原料にセルロース繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、フェノール繊維などを使用したものが挙げられ、このうちポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維などの1種以上を原料としてスパンボンド法あるいはメルトブローン法によって製造されたウエブをケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法などのいずれかの方法により接着処理して製造された25〜400g/m2 目付の不織布が好ましく使用できる。
【0030】
次に、本発明の敷設方法で用いられる低摩擦性シート材15について説明する。
低摩擦性シート材15は、例えば樹脂クロスで補強されたシートであるブルーシートや農業用に用いられるシート材であるオレフィン系樹脂フィルムなどとされ、表裏面に凹凸が無く平滑であり、好ましくは上述した遮水シート7や不織布9と略同等の面積に形成される厚さ0.1〜0.3mmのシート材である。この低摩擦性シート材15は、表裏面が平滑とされることで、上記遮水シート7の凸部11に引っ掛かることがなく、また、不織布9と絡まるようなことがない。
【0031】
次に、上記構成の被覆シートの敷設手順について説明する。
まず、不織布9、遮水シート7及び低摩擦性シート材15は、それぞれ予め工場内で製作され、所定長さ,所定幅のシート原反を連接するなど、長尺な帯状に成形される。成形された帯状の不織布8や遮水シート7、低摩擦性シート材15は、ロール状に巻回されて敷設現場に搬出される。
【0032】
施工現場においては、まず、不織布9が地面19を覆うように展張され敷設される。展張時は、巻回状態から順次巻き戻すことで行われる。そして、必要な箇所において、幅方向に連なるよう互いに縁部分を重ね、或いは突き合わせて、互いを溶接機などを用いてスポット溶接など断続的ににて溶接して、敷設対象である処分場などの地面を全て覆い、緩衝層3となる。
【0033】
次に、図4(a)に示すように、緩衝層3である不織布9の上面に低摩擦性シート材15を展張し敷設する。この低摩擦性シート材15は、展張時に、不織布9に対して精密に位置決めしなくともよく、おおよその位置で不織布9を覆うこととすれば良い。また、不織布9の全面を覆い隠す必要はなく、次工程の遮水シート7展張工程時において、前工程で敷設された不織布9に対し、且つ順次展張・敷設される遮水シート7同士での互いの位置調整の際に、その遮水シート7下面に位置していればよい。
【0034】
次に、図4(b)に示すように、低摩擦性シート材15の上面に、遮水シート7を巻回状態から巻き戻すように展張する。遮水シート7は、展張当初においては不織布9に対しておおよその位置となるように重ねられる。展張後、遮水シート7は、位置決め補正が行われる。すなわち、低摩擦性シート材15上に展張状態の遮水シート7を、縁部分を掴み持つなどして、遮水シート7を動かし、敷設位置の調整が行われる。また、遮水シート7は帯状であることから、新たな遮水シート7が幅方向に隣接されてさらに展設される。新たに敷設される遮水シート7は、既に敷設状態となっている遮水シート7と接合が行われる。
【0035】
先に敷設された帯状の遮水シート7に対し、新たに敷設される帯状の遮水シート7は、その配置位置を調整されることとなる。その調整は、低摩擦性シート材15の上面に展張されていることで、容易に滑り動くこととなり、遮水シート7の縁部7a等を掴み持ち、位置調整が行われる。すなわち先に敷設された遮水シート7の縁部7aに合せて、新たに敷設される遮水シート7の縁部7aを重ね合わせるように調整が行われる。そして、図4(c)に示すように、互いに重ね合わされた縁部同士、すなわち接合代17を溶接機21にて接着が行われる。なお、この遮水シート7は、上述したように表裏面に凸部11が形成されていることから、接合代17における対向する面同士の密着度が低くなるので、接合代となる箇所に凸部11を形成しないように、吹き付け付着の際に予めマスキング処理を行うか、或いは溶接前等に研磨作業などで凸部11を削除して図3に示すように接合代17を形成し、平滑面同士となるよう成形を行う。
【0036】
遮水シート7の展張とシート同士の接合が完了されると、図5(a)に示すように、この遮水シート7の下部に位置している低摩擦性シート材15を取り除く(矢線A)。すなわち敷設された遮水シート7と不織布9との間から、低摩擦性シート材15を引き抜き、取り除く。取り除く際には、不織布9に対しても遮水シート7に対しても摩擦が大きく働かず、容易に抜き出すことが可能である。
低摩擦性シート材15が取り除かれることで、不織布9の上面と遮水シート7の下面とが対向し(図5(b)参照)、遮水シート7の凸部11による凹凸面13が不織布9に絡み、高摩擦な接触状態となり、これにより不織布9と遮水シート7との滑りによるずれの発生を防ぐことが可能となる。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、敷設された遮水シート7の上面に、再度低摩擦性シート材15が展設される。すなわち上記した不織布9の上面に展張される手順と同様に、特に位置決めをすることなく、おおよその位置で遮水シート7を覆う。この工程においても、上記同様に遮水シート7の全面を覆い隠すこととしてもよく、或いは部分的、段階的に覆うこととしてもよい。
【0038】
次に低摩擦性シート材15の上面に、図5(c)に示すように、不織布9が展張される。展張された不織布9は、低摩擦性シート材15上であることで、遮水シート7の凹凸面13に引っ掛かることなく、展張直後の状態から最適な位置へと調整が行われる。すなわち好ましい位置に調整が可能となっている。また、このときに、この不織布9を連接することとしてもよく、すなわち帯状の不織布9を幅方向に隣り合わせて、互いの縁部分を溶接機等で接着する。
【0039】
不織布9の展張、敷設を終えたら、図6(a)に示すように、この不織布9とその下面の遮水シート7との間にある低摩擦性シート材15を取り除く(矢線B)。上記同様、上下に位置する不織布9及び遮水シート7に対しての摩擦が小さく、容易に抜き出すことが可能である。そしてこの低摩擦性シート材15が取り除かれることで、遮水シート7上面の凸部11が不織布9に引っ掛かることとなり、滑りによるずれの発生が防止される。
【0040】
その後、上記と同様に、図6(b)に示すように低摩擦性シート材15の展張、図6(c)に示すように遮水シート7の展張、図7に示すように低摩擦性シート材15の除去、低摩擦性シート材15の展張、不織布9の展張、低摩擦性シート材15の除去、と順に行うことで、図1に示すように不織布9による緩衝層3と遮水シート7による遮水層5との5層構造の被覆シート1となる。
【0041】
従ってこのように構成された被覆シート1では、保護対象面である地面19に対して、不織布9よりなる緩衝層3が構成され、この緩衝層3に遮水シート7よりなる遮水層5が積層配置されており、緩衝層3と遮水層5とが複数積層されて構成され、漏水などを防ぐ遮水層5となる遮水シート7を緩衝層3となる不織布9で挟むとともに、この構成を二重に構成しており、そして積層状態において、遮水シート7の凹凸面13が不織布9の表面に高摩擦状態で接触し、互いのずれ発生を防ぐことが可能となる。特にこの敷設方法は、法面(斜面)での施工に有利である。
【0042】
また、遮水層5の表裏面に緩衝層3が設けられる構成となることから、処理場として廃棄物が投入された際の、この廃棄物による破損を防ぐことができるとともに、貯留部の底面となる地面19に対しても緩衝作用を備えたものとなる。このことから破損の起きにくい遮水構造を得ることが可能となる。
【0043】
また、この被覆シート1の敷設方法では、不織布9の展張後の遮水シート7の展張以前、或いは遮水シート7の展張後の不織布9の展張以前に、低摩擦性シート材15を挟み込むように展張配置することで、それぞれの後工程側において、展張位置の調整を行うことが可能となるとともに、その展張作業時においても下側に位置する不織布9或いは遮水シート7との間に大きな摩擦を発生させることがなく、互いを滑らせることが可能となり、そして低摩擦性シート材15を取り除くことで、不織布9と遮水シート7との互いを高摩擦で接触対向状態として、ずれの生じない積層状態を維持させることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1…被覆シート
3…緩衝層
5…遮水層
7…遮水シート
9…不織布
13…凹凸面
15…低摩擦性シート材
17…接合代
19…保護対象面(地面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝層となる不織布と、遮水層となる遮水シートとをそれぞれ順次展張し積層させるとともに、前記各層の少なくとも遮水シートの隣り合う端縁を互いに接着して、保護対象面を覆うシート材の敷設方法であって、
前記不織布の展張後、又は前記遮水シートの展張後に、低摩擦性シート材を展張して前記不織布又は遮水シートの上面を覆い、
展張された前記低摩擦シート材の上に、前記不織布が下層となる場合には遮水シートを、前記遮水シートが下層となる場合には不織布を展張し、
前記低摩擦シート材の上面に展張される前記不織布又は遮水シートの端縁を、隣接する他の不織布又は遮水シートの端縁に沿わせて位置調整を行い、
その後、前記低摩擦シート材を前記不織布と遮水シートとの間から引き抜き、
該不織布と遮水シートとを積層配置とすることを特徴とするシート材の敷設方法。
【請求項2】
緩衝層となる不織布と、遮水層となる遮水シートとをそれぞれ順次展張し積層させるとともに、前記各層の少なくとも遮水シートの隣り合う端縁を互いに接着して、保護対象面を覆うシート材の敷設方法であって、
前記不織布の展張後、又は前記遮水シートの展張後に、低摩擦性シート材を展張して前記不織布又は遮水シートの上面を覆い、
展張された前記低摩擦シート材の上に、前記不織布が下層となる場合には遮水シートを、前記遮水シートが下層となる場合には不織布を展張し、
前記低摩擦シート材の上面に展張される前記不織布又は遮水シートの端縁を、隣接する他の不織布又は遮水シートの端縁に沿わせて位置調整を行い、
該位置調整後に、前記低摩擦シート材の上に前記遮水シートが展張状態である場合では、該遮水シートの互いに隣り合う端縁同士を接合し、
その後、前記低摩擦シート材を前記不織布と遮水シートとの間から引き抜き、
該不織布と遮水シートとを積層配置とすることを特徴とするシート材の敷設方法。
【請求項3】
緩衝層となる不織布と、遮水層となる遮水シートとをそれぞれ順次展張し積層させるとともに、前記各層の少なくとも遮水シートの隣り合う端縁を互いに接着して、保護対象面を覆うシート材の敷設方法であって、
前記不織布の展張後、又は前記遮水シートの展張後に、低摩擦性シート材を展張して前記不織布又は遮水シートの上面を覆い、
展張された前記低摩擦シート材の上に、前記不織布が下層となる場合には遮水シートを、前記遮水シートが下層となる場合には不織布を展張し、
前記低摩擦シート材の上面に展張される前記不織布又は遮水シートの端縁を、隣接する他の不織布又は遮水シートの端縁に沿わせて位置調整を行い、
該位置調整後に前記低摩擦シート材を前記不織布と遮水シートとの間から引き抜き、
その後、前記不織布の上に前記遮水シートが展張状態である場合では、該遮水シートの互いに隣り合う端縁同士を接合し、
該不織布と遮水シートとを積層配置とすることを特徴とするシート材の敷設方法。
【請求項4】
前記遮水シートは、前記不織布に対向する面に、該不織布に対して高摩擦に接触となる凹凸面を有することを特徴とする請求項1又は2又は3記載のシート材の敷設方法。
【請求項5】
前記凹凸面は、樹脂シートの押出成形直後に溶融樹脂をランダムに吹き付けて得ることを特徴とする請求項4記載のシート材の敷設方法。
【請求項6】
前記遮水シートは、前記凹凸面と、該凹凸面の無い平滑面とを備え、該平滑面は、他の遮水シートとの接合に用いることを特徴とする請求項4又は5記載のシート材の敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76043(P2012−76043A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224894(P2010−224894)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】