説明

被覆ポリアミド系樹脂フィルムおよびその製造方法

【課題】 接着性、酸素、水蒸気に対するガスバリア性に優れ、可撓性、耐湿性、耐熱性を有し、かつ製造が容易なガスバリア性積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリアミド系樹脂組成物からなる基材上に、メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした塗布層を形成したガスバリア性積層フィルムにおいて、該塗布層がメチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されている(A)メチロールメラミン/(B)ポリビニルアルコール系重合体の重量比25/75〜90/10であり、(A)+(B)100重量部に対して、触媒を1〜10重量部添加した樹脂混合物を硬化させてなる耐水接着性、バリア性、生産性に優れたガスバリア性積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルムおよびその製造方法に関する。更に詳しくは優れた接着性を有し、ガスバリア性,生産性に優れ,包装材料、工業材料に提供されるガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等に用いられる包装材料は、1)蛋白質、油脂の酸化抑制、2)味、鮮度の保持、3)医薬品の効能維持のために、酸素、水蒸気などのガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。
そのため、従来からポリビニルアルコール(以下、PVAとする)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、或いはポリ塩化ビニリデン樹脂(以下、PVDCとする)など一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を積層したフィルムが包装材料として使用されてきた。また、適当な高分子樹脂組成物(単独では、高いガスバリア性を有していない樹脂であっても)のフィルムにAlなどの金属を蒸着したものやアルミナ、シリカなどの無機酸化物を蒸着したものも包装材料として一般的に使用され始めている。
【0003】
ところが、上述のPVA、EVOH系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層フィルムは、温度依存性及び湿度依存性が大きいため、高温又は高湿下においてガスバリア性の低下が見られる。また、水により基材との接着力も低下するという問題もある。PVDC系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層フィルムは、ガスバリア性の湿度依存性は小さいが、酸素バリア性で10ml/m2・day・MPa以下とする様な高度のガスバリア性を実現することは、困難である。また被膜中に塩素を多量に含むため、焼却処理やリサイクリングなど廃棄物処理の面で問題がある。
【0004】
さらに、上述の金属を蒸着したフィルムやアルミナ、シリカなどの無機酸化物を蒸着したフィルムは、蒸着物と樹脂フィルムの機械的性質、化学的性質、熱的性質などの物性が非常に異なっていることから、ガスバリア層に用いられる無機物の薄膜が可撓性に欠け、揉みや折り曲げに弱い。そのため、印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、クラックを発生しガスバリア性が著しく低下する問題がある。
【0005】
上記問題に対して、ポリビニルアルコールとメラミン化合物の硬化反応物を被覆層の上に無機所津着層を形成してなるガスバリア材が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【特許文献1】特開2007−1283号公報
【0006】
しかしながら、このガスバリア材は、ある程度の可撓性を有するとともに、液相コーティング法による製造ができるため、コスト的にも安価とすることができるが、揉みや折り曲げ後の高度のガスバリア性は実現できていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接着性に優れ、酸素・水蒸気に対するガスバリア性に優れ、透明性、可撓性、耐湿性、耐熱性を有し、かつ製造が容易なガスバリア性積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリアミド系樹脂組成物からなる基材上に、(A)メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、(B)ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした塗布層を形成したガスバリア性積層フィルムにおいて、(A)/(B)の重量比が25/75〜90/10であり、(A)+(B)100重量部に対して、触媒を1〜10重量部添加した樹脂混合物と前記混合樹脂100重量部に対して、触媒を1〜10重量部の硬化触媒と炭素数が2以上のアルコールと水を重量比が10/30〜90/70となるように混合した溶媒からなる固形分濃度が8〜15wt%である水系コート液を塗布して得られた被覆ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法である。
【0009】
この場合において、前記の方法で得られたことを特徴とする被覆ポリアミド系樹脂フィルムが好適である。
【0010】
また、この場合において、前記被覆ポリアミド系樹脂フィルムの被覆層上に金属または金属酸化物を積層してなるガスバリア性積層フィルムが好適である。
【0011】
さらにまた、この場合において、前記フィルムから発生するメタノール量が被覆層1gに対して4%以下であるガスバリア性積層フィルムが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、接着性に優れ、酸素バリア性、水蒸気バリア性、透明性、可撓性、生産性に優れ、かつ焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、環境保全に対して有効なフィルムを経済的に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のガスバリア性積層フィルム及びその製造方法の実施の形態を説明する。
【0014】
[基材層]
本発明で用いる基材層は、ポリアミド系樹脂を主たる構成成分とするものであり、
溶融押し出しして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムである。
【0015】
ポリアミド系樹脂としては、例えば3員環以上のラクタム類の重縮合によって得られるポリアミド系樹脂、ω−アミノ酸の重縮合によって得られるポリアミド系樹脂、二塩基酸とジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド系樹脂などが挙げられる。ここで用いられる3員環以上のラクタム類の具体例としては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタムなど;ω−アミノ酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸など;二塩基酸の具体例としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸など;ジアミン類の具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンなど;が挙げられる。
またこれらを重縮合して得られる重合体またはそれらの共重合体としては、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,11、ナイロン6,12、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/6,6、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6/6I、ナイロン6/MXD6などが例示される。
【0016】
本発明におけるポリアミド系樹脂組成物は、上記ポリアミド系樹脂の他に、その目的の性能を損なわない限り、公知の添加剤、たとえば酸化防止剤、耐候性改善剤、ゲル化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料、帯電防止剤、界面活性剤などを含むものであっても勿論構わない。
また、本発明のポリアミド系樹脂組成物は、例えばTダイ法やインフレーション法など、公知の方法によってフィルム状に成形することができる。このフィルムは、単層構造であってもよく、あるいは共押出法等によって多層構造としたものであっても構わない。
【0017】
この様なポリアミド系樹脂組成物からなる基材層は、機械強度、透明性等、所望の目的に応じて任意の膜厚のものを使用することができる。特に限定されないが、通常は5〜250μmあることが推奨され、包装材料として用いる場合は10〜60μmであることが望ましい。
【0018】
[被覆層]
この様な基材層の少なくとも一方の面に、特定の被覆層が積層される。被覆層としては、メチロール基の一部または全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とする。
【0019】
本発明に使用するメチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミンはトリアジン環に結合している3個のアミノ基の水素原子の少なくとも一部がメチロール基で置換されており、該メチロール基の数は一般に3〜6個であり、該メチロール基の一部または全部がアルキルエーテル化されているものである。アルキルエーテル化メチロールメラミンのアルキル部分は炭素数1〜6個、好ましくは1〜3個有する直鎖状または分岐鎖である。例えばメチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、またはtert−ブチル等である。具体的に本発明に用いられるメチロールメラミンを例示すれば、ヘキサキスメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、ヘキサメチロールメラミンテトラメチルエーテル、ペンタメチロールメラミンペンタメチルエーテル、ペンタメチロールメラミンテトラメチルエーテル、ペンタメチロールメラミントリメチルエーテル、テトラメチロールメラミンテトラメチルエーテル、テトラメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミンジメチルエーテル等が挙げられるが、ポリビニルアルコール系重合体との相溶性の点から、トリメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミンジメチルエーテルが好ましく用いられる。なお該メチロールメラミンは2量体などの縮合体を一部含んでも良い。
【0020】
一方、ポリビニルアルコール系重合体については、その重合度、鹸化度は、目的とするガスバリア性及びコーティング水溶液の粘度などから定められる。重合度については高くなると、水溶液粘度が高いことやゲル化しやすいことから、コーティングが困難となりコーティングの作業性から2600以下が好ましい。鹸化度については、90%未満では高湿下での十分な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を超えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90〜99.7%が好ましく、さらに好ましくは93〜99%である。
【0021】
また、本発明に使用するポリビニルアルコール系重合体には、エチレンを含有したポリビニルアルコール系重合体、シラノール基を含有したポリビニルアルコール系重合体など、各種共重合また変性したポリビニルアルコール系重合体も単独使用または併用できる。中でもエチレンを含有したポリビニルアルコール系重合体が好ましい。エチレンを含有したポリビニルアルコール系重合体を単独または併用使用することで、塗膜の透明性が改善されるだけでなく、製膜延伸時に塗布する場合には塗膜の延展性を付与できる。
【0022】
本発明においては、メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比は任意に選択できるが、ガスバリア性の点から、好ましくは25/75〜90/10、更に好ましくは30/70〜90/10であり、特に好ましくは40/60〜80/20である。この比が25/70より小さかったり、90/10より大きかったりすると、目的とする接着性、酸素バリア性、水蒸気バリア性が十分に発現しなくなってしまう。
【0023】
本発明に用いられるメチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした被覆層は、水/炭素数2〜3の直鎖または分岐鎖の脂肪族基を有するアルコール性化合物の混合溶媒を用いることで形成されるのが好ましい。炭素数2以上の直鎖または分岐鎖の脂肪族基を有するアルコール性化合物を具体例で示せばエタノール、エチレングリコール、n−またはiso−プロピルアルコールが挙げられる。特にiso−プロピルアルコールが好ましい。
また、水/炭素数2〜3の直鎖または分岐鎖の脂肪族基を有するアルコール性化合物の重量比は10/90〜30/70とするのが好ましい。さらに、本発明のコーティング液の全固形分濃度は8〜15%が好ましい。
【0024】
また、コート液原料の調合順序については、特別な限定はないが、原料の混和性の点から、上記の溶媒、ポリビニルアルコール系重合体、メラミン系化合物、触媒等の添加剤の順に混合、攪拌する方法が好ましい。コート液原料の調合にあたり、ポリビニルアルコール系重合体、メラミン系化合物は、上記溶媒に溶解させた溶液の形態で用いるとよい。
更に必要であれば、本被覆層中に、静電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
【0025】
この様に、メラミン系化合物、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした被覆層が基材上に形成される。被覆層を基材上に形成する方法としては、通常前述した様に水系溶液を基材にコートする方法が採られる。コートの方法は限定するものではないが、使用するコート液のコート量と粘度により選択される。ファウンテンバーコーティング法、ファウンテンリバースロールコーティング法から採用すればよい。
【0026】
本発明の被覆フィルムの製造において、乾燥ゾーンの温度は、ガスバリア性の発現、均一性の点で重要である。乾燥ゾーンの温度を高めることで、塗膜中の揮発成分が少なくなり、ガスバリア性が発現する。すなわち、乾燥ゾーンの温度が低いと、塗膜中に未反応メラミンの低級アルコール等の揮発成分が多く残存し、その上に蒸着される無機薄膜が緻密でなくなり、十分なガスバリア性が得られない。一方、乾燥ゾーンの温度を高くしすぎると、フイルムの結晶化により延伸製膜性が悪化し、生産性を損ねる。
【0027】
そこでこれらの課題を解決する手段を検討した結果、被覆層の組成と乾燥ゾーン温度の適正化を併用することで、十分で均一なガスバリア性が得られることが判った。
【0028】
精度良く温度管理を行う方法として、インバーターを取り付けた風速変動抑制設備を用いたり、熱源に500KPa以下の低圧蒸気を使用して、フィルムに当てる熱風の温度変動を抑制できる設備等を用いるのも有効である。この方法を使用することで、特にこれらの方法を併用することで、ガスバリア性のレベル、均一性を更に高めることが可能である。
コート時の乾燥、熱処理の条件はコート厚み、装置の条件にもよるが、コート後直ちに直角方向の延伸工程に送入し、延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させ、熱固定ゾーンで完全に水分をなくすことが好ましい。このような場合、通常215℃以上で熱固定を行う。
なお、必要であれば、酸素ガスバリア層を形成させる前に基材フィルムにコロナ放電処理、その他の表面活性化処理や公知のアンカー処理剤を用いてアンカー処理を施してもよい。
【0029】
本発明における被覆層の厚みは、ガスバリア性、経済性の点から、0.05〜0.50μmであることが好ましく、0.10〜0.30μmであることが特に好ましい。被覆層の厚みが0.05μmを下回ると、酸素バリア性、水蒸気バリア性が十分に発現しない。一方、被覆層の厚みが0.50μmを超えるとアルコール成分が多くなり、ガスバリア性が低下するだけでなく、製造コストが高くなり、経済性が悪くなってしまう。
【0030】
本発明の被覆フィルムの製造において、上述した点以外の製造条件については、通常の被覆フィルムの製造条件から適宜最適な条件を選択して適用すればよい。
【0031】
本発明の被覆フィルムの製造において、メラミン系化合物とポリビニルアルコール系重合体被覆層を形成するコート液は、コート液中及び乾燥ゾーンの両方で縮合反応が進行する。コート液中で反応が進行しすぎると、コート液が白濁し、粘度が高くなる現象がおこり、その結果、得られる塗膜の透明性が悪くなるばかりでなく、コート厚みが変動し、無機薄膜蒸着後のガスバリア性が不十分、不均一になる現象がおきてしまう。また、液の増粘・固化により、製造ラインにダメージを与える可能性もあり、操業性の悪化も推測される。
一方、乾燥ゾーンでは、反応が低いと、塗膜の親水性が高く、目的のガスバリア性の一つである水蒸気バリア性を発現させることができない。すなわち、単純に反応を制御するだけでは、十分で均一なガスバリア性が得られにくい。
【0032】
そこで、この二律背反する課題を解決するためには、コート液の反応性を低くし、被覆層(乾燥した塗膜)の反応性を高くすることが必要であると考えられ、その手段について鋭意検討した結果、触媒活性の温度依存性の大きい触媒(本発明においては、これを温度依存性触媒と呼ぶ。)の使用が有効であることを見出した。すなわちこれにより、コート液の反応性と被覆層の反応性との差が大きくなり、コート液中では反応性を低く、乾燥ゾーン中では反応性を高くすることが実現でき、十分で均一なガスバリア性を得ることが可能になる。
【0033】
触媒としては、カルボキシル基、スルホン酸基などの様な酸性基を含みそれ自体酸性であるものを使用することができる。これにより、反応が促進され、使い方としては、コーティング液中で、メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体に配合することで使用される。
具体的に例示すると、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸誘導体、リン酸などの酸性触媒が挙げられる。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸等の酸性触媒を挙げることができる。このとき上記酸をアミン塩とし使用するのは液のポットライフの点で好ましくない。
また、塩化マグネシウムなどの中性触媒も使用することができる。
【0034】
更に必要であれば、本被覆層中に、静電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
本発明の被覆層の厚みは、基材層によって異なるが、ガスバリア性を発揮させる最小限の厚みがよく、通常は乾燥後厚みで0.5μm以下であることが、透明性、取り扱い性、経済性の点で好ましい。
【0035】
[無機薄膜層]
以上の様な被覆層上に無機薄膜層が蒸着される。この無機薄膜層は、ガスバリア性を向上させるもので、無機薄膜の材料としては、Al、Si、Ti、Zn、Zr、Mg、Sn、Cu、Fe等の金属や、これら金属の酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられ、具体的には、SiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム、あるいはこれらの混合物が例示される。無機薄膜層は1層でもあるいは2層以上の積層体であってもよい。
【0036】
上記無機薄膜層の膜厚は、好ましくは10〜5000Å、より好ましくは50〜2000Åである。膜厚が10Å未満の場合は十分なガスバリア性が得られない恐れがあり好ましくない。逆に5000Åを超える場合、それに相当する効果は奏されず、また耐屈曲性が低下し、さらに製造コストの点で不利となり好ましくない。
【0037】
上記無機薄膜層の蒸着方法としては、公知の方法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が採用される。
【0038】
真空蒸着法においては、蒸着材料としてアルミニウム、珪素、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属、また、SiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア等の化合物およびそれらの混合物が用いられる。加熱方法としては、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等が採用される。また、反応ガスとして、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭素ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着法を採用してもよい。さらに、基材にバイアスを印加したり、加熱・冷却する等の方法を採用してもよい。上記蒸着材料、反応ガス、バイアス印加、加熱・冷却はスパッタリング法、CVD法においても採用され得る。
【0039】
本発明の被覆フィルム及び蒸着フィルムの厚みは、通常包装材料で使用されることから、5〜50μmであることが必要である。望ましくは被覆フィルム及び蒸着フィルムの厚みは10〜30μmである。
この様な被覆フィルム及び蒸着フィルムを200℃で加熱したときに発生するアルコールの量は、被覆層1gあたり4.0%以下である。ホルムアルデヒド量が4.0%を超える場合、被覆層の反応が不充分であり、かつ緻密な蒸着膜が得られず、十分なガスバリア性が得られない。
【0040】
[ヒートシール性樹脂層]
本発明のガスバリア性積層フィルムは、通常包装材料として使用するため、無機薄膜層上にシーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層が形成される。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、PP樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂などを使用できる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0042】
1)アルコール量
25℃、65%RHの条件で3時間放置したフィルム試料約10mgを、ガラスインサート法ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC−14B)にて測定した。注入口温度を200℃にして、5分間捕集したもので、炭素数1〜4の低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール)の定量化を行った。
【0043】
2)コート厚み
透過電子顕微鏡での観察により測定した。フィルム試料をエポキシ樹脂で包埋し、室温で超薄切片を作製した。これをRuO蒸気中で3分間染色し、カーボン蒸着を施して観察用試料とした。日本電子製JEM2010透過型電子顕微鏡で加速電圧200KV、直接倍率50000倍で、観察、写真撮影を行った。各切り出し部から切り出された各試料について、コート厚みは、フィルム幅方向に沿った長さを5等分する点において厚みを測定し(つまり、試料のフィルム幅が0.4mの場合には、幅方向に0.08m、0.16m、0.24m、0.32m、0.4mの点の厚みを測定する)、その平均値を各試料のコート厚みとした。
【0044】
3)耐水接着性
被覆層上に無機薄膜層を設けた基材の無機薄膜層上に、ドライラミネート用接着剤を介して、LLDPEを積層して積層体Aを作成した。これを引張試験機(東洋測機社製:商品名,テンシロンUTM)により、試料巾15mm,引張速度200mm/分の条件で剥離強度測定を実施した。
【0045】
4)酸素透過度
前述の積層体Aを23℃、65%RHの条件で、酸素透過率測定装置(モダンコントロールズ社製OX−TRAN100)を用いて測定した。
【0046】
5)水蒸気透過度
前述の積層体Aを40℃、90%RHの条件で、水蒸気透過度測定器(米国MOCON社製PARMATRAN−W)を用いて測定した。
【0047】
(実施例1)
[塗布液の調製]
水880gを攪拌しながら、無変性のポリビニルアルコール樹脂(鹸化度98.5mol%、重合度500)108g、エチレンを含有したポリビニルアルコール(エチレン含量5mol%、鹸化度98.5mol%、重合度500)12gを徐々に投入した。90℃まで加熱、完全にポリビニルアルコール樹脂を溶解し、ポリビニルアルコール樹脂の12%水溶液を調製した。次にこのポリビニルアルコール樹脂水溶液1000g、メチル化されたメチロールメラミン(三井サイテック製:サイメル370、77wt%液)52g、水332g、イソプロピルアルコール216g、リン酸8g(ポリビニルアルコール系樹脂とメチル化されたメチロールメラミンの固形分に対して5%)、固形分濃度10%の塗布液を調製した。
(メチル化されたメチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比は25/75)
【0048】
[フィルムへのコーティング評価]
ポリカプロアミドをスクリュー式押出し機で260℃に加熱溶融し、Tダイよりシート状に押出し、次いで、この未延伸シートを冷却ドラムで50℃で3.2倍縦延伸した。一方、上記のメラミン系化合物/ポリビニルアルコール系重合体 固形分濃度18重量%液については、液をフィルム表面へ吐出するファウンテンがつながった温調タンクに投入し、攪拌しながら、20℃に制御した。そして、得られた一軸延伸フィルムの片面に,上記塗布液をファウンテンバーコート法により延伸後の樹脂固形分厚みが0.15μmとなる様に塗布した。次にテンターに導き、120℃で4.0倍横方向に延伸し、214℃で熱固定を行い、厚さ15μmのニ軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0049】
[蒸着]
次にこの塗布面へ蒸着するために、蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のSiO(純度99.99%)とAl(純度99.9%)を用い、上記の如く得られたフィルムロールの被覆層面側に、電子ビーム蒸着法により、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合薄膜の形成を行った。蒸着材料は、混合せずに、2つに区切って投入した。加熱源として、EB銃を用い、AlとSiOのそれぞれを時分割で加熱した。そのときのEB銃のエミッション電流を1.2Aとし、AlとSiOとの組成比が45:55となるように、各材料を加熱した。フィルム送り速度を250m/minとし、12nm厚の膜を作った。また、蒸着時の圧力を、1×10−2Paに調整した。また、蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。
【0050】
これらにつき、実施例冒頭で示した方法・条件で、被覆フィルム中の低級アルコール量総量、被覆フィルムのコート厚み、及び蒸着フィルムの耐水接着性、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。表1に試料の作製条件および評価結果を示す。
【0051】
[ラミネート]
次に、フィルムの蒸着面にポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製,TM−590/CAT56)を約3μm塗布し、80℃で熱処理した後、低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡績製:L4102、厚み40μm)を60℃に加熱した金属ロール上で0.2MPaのニップ圧力でドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
【0052】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
被覆層の液処方、コート液中のアルコール比率、横延伸機の温度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様の手順でサンプル作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例4)
被覆層の液処方において、モノエタノールアミン20%水溶液を25g添加した以外は、実施例1と同様の手順でサンプル作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、接着性、酸素バリア性、水蒸気バリア性、透明性、可撓性、耐湿性、耐熱性が非常に優れ、かつ焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、近年問題とされている環境保全に対して有効である各種包装用フィルムを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂組成物からなる基材上に、(A)メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、(B)ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした塗布層を形成したガスバリア性積層フィルムにおいて、(A)/(B)の重量比が25/75〜90/10であり、(A)+(B)100重量部に対して、触媒を1〜10重量部添加した樹脂混合物と前記混合樹脂100重量部に対して、触媒を1〜10重量部の硬化触媒と炭素数が2以上のアルコールと水を重量比が10/90〜30/70となるように混合した溶媒からなる固形分濃度が8〜15wt%である水系コート液を塗布して得られた被覆ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法で得られたことを特徴とする被覆ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項2記載の積被覆ポリアミド系樹脂フィルムの被覆層上に金属または金属酸化物を積層してなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【請求項4】
請求項3記載のガスバリア性積層フィルムであって、前記フィルムから発生するメタノール量が被覆層1gに対して4%以下であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。

【公開番号】特開2009−126118(P2009−126118A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305318(P2007−305318)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】