説明

被覆用ポリエステル

本発明は、再生可能な供給源及び/又は再生利用材料から調製することができるポリエステル、それらの使用、並びにそれらの生成方法に関する。特に、(e)テレフタル酸及び/又はイソフタル酸構成部分、(f)エチレングリコール構成部分、(g)ジアンヒドロヘキシトール構成部分、及び(h)1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸構成部分を含み、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して400〜15000ダルトン、好ましくは550〜15000ダルトンの数平均分子量を有する、ヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルが提供される。本発明のポリエステルは、基本的に、再生利用ポリエチレンテレフタレートから、並びに再生可能ポリ酸及び/又はポリオールから調製されうる。本発明は、ジアンヒドロヘキシトールを用いるポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートの解糖を介して、そのようなポリエステルを生成する方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な供給源及び/又は再生利用材料から調製することができるポリエステル、それらの使用、並びにそれらの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボキシル、ヒドロキシル及び(メタ)アクリロイル官能性ポリエステル、並びに被覆用の樹脂及び/又は結合剤におけるこれらの使用は、広く記載されてきた。
【0003】
これらの原材料のうちの大部分は、原則的に再生不能な供給源から誘導されている。再生不能な供給源は、地球から採取され、いったん採取されると元に戻せない。
【0004】
一部の再生不能な供給源を元に戻す方向に進む持続可能な経路は、再生利用であり、これは、出発材料が前の使用から回収されて再び使用されることを意味する。
【0005】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はボトル廃物の使用は、粉末被覆用のポリエステルを含む多様な用途において記載されてきた。
【0006】
DD295,647は、高数平均分子量PET廃棄物ポリ酸とポリオールとの反応により得られる粉末被覆用のカルボキシル官能性ポリエステルの合成に関する。
【0007】
DE1,913,923は、ヒドロキシル官能性ポリテレフタレートとカルボキシル官能性ポリテレフタレートとの混合により調製される熱硬化性ポリテレフタレート結合剤を開示する。両方のポリテレフタレートは、アルコールを用いるPETの解糖により得られる。
【0008】
再生不能な供給源を再生可能な供給源に(部分的又は完全に)取り替えることもできる。再生可能な供給源に対する産業界の興味は、化石燃料に基づく供給原料の涸渇が環境に与える影響に対する認識によって駆り立てられている。
【0009】
WO2008/031592は、イソイジド(isoidide)とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との混合物からポリエステルを生成する方法を開示する。単一のポリ酸としてコハク酸から作製された及び単一のポリオールとしてイソソルビドから作製されたポリエステルから得られる被覆だけが、粉末被覆にとって許容される柔軟性及びガラス移転温度を有する。
【0010】
WO2006/102279において、ポリエステルの生成におけるイソイジド及びイソソルビドの使用が記載されている。280℃以上の反応温度がここで報告されている。
【0011】
再生利用材料及び/又は再生可能な供給源から容易な方法で調製することができ、多様な種類の被覆に使用することができるポリエステルに対する継続的な需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この背景に対して、本発明者たちは、現在、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸である構成部分(moieties)、エチレングリコールである構成部分、ジアンヒドロヘキシトール(dianhydrohexitol)(例えば、イソソルビド)である構成部分、並びに、有利には1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸である構成部分を含むポリエステルを提供する。
【0013】
「構成部分」とは、本明細書で使用されるとき、モノマー単位を意味する。
【0014】
有利には、本発明のポリエステルは非熱可塑性である。好ましいものは、熱硬化性ポリエステルであるが、放射線硬化性ポリエステルも可能である。
【0015】
本発明のポリエステルは、粉末被覆がほんの一例である被覆の結合剤系の一部として使用することができる。しかし、本発明のポリエステルは、液体被覆組成物に使用することもできる。本発明の液体被覆組成物は、水性(water−borne)又は溶媒性(solvent−borne)でありうる。
【0016】
本発明において更に提供されるものは、本発明のポリエステルを生成する方法である。
【0017】
特に、ポリエステルを生成する方法であって、(1)ジアンヒドロヘキシトールによりポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートを解糖するステップ、続いて必要であれば、(2)1つ又は複数の追加のステップ、とりわけ1つ又は複数の追加の反応ステップを含む上記方法が提供される。ステップ(1)において、ジアンヒドロヘキシトール(例えば、イソソルビド)に加えて、1つ又は複数の他のポリオール(例えば、グリセロール及び/又はソルビトール)を使用することができる。本発明の方法を用いて、ヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して300〜15000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリエステルを生成することができる。典型的には、ポリエステルのMnは、少なくとも350ダルトン、好ましくは少なくとも400ダルトン、とりわけ少なくとも550ダルトンである。Mnは、典型的には、ポリエステルが使用される被覆の種類及び性質に応じて変わり、典型的には、ポリスチレン基準を使用してGPCにより測定される。
【0018】
驚くべきことに、ポリエステルを含有するテレフタル酸及び/又はイソフタル酸基へのジアンヒドロヘキシトールの組み込みは、穏和な温度で短時間に可能であることが見出された。
【0019】
本発明の方法において解糖が素早いことは、Macromolecules、27、6371〜6375のChan、K.P.ら(1994)による方法又はMacromolecules、30、327〜329のSpyros、A.ら(1997)による方法を使用して、リン系誘導体化樹脂における31P−NMRによって実証できた。
【0020】
このことは、ジアンヒドロヘキシトールの不十分な反応性及び前記ジアンヒドロヘキシトールを使用する直接縮合過程に必要な高い反応温度を考慮すると、予想されなかった。好ましくは、ジアンヒドロヘキシトール及び場合により1つ又は複数の他のポリオール(例えば、グリセロール及び/又はソルビトール)による解糖は、エステル交換が得られるのに十分な温度及び時間で実施される。「他の」とは、ジアンヒドロヘキシトールとは異なるポリオールを意味する。
【0021】
本発明の方法において、ステップ(1)は、有利には、200℃〜260℃の温度条件下で実施される。好ましくは、ステップ(1)の全体を通して温度は250℃未満である。より好ましくは、ステップ(1)は、220℃〜240℃の温度条件下で実施される。
【0022】
本発明の方法におけるステップ(1)は、好ましくは、エステル交換触媒の存在下で進行する。可能なエステル交換触媒には、n−ブチルスズトリオクトエート及び/又はテトラ−n−ブチルチタネートが含まれる。
【0023】
幾つかの場合において、所望の分子量のヒドロキシル官能性ポリマーを、本発明の方法のステップ(1)の後で得ることができる。
【0024】
しかし、大部分の場合では、ステップ(1)の後に1つ又は複数の追加のステップ、とりわけ1つ又は複数の追加の反応ステップが続く。そのような追加のステップは、有利には、例えば所望の分子量、所望の縮合の程度などの所望の特性のポリエステルをもたらす。追加のステップは、真空、鎖延長、カルボキシル化のステップ及び/又は他の適切なステップを含むことができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、方法のステップ(1)の後には、鎖延長及び/又はカルボキシル化のステップを含むステップ(2)が続く。
【0026】
本発明の方法において、鎖延長は、減圧(<1atm)若しくは真空(例えば、50mmHg)を適用することによって、並びに/又は、以前に(ステップ1において)得たヒドロキシル官能性プレポリマーを1つ又は複数のポリ酸と、好ましくは1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸と、及び場合により1つ又は複数の他のポリ酸と反応させることによって、得ることができる。
【0027】
減圧又は真空を使用して、所望のヒドロキシル価が得られるまでエチレングリコールを蒸留することができる。或いは、減圧又は真空を適用して、エチレングリコールの一部を蒸留し、続いて1つ又は複数のポリ酸と、好ましくは1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸と、及び場合により1つ又は複数の他のポリ酸と縮合反応させることができる。
【0028】
エチレングリコール(の一部)が最初に蒸留されるかどうかによって、ジアンヒドロヘキシトールの直鎖ジカルボン酸に対する(例えば、イソソルビドのコハク酸に対する)最終重量比が変わる。
【0029】
理想的には、ジアンヒドロヘキシトールの直鎖ジカルボン酸に対する(例えば、イソソルビドのコハク酸に対する)最終重量比は、0.3対2.5、典型的には0.5対2、好ましくは0.7対1.4である。Tg値は、知られているように、変動する場合があり、最終用途に適合されうる。
【0030】
高Tg値が目的の場合、最初に真空を適用して、本発明の方法のステップ(1)において得られるヒドロキシル官能性プレポリマーのヒドロキシル価を低減するほうが良い。これは、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルが、更なる反応ステップにおいて、(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルに変換される場合に特に有利でありうる。
【0031】
本発明の方法において、カルボキシル化は、例えば、以前に(可能であれば減圧又は真空のステップが後に続くステップ1において)得られたヒドロキシル官能性プレポリマーを1つ又は複数のポリ酸と反応させることによって得られる。好ましいものは、直鎖ジカルボン酸であり、これを単独で又は1つ又は複数の他のポリ酸と組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明の好ましい方法において、1つ又は複数のポリ酸が、前記鎖延長及び/又は前記カルボキシル化に使用される。前記鎖延長及び/又は前記カルボキシル化ステップに使用される好ましいポリ酸は、直鎖ジカルボン酸である。前記直鎖ジカルボン酸を、単独で又は1つ又は複数の他のポリ酸と組み合わせて使用することができる。「他の」とは、この文脈において、使用される直鎖ジカルボン酸(単数又は複数)(例えば、コハク酸)と異なることを意味する。
【0033】
ステップ(2)の前記鎖延長及び/又は前記カルボキシル化に使用される好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは全てのポリ酸は、再生可能ポリ酸である。
【0034】
本発明の実施形態において、本発明の方法における鎖延長及び/又はカルボキシル化ステップの後には、減圧(<1atm)又は真空(例えば、50mmHg)のステップが続く。有利には、減圧又は真空は、所望の縮合の程度が得られるまで適用される。
【0035】
好ましくはステップ(2)、とりわけその鎖延長及び/又はカルボキシル化のステップは、120℃〜260℃、特に200℃〜260℃の温度条件下で実施される。より好ましくはステップ(2)、とりわけその鎖延長及び/又はカルボキシル化のステップは、250℃未満の温度、とりわけ220℃〜240℃の温度で実施される。
【0036】
無水物末端キャップをステップ2において行うこともできる。この種類の反応では、ステップ2の反応温度は、典型的には120℃〜240℃、好ましくは160℃〜200℃である。
【0037】
本発明の方法に出発材料として使用されるポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートは、前記ポリエチレンテレフタレート及び/又は前記ポリエチレンイソフタレートを含む材料(又は反応物)の形態で提供されうる。材料は、有利には再生利用材料である。
【0038】
特に適しているものは、ポリエチレンテレフタレート、とりわけ再生利用ポリエチレンテレフタレートを含む材料である。
【0039】
好ましくは、再生利用ポリエチレンテレフタレートを含む材料は、再生利用ポリエチレンテレフタレート、とりわけPET廃物である。
【0040】
当然のことながら、非再生利用PET(又は未使用PET)を、再生利用PETの代わりに使用することもできる。本発明の方法のステップ(1)において反応物としてポリエチレンイソフタレートを使用することは、屋外耐久性を改善するために特に有利である。
【0041】
本発明の実施形態において、ポリエチレンイソフタレートが、エチレングリコールとイソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートとの直接縮合を介して最初に調製される。そのようなポリエチレンイソフタレートは、次に、本発明の方法のステップ(1)に記載されたように解糖のステップに付される。ポリエチレンイソフタレートを、同じ又は別の反応器において調製することができる。或いは、再生利用ポリエチレンイソフタレートを使用することができる。
【0042】
好ましくは、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートは、本発明のポリエステルに組み込まれたエチレングリコールの、並びにテレフタル酸及び/又はイソフタル酸の唯一の供給源である。
【0043】
本発明は、また、本発明の方法により得ることができる(又は得られる)ポリエステルに関する。
【0044】
特に、
(a)テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、
(b)エチレングリコール、
(c)ジアンヒドロヘキシトール、並びに
(d)1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸
構成部分を含む、ヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルが提供される。
【0045】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、場合により、(e)1つ又は複数の他のポリオール(e1)及び/又は1つ又は複数の他ポリ酸(e2)構成部分を更に含むことができる。
【0046】
他のポリオール(e1)とは、前記ジアンヒドロヘキシトールとは異なるポリオールを意味する。好ましくは、ポリオールは、エチレングリコールとも異なる。有利には、他のポリオール(e1)は、(b)及び(c)構成部分と異なる。
【0047】
他のポリ酸(e2)とは、直鎖ジカルボン酸(d)と異なるポリ酸を意味する。好ましくは、ポリ酸は、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とも異なる。
【0048】
有利には、他のポリ酸(e2)は、(a)及び(d)構成部分と異なる。
【0049】
有利には、他のポリ酸(e2)は、脂肪酸ではなく、特に飽和又は不飽和の二量体又は三量体の脂肪酸ではない。
【0050】
有利には、直鎖ジカルボン酸(d)は、脂肪酸ではなく、特に飽和又は不飽和の二量体脂肪酸ではない。
【0051】
本発明の実施形態において、本発明のヒドロキシル官能性ポリエステルの調製、及び特にカルボキシル官能性ポリエステルの調製に使用される直鎖ジカルボン酸(d)及び他のポリ酸(e2)は、脂肪酸と異なり、とりわけ飽和又は不飽和の二量体又は三量体の脂肪酸と異なる。
【0052】
有利には、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステル、及び特に本発明のカルボキシル官能性ポリエステルは、ポリエステルの総重量に基づいて、20重量%未満、典型的には5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の脂肪酸構成部分を含む。
【0053】
有利には、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステル、及び特に本発明のカルボキシル官能性ポリエステルは、脂肪酸構成部分を含まず、特に飽和又は不飽和の二量体又は三量体の脂肪酸構成部分を含まず、とりわけ飽和二量体脂肪酸構成部分を含まない。
【0054】
本発明の実施形態において、(a)、(b)、(c)、(d)構成部分と(e1)及び/又は(e2)の任意構成部分の重量率は、合計で100%になる。
【0055】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、有利には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して300〜15000ダルトン、好ましくは350〜15000ダルトン、特に500〜15000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0056】
典型的には、ポリエステルのMnは、少なくとも400ダルトンである。好ましくは、Mnは、少なくとも550ダルトン、より好ましくは少なくとも750ダルトン、最も好ましくは少なくとも1100ダルトンである。好ましくは、Mnは、ポリエステルが使用される被覆の種類に応じて、最大で11000ダルトン、より好ましくは最大で8500ダルトンである。典型的には、Mnは、ポリスチレン標準を使用するGPCにより測定される。
【0057】
典型的には、Mnは、ポリスチレン標準により40℃で検量したMW範囲が162〜377400g/molの3×PLgel 5μm Mixed−D LS 300×7.5mmカラムにおいて、THF(テトラヒドロフラン)によりGPCで測定する。典型的には、屈折率(RI)を検出器として使用する。
【0058】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、好ましくは、ポリエステルの総重量に基づいて、5重量%〜35重量%のエチレングリコール構成部分(b)から調製される。ポリエステルにおけるエチレングリコール構成部分の量は、好ましくは、少なくとも10重量%、典型的には少なくとも12重量%、多くの場合には少なくとも15重量%である。典型的には、ポリエステルにおけるエチレングリコール構成部分の量は、30重量%を越えない。
【0059】
本発明の好ましいヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、ポリエステルの総重量に基づいて、
(a)10重量%〜80重量%のテレフタル酸及び/又はイソフタル酸構成部分と、
(b)5重量%〜35重量%のエチレングリコール構成部分と、
(c)5重量%〜40重量%のジアンヒドロヘキシトール構成部分と、
(d)5重量%〜40重量%の1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸構成部分と、
(e)場合により、0重量%〜40重量%の1つ又は複数の他のポリオール(e1)及び/又は1つ又は複数の他のポリ酸(e2)構成部分と
を含む。
【0060】
好ましくは、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、少なくとも30重量%、好ましくは最大で60重量%のテレフタル酸構成部分及び/又はイソフタル酸構成部分を含む。
【0061】
好ましくは、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、少なくとも10重量%、典型的には少なくとも12重量%、多くの場合には少なくとも15重量%、好ましくは最大で30重量%のエチレングリコール構成部分を含む。
【0062】
好ましくは、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、少なくとも10重量%、好ましくは最大で30重量%のジアンヒドロヘキシトール構成部分を含む。好ましくは、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、少なくとも10重量%の直鎖ジカルボン酸構成部分、好ましくは最大で30重量%の直鎖ジカルボン酸構成部分を含む。
【0063】
好ましくは、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、場合により、0〜35重量%、一般に0〜20重量%の1つ又は複数の他のポリオール構成部分及び/又は1つ又は複数の他のポリ酸構成部分を含む。
【0064】
重量率は、本明細書において、ポリエステルの総重量に基づく。本発明の実施形態において、上記に同定されている(a)から(e)の構成部分の重量率は合計で100%になる。
【0065】
一般に、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、ジアンヒドロヘキシトールの存在下で解糖され、1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸と更に反応するポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートに基づいた材料から誘導される。
【0066】
一般に、本発明のポリエステルの存在する10重量%未満のテレフタル酸及び/又はイソフタル酸構成部分(a)は、ジアルキルテレフタレート及び/又はジアルキルイソフタレートから誘導される。好ましくは、この率は5重量%未満である。
【0067】
重量率は、本明細書において、ポリエステルの総重量に基づく。
【0068】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルの合成において使用される用語「ジアンヒドロヘキシトール」(c)は、ジアンヒドロヘキシトールの3つの異性体、すなわちイソソルビド(isosorbide)、イソイド(isoide)及び/又はイソマンニド(isomannide)のいずれかを意味する。3つの異性体を、単独で又は2若しくは3つの異性体の混合物として使用することができる。
【0069】
好ましくは、ジアンヒドロヘキシトール(c)は、少なくともイソソルビドを、場合によりイソイド及びイソマンニドのうちの少なくとも1つと組み合わせて含む。最も好ましくは、ジアンヒドロヘキシトール(c)は、イソソルビドである。ジアンヒドロヘキシトール、好ましくはイソソルビドは、再生可能ポリオールであってよい。
【0070】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルの合成において使用される直鎖ジカルボン酸(d)は、好ましくは、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸から、可能であればEmpol(登録商標)1018又はPripol(登録商標)1013などの二量体二酸から有利に選択される直鎖脂肪族ジカルボン酸である。好ましいものは、コハク酸、特に再生可能な供給源から得られるコハク酸である。また好ましいものは、アジピン酸、特に再生可能な供給源から得られるアジピン酸である。好ましいものは、また、二量体二酸、特に再生可能な供給源から得られる二量体二酸である。
【0071】
本発明の実施形態において、本発明のポリエステルの合成、とりわけ本発明のカルボキシル官能性ポリエステルの合成に使用される直鎖ジカルボン酸(d)は、脂肪酸ではなく又は脂肪酸から誘導されず、とりわけ飽和又は不飽和二量体脂肪酸ではない。
【0072】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルの合成において使用される他のポリオール(e1)は、好ましくは、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、グリセロール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールから、及びSPEZIOL(登録商標)1075などの二量体ジオールから選択される。好ましいものは、ソルビトール及び/又はグリセロール及び/又は1,3−プロパンジオール、とりわけソルビトール及びグリセロールである。特に適したものはグリセロールである。好ましいものは、また、二量体ジオール、特に再生可能な供給源から得られる二量体ジオールである。また好ましいものは、ジエチレングリコールである。
【0073】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルの合成において使用される他のポリ酸(e2)は、好ましくは、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、酒石酸、トリメリト酸、ピロメリト酸又は(これらのうちのいずれかの)対応する無水物から選択される。本発明の好ましいヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、10〜310mgKOH/gの酸価又はヒドロキシル価を有する。好ましくは、酸価又はヒドロキシル価は、少なくとも15mgKOH/g、より好ましくは少なくとも20mgKOH/gである。好ましくは、酸価又はヒドロキシル価は、最大で200mgKOH/g、多くの場合に最大で150mgKOH/g、より好ましくは最大で100mgKOH/gであるが、これは、これらが使用される被覆の性質によって左右されうる。
【0074】
本発明の好ましいヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、1分間あたり20℃の加熱勾配を用いるASTM D3418による示差走査熱量測定で測定した、120℃未満、より好ましくは100℃未満、最も好ましくは80℃未満のガラス移転温度(Tg)によって特徴付けられる。好ましくは、Tgは、ポリエステルが粉末被覆に使用される場合、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃、最も好ましくは50℃である。液体被覆組成物では、典型的には、少なくとも−100℃、好ましくは少なくとも−50℃、より好ましくは少なくとも−20℃のTgを有するポリエステルが使用される。
【0075】
本発明の好ましいヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、室温(例えば25℃)で50mPa.sから200℃で15000mPa.sまでの、ASTM D4287−88によるブルックフィールド(コーン/プレート)粘度を有する。好ましくは、室温(例えば、25℃)でのブルックフィールド(コーン/プレート)粘度は、少なくとも500mPa.s、より好ましくは少なくとも700mPa.sである。好ましくは、200℃でのブルックフィールド(コーン/プレート)粘度は、最大で12000mPa.s、より好ましくは最大で10000mPa.sである。
【0076】
好ましくは、本発明のヒドロキシル官能性及び/又はカルボキシル官能性ポリエステルは、非晶質ポリエステルである。
【0077】
下記は、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルを生成する幾つかの最も好ましい方法である。
【0078】
本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルは、好ましくは、ジアンヒドロヘキシトール、好ましくはイソソルビド、並びに、場合によりグリセロール及び/又はソルビトールなどの1つ又は複数の他のポリオールによる再生利用ポリエチレンテレフタレートのエステル交換(解糖とも呼ばれる)によって得られる。そのような他のポリオールの別の例は、1,3−プロパンジオールである。
【0079】
このようにして得られたヒドロキシル官能性プレポリマーに、直鎖ジカルボン酸、好ましくはコハク酸及び場合により1つ又は複数の他のポリ酸を添加する。重縮合を、最初に大気圧、次に減圧下で、正しいポリエステル特性が得られるまで続ける。
【0080】
(再生利用)ポリエチレンテレフタレートから出発する場合、ジアンヒドロヘキシトールを、撹拌機、不活性ガス(例えば、窒素)入口、熱電対、水冷式凝縮器に連結した蒸留カラム、水分離器及び真空連結管を備えた従来の反応器に、別のポリオール、好ましくはグリセロールと一緒に入れ、160℃に加熱する。好ましくは、n−ブチルスズトリオクトエート又はテトラ−n−ブチルチタネートなどのエステル交換触媒も存在する。
【0081】
160℃になると、(再生利用)ポリエチレンテレフタレートを撹拌下でゆっくりと添加し、その間、温度を230℃に上げる。230℃になり、反応器の全ての内容物が水相になると、撹拌を窒素雰囲気下で更に3時間続ける。必要であれば、ヒドロキシル官能性プレポリマーにおけるエチレングリコール含有量を低減するために、ここで真空ステップを、想定されるヒドロキシル価が得られるまで適用することができる。次に反応器の内容物を160℃〜200℃の温度に冷却し、直鎖ジカルボン酸、好ましくはコハク酸を、場合により1つ又は複数の他のポリ酸と共に加える。n−ブチルスズトリオクトエートなどの縮合触媒を添加することができる。反応器の内容物を再び230℃に加熱する。次に反応器の内容物を、大気圧でN(窒素)雰囲気下、230℃で更に2時間撹拌する。次に真空を適用して、エステル化の程度、続いて反応の過程に形成された水の量及び得られたポリエステルの特性、例えばヒドロキシル価、酸価、分子量又は粘度を決定する。
【0082】
ポリエステル化の間又は終了時に、場合により色安定剤、例えばIRGANOX(登録商標)1010(Ciba)などのフェノール系酸化防止剤又はトリブチルホスファイトなどのホスホナイト−及びホスファイト型安定剤を、反応物の0〜1重量%の量で添加することができる。本発明の(熱硬化性)ヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルに、まだ溶融状態である間に、場合により架橋触媒を添加することができる。これらの任意の触媒は、硬化の際に熱硬化性成分の架橋を加速するために添加される。そのような触媒の例には、とりわけ、アミン(例えば、2−フェニルイミダゾリン)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)、アンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド若しくはテトラプロピルアンモニウムクロリド)、ホスホニウム塩(例えば、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラプロピルホスホニウムクロリド)、スズ触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート)、ビスマス触媒(例えば、ビスマスネオデカノエート)又は亜鉛触媒(例えば、亜鉛オクトエート)が含まれる。そうでなければ、例えばUS5,134,239若しくはWO0137991に記載されたものなどのブロック若しくは潜触媒(latent catalysts)、又は、例えばUS6,274,673若しくはEP1,348,742に記載されたものなどの封入触媒(encapsulated catalysts)を、導入することができる。これらの触媒は、好ましくは、ポリエステルの重量に対して0〜5%の量で使用される。
【0083】
本発明の調製方法(上記の実施形態のいずれか)に使用されるジアンヒドロヘキシトール、直鎖ジカルボン酸、他のポリ酸及び/又は他のポリオールを、再生可能な供給源から得ることができる。
【0084】
本発明の実施形態において、本発明のポリエステルは、再生利用ポリエチレンテレフタレート及び/又は再生利用ポリエチレンイソフタレートを包含する(含む)反応物から、並びに1つ又は複数のポリオール及び/又はポリ酸から調製され、ここで少なくとも1つのポリオール及び/又はポリ酸は、再生可能な供給源から得られる。好ましくは、使用される全てのポリオール及び/又はポリ酸が再生可能な供給源から得られる。
【0085】
本発明の特定の実施形態において、本発明のポリエステルは、再生利用ポリエチレンテレフタレートを包含する(含む)反応物から、並びに1つ又は複数のポリオール及び/又はポリ酸から調製され、ここで少なくとも1つのポリオール及び/又はポリ酸は、再生可能な供給源から得られる。好ましくは、使用される全てのポリオール及び/又はポリ酸が再生可能な供給源から得られる。
【0086】
再生可能な供給源から得られるポリオール及び/又はポリ酸は、好ましくは、植物油、デンプン、セルロース/パルプ、糖、天然繊維及び/又は他の植物性原材料などのバイオ系供給原料から得られる。
【0087】
本発明のヒドロキシル官能性及び/又はカルボキシル官能性ポリエステルを、熱硬化性被覆組成物及び/又は放射線硬化性被覆組成物に使用することができる。熱硬化性被覆組成物は、粉末被覆組成物又は液体被覆組成物でありうる。本発明の液体被覆組成物は、水性又は溶媒性でありうる。本発明の態様は、そのような被覆組成物に関する。
【0088】
本発明の好ましい熱硬化性被覆組成物は、本発明の少なくとも1つのヒドロキシル官能性及び/又は少なくとも1つのカルボキシル官能性ポリエステルを、ポリエステルの官能基と反応性がある官能基を有する架橋剤と共に含む。使用される硬化剤の種類に応じて、酸触媒の存在が望ましい場合がある。
【0089】
適用し、室温(例えば、25℃)から200℃の温度で硬化すると、本発明の熱硬化性被覆組成物は、有利には、優れた流動性及び際立つ柔軟性を示す被覆をもたらす。粉末被覆では、硬化温度は、多くの場合に100℃〜200℃である。
【0090】
液体被覆組成物において、典型的にはポリエステルポリオールが使用される。溶媒性被覆組成物が考慮される場合、使用されるポリエステル溶液は、好ましくは、少なくとも60%、有利には少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%の固形分の質量分率(DIN EN ISO 3251に従って決定)によって特徴付けられる。好ましくは、固形分の質量分率は、99%を越えない。
【0091】
ポリエステル溶液は、好ましくは、50〜35000mPa.sの動力学粘度(23℃でDIN EN ISO 3219に従う)によって特徴付けられる。好ましくは、粘度は、少なくとも500mPa.s、より好ましくは少なくとも1000mPa.s、最も好ましくは少なくとも1500mPa.sである。好ましくは、粘度は、最大で30000mPa.s、より好ましくは最大で25000mPa.s、最も好ましくは最大で20000mPa.sである。
【0092】
好ましくは、本発明に使用されるポリエステルは、10〜310mgKOH/g、より好ましくは10〜300mgKOH/gの固体樹脂におけるヒドロキシル(OH)価(DIN EN ISO 4629に従う)を有する。好ましくは、OH価は、少なくとも50mgKOH/g、より好ましくは少なくとも80mgKOH/g、最も好ましくは少なくとも100mgKOH/gである。好ましくは、OH価は最大で250mgKOH/gである。
【0093】
液体被覆組成物に使用されるポリエステルポリオールは、典型的には、低モル質量ポリエステルポリオールである。使用される低モル質量ポリエステルポリオールは、例えばイソシアネート化合物又はオキシラン基を含む化合物との反応により化学的又は物理的に改質されうる。他の可能な改質には、低モル質量尿素誘導体の組み込みが含まれる。ポリエステルポリオールは、US6,258,897、EP0776920及びEP0896991(これらの内容は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどの(グラフトされた)アクリレートポリマーの基礎でもありうる。
【0094】
液体被覆組成物において、本発明のポリエステルを部分的にアクリル樹脂に取り替えることができる。
【0095】
したがって、液体被覆組成物は、少なくとも1つのアクリル樹脂と少なくとも1つのポリエステル樹脂を、4:1〜2:1、好ましくは3.5:1〜2.5:1、より好ましくは3.2:1〜2.2:1、最も好ましくは3:1〜2.2:1のポリエステル樹脂:アクリル樹脂の比で含む。
【0096】
好ましくは、本発明の方法に使用される液体被覆組成物は、少なくとも1つの硬化剤を更に含む。適切な硬化剤は当該技術においてよく知られている。
【0097】
可能な硬化剤(又は架橋剤)には、(ブロック化又は非ブロック化)ポリイソシアネート、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボン酸及びこれらの無水物が含まれる(例えば、US6,258,897を参照すること)。非ブロック化形態のポリイソシアネートを、穏和な温度又は室温での硬化に使用することができる。高温での硬化では、ブロック化ポリイソシアネート、またポリカルボン酸及びこれらの無水物が、追加的に適している。
【0098】
アミノ樹脂が好ましい硬化剤(又はキュアリング剤)であり、とりわけ尿素樹脂、メラミン樹脂及び/又はベンゾグアナミン樹脂である。これらは、それぞれエーテル化された尿素−、メラミン−又はベンゾ−グアナミン−ホルムアルデヒド縮合物である。特に好ましいものは、メラミン樹脂であり、特にヘキサメトキシメチルメラミン樹脂などの高固形分メチル化メラミン樹脂である。
【0099】
この文脈における「高固形分」は、少なくとも70%、特に少なくとも75%、好ましくは少なくとも95%の固形分の質量分率を意味する。適切な硬化剤は、例えば、98%を越える固形分の質量分率を有するヘキサメトキシメチルメラミン樹脂である。他の好ましい例には、78%〜82%の範囲の固形分の質量分率を有する高イミノ樹脂が含まれる。
【0100】
好ましくは、アミノ樹脂が硬化剤として使用される場合に、酸触媒が添加される。本発明の実施形態において、使用される液体被覆組成物は、酸触媒を更に含む。
【0101】
完全にアルキル化されたアミノ樹脂は、多くの場合にCYCAT(登録商標)4045などの強酸触媒を必要とし、一方、部分的にアルキル化された高イミノ樹脂は、一般に弱酸触媒のみを必要とする。また、尿素及びグリコールウリル(glycoluril)樹脂は、強酸触媒により良好に反応する。
【0102】
可能な触媒の例には、アミンブロック化p−トルエンスルホン酸(pTSA)、ジメチルピロホスフェート(DMAPP)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)及びジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)が含まれる。好ましい触媒は、ADDITOL(登録商標)VXK6395及びCYCAT(登録商標)4045のようなアミンブロック化p−トルエンスルホン酸である。
【0103】
好ましくは、液体被覆組成物における樹脂(単数又は複数)の質量分率は、10%〜90%である。好ましくは、樹脂の質量分率は、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%である。好ましくは、樹脂の質量分率は、最大で85%、より好ましくは最大で80%である。好ましくは、液体被覆組成物における硬化剤の質量分率は、5%〜70%である。好ましくは、硬化剤の質量分率は、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも12%である。好ましくは、硬化剤の質量分率は、最大で40%、より好ましくは最大で25%である。
【0104】
樹脂(単数又は複数)と硬化剤(単数又は複数)の質量分率の比は、好ましくは6:1〜1:1、とりわけ5:1〜2:1である。
【0105】
好ましくは、液体被覆組成物における任意の酸触媒の質量分率は、0%〜10%、とりわけ0.1%〜10%である。好ましくは、任意の触媒の質量分率は、少なくとも0.3%である。好ましくは、任意の触媒の質量分率は、8%を越えない。
【0106】
本発明の樹脂、特に、好ましいオリゴエステルポリオール及び/又はアクリル樹脂に適した溶媒の例には、アルキルベンゼンなどの脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、例えばキシレン、トルエン;酢酸エチル、酢酸ブチル、より長いアルコール残基を有する酢酸エステル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、対応するメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル;エチレングリコールモノエチル、モノメチル又はモノブチルエーテルなどのエーテル;グリコール;アルコール;メチルイソアミルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン;ラクトン、並びにそのような溶媒の混合物が含まれる。使用することができる更なる溶媒には、ラクトンとグルコール又はアルコールとの反応生成物が含まれる。特に好ましいものは、ジメチルエステル(DME−1、アジピン酸、グルタル酸及びコハク酸のサントソルジメチルエステル(santosol dimethylester)など)とS−100(HuaLun Chemistriesの芳香族炭化水素溶媒)の混合物である。ブタノールは塗料保存の安定化に役立つ。液体被覆組成物における任意の溶媒の質量分率は、典型的には0%〜50%である。好ましくは、任意の溶媒の質量分率は、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%である。好ましくは、任意の溶媒の質量分率は、最大で40%、より好ましくは最大で30%である。
【0107】
本発明の液体被覆組成物は、顔料及び/又は着色剤及び/又は充填剤を更に含むことができる。充填剤の例には、タルク、雲母、カオリン、白亜、石英粉、スレート粉、多様なシリカ、ケイ酸塩などが含まれる。液体被覆組成物における任意の顔料及び/又は着色剤及び/又は充填剤の質量分率は、好ましくは0%〜50%、より好ましくは2%〜40%である。
【0108】
液体被覆組成物樹脂を、基材に、それに適した任意の被覆方法で適用することができる。その例は、はけ塗り、浸漬、流し塗り、ローラー塗布又はブレード塗布であるが、特に噴霧である。
【0109】
基材を液体被覆組成物で被覆した後、後者を硬化する。硬化、すなわち架橋は、当業者に周知の任意の適切な方法によって達成することができる。本発明の目的において、液体被覆材料は、一般に20℃〜160℃、好ましくは23℃〜140℃の温度範囲内で、例えば5分間から10日間、とりわけ15分間から120分間硬化される。
【0110】
本発明の実施形態において、上記された本発明の方法は、上記されたヒドロキシル官能性ポリエステル又はカルボキシル官能性ポリエステルを、(メタ)アクリロイル官能性ポリエステル、とりわけ(メタ)アクリロイル基末端キャップポリエステルに変換するステップを更に含む。本発明において、用語「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の化合物又は誘導体、及びこれらの混合物を包含すると理解されるべきである。本発明は、更に、本発明のそのような方法により得られる(又は得ることができる)ポリエステルに関する。
【0111】
本発明の態様は、本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルから得られる又は調製されるそのような(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルに関する。本発明の実施形態において、本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルが調製されるヒドロキシル官能性ポリエステル、特にカルボキシル官能性ポリエステルは、ポリエステルの総重量に基づいて、20重量%未満、典型的には5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の脂肪酸構成部分を含む。有利には、本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルが調製されるヒドロキシル官能性、特にカルボキシル官能性ポリエステルは、脂肪酸構成部分を含まず、特に飽和又は不飽和の二量体又は三量体の脂肪酸構成部分を含まず、とりわけ飽和二量体脂肪酸構成部分を含まない。
【0112】
本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステル、とりわけ本発明の(メタ)アクリロイル基末端キャップポリエステルは、場合により1つ又は複数のエチレン性不飽和共硬化剤との組み合わせにより、放射線硬化性及び/又は熱硬化性被覆組成物において特に有用である。
【0113】
本発明のカルボキシル−及びヒドロキシル官能性ポリエステルの(メタ)アクリロイル基末端キャップポリエステルへの変換は、ジイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びポリエステルの末端ヒドロキシル基との反応を介して、又はグリシジル(メタ)アクリレートとポリエステルの末端カルボキシル基との反応によって実現することができる。或いは、(メタ)アクリロイル基末端キャップポリエステルは、(メタ)アクリル酸とポリエステルの末端ヒドロキシル基との反応によって得ることができる。
【0114】
上記の反応においてジイソシアネートとの反応に使用されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−、3−及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから選択される。
【0115】
上記の反応においてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシル基含有ポリエステルとの反応に使用されるジイソシアネートは、好ましくは、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、テトラメチル−キシレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4−ジイソシアナトジフェニルメタンとの技術的な混合物、また上記されたジイソシアネートの高級類似体、2,4−ジイソシアナトトルエン及びこれらと2,6−ジイソシアナトトルエンの技術的な混合物、並びにα,α’−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネート(TMI)の共重合生成物から選択される。
【0116】
ヒドロキシル−又はカルボキシル官能性ポリエステルの(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルへの変換は、バルク方法により又はトルエンなどの溶媒中にて、p−トルエンスルホン酸などの任意の既知の触媒の存在下で行うことができる。
【0117】
本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルを生成する特に好ましい方法が、以下に記載される。
【0118】
前に記載された重縮合が完了すると、反応器において見出される溶融状態の本発明のヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステルを100℃〜160℃の温度に冷まし、フェノチアジンなどのラジカル重合阻害剤又はヒドロキノン型の阻害剤を、例えばポリエステルの重量に対して0.01〜1%の割合で加え、窒素を酸素入口で置換する。
【0119】
本発明のヒドロキシル官能性ポリエステルにより出発する場合、実質的に当量のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加する。全てのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが添加されると、当量のジイソシアネートを混合物にゆっくりと添加する。ヒドロキシル/イソシアネート反応用の触媒を、場合により使用することができる。そのような触媒の例には、架橋反応を加速する上記に提示されたものが含まれる。これらの触媒は、好ましくは、ポリエステルの重量に対して0〜1%の量で使用される。
【0120】
或いは、本発明のヒドロキシル官能性ポリエステルに、実質的に当量の(メタ)アクリル酸を添加する。反応は、好ましくは、反応の完了後にすすぎ落とすことができる、0.1重量%〜5重量%のスルホン酸又は硫酸などの触媒の存在下、約80℃〜約120℃の温度で、10重量%〜50重量%のトルエン、シクロヘキサン及び/又はヘプタンなどの溶媒中で行われる。そうでなければ、本発明のカルボキシル官能性ポリエステルにより出発する場合、実質的に当量のグリシジル(メタ)アクリレートを添加する。酸/エポキシ反応用の触媒を、場合により使用することができる。そのような触媒の例には、架橋反応を加速する上記のものが含まれる。これらの触媒は、好ましくは、ポリエステルの重量に対して0.05〜1%の量で使用される。
【0121】
反応の進行の程度は、典型的には、得られるポリエステルの特性、例えばヒドロキシル価、酸価、不飽和の程度及び/又は遊離グリシジル(メタ)アクリレート若しくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの含有量を決定することによりモニターされる。
【0122】
このようにして得られた本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルは、好ましくは、ポリエステル1グラムあたり0.15〜5.00、通常は0.15〜4.00ミリ当量の二重結合の不飽和の程度により特徴付けられる。好ましくは、不飽和の程度は、ポリエステル1グラムあたり0.35〜3.00、とりわけ0.35〜2.50ミリ当量の二重結合の範囲である。好ましくは、本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルのテレキーレック(telechelic)不飽和の程度は、ポリエステル1グラムあたり0〜5.0、典型的には0〜2.5、より好ましくは0〜2ミリ当量の二重結合の範囲である。
【0123】
粉末被覆における使用に好ましい(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して少なくとも400ダルトン、典型的には少なくとも550ダルトン、好ましくは少なくとも850ダルトン、より好ましくは少なくとも1200ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。
【0124】
放射線硬化性被覆組成物における使用に好ましい(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して少なくとも350ダルトン、典型的には少なくとも400ダルトン、好ましくは少なくとも550ダルトン、より好ましくは少なくとも750ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。
【0125】
本発明のなお別の態様は、少なくとも1つの本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルを含み、好ましくは少なくとも1つのエチレン性不飽和オリゴマー及び/又はモノマーを更に含む被覆組成物に関する。エチレン性不飽和オリゴマーは、好ましくは、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーである。多官能性とは、アクリレート及び/又はメタクリレート基から選択される少なくとも2つの不飽和基を有するオリゴマーを示すことが意図される。
【0126】
被覆組成物は、放射線硬化性被覆組成物又は代替的には熱硬化性被覆組成物でありうる。
【0127】
このようにして多様な種類の被覆組成物を、本発明のポリエステルにより調製することができる。被覆組成物は、上記された少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリエステル及び/又は(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルを含む、任意の種類の熱硬化性及び/又は放射線硬化性組成物でありうる。熱硬化性被覆組成物、とりわけ熱硬化性粉末被覆組成物は、1つの特定の例にすぎない。
【0128】
有利には、本発明の熱硬化性粉末被覆組成物に存在するヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステル、特にカルボキシル官能性ポリエステルは、ポリエステルの総重量に基づいて、20重量%未満、典型的には5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の脂肪酸構成部分を含む。
【0129】
有利には、本発明の粉末被覆組成物に使用されるヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステル、特にカルボキシル官能性ポリエステルは、脂肪酸構成部分を含まず、特に飽和又は不飽和の二量体又は三量体の脂肪酸構成部分を含まず、とりわけ飽和二量体脂肪酸構成部分を含まない。
【0130】
本発明の熱硬化性粉末被覆組成物は、有利には半結晶質ポリエステルを実質的に含まない。典型的には、本発明の熱硬化性粉末被覆組成物は、10重量%未満、一般に5重量%未満の半結晶質ポリエステルを含む。有利には、本発明の熱硬化性粉末被覆組成物は、半結晶質ポリエステルを含まない。
【0131】
また本発明において提供されるものは、少なくとも1つの本発明のポリエステルを含むポリエステル樹脂である。ここでも、ポリエステルは上記されたポリエステル、すなわち上記されたヒドロキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリエステル及び/又は(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルのいずれかであることができる。
【0132】
本発明の特定の実施形態において、本発明のヒドロキシル官能性、カルボキシル官能性及び/又は(メタ)アクリロイル官能性ポリエステル樹脂は、場合により、0〜10重量%のWO2009/095460においてクレームされているアクリルコポリマーを含む。好ましくは、このアクリルコポリマーは、ポリエステルに基づいて少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%の量で添加される。好ましくは、このアクリルコポリマーは、ポリエステルに基づいて最大で5重量%、より好ましくは最大で3重量%の量で添加される。
【0133】
アクリルコポリマーは、典型的には、合成の間又は合成の終了時、排出の前又は間に溶融段階のうちに本発明のポリエステルに添加される。熱硬化性被覆組成物、特に熱硬化性粉末被覆組成物は、本発明の1つの態様にすぎない。
【0134】
熱硬化性被覆組成物に使用される場合、本発明のポリエステルは、有利には、少なくとも1つの架橋剤と配合され、これによって被覆配合物の結合剤を構成する。放射線硬化性である場合、場合により、更に記載されるエチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーなどの1つ又は複数の共硬化剤が(熱硬化性)被覆組成物に存在することができる。
【0135】
本発明の実施形態は、少なくとも1つの本発明のポリエステルを含み、ポリエステルの官能基と反応することができる少なくとも1つの架橋剤を更に含む熱硬化性被覆組成物に関する。とりわけ、熱硬化性被覆組成物は、少なくとも1つの本発明のヒドロキシル官能性ポリエステル及び/又は少なくとも1つの本発明のカルボキシル官能性ポリエステル及び/又は少なくとも1つの本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルを含む。
【0136】
本発明のポリエステルと組み合わせることができる架橋剤は、好ましくは、ポリエポキシ化合物、β−ヒドロキシアルキルアミド含有化合物又はポリイソシアネート化合物及びこれらの混合物から選択される。
【0137】
好ましいポリエポキシ化合物は、室温で固体であり、分子1つあたり少なくとも2つのエポキシ基を含有する。Araldite(登録商標)PT810の名称で販売されているものなどのトリグリシジルイソシアヌレート、Araldite(登録商標)PT910及びAraldite(登録商標)PT912の名称で市販されているものなどのジグリシジルテレフタレートとトリグリシジルトリメリテートのブレンド、並びにAraldite(登録商標)GT7004又はDER(登録商標)692の名称で市販されているものなどのビスフェノールA系エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0138】
WO91/01748に記載されている、グリシジル(メタ)アクリレート、少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリルモノマー、及び場合により、アルキル(メタ)アクリルモノマー又はグリシジル(メタ)アクリレートモノマーと異なる1つ又は複数のエチレン性単不飽和モノマーから得られる、グリシジル基を含有するアクリルコポリマーを使用することもできる。
【0139】
少なくとも1つ、好ましくは2つのビス(β−ヒドロキシアルキル)アミド基を含有するβ−ヒドロキシアルキルアミドが特に好ましい。そのような化合物は、例えばUS−A−4727111に記載されている。
【0140】
ポリイソシアネート架橋化合物の例には、Vestagon(登録商標)B1530、Ruco(登録商標)NI−2及びCargill(登録商標)2400として市販されているε−カプロラクタムでブロックされたイソホロンジイソシアネート、又はCargill(登録商標)2450として市販されているε−カプロラクタムでブロックされたトルエン−2,4−ジイソシアネート、並びにフェノールブロック化ヘキサメチレンジイソシアネートに基づいたものが含まれる。
【0141】
用いることができる別の部類のブロック化ポリイソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネートの1,3−ジアゼチジン−2,4−ジオン二量体とジオールの付加物であり、ここで、付加物の形成におけるNCOのOH基に対する比は、約1:0.5〜1:0.9であり、ジアゼチジンジオンのジオールに対するモル比は、2:1〜6:5であり、付加物における遊離イソシアネート基の含有量は、8重量%以下であり、付加物は、約500〜4000の分子量及び約70〜130℃の融点を有する。そのような付加物は、Vestagon(登録商標)BF1540の名称で市販されている。
【0142】
一方、不飽和ポリエステルに基づいた、特に本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルに基づいた熱硬化性被覆組成物が考慮される場合、アゾビス系開始剤又は過酸化物などの重合開始剤を配合物に添加することができる。これらの開始剤の例には、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ラウリルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、t−ブチルペルオキシ(2−エチルヘキサノエート)、メチルエチルケトンペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドが含まれる。
【0143】
場合により、エチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーから選択される1つ又は複数の共硬化剤も加えることができ、特に適した例が以下に示される。
【0144】
本発明のなお別の態様は、少なくとも1つの本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステル、並び少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性被覆組成物に関する。
【0145】
放射硬化性被覆組成物に使用される場合、本発明の(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルは、有利には、1つ又は複数のエチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーと配合され、これによって被覆配合物の結合剤を構成する。結合剤は、少なくとも1つの光開始剤、及び場合により少なくとも1つの光活性剤を更に含むことができる。光開始剤は、典型的には、本発明の放射線硬化性組成物がUV放射線又は化学線で硬化される場合に添加されるが、例えば電子ビームを使用して硬化される場合には必要ない。
【0146】
本発明により使用することができる光開始剤は、この目的に慣用的に使用されるものから選択される。
【0147】
使用することができる適切な光開始剤は、例えば、ベンゾフェノン及びそのアルキル化又はハロゲン化誘導体、アントラキノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、ベンゾインエーテル、芳香族又は非芳香族アルファジオン、ベンジルジアルキルアセタール、アセトフェノン誘導体及びホスフィンオキシドなどの芳香族カルボニル化合物である。
【0148】
特に適した光開始剤は、例えば、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−、3−又は4−ブロモアセトフェノン、2,3−ペンタンジオン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンズアルデヒド、ベンゾイン、ベンゾフェノン、9,10−ジブロモアントラセン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンジル)ホスフィンオキシドなどである。
【0149】
トリブチルアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、シクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、トリベンジルアミン、又は、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミンなどの第二級アミンとトリメチロールプロパンのジアクリレート、1,6−ジヘキサンジオールなどのポリオールポリアクリレートとの付加物などのアミノアクリレート等の光活性剤を使用することが場合により有利でありうる。
【0150】
本発明の放射線硬化性被覆組成物は、結合剤の100重量部あたり0〜15部、好ましくは0.5〜8部の光開始剤を含有することができる。本発明の放射線硬化性被覆組成物は、有利には、20重量%まで、好ましくは10%までのエチレン性不飽和モノマー及び/又はエチレン性不飽和オリゴマーを含み、これらは、好ましくは、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート及びトリメタクリレート、エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル)とアクリル酸又はメタクリル酸との反応により形成されるエポキシアクリレート及びメタクリレート、有機ジ−又はポリイソシアネートとヒドロキシアルキルアクリレート又はヒドロキシアルキルメタクリレート及び場合によりモノ−及び/又はポリヒドロキシル化アルコール(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとトルエンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートとの反応生成物)との反応により形成されるウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレート、例えば(メタ)アクリル酸と、n−ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートなどのアクリルモノマーの共重合により得られるグリシジル基を含有するコポリマーとの反応生成物などのアクリルアクリレート又はアクリルメタクリレートから選択される。
【0151】
本発明の放射線硬化性組成物は、有利には、50重量%まで、好ましくは30重量%まで、より好ましくは10重量%までのエチレン性不飽和(水素化)ポリフェノキシ及び/又はアクリルコポリマー及び/又は半結晶質ポリエステル及び/又はポリエステルアミド及び/又はポリウレタンを含む。
【0152】
使用することができる適切な希釈モノマーの例には、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレートモノ(メタ)アクリレート、2−(−2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオデカン酸グリシジルエステル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETIA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、フェニルグリシジルエーテルアクリレート、並びにその(メタ)アクリル化、エトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体(例えば(メタ)アクリル化、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ネオペンチルグリコール及び/又はペンタエリトリトール)が含まれる。
【0153】
本発明のなお更なる態様は、熱及び放射線により硬化することができる被覆組成物に関する。二重硬化の適用には、熱−及び放射線硬化性被覆配合物の両方の原則の組み合わせを導入することができる。
【0154】
本発明の被覆組成物は、Rheocin R(Ashland)、AC540A(Honeywell)、Disparlon PL−525(Kusumoto)などのレオロジー剤、Resiflow PV5(Worlee)、Modaflow(Cytec Surface Specialties)、Acronal 4F(BASF)などの流れ調整剤、Solplus D510(Lubrizol)又はDisperbyk−180(BYK)などの顔料分散剤、WO2009/095460においてクレームされているものなどの均展剤及びベンゾイン(BASF)などの脱泡剤が含まれる追加の物質を更に含むことができる。
【0155】
本発明の特定の実施形態は、熱硬化性又は放射線硬化性粉末被覆組成物、特に熱硬化性粉末被覆組成物に関する。被覆組成物が粉末被覆組成物である場合、結合剤は、粉末塗料及びワニスの製造に従来使用されている多様な追加の物質を更に含むことができる。その例は、Additol P950(Cytec Surface Specialties)などのトライボ添加剤、Tinuvin 900(Ciba)などのUV光線吸収剤、Tinuvin 144(Ciba)により表されるヒンダードアミン光安定剤、Tinuvin 312及び1130(Ciba)などの他の安定剤、Irganox 1010(Ciba)などの酸化防止剤、及びホスホナイト又はホスファイト型の安定剤である。
【0156】
これらの添加剤の大部分又は全てが、一般に、それらが調製されると粉末被覆配合物に添加されるが、それにもかかわらず、これらを、まだ溶融段階のとき合成の間もしくは終了時に、又は反応器から出ている間にポリエステルに添加することができる
【0157】
着色系のみならずクリアラッカーの両方を調製することができる。
【0158】
本発明の被覆組成物、特に粉末被覆組成物には、多様な染料及び顔料を利用することができる。有用な顔料及び染料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛などの金属酸化物、金属水酸化物、金属粉末、硫化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩、カーボンブラック、タルク、白土、バライト、紺青、鉛青、有機赤、有機えび茶等である。
【0159】
本発明において更に提供されるものは、本発明の粉末被覆組成物を調製する方法である。本発明の粉末被覆組成物の成分を、ミキサー又はブレンダー(例えば、ドラムミキサー)での乾燥ブレンドにより混合することができる。次にプレミックスを、一般に、BUSS−Ko−Kneterなどの一軸押出機、又はPRISM若しくはAPVなどの二軸押出機により60℃〜100℃の温度で均質化する。次に押出物を、冷めたとき、典型的には粉砕して、10〜150μmの範囲の粒径の粉末にする。本発明の粉末被覆組成物を、静電CORONAガン又はTRIBOガンなどの粉末ガンの使用により基材に付着させることができる。一方、流動層技術などの粉末付着の周知の方法を使用することができる。
【0160】
付着後、粉末を、有利には一般に100℃〜250℃の温度に、例えばおよそ0.5〜30分間加熱し、粒子を流動及び融合させて、平滑で均質の連続被覆を基材表面に形成する。放射線硬化性粉末が考慮される場合、溶融状態の被覆をUV放射線により又は加速電子ビームの照射により硬化する。二重硬化適用では、硬化被覆を、特に照射による硬化が不完全の領域(隠れた区画)に対して更なる硬化を得るために後加熱(post−heat:ポスト加熱)する。
【0161】
本発明の被覆組成物、特に本発明の粉末被覆組成物を、例えば紙、厚紙、木材、織物、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドなどのプラスチック、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)又は酢酸酪酸セルロースなどのコポリマー、及び、例えば銅、アルミニウム、スチールなどの異なる性質の金属などの最も多様な基材に適用することができる。
【0162】
本発明の粉末被覆組成物から得られる被覆は、優れた流動性及び際立つ柔軟性を示す被覆をもたらした。
【0163】
少なくとも1つの本発明のポリエステルを含む本発明の被覆組成物は、コイル接触及び食物接触用途、特に金属缶、とりわけアルコール飲料を保持するものの内部を被覆するものを含む缶被覆に特に有用であるようなものである。これは、特に粉末被覆組成物に当てはまる。
【0164】
また、本発明の液体被覆組成物は、これらの目的、特にコイル及び缶被覆に極めて適していることが証明された。
【0165】
本発明のポリエステル、特に本発明のヒドロキシル官能性ポリエステルを、ポリウレタンポリマーなどのエチレン性不飽和ポリマーの調製に使用することもできる。好ましいものは、水分散性ポリウレタンポリマーである。
【0166】
通常、そのような水分散性ポリウレタンポリマーは、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーから調製される。
【0167】
このイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーは、典型的には、少なくとも、
(i)モル過剰量のポリイソシアネートを、
(ii)本発明のヒドロキシル末端ポリエステル;
(iii)場合により、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含有する(ii)と異なる有機化合物;及び
(iv)プレポリマーを水性媒質において分散性にする親水性基を含有するイソシアネート反応性化合物と、直接に、又は中和剤と反応させて塩をもたらした後に反応させることによって形成される。
【0168】
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの調製において本発明により使用されるポリイソシアネート(i)は、当該分野において周知の脂肪族、脂環式又は芳香族ポリイソシアネートであってよい。ジイソシアネート又はその付加物が多くの場合に好ましい。使用されるポリイソシアネート(i)の総量は、典型的にはポリウレタンポリマーの10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜40重量%の範囲である。
【0169】
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの調製に使用され、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含有し、場合により存在する有機化合物(iii)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリエステルアミドポリオール又はポリチオエーテルポリオールでありうる。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールが好ましい。好ましいものは、400〜5,000の範囲内の数平均分子量を有する化合物である。
【0170】
イソシアネート反応性化合物(iv)には、典型的には、ポリウレタンプレポリマーを水中自己分散性にするのに必要な、スルホン酸塩の基又はカルボン酸塩の基などの分散アニオン基を含有する化合物が含まれる。
【0171】
特に好ましいものは、−COOM及び−SO3M基、好ましくは−COOM基からなる群より選択されるアニオン塩官能基であり、ここで、Mは、アルカリ金属、又はアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム若しくはテトラアルキルホスホニウム基を表す。ポリウレタンポリマーのアニオン塩側基の含有量は、広範囲に変わりうるが、ポリウレタンに必要な程度の水分散性をもたらすのに十分であるべきである。典型的には、ポリウレタンポリマーにおけるこれらのアニオン塩基含有化合物の総量は、ポリウレタンポリマーの1〜25重量%、好ましくは4〜10重量%である。或いは、ポリウレタンプレポリマーを水中分散性にする親水性側基は、好ましくはカルボン酸、スルホン酸及び/又はリン酸基から選択される酸基である。
【0172】
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの調製は、化学量論的過剰量の有機ポリイソシアネート(単数又は複数)(i)を、化合物(ii)〜(iv)と、実質的に無水条件下において50〜120℃、好ましくは70〜95℃の温度で、イソシアネート基とイソシアネート反応性基との反応が実質的に完了するまで反応させる、従来の方法により実施することができる。この反応は、必要であると思われる場合、プレポリマーの粘度を低減するために5〜40重量%、好ましくは10〜20重量%の溶媒の添加により促進することができる。単独又は混合物のいずれかで使用される適切な溶媒は、ケトン、エステル、並びにN,N−ジメチルホルムアミド、N−シクロヘキシルピロリジン及びN−メチルピロリドンなどのアミド等の、イソシアネート基と非反応性であるものである。好ましいものは、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル及び酢酸エチルなどの比較的低沸点のケトン及びエステルである。
【0173】
望ましい場合、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの調製は、アミン及び有機金属化合物などのポリウレタン調製に適した既知の触媒のいずれかの存在下で実施することができる。
【0174】
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの調製の際に、反応物(i)〜(iv)は、一般にイソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する比が約1.1:1〜約4:1、好ましくは約1.3:1〜3:1に相当する割合で使用される。ポリウレタンプレポリマーに存在しうる任意の酸基は、好ましくは、このプレポリマーの水性分散体の調製の前又はそれと同時に、前記基の中和によりアニオン塩基に変換される。ポリウレタンプレポリマーの分散方法は、当業者によく知られており、高剪断速度型混合ヘッドによる急速混合が必要である。好ましくは、ポリウレタンプレポリマーは、激しい撹拌下で水に添加されるか、或いは水を撹拌しながらプレポリマーに入れることができる。
【0175】
適切な中和剤の例には、当該分野において周知の揮発性有機塩基及び/又は非揮発性塩基が含まれる。これらの中和剤の総量は、中和される酸基の総量に従って計算されるべきである。好ましくは、これらは5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の過剰量で使用される。
【0176】
このようにして得られたイソシアネート官能性プレポリマーを、アクリル、メタクリル又はアリル官能基などの少なくとも1つの不飽和官能基、及びイソシアネートと反応することができる少なくとも1つの求核官能基をその分子に有する活性水素含有鎖延長剤(v)及び/又は不飽和化合物(vi)と更に反応させることができる。アクリル官能基がそのより高い反応性のために好ましい。特に適切なものは、ポリオールとのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであり、そこでは、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有し、直鎖又は分岐鎖構造を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのような、少なくとも1つのヒドロキシ官能基が遊離したままである。単不飽和化合物の例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート又はヒドロキシブチルアクリレートなどである。多不飽和化合物の例は、トリメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート及びこれらのポリエトキシル化、ポリプロポキシル化又はブロックコポリマー等価物である。非刺激性の最終組成物をもたらすこれらの生成物が好ましい。このために、単不飽和生成物はもとよりジトリメチロールプロパントリアクリレートも特に適している。
【0177】
アクリル化鎖停止剤(vi)を、ポリウレタンプレポリマーの利用可能なイソシアネート基との反応の際に完全に変換されるように使用することができ、すなわち前記イソシアネート基のヒドロキシル基に対するモル比は、好ましくは1.0〜2.0である。この比が1よりも少ないことが、特定の要件において望ましい場合がある。特に、プレポリマーのイソシアネート基と反応しない非ヒドロキシル化多不飽和化合物を、プレポリマーの重量に基づいて5〜50%、好ましくは20〜30%の過剰量で添加して、照射後のポリマーの架橋密度を向上させることが可能である。
【0178】
水性ポリウレタンポリマー分散体は、イソシアネート−及び/又はエチレン性不飽和基末端ポリウレタンプレポリマーを(場合により、有機溶媒中の溶液の形態で)水性媒質に分散し、場合により、水相において活性水素含有鎖延長剤(v)によりプレポリマーの鎖を延長することによって調製することができる。イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとの反応に使用することができる活性水素含有鎖延長剤(v)は、適切には、80個まで、好ましくは12個までの炭素原子を有する水溶性で脂肪族、脂環式、芳香族若しくは複素環式の第一級若しくは第二級ポリアミン又は水である。後者の場合では、残留遊離イソシアネート基のない完全に反応したポリウレタンプレポリマーが得られる。
【0179】
鎖延長反応は、一般に5℃〜90℃、好ましくは20℃〜50℃の温度で実施される。鎖延長剤が水以外、例えばポリアミンである場合、側鎖酸基の中和剤を含有する水性媒質への分散の前又は後に、プレポリマーに添加することができる。別の実施形態によると、プレポリマーを、有機溶媒に溶解している間に鎖を延長してポリウレタンポリマーを形成し、続いて水を、水が連続相になるまでポリマー溶液に加え、その後に蒸留により溶媒を除去して、ポリウレタンポリマーの純粋な水性分散体を形成することができる。局所アミン濃度勾配は、鎖延長に使用されるポリアミンの水溶液を予め形成し、この溶液をポリウレタンプレポリマー分散体にゆっくりと加えることによって好ましく回避される。
【0180】
本発明の態様は、エチレン性不飽和ポリマー、特に上記に記載された水分散性ポリウレタンに関する。
【0181】
本発明のなお別の態様は、少なくとも1つのエチレン性不飽和ポリマー、特に少なくとも1つの本発明の水分散性ポリウレタンを含む放射線硬化性組成物、とりわけ放射線硬化性水性組成物に関する。そのようなポリマーを含む被覆組成物は、良好な柔軟性、並びにしみ抵抗性及び耐溶剤性を示す。
【0182】
放射線硬化性液体被覆組成物が考慮される場合、溶媒なし、溶媒系、又は水分散性であるかにかかわらず、当該分野において周知の1つ又は複数の光開始剤を加えることができる。光開始剤は、好ましくは0.1〜10%の濃度で使用される。
【0183】
本発明の放射線硬化性組成物は、ヒドロキノン、トルハイドロキノン、モノメチルエーテルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、ジ−tert−ブチルヒドロキノン及び/又はフェノチアジンなどの阻害剤を含有することもできる。使用される阻害剤の量は、好ましくは0〜0.5重量%である。
【0184】
放射線硬化性組成物を、工業目的又は家庭用の目的において、浸漬塗布、噴霧塗布、静電塗布、フィルム塗布、流し塗り、真空適用、ロール塗布、ナイフ塗布又は彫刻シリンダーなどを含む任意の従来の方法により、木材、織地、紙、プラスチック、繊維板、厚紙、ガラス、ガラス繊維、セラミック、コンクリート、皮革、金属などを含む任意の基材に適用することができる。
【0185】
基材への硬化性樹脂の適用は、任意の適切な温度、通常は10〜80℃、好ましくは室温で行うことができる。
【0186】
基材を放射線硬化性組成物で被覆した後、後者を硬化する。存在する場合、溶媒又は水を硬化過程の前又は間に蒸発させることができる。硬化、すなわち重合は、当業者に周知の任意の適切な方法によって達成することができる。照射硬化は、UV線又はガンマ線、X線若しくは電子ビームなどのイオン化放射線を使用して行うことができる。本発明の方法において、電子ビーム、特にUV放射線が好ましい。加速電子ビームにより本発明の組成物を硬化するのに、光開始剤の使用は必要ない。それは、この種類の放射線が、遊離ラジカルを生成し、硬化が極めて素早いことを確実にするのに十分な量のエネルギーをそれ自体が生成するからである。
【0187】
本発明において更に提供されるものは、本発明の被覆組成物により部分的に又は全体的に被覆される物品である。
【0188】
本発明において更に提供されるものは、被覆組成物により物品を部分的に又は全体的に被覆する方法であって、物品の少なくとも1面に被覆組成物を適用するステップ、続いて適用された被覆組成物を硬化するステップを含む方法である。使用される被覆は粉末被覆組成物であることができ、これは熱硬化性又は放射線硬化性被覆組成物のいずれかであり、とりわけ熱硬化性粉末被覆組成物である。
【0189】
しかし、上記されたように、使用される被覆組成物は熱硬化性又は放射線硬化性液体被覆組成物でもありうる。
【実施例】
【0190】
以下の実施例は、本発明を制限することなく説明する。特に指定されている以外は、記載の全体にわたって及び実施例において記述されている部は、重量部である。
【0191】
例1
ステップ1
215.0部のイソソルビド、19.8部のグリセロールと、1.0部のテトラ−n−ブチルチタネート触媒の混合物を、従来の四首丸底フラスコに入れる。
フラスコの内容物を、窒素下で撹拌しながらおよそ160℃の温度に加熱する。そこで、572.0部の再生利用ポリエチレンテレフタレートを撹拌しながらゆっくりと加え、その間、混合物を230℃の温度に徐々に加熱する。
230℃で3時間後、反応器を160℃に冷却する。
【0192】
ステップ2
245.4部のコハク酸と1.0部のトリブチルホスファイト及び1.0部のブチルスズ酸の混合物を、ステップ1のヒドロキシル官能化プレポリマーに加える。そこで、混合物を230℃に徐々に加熱する。230℃で2時間後、50mmHgの真空を、以下の特性が得られるまで徐々に適用する。
AN=35.2mgKOH/g
OHN=5.5mgKOH/g
Brfld200℃=7380mPa.s
Tg急冷(DSC、20°/分)=56℃
【0193】
ステップ3
230℃で放置したカルボキシル官能性ポリエステルに、5.0部のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドを、窒素下で撹拌しながら加える。反応器を、30分間の混合の後に空にする。
【0194】
例2
ステップ1
例1の同様にして、128.4部のイソソルビド、21.5部のグリセロール、1.0部のテトラ−n−ブチルチタネート及び738.7部の再生利用ポリエチレンテレフタレートの混合物を、230℃の温度で3時間反応させる。次に真空を、70.0部のエチレングリコールを留去するために徐々に適用し、それによって、100mgKOH/gのヒドロキシル価のヒドロキシル官能性プレポリマーを得る。次に、反応混合物を160℃に冷却する。
【0195】
ステップ2
次に、160℃で放置したステップ1のヒドロキシル官能性プレポリマーに、131.9部のコハク酸と1.0部のトリブチルホスファイト及び1.0部のブチルスズ酸を加える。そこで、混合物を230℃に徐々に加熱する。230℃で2時間後、50mmHgの真空を以下の特性が得られるまで徐々に適用する。
AN=53.1mgKOH/g
OHN=5.2mgKOH/g
Brfld200℃=1650mPa.s
Tg急冷(DSC、20°/分)=54℃
【0196】
ステップ3
230℃で放置したカルボキシル官能性ポリエステルに、5.0部のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドを例1のように加える。
【0197】
例3
例1と同様にして、204.8部のイソソルビド、10.7部のグリセロール、1.0部のテトラ−n−ブチルチタネート及び620.2部の再生利用ポリエチレンテレフタレートの混合物を、200mgKOH/gのヒドロキシル価が得られるまで、230℃の温度で3時間反応させる。次に、反応混合物を160℃に冷却する。
【0198】
ステップ2
次に、160℃で放置したステップ1のヒドロキシル官能性プレポリマーに、215.7部のコハク酸と1.0部のトリブチルホスファイト及び1.0部のブチルスズ酸を加える。そこで、混合物を230℃に徐々に加熱する。230℃で2時間後、50mmHgの真空を、以下の特性が得られるまで徐々に適用する。
AN=26.7mgKOH/g
OHN=7.6mgKOH/g
Brfld200℃=8710mPa.s
Tg急冷(DSC、20°/分)=58℃
【0199】
ステップ3
230℃で放置したカルボキシル官能化ポリエステルに、5.0部のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドを例1のように加える。
【0200】
例4
例1と同様にして、210.2部のイソソルビド、15.2部のグリセロール、1.0部のテトラ−n−ブチルチタネート及び650.8部の再生利用ポリエチレンテレフタレートの混合物を、220mgKOH/gのヒドロキシル価が得られるまで、230℃の温度で3時間反応させる。次に、反応混合物を160℃に冷却する。
【0201】
ステップ2
次に、160℃で放置したステップ1のヒドロキシル官能性プレポリマーに、168.0部のコハク酸と1.0部のトリブチルホスファイト及び1.0部のブチルスズ酸を加える。そこで、混合物を230℃に徐々に加熱する。230℃で2時間後、50mmHgの真空を、以下の特性が得られるまで徐々に適用する。
AN=6.0mgKOH/g
OHN=32.5mgKOH/g
Brfld200℃=9300mPa.s
Tg急冷(DSC、20°/分)=58℃
【0202】
ステップ3
200℃で放置したヒドロキシル官能性ポリエステルに、6.7部のジブチルジラウレートを例1のように加える。
【0203】
例5
ステップ1
例1と同様にして、229.1部のイソソルビド、10.2部のグリセロール、1.0部のテトラ−n−ブチルチタネート及び595.3部の再生利用ポリエチレンテレフタレートの混合物を、230℃の温度で3時間反応させる。次に、反応混合物を160℃に冷却する。
【0204】
ステップ2
次に、160℃で放置したステップ1のヒドロキシル官能性プレポリマーに、101.9部のコハク酸と1.0部のトリブチルホスファイト及び1.0部のブチルスズ酸を加える。そこで、混合物を230℃に徐々に加熱する。230℃で2時間後、50mmHgの真空を、以下の特性が得られるまで徐々に適用する。
AN=40mgKOH/g
OHN=3mgKOH/g
Brfld200℃=7200mPa.s
【0205】
ステップ3
カルボキシル官能性ポリエステルを150℃に冷却し、0.9部のジ−t−ブチルヒドロキノンと4.9部のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドを加える。続いて、71.7部のグリシジルメタクリレートを、酸素下で撹拌しながらゆっくりと(30分間)加える。添加が終了した1時間後、以下の特徴の(メタ)アクリロイル不飽和ポリエステルを得る。
AN=1mgKOH/g
OHN=39mgKOH/g
不飽和=0.6meq/g
Brfld200℃=5400mPa.s
Tg急冷(DSC、20°/分)=57℃
【0206】
例6〜9
例1〜3のポリエステルをAraldite GT7004と配合し、これにより結合剤を構成する。
例4のポリエステルをVestagon B1530と配合し、これによって結合剤を構成し、その結果として下記に示したような白色粉末配合物(1)にする。
結合剤 690.6部
Kronos 2310 296.0部
Modaflow P6000 9.9部
ベンゾイン 3.5部
【0207】
例10
例1のポリエステルをPrimid XL552と配合し、これによって結合剤を構成し、その結果として下記に示したような褐色粉末配合物(2)にする。
結合剤 783.3部
Bayferrox 130 44.4部
Bayferrox 3950 138.0部
カーボンブラックFW2 10.9部
Modaflow P6000 9.9部
ベンゾイン 3.5部
【0208】
例11
例5のポリエステルを配合し、その結果として下記に示したような粉末配合物(3)にする。
例5のポリエステル 750.0部
Kronos 2310 250.0部
Irgacure 2959 12.5部
Irgacure 819 12.5部
Modaflow P6000 10.0部
【0209】
粉末は、最初に異なる成分を乾燥ブレンドし、次にPRISM 16mm L/D 15/1二軸押出機を使用して押出温度85℃で溶融物に均質化することによって調製する。押出物をAlpine 100UPZ(Alpine社)の粉砕機により粉砕し、続いて10〜110μmのサイズの粒子を得るために篩にかける。
【0210】
このようにして調製された粉末を、約80μmの硬化被覆の膜厚が得られるようにGEMA−Volstatic PCG 1スプレーガンを電圧60kVで使用する静電塗装により、厚さ0.8mmの冷間圧延スチールに付着させる。
【0211】
例6〜10
次に、例1〜4のポリエステルから得られる被覆を含むパネルを換気オーブンに移し、そこで例6〜10の被覆のために、硬化を180℃の温度で15分間進める。
【0212】
例11
次に、例5のポリエステルから得た被覆を含むパネルを、中波長赤外/対流式オーブン(Triab)において140℃でおよそ3分間の溶融ステップに付し、続いて、160W/cmのGalliumドープ及び/又は160W/cmの中圧水銀蒸気UVバルブ(Fusion UV Systems Ltd.)により、総UV線量の4000mJ/cmで放出された紫外線の照射に付す。
【0213】
このようにして得られた硬化被覆を、従来の試験に付す。得られた結果を、下記の表において報告する。
欄1:配合物/被覆の例の番号
欄2:ポリエステルの例の番号
欄3:ポリエステル/硬化剤の比
欄4:ASTM D523に従って測定した60°光沢を示す
欄5:ASTM D2794による直接衝撃強さ(DI)及び裏面衝撃強さ(RI)を示す。被覆に亀裂を生じない最高衝撃をkg.cmで記録する。
欄6:ISO1520によるエリクセンの低速押し込み(embossing)を示す。被覆に亀裂を生じない最高圧入をmmで記録する
欄7:硬化膜表面の外観に悪影響を与えない、MEKを含浸させたコットンパッドによる二重摩擦運動(twofold rubbing movements)(前後運動)の数に対応するMEKに対する耐性
【表1】

【0214】
上記の表から明らかなように、本発明のポリエステルを含む粉末被覆は、T曲げ試験により確認された際立つ柔軟性(DI/RI)を示す。例1〜5のポリエステルから得た被覆は、全て0−T曲げ試験に適合する。
【0215】
例10の被覆も、ASTM G53−88(非金属材料の曝露のための蛍光UV/凝縮型の光及び水曝露装置を操作する標準的実施)に従ってQ−UV加速耐候試験機(Q−Panel Co)に付した。
【0216】
Q−UVに使用したパネルは、黄色クロメート化アルミニウムのものである。ここで、パネルを、蛍光UV−Bランプ(313nm、I=0.75W/m/nm)により模擬された日光の断続的な凝縮効果(40℃で4時間)、及び有害な作用(50℃で4時間)に付す。QUV−Bの200時間後、60°光沢値は、初期値の50%に低減する。
【0217】
例12〜13
ポリエステル−ポリオールを以下のように合成する。ジエチレングルコール(DEG)、イソソルビド(isoS)、及びエステル化触媒(0.15〜0.25重量%のFascat 4102に相当する300〜500ppmのSn)の混合物を、撹拌機、水冷式凝縮器に連結した蒸留カラム、窒素入口及び温度調節器に取り付けた熱電対を備えた従来の四首丸底フラスコの中で160℃に加熱する。
【0218】
撹拌している間、再生利用ポリエチレンテレフタレート(PET)をゆっくりと加え、その間に混合物を230℃に加熱する。
【0219】
全てのPETが添加されたとき、反応混合物を230℃で2時間保持する。次に反応混合物を約150℃に冷却し、コハク酸(SA)及びイソフタル酸(iPA)を加える。全てのコハク酸及びイソフタル酸が添加されたとき、反応混合物を再び230℃に加熱する。
【0220】
230℃で2時間後、真空を50mmHgまで徐々に適用し、正しい樹脂の特徴(ヒドロキシル価及び酸価)が得られるまで維持する。
【0221】
上記の手順に従って、例12及び例13のポリエステル−ポリオールを調製した。
【表2】

【0222】
例14
886.08部の例13のポリエステル、151.90部のアクリル酸、23.1部のメタンスルホン酸(70%)、0.8部のメチルエーテルヒドロキノン及び521.0部のトルエンを、撹拌機、温度調節器に取り付けた熱電対、ガス入口管、真空への連結及び共沸蒸留カラムを備えた二重壁ガラス反応器において混合し、約120℃の温度に加熱する。エステル化を水が蒸発されなくなるまで続ける。次に混合物を60℃に冷却し、別の521.0部のトルエンを加える。次に混合物を、16重量%のNaSO/水の反応混合物の溶液の10重量%で3回洗浄し、共沸蒸留により乾燥する。続いて、トルエンを約30mmHgの真空下で蒸留し、反応生成物を濾過する。このようにして得たアクリレート末端キャップポリエステルに、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレートを、最終混合物が80重量%のアクリレート末端キャップポリエステル及び20重量%のトリ(プロピレングリコール)ジアクリレートからなるような量で加える。
【0223】
例15
211.8部の例12のポリエステルを、直径25mmの分散ディスクを1200rpmで用いるDispermatを使用して、141.2部のメトキシプロピルアセテートに室温で希釈する。次に、297.1部のKronos 2190(TiO顔料)を、1250〜1800rpmで混合しながら、ポリエステル溶液に5分間かけて徐々に加える。顔料の添加が完了したとき、Grindometerで測定して4μm未満の顔料凝集塊サイズが得られるまで、混合速度を5750rpmに10分間で増大させる。
【0224】
続いて、このようにして得られた顔料ペーストに、手作業で撹拌しながら、116.7部の、70.0部の例12のポリエステルと46.7部のメトキシプロピルアセテートからなる溶液、94.4部のCymel 303LF(Cytecから入手される高度にメチル化したメラミン架橋剤)、4.2部のCycat 4040(Cytecから入手されるイソプロパノール中の40重量%のp−トルエンスルホン酸に基づいた架橋触媒)、130部のメトキシプロピルアセテート及び4.4部のAdditol XL122N(Cytecから入手される流れ、湿潤及び滑り促進剤)を加える。
【0225】
このようにして得られた塗料配合物を、20μmの篩で篩にかけた後、60μmの尺度のブロックアプリケーターを使用して0.21mm厚の下塗りアルミニウムパネルに適用する。45秒間の室温での予備乾燥後、パネルを予備加熱ベンチに移し、そこで硬化を240℃(金属温度)で30秒間進行させる。次に、240℃で30秒間放置した後、パネルを水道水ですすぐことにより急冷し、乾燥蒸発する。
【0226】
被覆厚の15μmでは、Knoop膜硬度の19.5kg/mm、メチルエチルケトン耐性の200回二重摩擦、20°での膜光沢(ASTM D523)が76%の光沢外観、エリクセンの低速押し込み(ISO1520)の7.2mm、及び曲げ試験(ASTM D4145)の3〜4が測定される。
【0227】
本発明の例12のポリエステルに基づいた溶媒系液体配合物において観察される性能は、現在市販されている典型的な溶媒系コイル被覆配合物に匹敵する。
【0228】
その他に、例15の配合物により得られる被覆は、アルミニウムパネルに適用されたとき、低温殺菌安定性(pasteurization stable)であること(80℃で30’)、並びにスズパネルに適用されたとき、105℃で30分間及び121℃で30分間滅菌可能(retortable)であることが証明されており、これらは両方とも飲料及び食物それぞれのための缶外側被覆にとって典型的な要件である。
【0229】
例16
例14のアクリレート基含有混合物952.4部を、50重量%のベンゾフェノン及び50重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184)からなる光開始剤ブレンド47.6部と混合する。混合物を、均質のクリアコート配合物を得るために、機械的に15分間撹拌する。
【0230】
次に、例16の放射線硬化性配合物を、20μmのバーコーターを使用してLENETA紙(フォームWA−無地白色図表)に適用し、出力が80W/cmの中圧水銀蒸気ランプからなり、その放射線が半楕円形反射鏡の助けを借りて総線量の265mJ/cmで集中するUV供給源を使用して、30m/分の速度で硬化する。
【0231】
このようにして得られた透明被覆は、水中10%アンモニア溶液に対して、水中50%エタノール溶液に対して及びイソプロパノールに対して際立つ耐性を証明する。その他に、それぞれ出力が80W/cmの中圧水銀蒸気ランプからなり、その放射線が半楕円形反射鏡の助けを借りて総線量の2400mJ/cmで集中する5つの連続UV供給源を使用して、20m/分の速度で硬化した後に得られる、約100μm厚の独立膜は、ヤング率の23.5Mpaにより特徴付けられ、破断点伸びの43.5%を証明し、被覆の高い柔軟性を示している。
【0232】
例17
181.90部の1,3−プロパンジオール、181.9部のイソソルビド及び1.50部のFascat 4102(n−ブチルスズトリオクトエート)を、撹拌機、水冷式凝縮器に連結した蒸留カラム、窒素入口及び温度調節器に取り付けた熱電対を備えた従来の四首丸底フラスコの中で160℃に加熱する。
【0233】
撹拌している間、281.55部の再生利用ポリエチレンテレフタレート(PET)をゆっくりと加え、その間に混合物を230℃に加熱する。
【0234】
全てのPETが添加されたとき、反応混合物を230℃で2時間保持する。次に反応混合物を約150℃に冷却し、218.05部のコハク酸及び83.61部のイソフタル酸を加える。全てのコハク酸及びイソフタル酸が添加されたとき、反応混合物を再び230℃に加熱する。
【0235】
230℃で2時間後、真空を50mmHgまで徐々に適用し、3mgKOH/gの酸価及び165mgKOH/gのヒドロキシル価が得られるまで維持する。
【0236】
次に、このポリエステル−ポリオールを放射線硬化性ポリウレタン分散体の調製に使用する。
【0237】
例18
機械式撹拌機、熱電対、蒸気凝縮器及び滴下漏斗を備えた二重壁ガラス反応器に、190.0部の例17のポリエステル、53.2部のジメチロールプロピオン酸、24.5部のシクロヘキサンジメタノール、332.2部のテトラメチルキシリレンジイソシアネート、 2.3部のIrganox 245、4.6部のTinuvin 328、4.6部のTinuvin 622及び反応触媒として0.6部のアセトン中ジブチルスズラウレート溶液(10%)を投入する。反応混合物を撹拌しながら90℃まで加熱し、縮合過程をイソシアネート含有量が1.67meq/gに達するまで維持する。ポリウレタンプレポリマーを70℃に冷却し、314.9部のペンタエリトリトールトリアクリレート(PETIA)に溶解した0.18部の4−メトキシフェノールを容器に加える。反応混合物を70℃で保持し、末端キャップ過程をイソシアネート含有量が0.42meq/gに達するまで維持する。次に、40.6部のトリエチルアミンを中和剤として温プレポリマーに均質になるまで加える。1722部の水を室温で、激しく混合しながら転相点を超えて反応器に装填する。
【0238】
安定したポリマー分散体が、約5分間の激しい混合の後に得られるが、撹拌は1時間にわたって維持される。生成物を100μmの篩により濾過する。32.9%の乾燥含有量、7.8のpH、54nmの粒径及び<100mg/lの粗粒含有量(grits content)を有する。溶媒は含有しない。
【0239】
分散体を1.5%のIrgacure 500(Cibaにより市販されている光開始剤)と配合する。これらを、白色PVCに適用し、その放射線が半楕円形反射器の助けを借りて、総線量の1100mJ/cm2で集中する80W/cmのUV線により5m/分で硬化する。
【0240】
このようにして得られた被覆は、良好な柔軟性及びしみ抵抗性、並びに50%エタノール溶液に対する及びイソプロパノールに対する際立つ耐性を証明する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部分:
(a)テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、
(b)エチレングリコール、
(c)ジアンヒドロヘキシトール、並びに、
(d)1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸
を含み、
ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して400〜15000ダルトン、好ましくは550〜15000ダルトンの数平均分子量を有する、
ヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性ポリエステル。
【請求項2】
ポリエステルの総重量に基づいて、
(a)10重量%〜80重量%のテレフタル酸及び/又はイソフタル酸である構成部分と、
(b)5重量%〜35重量%のエチレングリコールである構成部分と、
(c)5重量%〜40重量%のジアンヒドロヘキシトールである構成部分と、
(d)5重量%〜40重量%の直鎖ジカルボン酸である構成部分と、
(e)0重量%〜40重量%の1つ又は複数の他のポリオール(e1)及び/又は1つ又は複数の他のポリ酸(e2)である構成部分と
を含む、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】
ジアンヒドロヘキシトールがイソソルビドである、請求項1又は2に記載のポリエステル。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のポリエステルから調製される(メタ)アクリロイル官能性ポリエステル。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリエステルを含む被覆組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の被覆組成物で部分的に又は全体的に被覆された物品。
【請求項7】
ポリエステルを生成する方法であって、
(1)ジアンヒドロヘキシトールによりポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートを解糖するステップ、続いて
(2)必要であれば、1つ又は複数の追加のステップ
を含み、
ヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して400〜15000ダルトン、より好ましくは550〜15000ダルトンの数平均分子量を有するポリエステルを生成する
上記方法。
【請求項8】
ステップ(2)が、以前に得たヒドロキシル官能性ポリエステルの鎖延長及び/又はカルボキシル化のステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記鎖延長及び/又は前記カルボキシル化において、1つ又は複数の直鎖ジカルボン酸を使用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)に使用されるポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンイソフタレートが、前記ポリエチレンテレフタレート及び/又は前記ポリエチレンイソフタレートを含む材料の形態で提供される、請求項7から9までに記載の方法。
【請求項11】
前記材料が再生利用材料である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記再生利用材料が、再生利用ポリエチレンテレフタレートである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジアンヒドロヘキシトールが、バイオ系供給原料から得られるイソソルビドである、請求項7から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
このようにして得られたヒドロキシル官能性ポリエステル又はカルボキシル官能性ポリエステルを、(メタ)アクリロイル官能性ポリエステルに変換するステップを更に含む、請求項7から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(メタ)アクリロイル基末端キャップポリエステルが、ジイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシル官能性ポリエステルの末端ヒドロキシル基との反応により、又は(メタ)アクリル酸とヒドロキシル官能性ポリエステルの末端ヒドロキシル基との反応により得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(メタ)アクリロイル基末端キャップポリエステルが、グリシジル(メタ)アクリレートとカルボキシル官能性ポリエステルの末端カルボキシル基との反応により得られる、請求項14に記載の方法。


【公表番号】特表2013−510917(P2013−510917A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538340(P2012−538340)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067367
【国際公開番号】WO2011/058130
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】