説明

被覆組成物の成分として有用なアスパルテート及びその製造方法

本発明は、新規なアスパルテート、その製造方法、2成分ポリウレタン被覆組成物中のポリイソシアネート反応性成分としてのその使用、及びポリウレタンプレポリマー調製のためのその使用に関する。本発明のアスパルテートは、まず、ジアミン又はポリアミンと不飽和エステルを反応させ、続いて、得られた生成物とマレイミドを反応させることによって製造される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアスパルテート、1級アミン及びマレエートからのその製造方法、2成分ポリウレタン被覆組成物中のポリイソシアネート反応性成分としてのその使用、及びポリウレタンプレポリマー調製のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1種以上のイソシアネート反応性成分と組み合わせたポリイソシアネート成分をバインダーとして含む2成分被覆組成物は既知である。それらは、硬質、弾性、耐摩耗性、溶媒耐性及び耐候性である高品質被膜を製造するのに適している。
【0003】
2成分表面被覆産業において、エステル基を含む2級ポリアミンが使用されるようになった。2級ポリアミンは、低温で被膜を急速に硬化できることから、ラッカーポリイソシアネートと組み合わせて、低い溶媒量の又は溶媒を含まない高固形分被覆組成物におけるバインダーとして特に適している。
【0004】
これらの2級ポリアミンは、ポリアスパルテートであり、例えば米国特許第 5,126,170 号明細書、同第 5,214,086 号、同第 5,236,741 号、同第 5,243,012 号、同第 5,364,955 号、同第 5,412,056 号、同第 5,623,045 号、同第 5,736,604 号、同第 6,183,870 号、同第 6,355,829 号、同第 6,458,293 及び同第 6,482,333 号、並びに欧州特許出願公開第 667,362 号に記載されている。更に、アルジミン基を含有するアスパルテートも既知である(米国特許第 5,489,704 号明細書、同第 5,559,204 号及び同第 5,847,195 号参照)。2級アスパルギン酸アミドエステルも既知である(米国特許第 6,005,062 号参照)。2成分被覆組成物における単独での又は他のイソシアネート反応性成分と組み合わせたイソシアネート反応性成分としてのそれらの使用も、上記の特許に記載されている。
【0005】
これらのポリアスパルテートを製造する方法では、対応する1級ポリアミンを、式:
R1OOC-C(R3)=C(R4)-COOR2
[式中、R1、R2、R3 及び R4 は、同じ又は異なった有機基である。]
に相当するマレエート又はフマレートと反応させ、2級ポリアミンを形成する。立体的効果、構造的効果及び電子的効果により、これらの2級アミノ基は、確実かつ容易な方法で、ポリイソシアネートと混合できるほど十分に低いイソシアネート基に対する反応性を有している。
【0006】
従来技術(Chem. Ber.、1946 年、38 巻、83 号;Houben Weyl、Meth. d. Org. Chemie、11/1 巻、272 号、1957 年;及び Usp. Chimii、1969 年、38 巻、1933 号)において記載されているように、ポリアスパルテートを調製するために使用される反応は、ビニルカルボニル化合物中の活性化 C-C 二重結合への1級アミンの付加である。しかしながら、この反応は、実際の合成工程(例えば 60 ℃で撹拌しながら 24 時間)の進行中に完了しないことが見出された。反応の実際の程度は、1級ポリアミンの種類に依存する。従って、1,6-ヘキサンジアミンについて 1 日後の(遊離未転化マレエート及び塩基触媒の存在下でのマレエートの転位により生じるフマレートの濃度によって測定される)転化率は、約 90〜93 %である。立体障害1級アミノ基を有する脂環式ポリアミン、即ち 4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンについての 1 日後の転化率は、たった 77 %である。完全な又は実質的に完全な転化は、数日後でしか、又は 4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンの場合は数ヶ月後でしか達成されない。
【0007】
典型的な商業的製造では 16 時間反応を行い、この時点で、使用するアミンに依存して、転化は 75 と 95 %の間のある値で完了する。「未完成な」物質は、ドラムに入れられ、反応が完了するまで貯蔵される。この貯蔵は、一般に、2 週間から 6 ヶ月の間のある期間行われる。
【0008】
米国特許第 5,821,326 号明細書は、アスパルテートの調製を促進する触媒としての、ある種の5員環芳香族化合物の使用が記載されている。
【0009】
従来のアスパルテートは、(イソシアネートでの硬化後)更に転位してヒダントイン環構造を形成し得る。このヒダントイン形成は、被膜収縮及び望ましくないアルコール形成を導く場合がある。ヒダントイン形成する傾向が低いアスパルテートの製造も望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式:
【化1】

[式中、X は、1級アミノ基を含み、60〜6,000 の数平均分子量を有し、イソシアネート基に対して反応性であるか又は 100 ℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性である更なる官能基を含んでもよいジアミン又はポリアミンから、1級アミノ基を除去することによって得られた m 価の有機基を表し、
R3 及び R4 は、同じか又は異なっていてもよく、水素、又は 100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し(好ましくは両方とも水素である。)、
R1 及び R2 は、同じか又は異なっていてもよく、100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し(好ましくは C1〜C8 アルキル基、最も好ましくはメチル基又はエチル基である。)、
R5 及び R6 は、同じか又は異なっていてもよく、i)水素、ii)6〜10 個の炭素原子を含む 3 個までのアリール基で置換されていてもよい直鎖又は分枝 C1〜C8 アルキル基、iii)1〜3 個の炭素原子を含む 3 個までのアルキル基で置換されていてもよい C6〜C10 アリール基からなる群から選ばれる基を表すか、又は iv)一緒に6員シクロアルキル基を形成し、前記シクロアルキル基は 1〜3 個の炭素原子を含む 0〜3 個のアルキル基で置換されており、
R7 は、i)水素、ii)6〜10 個の炭素原子を含む 3 個までのアリール基で置換されていてもよい直鎖又は分枝 C1〜C8 アルキル基、iii)1〜3 個の炭素原子を含む 3 個までのアルキル基で置換されていてもよい C6〜C10 アリール基からなる群から選ばれる基を表し、
a 及び b は 1〜5 の整数を表し、a と b の合計は 2〜6 である。]
に相当する新規なアスパルテートを対象としている。
【発明の効果】
【0011】
ポリイソシアネートと組み合わせると、本発明の生成物は、従来技術のアスパルテートより、長いポットライフを有し、硬い被膜を与える。更に、本発明の生成物は、ヒダントイン環形成の傾向が低い。
【0012】
本発明はまた、
A)0〜100 ℃の温度で、溶液中又は溶媒不存在下、
a)式(II):
X[-NH2]m (II)
に相当するジアミン又はポリアミンと
b)式(III):
R1OOC-C(R3)=C(R4)-COOR2 (III)
に相当する化合物
[式中、X、R1、R2、R3 及び R4 は、上記で定義したとおりであり、m は 2〜6 の整数を表す。]
とを、成分 a)中の1級アミノ基対成分 b)中の C=C 二重結合の当量比を約 1.1:1〜約 3.0:1 として反応させる工程、及び
B)得られた生成物をマレイミドと反応させる工程
を含む、上記式のアスパルテートの製造方法にも関する。
【0013】
本発明はまた、バインダーとして、
a)ポリイソシアネート成分、及び
b)b1)式(I)に相当する化合物、
b2)任意に他のイソシアネート反応性成分
を含有するイソシアネート反応性成分
を含み、任意に表面被覆技術において既知の添加剤を含んでもよく、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比が約 0.8:1〜約 2:1 である2成分被覆組成物にも関する。
【0014】
最後に、本発明は、ポリイソシアネートと、任意に1種以上のイソシアネート反応性成分と混合してもよい本発明のアスパルテートとの反応生成物に基づく、ウレア、ウレタン、アロファネート及び/又はビウレット構造を含むプレポリマーにも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で有用なポリアミンは、i)400〜約 10,000、好ましくは 800〜約 6,000 の分子量を有する高分子量アミン、及び ii)400 未満の分子量を有する低分子量アミンを含む。分子量は、数平均分子量(Mn)であり、末端基分析(NH 数)によって決定される。これらのポリアミンの例は、アミノ基が、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香脂肪族化合物及び/又は芳香族化合物の炭素原子に結合しているものである。
【0016】
適当な低分子量ポリアミン出発化合物は、エチレンジアミン、1,2-及び 1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-及び 1,4-ブタンジアミン、1,3-及び 1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミン、2,2,4-及び/又は 2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,4-及び/又は 2,6-ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4'-及び/又は 4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,3'-ジアルキル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン(例えば、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン及び 3,3'-ジエチル-4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン)、1,3-及び/又は 1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(メチルアミノ)-シクロヘキサン、1,8-p-メンタンジアミン、ヒドラジン、セミカルバジドカルボン酸のヒドラジド、ビス-ヒドラジド、ビス-セミカルバジド、フェニレンジアミン、2,4-及び 2,6-トルイレンジアミン、2,3-及び 3,4-トルイレンジアミン、2,4'-及び/又は 4,4'-ジアミノジフェニルメタン、アニリン/ホルムアルデヒド縮合反応によって得られる高官能性ポリフェニレンポリメチレンポリアミン、N,N,N-トリス-(2-アミノエチル)-アミン、グアニジン、メラミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、3,3'-ジアミノ-ベンジジン、ポリオキシプロピレンアミン、ポリオキシエチレンアミン、混合プロピレンオキシド/エチレンオキシドジアミン(例えば、3,3'-[1,2-エタンジイルビス(オキシ)]ビス(1-プロパンアミン))、2,4-ビス-(4'-アミノベンジル)-アニリン及びこれらの混合物を含む。
【0017】
好ましいポリアミンは、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又は IPDA)、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)-メタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチルペンタメチレンジアミン、エチレンジアミン及び 3,3'-[1,2-エタンジイルビス(オキシ)]ビス(1-プロパンアミン) である。
【0018】
適当な高分子量ポリアミンは、アミノ化によって、又はヒドロキシル基のジイソシアネートとの反応及びそれに続く末端イソシアネート基のアミノ基への加水分解によって末端ヒドロキシル基がアミノ基に転化されていることを除き、NCO プレポリマーを調製するために使用されるポリヒドロキシル化合物に相当する。好ましい高分子量ポリアミンは、アミン末端ポリエーテル、例えば Huntsman から入手可能な Jeffamine 樹脂である。
【0019】
アスパルテートの調製に使用するための適当な任意に置換されていてよいマレイン酸エステル又はフマル酸エステルは、式:
R1OOC-C(R3)=C(R4)-COOR2
[式中、R1、R2、R3 及び R4 は、上記で定義したとおりである。]
に相当するものである。その例は、マレイン酸及びフマル酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ-n-ブチルエステル及び混合アルキルエステル、並びに 2 位及び/又は 3 位がメチルによって置換されている対応するマレイン酸エステル又はフマル酸エステルを含む。本発明のアスパルテートを調製するのに適当なマレエート又はフマレートは、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ-n-プロピルマレエート、ジ-イソプロピルマレエート、ジ-n-ブチルマレエート及びジ-2-エチルへキシルマレエート、メチルエチルマレエート、又は対応するフマレートである。
【0020】
本発明のアスパルテートは、まず、成分 Aa)と成分 Ab)とを、0〜100 ℃、好ましくは 20〜80 ℃、より好ましくは 20〜60 ℃の温度で反応させることによって製造される。ここで、成分 a)中の1級アミノ基の成分 b)中の C=C 二重結合当量に対する当量比は、約 1.1:1〜約 3.0:1、好ましくは約 1.1:1〜約 2.0:1 である。反応時間は、ポリアミンの種類、及び所望する反応混合物中の反応体の最大残留濃度によって、約 1〜約 4 時間の間で変化させることができる。次いで、得られた生成物をマレイミドと反応させる。
【0021】
有用なマレイミドは、下記構造:
【化2】

[式中、R5、R6 及び R7 は、上記で定義したとおりである。]
を有するものである。特に有用なマレイミドは、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-アミルマレイミド、N-エチルアミルマレイミド、N-メチルイソアミルマレイミド、N-メチルヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-エチル-2-メチルマレイミド、N-2,3-トリメチルマレイミド、3-メチル-N-フェニルマレイミド、N-フェニル-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド及び 3-フェニル-N-フェニルマレイミドを含む。
【0022】
この第二の反応は、一般に、約 50〜約 100 ℃の温度で、約 1〜約 4 時間にわたる時間で行われる。少なくとも 1 mol のマレイミドが各未反応アミン基に対して存在するように、反応体の比を選択する。過剰マレイミドを除去して 100 %樹脂生成物を得ることができる。又は、過剰マレイミドを残留させて溶媒としてもよい。
【0023】
本発明のアスパルテートの製造方法は、溶液中、又は溶媒の不存在下のいずれで行われてもよい。合成工程後に、例えば粘度を低下させるために溶媒を添加してもよい。適当な溶媒は、いずれかの有機溶媒、好ましくは、表面被覆技術で既知の有機溶媒を含む。その例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、トルエン、キシレン及び高級芳香族溶媒(例えば、Exxon 製 Solvesso 溶媒)を包含する。
【0024】
本発明に従って製造されたアスパルテートは、合成工程の完了後、ポリイソシアネート反応性成分として直接使用され得る。
【0025】
本発明のアスパルテートのある使用は、バインダーとして、
a)ポリイソシアネート成分、及び
b)b1)本発明のアスパルテート、
b2)任意に他の既知であるイソシアネート反応性成分
を含有するイソシアネート反応性成分
を含む2成分被覆組成物から被膜を製造することである。
【0026】
適当なポリイソシアネート成分 a)は既知であり、ポリウレタン化学で知られているポリイソシアネート、例えば低分子量ポリイソシアネート及びこの低分子量ポリイソシアネートから調製されるラッカーポリイソシアネートを含む。表面被覆技術で既知のラッカーポリイソシアネートが好ましい。これらのラッカーポリイソシアネートは、ビウレット基、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、カルボジイミド基及び/又はウレタン基を含み、好ましくは、(環状)脂肪族ポリイソシアネートから調製される。
【0027】
本発明において使用するため、又はラッカーポリイソシアネートを調製するために適当な低分子量ポリイソシアネートは、140〜300 の分子量を有するポリイソシアネートであり、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-及び/又は 2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナト-メチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4-及び/又は 4,4'-ジイソシアナト-ジシクロヘキシル-メタン、1-イソシアナト-1-メチル-3(4)-イソシアナトメチル-シクロヘキサン(IMCI)、2,4-及び/又は 2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート(H6TDI)、2,4-及び/又は 4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン又はこれらの異性体と高級同族体との混合物(アニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化による既知の方法で得ることができる)、2,4- 及び/又は 2,6-ジイソシアナトトルエン、並びにそれらの混合物である。低分子量ポリイソシアネート自体の使用は好ましくない。また、芳香族ポリイソシアネート、例えば 2,4-及び/又は 2,6-ジイソシアナトトルエンから調製されるラッカーポリイソシアネートもそれほど好ましくない。ウレタン基含有ラッカーポリイソシアネートは、好ましくは、62〜300 の分子量を有する低分子量ポリヒドロキシル化合物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール及び/又はトリメチロールプロパンに基づく。
【0028】
成分 a)としての使用に好ましいラッカーポリイソシアネートは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートに基づき、16〜24 重量%の NCO 含有量及び 23 ℃で 10,000 mPa・s、好ましくは 3,000 mPa・s の最大粘度を有するものである。
【0029】
成分 b1)は、本発明のアスパルテートから選択される。好ましくは、X は、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又は IPDA)、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)-メタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチルペンタメチレンジアミン、エチレンジアミン及び 3,3'-[1,2-エタンジイルビス(オキシ)]ビス(1-プロパンアミン) からアミノ基を除去することによって得られた2価の炭化水素基を表す。
【0030】
特に好ましい出発成分 b1)は、R1 及び R2 が、C1〜C8 アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又は 2-エチルヘキシルを表すアスパルテートを含む。
【0031】
任意の出発成分 b2)は、湿気又は/及び熱の作用下でイソシアネート基と反応する基を含む、少なくとも 2 個のイソシアネート反応性基を含有する既知の化合物である。その例は、ヒドロキシ官能化ポリアクリレート及びポリエステルポリオールを含む。これらの化合物の混合物も使用できる。
【0032】
本発明で使用されるバインダーにおいて、成分 a)、b1)及び(任意に)b2)の量は、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比が、約 0.8:1〜約 2.0:1、好ましくは約 0.8:1〜約 1.2:1 になるように選択される。
【0033】
本発明のバインダーは、溶媒の不存在下、又はポリウレタン表面被覆技術で一般に使用される溶媒の存在下で、各成分を混合することにより調製される。適当な溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、キシレン、N-メチルピロリドン、石油スピリット、クロロベンゼン、Solvesso 溶媒又はこれらの混合物を含む。
【0034】
好ましくは、本発明の被覆組成物における、バインダー成分 a)及び b)の溶媒に対する重量比は、約 40:60〜約 100:0、より好ましくは約 60:40〜約 100:0 である。
【0035】
塗料組成物は、表面被覆技術で既知の添加剤も含んでよい。添加剤は、顔料、充填材、流れ制御剤、触媒及び沈降防止剤を包含する。
【0036】
本発明の被覆組成物から得られた被膜の特性は、出発成分 a)、b1)及び b2)の種類及び割合の適切な選択によって調整できる。
【0037】
被覆組成物は、既知の方法、例えば、噴霧塗り、ペイント塗り、浸漬塗り、流し塗り、或いはローラー又はスプレッダーを用いた方法によって、いかなる基材にも、単層又は多層で塗布され得る。本発明に従った被覆組成物は、金属、プラスチック、木材又はガラスのような基材上に被膜を製造するのに適している。被覆組成物は、車体、機械類、クラッディングパネル、容器、コンテナの製造に使用されるスチール製シートを被覆するのに特に適当である。本発明の被覆組成物を塗布する前に、基材を適当な下塗で処理してもよい。被膜の乾燥は、約 0〜160 ℃の温度で行い得る。
【0038】
本発明のアスパルテートを用いる被覆組成物の製造方法は、ウレア、ウレタン、アロファネート及び/又はビウレット構造を含有するプレポリマーの製造にも使用され得る。
【0039】
従来のアスパルテートとは対照的に、ほぼ完全な転化率が達成されるので、本発明のアスパルテートは、合成工程の完了後に直接使用され得る。マレエート、フマレート及び/又は一級アミノ基の低濃度の結果として、これらの生成物は、毒物学的及び生理学的に無害である。また、イソシアネートに対して、激しい反応性とは対照的に適度な反応性を示す。低粘度故に、それらは、反応性希釈剤として、従来より使用されている環境を汚染する有機溶媒の適当な代替品となり、従って、高品質の、低溶媒又は溶媒不含有でさえある高固形分2成分被覆組成物に使用され得る。
【0040】
以下の実施例における全ての部及びパーセントは、特に記載のない限り重量による。
【実施例1】
【0041】
丸底フラスコに、撹拌機、加熱マントル、窒素注入口、熱電対及び添加漏斗を取り付けた。58 部(1.0 当量)の 2-メチル-1,5-ペンタンジアミンを、室温でフラスコに導入した。137.7 部(0.8 当量)のジエチルマレエートを、60 分かけて添加漏斗により添加した。フラスコの温度は 35 ℃まで上昇した。反応物を 60 ℃まで加熱して 7 時間維持し、その時点で反応が完了したことをヨウ素還元滴定により確認した。反応混合物を室温まで冷却した。25.02 部(0.2 当量)の N-エチルマレイミドを添加した。反応が完了するまで、温度を 25 ℃で 8 時間維持した。透明でほぼ無色の最終生成物は、260 cps の粘度及び 251 のアミン価(理論アミン価は 253)を有していた。
【実施例2】
【0042】
丸底フラスコに、撹拌機、加熱マントル、窒素注入口、熱電対及び添加漏斗を取り付けた。105 部(1.0 当量)のビス-(パラアミノシクロヘキシル)メタンを、室温でフラスコに導入した。129 部(0.75 当量)のジエチルマレエートを、60 分かけて添加漏斗により添加した。フラスコの温度は 33 ℃まで上昇した。反応物を 60 ℃まで加熱して 10 時間維持し、その時点で反応が完了したことをヨウ素還元滴定により確認した。反応混合物を室温まで冷却した。31.28 部(0.25 当量)の N-エチルマレイミドを添加した。反応が完了するまで、温度を 25 ℃で 8 時間維持した。透明でほぼ無色の最終生成物は、6,300 cps の粘度及び 209 のアミン価(理論アミン価は 211)を有していた。
【実施例3】
【0043】
丸底フラスコに、撹拌機、加熱マントル、窒素注入口、熱電対及び添加漏斗を取り付けた。85 部(1.0 当量)の 5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)を、室温でフラスコに導入した。137.7 部(0.80 当量)のジエチルマレエートを、60 分かけて添加漏斗により添加した。フラスコの温度は 35 ℃まで上昇した。反応物を 60 ℃まで加熱して 10 時間維持し、その時点で反応が完了したことをヨウ素還元滴定により確認した。反応混合物を室温まで冷却した。25.1 部(0.20 当量)の N-エチルマレイミドを添加した。反応が完了するまで、温度を 25 ℃で 8 時間維持した。透明でほぼ無色の最終生成物は、2,070 cps の粘度及び 223 のアミン価(理論アミン価は 227)を有していた。
【0044】
実施例で得た試料を、Desmodur N-3300(21.8 %の NCO 含有量及び 192 の NCO 当量を有する三量体化ヘキサジイソシアネート)と、NCO 対 NH 当量比 1 で手動撹拌した。粘度を、ブルックフィールド粘度計で測定した。試料の乾燥時間を、ガラス上に混合試料を引き伸ばすことによって測定した。
【0045】
試料を 10 mil の湿潤膜厚に引き伸ばした。フィルム硬化を試験するために、2 分間毎に、綿ボールを引き伸ばした試料に押しつけた。綿ボールが痕跡を残さなくなったとき、試料フィルムは完全に硬化した。アルミ製カップに混合試料を注ぎ、Shore Durometer Type D-2 を用いて ASTM D2240 に従い 3 日後の硬度を試験することによって、ショア D 硬度を測定した。結果は、下記表に報告したとおりであった。
【表1】

【0046】
本発明を、説明の目的で上に詳しく記載したが、このような詳細は、説明の目的のためだけのものであり、特許請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図及び範囲から外れることなく、当業者によって変更をなし得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、X は、1級アミノ基を含み、60〜6,000 の数平均分子量を有し、イソシアネート基に対して反応性であるか又は 100 ℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性である更なる官能基を含んでもよいジアミン又はポリアミンから、1級アミノ基を除去することによって得られた m 価の有機基を表し、
R3 及び R4 は、同じか又は異なっていてもよく、水素、又は 100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
R1 及び R2 は、同じか又は異なっていてもよく、100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
R5 及び R6 は、同じか又は異なっていてもよく、i)水素、ii)6〜10 個の炭素原子を含む 3 個までのアリール基で置換されていてもよい直鎖又は分枝 C1〜C8 アルキル基、iii)1〜3 個の炭素原子を含む 3 個までのアルキル基で置換されていてもよい C6〜C10 アリール基からなる群から選ばれる基を表すか、又は iv)一緒に6員シクロアルキル基を形成し、前記シクロアルキル基は 1〜3 個の炭素原子を含む 0〜3 個のアルキル基で置換されており、
R7 は、i)水素、ii)6〜10 個の炭素原子を含む 3 個までのアリール基で置換されていてもよい直鎖又は分枝 C1〜C8 アルキル基、iii)1〜3 個の炭素原子を含む 3 個までのアルキル基で置換されていてもよい C6〜C10 アリール基からなる群から選ばれる基を表し、
a 及び b は 1〜5 の整数を表し、a と b の合計は 2〜6 である。]
に相当するアスパルテート。
【請求項2】
X が、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又は IPDA)、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)-メタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチルペンタメチレンジアミン、エチレンジアミン又は 3,3'-[1,2-エタンジイルビス(オキシ)]ビス(1-プロパンアミン) からアミノ基を除去することによって得られた2価の炭化水素基を表す、請求項1に記載のアスパルテート。
【請求項3】
R3 及び R4 が水素である請求項1に記載のアスパルテート。
【請求項4】
R1 及び R2 が各々 1〜8 個の炭素原子を含むアルキル基である、請求項1に記載のアスパルテート。
【請求項5】
式:
【化2】

[式中、X は、1級アミノ基を含み、60〜6,000 の数平均分子量を有し、イソシアネート基に対して反応性であるか又は 100 ℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性である更なる官能基を含んでもよいジアミン又はポリアミンから、1級アミノ基を除去することによって得られた m 価の有機基を表し、
R3 及び R4 は、同じか又は異なっていてもよく、水素、又は 100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
R1 及び R2 は、同じか又は異なっていてもよく、100 ℃以下の温度でイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
R5 及び R6 は、同じか又は異なっていてもよく、i)水素、ii)6〜10 個の炭素原子を含む 3 個までのアリール基で置換されていてもよい直鎖又は分枝 C1〜C8 アルキル基、iii)1〜3 個の炭素原子を含む 3 個までのアルキル基で置換されていてもよい C6〜C10 アリール基からなる群から選ばれる基を表すか、又は iv)一緒に6員シクロアルキル基を形成し、前記シクロアルキル基は 1〜3 個の炭素原子を含む 0〜3 個のアルキル基で置換されており、
R7 は、i)水素、ii)6〜10 個の炭素原子を含む 3 個までのアリール基で置換されていてもよい直鎖又は分枝 C1〜C8 アルキル基、iii)1〜3 個の炭素原子を含む 3 個までのアルキル基で置換されていてもよい C6〜C10 アリール基からなる群から選ばれる基を表し、
a 及び b は 1〜5 の整数を表し、a と b の合計は 2〜6 である。]
に相当するアスパルテートの製造方法であって、
A)0〜100 ℃の温度で、溶液中又は溶媒不存在下、
a)式(II):
X[-NH2]m (II)
に相当するジアミン又はポリアミンと
b)式(III):
R1OOC-C(R3)=C(R4)-COOR2 (III)
に相当する化合物
[式中、X、R1、R2、R3 及び R4 は、上記で定義したとおりであり、m は 2〜6 の整数を表す。]
とを、成分 a)中の1級アミノ基対成分 b)中の C=C 二重結合の当量比を約 1.1:1〜約 3.0:1 として反応させる工程、及び
B)得られた生成物をマレイミドと反応させる工程
を含む方法。
【請求項6】
X が、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又は IPDA)、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)-メタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチルペンタメチレンジアミン、エチレンジアミン又は 3,3'-[1,2-エタンジイルビス(オキシ)]ビス(1-プロパンアミン) からアミノ基を除去することによって得られた2価の炭化水素基を表す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
R3 及び R4 が水素である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
R1 及び R2 が各々 1〜8 個の炭素原子を含むアルキル基である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記マレイミドが式:
【化3】

[式中、R5、R6 及び R7 は、上記で定義したとおりである。]
に相当する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
バインダーとして、
a)ポリイソシアネート成分、及び
b)b1)請求項1に記載のアスパルテート、
b2)任意に他のイソシアネート反応性成分
を含有するイソシアネート反応性成分
を含んでなり、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比が約 0.8:1〜約 2.0:1 である2成分被覆組成物。
【請求項11】
ポリイソシアネートと請求項1に記載のアスパルテートとの反応生成物を含有する、ウレア、ウレタン、アロファネート及び/又はビウレット構造を含むプレポリマー。

【公表番号】特表2007−522128(P2007−522128A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551259(P2006−551259)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/001789
【国際公開番号】WO2005/073188
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】