被覆蛍光体の製造方法、被覆蛍光体及び白色光源
【課題】 蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体を提供する。
【解決手段】 蛍光体と金属アルコキシドとを溶媒中で混合し、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させる混合工程を有し、蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【解決手段】 蛍光体と金属アルコキシドとを溶媒中で混合し、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させる混合工程を有し、蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料によって蛍光体が被覆された被覆蛍光体の製造方法、被覆蛍光体及び白色光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐水性の低い蛍光体に対し金属被覆を行う検討としては、例えば特許文献1において、被覆材料をSiO2とした金属アルコキシドの加水分解反応による手法(ゾルゲル法)が挙げられる。特許文献1の実施例では、蛍光体を反応溶液中に懸濁液として分散・混合を行い8時間のゾルゲル反応により処理し、不純物の溶出に起因する溶液中伝導度が100μS/cm以下となるまで洗浄を繰り返した後、乾燥、焼成を行う事で被膜発光体としている。
【0003】
また、蛍光体粒子に対し多種の金属酸化物を被覆する例としては、特許文献2等に記載されている。具体的には、対象となる蛍光体(硫化物)100重量部に対し0.2モル/hour以下の割合で金属アルコキシドを添加し、同時に添加金属源1molに対し0.01〜5.0molの割合で開始剤であるH2Oを添加し、乾燥、焼成処理を行うことで被覆材を付着させている。
【0004】
特許文献2においては、対象となる蛍光体について、UV劣化、バーニング、Cu汚染、導電性、親水性、分散性を評価することで被覆蛍光体の評価を行っている。
【0005】
ところで、((Ba1−y,Sry)1−xEux)aSibOcで表される酸化物蛍光体は、波長600〜610nmに発光ピークを有し、蛍光体としての特性が良い。しかし、この酸化物蛍光体は、蛍光体自体が水分に脆弱であり長期信頼性に問題があるため実用化には至っていない。そこで、この問題に対し、耐水性対策が講じられている。
【0006】
しかし、ロングライフが求められる、例えばバックライトや照明用LED用途としては、十分な特性を付与できているとは言えない。具体的に、白色LEDのパッケージ(PKG)における加速試験環境は、一般的に85℃85%RHで行われている。そのため、白色LEDのパッケージ上の樹脂中に分散された蛍光体自身も、この環境に耐えうる性能を有していなければならない。
【0007】
この要求性能(要求スペック)に対し、対象となる蛍光体を硫化物とした特許文献2においては、高温湿度下での試験自体、記載がない。
【0008】
また、ゾルゲル法実施の際は、金属アルコキシドの加水分解反応過程を必然的に含むため、系内へのH2Oの添加が避けられない。例えば、反応速度の遅いTEOS(テトラエ
トキシシラン)を被膜源として用いる場合には、大過剰のH2Oを必要とする。これは、表面処理工程中での蛍光体自身の劣化を促進する一因となる。
【0009】
また、特許文献1には、被膜回数を増加させることにより信頼性を向上させることが可能と記載されているが、上述したように、反応速度の遅いTEOSを使用した場合の被膜工程では、粒子表面での膜厚の成長に限界があり、要求性能に到達可能であるか疑問である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−23221号公報
【特許文献2】特開平04−279693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体の製造方法、被覆蛍光体及び白色光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る被覆蛍光体の製造方法は、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合し、上記アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって上記蛍光体を被覆させる混合工程を有し、上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【0013】
本発明に係る被覆蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【0014】
本発明に係る白色光源は、素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、上記青色発光ダイオード上に配置され、赤色蛍光体と緑色蛍光体又は黄色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、上記赤色蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る白色光源を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る照明装置を示す概略平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る照明装置を示す概略断面図である。
【図4】被覆処理前後の蛍光体の特性を比較したグラフである。
【図5】Al/(Sr+Ba)元素存在比による比表面積変化を示すグラフである。
【図6】実施例1〜実施例5及び比較例3、比較例4で得られた評価サンプルの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】高温高湿環境試験結果を示すグラフである。
【図8】混合工程における表面処理反応時間による信頼性変化を示すグラフである。
【図9】混合工程における反応温度による信頼性変化を示すグラフである。
【図10】Al/(Sr+Ba)元素存在比によるピーク強度及び信頼性変化を示すグラフである。
【図11】実施例6で得られた評価サンプルの電導度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.被覆蛍光体の製造方法
2.被覆蛍光体の適用例
2−1.白色光源
2−2.照明装置
3.実施例
【0018】
<1.被覆蛍光体の製造方法>
本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法は、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させる混合工程を有する。次いで、本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法は、混合液を固相と液相とに分離する分離工程を有する。
【0019】
(混合工程)
混合工程では、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合し、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させる。ここで、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させるとは、例えば、蛍光体の表面にアルミニウム酸化物を均一に付着させる場合に限定されず、蛍光体の表面にアルミニウム酸化物を不均一に付着させる場合や、蛍光体の表面の一部にアルミニウム酸化物が付着されない部分を含む場合も含む。混合工程では、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させることにより、混合液中においてアルミニウムアルコキシドを加水分解してゾルゲル反応を開始させ、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆された被覆蛍光体を得る。すなわち、ゾルゲル法を用いて、蛍光体にアルミニウム酸化物を被覆させた混合液を調製する。
【0020】
例えば、混合工程では、蛍光体と溶媒とから調製した第1の溶液と、アルミニウムアルコキシドと溶媒とから調製した第2の溶液とを準備する。反応装置内において、第1の溶液に第2の溶液を添加するか、第2の溶液に第1の溶液を添加することにより、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させた混合液を得る。
【0021】
蛍光体としては、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する酸化物蛍光体(以下、単に「蛍光体」と称する。)が用いられる。この蛍光体は、波長600〜610nmに発光ピークを有するケイ酸塩系の蛍光体であり、蛍光体としての特性(蛍光特性等)が良好である。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
組成式(1)中、Mは2族元素を表し、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【0022】
2族元素として、例えばストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)を含有する場合には、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(2)の原子数比で含有する蛍光体を用いることができる。
[(Ba1−ySry)1−xEux]aSibOc 組成式(2)
組成式(2)中、a、b、c、x、yは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09、0.25<y<0.75なる関係を満たす。
【0023】
アルミニウムアルコキシドは、加水分解(ゾルゲル法)によって、蛍光体を被覆するアルミニウム酸化物、すなわち酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物(アルミナ水和物)、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物からなるアルミナコートを形成するためのものである。金属アルコキシドの中でも、アルミニウムアルコキシドを用いることにより、水分に脆弱な上述した蛍光体が、耐水性が良好なアルミニウム酸化物によって被覆されるため、蛍光体の耐水性が向上し、蛍光体の発光特性を長期に亘って維持することができる。また、アルミニウムアルコキドは、反応速度が急峻であるため、大過剰のH2Oを必要とせず、加水分解反応中で蛍光体の劣化が促進されてしまうのを防止することができる。
【0024】
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、エトキシド、メトキシド、イソプロポキシド、ブトキシドなどから選択されるもの、具体的には、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウム−tert−トリブトキシドなどが挙げられる。また、アルミニウムアルコキシドとしては、アルキルアルコキシアルミニウムなど、ゾルゲル反応に寄与しないアルキル基、アミノ基、メルカプト基などを持ったカップリング剤を用いてもよい。これらのアルミニウムアルコキシドの中では、蛍光体の耐水性をより良好にする観点から、アルミニウムイソプロポキシドを用いることが好ましい。
【0025】
混合工程では、蛍光体中の2族元素に対する、アルミニウム酸化物中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)、すなわち(Al/2族元素)の元素存在比を0.10以上とすることが好ましく、0.10〜0.29とすることがより好ましい。(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)を0.10〜0.29とすることにより、耐水性が良好なアルミニウム酸化物によって蛍光体の表面がほぼ全体に亘って被覆されるため、蛍光体の耐水性がより向上し、蛍光体の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
【0026】
なお、(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)を0.10〜0.20とすることがより好ましい。(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)を0.10〜0.20とすることにより、被覆蛍光体の凝集を少なくすることができる。これにより、例えば、LED発光素子を設けたケース(パッケージ)の樹脂充填部に、被覆蛍光体と樹脂成分とを含む樹脂組成物をポッティングする際に、樹脂組成物をポッティングするための装置のハンドリング性が低下してしまうことを防止することができる。
【0027】
溶媒としては、均一に分散し得る溶媒であれば、特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、多価アルコール類等を用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノールが挙げられる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。また、溶媒は、単独又は2種以上を組み合わせたものを使用してもよい。
【0028】
上述したアルミニウムアルコキシドは、一般に反応速度が速く、少量の水と容易に加水分解する。そのため、金属アルコキシドとしてアルミニウムアルコキシドを用いた場合には、触媒を用いなくても上述したアルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させる反応を進行させることができる。なお、反応工程においては、触媒を用いてもよい。触媒としては、塩基性触媒、酸性触媒共に用いることができるが、発光体の劣化を考慮して、塩基性触媒を用いることが望ましい。
【0029】
蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合するための反応装置としては、例えば、ガラス又はポリエチレン(PE)容器と、マグネティックスターラー又は撹拌翼とを用いることができる。反応装置は、処理中の粒子の固着・偏在を抑えるため、底部が平坦であり、撹拌子(撹拌翼)が容器底面に隙間ができない大きさのものを用いることが好ましい。
【0030】
混合工程において、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させる際の温度は、30〜50℃とすることが好ましく、35〜45℃とすることがより好ましい。このように、30〜50℃で、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させることにより、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を十分に被覆して、水分による蛍光体の劣化を効果的に防止することができる。これにより、蛍光体の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
【0031】
混合工程において、溶媒中で蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを混合させる時間は、30〜90分とすることが好ましく、45〜75分とすることがより好ましい。このように、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で30分以上混合させることにより、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を十分に被覆して、水分による蛍光体の劣化を効果的に防止することができる。また、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させる時間を90分以下とすることにより、蛍光体に被覆したアルミニウム酸化物が剥がれ落ちてしまうことを防止して、水分による蛍光体の劣化を効果的に防止することができる。したがって、溶媒中で蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを混合させる時間を30〜90分とすることにより、蛍光体の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
【0032】
(分離工程)
分離工程では、上述した混合工程において、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させた混合液を固相と液相とに分離することにより、固相である被覆蛍光体を混合液中から得る。
【0033】
例えば、分離工程においては、吸引濾過器を用いて、混合液を固相と液相とに分離し、分離した固相を乾燥し、乾燥して得られた試料を解砕し、焼成処理を行う。これにより、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなる被覆蛍光体を得ることができる。
【0034】
混合液を固相と液相とに分離する際は、アルミニウムアルコキシドが大気中に含まれるH2Oの影響を受けるため、試験系内を乾燥N2ガスで置換することが好ましい。
【0035】
分離した固相を乾燥させる温度は、使用溶媒によって乾燥温度を変更することが可能であるが、80〜110℃とすることが好ましい。また、分離した固相を乾燥させる時間は、2時間以上とすることが好ましい。
【0036】
乾燥して得られた試料を解砕する方法としては、粒子凝集を緩和するため、例えば、めのう乳鉢で解砕する方法が好ましい。
【0037】
粉砕した試料を焼成する温度は、150〜350℃とすることが好ましく、150〜250℃とすることがより好ましい。また、粉砕した試料を焼成する時間は、8時間以上とすることが好ましい。
【0038】
上述した本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法で得られた被覆蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、蛍光体が、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、上記組成式(1)の原子数比で含有する。このような被覆蛍光体は、蛍光特性が良好であり、また、耐水性が良好なアルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されているため蛍光体の耐水性が向上し、蛍光体の発光特性を長期に亘って維持することができる。
【0039】
なお、上述した説明では、被覆蛍光体を製造する際に、蛍光体に対するアルミニウム酸化物の被覆処理を1回だけ行う方法、すなわち、蛍光体にアルミニウム酸化物を1層だけ被覆させる方法について説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、アルミニウム酸化物の被覆処理を繰り返し行って、蛍光体に2層以上のアルミニウム酸化物を被覆させるようにしてもよい。本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法では、蛍光体に多層のアルミニウム酸化物を被覆させると、蛍光体のピーク強度の低下や粒子の凝集が起こってしまうため、アルミニウム酸化物の被覆処理回数を2〜3回とすることが好ましい。
【0040】
<2.被覆蛍光体の適用例>
上述した被覆蛍光体の製造方法で得られる被覆蛍光体は、例えば、白色光源や照明装置に適用することができる。
【0041】
<2−1.白色光源>
まず、本実施の形態に係る白色光源を、図1に示す概略断面図を用いて説明する。図1に示すように、白色光源1は、素子基板11上に形成されたパッド部12上に青色発光ダイオード13を有している。素子基板11には、青色発光ダイオード13を駆動するための電力を供給する電極14、15が絶縁性を保って形成され、それぞれの電極14、15は、例えばリード線16、17によって青色発光ダイオード13に接続されている。
【0042】
また、青色発光ダイオード13の周囲には、例えば樹脂層18が設けられ、その樹脂層18には、青色発光ダイオード13上を開口する開口部19が形成されている。この開口部19には、青色発光ダイオード13の発光方向に開口面積が広くなる傾斜面に形成され、その傾斜面には反射膜20が形成されている。すなわち、すり鉢状の開口部19を有する樹脂層18において、開口部19の壁面反射膜20で覆われ、開口部19の底面に青色発光ダイオード13が配置された状態となっている。そして、開口部19内に、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを透明樹脂に混線した混練物21が、青色発光ダイオード13を覆う状態で埋め込まれて白色光源1が構成されている。
【0043】
赤色蛍光体としては、上述した組成式(1)、(2)で表される被覆蛍光体が用いられる。この赤色蛍光体は、赤色波長帯でピーク発光波長が得られ、発光強度が強く、輝度が高い。そのため、青色LEDの青色光、緑色蛍光体による緑色光、および赤色蛍光体による赤色光からなる光の3原色による色域が広い明るい白色光を得ることができる。
【0044】
<2−2.照明装置>
次に、本実施の形態に係る照明装置を、図2の概略平面図を用いて説明する。図2に示すように、照明装置2は、照明基板22上に図1を用いて説明した白色光源1が複数配置されている。その配置例は、例えば、図2(A)に示すように、正方格子配列としてもよく、または図2(B)に示すように、1行おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。また、ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらには、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。
【0045】
また、図示はしていないが、1列おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらに、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。すなわち、白色光源1のずらし方は、限定されるものではない。
【0046】
白色光源1は、図1を参照して説明したものと同様な構成を有するものである。すなわち、白色光源1は、青色発光ダイオード13上に、赤色蛍光体と緑色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物21を有するものである。赤色蛍光体には、上述した組成式(1)で表される赤色蛍光体が用いられる。
【0047】
また、照明装置2は、点発光とほぼ同等の白色光源1が照明基板22上に、縦横に複数配置されていることから、面発光と同等になるので、例えば液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。また、照明装置2は、通常の照明装置、撮影用の照明装置、工事現場用の照明装置等、種々の用途の照明装置に用いることができる。
【0048】
照明装置2は、白色光源1を用いているため、色域が広い明るい、白色光を得ることができる。例えば、液晶表示装置のバックライトに用いた場合に、表示画面において輝度の高い純白色を得ることができ、表示画面の品質の向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る被覆蛍光体は、例えば、照明装置における蛍光体シートに適用することができる。例えば図3に示すように、照明装置3は、青色発光素子が凸型の表面形状の透明樹脂で包含された発光構造体23と、発光構造体23が二次元配置された基板24と、青色発光素子の青色光を拡散する拡散板25と、基板24と離間して配置され、青色発光素子の青色光から白色光を得る粉末状の蛍光体を含有する蛍光体シート26と、光学フィルム27とを備える。
【0050】
基板24と蛍光体シート26とは、約10〜50mm程度離間して配置され、照明装置3は、いわゆるリモート蛍光体構造を構成する。基板24と蛍光体シート26との間隙は、複数の支持柱や反射板によって保持され、基板24と蛍光体シート26とがなす空間を支持柱や反射板が四方で囲むように設けられている。
【0051】
発光構造体23は、青色発光素子として例えばInGaN系の青色LED(Light Emitting Diode)チップを有する、いわゆるLEDパッケージを構成する。
【0052】
照明装置を構成する基板24は、フェノール、エポキシ、ポリイミド、ポリエステル、ビスマレイミドトリアジン、アリル化ポリフェニレンオキサイドなどの樹脂を利用したガラス布基材から構成される。基板24上には、所定ピッチで等間隔に発光構造体23が、蛍光体シート26の全面に対応して二次元に配置される。また、必要に応じて、基板24上の発光構造体23の搭載面に反射処理を施してもよい。
【0053】
拡散板25は、発光構造体23からの放射光を光源の形状が見えなくなる程度に広範囲に拡散するものである。拡散板25としては、全光線透過率が20%以上80%以下のものが用いられる。
【0054】
蛍光体シート26は、青色発光素子の青色光から白色光を得る粉末状の蛍光体を含有する。蛍光体としては、例えば、硫化物蛍光体、酸化物蛍光体又はそれらの混合蛍光体が用いられる。酸化物系蛍光体としては、上述した被覆蛍光体が用いられる。蛍光体の粉末は、平均粒径が数μm〜数十μmのものを用いる。これにより蛍光体シート26の光散乱効果を向上させることができる。
【0055】
光学フィルム27は、例えば液晶表示装置の視認性を向上させるための反射型偏光フィルム、レンズフィルム、拡散フィルムなどで構成される。ここで、レンズフィルムは、一方の面に微小なレンズが配列形成された光学フィルムであり、拡散光の正面方向の指向性を高めて輝度を高めるためのものである。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4において被覆蛍光体を作製し、作製した被覆蛍光体について発光特性評価、粒子径・比表面積測定、高温高湿環境試験及び元素溶出試験を行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
蛍光体[(Ba,Sr)0.97Eu0.03]3SiO55gと、エタノール40gと、純水(H2O)0.375gとを所定量秤量し、第1の溶液を調製した。次に、アルミニウムイソプロポキシド0.75gと、トルエンとを任意の割合で溶解させた第2の溶液を調製した。超音波撹拌により分散・混合した第1の溶液を恒温槽内で40℃まで調節した後、第2の溶液を添加することで反応を開始した。第2の溶液を添加後、60分で反応容器を恒温槽から取出し、粒子が沈降した後、反応容器から上澄みを除去し、減圧濾過を行った。その後、85℃のオーブン内で2時間乾燥し、試料をめのう乳鉢で解砕後、200℃、8時間焼成処理を行い、評価サンプル(試料)を得た。実施例1では、蛍光体中の2族元素の総和(Sr+Ba)に対する、アルミニウムアルコキシド中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/(ストロンチウムの原子量+バリウムの原子量))、すなわちAl/(Sr+Ba)元素存在比が0.1161となるようにした。
【0058】
(実施例2)
実施例2では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.1603となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0059】
(実施例3)
実施例3では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.2279となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0060】
(実施例4)
実施例4では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.2834となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例5では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.3081となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0062】
(実施例6)
実施例6では、蛍光体[(Ba,Sr)0.97Eu0.03]3SiO5の替わりに、[(Ba,Sr)0.94Eu0.06]2SiO4を用いたこと、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.1901となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0063】
(比較例1)
比較例1では、アルミニウムイソプロポキシドを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0064】
(比較例2)
比較例2では、アルミニウムイソプロポキシドの替わりに、二酸化ケイ素(SiO2)の金属アルコキシドであるTEOSを5g用いて第2の溶液を調製し、触媒としてアンモニア水7gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0065】
(比較例3)
比較例3では、アルミニウムイソプロポキシドを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0066】
(比較例4)
比較例4では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.0479となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0067】
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルに関する結果についてまとめたものを表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<発光特性評価>
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルの発光特性は、FP6500(日本分光(株)製)を用いて測定した。表1における「試料吸収率」とは、励起光の試料による減少分の入射光の比である。また、表1における「内部量子効率」とは、試料から放出される蛍光の光子数から、試料に吸収される励起光の光子数を割った値である。また、表1における「外部量子効率」とは、(試料吸収率)×(内部量子効率)である。発光特性評価の結果を表1に示す。
【0070】
図4には、実施例1で得られた評価サンプルの被覆処理前後の発光特性を示す。図4に示すように、被覆処理前後において試料吸収率がやや低下するが、内部量子効率が向上し、結果として外部量子効率が向上していることが確認できた。これは、アルミニウム酸化物によるレンズ効果により、被覆蛍光体の外部から内部に光が入射しやすくなり、また、被覆蛍光体の内部から外部に光が出射しやすくなったためと考えられる。
【0071】
<粒子径・比表面積測定>
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルの粒子径(D10、D50、D90)は、Multisizer4(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した。また、比表面積は、LA−500(堀場製作所(株)製)を用い、粒度分布測定を行うことによって求めた。粒子径・比表面積測定の結果を表1に示す。
【0072】
図5には、Al/(Sr+Ba)元素存在比に対する実施例1〜実施例3、実施例5、比較例3、比較例4で得られた評価サンプルの比表面積を示す。Al/(Sr+Ba)元素存在比は、得られた各評価サンプルについてICP発光分光分析装置(ICP−AES)又は蛍光X線分析(XRF)を行うことにより算出した。評価サンプルの比表面積は、アルミニウム元素の存在量が増加していくにつれて低下していることが分かる。これは、アルミニウム元素の存在量が増加するにつれて評価サンプルの凝集が起こっていることを示唆していると考えられる。Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.20以上となると、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0の場合と比較して、評価サンプルの比表面積が6割程度に低下することが確認できた。
【0073】
図6には、比較例3、比較例4、実施例1〜実施例5で得られた評価サンプルの電子顕微鏡写真を示す。図6のAは比較例3、図6のBは比較例4、図6のCは実施例1、図6のDは実施例2、図6のEは実施例3、図6のFは実施例4、図6のGは実施例5で得られた各評価サンプルの電子顕微鏡写真を示す。これらの結果から、上述したように、アルミニウム元素の存在量が増加するにつれて評価サンプルの凝集が起こることを確認することができた。
【0074】
<高温高湿環境変化試験>
高温高湿環境変化試験では、実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルについて、60℃90%RH又は85℃85%RHでの高温高湿試験により、初期発光強度等から試験終了後500時間後までの変化を確認した。発光強度測定には、分光光度計FP−6500(日本分光(株)製)を用いた。高温高湿環境変化試験の結果を図7に示す。図7において、記号(△)は、実施例1で得られた評価サンプルの結果を示す。また、記号(■)は、比較例2で得られた評価サンプルの結果を示す。また、記号(◆)は、比較例3で得られた評価サンプルの結果を示す。
【0075】
被覆処理無しの評価サンプル(比較例3)では、試験環境下3時間で急速に劣化した。また、蛍光体にTEOSを被覆した評価サンプル(比較例2)では、24時間後に大幅な輝度低下が認められた。これに対し、実施例1で作製した評価サンプルでは、試験後100時間近くとなっても発光を初期発光の約90%を維持していることが分かった。この結果、蛍光体にTEOSを被覆した評価サンプル(比較例2)が20時間で急速に白化するのに対して、蛍光体にアルミニウム酸化物を被覆した評価サンプル(実施例1)では、耐湿性が大幅に向上したことが確認された。これは、アルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させることにより、蛍光体の耐水性が向上し、蛍光体の発光特性を長期に亘って維持することができたためと考えられる。
【0076】
図8及び図9には、表面処理反応時間および反応温度環境における信頼性変化を示す。図8及び図9に示す結果から、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で60分反応させた場合、40℃で蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させた場合に、それぞれ高い信頼性が得られることが確認できた。
【0077】
図10には、実施例1〜実施例5、比較例3、比較例4で得られた評価サンプルについて、ピーク強度(記号(◆))と、85℃85%RHでの高温高湿試験により、初期発光強度等から試験終了後96時間後までの変化を確認した結果(記号(■))を示す。図9に示すように、実施例1〜実施例4で得られた評価サンプル、すなわち、Al/(Sr+Ba)元素存在比(アルミニウムの原子量/(ストロンチウムの原子量+バリウムの原子量))が0.10〜0.29の評価サンプルでは、蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持できることが確認できた。
【0078】
また、上述した図5に示す比表面積の結果から、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.10〜0.20の評価サンプル(実施例1、実施例2)では、凝集が少ないことが確認できた。したがって、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.10〜0.20の範囲において、蛍光特性が良好であり、凝集が少ない、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体が得られることが分かった。
【0079】
<元素溶出試験>
実施例6で得られた評価サンプルの信頼性を確認するために、元素溶出試験を行った。元素溶出試験では、55℃に加熱したイオン交換水100mlに、実施例6で得られた評価サンプル又は被覆処理無しの評価サンプル1gを添加し、その際の電導度変化を0、1、5、10、30、60minの時間でそれぞれ記録した。
【0080】
図11において、(a)は、アルミニウム酸化物を被覆していない蛍光体、(b)は、アルミニウム酸化物を被覆した蛍光体の電導度変化の結果を示す。図11に示す結果から、アルミニウム酸化物を被覆した蛍光体では、アルミニウム酸化物を被覆していない蛍光体と比較して、電導度の上昇を小さく抑えることができることが分かった。これは、シリケート蛍光体は、水中に添加することで2族元素が溶出して電導度が変化するが、アルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させることにより、蛍光体表面での元素溶出が抑制されることを示唆している。したがって、実施例1〜実施例5で用いた蛍光体([(Ba,Sr)0.97Eu0.03]3SiO5)以外の他の蛍光体についても、アルミニウム酸化物によって被覆させることにより、発光特性を長期に亘って維持できると考えられる。
【符号の説明】
【0081】
1 白色光源、2,3 照明装置、11 素子基板、12 パッド部、13 青色発光ダイオード、14,15 電極、16,17 リード線、18 樹脂層、19 開口部、20 壁面反射膜、21 混練物、22 照明基板、23 発光構造体、24基板、25 拡散板、26 蛍光体シート、27 光学フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料によって蛍光体が被覆された被覆蛍光体の製造方法、被覆蛍光体及び白色光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐水性の低い蛍光体に対し金属被覆を行う検討としては、例えば特許文献1において、被覆材料をSiO2とした金属アルコキシドの加水分解反応による手法(ゾルゲル法)が挙げられる。特許文献1の実施例では、蛍光体を反応溶液中に懸濁液として分散・混合を行い8時間のゾルゲル反応により処理し、不純物の溶出に起因する溶液中伝導度が100μS/cm以下となるまで洗浄を繰り返した後、乾燥、焼成を行う事で被膜発光体としている。
【0003】
また、蛍光体粒子に対し多種の金属酸化物を被覆する例としては、特許文献2等に記載されている。具体的には、対象となる蛍光体(硫化物)100重量部に対し0.2モル/hour以下の割合で金属アルコキシドを添加し、同時に添加金属源1molに対し0.01〜5.0molの割合で開始剤であるH2Oを添加し、乾燥、焼成処理を行うことで被覆材を付着させている。
【0004】
特許文献2においては、対象となる蛍光体について、UV劣化、バーニング、Cu汚染、導電性、親水性、分散性を評価することで被覆蛍光体の評価を行っている。
【0005】
ところで、((Ba1−y,Sry)1−xEux)aSibOcで表される酸化物蛍光体は、波長600〜610nmに発光ピークを有し、蛍光体としての特性が良い。しかし、この酸化物蛍光体は、蛍光体自体が水分に脆弱であり長期信頼性に問題があるため実用化には至っていない。そこで、この問題に対し、耐水性対策が講じられている。
【0006】
しかし、ロングライフが求められる、例えばバックライトや照明用LED用途としては、十分な特性を付与できているとは言えない。具体的に、白色LEDのパッケージ(PKG)における加速試験環境は、一般的に85℃85%RHで行われている。そのため、白色LEDのパッケージ上の樹脂中に分散された蛍光体自身も、この環境に耐えうる性能を有していなければならない。
【0007】
この要求性能(要求スペック)に対し、対象となる蛍光体を硫化物とした特許文献2においては、高温湿度下での試験自体、記載がない。
【0008】
また、ゾルゲル法実施の際は、金属アルコキシドの加水分解反応過程を必然的に含むため、系内へのH2Oの添加が避けられない。例えば、反応速度の遅いTEOS(テトラエ
トキシシラン)を被膜源として用いる場合には、大過剰のH2Oを必要とする。これは、表面処理工程中での蛍光体自身の劣化を促進する一因となる。
【0009】
また、特許文献1には、被膜回数を増加させることにより信頼性を向上させることが可能と記載されているが、上述したように、反応速度の遅いTEOSを使用した場合の被膜工程では、粒子表面での膜厚の成長に限界があり、要求性能に到達可能であるか疑問である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−23221号公報
【特許文献2】特開平04−279693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体の製造方法、被覆蛍光体及び白色光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る被覆蛍光体の製造方法は、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合し、上記アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって上記蛍光体を被覆させる混合工程を有し、上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【0013】
本発明に係る被覆蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【0014】
本発明に係る白色光源は、素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、上記青色発光ダイオード上に配置され、赤色蛍光体と緑色蛍光体又は黄色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、上記赤色蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る白色光源を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る照明装置を示す概略平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る照明装置を示す概略断面図である。
【図4】被覆処理前後の蛍光体の特性を比較したグラフである。
【図5】Al/(Sr+Ba)元素存在比による比表面積変化を示すグラフである。
【図6】実施例1〜実施例5及び比較例3、比較例4で得られた評価サンプルの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】高温高湿環境試験結果を示すグラフである。
【図8】混合工程における表面処理反応時間による信頼性変化を示すグラフである。
【図9】混合工程における反応温度による信頼性変化を示すグラフである。
【図10】Al/(Sr+Ba)元素存在比によるピーク強度及び信頼性変化を示すグラフである。
【図11】実施例6で得られた評価サンプルの電導度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.被覆蛍光体の製造方法
2.被覆蛍光体の適用例
2−1.白色光源
2−2.照明装置
3.実施例
【0018】
<1.被覆蛍光体の製造方法>
本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法は、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させる混合工程を有する。次いで、本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法は、混合液を固相と液相とに分離する分離工程を有する。
【0019】
(混合工程)
混合工程では、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合し、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させる。ここで、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させるとは、例えば、蛍光体の表面にアルミニウム酸化物を均一に付着させる場合に限定されず、蛍光体の表面にアルミニウム酸化物を不均一に付着させる場合や、蛍光体の表面の一部にアルミニウム酸化物が付着されない部分を含む場合も含む。混合工程では、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させることにより、混合液中においてアルミニウムアルコキシドを加水分解してゾルゲル反応を開始させ、アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆された被覆蛍光体を得る。すなわち、ゾルゲル法を用いて、蛍光体にアルミニウム酸化物を被覆させた混合液を調製する。
【0020】
例えば、混合工程では、蛍光体と溶媒とから調製した第1の溶液と、アルミニウムアルコキシドと溶媒とから調製した第2の溶液とを準備する。反応装置内において、第1の溶液に第2の溶液を添加するか、第2の溶液に第1の溶液を添加することにより、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させた混合液を得る。
【0021】
蛍光体としては、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する酸化物蛍光体(以下、単に「蛍光体」と称する。)が用いられる。この蛍光体は、波長600〜610nmに発光ピークを有するケイ酸塩系の蛍光体であり、蛍光体としての特性(蛍光特性等)が良好である。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
組成式(1)中、Mは2族元素を表し、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【0022】
2族元素として、例えばストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)を含有する場合には、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(2)の原子数比で含有する蛍光体を用いることができる。
[(Ba1−ySry)1−xEux]aSibOc 組成式(2)
組成式(2)中、a、b、c、x、yは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09、0.25<y<0.75なる関係を満たす。
【0023】
アルミニウムアルコキシドは、加水分解(ゾルゲル法)によって、蛍光体を被覆するアルミニウム酸化物、すなわち酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物(アルミナ水和物)、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物からなるアルミナコートを形成するためのものである。金属アルコキシドの中でも、アルミニウムアルコキシドを用いることにより、水分に脆弱な上述した蛍光体が、耐水性が良好なアルミニウム酸化物によって被覆されるため、蛍光体の耐水性が向上し、蛍光体の発光特性を長期に亘って維持することができる。また、アルミニウムアルコキドは、反応速度が急峻であるため、大過剰のH2Oを必要とせず、加水分解反応中で蛍光体の劣化が促進されてしまうのを防止することができる。
【0024】
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、エトキシド、メトキシド、イソプロポキシド、ブトキシドなどから選択されるもの、具体的には、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウム−tert−トリブトキシドなどが挙げられる。また、アルミニウムアルコキシドとしては、アルキルアルコキシアルミニウムなど、ゾルゲル反応に寄与しないアルキル基、アミノ基、メルカプト基などを持ったカップリング剤を用いてもよい。これらのアルミニウムアルコキシドの中では、蛍光体の耐水性をより良好にする観点から、アルミニウムイソプロポキシドを用いることが好ましい。
【0025】
混合工程では、蛍光体中の2族元素に対する、アルミニウム酸化物中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)、すなわち(Al/2族元素)の元素存在比を0.10以上とすることが好ましく、0.10〜0.29とすることがより好ましい。(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)を0.10〜0.29とすることにより、耐水性が良好なアルミニウム酸化物によって蛍光体の表面がほぼ全体に亘って被覆されるため、蛍光体の耐水性がより向上し、蛍光体の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
【0026】
なお、(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)を0.10〜0.20とすることがより好ましい。(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)を0.10〜0.20とすることにより、被覆蛍光体の凝集を少なくすることができる。これにより、例えば、LED発光素子を設けたケース(パッケージ)の樹脂充填部に、被覆蛍光体と樹脂成分とを含む樹脂組成物をポッティングする際に、樹脂組成物をポッティングするための装置のハンドリング性が低下してしまうことを防止することができる。
【0027】
溶媒としては、均一に分散し得る溶媒であれば、特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、多価アルコール類等を用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノールが挙げられる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。また、溶媒は、単独又は2種以上を組み合わせたものを使用してもよい。
【0028】
上述したアルミニウムアルコキシドは、一般に反応速度が速く、少量の水と容易に加水分解する。そのため、金属アルコキシドとしてアルミニウムアルコキシドを用いた場合には、触媒を用いなくても上述したアルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させる反応を進行させることができる。なお、反応工程においては、触媒を用いてもよい。触媒としては、塩基性触媒、酸性触媒共に用いることができるが、発光体の劣化を考慮して、塩基性触媒を用いることが望ましい。
【0029】
蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合するための反応装置としては、例えば、ガラス又はポリエチレン(PE)容器と、マグネティックスターラー又は撹拌翼とを用いることができる。反応装置は、処理中の粒子の固着・偏在を抑えるため、底部が平坦であり、撹拌子(撹拌翼)が容器底面に隙間ができない大きさのものを用いることが好ましい。
【0030】
混合工程において、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させる際の温度は、30〜50℃とすることが好ましく、35〜45℃とすることがより好ましい。このように、30〜50℃で、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させることにより、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を十分に被覆して、水分による蛍光体の劣化を効果的に防止することができる。これにより、蛍光体の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
【0031】
混合工程において、溶媒中で蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを混合させる時間は、30〜90分とすることが好ましく、45〜75分とすることがより好ましい。このように、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で30分以上混合させることにより、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって形成されるアルミニウム酸化物によって蛍光体を十分に被覆して、水分による蛍光体の劣化を効果的に防止することができる。また、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させる時間を90分以下とすることにより、蛍光体に被覆したアルミニウム酸化物が剥がれ落ちてしまうことを防止して、水分による蛍光体の劣化を効果的に防止することができる。したがって、溶媒中で蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを混合させる時間を30〜90分とすることにより、蛍光体の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
【0032】
(分離工程)
分離工程では、上述した混合工程において、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させた混合液を固相と液相とに分離することにより、固相である被覆蛍光体を混合液中から得る。
【0033】
例えば、分離工程においては、吸引濾過器を用いて、混合液を固相と液相とに分離し、分離した固相を乾燥し、乾燥して得られた試料を解砕し、焼成処理を行う。これにより、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなる被覆蛍光体を得ることができる。
【0034】
混合液を固相と液相とに分離する際は、アルミニウムアルコキシドが大気中に含まれるH2Oの影響を受けるため、試験系内を乾燥N2ガスで置換することが好ましい。
【0035】
分離した固相を乾燥させる温度は、使用溶媒によって乾燥温度を変更することが可能であるが、80〜110℃とすることが好ましい。また、分離した固相を乾燥させる時間は、2時間以上とすることが好ましい。
【0036】
乾燥して得られた試料を解砕する方法としては、粒子凝集を緩和するため、例えば、めのう乳鉢で解砕する方法が好ましい。
【0037】
粉砕した試料を焼成する温度は、150〜350℃とすることが好ましく、150〜250℃とすることがより好ましい。また、粉砕した試料を焼成する時間は、8時間以上とすることが好ましい。
【0038】
上述した本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法で得られた被覆蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、蛍光体が、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、上記組成式(1)の原子数比で含有する。このような被覆蛍光体は、蛍光特性が良好であり、また、耐水性が良好なアルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されているため蛍光体の耐水性が向上し、蛍光体の発光特性を長期に亘って維持することができる。
【0039】
なお、上述した説明では、被覆蛍光体を製造する際に、蛍光体に対するアルミニウム酸化物の被覆処理を1回だけ行う方法、すなわち、蛍光体にアルミニウム酸化物を1層だけ被覆させる方法について説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、アルミニウム酸化物の被覆処理を繰り返し行って、蛍光体に2層以上のアルミニウム酸化物を被覆させるようにしてもよい。本実施の形態に係る被覆蛍光体の製造方法では、蛍光体に多層のアルミニウム酸化物を被覆させると、蛍光体のピーク強度の低下や粒子の凝集が起こってしまうため、アルミニウム酸化物の被覆処理回数を2〜3回とすることが好ましい。
【0040】
<2.被覆蛍光体の適用例>
上述した被覆蛍光体の製造方法で得られる被覆蛍光体は、例えば、白色光源や照明装置に適用することができる。
【0041】
<2−1.白色光源>
まず、本実施の形態に係る白色光源を、図1に示す概略断面図を用いて説明する。図1に示すように、白色光源1は、素子基板11上に形成されたパッド部12上に青色発光ダイオード13を有している。素子基板11には、青色発光ダイオード13を駆動するための電力を供給する電極14、15が絶縁性を保って形成され、それぞれの電極14、15は、例えばリード線16、17によって青色発光ダイオード13に接続されている。
【0042】
また、青色発光ダイオード13の周囲には、例えば樹脂層18が設けられ、その樹脂層18には、青色発光ダイオード13上を開口する開口部19が形成されている。この開口部19には、青色発光ダイオード13の発光方向に開口面積が広くなる傾斜面に形成され、その傾斜面には反射膜20が形成されている。すなわち、すり鉢状の開口部19を有する樹脂層18において、開口部19の壁面反射膜20で覆われ、開口部19の底面に青色発光ダイオード13が配置された状態となっている。そして、開口部19内に、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを透明樹脂に混線した混練物21が、青色発光ダイオード13を覆う状態で埋め込まれて白色光源1が構成されている。
【0043】
赤色蛍光体としては、上述した組成式(1)、(2)で表される被覆蛍光体が用いられる。この赤色蛍光体は、赤色波長帯でピーク発光波長が得られ、発光強度が強く、輝度が高い。そのため、青色LEDの青色光、緑色蛍光体による緑色光、および赤色蛍光体による赤色光からなる光の3原色による色域が広い明るい白色光を得ることができる。
【0044】
<2−2.照明装置>
次に、本実施の形態に係る照明装置を、図2の概略平面図を用いて説明する。図2に示すように、照明装置2は、照明基板22上に図1を用いて説明した白色光源1が複数配置されている。その配置例は、例えば、図2(A)に示すように、正方格子配列としてもよく、または図2(B)に示すように、1行おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。また、ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらには、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。
【0045】
また、図示はしていないが、1列おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらに、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。すなわち、白色光源1のずらし方は、限定されるものではない。
【0046】
白色光源1は、図1を参照して説明したものと同様な構成を有するものである。すなわち、白色光源1は、青色発光ダイオード13上に、赤色蛍光体と緑色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物21を有するものである。赤色蛍光体には、上述した組成式(1)で表される赤色蛍光体が用いられる。
【0047】
また、照明装置2は、点発光とほぼ同等の白色光源1が照明基板22上に、縦横に複数配置されていることから、面発光と同等になるので、例えば液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。また、照明装置2は、通常の照明装置、撮影用の照明装置、工事現場用の照明装置等、種々の用途の照明装置に用いることができる。
【0048】
照明装置2は、白色光源1を用いているため、色域が広い明るい、白色光を得ることができる。例えば、液晶表示装置のバックライトに用いた場合に、表示画面において輝度の高い純白色を得ることができ、表示画面の品質の向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る被覆蛍光体は、例えば、照明装置における蛍光体シートに適用することができる。例えば図3に示すように、照明装置3は、青色発光素子が凸型の表面形状の透明樹脂で包含された発光構造体23と、発光構造体23が二次元配置された基板24と、青色発光素子の青色光を拡散する拡散板25と、基板24と離間して配置され、青色発光素子の青色光から白色光を得る粉末状の蛍光体を含有する蛍光体シート26と、光学フィルム27とを備える。
【0050】
基板24と蛍光体シート26とは、約10〜50mm程度離間して配置され、照明装置3は、いわゆるリモート蛍光体構造を構成する。基板24と蛍光体シート26との間隙は、複数の支持柱や反射板によって保持され、基板24と蛍光体シート26とがなす空間を支持柱や反射板が四方で囲むように設けられている。
【0051】
発光構造体23は、青色発光素子として例えばInGaN系の青色LED(Light Emitting Diode)チップを有する、いわゆるLEDパッケージを構成する。
【0052】
照明装置を構成する基板24は、フェノール、エポキシ、ポリイミド、ポリエステル、ビスマレイミドトリアジン、アリル化ポリフェニレンオキサイドなどの樹脂を利用したガラス布基材から構成される。基板24上には、所定ピッチで等間隔に発光構造体23が、蛍光体シート26の全面に対応して二次元に配置される。また、必要に応じて、基板24上の発光構造体23の搭載面に反射処理を施してもよい。
【0053】
拡散板25は、発光構造体23からの放射光を光源の形状が見えなくなる程度に広範囲に拡散するものである。拡散板25としては、全光線透過率が20%以上80%以下のものが用いられる。
【0054】
蛍光体シート26は、青色発光素子の青色光から白色光を得る粉末状の蛍光体を含有する。蛍光体としては、例えば、硫化物蛍光体、酸化物蛍光体又はそれらの混合蛍光体が用いられる。酸化物系蛍光体としては、上述した被覆蛍光体が用いられる。蛍光体の粉末は、平均粒径が数μm〜数十μmのものを用いる。これにより蛍光体シート26の光散乱効果を向上させることができる。
【0055】
光学フィルム27は、例えば液晶表示装置の視認性を向上させるための反射型偏光フィルム、レンズフィルム、拡散フィルムなどで構成される。ここで、レンズフィルムは、一方の面に微小なレンズが配列形成された光学フィルムであり、拡散光の正面方向の指向性を高めて輝度を高めるためのものである。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4において被覆蛍光体を作製し、作製した被覆蛍光体について発光特性評価、粒子径・比表面積測定、高温高湿環境試験及び元素溶出試験を行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
蛍光体[(Ba,Sr)0.97Eu0.03]3SiO55gと、エタノール40gと、純水(H2O)0.375gとを所定量秤量し、第1の溶液を調製した。次に、アルミニウムイソプロポキシド0.75gと、トルエンとを任意の割合で溶解させた第2の溶液を調製した。超音波撹拌により分散・混合した第1の溶液を恒温槽内で40℃まで調節した後、第2の溶液を添加することで反応を開始した。第2の溶液を添加後、60分で反応容器を恒温槽から取出し、粒子が沈降した後、反応容器から上澄みを除去し、減圧濾過を行った。その後、85℃のオーブン内で2時間乾燥し、試料をめのう乳鉢で解砕後、200℃、8時間焼成処理を行い、評価サンプル(試料)を得た。実施例1では、蛍光体中の2族元素の総和(Sr+Ba)に対する、アルミニウムアルコキシド中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/(ストロンチウムの原子量+バリウムの原子量))、すなわちAl/(Sr+Ba)元素存在比が0.1161となるようにした。
【0058】
(実施例2)
実施例2では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.1603となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0059】
(実施例3)
実施例3では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.2279となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0060】
(実施例4)
実施例4では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.2834となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例5では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.3081となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0062】
(実施例6)
実施例6では、蛍光体[(Ba,Sr)0.97Eu0.03]3SiO5の替わりに、[(Ba,Sr)0.94Eu0.06]2SiO4を用いたこと、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.1901となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0063】
(比較例1)
比較例1では、アルミニウムイソプロポキシドを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0064】
(比較例2)
比較例2では、アルミニウムイソプロポキシドの替わりに、二酸化ケイ素(SiO2)の金属アルコキシドであるTEOSを5g用いて第2の溶液を調製し、触媒としてアンモニア水7gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0065】
(比較例3)
比較例3では、アルミニウムイソプロポキシドを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0066】
(比較例4)
比較例4では、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.0479となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして評価サンプルを得た。
【0067】
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルに関する結果についてまとめたものを表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<発光特性評価>
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルの発光特性は、FP6500(日本分光(株)製)を用いて測定した。表1における「試料吸収率」とは、励起光の試料による減少分の入射光の比である。また、表1における「内部量子効率」とは、試料から放出される蛍光の光子数から、試料に吸収される励起光の光子数を割った値である。また、表1における「外部量子効率」とは、(試料吸収率)×(内部量子効率)である。発光特性評価の結果を表1に示す。
【0070】
図4には、実施例1で得られた評価サンプルの被覆処理前後の発光特性を示す。図4に示すように、被覆処理前後において試料吸収率がやや低下するが、内部量子効率が向上し、結果として外部量子効率が向上していることが確認できた。これは、アルミニウム酸化物によるレンズ効果により、被覆蛍光体の外部から内部に光が入射しやすくなり、また、被覆蛍光体の内部から外部に光が出射しやすくなったためと考えられる。
【0071】
<粒子径・比表面積測定>
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルの粒子径(D10、D50、D90)は、Multisizer4(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した。また、比表面積は、LA−500(堀場製作所(株)製)を用い、粒度分布測定を行うことによって求めた。粒子径・比表面積測定の結果を表1に示す。
【0072】
図5には、Al/(Sr+Ba)元素存在比に対する実施例1〜実施例3、実施例5、比較例3、比較例4で得られた評価サンプルの比表面積を示す。Al/(Sr+Ba)元素存在比は、得られた各評価サンプルについてICP発光分光分析装置(ICP−AES)又は蛍光X線分析(XRF)を行うことにより算出した。評価サンプルの比表面積は、アルミニウム元素の存在量が増加していくにつれて低下していることが分かる。これは、アルミニウム元素の存在量が増加するにつれて評価サンプルの凝集が起こっていることを示唆していると考えられる。Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.20以上となると、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0の場合と比較して、評価サンプルの比表面積が6割程度に低下することが確認できた。
【0073】
図6には、比較例3、比較例4、実施例1〜実施例5で得られた評価サンプルの電子顕微鏡写真を示す。図6のAは比較例3、図6のBは比較例4、図6のCは実施例1、図6のDは実施例2、図6のEは実施例3、図6のFは実施例4、図6のGは実施例5で得られた各評価サンプルの電子顕微鏡写真を示す。これらの結果から、上述したように、アルミニウム元素の存在量が増加するにつれて評価サンプルの凝集が起こることを確認することができた。
【0074】
<高温高湿環境変化試験>
高温高湿環境変化試験では、実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4で得られた評価サンプルについて、60℃90%RH又は85℃85%RHでの高温高湿試験により、初期発光強度等から試験終了後500時間後までの変化を確認した。発光強度測定には、分光光度計FP−6500(日本分光(株)製)を用いた。高温高湿環境変化試験の結果を図7に示す。図7において、記号(△)は、実施例1で得られた評価サンプルの結果を示す。また、記号(■)は、比較例2で得られた評価サンプルの結果を示す。また、記号(◆)は、比較例3で得られた評価サンプルの結果を示す。
【0075】
被覆処理無しの評価サンプル(比較例3)では、試験環境下3時間で急速に劣化した。また、蛍光体にTEOSを被覆した評価サンプル(比較例2)では、24時間後に大幅な輝度低下が認められた。これに対し、実施例1で作製した評価サンプルでは、試験後100時間近くとなっても発光を初期発光の約90%を維持していることが分かった。この結果、蛍光体にTEOSを被覆した評価サンプル(比較例2)が20時間で急速に白化するのに対して、蛍光体にアルミニウム酸化物を被覆した評価サンプル(実施例1)では、耐湿性が大幅に向上したことが確認された。これは、アルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させることにより、蛍光体の耐水性が向上し、蛍光体の発光特性を長期に亘って維持することができたためと考えられる。
【0076】
図8及び図9には、表面処理反応時間および反応温度環境における信頼性変化を示す。図8及び図9に示す結果から、蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で60分反応させた場合、40℃で蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合させた場合に、それぞれ高い信頼性が得られることが確認できた。
【0077】
図10には、実施例1〜実施例5、比較例3、比較例4で得られた評価サンプルについて、ピーク強度(記号(◆))と、85℃85%RHでの高温高湿試験により、初期発光強度等から試験終了後96時間後までの変化を確認した結果(記号(■))を示す。図9に示すように、実施例1〜実施例4で得られた評価サンプル、すなわち、Al/(Sr+Ba)元素存在比(アルミニウムの原子量/(ストロンチウムの原子量+バリウムの原子量))が0.10〜0.29の評価サンプルでは、蛍光特性が良好であり、発光特性を長期に亘って維持できることが確認できた。
【0078】
また、上述した図5に示す比表面積の結果から、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.10〜0.20の評価サンプル(実施例1、実施例2)では、凝集が少ないことが確認できた。したがって、Al/(Sr+Ba)元素存在比が0.10〜0.20の範囲において、蛍光特性が良好であり、凝集が少ない、発光特性を長期に亘って維持することができる被覆蛍光体が得られることが分かった。
【0079】
<元素溶出試験>
実施例6で得られた評価サンプルの信頼性を確認するために、元素溶出試験を行った。元素溶出試験では、55℃に加熱したイオン交換水100mlに、実施例6で得られた評価サンプル又は被覆処理無しの評価サンプル1gを添加し、その際の電導度変化を0、1、5、10、30、60minの時間でそれぞれ記録した。
【0080】
図11において、(a)は、アルミニウム酸化物を被覆していない蛍光体、(b)は、アルミニウム酸化物を被覆した蛍光体の電導度変化の結果を示す。図11に示す結果から、アルミニウム酸化物を被覆した蛍光体では、アルミニウム酸化物を被覆していない蛍光体と比較して、電導度の上昇を小さく抑えることができることが分かった。これは、シリケート蛍光体は、水中に添加することで2族元素が溶出して電導度が変化するが、アルミニウム酸化物によって蛍光体を被覆させることにより、蛍光体表面での元素溶出が抑制されることを示唆している。したがって、実施例1〜実施例5で用いた蛍光体([(Ba,Sr)0.97Eu0.03]3SiO5)以外の他の蛍光体についても、アルミニウム酸化物によって被覆させることにより、発光特性を長期に亘って維持できると考えられる。
【符号の説明】
【0081】
1 白色光源、2,3 照明装置、11 素子基板、12 パッド部、13 青色発光ダイオード、14,15 電極、16,17 リード線、18 樹脂層、19 開口部、20 壁面反射膜、21 混練物、22 照明基板、23 発光構造体、24基板、25 拡散板、26 蛍光体シート、27 光学フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合し、上記アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって上記蛍光体を被覆させる混合工程を有し、
上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する被覆蛍光体の製造方法。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【請求項2】
上記蛍光体中の2族元素に対する、上記アルミニウム酸化物中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)が0.10〜0.29となるように、上記蛍光体と上記アルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合する請求項1記載の被覆蛍光体の製造方法。
【請求項3】
上記混合工程において、30〜50℃で、上記蛍光体と上記アルミニウムアルコキシドとを上記溶媒中で混合させる請求項2記載の被覆蛍光体の製造方法。
【請求項4】
上記混合工程において、上記蛍光体と上記アルミニウムアルコキシドとを上記溶媒中で30〜90分反応させる請求項2記載の被覆蛍光体の製造方法。
【請求項5】
上記蛍光体が、上記2族元素(M)として、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含有する場合には、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(2)の原子数比で含有する請求項2乃至4のうちいずれか1項記載の被覆蛍光体の製造方法。
[(Ba1−ySry)1−xEux]aSibOc 組成式(2)
ただし、組成式(2)中、a、b、c、x、yは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09、0.25<y<0.75なる関係を満たす。
【請求項6】
アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、
上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する被覆蛍光体。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【請求項7】
上記蛍光体中の2族元素に対する、上記アルミニウム酸化物中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)が0.10〜0.29である請求項6記載の被覆蛍光体。
【請求項8】
素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、
上記青色発光ダイオード上に配置され、赤色蛍光体と緑色蛍光体又は黄色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、
上記赤色蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、
上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する白色光源。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【請求項1】
蛍光体とアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合し、上記アルミニウムアルコキシドから形成されるアルミニウム酸化物によって上記蛍光体を被覆させる混合工程を有し、
上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する被覆蛍光体の製造方法。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【請求項2】
上記蛍光体中の2族元素に対する、上記アルミニウム酸化物中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)が0.10〜0.29となるように、上記蛍光体と上記アルミニウムアルコキシドとを溶媒中で混合する請求項1記載の被覆蛍光体の製造方法。
【請求項3】
上記混合工程において、30〜50℃で、上記蛍光体と上記アルミニウムアルコキシドとを上記溶媒中で混合させる請求項2記載の被覆蛍光体の製造方法。
【請求項4】
上記混合工程において、上記蛍光体と上記アルミニウムアルコキシドとを上記溶媒中で30〜90分反応させる請求項2記載の被覆蛍光体の製造方法。
【請求項5】
上記蛍光体が、上記2族元素(M)として、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含有する場合には、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(2)の原子数比で含有する請求項2乃至4のうちいずれか1項記載の被覆蛍光体の製造方法。
[(Ba1−ySry)1−xEux]aSibOc 組成式(2)
ただし、組成式(2)中、a、b、c、x、yは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09、0.25<y<0.75なる関係を満たす。
【請求項6】
アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、
上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する被覆蛍光体。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【請求項7】
上記蛍光体中の2族元素に対する、上記アルミニウム酸化物中のアルミニウムの原子量比(アルミニウムの原子量/2族元素の原子量)が0.10〜0.29である請求項6記載の被覆蛍光体。
【請求項8】
素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、
上記青色発光ダイオード上に配置され、赤色蛍光体と緑色蛍光体又は黄色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、
上記赤色蛍光体は、アルミニウム酸化物によって蛍光体が被覆されてなり、
上記蛍光体は、2族元素(M)、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)および酸素(O)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する白色光源。
[(M)1−xEux]aSibOc 組成式(1)
ただし、組成式(1)中、a、b、c、xは、1.8<a<3.3、0.9<b<1.1、3.6<c<5.5、0<x<0.09なる関係を満たす。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−67710(P2013−67710A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206377(P2011−206377)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】
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