説明

被覆蛍光体及び発光装置

【課題】蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子の発光効率のより一層の向上を、簡易な構成により図ることができる被覆蛍光体粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係る被覆蛍光体は、蛍光体粒子と、この蛍光体粒子の外側を覆う被覆層とを備える。前記被覆層が金属酸化物から形成されている母相と、前記母相中よりも屈折率の高い金属酸化物粒子とを備える。前記金属酸化物粒子が前記母相中に分散して存在すると共に、前記被覆層の前記金属酸化物粒子の濃度が、蛍光体粒子から離れるほど低くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆蛍光体及びこの被覆蛍光体を備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの発光素子と、この発光素子が発する光の波長を変換する蛍光体とを備える発光装置は、小型であり、その消費電力が白熱電球よりも少なく、さらに白色など使用目的に応じた適宜の色を発光することが可能である。このため、このような発光装置は、液晶ディスプレイ、携帯電話や携帯情報端末等の液晶表示装置などにおけるバックライト用光源、室内外広告等に利用される表示装置、各種携帯機器のインジケータ、照明スイッチ、OA(オフィスオートメーション)機器用光源等に利用され得る。
【0003】
発光素子が発する光の波長を蛍光体によって変換するにあたっては、透光性媒体と、この透光性媒体中に分散している蛍光体粒子とを備える波長変換部材が、しばしば用いられる。発光素子から発せられる光が波長変換部材に入射すると、光は透光性媒体を進んで蛍光体粒子に入射する。これにより蛍光体粒子が励起されて蛍光体粒子が入射光(励起光)よりも長波長の蛍光を発する。これにより光の波長変換がされる。
【0004】
しかし、ガラスやシリコーン樹脂などから形成される透光性媒体の屈折率は蛍光体粒子の屈折率よりも低いため、透光性媒体内で蛍光体粒子へ向かう光の一部は透光性媒体と蛍光体粒子との界面で全反射してしまう。このため蛍光体粒子への励起光の入射効率が低くなってしまい、それに伴って蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率(蛍光体粒子の発光効率)も低くなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、蛍光体への励起光の入射効率および蛍光体からの蛍光の取出し効率を向上させて波長変換効率を向上させた発光装置を実現するために、酸窒化物および/または窒化物よりなる屈折率n1である蛍光体粒子と前記蛍光体粒子を覆い屈折率n2である被膜とからなる蛍光体、並びに前記蛍光体を分散させた屈折率n3である媒体からなる波長変換部材において、被膜の屈折率n2は、n3とn1の間の値である波長変換部材が開示されている。
【0006】
しかし、この特許文献1に記載の技術においても、媒体と被膜との界面、並びに被膜と蛍光体粒子との界面においては、屈折率の不連続な変化が生じるため、蛍光体粒子へ向かう光の一部は媒体と被膜との界面又は被膜と蛍光体粒子との界面で反射してしまう。そのため蛍光体粒子への励起光の入射効率並びに蛍光体粒子の発光効率は十分に高くはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−324475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子の発光効率のより一層の向上を、簡易な構成により図ることができる被覆蛍光体粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る被覆蛍光体は、蛍光体粒子と、この蛍光体粒子の外側を覆う被覆層とを備え、前記被覆層が金属酸化物から形成されている母相と、前記母相よりも屈折率の高い金属酸化物粒子とを備え、前記金属酸化物粒子が前記母相中に分散して存在すると共に、前記被覆層の前記金属酸化物粒子の濃度が、蛍光体粒子から離れるほど低くなっている。
【0010】
本発明に係る被覆蛍光体において、前記母相が、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキシドの誘導体、並びにこれらの部分加水分解縮合物から選択される少なくとも一種から生成する酸化ケイ素から形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る被覆蛍光体において、前記母相が、ポリシラザンが転化して生成するシリカから形成されていることも好ましい。
【0012】
本発明において、前記金属酸化物粒子の材質が、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、及び酸化イットリウムから選択される少なくとも一種であり、前記金属酸化物粒子の粒子径が1nm以上100nm以下であることも好ましい。
【0013】
本発明に係る発光装置は、前記被覆蛍光体を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子の発光効率のより一層の向上を、簡易な構成により図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における被覆蛍光体、及びこの被覆蛍光体を備える波長変換部材の断面構造を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における被覆蛍光体内及び透光性媒体の、理想的な屈折率変化のイメージを示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態における発光装置を示す、一部破断した分解斜視図である。
【図4】前記発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態では、被覆蛍光体100は、図1に示すように、蛍光体粒子101と、この蛍光体粒子101の外側を覆う被覆層102を備える。尚、図1は、被覆蛍光体100と透光性媒体72とを波長変換部材70の断面構造の概略を示す。
【0017】
蛍光体粒子101を構成する蛍光体には特に制限はないが、例えばCaAlSiN:Eu2+、(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+、CaS:Eu2+、(Ca,Sr)Si:Eu2+等の組成を有する赤色蛍光体;CaSc:Ce3+、CaScSi12:Ce3+、(Ca,Sr,Ba)Al:Eu2+、SrGa:Eu2+等の組成を有する緑色蛍光体;YAl12:Ce3+、(Ca,Sr,Ba,Zn)SiO:Eu2+等の組成を有する黄色蛍光体;(Ba,Sr)SiO:Eu2+等の組成を有する黄緑色蛍光体;SrSiO:Eu2+、Ca0.7Sr0.3AlSiN:Eu2+等の組成を有する橙色蛍光体などが挙げられる。
【0018】
蛍光体粒子101の粒径に特に制限はない。但し、蛍光体粒子101の粒径が大きいほど、蛍光体粒子101内の欠陥密度が低くなり、このため発光時のエネルギー損失が少なくなって発光効率が高くなる。特に、蛍光体粒子101のメディアン径(D50)は4〜30μmの範囲であることが好ましい。このメディアン径(D50)は、体積基準のメディアン径であってレーザー回折式散乱粒度分布測定器によって測定される。
【0019】
被覆層102は、金属酸化物から形成される母相104と、金属酸化物粒子103とを備える。金属酸化物粒子103は、母相104中に分散して存在する。
【0020】
この金属酸化物粒子103は、母相104よりも屈折率が高い。更に、被覆層102内の金属酸化物粒子103の濃度は、蛍光体粒子101から離れるほど(すなわち被覆層102の外面側に近づくほど)低くなっている。このため、被覆層102の屈折率は、蛍光体粒子101から離れるほど(すなわち被覆層102の外面側に近づくほど)、徐々に(理想的には連続的に)低くなる。
【0021】
被覆蛍光体100がこのような被覆層102を備えていると、被覆蛍光体100が透光性媒体72中に配置される場合の、被覆層102と透光性媒体72との界面の間での光の反射、並びに被覆層102と蛍光体粒子101との界面での光の反射が、抑制され得る。すなわち、被覆層102の屈折率が蛍光体粒子101から離れるほど徐々に低くなるため、被覆層102の外面側部分の屈折率が透光性媒体72の屈折率に近くなり、被覆層102の蛍光体粒子101側部分の屈折率が蛍光体粒子101の屈折率に近くなり、更に被覆層102内ではその屈折率が徐々に変化するような、被覆層102の屈折率制御がされ得る。このため透光性媒体72と被覆層102との界面での光の反射が抑制され、被覆層102と蛍光体粒子101との界面での光の反射も抑制され、更に被覆層102内での光の反射も抑制される。これにより、蛍光体粒子101への励起光の入射効率が高くなり、それに伴って蛍光体粒子101の発光効率が向上する。
【0022】
理想的には、被覆層102の屈折率は、図2に示すように、蛍光体粒子101との界面で蛍光体粒子101の屈折率に一致し、透光性媒体72との界面で透光性媒体72の屈折率に一致し、被覆層102の内部では屈折率が連続的に変化するように調整される。この場合、被覆蛍光体100と透光性媒体72との界面並びに被覆蛍光体100の内部には、屈折率の不連続な変化が全く存在しなくなり、このため蛍光体粒子101への励起光の入射効率が著しく高くなると共に、蛍光体粒子101の発光効率が著しく向上する。
【0023】
金属酸化物粒子103の材質は、蛍光体粒子101への励起光、及び蛍光体粒子101が発する蛍光を透過させ得る金属酸化物であることが好ましい。金属酸化物粒子103の屈折率は母相104の屈折率よりも大きい必要があるが、更に金属酸化物粒子103の屈折率は蛍光体粒子101の屈折率の値以上であることが好ましい。この場合、被覆層102の蛍光体粒子101側部分の屈折率が蛍光体粒子101の屈折率に近似するように容易に調整され得る。
【0024】
特に金属酸化物粒子103と蛍光体粒子101との屈折率の差が0.1〜0.7の範囲であることが好ましい。
【0025】
また、蛍光体粒子101との界面における被覆層102の屈折率と、蛍光体粒子101の屈折率との差が0〜0.2の範囲であることが好ましい。
【0026】
金属酸化物粒子103の好ましい材質としては、酸化アルミニウム(屈折率1.65〜1.76)、二酸化チタン(屈折率2.1〜2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率1.9〜2.5)、酸化ニオブ(屈折率1.9〜2.4)、酸化スズ(屈折率1.8〜1.99)、及び酸化イットリウム(屈折率1.8〜1.91)から選択される少なくとも一種が挙げられる。金属酸化物粒子103の屈折率は、金属酸化物粒子103の結晶性等に応じて変動する。
【0027】
更に、金属酸化物粒子103の平均粒子径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。この場合、金属酸化物粒子103の平均粒径が1nm以上であることで金属酸化物粒子103の十分に高い結晶性が確保されて金属酸化物粒子103の屈折率の悪化が抑制され、またこの平均粒径が100nm以下であることで金属酸化物粒子103による光の散乱が抑制されて被覆層102の光透過性が十分に高くなる。金属酸化物粒子103の平均粒子径は、動的光散乱法によって測定される体積基準での平均粒子径である。
【0028】
被覆層102全体に対する金属酸化物粒子103の割合は適宜設定されるが、被覆層102の屈折率が良好に調整されると共に被覆層1の高い光透過性が十分に確保されるためには、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であれば更に好ましい。またこの割合は80体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であれば更に好ましく、50体積%以下であれば更に好ましい。特に被覆層102全体に対する金属酸化物粒子103の割合が10〜80体積%の範囲であることが好ましく、30〜70体積%の範囲であると更に好ましく、30〜50体積%の範囲であると更に好ましい
母相104の材質は、蛍光体粒子101への励起光、及び蛍光体粒子101が発する蛍光を透過させる材質であることが好ましい。更に母相104は、蛍光体粒子101の屈折率よりも低く、且つ波長変換部材70における透光性媒体72の屈折率と近似する屈折率を有する材質から形成されることが好ましい。この場合、被覆層102と透光性媒体72との界面での光の反射が特に抑制される。母相104は例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシドの誘導体、並びにこれらの部分加水分解縮合物から選択される少なくとも一種から生成する金属酸化物から形成されることが好ましい。
【0029】
特に母相104は、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキシドの誘導体、並びにこれらの部分加水分解縮合物から選択される少なくとも一種から生成する酸化ケイ素から形成されることが好ましい。この場合、母相104の屈折率が、透光性媒体72の材質として好適なケイ素化合物やガラスなどと非常に近似したものとなる。
【0030】
特に、母相104と透光性媒体72との屈折率の差が0〜0.02の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、透光性媒体72との界面における被覆層102の屈折率と、透光性媒体72の屈折率との差が0〜0.04の範囲であることが好ましい。
【0032】
母相104を形成するための金属アルコキシドとして、次の化学式(1)で示される構造を有する化合物(以下、第一の金属アルコキシドといい、例えば金属がケイ素である場合には第一のケイ素アルコキシドという)が挙げられる。第一の金属アルコキシドでは金属原子にアルコキシド基のみが結合している。第一の金属アルコキシド、第一の金属アルコキシドの誘導体、並びにこれらの部分加水分解縮合物から選択される少なくとも一種(以下、第一の金属アルコキシド等という)から生成する金属酸化物では、金属原子間の架橋密度が高くなる。このため母相104が非常に緻密になる。
【0033】
(OR …(1)
化学式(1)において、MはSi、Ti、Al、Zr、Ge、Yから選択される金属原子である。mは金属原子Mの価数に等しい数である。
【0034】
はアルキル基及び水素から選択される。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。一分子中にRが複数存在する場合には、複数のRは互いに同一であっても異なってもよい。例えばRが全てメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基であってもよいし、Rが全て水素であってもよいし、複数のRのうち一部がアルキル基で、残りが全て水素であってもよい。
【0035】
第一の金属アルコキシドの具体例としては、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シランなどの、置換または非置換のアルコキシシラン類;
アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリス(ヘキシルオキシド)、アルミニウムトリス(2−エチルヘキシルオキシド)、アルミニウムトリス(2−メトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2−エトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2−ブトキシエトキシド)などの、置換または非置換のアルミニウムアルコキシド類;
チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)などの、チタンアルコキシド類;
ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)などの、ジルコニウムアルコキシド類;
ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−プロポキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、ゲルマニウムテトラ−sec−ブトキシド、ゲルマニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)などの、ゲルマニウムアルコキシド類;
イットリウムヘキサエトキシド、イットリウムヘキサエトキシド−n−プロポキシド、イットリウムヘキサエトキシドイソプロポキシド、イットリウムヘキサエトキシド−n−ブトキシド、イットリウムヘキサエトキシド−sec−ブトキシド、イットリウムヘキサエトキシドキス(2−エチルヘキシルオキシド)などの、イットリウムアルコキシド類;
が挙げられる。
【0036】
ケイ素アルコキシド及びケイ素アルコキシドの誘導体としては、次の一般式(2)に示される加水分解性オルガノシラン化合物が挙げられる。
【0037】
SiX4−p …(2)
(式(1)において、pは0〜3の整数)
上記式(1)中で、Rは置換若しくは非置換の炭化水素基であって、単結合でSi原子と結合するもの(1価の炭化水素基)を示し、複数ある場合には同一のものでも異種のものでも良い。式(1)中のXは、加水分解性基を示し、複数ある場合には同一の基でも異種の基でもよい。また、例えば4官能のものに加えて、3官能以下のものを併用しても良い。
【0038】
上記のRとしては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜8の置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を用いることが好ましい。
【0039】
の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基とのハロゲン置換炭化水素基;γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらのなかでも、合成のし易さあるいは入手のし易さから、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基が好ましい。尚、アルキル基のうち、炭素数3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基等のように直鎖状のものであってもよいし、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等のように分岐を有するものであっても良い。
【0040】
上記一般式(1)中で、Xとしては、同一又は異種の加水分解性基であれば特に限定されないが、例えばアルコキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基等が挙げられる。すなわち、具体例としては、一般式(1)中のpの値が0〜3の整数であるモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−の各官能性のアルコキシ金属類、アセトキシ金属類、オキシム金属類、エノキシ金属類、アミノ金属類、アミノキシ金属類、アミド金属類などが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、合成のし易さ或いは入手のし易さから、Xがアルコキシ基(OR)であるアルコキシシランであることが好ましい。またアルコキシ基のなかでも、そのアルキル基(R)の炭素数が1〜8のものであることが好ましい。
【0042】
このアルコキシ基中の炭素数が1〜8のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。このアルコキシ基中のアルキル基のうち、炭素数が3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基等のような直鎖状のものであってもよいし、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等のように分岐を有するものであっても良い。また、一般にカップリング剤とよばれるオルガノシランも、上記のアルコキシシランに含まれる。
【0043】
母相104を形成するための金属アルコキシドとして、次の化学式(3)で示される構造を有する化合物(以下、第二の金属アルコキシドといい、例えば金属がケイ素である場合には第二のケイ素アルコキシドという)も挙げられる。第二の金属アルコキシド、第二の金属アルコキシドの誘導体、並びにこれらの部分加水分解縮合物から選択される少なくとも一種(以下、第二の金属アルコキシド等という)から生成する金属酸化物は撥水性の基を備えることで撥水性が高くなる。
【0044】
(Rn−x(R …(3)
化学式(3)において、MはSi、Ti、Al、Zr、Ge、Yから選択される金属原子である。
【0045】
は加水分解縮合反応に関与する官能基であり、一分子中Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なってもよい。この官能基は、アルコキシド基、水酸基、クロロ基から選択される官能基であることが好ましい。
【0046】
は疎水性(撥水性)を有する置換基であり、一分子中にRが複数存在する場合は互いに同一であっても異なってもよい。この置換基は、長鎖炭化水素基及びフッ素含有炭化水素基から選ばれる置換基であることが好ましく、特に−(CH−CH及び−(CH−(CF−CFから選ばれる置換基であることが好ましい。
【0047】
−(CH−CHはC原子とH原子から成る長鎖炭化水素基である。この長鎖炭化水素基中のyは2以上の整数であることが、被覆蛍光体100の撥水性向上のために特に好ましい。
【0048】
−(CH−(CF−CFは、金属原子Mと−CF−基との間に介在する−CH−CH−結合をリンカーとして備えるフッ素含有炭化水素基である。このフッ素含有炭化水素基中のzは1以上の整数であることが、被覆蛍光体100の撥水性向上のために特に好ましい。
【0049】
化学式(3)において、nは金属元素Mの価数に等しい数である。xは1以上の整数であり、n>xの関係を満たす。すなわち、第二の金属アルコキシドは、加水分解縮合反応に関与する官能基を一分子中に少なくとも1つ備えると共に、疎水性を有する置換基を一分子中に少なくとも1つ備える。
【0050】
長鎖炭化水素基を備える第二の金属アルコキシドの具体例としては、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシランなどが挙げられる。フッ素含有炭化水素基を備える第二の金属アルコキシドの具体例としては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0051】
上記のような金属アルコキシド等が、金属酸化物粒子103の存在下で、蛍光体粒子101の表面上で縮重合すると、蛍光体粒子101上に金属アルコキシド等の縮重合物(金属酸化物)が堆積して母相104が形成されると共に、この母相104内に蛍光体粒子101が取り込まれることで、被覆層102が形成される。このように被覆層102が形成されると、金属酸化物粒子103の表面は親水性が高いため、金属酸化物粒子103は被覆層102内で蛍光体粒子101の表面近くに存在しやすくなる。このため、被覆層102内には、金属酸化物粒子103の濃度が、蛍光体粒子101から離れるほど低くなるような濃度分布が生じる。
【0052】
特に、第一の金属アルコキシド等と第二の金属アルコキシド等とを含む混合物から母相104が形成されることが好ましく、更に第一のケイ素アルコキシド等と第二のケイ素アルコキシド等とを含む混合物から母相104が形成されることが好ましい。これらの金属アルコキシド等が蛍光体粒子101の表面上で縮合反応することにより形成される母相104においては、第二の金属アルコキシド等に由来する疎水性を有する置換基が蛍光体粒子101から離れた位置に偏在して分布するようになる。これは、疎水性を有する置換基の表面エネルギーが高いためであると考えられる。一方、蛍光体粒子101の表面上には通常はOH基などの親水性の基が存在するために蛍光体粒子101の表面の親水性は高い。このため被覆層102内では蛍光体粒子101の表面側ほど親水性が高くなり、外面側ほど疎水性が高くなる。一方、金属酸化物粒子103の表面は親水性が高い。このため、金属酸化物粒子103は被覆層102内において蛍光体粒子101の表面近くに存在しやすくなり、逆に被覆層102の外面付近には存在しにくくなる。このため、被覆層102内には、金属酸化物粒子103の濃度が、蛍光体粒子101から離れるほど低くなるような濃度分布が更に生じやすくなる。更に、金属アルコキシド等全体に対する第二の金属アルコキシド等の割合が適宜調整されることで、被覆層102内の金属酸化物粒子103の分布状態(濃度分布)を制御することも可能となる。
【0053】
母相104が第一の金属アルコキシド等と第二の金属アルコキシド等との混合物の、縮合物から形成される場合には、縮合反応時に蛍光体粒子101の表面上に供給されるこれらの金属アルコキシド等の総量に対する、第二の金属アルコキシド等の割合が、10〜40モル%の範囲であることが好ましい。このモル分率は、金属アルコキシド等を構成する金属原子のモル数を基準とする値である。
【0054】
金属アルコキシドから母相104を形成する場合の、被覆層102を形成する方法の具体例としては、次に示すゾルゲルコーティング法が挙げられる。
【0055】
ゾルゲルコーティング法では、まず蛍光体粒子101が液状の媒体中に加えられる。続いて、この媒体が攪拌されながら、この媒体中に金属アルコキシド等及び金属酸化物粒子103、或いはこれらを含む溶液が加えられる。これにより金属アルコキシド等の加水分解縮合反応が進行して、蛍光体粒子101の表面上に金属アルコキシド等の加水分解縮合物が金属酸化物粒子103を取り込みながら堆積し、これにより被覆層102が形成される。
【0056】
ゾルゲルコーティング法で使用される液状の媒体の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジン、ガソリン、ナフサなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒が挙げられる。これらの液状の媒体のうち一種のみが単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0057】
ゾルゲルコーティング法において、液状の媒体には、加水分解縮合反応の進行のために必要とされる化学量論量または過剰量の水が加えられることが好ましい。水は適宜のタイミングで液状の媒体中に加えられる。例えば水は、蛍光体粒子101が分散されている液状の媒体に加えられても、加水分解速度が比較的小さい金属アルコキシドとともに液状の媒体に加えられても、金属アルコキシドとは別個に液状の媒体に加えられてもよい。あるいは、金属アルコキシドが蛍光体粒子101表面に付着した状態で溶媒が留去され或いはろ過によって、金属アルコキシドが付着している蛍光体粒子101が回収された後、この蛍光体粒子101が気相または液相の水と接触すると、蛍光体粒子101の表面上で金属アルコキシドの加水分解縮合反応が進行することで、第一の層102が形成される。
【0058】
母相104が、ポリシラザンが転化して生成する酸化ケイ素(シリカ)から形成されることも好ましい。この場合、母相104の屈折率が、透光性媒体72の材質として好適なケイ素化合物やガラスなどと非常に近似したものとなる。更にこのような母相104は緻密で水分断性に極めて優れている。しかもこのような母相104はポリシラザンから比較的低温で形成され得る。更に、このような母相104ではLEDの発光波長域での光吸収がなく、或いはLEDの発光波長域での光吸収量が少ない。このためこのような母相104は、蛍光体粒子101の水蒸気ガスバリアのために適している。
【0059】
ポリシラザンは、例えば下記の一般式で表される構造単位を含む。この一般式中のR,R,Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、或いはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキル、アミノ基、アルコキシ基、又は金属原子を表す。
【0060】
【化1】

【0061】
被覆層102の耐熱・耐光性の向上のためには、ポリシラザンが、上記一般式におけるR,R,Rが全て水素であるペルヒドロポリシラザンであることが好ましい。
【0062】
ポリシラザンの平均分子量は特に制限されないが、例えば100〜50000の範囲とされ、特に500〜20000の範囲が好ましい。この平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される重量平均分子量の値である。ポリシラザンの平均分子量が小さすぎると、被覆層102の形成時に溶媒とともにポリシラザンが蒸発しやすくなり、被覆層102の形成に使用されるポリシラザンの量が低下してしまう可能性がある。一方、ポリシラザンの平均分子量が大きすぎると、ポリシラザンがゲル化しやすくなり、ポリシラザンの取り扱い性が悪くなると共に、被覆層102の緻密化が難しくなる。
【0063】
上記のようなポリシラザンが、金属酸化物粒子103の存在下で、蛍光体粒子101の表面上でシリカに転化すると、蛍光体粒子101上にシリカが堆積して母相104が形成されると共に、この母相104内に蛍光体粒子101が取り込まれることで、被覆層102が形成される。このように被覆層102が形成されると、金属酸化物粒子103の表面は親水性が高いため、金属酸化物粒子103は被覆層102内で蛍光体粒子101の表面近くに存在しやすくなる。このため、被覆層102内には、金属酸化物粒子103の濃度が、蛍光体粒子101から離れるほど低くなるような濃度分布が生じる。
【0064】
被覆層102が形成される際には、例えばまず溶媒中にポリシラザン及び金属酸化物粒子103を分散させることで分散液を調製する。この分散液を蛍光体粒子101の表面上に付着させ、更にこの分散液から溶媒を揮発させると共に、蛍光体粒子101の表面上に残留するポリシラザンをシリカに転化させる。するとシリカが金属酸化物粒子103を取り込みながら蛍光体粒子101の表面上に堆積し、これによりシリカにより形成される母相104と蛍光体粒子101とを含有する被覆層102が形成される。
【0065】
被覆層102の形成に使用される溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベンゼン等のハロゲン化炭化水素;脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類などが、挙げられる。好ましい溶媒の更に具体的な例として、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、1,2−ジオキシエタン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ペンタンヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素等が、挙げられる。特に好ましい溶媒は、取り扱いやすさおよび溶液の安定性から、ブチルエーテル及びキシレンなどである。
【0066】
これらの溶媒は一種のみが使用され、或いはポリシラザンの溶解度や溶媒の蒸発速度の調節などのために二種以上が併用される。
【0067】
分散液中のポリシラザンの固形分濃度は、被覆層102の形成のために採用されるコーティング方法の種類などに応じ、作業性の向上などが考慮されて、決定される。ポリシラザンの最適な固形分濃度は、ポリシラザンの平均分子量、分子量分布、構造等によっても異なるので、適宜に決定される。好ましくはポリシラザンの固形分濃度が0.5〜30質量%の範囲で調整されることが推奨される。
【0068】
ポリシラザンのシリカへの転化時には、この転化を促進させる触媒が使用されてもよい。この触媒としては、塩基性触媒、金属イオン触媒などが好ましい。
【0069】
塩基性触媒の具体例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−エキシルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、アンモニア水等のアルカリ類などが、挙げられる。このうち、特に反応性および取り扱い性の観点からは、トリエチルアミンやアンモニア水などが好ましい。塩基性触媒は、蛍光体粒子101に被覆される前のポリシラザン溶液を含有する分散液中に予め加えられていてもよい。ポリシラザンで被覆された蛍光体粒子101が、塩基性触媒が分散された水溶液などに浸漬されてもよい。ポリシラザンで被覆された蛍光体粒子101が、塩基性触媒を含有する水溶液の蒸気に曝露されてもよい。
【0070】
金属イオン触媒の具体例としては、Pt、Ni、Pdなどの後周期遷移金属のイオンが挙げられる。このうち、特に反応性および取り扱い性の観点からは、Pdイオンが好ましい。金属イオン触媒は、蛍光体粒子101に被覆される前のポリシラザン溶液を含有する分散液中に予め加えられていてもよい。ポリシラザンで被覆された蛍光体粒子101が、金属イオン触媒が分散された水溶液などに浸漬されてもよい。
【0071】
被覆層102が形成された後、この被覆層102には加熱処理や加湿加熱処理などが施されることで、被覆層102中のポリシラザンからのシリカへの転化が更に進行されることが好ましい。この場合、被覆層102が更に緻密化し、これにより被覆蛍光体100の耐湿性が向上する。加熱処理における加熱温度は特に限定されないが60〜600℃の範囲が好ましい。ポリシラザンからシリカへの転化は通常400℃以上で進行するが、触媒が使用されている場合は、加熱温度は130〜250℃あるいはそれ以下の温度でもよい。加熱時間は特に限定されないが0.5〜3時間の範囲が好ましい。この加熱処理により、被覆層102におけるポリシラザンからのシリカへの転化が更に進行される。加熱処理時の雰囲気は、酸素中、空気中、不活性ガス等のいずれであってもよい。特に空気中で加熱処理が施されることが好ましく、この場合、ポリシラザンの酸化、あるいは空気中に共存する水蒸気による加水分解が進行し、低い加熱温度でSi−O結合あるいはSi−N結合を主体とする強靱な母相104の形成が可能となる。
【0072】
このようにして形成される被覆層102中の母相104はポリシラザンに由来するシランから形成されるため、通常は窒素を原子百分率で0.05%以上含有する。母相104が充分に緻密化するためには、母相104における窒素の原子百分率が5%以下であることが好ましく、特に3%以下であることが好ましい。
【0073】
被覆層102の厚みは、100〜10000nmの範囲が好ましい。この場合、被覆層102の厚みが100nm以上であることで被覆層102内での屈折率の傾斜を生じさせやすくなり、またこの厚みが10000nm以下であることで被覆層102の高い比較透過性が確保される。被覆層102の厚みは100〜1000であれば更に好ましく100〜500であれば特に好ましい。
【0074】
[波長変換部材]
波長変換部材70は、図1に示すように被覆蛍光体100と透光性媒体72とを備える。被覆蛍光体100は透光性媒体72中に分散している。
【0075】
透光性媒体72の屈折率は、上述の通り被覆蛍光体100における母相104の屈折率に近似することが好ましい。
【0076】
透光性媒体72の材質としてシロキサン結合を有するケイ素化合物やガラス等が挙げられる。これらの材質は耐熱性および耐光性(青色〜紫外線等の短波長の光に対する耐久性)に優れるため、被覆蛍光体100の励起光である青色光から紫外光にわたる波長域の光によって透光性媒体72が劣化することが抑制される。ケイ素化合物の例としては、シリコーン樹脂、オルガノシロキサンの加水分解縮合物、オルガノシロキサンの縮合物などが、公知の重合手法(ヒドロシリル化などの付加重合、ラジカル重合など)により架橋することで生成する複合樹脂が挙げられる。透光性媒体72として、例えばアクリル樹脂や、有機成分と無機成分とがnmレベルもしくは分子レベルで混合、結合されることで形成される有機・無機ハイブリッド材料などが採用されてもよい。
【0077】
波長変換部材70中の被覆蛍光体100の含有量は、被覆蛍光体100及び透光性媒体72の種類、波長変換部材70の寸法、波長変換部材70に要求される波長変換能等を考慮して適宜決定されるが、例えば5質量%〜30質量%の範囲である。
【0078】
この波長変換部材70に被覆蛍光体100の励起光が照射されると、被覆蛍光体100が励起光を吸収して、励起光よりも長波長の蛍光を発光する。これにより、波長変換部材70を光が透過する際に、この光の波長が被覆蛍光体100によって変換される。
【0079】
このように構成される波長変換部材70では、本実施形態に係る被覆蛍光体100を備えることで、被覆蛍光体100への励起光の入射効率が高くなり、このため被覆蛍光体100からの光の取り出し効率(被覆蛍光体100の発光効率)が高くなる。このため、波長変換部材70の発光効率も高くなる。
【0080】
[発光装置]
本実施形態による発光装置について説明する。この発光装置1は、図3,4に示されるように、発光素子であるLEDチップ10、実装基板20、光学部材60、封止部50、並びに波長変換部材(色変換部材)70を備える。上述の通り、波長変換部材(色変換部材)70は本実施形態に係る被覆蛍光体100を備える。
【0081】
LEDチップ10は実装基板20に実装されている。実装基板20の形状は平面視矩形板状である。実装基板20の厚み方向に面する第一の表面上にはLEDチップ10への給電用の一対の導体パターン23が形成され、更にこの第一の表面上にLEDチップ10が実装されている。LEDチップ10と導体パターン23とはボンディングワイヤ14で電気的に接続されている。光学部材60はドーム状の部材であり、実装基板20の第一の表面上に固着されている。この光学部材60と実装基板20との間に、LEDチップ10が収容されている。この光学部材60は、LEDチップ10から放射される光の配向を制御する機能を有する。封止部50は透光性の封止材料から形成される。封止部50は光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間に充填されている。この封止部50により、LEDチップ10および複数本(本実施形態では、2本)のボンディングワイヤ14が封止されている。波長変換部材70は、光学部材60を包囲するようにドーム状に形成されている。LEDチップ10が発光すると、LEDチップ10から放射された光(励起光)によって波長変換部材70中の被覆蛍光体100が励起されて励起光よりも長波長の蛍光(LEDチップ10の発光色とは異なる色の光からなる変換光)を放射する。光学部材60と波長変換部材70との間には、空気などの気体が充実する空隙80が介在している。実装基板20の第一の表面上には、光学部材60の外周を包囲する環状の堰部27が形成されている。堰部27は第一の表面上から突出するように形成される。このため、光学部材60が実装基板20に固着される際に、光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間から封止材料が溢れ出ようとしても、この封止材料が堰部27によって堰き止められる。
【0082】
LEDチップ10の主発光ピークは350nm〜470nmの範囲にあることが好ましい。このようなLEDチップ10としては、青色光を放射するGaN系の青色LEDチップや近紫外光を放射する近紫外LEDチップが挙げられる。
【0083】
GaN系の青色LEDチップには、結晶成長用基板として、サファイア基板よりも格子定数や結晶構造がGaNに近く且つ導電性を有するn形のSiC基板が用いられる。このSiC基板上に、例えばダブルへテロ構造を有する発光部が形成される。発光部は、たとえばGaN系化合物半導体材料などを原料として、エピタキシャル成長法(例えば、MOVPE法など)などで形成される。このLEDチップ10は、その実装基板20の第一の表面と対向する表面上にカソード電極を備え、それとは反対側の表面上にアノード電極を備える。このカソード電極およびアノード電極は、例えばNi膜とAu膜との積層膜により構成される。カソード電極およびアノード電極の材料は特に制限されず、良好なオーミック特性が得られる材料であればよく、例えばAlなどであってもよい。
【0084】
LEDチップ10の構造は上記構造に限定されない。例えば、結晶成長用基板上にエピタキシャル成長により発光部などが形成された後、発光部を支持するSi基板などの支持基板が発光部に固着され、更にその後、結晶成長用基板が除去されることで、LEDチップ10が形成されてもよい。
【0085】
実装基板20は矩形板状の伝熱板21と配線基板22とで構成される。伝熱板21は熱伝導性材料から形成される。この伝熱板21にLEDチップ10が実装される。配線基板22は例えば矩形板状のフレキシブルプリント配線板である。配線基板22は伝熱板21上に例えばポリオレフィン系の固着シート29を介して固着される。配線基板22の中央部には、伝熱板21におけるLEDチップ10の実装位置を露出させる矩形状の窓孔24が形成されている。この窓孔24の内側で、LEDチップ10が後述のサブマウント部材30を介して伝熱板21に実装される。したがって、LEDチップ10で発生した熱は配線基板22を介さずにサブマウント部材30および伝熱板21へ伝導する。
【0086】
配線基板22は、ポリイミドフィルムからなる絶縁性基材221と、この絶縁性基材221上に形成された、LEDチップ10への給電用の一対の導体パターン23とを備える。更に配線基板22は、各導体パターン23を覆うと共に絶縁性基材221上の導体パターン23が形成されていない部位を覆う保護層26を備える。保護層26は例えば光反射性を有する白色系のレジスト(樹脂)から形成される。この場合、LEDチップ10から配線基板22に向けて光が放射されても、保護層26で光が反射されることで配線基板22における光の吸収が抑制される。これにより、LEDチップ10から外部への光取り出し効率が向上し、発光装置の光出力が向上する。尚、各導体パターン23は、絶縁性基材221の外周形状の半分よりもやや小さな外周形状に形成されている。絶縁性基材221はFR4基板、FR5基板、紙フェノール樹脂基板などから形成されてもよい。
【0087】
各導体パターン23は、平面視矩形状の端子部231を二つずつ備える。この端子部231は配線基板22の窓孔24の近傍に位置し、この端子部231にボンディングワイヤ14が接続される。各導体パターン23は、更に平面視円形状の外部接続用電極部232を一つずつ備える。この外部接続用電極部232は、配線基板22の外周付近に位置している。導体パターン23は、例えばCu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成される。
【0088】
保護層26は、この保護層26から各導体パターン23が部分的に露出するようにパターニングされている。配線基板22の窓孔24の近傍で、各導体パターン23における端子部231が保護層26から露出している。更に、配線基板22の外周付近で、各導体パターン23における外部接続用電極部232が保護層26から露出している。
【0089】
LEDチップ10は、上述の通りサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されている。サブマウント部材30は、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率の差に起因してLEDチップ10に働く応力を緩和する。サブマウント部材30は、LEDチップ10のチップサイズよりも大きなサイズの矩形板状に形成されている。
【0090】
サブマウント部材30は、上記応力を緩和する機能だけでなく、LEDチップ10で発生した熱を伝熱板21におけるLEDチップ10のチップサイズよりも広い範囲に伝導させる熱伝導機能をも有している。本実施形態における発光装置1では、LEDチップ10がサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されているので、LEDチップ10で発生した熱がサブマウント部材30および伝熱板21を介して効率良く放熱されるとともに、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率差に起因してLEDチップ10に働く応力が緩和される。
【0091】
サブマウント部材30は、例えば熱伝導率が比較的高く且つ絶縁性を有するAlNから形成される。
【0092】
LEDチップ10のカソード電極がサブマウント部材30上に重ねられ、このカソード電極が、カソード電極と接続される電極パターン(図示せず)および金属細線(例えば、金細線、アルミニウム細線など)からなるボンディングワイヤ14を介して、二つの導体パターン23のうちの一方と電気的に接続される。LEDチップ10は、ボンディングワイヤ14を介して、カソード電極に接続されていない導体パターン23と電気的に接続されている。
【0093】
LEDチップ10とサブマウント部材30との接合には、例えば、SnPb、AuSn、SnAgCuなどの半田や、銀ペーストなどが用いられる。特にAuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田が用いられることが好ましい。サブマウント部材30がCuから形成され、LEDチップ10とサブマウント部材30との接合にAuSnが用いられる場合には、サブマウント部材30およびLEDチップ10における互いに接合される面に、あらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が施されることが好ましい。サブマウント部材30と伝熱板21との接合には、例えば、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田が用いられることが好ましい。サブマウント部材30と伝熱板21との接合にAuSnが用いられる場合には、伝熱板21におけるサブマウント部材30と接合される面に、あらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が施されることが好ましい。
【0094】
サブマウント部材30の材料はAlNに限らず、線膨張率が結晶成長用基板の材料である6H−SiCに比較的近く且つ熱伝導率が比較的高い材料であればよい。例えば、サブマウント部材30の材料として複合SiC、Si、Cu、CuWなどが採用されてもよい。なお、サブマウント部材30は、上述の熱伝導機能を有しているため、伝熱板21におけるLEDチップ10に対向する面の面積は、LEDチップ10における伝熱板21と対向する面の面積よりも、十分に大きいことが望ましい。
【0095】
本実施形態における発光装置1では、伝熱板21の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面から、保護層26の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面までの寸法よりも、伝熱板21における前記表面から、サブマウント部材30の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面までの寸法の方が、大きくなっている。このような位置関係となるように、サブマウント部材30の厚み寸法が設定されている。このため、LEDチップ10から放射された光が、配線基板22の窓孔24の内側を通って配線基板22に吸収されることが、抑制される。これによりLEDチップ10から外部への光取り出し効率が更に向上し、発光装置の光出力が更に向上する。
【0096】
なお、サブマウント部材30の厚み方向に面するLEDチップ10側の表面における、LEDチップ10が配置される位置の周囲に、LEDチップ10から放射された光を反射する反射膜が形成されてもよい。この場合、LEDチップ10から放射された光がサブマウント部材30に吸収されることが防止される。これによりLEDチップ10から外部への光取り出し効率が更に向上し、発光装置の光出力が更に向上する。反射膜は、例えば、Ni膜とAg膜との積層膜により構成される。
【0097】
上述の封止部50を形成するための材料である封止材料としては、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂に限らず、例えば、アクリル樹脂や、ガラスなどが用いられてもよい。
【0098】
光学部材60は、光透過性を有する材料(例えば、シリコーン樹脂、ガラスなど)から形成される。特に光学部材60がシリコーン樹脂から形成されると、光学部材60と封止部50との屈折率差および線膨張率差が低減され得る。
【0099】
光学部材60の光出射面602(LEDチップ10とは反対側に面する表面)は、光入射面601(LEDチップ10側に面する表面)から光学部材60内へ入射した光が、光出射面602と空隙80との境界で全反射しないような、凸曲面状に形成されている。光学部材60は、LEDチップ10と光軸が一致するように配置されている。したがって、LEDチップ10から放射され光学部材60の光入射面601に入射された光は、光出射面602と空隙層80との境界で全反射されることなく波長変換部材70まで到達しやすくなり、発光装置1からの発光の全光束が増大する。なお、光学部材60は、位置によらず法線方向に沿って厚みが一様となるように形成されている。
【0100】
波長変換部材70は、その光入射面701(LEDチップ10側に面する表面)が、光学部材60の光出射面602に沿った形状に形成されている。したがって、光学部材60の光出射面602の位置によらず、法線方向における光学部材60の光出射面602と波長変換部材70との間の距離が略一定値となっている。波長変換部材70は、位置によらず法線方向に沿った厚みが一様となるように成形されている。波長変換部材70は、実装基板20に対して、例えば接着剤(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などで固着される。
【0101】
LEDチップ10から放射される光は光入射面701から波長変換部材70内へ入射し、波長変換部材70の光出射面(LEDチップ10とは反対側の表面)701を通じて波長変換部材70外へ出射される。波長変換部材70中を光が通過する際にこの光の一部が波長変換部材70中の蛍光体粒子101によって波長変換される。これにより、LEDチップ10から放射される光と波長変換部材70中の蛍光体粒子101の種類との組み合わせに応じた色の光が発光装置1から発せられる。
【0102】
波長変換部材70は、上述のように、透光性媒体72と、この透光性媒体72中に分散している本実施形態に係る被覆蛍光体100とを備える。波長変換部材70は、更に本実施形態に係る被覆蛍光体100以外の波長変換粒子を備えていてもよい。波長変換粒子としては適宜の蛍光体粒子101が挙げられる。
【0103】
発光装置1が白色光を発する場合において、発光装置1におけるLEDチップ10が青色光を発する青色LEDチップである場合には、波長変換部材70における被覆蛍光体100中の蛍光体粒子101として、例えば赤色蛍光体から形成される粒子と緑色蛍光体から形成される粒子とが併用される。或いは蛍光体粒子101として黄色蛍光体から形成される粒子のみが用いられてもよい。或いは蛍光体粒子101として緑色蛍光体から形成される粒子と橙色蛍光体から形成される粒子とが併用されてもよい。或いは蛍光体粒子101として黄緑色蛍光体から形成される粒子と橙色蛍光体から形成される粒子とが併用されてもよい。これらの場合では、LEDチップ10から波長変換されずに放射される青色光と、波長変換部材70の被覆蛍光体100で波長変換された光とが、波長変換部材70の光出射面(外面)702を通して放射されることとなり、これにより白色光が放射される。
【0104】
発光装置1が白色光を発する場合において、発光装置1におけるLEDチップ10が紫外光を発する紫外LEDチップである場合には、例えば被覆蛍光体100中の蛍光体粒子101として、赤色蛍光体から形成される粒子、緑色蛍光体から形成される粒子および青色蛍光体から形成される粒子が併用される。この場合は、LEDチップ10から波長変換されずに放射される紫外光と、波長変換部材70の被覆蛍光体100で波長変換された光とが、波長変換部材70の光出射面(外面)702を通して放射されることとなり、これにより白色光が放射される。
【実施例】
【0105】
[実施例1]
(1−1)緑色の波長変換粒子の作製
反応容器内で2−プロパノール(和光純薬社製)250質量部に、蛍光体粒子(緑色蛍光体粒子、CaSc:Ce3+、メディアン径(D50)10μm、屈折率1.9)を加え、懸濁液を調製した。
次に別の反応容器を氷浴に浸して5℃前後に保ちながら、反応容器内に酸化ジルコニウム(一次粒径10nm)のイソプロパノール分散液を固形分換算で5質量部、CSi(OCHを10質量部、Si(OCHCHを50質量部、2−プロパノールを250質量部用意し、これらを混合・攪拌し、混合液を調製した。この混合液を、前記懸濁液に滴下した。
【0106】
その後、懸濁液を12時間攪拌した後、遠心ろ過にて固形分を分離し、回収した。この固形分を80℃で4時間減圧乾燥した後、更に250℃で1時間加熱乾燥した。これにより、緑色の蛍光を発する被覆蛍光体を得た。
【0107】
被覆蛍光体のコーティング層についてX線光電子分光分析(ESCA)の深さ方向分析をおこなったところ、内奥側でZr、Oが主体の組成が検出され、外層側でSi、Oが主体の組成が検出された。
【0108】
このコーティング層についてX線光電子分光分析にあたっては、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製の型番ESCALAB220−XLを用い、被覆蛍光体を平面上に撒き、この平面上を1mm角の分析エリアに分画して測定した。被覆蛍光体の被覆層をアルゴンイオン照射によるスパッタリングにより切削してから測定することで、被覆層の特定深さにおける元素濃度(atm.%)を算出した。
【0109】
(1−2)赤色の波長変換粒子の作製
蛍光体粒子として、CaAlSiN:Eu2+(赤色蛍光体粒子、屈折率2.0、中心粒径d50が10μm)を使用した以外は、実施例1−1と同一の方法で、赤色の蛍光を発する被覆蛍光体を得た。
【0110】
被覆蛍光体のコーティング層について上記と同じ条件でX線光電子分光分析(ESCA)の深さ方向分析をおこなったところ、内奥側でZr、Oが主体の組成が検出され、外層側でSi、Oが主体の組成が検出された。
【0111】
[実施例2]
実施例1において、酸化ジルコニウムの2−プロパノール分散液に代えて(一次粒径12nm)の酸化チタンの2−イソプロパノール分散液を使用した。それ以外は実施例1の場合と同じ方法及び同じ条件で、黄緑色の蛍光を発する被覆蛍光体と、橙色の蛍光を発する被覆蛍光体とを得た。
【0112】
[実施例3]
(3−1)緑色の波長変換粒子の作製
反応容器内でキシレン(和光純薬株式会社製)100質量部に、蛍光体粒子(緑色蛍光体粒子、CaSc:Ce3+、メディアン径(D50)10μm、屈折率1.9)10質量部を加え、懸濁液を調製した。
【0113】
次に別の反応容器を氷浴に浸して5℃前後に保ちながら、反応容器内に酸化ジルコニア(一次粒径10nm)のキシレン分散液を固形分換算で5質量部、ペルヒドロポリシラザン(AZマテリアル株式会社製、品番NL−110−2;酸化物換算20質量%のペルヒドロポリシラザンを含むキシレン溶液)20質量部と脱水キシレン(和光純薬株式会社製)50質量部、を混合して混合液を調製した。この混合液を、前記懸濁液に滴下した。
【0114】
その後、懸濁液を12時間攪拌した後、遠心ろ過にて固形分を分離し、回収した。この固形分を80℃で4時間減圧乾燥した後、更に250℃で1時間加熱乾燥した。これにより、緑色の蛍光を発する被覆蛍光体を得た。
【0115】
被覆蛍光体のコーティング層について上記と同じ条件でX線光電子分光分析(ESCA)の深さ方向分析をおこなったところ、内奥側でZr、Oが主体の組成が検出され、外層側でSi、Oが主体の組成が検出された。
【0116】
(3−2)赤色の波長変換粒子の作製
蛍光体粒子として、CaAlSiN:Eu2+(赤色蛍光体粒子、屈折率2.0、中心粒径d50が10μm)を使用した以外は、実施例3−1と同一の方法で、赤色の蛍光を発する被覆蛍光体を得た。
【0117】
被覆蛍光体のコーティング層について上記と同じ条件でX線光電子分光分析(ESCA)の深さ方向分析をおこなったところ、内奥側でZr、Oが主体の組成が検出され、外層側でSi、Oが主体の組成が検出された。
【0118】
[比較例]
緑色蛍光体粒子(CaSc:Ce3+、メディアン径(D50)10μm、屈折率1.9)をそのまま緑色の蛍光を発する波長変換粒子とし、赤色蛍光体粒子(CaAlSiN:Eu2+(赤色蛍光体粒子、中心粒径d50が10μm、屈折率2.0)をそのまま赤色の蛍光を発する波長変換粒子とした。
【0119】
[波長変換部材及び発光装置の作製、並びに評価]
実施例1〜3の各々で得られた被覆蛍光体(緑色の蛍光を発する被覆蛍光体と、赤色の蛍光を発する被覆蛍光体との、質量比6:7の混合物)13質量部と、屈折率が1.4のシリコーン樹脂87質量部とを混合して組成物を調製し、この組成物をプレスすることで、厚み2mmのドーム状の波長変換部材を作製した。
【0120】
また、比較例で得られた波長変換粒子(緑色の蛍光を発する波長変換粒子と、赤色の蛍光を発する波長変換粒子との、質量比6:7の混合物)13質量部と、屈折率が1.4のシリコーン樹脂87質量部とを混合して組成物を調製し、この組成物をプレスすることで、厚み2mmのドーム状の波長変換部材を作製した。
【0121】
実施例1〜3及び比較例の各々で得られた波長変換部材を用いて、図3,4に示す構造を有する発光装置を作製した。LEDチップとして発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを使用した。
【0122】
この発光装置から通電直後に放射される光の全光束を測定した。その結果、比較例における全光束の値100に対し、実施例1での全光束は105、実施例2での全光束は102、実施例3での全光束は103であった。尚、これらの全光束の値は、比較例1の場合を100として規格化した相対値である。
【符号の説明】
【0123】
100 被覆蛍光体
101 蛍光体粒子
102 被覆層
103 金属酸化物粒子
104 母相
1 発光装置
70 波長変換部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子と、この蛍光体粒子の外側を覆う被覆層とを備え、
前記被覆層が金属酸化物から形成されている母相と、前記母相よりも屈折率の高い金属酸化物粒子とを備え、
前記金属酸化物粒子が前記母相中に分散して存在すると共に、前記被覆層の前記金属酸化物粒子の濃度が、蛍光体粒子から離れるほど低くなっている被覆蛍光体。
【請求項2】
前記母相が、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキシドの誘導体、並びにこれらの部分加水分解縮合物から選択される少なくとも一種から生成する酸化ケイ素から形成されている請求項1に記載の被覆蛍光体。
【請求項3】
前記母相が、ポリシラザンが転化して生成するシリカから形成されている請求項1に記載の被覆蛍光体。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子の材質が、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、及び酸化イットリウムから選択される少なくとも一種であり、
前記金属酸化物粒子の粒子径が1nm以上100nm以下である請求項1乃至3の少なくとも一種に記載の被覆蛍光体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の被覆蛍光体を備える発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229373(P2012−229373A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99857(P2011−99857)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】