説明

被読取板固定用部材、被読取板固定用組立体、及び信号検出装置、並びにロータリーエンコーダ

【課題】
本発明は、回転軸に被読取板を取り付け固定する際等において、被読取板を有効に保護することができる被読取板固定用部材、被読取板固定用組立体、及び信号検出装置、並びにロータリーエンコーダを提供する。
【解決手段】
例えば、回転軸10に被読取板40を取り付け固定する際等において、回転軸10に係合して回転軸10に被読取板40を固定する部材であり且つ被読取板40の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有する被読取板固定用部材30を用いることにより、作業者の指先等が被読取板40に接触すること等を有効に防止でき、また、被読取板40の取り付け固定後においても、被読取板40を有効に保護するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回転駆動するモータ等の回転軸に対し、スリット板等の被読取板を取り付け固定するための被読取板固定用部材、被読取板固定用組立体、及び信号検出装置、並びにロータリーエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機器の動作位置制御を行うエンコーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に開示された従来のエンコーダは、モータの回転軸に円板形のスリットプレートが装着されており、フォトインタラプタによりスリットプレートを光学的に検知するようになっている。スリットプレートは、中心孔の周囲に設けられた複数の弾性爪を有する。また、従来のエンコーダは、スリットプレートを回転軸に装着させるためのスリット保持部材を有する。そして、スリットプレートは、中心孔をスリット保持部材のボス部に挿着し、各弾性爪をボス部に沿って屈曲させて弾接させることで、スリット保持部材を介して回転軸に装着される。
【0003】
このようなエンコーダに搭載されるスリットプレートは、一般的に、非常に薄くて変形し易く、また複数のスリットが高密度に配列されているため、その取り扱いが非常に難しいという問題がある。例えば、スリットプレートの回転軸への取り付けの際においては、
作業者の指先等がスリットプレートに触れてしまう等の事情により、スリットプレートが損傷、変形等してしまうおそれがある。例えば、スリットプレートに損傷、変形等が生じてしまうと、読取結果に悪影響を与え、場合によっては不良品となってしまう。
【0004】
なお、このような問題は、上述したスリットプレートを有するエンコーダに限って発生するものではなく、例えば、スリットプレート以外の被読取板を回転軸に取り付ける際においても同様に発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−296789号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情に鑑み、回転軸に被読取板を取り付け固定する際等において、被読取板を有効に保護することができる被読取板固定用部材、被読取板固定用組立体、及び信号検出装置、並びにロータリーエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の被読取板固定用部材は、回転軸に係合して当該回転軸に被読取板を固定する部材であり且つ前記被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の被読取板固定用組立体は、回転軸に係合して当該回転軸に被読取板を固定する被読取板固定用部材と、前記被読取板に先立ち前記回転軸に嵌合する嵌合部材とを備え、前記被読取板固定用部材が前記被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有すると共に前記被読取板を介して前記嵌合部材に係合し、前記被読取板が前記被読取板固定用部材と前記嵌合部材との間で挟持固定されることを特徴とする。
【0009】
さらに、上記目的を達成するための本発明の信号検出装置は、回転駆動するモータと、前記モータから突出する回転軸に係合する被読取板と、前記回転軸に前記被読取板を介して係合すると共に前記回転軸に対する前記被読取板の係合状態を固定化する被読取板固定用部材と、前記被読取板の回転状態を信号として検出する信号検出手段とを備え、前記被読取板固定用部材が前記被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明のロータリーエンコーダは、上述した態様にかかる信号検出装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被読取板固定用部材の外形を被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形としたので、例えば、回転軸に被読取板を取り付け固定する際に、作業者の指先等が被読取板に接触すること等を有効に防止でき、被読取板を有効に保護することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明によれば、回転軸に被読取板を取り付け固定した後においても、被読取板が被読取板固定用部材により実質的に覆われるようにしたので、被読取板に塵や埃等の異物が付着することを効果的に防止することができ、被読取板を有効に保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る被読取板固定用組立体等の概略構成を示す分解斜視図。
【図2】実施形態1に係る被読取板固定用組立体等の概略構成を示す分解斜視図。
【図3】実施形態2に係る信号検出装置等の概略構成を示す分解斜視図。
【図4】実施形態2に係る信号検出装置等の構成を示す概略側面図。
【図5】実施形態2に係る信号検出装置等の組立状態を示す概略図。
【図6】実施形態2に係る信号検出装置等の組立状態を示す概略図。
【図7】実施形態3に係る信号検出装置等の概略を示す分解斜視図。
【図8】実施形態4に係る信号検出装置等の概略を示す分解斜視図。
【図9】実施形態5に係る信号検出装置等の概略を示す分解斜視図。
【図10】実施形態6に係る被読取板固定用組立体等の概略を示す分解斜視図。
【図11】他の実施形態に係る信号検出装置等を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る被読取板固定用部材を用いた被読取板固定用組立体の概略構成を示す分解斜視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態の被読取板固定用組立体100は、回転軸10の自由端である一端部に嵌合する嵌合部材20と、この嵌合部材20に係合する被読取板固定用部材30とからなり、被読取板固定用部材30及び嵌合部材20の間で被読取板40を挟持固定し、被読取板固定用部材30により被読取板40を有効に保護するものである。
【0017】
ここで、被読取板40は、本実施形態では、例えば、円盤形状のスリット板からなる。詳細には、被読取板40の中心部には厚さ方向に貫通する挿通孔41が設けられ、この挿通孔41の周囲には放射状に延びる複数のスリット42が周方向に沿って個々独立して併設されている。そして、これら各スリット42が設けられた領域が、被読取板の回転状態を検出するための被読取領域43となる。また、このような被読取板40の挿通孔41の内周縁に対応する部分には、詳細は後述するが、嵌合部材20への取り付けの際の位置決めに用いられる切り欠き部44が設けられている。
【0018】
このような被読取板40は、本実施形態では、回転軸10の一端部に嵌合する嵌合部材20に対して装着される。嵌合部材20は、例えば、円盤形状からなり、被読取板40の挿通孔41よりも若干大きい外径を有し、被読取板40の被読取領域43よりも内側に対応して配置されている。これにより、省スペース化となって、小型化を実現することができる。そして、このような嵌合部材20には、その中心を厚さ方向に貫通して回転軸10の一端部が嵌合する嵌合孔21が設けられている。なお、嵌合部材20の一方面側、具体的には、被読取板40を装着する側には、嵌合孔21が開口し且つ筒状に突出した筒部22が設けられている。
【0019】
また、本実施形態では、嵌合部材20の筒部22の周囲には、被読取板固定用部材30の後述する係合突起部が係合する3つの係合孔23がそれぞれ略等間隔で設けられている。さらに、嵌合部材20のこれら各係合孔23の間に対応する部分には、被読取板固定用部材30の後述する係止突起部が挿入される2つの挿入孔24がそれぞれ対向して設けられている。なお、これら係合孔23及び挿入孔24は、それぞれ、被読取板40の挿通孔41内に位置するよう配設されている。
【0020】
さらに、嵌合部材20には、被読取板固定用部材30の回転方向の位置決めを行う位置決め部25が設けられている。この位置決め部25は、被読取板40の挿通孔41の内縁に対応する位置に設けられており、その端部には、例えば、本実施形態では、被読取板40の切り欠き部44に係合する位置決め用凸部26が設けられている。
【0021】
なお、このような嵌合部材20は、回転軸10の一端部に嵌合孔21を嵌合させることにより、回転軸10の一端部に取り付け固定される。そして、詳細は後述するが、回転軸10に対する嵌合部材20の取り付け位置により、回転軸10に対する被読取板40の取り付け固定位置が決定される。
【0022】
一方、上述した嵌合部材20に係合する被読取板固定用部材30は、例えば、本実施形態では、被読取板40と同等の外形を有し且つ同一の外径形状、すなわち、被読取板40と同等の円形形状を有する。
【0023】
具体的には、本実施形態にかかる被読取板固定用部材30は、略円盤形状からなり、被読取板40の外径と同等の外径を有する大径部31と、大径部31の一方面側の中央に所定量突出して設けられて大径部31の外径よりも小さく且つ被読取板40の挿通孔41の口径よりも大きい外径の小径部32とを有する。
【0024】
ここで、本発明では、被読取板固定用部材については、被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有する部材であればよく、上述した本実施形態の例に限定されるものではない。すなわち、本発明にかかる被読取板固定用部材は、被読取板と同等の大きさの外形としてもよいし、あるいは、被読取板よりも大きい外形としてもよい。また、被読取板固定用部材の外形は、被読取板と同一形状としてもよいし、被読取板と異なる形状としてもよい。つまり、本発明にかかる被読取板固定用部材は、被読取板を有効に保護するため、回転軸に対する被読取板の取り付け時、あるいは取り付け後において、被読取板を実質的に覆う形状であればよい。
【0025】
また、被読取板固定用部材30は、大径部31及び小径部32の中心を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。この貫通孔33には、嵌合部材20との係合状態において、上述した嵌合部材20の筒部22が回転軸10の一端部と共に挿入されるようになっている。
【0026】
さらに、被読取板固定用部材30の小径部32の端面上、具体的には小径部32側の貫通孔33の周囲には、嵌合部材20の係合孔23に対応する位置に係合突起部34がそれぞれ立設されている。なお、これら各係合突起部34の先端部には、嵌合部材20の係合孔23に係合させるための係合爪34aがそれぞれ設けられている。
【0027】
また、被読取板固定用部材30の小径部32側の端面上には、被読取板40の挿通孔41の内周縁に対応する位置に2つの係止突起部35がそれぞれ立設されている。なお、このような係止突起部35は、貫通孔33側とは反対側の端面(側面)が被読取板40の挿通孔41の内周面に沿った曲面となっている。さらに、このような被読取板固定用部材30の小径部32の端面には、嵌合部材20の位置決め部25及び位置決め用凸部26が嵌合する位置決め孔36が設けられている(図2参照)。
【0028】
ここで、上述した被読取板固定用部材30を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、真鍮等の高密度材で形成されていることが好ましい。これは、回転軸10の回転を安定化させることができるからである。
【0029】
また、被読取板固定用部材30の全体形状は、略均等な形状であることが好ましい。この「略均等な形状」とは、例えば、回転軸10の軸周りにおいてバランスが良い形状(対称性が良い形状)のことを意味する。本実施形態では、被読取板固定用部材30は、円形形状であり、回転軸10の軸周りにおいて対称性が良い形状であるため、回転軸10の回転を安定化する、いわゆるフライホイールとしての役目を果たす。
【0030】
そして、上述した本実施形態にかかる被読取板固定用部材30及び嵌合部材20から構成される被読取板固定用組立体100は、次の手順で、回転軸10の一端部に対して被読取板40を取り付け固定する。まず、回転軸10の一端部に対して嵌合部材20の嵌合孔21を嵌合させる。この際、嵌合部材20の取り付け位置が、回転軸10の先端から基端側の所定位置となるよう調整する。
【0031】
次に、嵌合部材20に被読取板40を装着する。具体的には、嵌合部材20の位置決め部に対して被読取板40の切り欠き部44を位置合わせし、被読取板40の回転方向への位置決めを行う。すなわち、被読取板40の回転移動は、被読取板固定用部材30の位置決め用凸部26により規制される。このように、本実施形態では、嵌合部材20に位置決め部25を設けるようにしたので、回転軸10に対する被読取板40の取り付け作業を向上することができる。また、ここでは、予め嵌合部材20により回転軸10への取り付け位置が調整されているので、被読取板40を嵌合部材20に装着することで、回転軸10の所定位置に被読取板40を比較的容に且つ素早く取り付けることができる。
【0032】
次いで、嵌合部材20に被読取板固定用部材30を係合させる。具体的には、被読取板40の挿通孔41内に位置する嵌合部材20の係合孔23に対し、被読取板固定用部材30の係合突起部34を挿入する。また、同時に、嵌合部材20の挿入孔24に対し、被読取板固定用部材30の係止突起部35を挿入する。さらに、この際、被読取板固定用部材の位置決め孔36に対し、嵌合部材20の位置決め部25及び位置決め用凸部26を挿入する。これにより、被読取板40は、回転方向の移動が規制された状態で、嵌合部材20と被読取板固定用部材30(実際には小径部31)との間で挟持され、係止突起部35によりその中心が位置決めされて、回転軸10の一端部の所定位置に取り付け固定される。このように、本実施形態では、被読取板固定用部材30に係止突起部35を設けるようにしたので、被読取板の中心位置を素早く調整でき、回転軸10に対する被読取板40の取り付け作業を向上することができる。なお、取り付け固定の状態においては、被読取板40と被読取板固定用部材30(大径部31)とは回転軸10の軸方向において実質的に平行となる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、被読取板固定用部材30(大径部31)の外形を被読取板40の外形と同一形状としているので、例えば、回転軸10に被読取板40を取り付け固定する際に、作業者の指先等が被読取板40に接触すること等を有効に防止することができ、被読取板40を有効に保護することができる。
【0034】
特に、本実施形態では、被読取板固定用部材30(大径部31)の外形を被読取板40の外形と同一形状としていることから、作業者の指先等が被読取板40に接触すること等をより効果的に防止することができる。
【0035】
また、このように嵌合部材20に被読取板固定用部材30を係合させた状態においては、本実施形態では、被読取板固定用部材30と被読取板40とは非常に接近した位置関係となる。また、本実施形態では、被読取板固定用部材30の外形を被読取板40の外形と同一形状としていることから、被読取板40の全体は、被読取板固定用部材30によって実質的に覆われた状態となる。これにより、被読取板固定用部材30の取り付け時、あるいは、当該取り付け作業後において、被読取板40に塵や埃等の異物が付着することを有効に防止することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、被読取板40に先立って回転軸10の所定位置に嵌合部材20を嵌合させているので、嵌合部材20が被読取板40の回転軸10に対する取り付け固定の基準となる。このため、嵌合部材20に被読取板40を装着した後、これに被読取板固定用部材30を係合させることにより、被読取板40を回転軸10の所定位置に素早く正確に挟持固定することができる。なお、本実施形態では、被読取板40を嵌合部材20側で回転方向の位置決めを行い、被読取板固定用部材30側で中心の位置決めを行うようにしたが、勿論本発明はこれに限定されず、例えば、被読取板40の回転方向の位置決めを被読取板固定用部材30側で行うと共に被読取板40の中心の位置決めを嵌合部材20側で行うようにしてもよいし、被読取板40の回転方向及び中心の位置決めを嵌合部材20又は被読取板固定用部材30の何れか一方側で行うようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、回転軸10に対して被読取板固定用部材30を係合させているので、回転軸10の回転に伴って、被読取板固定用部材30も被読取板40と一体的に回転することになる。これにより、回転軸10が非回転時だけでなく回転駆動時でも、被読取板40が被読取板固定用部材30により実質的に覆った状態となるため、被読取板40を有効に保護することができる。
【0038】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る被読取板固定用部材を用いた被読取板固定用組立体を有する信号検出装置の概略構成を示す分解斜視図である。また、図4は、図3の信号検出装置を示す概略側面図である。
【0039】
図3及び図4に示すように、本実施形態の信号検出装置200は、例えば、ロータリーエンコーダとしての例示であり、上述した実施形態1の被読取板固定用部材30(被読取板固定用組立体100)を用いて、回転駆動するモータ50から突出する回転軸51に対して被読取板40を取り付け固定すると共に、被読取板40の端部近傍に被読取板40の回転状態を信号として検出する信号検出手段60を設けるようにした以外は、上述した実施形態1と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1で説明した構成部分と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0040】
回転駆動するモータ50は、例えば、本実施形態では、一端部側から回転軸51が所定量突出して設けられ、他端部側には回転軸51の回転駆動を外部に伝達するピニオンギア52が設けられている。
【0041】
また、信号検出手段60は、例えば、本実施形態では、フォトインタラプタ等の透過型光学式センサからなる。具体的には、本実施形態の信号検出手段60は、被読取板40の被読取領域43に対して光を照射する発光部61と、発光部61に対向する被読取板40の他方面側に配置されて被読取板40を介して光を受ける受光部62とを有する。そして、発光部61及び受光部62の間には、回転する被読取板40の端部、詳細には、被読取領域43を含む端部が通過する隙間が設けられており、この隙間を通過する被読取板40の回転状態を信号として検出するようになっている。
【0042】
さらに、このような信号検出手段60を構成する発光部61又は受光部62は、被読取板40と被読取板固定用部材30との隙間に配置されることが好ましい。例えば、本実施形態では、被読取板40と被読取板固定用部材30との間に発光部61を配設すると共に、この発光部61に対向する側で且つ嵌合部材20の外側に対応する部分に受光部62を配設した。これにより、省スペース化を図って、小型化を実現することができる。勿論、被読取板40と被読取板固定用部材30との間に発光部61を配設するようにしても同様の効果が得られる。
【0043】
なお、信号検出手段60には、外部に信号を伝達するためのコネクタ部63が設けられている。そして、このような信号検出手段60は、モータ50の端面に取り付けるための基板70上に実装されている。この基板70には、モータ50の端面に回転軸51と同心円状に配設された2つの凸部53に嵌合する第1嵌合溝71がそれぞれ設けられている。また、このような基板70の端部には、モータ50の回転軸51の基端部に嵌合する第2嵌合溝72が設けられている。
【0044】
ここで、図5及び図6を参照して、本実施形態の信号検出装置200の組立手順を説明する。図5及び図6は、本発明の実施形態1に係る信号検出装置の組立状態を示す概略図である。
【0045】
まず、図5に示すように、モータ50の端面に設けられた2つの凸部53に、信号検出手段60が実装された基板70の第1嵌合溝71を嵌合させると共に回転軸の基端部に第2嵌合溝72を嵌合させた後、モータ50に電源を供給するために、両者を半田付け等により電気的に接続する。次に、モータ50の回転軸51に、嵌合部材20の嵌合孔21を嵌合させる。この際、本実施形態では、信号検出手段60に対する嵌合部材20と被読取板40との相対位置を調整する。詳細には、モータ50に対する信号検出手段60の装着位置を基準として、モータ50の回転軸51に対する嵌合部材20の取り付け位置が所定位置となるようにする。これにより、信号検出手段60の発光部61と受光部62との間の所定位置に、被読取板40を取り付け固定することができる。この際、回転軸51に予め目印を設けておき、回転軸51に当該目印を基準として嵌合部材20を取り付けるようにしてもよい。
【0046】
次に、図6に示すように、モータ50の回転軸51に対して斜め方向から、嵌合部材20の所定位置に被読取板40を装着する。その後、被読取板40を嵌合部材20に装着した状態で、その上から、嵌合部材20に被読取板固定用部材30を係合させる。これにより、被読取板40が、嵌合部材20と被読取板固定用部材30との間で挟持固定される(図4参照)。
【0047】
このように、嵌合部材20に被読取板固定用部材30を係合させる際、本実施形態では、被読取板固定用部材30(大径部31)の外径を被読取板40の外径と同等にしているので、作業者の指先等が被読取板40に接触すること等を有効に防止することができ、被読取板40を有効に保護することができる。
【0048】
ここで、上述した被読取板固定用部材30を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、真鍮等の高密度材で形成されていることが好ましい。これは、本実施形態のような信号検出装置200において、回転駆動するモータ50の回転を安定化させることができるからである。
【0049】
また、被読取板固定用部材30の全体形状は、略均等な形状であることが好ましい。この「略均等な形状」とは、例えば、回転軸51の軸周りにおいてバランスが良い形状(対称性が良い形状)のことを意味する。本実施形態では、被読取板固定用部材30は、円形形状であり、回転軸51の軸周りにおいて対称性が良い形状であるため、モータ50の回転を安定化する、いわゆるフライホイールとしての役目を果たす。これにより、信号検出装置200の性能を安定化させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、上述した実施形態1の被読取板固定用組立体100(被読取板固定用部材30)を用いているので、上述した実施形態1と同様の効果を有する。また、本実施形態のように、被読取板固定用部材30を被読取板40に比較的近い位置に設け、被読取板40を有効に保護するようにしたことで、信号検出装置1が全体として小型化するという効果もある。
【0051】
また、本実施形態では、モータ50に基板70とコネクタ部63と共に信号検出手段60を接続した後に、被読取板40を取り付け固定するようにしたので、半田付け等のための接続作業スペースを十分に確保することができる。これにより、先に被読取板40を取り付け固定する場合と比較して、半田付け等の接続作業スペースを確保する必要がないので、装置の小型化には有利である。なお、本発明は勿論これに限定されず、被読取板40を先に取り付け固定してもその後の接続作業スペースを確保できる場合には、先に被読取板40を取り付け固定し、その後に、信号検出手段60等を接続するようにしてもよい。
【0052】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係る被読取板固定用部材を用いた被読取板固定用組立体を有する信号検出装置の概略を示す分解斜視図である。
【0053】
図7に示すように、本実施形態の信号検出装置200Aは、上述の実施形態2と異なる形状の被読取板固定用部材300及び被読取板400を設けた以外は上述した実施形態2と同様である。なお、本実施形態では、上述した各実施形態1及び2で説明した構成部分と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0054】
本実施形態では、被読取板400は、遮蔽板であり、回転軸51と同心円状に設けられた円形部401と、この円形部401の向かい合う端部からそれぞれ突出して設けられた2つの羽根部402とを有する。
【0055】
一方、このような被読取板400を回転軸51に取り付け固定するための被読取板固定用部材300は、本実施形態では、上記の被読取板400の2つの羽根部402に対応して、大径部310の向かい合う両端部に2つのフランジ部311がそれぞれ設けられており、被読取板400の外形と同一形状としている。
【0056】
また、本実施形態では、被読取板固定用部材300は、各フランジ部311と被読取板400の各羽根部402とが回転軸51の軸周り方向において相互に重なり合って回転軸51と一体的に回転するように、嵌合部材20に係合されるようになっている。
【0057】
このように、本実施形態では、被読取板固定用部材300(大径部310及び各フランジ部311)の外形を被読取板400の外形と同一形状としているので、回転軸51に被読取板400を取り付け固定する際に、作業者の指先等が被読取板400に接触すること等を有効に防止することができ、被読取板400を有効に保護することができる。
【0058】
特に、本実施形態では、被読取板固定用部材300の各フランジ部311と、被読取板400の各羽根部402とを重なり合うように設けているので、作業者の指先等が被読取板400に接触すること等をより効果的に防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、被読取板400を実質的に覆うように被読取板固定用部材300を設けているので、上記以外、上述した実施形態1及び2と同様の効果を有する。
【0060】
なお、本実施形態では、被読取板400と同一形状の被読取板固定用部材300を例示して説明したが、勿論これに限定されず、被読取板と被読取板固定用部材とが異なる形状であってもよい。
【0061】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係る被読取板固定用部材を用いた被読取板固定用組立体を有する信号検出装置の概略を示す分解斜視図である。
【0062】
図8に示すように、本実施形態の信号検出装置200Bは、被読取板400と被読取板固定用部材300Bとを異なる形状とした以外は上述した実施形態3と同様である。なお、本実施形態では、上述した各実施形態1〜3で説明した構成部分と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0063】
具体的には、本実施形態の被読取板固定用部材300Bは、被読取板400の2つの羽根部402に対応して、大径部310Bの向かい合う両端部に2つのフランジ部311Bがそれぞれ設けられている。また、これら各フランジ部311Bの間、すなわち、被読取板400の各羽根部402とは干渉しない部分の大径部310Bには、別のフランジ部312Bがそれぞれ突出して設けられている。
【0064】
これにより、被読取板400の各羽根部402に対応する各フランジ部311Bによって、被読取板400(各羽根部402)を実質的に覆って有効に保護しつつ、作業者が別のフランジ部312Bを持ちながら、被読取板固定用部材300Bを嵌合部材20に係合させることにより、被読取板400の取り付け作業性をさらに向上することができる。
【0065】
また、本実施形態では、各フランジ部311B,312Bのそれぞれを同一形状とし且つ相互に等間隔、すなわち、回転軸51の軸周りにおいて略均等な形状とした。これにより、本実施形態の被読取板固定用部材300Bは、モータ50の回転を安定化する、いわゆるフライホイールとしての役目を果たし、信号検出装置200の性能を安定化させることができる。
【0066】
(実施形態5)
図9は、本発明の実施形態5に係る被読取板固定用部材を用いた被読取板固定用組立体を有する信号検出装置の概略を示す分解斜視図である。
【0067】
図9に示すように、本実施形態の信号検出装置200Cは、上述の各実施形態2〜4で構成として挙げた嵌合部材20を設けず、被読取板固定用部材500により被読取板600を回転軸51に直接取り付け固定するようにした以外は、上述した実施形態2と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態2で説明した構成部分と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0068】
具体的には、図9に示すように、本実施形態の被読取板固定用部材500は、回転軸51に嵌合する固定孔501が設けられた筒状部502と、この筒状部502の外周に突出して設けられた位置決め突起部503とを有する。一方、被読取板600の挿通孔601の内周縁に対応する部分には、位置決め突起部503に係合する略矩形の切り欠き部602が設けられている。
【0069】
このような被読取板固定用部材500には、筒状部502の位置決め突起部503に被読取板600の切り欠き部602を位置合わせし、筒状部502に被読取板600の挿通孔601が挿入された後、図示しないが、接着剤等により一体的に固定される。そして、このように被読取板600が固着された被読取板固定用部材500は、モータ50の回転軸51に対して筒状部502の固定孔501を嵌合させることで、回転軸51に被読取板600を取り付け固定するようになっている。
【0070】
本実施形態では、上述したように被読取板600を取り付け固定する際においては、被読取板600の切り欠き部602に位置決め突起部503を係合させた状態、すなわち、被読取板600の回転が規制された状態で、被読取板600と被読取板固定用部材500とが相互に固着されている。また、被読取板固定用部材500(大径部510)の外形を被読取板の外形と同一外形としていることから、回転軸51に被読取板600を取り付け固定する際に、作業者の指先等が被読取板600に接触すること等を有効に防止することができ、被読取板600を有効に保護することができる。
【0071】
特に、本実施形態では、被読取板固定用部材500と被読取板600とを予め一体的に固着しているので、作業者等による回転軸51への被読取板600の取り付け作業性を向上することができる。また、例えば、上述した実施形態2と比べて、部品点数を低減することができるため、更なる低コスト化を図ることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、被読取板600を実質的に覆うように被読取板固定用部材500を設けているので、上記以外、上述した実施形態2と同様の効果を有する。
【0073】
(実施形態6)
図10は、本発明の実施形態6に係る被読取板固定用部材を用いた被読取板固定用組立体の概略を示す分解斜視図である。
【0074】
本実施形態は、図10に示すように、被読取板固定用組立体100(被読取板固定用部材30)を、紙等のシート搬送を行うローラシャフトの一端部に直接取り付けた例である。
【0075】
このように、本実施形態では、シート搬送を行うローラシャフト700に被読取板40を介して被読取板固定用組立体100(嵌合部材20及び被読取板固定用部材30)を取り付け固定するようにしたので、例えば、ローラシャフト700に被読取板40を取り付け固定する際において、作業者の指先等が被読取板40に接触すること等を有効に防止することができ、被読取板40を有効に保護することができる。また、ローラシャフト700への取り付け固定後においても、被読取板40が被読取板固定用部材30により実質的に覆われているので、被読取板40に塵や埃等の異物が付着することを効果的に防止することができ、被読取板40を有効に保護することができる。
【0076】
(他の実施形態)
以上、本発明を各実施形態1〜4に基づいて説明したが、勿論、本発明は上述の各実施形態1〜4に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1〜4では、被読取板を被読取板固定用部材により実質的に覆うようにした場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、図11に示すように、被読取板40とこの被読取板40を取り付け固定する被読取板固定用組立体100(被読取板固定用部材30)、信号検出手段60等からなる機能ユニット部800を全体的に覆うように、ケース900を設けてもよい。なお、図11は、本発明の他の実施形態に係る信号検出装置を示す概略断面図である。このように、ケース900で機能ユニット部800の全体を覆うことにより、機能ユニット部800の周辺空間に塵や埃等の異物が混入することを効果的に防止することができる。なお、本発明では、被読取板が被読取板固定用部材により実質的に覆われて有効に保護されているので、このようなケース900は、必要に応じて設ければよく、機能ユニット部800の全体を密封するように覆わなくてもよいし、勿論、このようなケース900を設けなくてもよい。ケース900を設けない場合においては、装置を小型化することができる。
【0077】
また、上述した実施形態2〜4では、信号検出装置として、例えば、光学式のロータリーエンコーダを例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、磁気式のエンコーダ等のその他のエンコーダにも適用することができる。
【0078】
さらに、上述した各実施形態1〜4では、被読取板として、スリット板や遮蔽板を例示して説明したが、本発明は、スリット板や遮蔽板を含む被読取板全般を保護対象としたものである。すなわち、所定の符号を有する符号板、磁性板等の被読取板に対して本発明は適用可能である。
【0079】
また、上述した各実施形態1〜4では、被読取板固定用部材として単一の部材からなる構造を例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、分割された複数の部材からなる被読取板固定用部材としてもよい。
【0080】
さらに、上述した各実施形態1〜4では、被読取板を回転軸に取り付けた後も、製品を構成する部材として被読取板固定用部材を残したが、本発明は勿論これに限定されず、回転軸に対して被読取板を作業性良く取り付ける際に被読取板固定用部材を用い、被読取板を取り付けた後は、被読取板固定用部材を取り外してもよい。この場合には、被読取板を保護するため、被読取板を含む機能ユニット部をケースで覆うことが好ましい。
【0081】
また、上述した各実施形態1〜4では、被読取板を取り付け固定した状態において、被読取板と被読取板固定用部材とが回転軸の軸方向において平行となるように取り付けたが、本発明はこれに限定されず、被読取板固定用部材を立体的、例えば、円錐形状としてもよい。なお、被読取板固定用部材の周縁部を被読取板側に傾けてテーパー形状としてもよい。これにより、被読取板をより効果的に保護することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 回転軸
20 嵌合部材
21 嵌合孔
22 筒部
23 係合孔
24 挿入孔
25 位置決め部
26 位置決め用凸部
30 被読取板固定用部材
31 大径部
32 小径部
33 貫通孔
34 係合突起部
34a 係合爪
35 係止突起部
40 被読取板
41 挿通孔
42 スリット
43 被読取領域
44 切り欠き部
100 被読取板固定用組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に係合して当該回転軸に被読取板を固定する被読取板固定用部材と、前記被読取板に先立ち前記回転軸に嵌合する嵌合部材とを備え、前記被読取板固定用部材が前記被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有すると共に前記被読取板を介して前記嵌合部材に係合し、前記被読取板が前記被読取板固定用部材と前記嵌合部材との間で挟持固定されることを特徴とする被読取板固定用組立体。
【請求項2】
回転駆動するモータと、前記モータから突出する回転軸に係合する被読取板と、前記回転軸に前記被読取板を介して係合すると共に前記回転軸に対する前記被読取板の係合状態を固定化する被読取板固定用部材と、前記被読取板の回転状態を信号として検出する信号検出手段とを備え、前記被読取板固定用部材が前記被読取板の外形と同等もしくはそれ以上の外形を有することを特徴とする信号検出装置。
【請求項3】
前記信号検出手段は、前記被読取板の一方面側に配置されて前記被読取板に光を照射する発光部と、前記発光部に対向する前記被読取板の他方面側に配置されて前記被読取板を介して光を受ける受光部とを備え、前記発光部又は前記受光部が前記被読取板と前記被読取板固定用部材との隙間に配置されることを特徴とする請求項2記載の信号検出装置。
【請求項4】
前記被読取板に先立ち前記回転軸に嵌合する嵌合部材を備え、前記被読取板固定用部材が前記被読取板を介して前記嵌合部材に係合し、且つ前記被読取板が前記被読取板固定用部材と前記嵌合部材との間で挟持固定されることを特徴とする請求項2又は3記載の信号検出装置。
【請求項5】
前記嵌合部材は、前記被読取板の周縁部に沿って設けられた被読取領域の内側に対応して配置されていることを特徴とする請求項4記載の信号検出装置。
【請求項6】
前記被読取板固定用部材は、前記被読取板と一体的に回転することを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の信号検出装置。
【請求項7】
請求項2〜6の何れか1項に記載の信号検出装置を備えたことを特徴とするロータリーエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−76715(P2013−76715A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−14826(P2013−14826)
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2009−95911(P2009−95911)の分割
【原出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】