説明

裁断方法および裁断装置

【課題】消費電力を減らし、省力化を図る。
【解決手段】裁断装置2は、被裁断材が載置される固定盤3の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型5が取り付けられた可動盤4と、可動盤4を定速度Hで上下動させ被裁断材をカットする駆動制御装置20と、固定盤3上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備えている。駆動制御装置20は、クランク軸機構6と、このクランク軸機構6に減速機11を介して連結されたサーボモータ12と、このサーボモータ12にサーボアンプ13および位置決めユニット14を介して電気的に接続されたシーケンサ16とを備えている。シーケンサ16は、サーボモータ12により可動盤4が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤4の上昇時、可動盤4を、裁断完了後刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度Hより遅い速度Lで上昇させ、消費電力を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動制御により被裁断材を所望の製品にカットする裁断方法および裁断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被裁断材を所望の製品にカットする裁断装置は、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、可動盤を定速度で上下動させ被裁断材をカットする駆動制御装置と、固定盤上の被裁断材を移動させる移動テーブルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような、裁断装置では、予め決められた一定の速度で可動盤を上下動させるようにしている。係る装置では、裁断時に裁断速度を変化させることができないため、被裁断材の材質に応じて確実に裁断することが難しいという問題があった。このため、本出願人等は、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤を裁断の間のみ予め設定された低速度で降下させるようにした裁断装置を提案した(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−162590号公報
【特許文献2】特開2006−289582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装置では、たとえ可動盤が上下動する行程中の速度を裁断の間のみ低速とすることがあっても、効率の観点から、短時間で大量に最終製品を製造するため、可動盤上昇時には、定速または高速で迅速に可動盤を上昇させ動作時間の短縮化をはかるようにしている。このため、重量のある可動盤を定速または高速運転で上昇させる際、裁断装置の規格に応じた消費電力が消費される。ところで、上記従来の移動テーブルを備えた裁断装置では、可動盤を上下動させるのに消費される電力は、装置全体のほぼ90%を占め、移動テーブルなど他の駆動機構に比較して消費電力に占める割合が特に高い。他方、裁断装置の高性能化に伴って、短時間で大量に最終製品を製造することが可能になった反面、製造された最終製品を納品するまでに日数があったり時間的余裕がある場合、最終製品製造後、裁断機は使用されることがなく、電源が落とされ休止される。このため、最終製品製造には、製造時間に関係なく可動盤の上下動作の回数に応じて定速または高速運転時の消費電力を消費せざるを得ず、消費電力を抑制することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で、裁断装置の電力消費量を抑制することができる裁断方法および裁断装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る裁断方法は、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断方法であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤を、裁断完了後刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項1に係る裁断方法では、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断方法であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤を、裁断完了後刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させるようにしたことにより、可動盤上昇時、可動盤が下死点から上昇する際に通常運転の場合に較べて可動盤の上昇速度が低下させられると、駆動制御装置の消費電力が抑制される。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る裁断方法は、可動盤を、被裁断材の厚みに応じて刃型が裁断直前位置から裁断完了位置に達するまでの間のみ予め設定された低速度で降下させるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る裁断方法では、可動盤を、被裁断材の厚みに応じて刃型が裁断直前位置から裁断完了位置に達するまでの間のみ予め設定された低速度で降下させるようにしたことにより、裁断の間を、被裁断材の厚みに応じて刃型が裁断直前位置から裁断完了位置に達するまでの間としたので、低速の時間を短くして作業が効率化される。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に係る裁断方法は、裁断時、可動盤を被裁断材の材質に応じて、刃型を裁断完了位置で予め設定された時間保持し押し付けた状態のままにするようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る裁断方法では、裁断時、可動盤を被裁断材の材質に応じて、刃型を裁断完了位置で予め設定された時間保持し押し付けた状態のままにするようにしたことにより、裁断時、刃型が裁断完了位置で予め設定された時間保持されるよう可動盤を制御するようにしたので、刃型は設定された時間裁断完了位置で被裁断材に押し当てられたままとなり、裁断しにくい被裁断材であっても確実にカットすることができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る裁断方法は、可動盤の上下のストローク幅を可変にしたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項4に係る裁断方法では、可動盤の上下のストローク幅を可変にしたことにより、被裁断材の材質に応じて可動盤の上下のストローク幅を短くすると作業時間が短縮される。
【0014】
本発明の請求項5に係る裁断装置は、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断装置であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、最も下方の位置に達した可動盤を、刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させる駆動制御装置を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項5に係る裁断装置では、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断装置であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、最も下方の位置に達した可動盤を、刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させる駆動制御装置を備えたことにより、可動盤上昇時、可動盤が下死点から上昇する際に通常運転の場合に較べて可動盤の上昇速度が低下させられると、駆動制御装置の消費電力が抑制される。
【0016】
本発明の請求項6に係る裁断装置は、駆動制御装置は、可動盤を上下動させるクランク軸機構と、このクランク軸機構のクランクシャフト一端に減速機を介して接続されたサーボモータと、このサーボモータに電気的に接続されたサーボアンプと、このサーボアンプと位置決めユニットおよびアナログ入力ユニットを介して電気的に接続され、予め入力された作業プログラムが収納された制御部と、制御部と電気的に接続された表示装置と、クランクシャフトの他端に接続されたエンコーダと、このエンコーダと電気的に接続されるとともに、アナログ入力ユニットと制御部とに電気的に接続された高速カウンタとを備えるようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項6に係る裁断装置では、駆動制御装置は、可動盤を上下動させるクランク軸機構と、このクランク軸機構のクランクシャフト一端に減速機を介して接続されたサーボモータと、このサーボモータに電気的に接続されたサーボアンプと、このサーボアンプと位置決めユニットおよびアナログ入力ユニットを介して電気的に接続され、予め入力された作業プログラムが収納された制御部と、制御部と電気的に接続された表示装置と、クランクシャフトの他端に接続されたエンコーダと、このエンコーダと電気的に接続されるとともに、アナログ入力ユニットと制御部とに電気的に接続された高速カウンタとを備えていることにより、サーボモータを制御することにより、可動盤が上下動する速度を可変に制御することができるとともに、クランク軸を揺動させて可動盤の上下のストローク幅を可変にすることができる。また、可動盤の上下動速度を自在に制御できるので、可動盤上昇時の速度を予め設定された定速度より低い速度にし、消費電力を抑制する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係る裁断方法では、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断方法であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤を、裁断完了後刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させるようにしたので、消費電力を抑制し、コストダウンを図ることができる。
【0019】
本発明の請求項5に係る裁断装置では、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断装置であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、最も下方の位置に達した可動盤を、刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させる駆動制御装置を備えたので、消費電力を抑制し、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る裁断装置の構成図である。(実施例1)
【図2】図2は図1の裁断装置の可動盤とクランク軸機構とを示す説明図である。
【図3】図3は従来と比較して示す説明図で、(A)および(B)は従来の例を、(C)ないし(E)は本発明の実施例をそれぞれ示す。
【図4】図4はクランク軸が回転する際の裁断時の減速パターンを示す図である。
【図5】図5はクランク軸が下死点を通過して揺動する際の裁断時の減速パターンを示す図である。
【図6】図6はクランク軸が下死点を通過せずに揺動する際の裁断時の減速パターンを示す図である。
【図7】図7の(A)ないし(E)はそれぞれ、クランク軸が回転する際の裁断時の減速パターン毎にサーボモータの回転速度とクランク軸角度との関係を示すグラフである。
【図8】図8の(A)ないし(E)はそれぞれ、クランク軸が揺動する際の裁断時の減速パターン毎にサーボモータの回転速度とクランク軸角度との関係を示すグラフである。
【図9】図9の(A)ないし(C)はそれぞれ、クランク軸機構を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
消費電力を抑制するという目的を、被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、可動盤を定速度で上下動させ被裁断材をカットする駆動制御装置と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断方法であって、可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤を、裁断完了後刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させるようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0022】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る裁断装置の構成図である。本実施例に係る裁断装置2は、図1に示すように、上面を被裁断材(図示せず)が搬送される固定盤3と、固定盤3の上方に上下動可能に設けられた可動盤4と、この可動盤4の下面に交換可能に取り付けられる刃型5と、可動盤4および図示しない被裁断材の送出し機構を、入力された作業プログラムに基づいて動作させる駆動制御装置20とを備えて構成される。被裁断材は、樹脂フィルム、セロハン、パッキン、フェルト、スポンジ、ゴム、ウレタンフォーム、アルミホイール、銅ホイール、布、紙だけでなく、高強度不織布、高強度織布、高粘着材、高強度延材等、ロール素材、シート素材が用いられ軟質硬質を問わず裁断力の異なる種々の素材が用いられる。
【0023】
可動盤4には、可動盤4を固定盤3に対して一定の上下ストロークで上下動させるクランク軸機構6が連結される(図2の(A)、(B)参照)。クランク軸機構6は、図9の(A)ないし(C)に示すように、固定盤3の下側で被裁断材の搬送方向に対して直交する方向に設けられたクランクシャフト7と、可動盤4の上盤30の両側から下方に延びたスライドシャフト31に取り付けられたスライドブロック32と、両スライドブロック32間を連結するジョイントシャフト33と、一端側がこのジョイントシャフト33の両側にそれぞれ回動自在に連結されるとともに他端に形成された円孔34にクランクシャフト7のクランクピン7Aが挿通されたコネクティングプレート35とを備えて構成される。クランク軸機構6は、クランクシャフト7が回転駆動されると、クランクピン7Aが円孔34内周面に沿って回り、偏心コネクティングプレート35の上部が揺動しつつ上下動してジョイントシャフト33を上下動させ、可動盤4を固定盤3に対して一定のストロークSt1(本実施例の場合、40mm)で上下動させるようになっている。
【0024】
駆動制御装置20は、図1に示すように、クランク軸機構6と、このクランク軸機構6のクランクシャフト7の一端に接続された減速機11と、この減速機11に連結されクランクシャフト7を回転駆動するサーボモータ12と、このサーボモータ12に電気的に接続されたサーボアンプ13と、このサーボアンプ13と位置決めユニット14およびアナログ入力ユニット15を介して電気的に接続されたシーケンサ(制御部)16とを備えている。シーケンサ16には、ディスプレー装置17が電気的に接続される。シーケンサ16はマイクロプロセッサの機能を果たすもので、シーケンサ16には、記憶装置(メモリ、FDドライブ、FD)やキーボードが接続される。シーケンサ16に内蔵されたメモリ、または、記憶装置には、複数の作業プログラムが予め記憶される。この作業プログラムには、被裁断材の寸法、ショット数、送り量等の製品情報、この製品情報に適合する刃型5の刃型指示情報、各刃型の刃高データ等が含まれる。ここでいう刃高とは、可動盤4の下面から刃型の刃先端までの高さをいう。駆動制御装置20は、予め作業プログラムが収納されたシーケンサ16からの指令信号が位置決めユニット14を介してサーボアンプ13に出力されると、サーボアンプ13は、位置決めユニット14からの指令信号を受けてサーボモータ12を制御して駆動するようになっている。また、サーボアンプ13はアナログ入力ユニット15にサーボモータ12のモータトルク値をアナログ電圧で出力するようになっている。駆動制御装置20は、図示しない送り出し機構を駆動し被裁断材を固定盤3に向けて送り出すようになっている。
【0025】
駆動制御装置20は、クランクシャフト7の他端に接続されたエンコーダ(検出器)18と、このエンコーダ18と電気的に接続されるとともに、アナログ入力ユニット15とシーケンサ16とに電気的に接続される高速カウンタ19とを備えている。高速カウンタ19は、エンコーダ18を介してクランクシャフト7の回転角度を検出すると、その信号をシーケンサ16に出力し、ディスプレー装置17に表示するようになっている。また、高速カウンタ19は検出されたクランクシャフト7の回転角度のデータをアナログ入力ユニット15にアナログ電圧で出力するようになっている。シーケンサ16は、位置決めユニット14によりサーボアンプ13を制御しつつ、アナログ入力ユニット15および高速カウンタ19、さらに機械構成により予め一意に決定される値を参照して、刃型5が裁断を行う裁断部の裁断力を演算し、その結果をディスプレー装置17に表示するようになっており、これら構成要素により裁断力表示機構を構成している。すなわち、裁断力表示機構は、裁断時、サーボモータ12にかかる負荷を検出して演算し(サーボモータ12に流れる裁断負荷電流値を変換して演算し)、演算結果を裁断力として表示するようになっている。このため、裁断力をリアルタイムで確認しながら作業を行うことができるので、裁断力が適切かどうか監視しながら作業を行うことができる。このため、不良品の発生を未然に防ぐことができる。また、裁断力を考慮して被裁断材の材質に合致した最適な裁断速度を設定することができる
【0026】
上記裁断装置2では、サーボモータ12が減速機11を介してクランクシャフト7に連結されているので、クランクシャフト7の回転を、回転中に変速させ、加速したり減速したりできるようになっている。このように可動盤4が上下動する行程中の速度を可変に制御することができるので、従来の装置と同様に、入力されるどのような作業プログラム(被裁断材の寸法、ショット数、送り量等の製品情報)にも対応して短時間で大量の製品を加工できるように可動盤4を高速の定速度Hで上下動させ、被裁断材を固定盤3側に送り出すことができるようになっている。すなわち、短時間で大量の製品の生産を可能にするため、サーボモータ12の駆動性能と図示しない送り出し機構の性能とが決定され、それに基づいて装置全体の定格電力が決められている。このうち、サーボモータ12の駆動により消費される消費電力の割合が装置全体の消費電力に対して特に高い割合を占めている。
【0027】
ところで、本実施例に係る裁断装置2では、可動盤4が最下方位置から、すなわち、刃型5の裁断完了位置から刃型5が被裁断材から離脱するまでの間、高速の定速度Hより遅い速度L(L<H)で上昇させるようにしている。このように構成することにより、サーボモータ12の駆動により消費される消費電力が抑制される。すなわち、可動盤4が下死点から上昇に移る上昇初期時には、高速で駆動能力をフルに発揮させて動作させないで、可動盤4の上昇速度を定速度Hより低速とすることにより、消費される電力を大幅に削減するようにしている。そして、刃型5が被裁断材から離脱した後は、可動盤4を定速度Hで上死点まで上昇させるようにしている(図3の(C)ないし(E)参照)。
【0028】
本出願人等は、実際に実機で実験したところ、可動盤4の降下速度と上昇速度とをいずれも定速Hとした場合(図3の(A)参照)と比べ、図3の(C)ないし(E)に示すように、可動盤4の降下時の降下速度は定速度Hのままで、刃型5の裁断完了位置(可動盤4の最下方位置)から刃型が被裁断材から離脱するまでの間、上昇速度を定速度Hよりわずかに落として遅くしただけで(遅い速度L<H)、定格電流は最大50%の電力抑制が可能になった。すなわち、可動盤を4を上昇させる場合の方が降下させる場合より多くの電力を消費するからである。好ましくは、作業効率が大きく損なわれない範囲で定格電流の50%以下で可動盤4を上昇させることが望ましく、予め削減目標の消費電力を設定し、それに応じた可動盤4の上昇速度を決定するようにしてもよい。上述のように、図3の(C)は、被裁断材を裁断する際も高速の定速度Hで裁断し、刃型5の裁断完了位置(可動盤4の最下方位置)から刃型が被裁断材から離脱するまでの間、低速Lとした例を、図3の(D)は、被裁断材を裁断する際に低速Lで裁断し、刃型5の裁断完了位置から刃型が被裁断材から離脱するまでの間も、低速Lとした例を、図3の(E)は、被裁断材を裁断する際に低速Lで裁断し、可動盤4が最下方位置に達すると、その位置で所定時間T1可動盤4の動きを停止させ、その後、刃型5の裁断完了位置から刃型が被裁断材から離脱するまでの間を低速Lとした例をそれぞれ示している。なお、図3の(B)は、図3の(A)と同様に、従来の例を比較して示す説明図で、可動盤4を高速で降下させ、裁断時のみ低速Lとし、上昇時には、可動盤4を下死点から直ちに高速Hで上昇させるようにした例を示している。
【0029】
このように、本実施例に係る裁断装置2では、可動盤4を所定の定速度(高速度)Hで降下させ、裁断完了後から刃型5が被裁断材から離脱するまでの間、定速度Hより低速Lで上昇させるようにしている。そして、裁断時には、クランク運動により可動盤4の速度はクランクシャフト7が下死点に近づくに従い減速され、下死点に達すると最も速度が減速され、その後、再び加速される。裁断時のクランク運動による減速は、被裁断材の質に応じて予め設定される。裁断終了後は、上昇の初期時のみ上述のように定速度Hより遅い速度Lで加速され、刃型5が被裁断材から離脱すると再び定速度Hで上昇するようになっている。
【0030】
つまり、本実施例に係る裁断装置2では、クランクシャフト7が360°回転することにより可動盤4がストローク幅St1で上下動する際、図3の(D)に示すように、可動盤4を、裁断の間のみ予め設定された低速度Lで降下させ、しかも、裁断以外の降下時には定速Hで、被裁断材から離脱するまでの上昇時には定速Hより低速L(H<L)で上下動させるようにしている。(図4のパターンBおよび図7の(D)参照)。すなわち、被裁断材の材質に応じて、例えば、裁断しにくい材質の場合、裁断時の刃型5の速度を予め遅くするよう設定し、クランク運動に起因してクランクシャフト7が下死点に近づくに従い減速されるのに加え、裁断時には、クランクシャフト7の回転を減速させて、確実にカットするようにしている。そして、裁断完了後、可動盤4の上昇時には、刃型5が被裁断材から離脱するまで降下時の速度(定速度H)より遅い速度Lで上昇させ、刃型5が被裁断材から離脱した後、降下時の速度(定速度H)と同じ速度で上昇させるようにしている。なお、本実施例でいう刃型5の裁断開始位置とは、降下している刃型5が被裁断材の上面に達する位置または被裁断材に接する位置をいい、刃型5の裁断完了位置は、刃型5が被裁断材をカットし終わり刃型5が最下端位置または最下端に近いところにある位置をいう。
【0031】
また、駆動制御装置20は、被裁断材の材質に応じて、例えば、より遅い速度で裁断を行うことが好ましい材質の場合、刃型が裁断直前位置から裁断完了位置に達するまでの間、上記低速度Lよりさらに減速させた速度Lv(Lv<L)で可動盤4を降下させるようにすることもできる。このため、より遅い速度で裁断を行うことが求められる被裁断材であっても、確実にカットすることができる。
【0032】
さらに、駆動制御装置20は、裁断時、刃型5が裁断完了位置で予め設定された時間T1保持されるよう可動盤4を制御するようになっている(図3の(E)、図4のパターンCおよび図7の(E)参照)。このため、被裁断材の材質に応じて、例えば、軟質であったり伸びやすい材質の被裁断材であっても、刃型5を裁断完了位置で設定された時間T1の間押し付けた状態のままにしておくことで、カットしやすくなる。また、この裁断装置2は、クランクシャフト7をサーボモータ12で駆動するようにしているので、クランクシャフト7を一方向に回転させることができるだけでなく、クランクシャフト7を下死点を通過させ、かつ、下死点を中心に360度以内の角度で正逆に回動させることにより、可動盤4の上下のストローク幅St2を上記ストローク幅St1より短くすることができる(ストローク幅St2<ストローク幅St1、図5のパターンDないしパターンF、図8の(C)ないし(E)参照)。さらに、クランクシャフト7を、下死点を通過させないようにし、かつ、180度以内の角度で正逆に回動させることにより、可動盤4の上下のストローク幅St3を短くすることができる(ストローク幅St3<ストローク幅St2<ストローク幅St1、図6のパターンGないしパターンI参照)。このため、裁断以外の可動盤4の上下動の無駄な動作を省略することができ、作業時間を短縮することができる。
【0033】
次に、本発明に係る裁断方法について、上記実施例に係る裁断装置2の作用に基づいて説明する。裁断装置2は、固定盤3の上面に図示しない送り出し機構により被裁断材を順次送り込むとともに、駆動制御装置20により可動盤4の刃型5を上下動させ被裁断材をカットするようにしている。駆動制御装置20は、予め作業プログラムが収納されたシーケンサ6により被裁断材の材質やカットの仕方に応じて作業プログラムが選択されると、この作業プログラムに基づいて、位置決めユニット14に位置決め情報が送出され、この位置決め情報に基づいてサーボアンプ13がサーボモータ12を制御して駆動させ、サーボモータ12の駆動力は減速機11を介してクランクシャフト7に伝達される。クランクシャフト7の回転駆動により可動盤4は上下動される。サーボモータ12は、シーケンサ16の作業プログラムに基づいて、刃型5が上方位置から裁断直前の位置に達するまでの間、可動盤4を予め設定された速い定速度Hで降下させると(第1のステップ)、続いて、刃型5が裁断を開始して完了するまでの間、可動盤4を予め設定された遅い速度Lで降下させ(第2のステップ)、刃型5の裁断完了後、刃型5が裁断完了位置から被裁断材から離脱するまでの間、降下時の設定速度(定速度H)より遅い速度Lで上昇させるようにしている(第3のステップ)。そして、刃型5が被裁断材から離脱した位置から最も上方の位置に達するまで降下時の設定速度(定速度H)と同じ速度で上昇させるようにしている(第4のステップ)。このため、しかも、裁断完了後から刃型5が被裁断材から離脱間での間、定速Hより遅い速度L上昇させるようにしているので、サーボモータ12の消費電力を抑制することができる。このため、作業時間をわずかに延長するだけで、大きな省エネ効果が得られる。しかも、被裁断材の材質に応じて、すなわち、裁断のしにくさ等に応じて、裁断時の刃型5の速度を予め遅くするよう設定することができ、たとえ材質の異なる被裁断材であっても単一の装置で確実にカットすることができる。
【0034】
なお、上記実施例に係る裁断装置2では、上下動させる機構をクランク軸機構6により構成しているがこれに限られるものではなく、クランク軸機構に代えてカム機構により構成してもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
2 裁断装置
3 固定盤
4 可動盤
5 刃型
20 駆動制御装置
H 定速度
L 低速(定速度より遅い速度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断方法であって、
可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、可動盤を、裁断完了後刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させるようにしたことを特徴とする裁断方法。
【請求項2】
可動盤を、被裁断材の厚みに応じて刃型が裁断直前位置から裁断完了位置に達するまでの間のみ予め設定された低速度で降下させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の裁断方法。
【請求項3】
裁断時、可動盤を被裁断材の材質に応じて、刃型を裁断完了位置で予め設定された時間保持し押し付けた状態のままにするよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載の裁断方法。
【請求項4】
可動盤の上下のストローク幅を可変にしたことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の裁断方法。
【請求項5】
被裁断材が載置される固定盤と、固定盤の上方に上下動可能に設けられ、下側に刃型が交換可能に取り付けられた可動盤と、固定盤上の被裁断材を移動させる送り出し機構とを備え、送り出し手段により被裁断材を固定盤上に順次送り込み、駆動制御装置により可動盤を上下動させて被裁断材をカットする裁断装置であって、
可動盤が上下動する行程中の速度を可変に制御し、最も下方の位置に達した可動盤を、刃型が被裁断材から離脱するまでの間、予め設定された上昇速度より遅い速度で上昇させる駆動制御装置を備えたことを特徴とする裁断装置。
【請求項6】
駆動制御装置は、可動盤を上下動させるクランク軸機構と、このクランク軸機構のクランクシャフト一端に減速機を介して接続されたサーボモータと、このサーボモータに電気的に接続されたサーボアンプと、このサーボアンプと位置決めユニットおよびアナログ入力ユニットを介して電気的に接続され、予め入力された作業プログラムが収納された制御部と、制御部と電気的に接続された表示装置と、クランクシャフトの他端に接続されたエンコーダと、このエンコーダと電気的に接続されるとともに、アナログ入力ユニットと制御部とに電気的に接続された高速カウンタとを備えていることを特徴とする請求項5に記載の裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157906(P2012−157906A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17007(P2011−17007)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(391003048)曙機械工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】