説明

装置管理システム及び装置管理プログラム

【課題】様々な種類のネットワーク装置を管理でき、容易に拡張可能な装置管理システムを提供する。
【解決手段】変換機能部20がオーダデータを変換した装置Requestから装置Commandテンプレートを用いてネットワーク装置、通信手順に依存する通信データを生成し、生成した通信データ、ネットワーク装置40の識別子、通信手順を含む装置Commandを通信機能部30に送信し、通信機能部30が、受信した装置Commandに記載された通信手順に対応する通信モジュールを用いて装置Commnadの通信データに従ってネットワーク装置と通信し、ネットワーク装置40を設定する。これにより、同一の通信手順で通信するネットワーク装置40を共通の通信モジュールを用いて設定することができるので、類似処理の重複開発が削減され、開発量の削減、開発期間の短縮、ソフトウェアの版数管理といった開発の手間を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置の管理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IP電話サービスなど様々なネットワークサービスが提供されている。ネットワークサービスをユーザに提供するためには、ユーザからサービスの申し込みを受けたのち、顧客管理システムなどに登録し、ルータやサーバなどのネットワーク装置にサービスを設定する必要がある。
【0003】
今日のネットワークは、多数の装置ベンダによる幅広い種別のネットワーク装置によって構成されている。ネットワーク装置(NE:Network Element)は、装置管理システム(EMS:Element Management System)により管理される。サービスの申し込みを受け付けると、サービス申し込み内容を記載したサービスオーダがEMSに投入され、EMSは投入されたサービスオーダに従ってNEを設定する。
【0004】
NEを管理するうえで必要な要件(管理対象の構成、装置との通信手段、保守情報の取得手順、得られる保守情報のフォーマットなど)は、NEによって様々である。1つのEMSで様々なNEを管理することは困難であるため、管理要件を限定し、その条件に適合したNEのみを管理するEMSを作成する方法が一般的に存在する。
【0005】
EMSにおいて、複数のベンダにより提供されたNEに対する個別インタフェースを、より上位の外部管理システム(ネットワーク管理システム)などに対し、その差分を見せないように単一のインタフェースとして提供する変換技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−044657号公報
【特許文献2】特許第4460396号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ネットワークサービスを支えるサービスアクティベーション技術」、NTT技術ジャーナル、2005年、第17巻、第8号、p.18-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、対象NEの保守インタフェースをCLI(Command Line Interface)に限定せず、単一のEMSで管理する場合、従来技術において想定しているNEの変換処理では対応できない。例えば、従来技術では、Telnetによる通信しか想定していないEMSを構築した場合、Telnetによる通信を許容するNEの管理についてはスクリプトや設定ファイルの追加といった、局所的な機能追加で対応可能であるが、Telnetによる通信を許容しないNE(例えば、NETCONFによる通信のみ許容するNE、SNMPによる通信のみ許容するNE、Java(登録商標)RMIやJMSなどのAPIを備えるNE、TCP/IP上に独自のフォーマットルールを規定し通信するNE)については、新規に他プロトコルの通信機能を追加で設計し、EMS上に、他プロトコルで通信するNE用の通信処理、コマンドの変換処理などのそのNEのためのロジックを全ての機能ブロックに追加実装する必要があり、局所的な機能追加でそのNEを管理するEMSを実現することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、様々な種類のネットワーク装置を管理でき、容易に拡張可能な装置管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明に係る装置管理システムは、ネットワーク装置に対するオペレーションを記載したオーダデータに従ってネットワーク装置を管理する装置管理システムであって、ネットワーク装置、通信手順、オペレーション毎に、前記ネットワーク装置が解釈できる通信内容のひな型であるテンプレートを蓄積した蓄積手段と、前記オーダデータを受信し、当該オーダデータに対応する前記テンプレートを前記蓄積手段から読み出し、当該オーダデータに記載された値を前記テンプレートに当てはめて通信データを生成し、前記ネットワーク装置の識別子、前記通信手順、前記通信データを記載したコマンドを送信する変換手段と、前記コマンドを受信し、当該コマンドに記載された前記通信手順に対応する通信モジュールを用いて、当該コマンドに記載された通信データに基づいて前記ネットワーク装置と通信する通信手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記装置管理システムにおいて、通信モジュールの定義を格納した通信モジュール定義蓄積手段を有し、前記通信手段は、前記通信モジュール定義蓄積手段に格納された通信モジュールの定義を参照して前記通信モジュールを起動することを特徴とする。
【0012】
第2の本発明に係る装置管理プログラムは、上記装置管理システムとしてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な種類のネットワーク装置を管理でき、容易に拡張可能な装置管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における装置管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】装置Requestの例を示す図である。
【図3】装置構成データの例を示す図である。
【図4】装置Requestと装置構成データから装置Commandテンプレートを特定する様子を示す説明図である。
【図5】装置Commandテンプレートの例を示す図である。
【図6】装置Commandテンプレートに装置Requestのパラメータ値を代入して通信データを生成する様子を示す説明図である。
【図7】通信手順がTELNETの装置Commandの例を示す図である。
【図8】通信手順がNETCONFの装置Commandの例を示す図である。
【図9】オーダデータを受信してネットワーク装置を設定する処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における装置管理システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示す装置管理システム1は、オーダ送信部10、変換機能部20、および通信機能部30を備える。装置管理システム1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは装置管理システム1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。以下、各部について説明する。
【0017】
オーダ送信部10は、オーダデータ受付部101、オーダデータ分割部102、装置Request生成部103、および装置Request送信部104を備える。オーダデータ受付部101は、オーダデータを受け付ける。オーダデータ分割部102は、オーダデータをネットワーク装置毎、オペレーション毎に分割する。装置Request生成部103は、分割されたオーダデータを装置Requestに変換する。装置Request送信部104は、装置Request生成部103が生成した装置Requestを変換機能部20に送信する。
【0018】
オーダデータは、ネットワーク装置の識別子、ネットワーク装置に対するオペレーション内容、オペレーションに必要な情報を有している。オーダデータには、複数のネットワーク装置に対するオペレーションを有するものがあるので、オーダデータ分割部102は、オーダデータをネットワーク装置毎、オペレーション毎に分割する。
【0019】
装置Requestは、ネットワーク装置毎、オペレーション毎に分割したオーダデータを変換したものであり、パラメータ値を意味付けしたXML文書である。図2に装置Requestの例を示す。同図に示す装置Requestには、オーダ固有の識別子(ORDER_ID)、オペレーションの内容(OPERATION)、ネットワーク装置の識別子(NE_NAME)、物理インタフェース名(INTERFACE_NAME)、IPアドレス(IPADDR)、ネットマスク(NETMASK)、VLAN ID(VLAN_ID)が含まれる。これ以外の項目を含むものであってもよい。
【0020】
1つの装置Requestは、1つのネットワーク装置への1つのオペレーションである。オペレーションは、論理的な1コマンドであり、例えば、インタフェースのIPアドレス設定などがある。
【0021】
変換された装置Requestは変換機能部20に送信される。
【0022】
変換機能部20は、装置構成データ蓄積部210、装置Commandテンプレート蓄積部220、および変換モジュール230を備える。
【0023】
装置構成データ蓄積部210は、ネットワーク装置の識別子、装置Commandテンプレートの格納場所を示す情報、通信手順を有する装置構成データを格納する。
【0024】
装置Commandテンプレート蓄積部220は、ネットワーク装置、通信手順、オペレーション毎に、ネットワーク装置、通信手順、オーダに依存した通信データのひな型となる装置Commandテンプレートを格納する。
【0025】
変換モジュール230は、装置Requestを受信する装置Request受信部231、装置Requestと装置Commandテンプレートから装置Commandの通信データを生成する変換パラメータ生成部232、生成された通信データを含む装置Commandを生成する装置Command生成部233、および生成された装置Commandを通信機能部30に送信する装置Command送信部234を備える。
【0026】
変換パラメータ生成部232は、装置構成データ蓄積部210を参照して受信した装置Requestに対応する装置Commandテンプレートの格納場所を取得し、装置Commandテンプレート蓄積部220から該当する装置Commandテンプレートを読み出して、装置Commandテンプレートにパラメータを当てはめて通信データを生成する。通信データは、対象のネットワーク装置が解釈できる通信内容のデータであり、ネットワーク装置、通信手順、オペレーション内容に依存する。
【0027】
図3に装置構成データの例を示す。同図には、"10.0.0.1" と "10.0.0.2" の2つのネットワーク装置の装置構成データが示されており、ネットワーク装置それぞれの装置Commandテンプレートの格納場所(TEMPLATE_SET)、通信手順(PROTOCOL)が記載されている。装置構成データを参照することで、受信した装置Requestに対応する装置Commandテンプレートを特定することができる。具体的には、図4に示すように、装置Requestのネットワーク装置の識別子をキーに装置構成データを取得し、装置構成データの装置Commandテンプレートの格納場所、通信手順、および装置Requestのオペレーション内容から該当する装置Commnadテンプレートのファイル名を特定することができる。
【0028】
図5に装置Commandテンプレートの例を示す。装置Commandテンプレートは、ネットワーク装置、通信手順、オーダ内容に依存した通信データのひな型となる情報である。装置Command中の<PARAMETER>〜</PARAMETER>にパラメータ値を代入して通信データが生成される。
【0029】
図6は、装置Commandテンプレートと装置Requestから通信データを生成する様子を示す説明図である。同図に示すように、装置Commandテンプレートの<PARAMETER>〜</PARAMETER>に装置Requestに記載されたパラメータ値が代入されて装置Commandの通信データが生成される。
【0030】
図7,8に装置Commandの例を示す。図7は通信手順がTELNETの装置Commandの例であり、図8は通信手順がNETCONFの装置Commandの例である。いずれも同じオペレーション内容であるが、通信手順の違いにより送受信されるデータが異なるので、通信データも異なっている。また、オペレーション内容、通信手順が同じ場合でも、ネットワーク装置のベンダが異なるとネットワーク装置の設定方法も変わる場合があり、通信データも異なるものとなる。
【0031】
なお、変換モジュール230は、動的に変換ロジックを追加変更することができる。
【0032】
通信機能部30は、通信モジュール管理部310、モジュール定義蓄積部320、通信モジュールローダ321、セッション管理部330を備える。通信機能部30は、装置Commandを受信し、装置Commandに記載された通信手順に対応する通信モジュールを起動し、その通信モジュールを用いて装置Commandに記載された通信データに基づいてネットワーク装置と通信し、ネットワーク装置の設定を行う。通信機能部30中には、通信手順が異なる複数の通信モジュールが共存可能である。図1では、通信モジュールの例としてTELNET通信モジュール311、NETCONF通信モジュール312を記載している。
【0033】
通信モジュール管理部310は、装置Commandを受信し、受信した装置Commandに記載された通信手順に対応する通信モジュールを識別し、その通信モジュールに装置Commandを渡す。通信モジュールは、装置Commandの通信データをネットワーク装置へ送信する。装置Commandの通信データは、装置Commandに記載された通信手順に応じた形式で記載されている。TELNET通信モジュール311はTELNETを用いて、NETCONF通信モジュール312はNETCONFを用いて通信データを送信する。各通信手順に依存するデータ、例えばTELNETアカウント、パスワードなどは、各通信モジュールが動的に取得する。
【0034】
通信モジュールは、通信手順毎に存在し、通信モジュールローダ321により起動される。ネットワーク装置のベンダが異なる場合でも、同じ通信手順を用いる場合は、同じ通信モジュールを用いる。新たな通信方式に対応する通信モジュールを利用するときは、モジュール定義蓄積部320にその通信モジュールの定義を格納することで、通信モジュールローダ321によりその通信モジュールが起動される。他の通信モジュールが動作中であっても、モジュール定義蓄積部320に通信モジュールの定義を格納することで、異なる通信モジュールを動的に、つまり、装置管理システム1の再起動など装置管理システム1を停止させることなく追加できる。
【0035】
各通信モジュールとネットワーク装置との間のセッションは、セッション管理部330により管理される。
【0036】
次に、オーダデータを受信してネットワーク装置を設定する処理について説明する。
【0037】
図9は、本実施の形態における装置管理システムがオーダデータを受信してネットワーク装置を設定する処理の流れを示すシーケンス図である。
【0038】
オーダ送信部10は、オーダデータを受信すると(ステップS101)、受信したオーダデータを分割し(ステップS102)、装置Requestを生成し(ステップS103)、生成した装置Requestを変換機能部20に送信する(ステップS104)。
【0039】
変換機能部20は、装置Requestを受信すると(ステップS105)、装置構成データ、装置Commandテンプレートを参照して装置Commandを生成し(ステップS106,S107)、生成した装置Commandを通信機能部30に送信する(ステップS108)。
【0040】
通信機能部30は、装置Commandを受信すると、装置Commandに記載された通信手順に対応する通信モジュールを起動する(ステップS109)。通信モジュールは、装置Commandの通信データに従ってネットワーク装置と通信し、ネットワーク装置を設定する(ステップS110)。通信モジュールとネットワーク装置間のセッションはセッション管理部330が管理する(ステップS111)。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、変換機能部20がオーダデータを変換した装置Requestから装置Commandテンプレートを用いてネットワーク装置、通信手順に依存する通信データを生成し、生成した通信データ、ネットワーク装置の識別子、通信手順を含む装置Commandを通信機能部30に送信し、通信機能部30が、受信した装置Commandに記載された通信手順に対応する通信モジュールを用いて装置Commnadの通信データに従ってネットワーク装置と通信し、ネットワーク装置を設定することで、同一の通信手順で通信するネットワーク装置を共通の通信モジュールを用いて設定することができるので、類似処理の重複開発が削減され、開発量の削減、開発期間の短縮、ソフトウェアの版数管理といった開発の手間を抑制することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、上記のように、変換機能部20と通信機能部30を明示的に分割し、ネットワーク装置の機種や通信手順に依存しない装置Commandを用いることで、変換処理、通信処理を個別に開発することが可能となり、装置管理システム1へ新規の通信手順や新規の変換ロジックを追加するときも開発部位を局所化することができる。
【0043】
本実施の形態によれば、通信モジュールローダ321がモジュール定義蓄積部320に蓄積された通信モジュールの定義を参照して通信モジュールを起動することにより、新たな通信手順に対応する通信モジュールの定義をモジュール定義蓄積部320に格納することで、通信機能部30は、新たな通信手順に対応することが可能となる。また、他の通信モジュールが動作継続中であっても、動的に異なる通信モジュールを追加できる。
【符号の説明】
【0044】
1…装置管理システム
10…オーダ送信部
101…オーダデータ受付部
102…オーダデータ分割部
103…生成部
104…送信部
20…変換機能部
210…装置構成データ蓄積部
220…テンプレート蓄積部
230…変換モジュール
231…受信部
232…変換パラメータ生成部
233…生成部
234…送信部
30…通信機能部
310…通信モジュール管理部
311…TELNET通信モジュール
312…NETCONF通信モジュール
320…モジュール定義蓄積部
321…通信モジュールローダ
330…セッション管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク装置に対するオペレーションを記載したオーダデータに従ってネットワーク装置を管理する装置管理システムであって、
ネットワーク装置、通信手順、オペレーション毎に、前記ネットワーク装置が解釈できる通信内容のひな型であるテンプレートを蓄積した蓄積手段と、
前記オーダデータを受信し、当該オーダデータに対応する前記テンプレートを前記蓄積手段から読み出し、当該オーダデータに記載された値を前記テンプレートに当てはめて通信データを生成し、前記ネットワーク装置の識別子、前記通信手順、前記通信データを記載したコマンドを送信する変換手段と、
前記コマンドを受信し、当該コマンドに記載された前記通信手順に対応する通信モジュールを用いて、当該コマンドに記載された通信データに基づいて前記ネットワーク装置と通信する通信手段と、
を有することを特徴とする装置管理システム。
【請求項2】
通信モジュールの定義を格納した通信モジュール定義蓄積手段を有し、
前記通信手段は、前記通信モジュール定義蓄積手段に格納された通信モジュールの定義を参照して前記通信モジュールを起動することを特徴とする請求項1記載の装置管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置管理システムとしてコンピュータを機能させることを特徴とする装置管理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−53667(P2012−53667A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195793(P2010−195793)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 電子情報通信学会主催、2010年3月16日〜2010年3月19日 「電子情報通信学会2010年総合大会[情報通信マネジメント]において「共有EMSにおける装置IF機能部アーキテクチャの一提案」電子情報通信学会2010年総合大会プログラム B−14−13 545頁2010年3月2日発行、に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】