説明

装飾体と、その製造方法

【課題】ゴム及び/若しくは熱可塑性樹脂のみによって表面にスエード調を呈するような微細な凹凸を形成した装飾体の製造法を提供する。
【解決手段】口金より押出されたゴムよりなるドアオープニングシール11を加硫後、中空状のシール部16にマスク17を当ててマスキングを施した状態でU形断面の取付部13とリップ部14の表面に一体形成されるスポンジゴム層15に対し、ショットブラスト処理機5で、ショットブラストを行ってスエード調を呈する装飾部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム及び/若しくは熱可塑性樹脂よりなる基材の表面をスエード調とした装飾体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にスエード調の微細な凹凸を形成して意匠的効果をもたらす装飾体として、下記特許文献1には、ゴム又は熱可塑性樹脂よりなりマトリックスと、該マトリックスに分散され、ガス或いはガス化成分を内包する熱膨張性カプセルとを有する成形体を加熱することにより、表面のカプセルを溶解或いは膨張して破壊し、開口するカプセルの開口端縁を含む残部によって表面に凹凸を形成してスエード調を呈する装飾体が開示されている。
【特許文献1】特開2002−146087号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示される装飾体は、ゴム又は熱可塑性樹脂よりなるマトリックスに熱膨張性カプセルを配合してマトリックス全体にカプセルを分散させたものであるが、カプセルは配合量が少ないと、装飾体表面のカプセルも少なくなり、凹凸が少なくなって意匠的効果が乏しくなる一方、カプセルの配合量を多くすると、表面がスエード調を呈して意匠的効果が発揮されるが、カプセルの配合量を多くする程、ゴム又は熱可塑性樹脂が有する本来の特性である弾力性が損なわれ、装飾体自体が脆くなりがちであること、ゴム又は熱可塑性樹脂とカプセルの接着強度にもよるが、装飾体の表面を引掻くと、概してカプセルが該カプセルに付着するゴムや樹脂と共にボロボロと取れ易くなること等の問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題を解消した表面がスエード調を呈する装飾体と、その製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、ゴム及び/若しくは熱可塑性樹脂よりなる基材を有し、該基材の表面にショットブラスト処理によりスエード調の外観を呈する装飾部を形成したことを特徴とする。
【0006】
本発明で用いる基材は、ゴム及び/若しくは熱可塑性樹脂よりなるが、具体的には基材全体がゴムよりなるもの、熱可塑性樹脂よりなるもの、一部がゴムで、他の部分が熱可塑性樹脂よりなるものである。
【0007】
基材がいずれの材料よりなるにしても、この材料には機能や用途に応じて各種添加材、例えば着色剤、発泡剤、架橋剤(基材がゴムよりなる場合)を添加することができる。
【0008】
ゴムの材質としては、例えば天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴムSBR、クロロプレンゴムCR、ニトリルゴムNBR、エチレン・プロピレンゴムEPM、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴムEPDM等を用いることができる。
【0009】
また熱可塑性樹脂の材質としては、例えばオレフレン系熱可塑性エラストマーTPO、スチレン系熱可塑性エラストマーTPS、ウレタン系熱可塑性エラストマーTPU等の熱可塑性エラストマーTPEを用いることができる。
【0010】
基材は、装飾体の一つの層であってもよいし、一部であってもよく、また全体であってもよい。装飾体が成形体で、基材がその一つの層又は一部をなす場合には、一体に同時押出成形するのが望ましいが、別々に押出された成形体を成形直後の融着可能な状態の間にくっ付けて一体化するようにしてもよい。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の基材は、少なくとも表層部がスポンジゴムで形成されることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、装飾部の表面には耐候性及び/若しくは耐汚れ性のコーティング層が形成されることを特徴とする。
【0012】
ここで耐候性を付与するコーティング層としては、例えばシリコーン樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系或いはこれらの混合樹脂系の塗布によって形成することができ、耐汚れ性を付与するコーティング層としては、例えばシリコーン樹脂系、フッ素樹脂系の塗布によって形成することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、ゴム製の基材を有する成形体を押出す工程と、押出された成形体を加硫した直後に基材の表面にショットブラスト処理を行ってスエード調の外観を呈する装飾部を形成する工程を有することを特徴とする。
【0014】
本発明におけるゴム製の基材には、例えば硫黄、有機含硫黄酸化物、有機過酸化物、金属酸化物等の架橋剤が入れられる。
【0015】
請求項5に係る発明は、熱可塑性樹脂製の基材を有する成形体を押出す工程と、押出された直後の成形体の基材の表面にショットブラスト処理を行ってスエード調の外観を呈する装飾部を形成する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の装飾体は、基材表面にショットブラスト処理を施してスエード調を呈する装飾部を形成したもので、装飾部の意匠効果が高められること、基材はゴム/及び若しくは熱可塑性樹脂のみからなって表面形状のみが変えられるため、弾力性などゴム及び若しくは熱可塑性樹脂本来の特性が損なわれることがなく、カプセル入りの従来の装飾体のような脆さを生じることがないし、表面の凸部がカプセルのように剥離してボロボロと取れるようなこともないこと等の効果を奏する。
【0017】
請求項2に係る発明の装飾体によると、スポンジは押出により表面にスキン層が形成されるが、ショットブラスト処理によりスキン層が削除され、表面に気泡が表われて表面の凹凸が深い装飾部となる。
【0018】
請求項3に係る発明の装飾体によると、基材表面にコーティング層を施すことにより耐候性及び若しくは耐汚れ性を向上させることができる。
【0019】
請求項4及び5に係る発明の装飾体の製造法によると、ショットブラスト処理を成形体の押出工程に組込んで行うことができるため、別工程で行うよりも製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明係る装飾体を製造する装置の概要を示すもので、押出ヘッド1の口金2より押出された架橋剤入りのゴムよりなる押出成形体3は、加硫装置4で加硫されたのち、ショットブラスト処理機5でショットブラストされ、ついでロールコータ、スプレー或いはハケ塗り等の塗布手段6によりシリコーン塗料が塗布され、耐候性と耐汚れ性が付与されるようになっている。
【0021】
図2は、本発明に係る装飾体を製造する別の装置の概要を示すもので、押出ヘッド1の口金2より押出された熱可塑性樹脂よりなる押出成形体7が、ショットブラスト処理機5でショットブラスト処理され、ついで上述の塗布手段6によりシリコーン塗料が塗布されるようになっている。
【0022】
図3は、自動車ボディのドア開口縁に取付けられ、ドアとの間をシールする装飾体としてのドアオープニングシール11を示すもので、このドアオープニングシール11は、断面略U形状をなし、U形断面の芯金12を埋設したソリッドゴム製の取付部13と、該取付部13の頂部より側方に延設され、ガーニッシュの縁部を覆うソリッドゴム製のリップ部14と、取付部13とリップ部14の表面に一体形成される、基材としてのスポンジゴム層15と、取付部13の一側より突設される中空状のスポンジゴム製のシール部16よりなり、押出後、加硫されたのち、図4に示すようにシール部16にマスク17を当ててマスキングを施した状態で、取付部13とリップ部14上に一体形成されるスポンジゴム層15に対し、鋳鉄又は酸化アルミニウムを粉砕した粒径0.5〜1.5mm程度の角を有するブラスト材を用いてショットブラスト処理を行ってスポンジゴム層表面にスエード調を呈する装飾部18を形成するようになっている。そしてショットブラスト処理後、形成された装飾部18に対し、図1に示すように塗布手段6によりシリコーン塗料が塗布され、乾燥後、図示しない矯正ローラを用いて取付部13の開口が狭められ、図3に示すような装飾体としてのドアオープニングシール11が得られるようになっている。
【0023】
図5は、建物外壁の隣り合うパネルの端面間の隙間に装着される装飾体としての目地材21を示すもので、この目地材21は、パネル端面間の隙間を覆う頭部22と、頭部中央より下向きに突設される柱部23と、柱部23の両側より突設され、パネル端面に弾接するリップ部24よりなり、頭部22の表面には基材としてのスポンジゴム層25が一体形成され、該スポンジゴム層表面に上述するショットブラスト処理が行われ、スエード調を呈する装飾部が形成されるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の装飾体は、表面の装飾性が望まれる各種の用途、例えば家具、電化製品、車両の内外装材等に用いることができ、とくに車両のウェザーストリップ、プロテクター材、建物外壁の目地材等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る装飾体の製造装置の模式図。
【図2】本発明に係る装飾体の別の製造装置の模式図。
【図3】装飾体の一例であるドアオープニングシールの断面図。
【図4】ショットブラスト処理時のドアオープニングシールの斜視図。
【図5】装飾体の別の例である目地材の断面図。
【符号の説明】
【0026】
1・・押出ヘッド
2・・口金
3、7・・押出成形体
4・・架硫装置
5・・ショットブラスト処理機
6・・塗布手段
11・・ドアオープニングシール
12・・芯金
13・・取付部
14・・リップ部
15、25・・スポンジゴム層
16・・シール部
17・・マスク
18・・装飾部
21・・目地材
22・・頭部
23・・柱部
24・・リップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム及び/若しくは熱可塑性樹脂よりなる基材を有し、該基材の表面にショットブラスト処理によりスエード調の外観を呈する装飾部を形成したことを特徴とする装飾体。
【請求項2】
基材は、少なくとも表層部がスポンジゴムで形成されることを特徴とする請求項1記載の装飾体。
【請求項3】
装飾部の表面には耐候性及び/若しくは耐汚れ性のコーティング層が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の装飾体。
【請求項4】
ゴム製の基材を有する成形体を押出す工程と、押出された成形体を加硫した直後に基材の表面にショットブラスト処理を行ってスエード調の外観を呈する装飾部を形成する工程を有することを特徴とする装飾体の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂製の基材を有する成形体を押出す工程と、押出された直後の成形体の基材の表面にショットブラスト処理を行ってスエード調の外観を呈する装飾部を形成する工程を有することを特徴とする装飾体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−8817(P2006−8817A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187329(P2004−187329)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】