説明

装飾樹脂板の製造方法

【課題】メガネのセル枠や、アクセサリー類に使用されるアセテート樹脂板の表面に立体的な模様を安価に簡単に設ける様にする事。
【解決手段】ガラス基板の表面に凹凸の装飾模様を刻設し、シリコン型(20)に前記凹凸の装飾模様(22)を写し取り、写し取った前記シリコン型の凹凸装飾模様の上に、アセテート樹脂の砕片又は粉末又はそれらの混合物をエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させたもの(30)を注型し、その上にアセテート樹脂板(40)により接面する様にして蓋をした状態にして、15℃〜60℃で3時間〜24時間乾燥させ、前記アセテート樹脂板表面上に凹凸装飾模様を一体的に設けた装飾樹脂板の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセテート樹脂(酢酸セルロース)装飾板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メガネのセル枠や、アクセサリー類に使用されるアセテート樹脂板の表面に立体的な模様を設ける方法としては、(i)サンドブラスト等による凹凸模様の刻設、(ii)レーザーによる凹凸模様の刻設、(iii)金型の内表面に精巧な凹凸模様を設ける方法、(iv)エンボスロールなどによる加工方法が実施されてきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記(i)のようにサンドブラスト等による凹凸模様の刻設は樹脂のような柔らかい物の表面に施す場合は、エッジが立たず凹凸模様の周囲がぼやけてしまい、精巧な凹凸模様を設ける事は出来なかった。
【0004】
次に(ii)のレーザーによる模様の刻設は、樹脂板に施す場合は表面に焦げ目が残るのと、余熱で周囲が溶けてしまい、これもまた微細な凹凸模様を設ける事は出来なかった。そして、(iii)のように、金型内表面に精巧な凹凸模様を設ける方法に於いては、非常に微細でエッジも立った凹凸模様が表現可能ではあるが、金型製作に非常にコストが掛かってしまった。
【0005】
(iv)のエンボスロールなどによる加工方法に於いては、設備に費用が掛かり過ぎ、そして、多品種小ロットの生産には不向きであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明に於いては、上記課題を解決する為に、ガラス基板の表面に凹凸の装飾模様を刻設し、シリコン型に前記凹凸の装飾模様を写し取り、写し取った前記シリコン型の凹凸装飾模様の上に、アセテート樹脂の砕片又は粉末又はそれらの混合物をエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させたものを注型し、その上にアセテート樹脂板により接面する様にして蓋をした状態にして、15℃〜60℃で3時間〜24時間乾燥させ、前記アセテート樹脂板表面上に凹凸装飾模様を一体的に設けた事を特徴とする装飾樹脂板の製造方法の提供を図った。そして更に、前記凹凸装飾模様に彩色を施しより鮮やかにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の装飾樹脂板の製造方法によると、安価に簡単に樹脂板の表面にエッジの立った凹凸模様が表現出来るようになった。多品種小ロットに対応可能でありデザインの応用も広い。又、上記アセテート樹脂の砕片又は粉末は、眼鏡材料の切削くずや切残しを使用出来る為に環境にも優しく、温暖化防止にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ガラス基板の表面に凹凸の装飾模様を刻設し、シリコン型に前記凹凸の装飾模様を写し取り、写し取った前記シリコン型の凹凸装飾模様の上に、アセテート樹脂の砕片又は粉末又はそれらの混合物をエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させたものを注型し、その上にアセテート樹脂板により接面する様にして蓋をした状態にして、15℃〜60℃で3時間〜24時間乾燥させ、前記アセテート樹脂板表面上に凹凸装飾模様を一体的に設けた事を特徴とする装飾樹脂板の製造方法。
【実施例1】
【0009】
先ず図1(イ)のように、ガラス基板10の表面に凹凸の装飾模様16を刻設する。
この際、サンドブラスト(砂打ち)等による場合は図1のようにマスキング12を設ける場合もあり、又レーザーによる場合等に於いてはマスキングが必要ない場合もある。そして、ガラス基板であるので、エッジの立った周囲の輪郭のはっきりした凹凸模様(エンボス)16が出来上がる。
【0010】
次に、図1の(ロ)のように、マスキングを剥がしてシリコン樹脂20を注ぎ、前記凹凸模様16をシリコン型に転写する。そして図2の(イ)のように、前記シリコン樹脂型20の凹凸装飾模様22部分に、アセテート樹脂砕片又は、粉末又はそれらの混合物(A)を市販のエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(B)に、(A)2〜4:(B)5〜6の割合で溶解させた装飾物30を注型する。この場合、前記アセテート樹脂の砕片又は粉末又はそれらの混合物は、例えば、メガネ製造に係わる切削くずを使用する事が可能で、廃棄物の再利用としても役に立つ。又、色を付ける場合に於いては、色の付いた切削くずを利用出来る。勿論、染料を加える事も可能である。ここで、エチレングリコールモノメチルエーテルにアセテート(酢酸セルロース)を溶解させて上記割合にする事も可能である。
【0011】
次に図2の(ロ)の如く、アセテート樹脂砕片又は、粉末又はそれらの混合物(A)を市販のエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(B)に、(A)2〜4:(B)5〜6の割合で溶解させた装飾物30を注型した上に、アセテート樹脂板40を接面する様にして蓋をする状態にして置く。この様に蓋をした状態にしておかないと乾燥固化しない。
【0012】
そして室温であれば、一昼夜、機械乾燥であれば、40℃〜60℃で3時間〜6時間蓋をした状態で乾燥させる。ここで重しGを載せて置く事も可能である。又、この装飾部の厚さは特に限定はしないが0,2mm〜5mm位が適当である。
【0013】
そうして、図3の様にエッジの立った凹凸装飾樹脂板40aが出来上がる。
【0014】
そして、前記凹凸装飾樹脂板を切削、又は型抜きカット等して図4の様に樹脂製メガネフロントフレーム50として使用する事になる。この様なメガネ枠は今迄に無い見栄えと感触であり、色んなデザインの広がりを期待出来る。又、同様に、図5の様に、樹脂製装飾テンプル60としても使用可能で微細な凹凸模様(エンボス)の色んなデザインを楽しめる。この後仕上げとして、バレル研磨、パフ研磨、を施すが、その加工後に於いてもエッジ部分はしっかり残りぼやけた感じになることはなかった。
【0015】
又、図6の様に、付け爪70としても利用可能であり、装飾を手塗りで施す場合に於いても、予め背景的な部分の凹凸模様を付けて置くと、製作時間が半分位で済み、お客様を待たせる時間が減り、顧客の回転率も良くなる。この他にも図示はしないが髪飾りや他のアクセサリーとしての利用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
上記した様に、メガネ関連はもちろん、アクセサリーにも応用が可能であり、多品種小ロットに対応し自然環境にも優しい技術の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(イ)本発明の実施例のガラス基板に凹凸模様を設けた断面図 (ロ)(イ)にシリコン樹脂を注型した断面図
【図2】(イ)図1(ロ)のシリコン型に装飾用樹脂を流し込んだ断面図 (ロ)図2(イ)の上にアセテート樹脂を載せた断面図
【図3】本発明の装飾板平面図
【図4】図3の状態からメガネフロント枠を切り出した正面図
【図5】図3の状態からテンプルフレームを切り出した正面図
【図6】図3の状態から付け爪を切り出した斜視図
【符号の説明】
10、ガラス基板
12、マスキング
14、16、凹凸模様
20、シリコン樹脂
22、シリコン樹脂凹凸模様
30、混合装飾物
40、アセテート樹脂
50、樹脂製メガネフロントフレーム
60、樹脂製テンプル
70、付け爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の表面に凹凸の装飾模様を刻設し、シリコン型に前記凹凸の装飾模様を写し取り、写し取った前記シリコン型の凹凸装飾模様の上に、アセテート樹脂の砕片又は粉末又はそれらの混合物をエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させたものを注型し、その上にアセテート樹脂板により接面する様にして蓋をした状態にして、15℃〜60℃で3時間〜24時間乾燥させ、前記アセテート樹脂板表面上に凹凸装飾模様を一体的に設けた事を特徴とする装飾樹脂板の製造方法。
【請求項2】
前記凹凸装飾模様に彩色を施した事を特徴とする請求項1記載の装飾樹脂板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−302684(P2008−302684A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176722(P2007−176722)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507147013)
【出願人】(393018820)プラス・ジャック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】