説明

補体活性化を阻害するヒドロキシルアミンおよび誘導体

【解決手段】 補体を介した病状を治療し、ドルーゼを介した病状を治療するため、補体活性化を抑制する方法が開示される。前記方法ではヒドロキシルアミン化合物およびそのエステル誘導体を利用し、有効量が対象に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願書類の相互参照
本出願は、2006年2月22日付出願の仮出願整理番号第60/775,478号の利益を主張した2007年2月21日付出願の米国特許出願第11/677,462号に対して優先権を主張するものであり、全開示内容はこの参照によって本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、免疫薬理学の分野に関する。具体的には、本発明は、補体カスケードの活性化を阻害し、補体活性化により生じる病状を治療するためのヒドロキシルアミンおよび特定のエステル誘導体を利用した組成物および方法について特徴付けられるものである。
【背景技術】
【0003】
様々な特許および他の公開物が本明細書で参照されている。これらの特許および公開物それぞれの全開示内容は、この参照によって本明細書に組み込まれる。共同所有された同時係属の米国公開第2004/0002461号、第2005/0130906号、および第2005/0131025号の全開示内容は、この参照によって本明細書に組み込まれる。
【0004】
補体系は、外来病原体に対する免疫防御において、身体の武器の中でも重要な手段である。補体タンパク質は様々なシグナルによって誘発可能な酵素カスケードで活性化され、古典経路、副経路、およびレクチン経路の3主要経路の1つを進む。これらの経路ではC3aおよびC5aを含むアナフィラトキシンペプチドが生成され、結果的にC5b−9膜侵襲複合体(membrane attack complex:MAC)が生成し、これが侵入してきた細胞を溶解させる機能を有する。前記アナフィラトキシンは血管に作用し、平滑筋収縮および血管透過性の亢進のみならず、炎症も促す。
【0005】
特定の状況では、前記補体系が有害な作用を生じる可能性がある。例えば、補体が不適切に活性化されると生体内細胞に傷害が生じることもある。補体は、特に免疫複合体が生成されると、重症筋無力症および全身性エリテマトーデスなどの抗体を介した自己免疫疾患で組織傷害を悪化させ、虚血後の組織傷害を悪化させる可能性がある(Liszewski MK et al.(1998)Expert Opin.Investig.Drugs.7:323−31)。補体は、糸球体腎炎、成人呼吸器症候群、および移植組織の拒絶反応を含む様々な疾患状態の促進または悪化にも関与していた(Glovsky MM et al.(2004)Ann.Allergy Asthma Immunol.93:513−22;Colvin RB et al.(2005)Nat Rev Immunol.5:807−17)。透析または心肺バイパスを受けた患者にみられる状態などの生物不適合(bioincompatibility)状態でも、補体を介した組織傷害が認められた(Mollnes TE(1998)Vox Sang.74 Suppl 2:303−307)。
【0006】
補体を介した組織傷害は、直接には前記MAC、間接的にはアナフィラトキシンC3aおよびC5aの生成によって媒介される。これらのペプチドは、好中球および肥満細胞に対する作用により傷害を誘導する。血漿および膜タンパク質により、補体はC3およびC5活性化の段階で制御される。血漿タンパク質阻害剤はファクターHおよびC4結合タンパク質を誘導し、細胞表面にある制御膜タンパク質には補体受容体1(complement receptors 1:CR1)、分解促進因子(decay−accelerating factor:DAF)、および膜補因子タンパク質(membrane cofactor protein:MCP)を含む。これらのタンパク質は、マルチ・サブユニット複合体の解離を促し、および/または(ファクターIで触媒される)タンパク質分解により前記補体を不活性化することで、C3およびC5変換酵素(マルチ・サブユニット・プロテアーゼ)を阻害する。
【0007】
補体はドルーゼの形成にも関与している。ドルーゼは、網膜色素上皮(retinal pigmented epithelium:RPE)とブルッフ膜の間の眼の部分、時には網膜周辺部にある細胞外沈着物に付けられた名称である(Lewis HB et al.(1986)Ophthalmology 93:1098−1111)。ドルーゼは様々な脂質、タンパク質、多糖、およびグリコサミノグリカンを含み、ドルーゼのタンパク質は酸化的に修飾されている場合が多い(Crabb JW et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:14682−7)。ドルーゼ沈着は主に高齢者に発生し、加齢性黄斑変性症(age related molecular degeneration:AMD)発症の主要因である(Abdelsalam A et al.(1999)Surv.Opthalmol.44:1−29)。
【0008】
ドルーゼの形成および沈着に至る正確なメカニズムは部分的に特徴が解析されただけであるが、前記RPEの細胞残屑が炎症の刺激物として機能し、次にはドルーゼ蓄積の核形成部位となる可能性があると推測されてきた(Johnson LV et al.(2000)Exp.Eye Res.70:441−9;および、Johnson LV et al.(2001)Exp.Eye.Res.73:887−96)。この仮説の裏付けとして、補体成分C3a、C5a、および前記MACを含む様々な炎症性伝達物質がドルーゼで観察され(Luibl V et al.(2006)J.Clin.Invest.116:378−85)、そのような補体は、ドルーゼ内部分構造の小胞で補体活性化タンパク質であるアミロイドβタンパク質と共存していることが分かった(Johnson LV et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11830−5)。さらに、最近の研究では、C3aまたはC5aの中和、またはそれぞれの受容体がAMDの血管新生を抑制することが証明されている(Nozaki M et al.(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2006 Feb 1;[印刷前に電子出版されている])。これらの所見は、補体がドルーゼ形成および沈着の抑制または進行に関与していることを示している。そのようなものとして、補体はドルーゼ沈着抑制の魅力的なターゲットである。
【0009】
現在まで、臨床的に実現可能な補体活性化阻害剤はないが、臨床で使用するための一定の候補薬は存在する。そのような候補薬には、可溶性補体受容体1(sCR1)として知られる組み換え型補体受容体1、およびヒト化モノクローナル抗C5抗体(5G1.1−scFv)を含む。これらの物質はいずれも、in vivo動物モデルで補体の活性化を抑制することが示された(Kalli KR et al.(1994)Springer Semin.Immunopathol.15:417−31;および、Wang et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93:8563−8)。しかし、各物質には分子量の大きなタンパク質であるという不利な点があり(それぞれ240kDaおよび26,000kDa)、製造が難しく、注入投与が必要となる。前記MACの会合を阻害するCD59も治療薬にできる可能性があると提唱されたが、in vitroでは限られた活性しか示されていない(Song H et al.(2003)J.Clin.Invest.111:1875−85)。従って、最近の研究では、薬物が投与される患者に到達しやすく、可溶性が高く、毒性の少ない、より小さな活性薬物を開発することを重視している。
【0010】
比較的毒性がないため、ヒドロキシルアミンは治療薬として窒素酸化物よりも好ましい。MatierおよびPatilの既発表米国特許出願第2004/0002461号、第2005/0130906号、および第2005/0131025号では、ヒドロキシルアミンおよび関連化合物、および酸化的傷害または炎症が関与する様々な眼の状態の治療における使用について開示している。そのような化合物は、強固な抗炎症性および抗酸化活性、および場合によっては眼の透過性を含む、多数の有利な特性を有する。しかし、ヒドロキシルアミンが補体活性化を抑制する、またはAMDなどの補体またはドルーゼを介した病状を治療する効果を有することは、これまで報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、補体活性化を阻害する有効量のヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を、対象に投与することにより、前記対象の補体活性化を阻害する方法について特徴付けられる。さらに、本発明は、対象の補体活性化を介した病状を治療する方法、および対象のドルーゼ形成を阻害する方法を提供し、これらは、それぞれ補体活性化を介した病状を治療しドルーゼ形成を阻害する有効量の薬学的に許容される担体およびヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を有する組成物を前記対象に投与することによるものである。本発明の組成物および方法により治療可能な眼の病状の例は、網膜症および加齢性黄斑変性症(AMD)を含む。さらに、補体活性化によるものなど、慢性的な炎症が加齢に伴う多くの重要疾患の要因であることが明らかになりつつある。従って、本発明の組成物および方法で治療可能な他の病状には、いくつかの例を挙げると、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)、パーキンソン病(Perkinson’s disease:PD)、ALSおよび多発性硬化症、アテローム性動脈硬化、心疾患、皮膚弾性硬化症、糸球体基底膜疾患、および多数のアミロイドーシスなど、加齢に伴う疾患を含む。前記組成物および方法はいかなる動物にも使用可能であり、好ましくは哺乳類に使用され、最も好ましくはヒトに使用される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特定の実施形態では、前記ヒドロキシルアミン化合物はTempol−H、Tempo−H、およびOxano−Hを含み、前記ヒドロキシルアミン化合物誘導体は以下の化学式Iを有しており、
【0013】
【化7】

【0014】
式中、
およびRは、独立してHまたはC〜Cアルキルであり、
およびRは、独立してC〜Cアルキルであるか、或いはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、またはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、それぞれシクロアルキルであり、
はH、OH、またはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであるか、或いはRとRとが共に結合して、Rと、Rと、Rとが共に結合して、環内に3〜7原子を有する炭素環を形成するか、環内に3〜7原子を有する複素環を形成するものである。
【0015】
本発明の一部の態様によると、本発明の組成物は他の補体阻害剤、抗炎症薬、または抗酸化剤と相乗的に使用される。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明、および例を参照することにより理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書および請求項を通して、本発明の方法および他の態様に関連する様々な用語が使用される。そのような用語は、他に指示されていない限り、当該分野における通常の意味が与えられるものとする。他の具体的に定義された用語は、本明細書に提供された定義と一致するように解釈されるものとする。
【0018】
以下の略語は、本明細書および例に使用されることがある。AMD 加齢性黄斑変性症、MAC 膜侵襲複合体。
【0019】
「治療する」または「治療」という用語は、症状の軽減、寛解、消失または患者が傷害、病状、または状態により耐えられるようになること、変性または衰退速度の鈍化、変性の最終点があまり消耗性ではなくなること、対象の身体的または精神的幸福(well−being)の改善、または生存期間の延長など、主観的または客観的パラメータを含む傷害、病状、または状態の減弱または改善の成功または成功の兆候を指す。症状の治療または改善は、身体検査、神経学的診察、および/または精神鑑定の結果を含む、客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0020】
「有効量」または「治療的有効量」は本明細書で同義的に用いられ、本明細書に説明する通り、特定の生物学的結果を達成するために有効な化合物、物質、または組成物の量を指す。そのような結果には(これに限定されるものではないが)、補体活性化の阻害、ドルーゼ形成の阻害、補体を介した病状の治療、およびドルーゼを介した病状の治療を含むことができる。
【0021】
「薬学的に許容される」は、組成物、製剤、安定性、患者の承諾、およびバイオアベイラビリティについて、薬理学的/毒物学的観点から前記患者に、物理的/化学的観点から製造薬剤師に受け入れられる、これらの性質および/または物質を指す。「薬学的に許容される担体」は、活性成分の生物活性の有効性に干渉せず、投与される宿主に毒性のない媒体を指す。
【0022】
「病状」は疾患、病気、または病状の開始または進行を構成し、または特定の疾患または病気を特徴付ける、正常状態からの構造的および機能的逸脱を指す。
【0023】
「ドルーゼ」は、網膜色素上皮(retinal pigmented epithelium:RPE)の基底膜およびブルッフ膜の内部コラーゲン層の下に蓄積する細胞外沈着物を指す。
【0024】
本発明は、補体活性化を阻害する方法を提供する。補体活性化を介した病状およびドルーゼの形成および沈着を介した病状の治療法も提供される。前記方法は、補体活性化、ドルーゼ沈着、または補体またはドルーゼを介した病状の発症または進行を治療、阻害、または鈍化させる効果のある量で、ヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を投与する工程を有する。
【0025】
本発明ではさらに、加齢性黄斑変性症および糖尿病性網膜症を含む、補体活性化を介した病状、またはドルーゼの形成および沈着を介した病状を治療または抑制するための薬物の製造において、Tempol−H、Tempo−H、およびOxano−Hを含むヒドロキシルアミン化合物、およびすべての薬学的に許容されるその塩、類似体、相同体、接合体、および誘導体を提供する。
【0026】
本発明の使用に適したヒドロキシルアミン化合物の種類の好適な例は、TEMPOL−H(TPH、ニトロオキシド4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イルオキシのヒドロキシルアミン還元型)、TEMPO−H(ニトロオキシド2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イルオキシのヒドロキシルアミン還元型)、およびOXANO−H(2−エチル−2,4,4−テトラメチル−オキサゾリジン−3−オール、OXANO、2−エチル−2,4,4−トリメチルオキサゾリジン−3−イルオキシの還元型)である。本発明での使用に適した他のヒドロキシルアミン化合物には、(これに限定されるものではないが)Hahnら(1998、上記参照;2000、上記参照)、Samuniら(2001、上記参照);およびPaoliniらの米国特許第5,981,548号明細書(特定のN−ヒドロキシピペリジンエステル、および多くの状況での抗酸化剤としての使用について開示している);Guptaらの米国特許第4,404,302号明細書(プラスチック配合物の光安定剤としてのN−ヒドロキシルアミンの使用について開示している);Behrensらの米国特許第4,691,015号明細書(ヒンダードアミン由来のヒドロキシルアミンおよびポリオレフィンを安定化するための特定ヒドロキシルアミンの使用について開示している)に開示された化合物;およびHsiaらの前述の米国特許数件に開示されたヒドロキシルアミン化合物;およびMitchellらの米国特許第5,462,946号および第6,605,619号に開示されたニトロオキシドのヒドロキシルアミンに相当する化合物、つまり、化学式R−N(R)(R)の化合物(1)であって、Rは−OHであり、RおよびRは窒素と結合して複素環を形成するか、またはRおよびR自体が置換または非置換環または複素環基を有する化合物;化学式R−N(R)(R)の金属依存性ヒドロキシルアミン(2)であって、Rは−OHであり、RおよびRはこれらが結合する窒素原子と結合して5−または6−員環複素環基を形成し、さらにこれらが前記窒素原子に、酸素、窒素、および硫黄から成る群から選択された1若しくはそれ以上のヘテロ原子を有し、またはRおよびRが個別にそれぞれ置換または非置換5−または6−員環基または置換または非置換5−または6−員環複素環基を有し、これが酸素、窒素、および硫黄から成る群から選択される1若しくはそれ以上のヘテロ原子を有するヒドロキシルアミンであるか;または下記化学式のオキサゾリジン化合物(3)であって、
【0027】
【化8】

【0028】
式中、Rは−CHであり、Rは−C、−C、−C、−C11、−C13、−CHCH(CH、−CHCH、または−(CHCHであり、Rは−OHであるか、RとRとが共に結合してスピロシクロペンタン、スピロシクロヘキサン、スピロシクロヘプタン、スピロシクロオクタン、5−コレスタンまたはノルボルナンを形成するオキサゾリジン化合物;および前述の化合物いずれかの薬学的に許容される塩を含むものである。知られている限り、前述の化合物は、これまで肝炎の治療および抑制には使用されていない。
【0029】
本発明での使用に適したヒドロキシルアミンのエステル誘導体は化学式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を有し、その例は米国公開出願第2004/0002461号に詳細に報告されており、
【0030】
【化9】

【0031】
式中、
およびRは、独立してHまたはC〜Cアルキルであり、
およびRは、独立してC〜Cアルキルであり、またはRとRをまとめるか、RとRをまとめるか、またはRとRをまとめ、RとRをまとめ、それぞれシクロアルキルであり、
はH、OH、またはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、またはRとRとが共に結合して、Rと、Rと、Rとが共に結合して、環内に3〜7原子を有する炭素環を形成するか、環内に3〜7原子を有する複素環を形成する。
【0032】
本発明の方法では、薬学的に許容される担体または賦形剤および溶解度を変更した部分に結合するN−ヒドロキシピペリジン部分を有するヒドロキシルアミン化合物を有する組成物も利用可能であり、前記化合物は25℃の水中での溶解度が少なくとも重量で約0.25%であり、25℃での水/n−オクタノール分配係数が少なくとも約5である。前記組成物は、眼に認められる条件など、生物組織に認められる条件下で、前記化合物から開裂可能なN−ヒドロキシピペリジン部分を有する。前記N−ヒドロキシピペリジン部分は酵素により開裂される。前記組成物は、前記N−ヒドロキシピペリジン部分が1−オキシ−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジルの場合も存在する可能性がある。
【0033】
〜Cアルキル、アルケニル、またはアルキニルの用語は、本発明の意味において、その中に1〜n個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を意味し、nは1〜約20、好ましくは1〜約10、さらに好ましくは1〜約6の整数であり、1〜約3がさらに好ましい。そのため前記用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、およびペンチル、ヘキシルなどの様々な異性体を含む。同様に、前記用語はエテニル、エチニル、プロペニル、プロピニル、および炭素原子n個までの同様の分岐および非分岐不飽和炭化水素族を含む。状況が許す場合は、そのような基は1若しくはそれ以上のヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、アリールアミノ、ベンジルオキシ、ベンジルアミノ、複素環、またはYCO−Zなどの官能基とすることができ、YはO、N、またはSであり、Zはアルキル、シクロアルキル、複素環、またはアリール置換基である。
【0034】
炭素環の用語は環状構造または環を定義し、前記環を形成するすべての原子が炭素である。この例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどである。シクロプロピルは好ましい種類の1つである。複素環は、前記環の少なくとも1原子が炭素ではない環状構造を定義する。この広範なクラスの例には、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、イミダゾールなど、特に前記環に酸素原子を有するものを含む。前記環に少なくとも1つの酸素または窒素原子を有する5、6、および7員環は好適な複素環である。フラニルおよびテトラヒドロフラニル種などが好ましい。
【0035】
〜RのそれぞれがC〜Cアルキルの低級アルキルである特定の実施形態は好ましい。好ましくは、合成の便宜上、またそのような置換基がこれらの位置にある分子に知られた効果のため、これらの基はすべてメチルである。ただし、他の置換基も利用できる。
【0036】
特定の実施形態では、RがC〜Cアルコキシ基またはベンジロキシ基の少なくとも1つで置換されたC〜Cアルキルである化合物が採用されている。このうち好ましいのは、エトキシまたはベンジルオキシ置換基を有する化合物である。R〜Rのそれぞれがメチルであり、RがHまたはメチルであり、RがベンジルオキシまたはC〜Cアルコキシで置換されたメチルであり、Rがメチルであるか、またはRおよびRがシクロプロピル基を形成する化合物、およびR〜Rそれぞれがメチルであり、Rがメチルであり、Rはエトキシまたはベンジルオキシメチルであり、Rはメチルである化合物も好ましい。さらに好適な化合物は、R〜Rそれぞれがメチルであり、Rがメチルであり、Rはヒドロキシメチルであり、Rはメチルである化合物である。
【0037】
他の有用な化合物は、R〜Rそれぞれがメチルであり、Rと、Rと、Rとが共に結合してフラニル基を形成するか、RとRとが共に結合してテトラヒドロフラニル基を形成する化合物である。R〜Rがメチルであり、RがHであり、RおよびRがシクロプロピル環を形成する化合物はさらに好ましい。本発明の方法に有用な化合物の例には(これに限定されるものではないが)、1−オキシ−4−(3’−エトキシ−2’,2’−ジメチル)プロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−ヒドロキシ−4−(3’−エトキシ−2’,2’−ジメチル)プロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩;1−オキシ−4−シクロプロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−ヒドロキシ−4−シクロプロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩;1−オキシ−4−(3’−ベンジルオキシ−2’,2’−ジメチル)プロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−シドロキシ−4−(3’−ベンジルオキシ−2’,2’−ジメチル)プロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩;1−ヒドロキシ−4−(3’−ヒドロキシ−2’,2’−ジメチル)プロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩;1−オキシ−4−(1−メチル−シクロプロパン)カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−ヒドロキシ−4−(1−メチル−シクロプロパン)カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩;1−オキシ−4−(2−フラン)カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−ヒドロキシ−4−(2’−フラン)カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩;1−オキシ−4−(3’−テトラヒドロフラン)カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−ヒドロキシ−4−(3’−テトラヒドロフラン)カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩など、米国特許公開第US 2004/0002461A1号に報告されている化合物を含む。本明細書で化合物1と呼ばれる1−ヒドロキシ−4−シクロプロパンカルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩は特に好ましい。
【0038】
理論に固執することなく、化合物1(化学式1の化合物であって、式中、R、R、R、およびRはメチルであり、RはHであり、RとRとは共に結合してシクロプロパン環を形成する)および他の化学式Iの化合物は抗血管形成作用および他の治療効果を2つの方法で発揮すると出願者は考えている。第一に、前記エステル化合物は生体位で加水分解され、治療活性を発揮するヒドロキシルアミン成分を形成する。第二に、前記エステル化化合物自体が抗酸化活性を有するため、補体活性の抑制作用を有すると考えられ、それによって前記化合物を有する製剤の治療効果を支えている。
【0039】
前記化学式Iの化合物の活性に関する最初の基礎、つまり、開裂によりヒドロキシルアミン成分を遊離することと関連し、様々な身体の組織および臓器に多数のエステラーゼが存在することが知られている。本研究の一連のエステルを開裂する特定のエステラーゼは、本発明を実行するために同定される必要がある。
【0040】
前記組成物は、所定の投与形態を調整する当該分野で適したいかなる方法にも従うものであり、様々な投与形態で調整することができる。薬学的に許容される担体は、固体または液体のいずれかとすることができる。固体製剤の限定されない例には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、薬用キャンディー、カプセル(cachets)、坐薬、分散性顆粒剤などを含む。固体担体には、賦形剤、香料、緩衝剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤、または封入材料としても作用可能な1若しくはそれ以上の物質を含むことができる。適切な固体担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、アカシア、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、植物油、寒天、低融点ワックス、ココアバターなどを含む。適切な崩壊剤の限定されない例には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどその塩を含む。液体製剤の限定されない例には、溶液、懸濁液、シロップ、スラリー、および乳剤を含む。適切な液体担体には、例えば、水、アルコール、食塩水、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース溶液、プロピレングリコール水溶液など、好ましくは滅菌形態の適切な有機または無機溶媒を含む。
【0041】
前記組成物は薬学的に許容される塩として製剤化し、前記対象に投与することができる。薬学的に許容される塩の限定されない例には、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、およびキナ酸塩を含むものなど、酸付加塩を含む。そのような塩は、当該分野で既知の確立された方法により、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、およびキナ酸などの酸から得ることができる。
【0042】
水溶液は前記活性成分を水に溶解し、望み通り適切な着色料、香料、安定化剤、および増粘剤を加えることで調整可能である。天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁剤などの粘着性物質を用い、水中に微粉化した活性成分を分散することで、水性懸濁液も作成することができる。
【0043】
当該分野で適したいかなる方法でも、固体形態を調整することができる。例えば、カプセルは、適切な賦形剤と前記組成物を混合し、適切な量の混合物をカプセルに充填することで調整される。錠剤は直接圧縮、湿式造粒、または乾式造粒により調整される。これらの製剤には、通常、前記化合物に加え、賦形剤、結合剤、潤滑剤、および崩壊剤を含める。賦形剤の限定されない例には、様々なタイプのデンプン、セルロース、結晶セルロース、微結晶性セルロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マンニトール、カオリン、リン酸または硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩、および粉砂糖を含む。粉末セルロース誘導体も有用である。錠剤の結合剤の限定されない例には、デンプン、ゼラチン、およびラクトース、フルクトース、グルコースなどの糖を含む。アカシア、アルギン酸塩、メチルセルロース、ポリビニルピロリジンなどを含む天然および合成ゴムも使用できる。ポリエチレングリコール、エチルセルロース、およびワックスも結合剤とすることができる。
【0044】
錠剤に潤滑剤を使用し、前記錠剤および穿孔機が詰まらないようにすることができる。前記潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウム、ステアリン酸、および硬化植物油など、よく滑る固体から選択することができる。錠剤崩壊剤は、水分を含むと膨張し、前記錠剤を崩壊して前記化合物を放出する物質であり、トウモロコシおよびじゃがいもデンプンなどのデンプン、クレイ、セルロース、アルギンおよびゴム、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、木材セルロース、粉末海綿、陽イオン交換樹脂、アルギン酸、グアーガム、柑橘類の果肉、カルボキシメチルセルロース、およびラウリル硫酸ナトリウムを含む。錠剤は、香料およびシーラントとして糖、またはフィルム形成保護剤でコーティングし、前記錠剤の溶解特性を修正することができる。当該分野で現在十分確立されている通り、前記製剤にマンニトールなどの味の良い物質を大量に用い、前記化合物はチュアブル錠として製剤化することもできる。
【0045】
前記実施形態の一部では、前記組成物を経口投与することができる。そのような投与では、前記薬学的組成物を例えば溶液、シロップ、または懸濁液などの液体形態とするか、使用前に水または他の適切な溶媒で再溶解する製剤として提示することができる。そのような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂またはオイル);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性溶媒(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、または分留植物油);および保存料(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)など、薬学的に許容される添加物を用い、従来の方法で調整可能である。これらの製剤は、前記活性成分に加え、着色料、香料、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含むことができる。前記組成物は、使用前に滅菌水、食塩水、またはアルコールなどの適切な溶媒で溶解する粉末形態とすることができる。
【0046】
局所投与で使用する組成物には、例えば、クリーム、塗布薬、ローション、軟膏またはペースト剤などの皮膚を介して浸透するのに適した液体またはゲル製剤、および眼、耳、または鼻への投与に適した点滴薬を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本組成物にクリーム、点滴薬、塗布薬、ローション、軟膏、およびペースト剤を含み、外用の液体または半固体組成物である。そのような組成物は、粉末形態を単独で、または脂肪性または非脂肪性基剤を用いた水性または非水性液体中の溶液または懸濁液として混合することで調整可能である。前記基剤はグリセロール、様々な形態のパラフィン、蜜蝋などの複合炭化水素;ゴム糊;鉱油または食用油または脂肪酸;またはマクロゲルを有することができる。そのような組成物はさらに、界面活性剤などの適切な表面活性剤、および寒天、植物ガム、セルロース誘導体などの懸濁剤、および保存料、抗酸化剤などの他の成分を有することができる。
【0048】
前記組成物は眼に使用するために製剤化することができる。そのような組成物は、眼内注射の薬学的用途に、点眼薬として、またはコンタクトレンズ、インサートなどに適応することができる。眼内注射は、これに限定されるものではないが、硝子体内、網膜内、および斑内注射を含む。望みの希釈液、塩、pH、修飾物質などを含む滅菌水に化合物を製剤化することは、眼への投与に適合した製剤を作成する薬学的製剤の当業者に周知である。注射剤、点眼薬、インサート、コンタクトレンズ、ゲル、および他の液体形態はやや異なる製剤を必要とする可能性がある。眼への直接投与と調和したそのような製剤はすべて、本明細書によって理解される。
【0049】
眼への考えられる刺激を最小限とするため、緩衝剤を使用し、本発明の眼科組成物いずれか、例えば点眼製剤のpHを約4.0〜8.0の範囲で維持することができる。特定の実施形態では、前記pHを約3.5〜約6.0、好ましくは約4.0〜約5.5に維持し、最も高い水溶解度で前記ヒドロキシルアミンの大半がプロトン化した状態になるようにする。前記緩衝剤はpKaが約4.0〜約5.5の弱い酸およびその共役塩基であり、例えば酢酸/酢酸ナトリウム;クエン酸/クエン酸ナトリウムである。前記ヒドロキシルアミンのpKaは約6.0である。直接の硝子体内または眼内注射では、製剤をpH7.2〜7.5、好ましくはpH7.3〜7.4とする必要がある。
【0050】
特に水晶体に最も近い場所では房水および硝子体液は非常に還元性のレドックス状態で存在するため、本発明の眼科製剤に少なくとも1種類の還元剤を含めるか、還元剤と別に投与し、前記ヒドロキシルアミンを還元形態に維持することもある。好適な還元剤はN−アセチルシステイン、アスコルビン酸または塩の形態、および亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムが考えられ、アスコルビン酸および/またはN−アセチルシステインまたはグルタチオンは特に注射液に適している。様々な製剤でN−アセチルシステインとアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせを利用することができる。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)または可能性としてはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)などの金属キレート剤の抗酸化剤を追加し、前記ヒドロキシルアミンを還元形態に維持することもできる。
【0051】
前記組成物は前記対象への注射用にも製剤化することができる。注射の場合、本発明の組成物を水またはアルコールなどの水溶液、またはハンクス液、リンガー液、または生理食塩水緩衝液などの生理的に適合する緩衝液に溶解して製剤化することができる。前記溶液は懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤を含むことができる。注射用製剤は、例えば滅菌水、生理食塩水、またはアルコールなどの適切な溶媒で使用前に溶解することで、使用直前に注射に適した液体製剤に変化させることを意図した固体製剤として調整することもできる。
【0052】
本組成物の一部はデポー製剤として製剤化することができる。そのような長時間作用型製剤は、(例えば皮下または筋肉内の)埋め込みまたは筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、前記化合物は、適切な重合体または疎水性の材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂とともに、または、例えば難溶性塩などの難溶性誘導体として、製剤化することができる。リポソームおよびエマルジョンは、親水性薬物の送達媒体または担体の周知の例である。
【0053】
前記組成物はさらに、1若しくはそれ以上の追加補体阻害剤を有することができる。そのような阻害剤は、有機または無機化合物、生体分子、またはフラグメント、その類似体、相同体、複合体、または誘導体とすることができる。例には、可溶性補体受容体1(sCR1)、抗C5抗体、CD59、およびcompstatinを含む。
【0054】
前記組成物はさらに、1若しくはそれ以上の抗酸化剤を有することができる。典型的な還元剤には、メルカプトプロピオニルグリシン、N−アセチルシステイン、β−メルカプトエチルアミン、グルタチオン、アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸塩、またはメタ重亜硫酸ナトリウム、または同種のものを含む。さらに、抗酸化剤にはビタミンE、C、leutein、キサンチン、βカロテン、および亜鉛およびセレンなどの無機質を含むことができる。
【0055】
前述の組成物を投与する方法および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Meade Publishing Col.,Easton,20th edition(2003)に見ることができる。
【0056】
前記組成物の投与は、注入または注射(静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、くも膜下腔内、十二指腸内、腹腔内、眼内など)とすることができる。前記組成物は鼻腔内、経膣、経直腸、経口、局所、または経皮投与することもできる。好ましくは、前記組成物は経口投与される。投与は医師の判断とすることができる。
【0057】
口腔投与では、前記組成物を従来の方法で製剤化された錠剤、トローチ剤、または薬用キャンディーの形態とすることができる。経口または口腔投与用製剤を製剤化し、前記活性化合物を制御放出することができる。そのような製剤には、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、およびワックスなど、当該分野で既知の1若しくはそれ以上の持続放出剤を含むことができる。
【0058】
組成物は局所投与することができる。そのような投与には、表皮、口腔、眼、耳、および鼻に前記組成物を外用することを含む。これは、経口、静脈内、腹腔内、および筋肉内投与で達成される全身投与と対照をなす。
【0059】
代わりの様々な薬物送達システムも利用できる。そのようなシステムの限定されない例には、リポソームおよびエマルジョンを含む。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒も利用できる。さらに、前記治療薬を含む固体重合体の半透性基質などの持続放出製剤により、前記組成物を送達することができる。利用できる様々な持続放出製剤は、当業者に周知である。持続放出カプセルは、その化学的性質により、数日から数週間、数ヵ月の期間にわたり前記化合物を放出する。
【0060】
前記組成物は点眼薬または洗眼剤、または局所眼軟膏として眼に局所的に送達することができる。いくつかの好適な実施形態では、前記組成物が定期的結膜下または眼内注射により眼に投与される。より好適な投与法は、眼、好ましくは黄斑(macula)および網膜、および最も好ましくは、前記網膜の近位、または網膜の色素上皮とブルッフ膜の間など、ドルーゼが沈着する可能性のある眼の部位に連続投与を提供する方法である。
【0061】
前記組成物は、例えばHerrero−Vanrellの米国特許第5,718,922号に報告される通り、予備成形または生体位で形成されたゲルまたはリポソームなど、当業者に既知の他の眼科用剤形に応用することができる。他の眼科疾患を治療するため、硝子体腔に薬物を直接注入する方法が報告され、薬物を徐々に放出するためミクロスフェアまたはリポソームが使用された(Moritera,T.et al."Microspheres of biodegradable polymers as a drug−delivery system in the vitreous"Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.1991 32(6):1785−90)。
【0062】
前記組成物は、コンタクトレンズ(例えば、Lidofilcon B,Bausch & Lomb CW79またはDELTACON(Deltafilcon A))、または他の眼表面に一時的に置く物体を介し、治療を必要とする眼の水晶体に、または水晶体を通過して投与することができる。例えば、米国特許第6,410,045号明細書では、眼液に送達することができる前記コンタクトレンズに重量で0.05%〜0.25%の濃度の薬物を吸収させ、これを含む高分子ヒドロゲルコンタクトレンズを有するコンタクトレンズ型薬物送達装置について報告している。
【0063】
他の実施形態では、コラーゲン角膜シールド(例えば、BIO−COR吸収性角膜シールド、Summit Technology、マサチューセッツ州Watertown)などの支持体を利用することができる。浸透圧ポンプ(ALZET(登録商標)、Alza Corp.、カリフォルニア州Palo Alto)からのカニューレにより、または前記組成物を含む持続放出型カプセル(OCCUSENT(登録商標))または生分解性ディスク(OCULEX(登録商標)、OCUSERT(登録商標))を埋め込むことで、前記組成物を眼球に注入することでも投与可能である。これらの投与経路は、眼に前記組成物を連続的に供給できる利点を有する。これは、前記ヒドロキシルアミン化合物を硝子体液に局所的に送達する利点と考えられる。
【0064】
眼の内部に薬学的組成物を投与するために特に適したいくつかの他の種類の投与システムが利用できる。例えば、Parelらの米国特許第6,154,671号明細書では、イオン泳動により眼球に薬物を移動させる装置について開示している。前記装置では前記活性物質を保持する貯蔵層を利用し、前記角膜周辺にある眼組織に面して、少なくとも1つの活性表面電極を含む。前記貯蔵層も、患者の部分的に閉じた眼瞼に接触させる対極板を有する。Wongらの米国特許第5,869,079号明細書では、生分解性の持続放出眼内インプラントについて、親水性および疎水性構成要素の組み合わせを報告している。さらに、Guoらの米国特許第6,375,972号明細書、Chenらの米国特許第5,902,598号明細書、Wongらの米国特許第6,331,313号明細書、Oguraらの米国特許第5,707,643号明細書、Weinerらの米国特許第5,466,233号明細書、およびAveryらの米国特許第6,251,090号明細書それぞれでは、本発明の化合物を有する薬学的組成物を送達させるために利用可能な眼内インプラント装置およびシステムについて開示している。
【0065】
眼に薬物を送達する眼内インプラントは当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,726,918号では、眼の炎症を介した病状を治療する方法を報告し、この方法はステロイド性抗炎症薬および生分解性重合体を有する生分解性インプラントを患者の眼の硝子体に埋め込む工程を有し、前記インプラントは約48時間以内に少なくとも約0.05μg/mlのデキサメタゾンに相当する濃度を到達させるのに十分な量で前記硝子体に前記薬物を送達し、約3週間、少なくとも約0.03μg/mlのデキサメタゾンに相当する濃度を維持する。そのようなインプラントは特に本発明の方法に適している。
【0066】
米国特許第6,713,081号明細書では、制御され持続的な方法で眼に治療薬を送達させる眼内インプラント装置について報告している。デュアルモードおよびシングルモードの薬物送達装置が図示および報告されている。結膜下および硝子体内留置に適したインプラントが報告されている。前記特許では、眼内インプラント装置に関連した製造および実装についても報告している。
【0067】
米国特許第6,429,194号明細書では、眼に点眼する水性眼科製剤、またはコンタクトレンズ、軟膏、または結膜嚢に挿入される固体装置など、眼に挿入される物体を予浸または保管する水性眼科製剤について報告している。前記眼科製剤には、正常なヒトの眼表面にみられるものと同等のムチン成分を含む。
【0068】
米国特許第6,251,090号明細書では、前記装置を埋め込む1回の初期手術のみで、薬物または他の薬理作用のある物質を含む、広範な有益薬物を長期間にわたり硝子体腔に導入できる硝子体内薬物送達装置、方法、およびインプラント装置について報告している。前記装置および方法は、埋め込みに必要な外科的切開を最小限にし、今後行われるか繰り返される侵襲的手術または処置を回避する。初期薬物の追加量は容易に導入することができ、または前記薬物は必要に応じて変動または変更することができる。さらに、前記装置および方法は硝子体腔に送達される用量を制御することができ、前記患者は前記送達の時期を管理することができる。前記装置は、硝子体腔に送達される薬物をろ過し、埋め込みまたは使用中に眼の他の部分を損傷するか、干渉しないように作成される。
【0069】
米国特許第5,824,072号明細書では、治療目的で脈絡膜上腔または眼の無血管野への導入に利用される、活性薬物を有する生体適合性眼内インプラントについて報告している。薬物の投与は、投与部位以外に有意水準で相当な量がない状態を確保しながら、長期間管理および維持される。
【0070】
米国特許第5,773,019号明細書では、他に言及された部位の中でも、眼の外表面または眼内のいずれかに埋め込むことのできる、連続放出薬物送達インプラントについて報告している。薬物の中心は、難溶解性薬物を透過させる重合体コーティング層で覆われており、放出速度は制限しない。
【0071】
米国特許第5,773,021号明細書では、結膜嚢に留置される生体接着眼内インサートについて報告している。前記インサートは重合体基質材料を押出、熱成形、または熱圧縮することで調整され、前記薬物が送達される。前記重合体基質は、ヒドロキシアルキルセルロース、マルトデキストリン、キトサン、修飾デンプン、またはポリビニルアルコールなどの水溶性生体適合性重合体;アルキルセルロースなどの不水溶性生体適合性重合体を有する。適用可能な場合は、ポリビニルカルボン酸型重合体などの生体接着重合体、または特定の生体接着多糖類またはその誘導体を使用することができる。前記眼内インサートは、薬物の長期間および制御放出を目的とし、前記特許中に特徴が述べられている。
【0072】
米国特許第5,443,505号および第5,766,242号明細書では、眼の脈絡膜上腔または無血管野に導入する活性薬物を有するインプラントについて報告し、扁平部へのヒドロコルチゾンを有するマイクロカプセルおよびプラークの留置について報告している。
【0073】
米国特許第5,378,475号明細書では、眼の硝子体に挿入される持続放出インプラントについて報告している。前記インプラントは、すべてではないが薬物貯蔵層のほとんどを囲むエチレン酢酸ビニールなどの第一の不透過性コーティング、および前記第一のコーティングが薬物貯蔵層を覆っていない領域を含む、前記第一のコーティングの上から配置された透過性架橋ポリビニルアルコールなどの第二の透過性コーティングを有し、前記インプラントの外に薬物を拡散することのできる場所を提供する。
【0074】
米国特許第5,725,493号明細書では、長期間にわたり硝子体腔に薬物を提供する眼内インプラント装置について報告している。前記薬物貯蔵層は眼の外に取り付け、薬物が眼の硝子体腔に入ることのできる通路がある。
【0075】
米国特許第5,164,188号明細書では、眼の脈絡膜上に導入するカプセル剤について報告し、ヒドロコルチゾンを有するマイクロカプセルおよびプラークの扁平部への留置について報告している。
【0076】
米国特許第4,997,652号明細書では、マイクロカプセル剤を有する生分解性眼内インプラントについて報告し、眼の後部にコハク酸ヒドロコルチゾンを有するマイクロカプセルを埋め込む方法について説明している。
【0077】
米国特許第4,014,335号明細書では、前記薬物を投与し、貯蔵層として機能する、胸膜と下眼瞼の間の盲嚢に配置される眼内薬物送達装置について報告している。前記眼内装置は、前記特許中で、長期間にわたる制御状態での連続投与において、眼に薬物を投与するものとして特徴付けられている。これを達成するため、前記眼内装置は、ラミネートの中央貯蔵領域に前記薬物を保持する重合体素材の三層ラミネートを有する。前記薬物は、前記ラミネートの重合体層の少なくとも1層を通じて前記貯蔵層から拡散する。
【0078】
米国特許第4,300,557号明細書では、眼内インプラントとして機能する、送達される薬物で充填可能なカプセルについて解説している。前記カプセルは、眼を切開し、前記カプセルを挿入し、前記切開を閉じることで、眼の硝子体領域に挿入される。前記カプセルは一定期間配置したままとし、眼に2回目の外科的切開を行い、前記装置を回収することで取り外すことが可能である。前記カプセルは、眼の表面を通過し、眼の外に伸び、その後の薬物注入に有用な付属管を有する。前記装置は硝子体内にある間は固定されておらず、ほとんど自由に動くことができる。
【0079】
Zhouらは、増殖性硝子体網膜症(PVR)の眼内治療用に、5−フルオロウリジン、トリアムシノロン、およびヒト遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲン活性化因子を有する多剤インプラントについて開示している(Zhou,T,et al.1998,"Development of a multiple−drug delivery implant for intraocular management of proliferative vitreoretinopathy"J.Controlled Release 55:281−295)。
【0080】
本発明の方法に従って利用される組成物は、1若しくはそれ以上のヒドロキシルアミン化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、2若しくはそれ以上のヒドロキシルアミンが同時に投与される。他の実施形態では、これらが連続投与される。
【0081】
補体またはドルーゼを介した病状を治療する本発明の組成物は、治療される病状に特に有用であると選択された、他の周知の治療薬と同時投与することもできる。例えば、そのような治療薬は、鎮痛薬、抗炎症薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗肝硬変薬、またはそのような症状を治療または抑制する他の既知の薬物とすることができる。
【0082】
これらの追加化合物の投与は、前記ヒドロキシルアミン化合物の投与と同時に行うか、または必要に応じて前記ヒドロキシルアミン化合物の投与前または投与後に相前後して投与することができる。併用治療に含まれる様々な化合物が互いに数分、数時間、数日、または数週間以内に投与される、いかなる適切なプロトコールも考案することができる。周期的プロトコールでの繰り返し投与も、本発明の範囲内であると意図される。
【0083】
対象の補体またはドルーゼを介した病状を治療するため、薬学的に許容される担体および少なくとも1つのヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を有する治療有効量の組成物が、前記対象に投与される。治療有効量は、限局性または全身性炎症の臨床的に有意な抑制、ドルーゼ沈着の抑制、黄斑の悪化速度の抑制または低下などを提供する。前記組成物は、すべての動物、特にイヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ロバなどの哺乳類に投与され、好ましくはヒトに投与される。
【0084】
前記組成物の有効量は、これに限定されるものではないが、種、種族、サイズ、身長、体重、年齢、前記対象の全身の健康状態、製剤の種類、投与方法、または前記補体またはドルーゼを介した状態の重症度、または他の関連する状態を含む多数の変数に依存すると考えられる。適切な有効量は、ルーティンな最適化法および実行者の技術と情報に裏付けされた判断、および当業者に明白な他の因子を用い、当業者がルーティンに判断することができる。好ましくは、本明細書に説明する治療有効量の化合物は、前記対象に相当の毒性を生じずに、治療上の利益を提供する。
【0085】
薬物または化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%で治療効果がある用量)の決定など、細胞培養または実験動物を用いる標準的な薬学的方法により決定することができる。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療指数を示す薬物または組成物が好ましい。そのような薬物または組成物の用量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環血液中濃度の範囲内にある。前記用量は、採用される剤形および利用される投与経路により、この範囲内で変更することができる。
【0086】
本発明の方法で使用される組成物では、最初に治療有効量を細胞培養アッセイなどのインビトロアッセイから推定することができる。例えば、動物モデルで用量を明確にし、細胞培養で決定されたIC50(つまり、破骨細胞の形成または活性化の半値抑制を達成する前記組成物の濃度)を含む循環血漿中濃度の範囲を達成することができる。そのような情報を用い、ヒトなどの特定対象で有用な用量をより正確に決定することができる。治療を行う医師は、毒性、または臓器の機能障害を理由に投与を終了、中断、または調節することができ、臨床反応を改善するために、前記臨床反応が十分ではない場合は必要に応じて治療を調節することもできる。
【0087】
本発明の方法では、前記組成物の乾物重約0.01%〜約90%の範囲で、前記組成物は一定濃度のヒドロキシルアミン化合物を有する。1日量の範囲は、前記対象の体重につき約0.01mg/kg〜約100mg/kgが好ましい。好ましくは、前記1日量は前記対象の体重につき約0.1mg/kg〜約50mg/kgの範囲である。より好ましくは、前記1日量は前記対象の体重につき約1mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。
【0088】
好適な実施形態では、対象にヒドロキシルアミン化合物を有する組成物を投与することで、前記対象の組織および体液、好ましくは眼、より好ましくは黄斑または網膜において、約0.1μM〜約10mMの範囲で前記ヒドロキシルアミン成分の濃度を達成することができる。いくつかの実施形態では、前記範囲が1μm〜5mMであり、他の実施形態では前記範囲が約10μM〜2.5mMである。さらに他の実施形態では、前記範囲が約50μM〜1mMである。最も好ましくは、ヒドロキシルアミン濃度の範囲が、前記対象の組織および体液、好ましくは眼、より好ましくは黄斑または網膜において、1〜100μMである。前記製剤内に還元剤を含むか、別に還元剤を投与する実施形態では、前記還元剤の濃度は前記組成物が投与される対象の組織および体液、特に眼内において1μM〜5mMであり、好ましくは10μM〜2mMの範囲である。前記組成物の成分濃度は、典型的な薬物動態および希釈計算により、適宜、投与経路に合わせて調節され、上記局所濃度を達成する。
【0089】
治療は前記ヒドロキシルアミン化合物の最適量未満の少量で開始し、その後、その条件下での最適な効果が達成されるまで、治療経過を見て用量を増量することができる。必要であれば、1日の合計量はその日に何度かに分けて、分割投与することができる。
【0090】
補体またはドルーゼを介した状態の効果的な治療では、当業者は治療される対象に適した投与スケジュールおよび用量を推奨することも考えられる。必要である限り、1日1〜4回投与することが好ましい。前記組成物が持続放出製剤として製剤化される場合、投与頻度を少なくすることもできる。前記投与スケジュールは活性薬物濃度により変化させることもでき、これは前記対象の必要性により異なることもある。
【0091】
本発明は上記に説明した実施形態に限るものではなく、添付の請求項の範囲で変更、修正できるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において補体活性化を抑制する方法であって、
前記対象の補体活性化を抑制する有効量のヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を前記対象に投与する工程を有し、
前記ヒドロキシルアミン化合物のエステル誘導体は以下の化学式を有しており
【化1】

式中、
およびRは、独立してHまたはC〜Cアルキルであり、
およびRは、独立してC〜Cアルキルであるか、或いはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、またはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、それぞれシクロアルキルであり、
はH、OH、またはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであるか、或いはRとRとが共に結合して、RとRとRとが共に結合して、環内に3〜7原子を有する炭素環を形成するか、あるいは環内に3〜7原子を有する複素環を形成するものである、
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物は下記構造、
【化2】

を有するものである
【請求項3】
請求項1記載の方法において、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してC〜Cアルキルである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、R、R、R、およびRはエチルである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、R、R、R、およびRはメチルである。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、RはHまたはメチルであり、RはベンジロキシまたはC〜Cアルコキシで置換されたメチルであり、Rはメチルである。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、RはHまたはメチルであり、RとRとが共に結合してシクロプロピル基を形成するものである。
【請求項8】
請求項5記載の方法において、Rと、Rと、Rとが共に結合してフラニル基を形成するものである。
【請求項9】
請求項5記載の方法において、RはHであり、RとRとが共に結合してテトラヒドロフラニル基を形成するものである。
【請求項10】
請求項5記載の方法において、RはHであり、RとRとが共に結合してシクロプロピル基を形成するものである。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記対象は哺乳類である。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記哺乳類はヒトである。
【請求項13】
請求項1記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体はC3aアナフィラトキシンの形成を抑制するものである。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体はC5aアナフィラトキシンの形成を抑制するものである。
【請求項15】
補体活性化を介した病状を有する対象を治療する方法であって、
前記対象の補体活性化を抑制するのに有効な量の薬学的に許容される担体および少なくとも1つのヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を有する組成物を前記対象に投与する工程を有し、
前記ヒドロキシルアミン化合物のエステル誘導体は以下の化学式を有し、
【化3】

式中、
およびRは、独立してHまたはC〜Cアルキルであり、
およびRは、独立してC〜Cアルキルであり、またはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、またはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、それぞれシクロアルキルであり、
はH、OH、またはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、或いはRとRとが共に結合して、Rと、Rと、Rとが共に結合して、環内に3〜7原子を有する炭素環を形成するか、環内に3〜7原子を有する複素環を形成するものである
方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物は下記構造
【化4】

を有するものである。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してC〜Cアルキルである。
【請求項18】
請求項15記載の方法において、R、R、R、およびRはエチルである。
【請求項19】
請求項15記載の方法において、R、R、R、およびRはメチルである。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、RはHまたはメチルであり、RはベンジロキシまたはC〜Cアルコキシで置換されたメチルであり、Rはメチルである。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、RはHまたはメチルであり、RとRとが共に結合してシクロプロピル基を形成するものである。
【請求項22】
請求項19記載の方法において、Rと、Rと、Rとが共に結合してフラニル基を形成するものである。
【請求項23】
請求項19記載の方法において、RはHであり、RとRとが共に結合してテトラヒドロフラニル基を形成するものである。
【請求項24】
請求項19記載の方法において、RはHであり、RとRとが共に結合してシクロプロピル基を形成するものである。
【請求項25】
請求項15記載の方法において、前記対象は哺乳類である。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記哺乳類はヒトである。
【請求項27】
請求項15記載の方法において、前記組成物は前記対象の眼に投与されるものである。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、前記組成物は前記眼の黄斑に投与されるものである。
【請求項29】
請求項27記載の方法において、前記組成物は前記眼の網膜に投与されるものである。
【請求項30】
請求項27記載の方法において、前記組成物は前記対象の眼でヒドロキシルアミン濃度約0.1μM〜約10mMを達成するために投与されるものである。
【請求項31】
請求項27記載の方法において、前記組成物は投与され、前記対象の眼においてヒドロキシルアミン濃度約1μM〜約5mMを達成するものである。
【請求項32】
請求項27記載の方法において、前記組成物は投与され、前記対象の眼においてヒドロキシルアミン濃度約10μM〜約2.5mMを達成するものである。
【請求項33】
請求項27記載の方法において、前記組成物は投与され、前記対象の眼においてヒドロキシルアミン濃度約50μM〜約1mMを達成するものである。
【請求項34】
請求項27記載の方法において、前記組成物は投与され、前記対象の眼においてヒドロキシルアミン濃度約1μM〜約100μMを達成するものである。
【請求項35】
請求項27記載の方法において、前記病状はドルーゼ形成である。
【請求項36】
請求項27記載の方法において、前記病状は黄斑変性症である。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記黄斑変性症が加齢黄斑変性症である。
【請求項38】
請求項15記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体はC3aアナフィラトキシンの形成を抑制するものである。
【請求項39】
請求項15記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体はC5aアナフィラトキシンの形成を抑制するものである。
【請求項40】
対象のドルーゼ形成を抑制する方法であって、前記対象のドルーゼ形成を抑制する効果のある量で、前記対象にヒドロキシルアミン化合物またはそのエステル誘導体を投与する工程を有し、前記ヒドロキシルアミン化合物のエステル誘導体は以下の化学式を有し、
【化5】

式中、
およびRは、独立してHまたはC〜Cアルキルであり、
およびRは、独立してC〜Cアルキルであり、またはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、またはRとRとが共に結合して、RとRとが共に結合して、それぞれシクロアルキルであり、
はH、OH、またはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであり、
はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニル、または置換アルキルまたはアルケニルであるか、或いはRとRとが共に結合して、Rと、Rと、Rとが共に結合して、環内に3〜7原子を有する炭素環を形成するか、環状に3〜7原子を有する複素環を形成するものである
方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法において、前記ヒドロキシルアミン化合物は下記構造
【化6】

を有するものである。
【請求項42】
請求項40記載の方法において、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してC〜Cアルキルである。
【請求項43】
請求項40記載の方法において、R、R、R、およびRはエチルである。
【請求項44】
請求項40記載の方法において、R、R、R、およびRはメチルである。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、RはHまたはメチルであり、RはベンジロキシまたはC−Cアルコキシで置換されたメチルであり、Rはメチルである。
【請求項46】
請求項44記載の方法において、RはHまたはメチルであり、RとRとが共に結合してシクロプロピル基を形成するものである。
【請求項47】
請求項44記載の方法において、Rと、Rと、Rが共に結合してフラニル基を形成するものである。
【請求項48】
請求項44記載の方法において、RはHであり、RとRが共に結合してテトラヒドロフラニル基を形成するものである。
【請求項49】
請求項44記載の方法において、RはHであり、RとRが共に結合してシクロプロピル基を形成するものである。
【請求項50】
請求項40記載の方法において、前記対象は哺乳類である。
【請求項51】
請求項40記載の方法において、前記哺乳類はヒトである。

【公表番号】特表2009−527565(P2009−527565A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556427(P2008−556427)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/004658
【国際公開番号】WO2007/100623
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508235519)オセラ ホールディングス、インク. (3)
【Fターム(参考)】