説明

補助装置

【課題】 身体に装着することが可能であり、使用時に使用者に違和感を与えることがない装着型パワーアシスト装置を提供する。
【解決手段】 アシスト装置10は、肘関節104の近位側身体である上腕100に装着する近位側装着部12と、肘関節104の遠位側身体である前腕102に装着する遠位側装着部14と、近位側装着部12と遠位側装着部14を夫々連結する連結機構部16と、モータ18等を備える。モータ18は肘関節104の回転軸Lからオフセットさせて上腕100の裏側に配置されている。これによりアシスト装置10の体側方向への張り出しを少なくできる。またモータ18の重心Gは上腕100の幅内に位置するように配置される。これにより上腕100を動かした際に、モータ18の自重によって肘関節104と上腕100にひねるようなモーメントが加わることを防止できる。よって使用時に使用者に違和感を与えることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着して身体の関節周りの回転を補助する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筋力が衰えると身体を関節周りに回転させることが困難となる。重量物を持っていると重力に抗して肘関節の周りに前腕を回転させることが困難となる。重量物を担っていると重力に抗して大腿と下腿のなす角度を広げて立ち上がるのが困難となる。そこで、身体の関節周りの回転を補助する装置の開発が急がれている。
特許文献1に、歩行を補助する装置が提案されている。この補助装置は、身体の関節の近位側身体に装着される近位側装着部と、身体の関節の遠位側身体に装着される遠位側装着部を備えている。ここで、「近位側身体」とは四肢に存在する関節に対して胴体に近い側の身体部位を意味する。また「遠位側身体」とは四肢に存在する関節に対して胴体から遠い側の身体部位を意味する。例えば肘関節の近位側身体は上腕を意味し、肘関節の遠位側身体は前腕を意味する。あるいは、膝関節の近位側身体は大腿を意味し、肘関節の遠位側身体は下腿を意味する。補助装置は、近位側装着部と遠位側装着部を回転可能に連結している連結機構部を供えている。その連結機構部は、近位側装着部を近位側身体に装着するとともに遠位側装着部を遠位側身体に装着したときに身体の関節の回転軸と同一軸線上に位置する回転軸を有するように配置されている。
連結機構部の回転軸上に、近位側装着部に対して遠位側装着部を回転させるモータが配置されている。モータを回転させると、近位側装着部に対して遠位側装着部が回転される。モータによって、近位側身体に対して遠位側身体を回転させる動きが補助される。筋力が衰えていたり、重量物を担っていたりするために不自由となっている身体の関節周りの回転が補助される。
【0003】
【特許文献1】特開2000−301124号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
身体に装着して身体の動きを補助する装置は、使用者に違和感を与えないで装着できる必要がある。違和感が強いと、使用者にとっては使い難いものとなってしまう。
特許文献1の技術では、使用者の関節軸の延長線上にモータを配置する。特許文献1の補助装置では、モータが身体の横方向に大きく張り出した位置関係で利用される。そのために、モータの自重によって、補助装置を装着している使用者の関節をひねるようなモーメントが加えられる。モータの自重によって、上腕を外向きにひねろうとするモーメントが作用してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
近位側装着部に対して遠位側装着部を回転させるモータ(モータには限られないので、以下では一般にアクチュエータという。)は、遠位側装着部の回転に干渉しない位置に設ける必要があり、遠位側装着部にトルクを伝達しやすい位置に設ける必要がある。従来の技術では、そのために使用者の関節軸の延長線上にアクチュエータを配置している。しかしながら、使用者の関節軸の延長線上にアクチュエータを配置すると、アクチュエータの自重が身体をねじろうとする力になり、使用感がよくない。
本願発明は、身体に装着して身体の関節周りの回転を補助する装置について、関節周りの回転を補助する連結機構部とモータを分離する。モータを使用者の関節軸の延長線上からオフセットさせ、遠位側装着部の回転に干渉しない位置であって、身体の動きに伴うモータの動きが身体に与える影響の少ない位置に配置する。
その位置として、アクチュエータの少なくとも一部を近位側身体の厚みの中に位置させることができる。ここでいう厚みは、遠位側身体の回転面に垂直な方向に計った近位側身体の長さをいう。例えば前腕の回転面をxy面とすれば、上腕の厚みは上腕のz方向の長さとなる。
アクチュエータの少なくとも一部が近位側身体の厚みの中に位置していれば、アクチュエータの自重によって身体をねじる方向に生じる力を低減することができる。
【0006】
本発明の補助装置は、身体に装着して身体の関節周りの回転を補助する装置であり、身体の関節の近位側身体に装着される近位側装着部と、身体の関節の遠位側身体に装着される遠位側装着部と、近位側装着部を近位側身体に装着するとともに遠位側装着部を遠位側身体に装着したときに身体の関節と同軸に位置する連結機構部を備えている。連結機構部は、近位側装着部と遠位側装着部を回転可能に連結している。連結機構部の回転軸は、身体の関節の回転軸と同一線上に位置するように配置されている。
本発明の補助装置は、アクチュエータと、そのアクチュエータのトルクを遠位側装着部に伝達する伝達部品を備えている。伝達部品は、遠位側装着部を近位側装着部に対して連結機構部の回転軸周りに回転させるトルクを遠位側装着部に伝達する。
本発明の補助装置では、アクチュエータが遠位側身体の回転限界外の位置において近位側装着部に固定されており、かつアクチュエータの少なくとも一部が遠位側身体の回転面に直交する方向に計る近位側身体の厚み内に位置することを特徴とする。
【0007】
アクチュエータは遠位側装着部の回転に干渉しない位置に設ける必要があるが、遠位側装着部の回転に干渉しない位置は、使用者の関節軸の延長線上に限られない。関節には回転限界があり、その範囲外にアクチュエータあれば、アクチュエータと遠位側装着部は干渉しない。例えば、前腕を上腕に対して前方に回転させ、前腕が上腕の延長線上にまで回転すれば、それ以上には回転しない。前腕をそれ以上に回転させないと達しない位置にアクチュエータを配置しておけば、アクチュエータと遠位側装着部は干渉しない。下腿を大腿に対して前方に回転させ、下腿が大腿の延長線上にまで回転すれば、それ以上には回転しない。下腿をそれ以上に回転させないと達しない位置にアクチュエータを配置しておけば、アクチュエータと遠位側装着部は干渉しない。
そこで本発明では、近位側装着部と遠位側装着部を連結する連結機構部と駆動力を発生するアクチュエータを分離して配置する。アクチュエータの少なくとも一部が近位側身体の厚み内に位置するように配置する。アクチュエータによって身体をねじる方向に生じる力を低減することができる。補助装置の使用感が改善される。
なお、本明細書では「連結機構部」は例えばヒンジのような簡単な機構を含む概念として用いる。
【0008】
遠位側身体の回転限界には2種類がある。一方は近位側身体に対して遠位側身体を屈曲させる側の回転限界であり、他方は近位側身体に対して遠位側身体を伸展させる側の回転限界である。なお「遠位側身体を屈曲させる側」とは近位側身体の屈筋によって遠位側身体を回転させる側を意味し、「遠位側身体を伸展させる側」とは近位側身体の伸筋によって遠位側身体を回転させる方向を意味する。前腕は、上腕に対して最も屈曲する角度から、前腕が上腕から最も伸展して上腕の延長線上に位置する角度の範囲内でしか回転しない。そこで、アクチュエータは、近位側身体に対して遠位側身体を伸展方向に回転させた側の回転限界の外側に配置されていることが好ましい。換言すれば、遠位側身体を伸展させる近位側身体の伸筋が位置する側で回転限界の外側に配置されていることが好ましい。
肘関節用の補助装置であれば、前腕を上腕に対して最も伸展させたときに上腕の伸筋(上腕三頭筋)が位置する側で前腕が到達し得ない回転限界の外側の位置で、アクチュエータを上腕装着部に固定する。膝関節用の補助装置であれば、下腿を伸展させる大腿の伸筋(大腿四頭筋)の位置する側で、アクチュエータを大腿装着部に固定する。通常、四肢は遠位側身体が屈曲する側での回転限界と近位側身体との間の空間より伸展する側での回転限界と近位側身体との空間の方の方が広い。従って上記構成によれば、アクチュエータの配置スペースを広く取ることができる。
なお、手首関節においては近位側身体である前腕に対して遠位側身体である掌を伸展方向に回転させる側とは前腕に付随する前腕伸筋群が位置する側を意味する。また、足首関節においては近位側身体である下腿に対して遠位側身体である足平を伸展方向に回転させる側とは下腿に付随する腓腹筋が位置する側を意味する。
【0009】
本発明の補助装置では、遠位側身体の回転面に直交する方向に計る近位側身体の厚み内にアクチュエータの少なくとも一部が存在する。このことは、近位側身体の厚みからアクチュエータがはみ出ることを排除するものでない。近位側身体の厚みを利用してアクチュエータを配置しているものであれば、近位側身体の厚みからアクチュエータがはみだしていても本発明の利点は享受できる。
より好ましくは、アクチュエータの重心が、遠位側身体の回転面に直交する方向に計る近位側身体の厚み内に位置させる。
この場合、アクチュエータの自重によって関節や近位側身体をねじる方向に作用する力を低減できる。補助装置の使用感を一層改善できる。
【0010】
連結機構部が減速機構を兼用していることが好ましい。この場合、減速機構のケースが近位側装着部に固定されており、減速機構の出力軸側回転部品が遠位側装着部に固定されており、減速機構の入力軸に固定されているプーリとアクチュエータの出力軸に固定されているプーリの間がベルトで連結されていることが好ましい。
連結機構部と減速機構を独立に設ける場合に比較すると、装置構成が単純化でき、軽量化することができる。
【0011】
本発明の補助装置は、肘関節用の補助装置と、膝関節用の補助装置に好適である。
前者では、前腕で重量物を持ち上げる際に上腕に必要とされる筋力を補助することができる。後者では、使用者の歩行を補助することができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、装着した使用者に与える違和感の少ない補助装置を実現することができる。特に本発明の補助装置は、装着したときにアクチュエータが近位側身体の厚みの範囲内に収容されるので、身体に身体をねじる力を付与しない。また、体の外側にアクチュエータが大きく張り出すことがないために、アクチュエータが周囲の物体と接触する可能性も低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施例の主要な特徴を列記する。
(第1形態) アクチュエータはトルクリミッタを備えている。アクチュエータが過大なトルクを身体に印加することを防止することができる。
(第2形態) トルクリミッタは、減速機構よりもアクチュエータ側に設けられている。小型のトルクリミッタで足りる。
(第3形態) 肘関節用の補助装置であり、上腕装着部と前腕装着部とアクチュエータを備えている。手の平を上方に向けた姿勢において、上腕装着部と前腕装着部は上方が開放されており、手の平を上方に向けた姿勢で上腕と前腕を下ろすと、上腕は上腕装着部に収容され、前腕は前腕装着部に収容される。前腕装着部の下面にアクチュエータが固定されている。
【実施例】
【0014】
以下、図1に基づいて、本実施例に係る装着型パワーアシスト装置(補助装置)の構成を説明する。本実施例の装着型パワーアシスト装置は、肘関節の近位側身体である上腕と遠位側身体である前腕に装着するものである。そして前腕を肘関節の周りに回転させる動きを補助する機能を有する。この装着型パワーアシスト装置は、例えば使用者が重量物を持ち運ぶ際に通常必要とされる上腕の筋力より少ない筋力でその重量物を持ち運ぶことを可能にする。
【0015】
図1に、本実施例のパワーアシスト装置10(補助装置)の概要を示す。図1(A)は、装着型パワーアシスト装置10を腕に装着した状態での側面図である。図1(B)は、図1(A)においてBで示す矢印方向からみたときの装着型パワーアシスト装置10の平面図である。なお以下では簡略化のため「装着型パワーアシスト装置10」を単に「アシスト装置10」と称することにする。
アシスト装置10は、肘関節104の近位側身体である上腕100に装着する近位側装着部12と、肘関節104の遠位側身体である前腕102に装着する遠位側装着部14と、近位側装着部12と遠位側装着部14を回転可能に連結する連結機構部16と、アクチュエータであるモータ18等を備える。なお、図1ではモータ18等への電気配線は図示を省略してある。
【0016】
まずアシスト装置10について概説する。図1(A)および(B)に示すように、近位側装着部12を上腕100に装着し、遠位側装着部14を前腕102に装着すると、連結機構部16はその入力軸35(連結機構の回転軸)が肘関節104の回転軸Lと同一軸線上に位置するように配置されることになる。連結機構部16は肘関節104の外側に配置されるが、モータ18は上腕100の裏側に配置される。ここで「裏側」とは、使用者が手の平を前方に向けて直立姿勢をとったときの上腕の後ろ側である。換言すれば、前腕102を伸展させるための上腕100の伸筋(上腕三頭筋)が位置する側である。モータ18の駆動力は、ベルト56によって連結機構部16に伝達される。なお、ベルト56が請求項の「伝達部品」に相当する。モータ18から伝達されたトルクは減速機構を兼用する連結機構部16によって増幅され、遠位側装着部14を近位側装着部12に対して連結機構部16の回転軸35の周りに回転させる。近位側装着部12と遠位側装着部14の夫々は、上腕100と前腕102に装着(固定)されているので、モータ18は、前腕102を上腕100に対して肘関節104の周りに回転させるトルクを補助する。アシスト装置10は、上腕100に対して前腕102を回転させるための補助力を与えることができる。
【0017】
特許文献1に開示された技術のように、モータ18を肘関節104の回転軸Lの延長線上に配置すると、連結機構部16が体の外側へ張り出している長さH1と、モータ18本体の長さH2を足し合わせた長さだけ、モータ18が身体の外側方向に張り出してしまう。モータ18を肘関節104の回転軸Lからオフセットし、上腕100の裏側に配置することによってアシスト装置10の体の外側への張り出しを少なくすることが可能となる。モータ18の自重によって、装着者の肘関節104にひねるようなモーメントが加わることを防止できる。
【0018】
次にパワーアシスト装置10の各部について詳細に説明する。まず近位側装着部12について説明する。近位側装着部12は、上腕100の両側面に添え木のように沿わせて配置される上腕側装着部品22aおよび22bと、上腕側装着部品22aと22bを連結するU字形連結部品24と、上腕側装着部品22aと22bに固定され、かつ上腕100に巻き付けられる上腕支持帯26と、モータ18を近位側装着部12に固定するためのモータ支持板28から構成されている。近位側装着部12は、近位側装着部12に対して連結機構部16のケース30を固定する近位側装着部連結部品20も備えている。
【0019】
上腕側装着部品22aおよび22bは、それらの裏側でU字形連結部品24によって連結されている。その内側に上腕100を収容するスペースを形成している。上腕側装着部品22aと22bとU時型連結部品24は、アルミやステンレスなどの剛性の高い材料で形成されている。
上腕支持帯26は、上腕側装着部品22aおよび22bの内側に配置されており、上腕100の内側と外側に相当する部分で、上腕側装着部品22aおよび22bに固定されている。
上腕支持帯26は、柔軟性と剛性を適度に兼ね備えた樹脂などの材料で上腕100の形に合うように湾曲させて形成されている。さらに上腕支持帯26は上腕100に巻き付けられるように形成されている。また上腕支持体26の表裏面には柔らかい布が貼り付けられている。その表面側にはマジックテープ(登録商標)26a、26bが備えられている。このマジックテープ(登録商標)26a、26bにより上腕100に巻き付けられた上腕支持帯26の両端が留められる。こうして近位側装着部12は上腕100に装着される。なお、マジックテープ(登録商標)26a、26bは身体の前面で上腕支持帯26を留めるように配置されている。上腕支持帯26の脱着を容易にするためである。
近位側装着部連結部品20は、スペーサ90aと90bを介してボルト92によって上腕側装着部品22aに固定されている。モータ支持板28は、近位側装着部連結部品20にボルト留めされている。また近位側装着部12は、近位側装着部連結部品20によって連結機構部16のケース30にボルトで固定されている。
【0020】
次に遠位側装着部14について説明する。遠位側装着部14は、前腕102の両側面に添え木のように沿わせて配置される前腕側装着部品42aおよび42bと、前腕側装着部品42aと42bを連結するU字形連結部品44aと44bと、前腕側装着部品42aと42bに固定され、かつ前腕102に巻き付けられる前腕支持帯46から構成されている。また遠位側装着部14は、遠位側装着部14を連結機構部16の出力軸側回転部品32に固定する遠位側装着部連結部品40aと40bを備えている。
【0021】
前腕側装着部品42aおよび42bは、それらの裏側でU字連結部品44a、44bによって連結されている。その内側に前腕102を収容するスペースを形成している。前腕側装着部品42aと42bとU字連結部品44a、44bは、アルミやステンレスなどの剛性の高い材料で形成されている。
前腕支持帯46は、前腕側装着部品42aおよび42bの内側に配置されており、前腕102の内側と外側に相当する部分で、前腕側装着部品42aおよび42bに固定されている。
前腕支持帯46は、柔軟性と剛性を適度に兼ね備えた樹脂などの材料で前腕の形に合うように湾曲させて形成されている。さらに前腕支持帯46は上腕100に巻き付けられるように形成されている。また前腕支持帯46の表裏面には柔らかい布が貼り付けられている。その表面側にはマジックテープ(登録商標)46a、46bが備えられている。このマジックテープ(登録商標)46a、46bにより前腕102に巻き付けられた前腕支持帯46の両側が留められる。こうして遠位側装着部46は前腕102に装着される。なお、マジックテープ(登録商標)46a、46bは身体の前面で前腕支持帯46を留めるように配置されている。前腕支持帯46の脱着を容易にするためである。
遠位側装着部連結部品40aと40bは、スペーサ90cと90dを介してボルトによって上腕側装着部品22aに固定されている。遠位側装着部連結部品40aと40bもアルミやステンレスなどの剛性の高い材料で形成されている。遠位側装着部14は遠位側装着部連結部品40aと40bによって連結機構部16の出力軸側回転部品32にボルトで固定されている。
【0022】
次に近位側装着部12と遠位側装着部14を連結する連結機構部16について説明する。
連結機構部16は減速機構を兼用している。以下では連結機構部16を減速機構16と称する場合もあることに留意されたい。
減速機構16を用いるのは、モータ18が発生するトルクを増幅して前腕102に大きなトルクを加えるためである。この減速機構16は、ケース30と、入力軸35と、出力軸(不図示)に固定された出力軸側回転部品32から構成される。出力軸側回転部品32は、入力軸35と同軸の周りを回転する。減速機構16の入力軸35にはプーリ34が固定されている。プーリ34がケース30に対して回転すると、その回転の角速度が所定の減速比で減速され(トルクは増幅される)、出力軸側回転部品32がケース30に対して回転する。
【0023】
減速機構16(連結機構部16)のケース30には突出部30aが設けてある。この突出部30aは近位側装着部連結部品20にボルトで固定されている。また減速機構16の出力軸側回転部品32にも突出部32aが設けてある。この突出部32aは遠位側装着部連結部品40bにボルトで固定されている。減速機構16は、近位側装着部12と遠位側装着部14を回転可能に連結している。
ケース30にはストッパ部36が設けてある。出力軸側回転部品32が所定角度以上回転すると、ストッパ部36と出力軸側回転部品32の突出部32aが接触するように構成されている。即ちストッパ部36は出力軸側回転部品32が所定角度以上回転しないように機械的にその回転範囲を制限する機能を果たす。
なお、本実施例のアシスト装置10では、近位側装着部12の上腕側装着部品22aと遠位側装着部14の前腕側装着部品42aが肘関節104の回転軸Lの延長線上でリベット92aによって回転可能に連結されている。同様に近位側装着部12の上腕側装着部品22bと遠位側装着部14の前腕側装着部品42bが肘関節104の回転軸Lの延長線上でリベット92bによって回転可能に連結されている。これは近位側装着部品12と遠位側装着部品14の相対位置関係が回転方向以外にずれないようにするためである。
【0024】
次にモータ18について説明する。モータ18は、近位側装着部連結部品20にボルト留めされたモータ支持板28に固定されている。モータ18はモータ支持板28によって、上腕100の裏側に配置される。ここで「上腕100の裏側」とは、使用者が直立姿勢をとったときの上腕の後ろ側である。換言すれば、前腕102を伸展させるための上腕100の伸筋(上腕三頭筋)が位置する側である。モータ18の一部は、前腕102の回転面に直交する方向に計る上腕100の厚み内であり、かつ前腕102の回転限界外の位置において、上腕装着部12に固定されている。
なお、「前腕102の回転面に直交する方向に計る上腕100の厚み」は図1(B)に矢印H0で示されている。また「前腕102の回転面に直交する方向に計る上腕100の厚み」は換言すれば、「前腕102と上腕100の間の関節104の回転軸に平行な方向に計る上腕100の長さ」ということもできる。
モータ18の出力軸(不図示)にはトルクリミッタ52を介してプーリ54が固定されている。モータ18の出力軸に固定されているプーリ54と減速機構16の入力軸35に固定されているプーリ34は、ベルト56により連結されている。即ちモータ18が回転するとそのトルクはベルト56を介して減速機構16に伝達される。
【0025】
次にモータ18の配置について詳細に説明する。本実施例ではモータ18は上腕100の裏側に配置される。ここで「裏側」とは使用者が直立姿勢をとったときの上腕100の後ろ側である。別言すれば、「裏側」とは上腕100に対して前腕を伸展方向に回転させる側を意味する。肘関節104においては、前腕102の上腕100に対する可動範囲は前腕102と上腕100がほぼ一直線となる状態から前腕102と上腕100が身体の前側でほぼ接触する状態までである。即ち上腕100の裏側は、前腕102の上腕100に対する可動範囲外となる。このようにモータ18を前腕の上腕に対する可動範囲外に位置するように配置することによって、モータ18が前腕102の動きを邪魔することを防止することができる。
【0026】
さらに上腕100の裏側(上腕100に対して前腕を伸展方向に回転させる側)では、前腕102の回転限界における前腕102と上腕100との間の空間が上腕の表側(上腕100に対して前腕を屈曲方向に回転させる側)での前腕102の回転限界における前腕102と上腕100との間の空間よりも広いことになる。従ってモータ18を前腕102の上腕100に対する可動範囲外で上腕100に対して前腕102を伸展方向に回転させた側に位置するように配置することによって、前腕102の動きを邪魔することなく十分広い空間にモータ18を配置することができる。
【0027】
また本実施例では、モータ18の重心Gが、肘関節104の回転軸Lに沿った方向での上腕100の厚みH0の内側に位置するように配置される。換言すれば、モータ18の重心Gは、前腕102の回転面に直交する上腕100の厚み内に位置している。このように配置することで、アシスト装置10の、体の外側への張り出し距離を、連結機構部16の幅H1だけとすることができる。従来技術では、モータ18が連結機構部16の軸(即ち肘関節104の回転軸Lの延長上)に配置されている。そのように配置すると、図1に示す連結機構部16の幅H1に、さらにモータ18本体の長さH2が加わった長さだけ体の外側へ装置が張り出すこととなる。体の外側への装置の張り出し距離が大きいと、使用者は張り出した部分が他の物体に接触しないように気を使わなければならない。また狭い場所へ入る時に張り出した部分が邪魔となる。使用者の自由な動きを制限することになる。本実施例では、モータ18を肘関節104の回転軸Lからオフセットさせて、上腕100の裏側に配置することによって、体の外側への張り出す部分を低減することができる。またモータ18を上腕100の裏側に配置することによって、上腕100を振り動かした際にモータ18の自重によって肘関節104をひねるように作用するモーメントを生じなくすることができる。
【0028】
さらに本実施例のモータ18の配置では、体の外側への装置の張り出し部分を少なくするばかりでなく、次の効果を奏することができる。即ち、モータ18の重心Gを上腕100の厚みH0の範囲内に位置するように配置することで、上腕100を肘関節104の回転面内に振り動かしたときにモータ18の質量によって上腕100をひねるように作用するモーメントを生じなくすることができる。従来技術のようにモータ18が肘関節104の回転軸Lの延長線上に配置されている場合には、腕を振る際に肘の外側に張り出したモータ18の質量によって肘関節104ばかりか上腕100にもひねるようなモーメントが加わる。そのようなモーメントが加わると腕を振り難くなる。本実施例ではモータ18の重心Gを上腕100の厚みH0の範囲内に配置することによって、そのような上腕の振りにくさを解消することができる。
【0029】
次にアシスト装置10が筋力を補助する制御について図2と図3を用いて説明する。図2は図1(A)のアシスト装置10を簡略化して表した側面模式図である。上腕100にはアシスト装置10の近位側装着部12が取り付けられている。前腕102にはアシスト装置10の遠位側装着部14が取り付けられている。近位側装着部12と遠位側装着部14は連結機構部16に連結されている。また上腕100の裏側でモータ18が近位側装着部12に取り付けられている。但し図2には手先106に重量物108を持っており、上腕100には筋電計測電極60a、60b、60cが貼り付けられており、手首にも筋電計測電極62が取り付けられている状態を示してある。筋電計測電極とは、筋肉の収縮や伸展に応じた電位を発生させる電極である。この筋電計測電極は皮膚の表面に貼着されてその皮膚の下にある筋肉の収縮や伸展に応じた電位(これを表面筋電位と称する)を出力する。表面筋電位は筋肉が収縮するほど高い値となる。
本実施例では筋電計測電極60a、60bが上腕二頭筋の表面に貼着されており、上腕二頭筋の表面筋電位を計測する。また筋電計測電極60cが上腕三頭筋の表面に貼着されており、上腕三頭筋の表面筋電位を計測する。さらに手首の部分にも筋電計測電極62が貼着されている。筋電計測電極62はリファレンス電極と呼ばれ、筋電計測電極60a、60b、60cが出力する電位のいわばグランド側に相当する。
【0030】
図2には手先106に重量物108を持った状態を示してある。図2では紙面の上下方向が鉛直方向に相当する。この状態では重力物108の重さに抗するために上腕二頭筋が収縮する。その結果、上腕二頭筋の表面に貼着した筋電計測電極60a、60bが出力する表面筋電位が増加する。筋電計測電極60a、60bの出力が増加したことによって、上腕二頭筋が筋力を発生している状態であることがわかる。
図2に示す状態においての本実施例のアシスト装置10の制御装置について図3を用いて説明する。
説明を簡略化するため、リファレンス電極62が出力する表面筋電位をグラントとして計測した上腕二頭筋の表面に貼着した筋電計測電極60a、60bの表面筋電位を合わせてVEMGとする。アシスト装置10のコントローラ11にはこのVEMGが入力される。コントローラ11ではまず入力されたVEMGを全波整流器70で全波整流する。その後平均化フィルタ72を通してノイズの除去を行う。平均化した後のVEMGに乗算器74で筋電電圧−筋力変換係数「C」を乗じる。係数「C」は筋電電圧を筋力の変換するための変換係数であり既知の値である。乗算器74の出力が上腕二頭筋が出力している筋力の推定値となる。この推定値に乗算器76でアシスト率「K」を乗じる。アシスト率「K」は上腕二頭筋が出力している力に対してどの程度の割合の力をアシスト装置10で補助するかを決定する係数である。例えばアシスト率K=1とすると、上腕二頭筋が出力している筋力と同等の力をアシスト装置10が出力することになる。この場合、本来必要な力の半分の力で重量物108を手先106に維持することができる。換言すれば、重量物108を保持する力を上腕二頭筋とアシスト装置10で50%ずつ分担することになる。
アシスト率「K」が乗じられた後には、アシスト装置10の連結機構部16が出力すべき力(トルク)に必要なモータ出力トルクを算出するためにアシスト力−モータ電流指令値変換係数Ktcが乗算器78によって乗じられる。その結果をモータドライバ80へ出力する。モータドライバ80は指令値に従って図1又は図2に示すモータ18に電流を出力する。
なお、上腕二頭筋は引っ張り力により前腕102に対して肘関節周りのトルクを与えるが、上腕二頭筋の引っ張り力の前腕102に与えるトルクへの換算係数も筋電電圧−筋力変換係数「C」に含まれている。
【0031】
上記実施例では、腕に装着して肘関節の周りの回転を補助するパワーアシスト装置(補助装置)を例示した。実施例とほぼ同様の構成で、手首や膝や足首の関節周りの回転を補助する装置も実現できる。
手首関節周りの回転を補助するパワーアシスト装置では、近位側装着部が前腕に装着され、遠位側装着部が掌に装着される。実施例の上腕支持帯26に相当する支持帯は前腕の形状に合わせて形成される。前腕支持帯46に相当する支持帯は掌の形状に合わせて形成される。モータは掌の甲と同じ側で近位側装着部(前腕に装着される)に支持される。手首関節では、前腕(近位側身体)に対して掌(遠位側身体)を伸展方向に回転させた側の回転限界の外側の方が広い。なお、掌を伸展させる方向とは、前腕伸筋群によって掌の甲側へ回転させる側である。従ってモータは前腕に対して掌を伸展方向に回転させた側の回転限界の外側の方で近位側(前腕)装着部に固定されることが好ましい。
また、膝関節周りの回転を補助するパワーアシスト装置では、近位側装着部は大腿に装着される。遠位側装着部は下腿に装着される。実施例の上腕支持帯26に相当する支持帯は大腿の形状に合わせて形成される。前腕支持帯46に相当する支持帯は下腿の形状に合わせて形成される。またモータは大腿の前側で近位側装着部(大腿に装着される)に支持される。大腿の前側が大腿(近位側身体)に対する下腿(遠位側身体)の可動限界と大腿との間隔の広い側に相当するからである。
また、足首関節周りの筋力を補助する装着型パワーアシスト装置では、近位側装着部は下腿に装着される。遠位側装着部は足平に装着される。実施例の上腕支持帯26に相当する支持帯は下腿の形状に合わせて形成される。前腕支持帯46に相当する支持帯は足平の形状に合わせて形成される。またモータは下腿のふくらはぎ側で近位側装着部(大腿に装着される)に支持される。足平を伸展させる側であるふくらはぎ側が下腿(近位側身体)に対する足平(遠位側身体)の可動限界と下腿との間隔の広い側に相当するからである。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えばアクチュエータが発生するトルクを遠位側装着部に伝達する伝達部品としては実施例に例示したベルトの他にもギヤ機構により構成されてもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1(A)は実施例1の装着型パワーアシスト装置の側面図である。図1(B)は図1(A)を矢印Bの方向からみたときの平面図である。
【図2】実施例1の装着型パワーアシスト装置を装着して重量物を持った状態を示す模式図である。
【図3】装着型パワーアシスト装置のコントローラのブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
10:パワーアシスト装置(補助装置)
11:コントローラ
12:近位側装着部
14:遠位側装着部
16:連結機構部(減速機構)
18:モータ(アクチュエータ)
20:近位側装着部連結部品
22a、22b:上腕側装着部品
24:U字形連結部品
26:上腕支持帯
28:モータ支持板
30:ケース
32:出力軸側回転部品
34:プーリ
35:入力軸
40a、40b:遠位側装着部連結部品
42a、42b:前腕側装着部品
44a、44b:U字形連結部品
46:前腕支持帯
52:トルクリミッタ
54:プーリ
56:ベルト(伝達部品)
60a、60b、60c:筋電計測電極
62:筋電計測電極
70:全波整流器
72:平均化フィルタ
74、76、78:乗算器
80:モータドライバ
100:上腕
102:前腕
104:肘関節

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に装着して身体の関節周りの回転を補助する装置であり、
身体の関節の近位側身体に装着される近位側装着部と、
身体の関節の遠位側身体に装着される遠位側装着部と、
近位側装着部と遠位側装着部を回転可能に連結しており、近位側装着部を近位側身体に装着するとともに遠位側装着部を遠位側身体に装着したときに身体の関節の回転軸と同一軸線上に位置する回転軸を有する連結機構部と、
アクチュエータと、
遠位側装着部を近位側装着部に対して連結機構部の回転軸周りに回転させるトルクを遠位側装着部に伝達する伝達部品を備えており、
前記アクチュエータは、遠位側身体の回転限界外の位置において近位側装着部に固定されており、かつ前記アクチュエータの少なくとも一部は、遠位側身体の回転面に直交する方向に計る近位側身体の厚み内に位置することを特徴とする補助装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、近位側身体に対して遠位側身体を伸展方向に回転させた側の回転限界の外側に配置されていることを特徴とする請求項1の補助装置。
【請求項3】
アクチュエータの重心が、前記厚み内に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の補助装置。
【請求項4】
前記連結機構部は減速機構を兼用しており、減速機構のケースが近位側装着部に固定されており、減速機構の出力軸側回転部品が遠位側装着部に固定されており、減速機構の入力軸に固定されているプーリとアクチュエータの出力軸に固定されているプーリの間がベルトで連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の補助装置。
【請求項5】
前記関節は肘関節であり、前記近位側身体は上腕であり、前記遠位側身体は前腕であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の補助装置。
【請求項6】
前記関節は膝関節であり、前記近位側身体は大腿であり、前記遠位側身体は下腿であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−29113(P2007−29113A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212073(P2005−212073)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594026192)株式会社トヨタマックス (5)
【Fターム(参考)】