説明

補助酵素を使用するリグノセルロース系原料の酵素的加水分解

前処理したリグノセルロース系原料の可溶性糖質への加水分解のための酵素混合物が提供される。酵素混合物は、酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.09〜約0.91(w/w)の画分濃度(fEG4)のEG4、約0〜約0.91(w/w)の画分濃度(fSwo1)のスウォレニン、および0〜約0.42の画分濃度(fCip1)のCip1を含む。前処理したリグノセルロース系原料を、酵素混合物を使用して可溶性糖質に変換するプロセス、ならびにかかる酵素混合物の使用および生成の方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年8月30日に出願された、前処理されたリグノセルロース系原料の酵素的加水分解のためのプロセスにおける補助酵素の使用、と題される特許出願第60/969,046号の仮出願の優先利益を主張し、それらの内容全体は参照することにより本明細書に組み入れられる。
本発明はセルラーゼ酵素混合物を提供する。本発明は、セルラーゼ酵素混合物を使用するリグノセルロース系原料の加水分解のためにプロセスもまた提供する。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロース系原料は、燃料エタノールの生産のためのトウモロコシデンプンに対する有望な代替物である。リグノセルロース系原料は低費用で広く入手可能であり、複数の研究は、セルロース系エタノールは温室効果ガス排出ゼロに近いと結論した。
【0003】
しかしながら、リグノセルロース系原料は複合糖分子へと容易に分解されない。リグノセルロースの扱い難さは、物理的および/または化学的な前処理により部分的に克服することができる。化学的前処理の例は希硫酸の存在下における水蒸気爆砕である(米国特許第4,461,648号)。このプロセスは、大部分のヘミセルロースを除去するが、セルロースのグルコースへの転換はほとんど起こらない。次に前処理した物質は、セルラーゼ酵素により加水分解できる。
【0004】
用語セルラーゼ(またはセルラーゼ酵素)は、セルロースポリマー中の個々のグルコース単位を結合するβ−1,4−グルコシド結合の加水分解を触媒する酵素を広範囲に指す。触媒機構は、エンドグルカナーゼ(E.C.3.2.1.4)、セロビオヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.91)およびβ−グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)の相乗作用を含む。エンドグルカナーゼはセルロース鎖の中間の利用可能なグルコシド結合を加水分解するが、セロビオヒドロラーゼはこれらの鎖の末端からセロビオースを前進的に放出する。β−グルコシダーゼは、セロビオースをグルコースへ加水分解し、そうすることで、セロビオヒドロラーゼの生成物阻害を最小限にする。総体として、酵素は、セルロース基質を加水分解できるシステムとして作動する。
【0005】
セルラーゼ酵素は、トリコデルマ属(Trichoderma)の種、アスペルギルス属(Aspergillus)の種、ヒポクレア属(Hypocrea)の種、フミコーラ属(Humicola)の種、ニューロスポラ属(Neurospora)の種、オルピノミセス属(Orpinomyces)の種、ジベレラ属(Gibberella)の種、エメリセラ属(Emericella)の種、ケトミウム属(Chaetomium)の種、フザリウム属(Fusarium)の種、ペニシリウム属(Penicillium)の種、マグナポルテ属(Magnaporthe)の種、およびファネロカエテ属(Phanerochaete)の種を含む糸状菌から得ることができる。
【0006】
トリコデルマ属の種(トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum )またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei))は、結晶セルロースを分解することができるセルラーゼ酵素を生成する。トリコデルマ・リーゼイは、セルロース鎖の還元末端および非還元末端からセロビオースを放出する2つのセロビオヒドロラーゼ(それぞれCBH1(Cel7A)およびCBH2(Cel6A))、およびβ−グルコシダーゼ(Cel3A)を分泌する。EG1(Cel7B)およびEG2(Cel5A)は結晶セルロースの加水分解に関与する2つの主要なエンドセルラーゼである。CBH1(Cel7A)、CBH2(Cel6A)、EG1(Cel7B)およびEG2(Cel5A)は、2つの機能ドメイン(触媒ドメインおよび炭水化物結合モジュール(CBM))を含む。
【0007】
残りのエンドグルカナーゼのうちでEG3(Cel12A)は、炭水化物結合モジュールを欠き、したがって結晶セルロースの結合は不十分である(Karlssonら、Journal of Biotechnology,99:63−78,(2002))。EG5(Cel45A)およびEG6(Cel74A)は、それぞれ、グルコマンナナーゼ(Karlssonら、2002a)およびキシログルカナーゼ(Desmetら、FEBS Journal、274:356−363、(2006))であると報告されている。EG4(Cel61A)は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびβ−グルカンに対してある程度の活性を示すことが報告される(Karlssonら、European Journal of Biochemistry,268:6498−6507,(2002b))。しかしながらEG1と比較した場合、これらの基質に対するEG4の比活性は4桁低く、その天然の基質および/または作用様式が他に存在することを示唆する。それにもかかわらず、サーモアスカス・オーランティアカス(Thermoascus aurantiacus)からトリコデルマ属のセルラーゼまでのCel61Aの追加は、前処理したトウモロコシ茎葉の加水分解を改良することが報告されている(WO2005/074656)。このことはチエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)からのCel61B、Cel61CおよびCel61Dについても示された(WO2005/074647)。
【0008】
前処理したリグノセルロース系原料の酵素的加水分解はセルロース系エタノールの生成における非能率的な工程であり、そのコストは、商業的実用化に対する主要な障害の1つである。セルラーゼの酵素活性の改良またはセルラーゼ生産効率の増加は、有意なコスト削減の好機として広く認められている。
【0009】
多数のアプローチはエタノール製造のためのセルラーゼの活性を改良するために採用されてきた。トリコデルマ属によって分泌されたβ−グルコシダーゼ活性の量は、セロビオース蓄積および生成物阻害を最小限にするために増加された(米国特許第6,015,703号)。変異誘発戦略を使用して、CBH1(WO2005/0277172)およびCBH2(米国2006/0205042)の熱安定性が改良された。アミノ酸コンセンサスおよび変異誘発の戦略を利用して、CBH1(WO2004/0197890)およびCBH2(WO2006/0053514)の活性が改良された。T.リーゼイからのCel7A触媒ドメインおよびアシドサーマス・セルロリティカス(Acidothermus cellulolyticus)からのEG1触媒ドメインからなる融合タンパク質が構築された(WO2006/00057672)。さらに、ミセリオプトラ属(Myceliopthora)、フミコーラ属およびフザリウム属を起源とするセルラーゼおよびヘミセルラーゼからのCBMおよび触媒ドメインの新規の組合せが、新規の酵素の特異性および活性を備えた酵素を生成しようとして、ドメインシャッフリングによって生成された(米国特許第5,763,254号)。
【0010】
これらのアプローチは、個々のセルラーゼ成分(特に濾紙、CMC、HECおよびβ−グルカンなどの実験用基質に対して実質的な活性を示すもの)に注目した。個々のタンパク質の特性を変更しているが、これらのアプローチは、全体のセルラーゼ酵素システムの活性を実質的に増加せず、したがって、セルロース系エタノールの生成に必要とされる酵素のコストを低減しなかった。
【0011】
いくつかの研究は、リグノセルロース系基質に対する活性を改良するためにセルラーゼ調製物と併用してヘミセルラーゼを検査した(Berlinら、Biotechnology and Bioengineering,97(2):287−296,(2007))。しかしながら、水蒸気爆砕プロセスなどのリグノセルロース系原料の効果的な前処理は、実質的にはヘミセルロースのすべてを除去し、ヘミセルラーゼ活性の改良がセルラーゼのコストを低減するのに最良のアプローチではないことを強く示唆する。
【0012】
いくつかのトリコデルマ属セルラーゼ成分は、実験用セルロース模倣基質に対して無視できる加水分解活性を有するが、セルロースによって誘導される。Cip1およびCip2はセルロースおよびソフォロースによって誘導され、それらがセルロース系バイオマスの破壊における役割を有していることを示唆するが、それらの活性はなお不明である(Foreman ら、Journal of Biological Chemistry,278(34)31988−31997,(2003))。スウォレニン(Swollenin)(Swo1)(エクスパンシンドメインおよびCBMを含む新規の真菌タンパク質)は、おそらくセルロース構造中の水素結合の破壊によって、綿繊維を崩壊させることが示されている(Saloheimoら、European Journal of Biochemistry,269:4202−4211,(2002))。
【0013】
多くの研究に対する取り組みにもかかわらず、前処理したリグノセルロース系原料中のセルロースの加水分解のための改良されたセルラーゼ酵素混合物の必要性がある。かかる酵素混合物の欠如は、エタノールおよび他の産物の生成のためのグルコースを含む可溶性糖質へのセルロース転換の商業化における大きなハードルを示す。
【発明の概要】
【0014】
本発明はセルラーゼ酵素混合物を提供する。本発明は、セルラーゼ酵素混合物を使用するリグノセルロース系原料の加水分解のためのプロセスもまた提供する。
【0015】
本発明は、リグノセルロース系原料の酵素的加水分解のための改良した酵素混合物の提供を目的とする。
【0016】
本発明者は、セルラーゼ酵素混合物内の互いに対する補助酵素(すなわちEG4、スウォレニン、Cip1)の比率を調整することが、前処理したリグノセルロース系原料の加水分解を改良できることを明らかにした。例えば、酵素混合物中に存在するEG4、スウォレニンおよびCip1酵素に対して測定して、約0.25〜約0.83の画分濃度(セルラーゼ酵素混合物中の全量のEG4、スウォレニンおよびCip1の関数としてのEG4、スウォレニンおよびCip1各々についてのw/w)のEG4、約0〜約0.66の画分濃度のスウォレニンおよび0〜約0.33の画分濃度のCip1の、セルラーゼ酵素混合物中への組入れは、前処理した原料の加水分解を、対応する野生型酵素組成物に対して有意に改良できることが見出された。先行研究は、前処理したリグノセルロース系原料の加水分解における組合せのかかる補助成分の可変比率を検査していないが、むしろ個々のセルラーゼ成分のレベルを修飾することによる酵素活性の改良に注目してきた。
【0017】
したがって本発明の第1の態様に従って、CBH1、CBH2、EG1およびEG2を含む主要セルラーゼ混合物、ならびに画分濃度がセルラーゼ酵素混合物中に存在するEG4、スウォレニンおよびCip1酵素の全質量に対して測定して、約0.09〜約0.91(w/w)の(例えば約0.25〜約0.83(w/w)の)画分濃度のEG4(fEG4);約0.09〜約0.91(w/w)の(例えば約0〜約0.66の)画分濃度(fSwo1)のスウォレニン;および0〜約0.42(w/w)の(例えば約0〜約0.33の)画分濃度(fCip1)のCip1を含む補助酵素混合物を含む、前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質へ加水分解するための単離したセルラーゼ酵素混合物が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様に従って、上で定義されるようなセルラーゼ酵素混合物により前処理したリグノセルロース系原料を酵素的に加水分解することを含む、前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質へ変換するプロセスが提供される。
【0019】
本発明の第3の態様に従って、上で定義されるようなセルラーゼ混合物を使用して、前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質へ加水分解するための方法が提供される。
【0020】
本発明の各態様の実施形態に従って、酵素混合物はCBH1、CBH2、EG1およびEG2主要セルラーゼ酵素を含む。酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素の全質量パーセントに対して測定して、主要セルラーゼ酵素は約70〜約95質量%の組合せ含有量を有し、補助酵素は約5〜約30質量%の組合せ含有量を有することができる。セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素の全質量パーセントに対して測定して、主要セルラーゼ酵素は約70〜約90質量%の組合せ含有量を有し、補助酵素は約10〜約30質量%の組合せ含有量を有することができる。
【0021】
本発明の前述の態様のいずれかの実施形態において、酵素混合物中に存在する全タンパク質に対して測定して、主要酵素および補助酵素は約70〜約100質量%の組合せ含有量を有する。
【0022】
セルラーゼ酵素混合物中に存在するCBH1、CBH2、EG1およびEG2酵素の全組合せ質量に対して測定して、CBH1およびCBH2酵素は約55〜約85質量%の組合せ含有量を有し、EG1およびEG2酵素は約15〜約45質量%の組合せ含有量を有することができる。本発明の1つの実施形態において、CBH1およびCBH2酵素は各々、セルラーゼ酵素混合物中に存在するCBH1およびCBH2酵素の組合せ全質量に対して測定して、約0.25〜約0.75(w/w)の画分濃度で存在することができる。本発明の他の実施形態において、EG1およびEG2の酵素は各々、セルラーゼ酵素混合物中に存在するEG1およびEG2の酵素の組合せ全質量に対して測定して、それぞれ約0.35〜約0.95(w/w)および約0.05〜約0.65(w/w)の画分濃度で存在することができる。
【0023】
セルラーゼ酵素混合物中に存在するEG4、スウォレニンおよびCip1酵素の全質量に対して、EG4酵素は約0.33〜約0.50の画分濃度で存在し、スウォレニン酵素は約0.33〜約0.58の画分濃度で存在し、Cip1は約0.08〜約0.25の画分濃度で存在する。
【0024】
主要酵素および補助酵素は真菌ソースに由来するコーディング配列から発現することができる。真菌ソースは子嚢菌または担子菌でありえる。真菌ソースは、トリコデルマ属の種、アスペルギルス属の種、ヒポクレア属の種、フミコーラ属の種、ニューロスポラ属の種、オルピノミセス属の種、ジベレラ属の種、エメリセラ属の種、ケトミウム属の種、フザリウム属の種、ペニシリウム属の種、マグナポルテ属の種およびファネロカエテ属の種から選択される。真菌ソースはトリコデルマ属の種でありえる。
【0025】
主要酵素および補助酵素は、主要酵素および補助酵素が由来する内在性生物における発現によって生成することができる。あるいは、主要酵素および補助酵素は、異種生物における発現によって生成することができる。例えば、主要酵素および補助酵素はトリコデルマ・リーゼイにおける発現によって生成される。
【0026】
セルラーゼ酵素混合物は微生物ソースに由来する分泌酵素のブレンドでありえる。この実施形態に従って、主要酵素および補助酵素はブレンド中の分泌酵素の約70〜約100質量%を構成し、追加の非セルラーゼ酵素はブレンド中の全分泌酵素の0〜約30の質量%を構成する。ブレンド中に分泌された追加の非セルラーゼ酵素はβ−グルコシダーゼを含むことができる。
【0027】
本発明の他の態様に従って、CBH1、CBH2、EG1およびEG2を含む主要酵素混合物、およびEG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素を含む補助酵素混合物を含む、前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質へ加水分解するための、セルラーゼ酵素混合物が提供され、セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定された画分濃度(fEG4、fSwo1およびfCip1)で存在する各々のEG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素は、本明細書においてベンチマークブレンドとして定義されたトリコデルマ・リーゼイ(野生型)によって分泌された天然の酵素混合物と比較して、前処理したリグノセルロース系原料に対する活性の少なくとも約10%の改良を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】クマシーブルー染色による可視化後の、精製された主要成分および補助成分のSDS−PAGEゲルを示した図である。市販のトリコデルマ属セルラーゼおよび分子量スタンダードを参照のために示す。このゲルのデンシトメトリー解析は、精製された成分が実質的に純粋であることを示した。CBH1およびCBH2の調製物は、95%以上の純度であった。EG1、EG2、EG4、Swo1およびCip1は、90%以上の純度であった。
【図2】精製された主要成分および補助成分のウエスタンブロット解析を示した図である。これらはSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜へ電気的に転写し、成分特異的ポリクローナル抗血清を使用して可視化した。これは、精製された成分のクロスコンタミネーションの可能性を検出するより感受性のある技術である。これにより、これらの成分のすべてで、主要セルラーゼのクロスコンタミネーションが実質的にないことも実証された。
【図3】EG4、スウォレニンおよびCip1の様々な混合物により補完された主要セルラーゼ混合物の酵素活性の三成分プロット表示を示した図である。主要セルラーゼ混合物は、32質量%のCBH1、47質量%のCBH2、17質量%のEG1および4質量%のEG2からなる(すべての主要セルラーゼの全質量と比較して)。主要セルラーゼ混合物は補助成分混合物との組合せであり、最終組成物で82wt%の主要セルラーゼ混合物および18wt%補助成分混合物からなる。酵素活性は、補助成分の全濃度と比較して、EG4(fEG4)、スウォレニン(fSwo1)およびCip1(fCip1)の様々な画分濃度でプロットされる。示された活性値は、等しいタンパク質質量ベースで補助成分を含まない主要セルラーゼ混合物の活性に対する値として表示される。市販のトリコデルマ属セルラーゼの補助成分組成物を比較のために示す(「ベンチマークブレンド」)。EG4、Swo1およびCip1のモデル至適条件組成物は、等式1を使用する単一および二成分の補助成分ブレンドの活性をモデル化することによって決定された。これは「モデル至適条件ブレンド」として標識される。
【図4】ベンチマークブレンド(1.16)よりも有意に高い活性のある補助成分ブレンドを示した図である。これらのブレンドの活性は1.23以上である。三成分ブレンド空間のこの領域を本明細書においてゾーン1と呼ぶ。
【図5】最も高い活性のある補助成分ブレンドを示した図である。これらのブレンドの活性は1.30以上である。三成分ブレンド空間のこの領域を本明細書においてゾーン2と呼ぶ。
【図6】本発明において定義された補助成分の最適化比率を使用する、全補助成分に対する全主要セルラーゼ成分の異なる比率からなるセルラーゼ混合物の活性を示した図である。主要セルラーゼ混合物は、32質量%のCBH1、47質量%のCBH2、17質量%のEG1および4質量%のEG2からなるが(すべての主要セルラーゼの全質量と比較して)、補助酵素混合物は、42質量%のEG4、41質量%のSwo1および17質量%のCip1からなる(すべての補助酵素の全質量と比較して)。市販のトリコデルマ属セルラーゼにおける、CBH1、CBH2、EG1およびEG2の組合せパーセンテージ(%PC)は、「ベンチマーク比率」としてこの図において標識される。
【図7A】前処理したリグノセルロース系基質の異なるセルラーゼ成分混合物による経時的な転換を示した図である。主要成分のブレンドに追加した場合の補助成分のベンチマークブレンドを、補助成分の至適ブレンドと比較した。EG4、Swo1またはCip1不含有の主要セルラーゼのブレンドのパフォーマンスを参照のために示す。この分析において使用する各ブレンドのタンパク質用量の合計は等しかった。
【図7B】前処理したリグノセルロース系基質の異なるセルラーゼ成分混合物による経時的な転換を示した図である。主要成分のブレンドに追加した場合の補助成分のベンチマークブレンドを、補助成分の至適ブレンドと比較した。EG4、Swo1またはCip1不含有の主要セルラーゼのブレンドのパフォーマンスを参照のために示す。この分析において使用する各ブレンドのタンパク質用量の合計は等しかった。両方のグラフ(パネルAおよびB)はパネルBにおいて、軸を対数形態に変化させた以外は、同じ結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明はセルラーゼ酵素混合物を提供する。本発明は、またセルラーゼ酵素混合物を使用するリグノセルロース系原料の加水分解のためのプロセスを提供する。
【0030】
本発明は、前処理したリグノセルロース系原料の加水分解のために使用される主要セルラーゼおよび補助酵素を含むセルラーゼ酵素混合物に関する。「補助酵素」または「補助成分」は、エンドグルカナーゼ、EG4、スウォレニン(Swo1)およびCip1として本明細書において定義される。「主要セルラーゼ酵素」、「主要セルラーゼ」、「主要成分」または「PC」は、セロビオヒドロラーゼ(CBH1およびCBH2)およびエンドグルカナーゼ(EG1およびEG2)として本明細書において定義される。セルラーゼ酵素混合物は、主要セルラーゼ(CBH1、CBH2、EG1およびEG2)および補助酵素(EG4、スウォレニンおよびCip1)に加えて、さらに詳細に本明細書において記述されるようなβ−グルコシダーゼ酵素成分と同様に、他のセロビオヒドロラーゼまたはエンドグルカナーゼおよびヘミセルラーゼを含む追加の酵素を含むことができる。
【0031】
以下の定義は、国際生化学分子生物学連合の生化学命名法合同委員会によって定義されるようなセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼ(Eur.J.Biochem.1994,223,1−5;Eur.J.Biochem.1995,232,1−6;Eur.J.Biochem.1996,237,1−5;Eur.J.Biochem.1997,250;1−6,and Eur.J.Biochem.1999,264,610−650中の別冊と共に;Enzyme Nomenclature、1992年、アカデミックプレス社(Academic Press)、サンディエゴ、カリフォルニア、ISBN、0−12−227164−5中に発表され、各々は参照することにより本明細書に組み入れられる;chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/もまた参照)およびグリコヒドロラーゼ酵素のための正式名称として認められるCAZyシステムによって定義されるようなセルラーゼおよびβ−グルコシダーゼのグリコヒドロラーゼファミリー(Coutinho,P.M.およびHenrissat,B.、1999年、Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering中の「Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach.」、H.J.Gilbert,G.Davies、B.HenrissatおよびB.Svensson編、英国王立化学協会、ケンブリッジ、pp.3−12、これらは参照することにより本明細書に組み入れられる;afmb.cnrs−mrs.fr/CAZY/また参照)の分類、ならびに当業者によく知られているものを指す。
【0032】
「EG4」は、EC3.2.1.4に分類されたグリコヒドロラーゼ(GH)ファミリー61触媒ドメインについての核酸配列コーディングから発現された炭水化物活性酵素、またはアミノ酸144〜アミノ酸163のトリコデルマ・リーゼイのEG4酵素の高度に保存された配列に対して、40%〜100%、例えば50%〜100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはその断片である(GenPeptアクセッション番号CAA71999、およびヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)エンドグルカナーゼIVとして注釈された)。例えば、EG4酵素は、表1においてリストされた生物のうちの任意の1つから得られるか、またはそれに由来することができ、トリコデルマ・リーゼイのEG4に対して少なくとも40%の同一性が実証される。EG4は、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶セルロースに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に結合することができる。
表1:トリコデルマ・リーゼイEG4に対するEG4酵素の配列同一性
【表1】

*T.リーゼイEG4について、最初の8つのアミノ酸がHGHINDIVであるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0033】
「スウォレニン」または「Swo1」は、トリコデルマ・リーゼイのスウォレニン酵素のアミノ酸92〜475(エクスパンシン様ドメインおよびそれに結合するCBMを含むが、ファミリー1CBMおよびリンカーペプチドを欠く)に対して、約70%〜100%のアミノ酸配列同一性、または例えば約75%〜約100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドまたはその断片として本明細書において定義される(GenPeptアクセッション番号CAB92328、ヒポクレア・ジェコリナのスウォレニンとして注釈された)。例えば、スウォレニン酵素は表2においてリストされた生物のうちの任意の1つから得られるか、またはそれに由来することができ、トリコデルマ・リーゼイからのスウォレニン酵素に対して少なくとも約70%の同一性が実証される。例えば、スウォレニンは、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶セルロースに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に連結することができる。
表2:トリコデルマ・リーゼイのスウォレニンに対するスウォレニン酵素の配列同一性
【表2】

*T.リーゼイのスウォレニンについて、最初の8つのアミノ酸がQQNCAALFであるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0034】
「Cip1」は、トリコデルマ・リーゼイCip1酵素の触媒ドメインを含むアミノ酸1〜212に対して、約40%〜約100%のアミノ酸配列同一性、例えば約56%〜約100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドまたはその断片として本明細書において定義される(GenPeptアクセッション番号AAP57751、ヒポクレア・ジェコリナCip1として注釈された)。例えば、Cip1酵素は表3においてリストされた生物のうちの任意の1つに由来することができ、トリコデルマ・リーゼイCip1酵素に対して少なくとも約40%の同一性が実証される。Cip1は、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶セルロースに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に連結することができる。
表3:トリコデルマ・リーゼイCip1に対するCip1酵素の配列同一性
【表3】

*T.リーゼイCip1について、最初の8つのアミノ酸がQISDDFES..であるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0035】
「CBH1」は、EC3.2.1.91に分類されたグリコヒドロラーゼ(GH)ファミリー7触媒ドメインについての核酸配列コーディングから発現された炭水化物活性酵素、またはトリコデルマ属CBH1酵素の触媒ドメイン(アミノ酸1〜437)に対して、約60%〜約100%アミノ酸配列同一性、もしくは例えば約65%〜約100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはその断片である(GenPeptアクセッション番号CAH10320、ヒポクレア・ジェコリナCBH1として注釈された)。例えば、CBH1酵素は表4においてリストされた生物のうちの任意の1つに由来することができ、トリコデルマ・リーゼイCBH1酵素に対して少なくとも60%の同一性を実証する。CBH1は、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶セルロースに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に連結することができる。
表4:トリコデルマ・リーゼイCBH1に対するCBH1酵素の配列同一性
【表4】



*T.リーゼイCBH1について、最初の8つのアミノ酸がQSACTLQS..であるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0036】
「CBH2」は、EC3.2.1.91に分類されたグリコヒドロラーゼ(GH)ファミリー6触媒ドメインについての核配列コーディングから発現された炭水化物活性酵素、またはトリコデルマ属CBH2酵素の触媒ドメインを含むアミノ酸83〜447に対して、約45%〜約100%のアミノ酸配列同一性、もしくは例えば約60%〜約100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはその断片として定義される(GenPeptアクセッション番号AAA34210、ヒポクレア・ジェコリナのセロビオヒドロラーゼIIとして注釈された)。例えば、CBH2酵素は表5においてリストされた生物のうちの任意の1つから得られるか、またはそれに由来することができ、トリコデルマ・リーゼイCBH2酵素に対して少なくとも約45%の同一性が実証される。CBH2は、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶質のセルラーゼに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に連結することができる。
表5:トリコデルマ・リーゼイCBH2に対するCBH2酵素の配列同一性
【表5】





*T.リーゼイCBH1について、最初の8つのアミノ酸がQAACSSVWGであるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0037】
「EG1」は、EC3.2.1.4に分類されたグリコヒドロラーゼ(GH)ファミリー7触媒ドメインについての核酸配列コーディングから発現された炭水化物活性酵素、またはトリコデルマ・リーゼイEG1酵素の触媒ドメインを含むアミノ酸1〜374に対して、約40%〜約100%のアミノ酸配列同一性、もしくは例えば約48%〜約100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはその断片として定義される(GenPeptアクセッション番号AAA34212、ヒポクレア・ジェコリナのエンドグルカナーゼIとして注釈された)。例えば、EG1酵素は表6においてリストされた生物のうちの任意の1つから得られるか、またはそれに由来することができ、トリコデルマ・リーゼイEG1酵素に対して少なくとも約40%の同一性が実証される。EG1は、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶質のセルラーゼに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に連結される。
表6:トリコデルマ・リーゼイEG1に対するEG1酵素の配列同一性
【表6】

*T.リーゼイEG1について、最初の8つのアミノ酸がQQPGTSTPであるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0038】
「EG2」は、EC3.2.1.4に分類されたグリコヒドロラーゼ(GH)ファミリー5触媒ドメインについての核酸配列コーディングから発現された炭水化物活性酵素またはトリコデルマ属EG2酵素のアミノ酸202〜222に対して、約40%〜約100%のアミノ酸配列同一性、もしくは例えば約48%〜約100%のアミノ酸配列同一性を備えた任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはその断片として定義される(GenPeptアクセッション番号AAA34213、ヒポクレア・ジェコリナのエンドグルカナーゼIIIとして注釈された)。トリコデルマ・リーゼイEG2アミノ酸配列のアミノ酸202〜222によって表わされる高度に保存された領域は、GHファミリー5を特徴づける2つの触媒のグルタミン酸残基のうちの1つを含む。例えば、EG2酵素は表7においてリストされた生物のうちの任意の1つから得られるか、または由来することができ、トリコデルマ・リーゼイEG2酵素に対して少なくとも約40%の同一性が実証される。EG2は、ファミリー1セルロース結合ドメインなどの結晶質のセルラーゼに対する高親和性を備えた炭水化物結合モジュール(CBM)に機能的に連結することができる。
表7:トリコデルマ・リーゼイEG2に対するEG2酵素の配列同一性
【表7】



*T.リーゼイEG2について、最初の8つのアミノ酸がQQTVWGQCであるように、アミノ酸1は分泌された酵素の第1のアミノ酸である。
【0039】
「β−グルコシダーゼ」は、EC 3.2.1.21または任意のタンパク質、ペプチドもしくはその断片にも分類されるGHファミリー3またはGHファミリー1からの任意の酵素として定義される。β−グルコシダーゼは真菌起原でありえる。例えば、β−グルコシダーゼは、トリコデルマ属、ヒポクレア属またはアスペルギルス属の種からでありえるか、またはβ−グルコシダーゼはトリコデルマ・リーゼイからでありえる。
【0040】
配列同一性は、手動のアライメント、または当業者に公知の任意の配列アライメントアルゴリズム、例えばBLASTアルゴリズム(BLASTおよびBLAST2.0;Altschulら、Nuc.Acids Res.25:3389−3402,1977;およびAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410,1990)、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482 (1981)によって開示されたアルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性のアライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444 (1988)の類似性方法の検索、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(ウィスコンシン遺伝学ソフトウェアパッケージ(遺伝学コンピューターグループ(Genetics Computer Group)、575サイエンス大通り、マディソン、ウィスコンシン)中の、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または手動のアライメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelらおよび編集者1995年別冊)を参照)であるが、これらに限定されないものを使用する2つの配列のアミノ酸のアライメントによってたやすく決定することができる。セルラーゼ酵素のためのBLASTアライメントおよび配列同一性決定を行なう事例において、触媒ドメインを含むアミノ酸配列のみが判断される。
【0041】
リグノセルロース系原料の加水分解の実行において特に利点を示す補助成分(すなわちEG4、スウォレニンおよびCip1)の比率を同定した。混合物のこれらのセットは、画分濃度(すなわち、セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべての組合せ質量の合計の関数としての個々の補助酵素の質量)によって本明細書において定義される。EG4、Swo1およびCip1に対するEG4の画分は、本明細書においてfEG4と呼ばれ、
EG4=EG4/(EG4+Swo1+Cip1)
である。EG4、Swo1およびCip1に対するSwo1画分は、本明細書においてfSwo1と呼ばれ、
Swo1=Swo1/(EG4+Swo1+Cip1)
である。EG4、Swo1およびCip1に対するCip1画分は、本明細書においてfCip1と呼ばれ、
Cip1=Cip1/(EG4+Swo1+Cip1)
である。
【0042】
図4および5において示されるように、主要セルラーゼおよび補助酵素を含むセルラーゼ混合物中で、EG4の画分が約0.25〜約0.83の間であり(fEG4)、Swo1の画分が約0〜約0.66の間であり(fSwo1)、Cip1の画分が0〜0.33の間である(fCip1)場合、本明細書において「ベンチマークブレンド」として参照される市販のトリコデルマ属セルラーゼ混合物と比較して、有意に高いレベルの加水分解が観察された。図4において略述されるように、この補助酵素の混合物はゾーン1をカバーする。例えば、fEG4は約0.33〜約0.50の間であり、fSwo1は約0.33〜約0.58の間であり、fCip1は約0.08〜約0.25の間でありうる。図5において略述されるように、この補助酵素の混合物はゾーン2をカバーする。
【0043】
したがって、本発明に従って、EG4酵素は、約0.25〜約0.83、またはその間の任意の値、例えば、0.25、0、30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.83、またはその間の任意の値の画分濃度(fEG4)で存在する。例えば、EG4画分濃度(fEG4)は、約0.33〜約0.50、またはその間の任意の値、例えば、0.33、0.34、0.36、0.38、0.40、0.42、0.44、0.46、0.48、0.50またはその間の任意の値でありえる。スウォレニン酵素は、約0〜約0.66、またはその間の任意の値、例えば0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.66またはその間の任意の値の画分濃度(fSwo1)で存在する。例えば、スウォレニン画分濃度(fSwo1)は、約0.33〜約0.58、またはその間の任意の値、例えば0.33、0.34、0.36、0.38、0.40、0.42、0.44、0.46、0.48、0.50、0.52、0.54、0.56、0.58、またはその間の任意の値でありえる。Cip1は、0〜0.33、またはその間の任意の値、例えば0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.33またはその間の任意の値の画分濃度(fCip1)で存在する。例えば、Cip1は、0.08〜0.25、またはその間の任意の値、例えば0.08、0.10、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20、0.22、0.24、0.25またはその間の任意の値の画分濃度でありえる。
【0044】
酵素混合物中の補助酵素および主要セルラーゼ酵素の両方と比較して測定して、補助成分(EG4、Swo1およびCip1)の組合せ含有量は、約5質量%〜約30質量%の間またはその間の任意の質量%、例えば約10質量%〜約30の質量%の間またはその間の任意の質量%でありえ、主要セルラーゼ酵素は、約70質量%〜95質量%の間またはその間の任意の質量%、例えば約10質量%〜約70質量%の間またはその間の任意の質量%でありえる。例えば、補助成分は、酵素混合物中に存在するすべての補助酵素およびすべての主要セルラーゼ酵素の組合せ質量と比較して、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または30.5質量%で存在することができる。主要セルラーゼ酵素は、酵素混合物中に存在するすべての補助酵素およびすべての主要セルラーゼ酵素の組合せ質量と比較して、約69.5、70、71、7、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、94.5または95質量%で存在することができる。
【0045】
所望されるように、主要セルラーゼ成分(CBH1、CBH2、EG1およびEG2)の互いに対する比率を調整して、加水分解のさらなる改良を達成することができる。本発明の実施において利用することができる酵素混合物中の主要セルラーゼの比率は、同時係属米国特許出願第2008/0057541A1号において開示された通りである(参照することにより本明細書に組み入れられる)。限定して判断されるべきでない実施例を以下に提供する。しかしながら、本発明中に記述された主要セルラーゼの特異的比率によるいかなる方式でも本発明が限定されていないことは認識されるべきである。
【0046】
例えば、本発明のセルラーゼ酵素混合物内のセロビオヒドロラーゼCBH1およびCBH2(すなわちCBH1およびCBH2の組合せ含有量)は、CBH1、CBH2、EG1およびEG2からなる主要セルラーゼ混合物の55以上質量%〜85未満の質量%、またはその間の任意の質量%で存在することができ、例えばCBH1およびCBH2は、55、60、65、70、75、80、85質量%またはその間の任意の質量%で存在することができる。本発明のセルラーゼ酵素混合物内のエンドグルカナーゼ(EG1およびEG2)は、CBH1、CBH2、EG1およびEG2からなる主要セルラーゼ混合物の15%以上〜45%未満の質量%、またはその間の任意の質量%で存在することができ、例えば、EG1およびEG2は、15、16、18、20、22、24、25、30、35、40、45質量%またはその間の任意の質量%で存在することができる。
【0047】
CBH1およびCBH2の酵素は各々、酵素混合物中に存在するCBH1およびCBH2の酵素の組合せ含有量と比較して測定して、0.25〜0.75(w/w)またはその間の任意の値、および0.25〜0.75(w/w)またはその間の任意の値のそれぞれの画分濃度で存在することができる。例えば、CBH1およびCBH2は各々、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75またはその間の任意の値の画分濃度で存在することができる。EG1およびEG2の酵素は各々、酵素混合物中に存在するEG1およびEG2の酵素の組合せ含有量と比較して測定して、0.35〜0.95(w/w)またはその間の任意の値、および0.05〜0.65(w/w)またはその間の任意の値、のそれぞれの画分濃度で存在する。例えば、EG1は、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95またはその間の任意の値の画分濃度で存在することができ、EG2は、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65またはその間の任意の値の画分濃度で存在することができる。
【0048】
本発明のセルラーゼ酵素混合物は、「前処理したリグノセルロース系原料」の酵素的加水分解のために使用される。前処理したリグノセルロース系原料は、前処理前に、少なくとも20%のセルロース(乾燥質量)、例えば約30%以上のセルロース、または例えば40%以上のセルロース、例えば20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、55、60、65、70、75、80、85、90%もしくはその間の任意の%、および少なくとも10%のリグニン(乾燥質量)、より典型的には少なくとも12%(乾燥質量)を含む植物起原の材料であり、物理的プロセスおよび/または化学プロセスにさらして繊維をセルロース分解性酵素の作用に対してより接近可能におよび/またはより感受性があるようにする。
【0049】
前処理後に、リグノセルロース系原料はより高いレベルのセルロースを含むことができる。例えば、酸前処理が利用されるならば、ヘミセルロース成分は加水分解され、それはセルロースの相対的レベルを増加させる。この事例において、前処理した原料は、約20%以上のセルロース、および約12%以上のリグニンを含むことができる。1つの実施形態において、前処理したリグノセルロース系原料は、約20%以上のセルロース、および約10%以上のリグニンを含むことができる。
【0050】
本発明において使用できるリグノセルロース系原料は、トウモロコシ茎葉、麦わら、大麦わら、稲わら、エンバクわら、キャノーラわらおよび大豆茎葉などの農業用残渣;トウモロコシ繊維、甜菜パルプ、パルプミル微粉および不良品またはサトウキビバガスなどの繊維加工残渣;ハコヤナギ材、他の硬材、軟材およびおがくずなどの林業残渣;スイッチグラス、ススキ、コードグラスおよびクサヨシなどのイネ科草本;または使用済み廃紙産物を含むが、これらに限定されない。
【0051】
リグノセルロース系原料は、粉砕または摩砕または撹拌または破砕または圧縮/膨張または他のタイプの機械的作用を含むが、これらに限定されない方法によるサイズ減少を最初に行なうことができる。機械的作用によるサイズ減少は、目的のために適合した任意のタイプの装置(例えば、限定しないがハンマーミル)によって実行できる。
【0052】
前処理プロセスの非限定例は、硫酸もしくは亜硫酸、または他の酸;アンモニア、石灰、水酸化アンモニウムまたは他のアルカリ;エタノール、ブタノールまたは他の有機溶媒;または加圧水によるリグノセルロース系原料の化学処理を含む(米国特許第4,461,648号、第5,916,780号、第6,090,595号、第6,043,392号、第4,600,590号、Weilら(1997)およびOhgren,K.ら(2005)を参照;これらは参照することにより本明細書に組み入れられる)。
【0053】
前処理を実行して、リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースまたはその部分を、単糖類(例えばキシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトースまたはその組合せ)へ加水分解することができる。ヘミセルロースのほぼ完全な加水分解、およびセルロースのグルコースへの少量の転換が起こるように、前処理を実行することができる。前処理の間に、典型的には、約0.02%(w/w)〜約2%(w/w)、またはその間の任意の量の水性スラリー中の酸濃度が、リグノセルロース系原料の処理のために使用される。酸は、塩酸、硝酸または硫酸でありえるが、これらに限定されない。例えば、前処理の間に使用される酸は硫酸である。
【0054】
原料の酸前処理を実行する1つの方法は、米国特許第4,461,648号において設定されたプロセス条件を使用する水蒸気爆砕である(Foody、参照することにより本明細書に組み入れられる)。原料スラリーを前処理する他の方法は連続的な前処理を含み、リグノセルロース系原料が反応装置を介して持続的にポンプで送り込まれることを意味する。連続的な酸前処理は当業者によく知られており;例えば、米国特許第5,536,325号(Brink);WO2006/128304(FoodyおよびTolan);および米国特許第4,237,226号(Grethlein)を参照(それら各々は参照することにより本明細書に組み入れられる)。米国特許第4,556,430号において開示されたプロセスなどの当技術分野において公知の追加の技術を必要に応じて使用することができる(Converseら;参照することにより本明細書に組み入れられる)。
【0055】
上述されるように、前処理はアルカリにより行うことができる。酸前処理とは対照的に、アルカリによる前処理は、原料のヘミセルロース成分を加水分解しないが、むしろアルカリはヘミセルロース上に存在する酸性基と反応して基質の表面を開く。アルカリの追加は、セルロースがさらに加水分解されやすいように、セルロースの結晶構造を変更することもできる。前処理において使用できるアルカリの例は、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを含む。前処理は、好ましくは、石灰および水酸化マグネシウムなどの水中で不溶性のアルカリにより行われない。
【0056】
適切なアルカリ前処理の例は、アンモニア凍結爆砕、アンモニア繊維爆砕またはアンモニア繊維膨張(「AFEX」プロセス)である。このプロセスに従って、リグノセルロース系原料は、アンモニアまたは水酸化アンモニウムがセルロース繊維の結晶構造の変更を可能にするのに十分な時間の間、圧力容器中のアンモニアまたは水酸化アンモニウムと接触させられる。次に圧力を迅速に低下させ、アンモニアをフラッシュまたは煮沸し、セルロース繊維構造を爆砕することを可能にする(米国特許第5,171,592号、第5,037,663号、第4,600,590号、第6,106,888号、第4,356,196号、第5,939,544号、第6,176,176号、第5,037,663号および第5,171,592号を参照(各々は参照することにより本明細書に組み入れられる))。次に、フラッシュされたアンモニアは、公知のプロセスに従って回収することができる。
【0057】
当業者によく知られているように、前処理したリグノセルロース系原料は、前処理後であるが酵素的加水分解前に、水による希釈、水による洗浄、緩衝作用、濾過もしくは遠心分離、またはこれらのプロセスの組合せなどの複数の工程のいずれかによって、酵素的加水分解の前に加工することができる。
【0058】
前処理したリグノセルロース系原料は次に酵素的加水分解を行なった。用語「酵素的加水分解」によって、セルラーゼ酵素がセルロースに働いて、そのすべてまたは部分が可溶性糖質に変換するプロセスが意味される。可溶性糖質は、前処理したリグノセルロース系原料のセルロース部分に由来する水溶性ヘキソースモノマーおよび最大6つのモノマー単位のオリゴマーを含むように意味される。可溶性糖質の例は、グルコース、セロビオース、セロデキシトリン、またはその混合物を含むが、これらに限定されない。可溶性糖質は大部分はセロビオースおよびグルコースでありえる。可溶性糖質は大部分はグルコースでありえる。
【0059】
酵素的加水分解プロセスは、約80%〜約100%またはその間の任意の範囲のセルロースを可溶性糖質へ変換することができる。例えば、酵素的加水分解プロセスは、約90%〜約100%またはその間の任意の範囲のセルロースを可溶性糖質へ変換することができる。例えば、酵素的加水分解プロセスは、約98%〜約100%またはその間の任意の範囲のセルロースを可溶性糖質へ変換することができる。
【0060】
セルラーゼ混合物を使用する酵素的加水分解は、バッチ加水分解、連続的加水分解またはその組合せでありえる。加水分解は、撹拌、非混合、またはその組合せでありえる。
【0061】
例えば、酵素的加水分解は、約45℃〜約75℃の温度、またはその間の任意の温度、45、50、55、60、65、70、75℃の温度、またはその間の任意の温度、および約3.5〜約7.5のpH、またはその間の任意のpH、例えば、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5のpH、またはその間のpHで実行することができる。加水分解の開始の前の加水分解反応装置中のセルロースの初期濃度は、約4%(w/w)〜約15%(w/w)、またはその間の任意の量、例えば、4、6、8、10、12、14、15%またはその間の任意の量でありえる。主要セルラーゼ酵素のすべての組合せ供与量は、セルロース1グラムあたり約1〜約100mgのタンパク質、またはその間の任意の量、例えばセルロース1グラムあたり1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100mgのタンパク質またはその間の任意の量でありえる。加水分解は、約12時間〜約200時間の期間、またはその間の任意の時間で実行することができ、例えば、加水分解は、15時間〜100時間の期間、またはその間の任意の時間で実行するか、またはそれは、12、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160、180、200またはその間の任意の時間で実行することができる。反応条件はいかなる方式でも本発明を限定することを意味せず、当業者によって所望されるように調整できることが認識されるべきである。
【0062】
酵素的加水分解は、典型的には、加水分解反応装置中で実行される。酵素混合物は、加水分解反応装置への基質の追加の前の、その間、またはその後に、前処理したリグノセルロース系原料(「基質」としても参照される)に追加される。
【0063】
酵素混合物は、1種以上の液内培養発酵において生成され、濾過、遠心分離または当業者によく知られている他のプロセスによって発酵の終了時に細胞から分離することができる。次に、無細胞セルラーゼ含有画分は、使用前に、濃縮(例えば限外濾過を介して)維持および/または安定化させた。あるいは、主要セルラーゼは細胞から分離されないが、細胞と共に酵素的加水分解に追加される。
【0064】
セルラーゼ混合物は、水中のタンパク質の水性溶液、水中のタンパク質のスラリー、固体粉末もしくは顆粒、またはゲルでありえる。セルラーゼ酵素を含むブレンドは、緩衝液、界面活性剤、安定剤、賦形剤、または当業者によく知られている他のかかる添加剤などの添加剤を含むことができる。
【0065】
本発明の酵素混合物は、多数のソースの任意の1つに由来することができる。セルラーゼ酵素混合物の酵素のコード配列は、子嚢菌類または担子菌類からでありえる。例えば、コード配列は、トリコデルマ属の種、アスペルギルス属の種、ヒポクレア属の種、フミコーラ属の種、ニューロスポラ属の種、オルピノミセス属の種、ジベレラ属の種、エメリセラ属種およびケトミウム属の種、フザリウム属の種、ペニシリウム属の種、マグナポルテ属の種およびファネロカエテ属の種から選択された属からである。例えば、主要セルラーゼおよび補助酵素のためのコード配列はトリコデルマ・リーゼイからでありえる。
【0066】
本発明の主要セルラーゼおよび補助酵素はクローン化されて、細菌または真菌などの発現宿主として当業者に公知の任意の適切な微生物において発現することができる。微生物は真菌でありえる。遺伝子コンストラクトは、CaCl2、エレクトロポレーション、微粒子銃照射、プロトプラストのPEG仲介性融合による細胞の処理を含むが、これらに限定されない微生物形質転換の当業者に公知の任意の数の方法によって宿主微生物へと導入することができる(例えば米国特許第6,939,704号)。
【0067】
セルラーゼ酵素混合物中のすべての酵素は、生物の1つの株から分泌されることができ、分泌された酵素の「完全なブレンド」として本明細書において参照される。用語「完全なブレンド」によって、特異的な微生物により増殖培地へと細胞外に分泌されるすべてのタンパク質が意味される。本発明の1つの実施形態において、主要酵素および補助酵素は、ブレンド中に分泌された酵素の約70〜約100の間の質量%、またはその間の任意の量、例えば70、75、80、85、90、95、100%、またはその間の任意の量である。酵素混合物は、β−グルコシダーゼを含む分泌セルラーゼシステムの一部でありえる。酵素混合物は、トリコデルマ・リーゼイによって分泌された酵素の完全なブレンドを含むことができる。
【0068】
あるいは、酵素混合物は、個別にまたは異なる生物の異なる株からのサブグループにおいて発現され、酵素を組み合わせてセルラーゼ酵素混合物を製作できる。酵素混合物は、個別にまたはトリコデルマ・リーゼイの異なる株などの単一生物の異なる株からのサブグループにおいて発現され、酵素を組み合わせてセルラーゼ酵素混合物を製作できることもまた検討される。例えば、酵素はすべてトリコデルマ・リーゼイの単一株から発現させることができる。
【0069】
セルラーゼ酵素混合物は真菌のコード配列から発現させることができる。この実施形態において、コード配列は任意の真菌ソースに由来するだろう。用語「真菌」、「真菌(複数)」、「真菌の」、「子嚢菌類」、「担子菌類」および関連語(例えば「子嚢菌」および「担子菌」)は、The Fungi:An Advanced Treatise(GC Ainsworth、FK Sparrow、AS Sussman、編;アカデミックプレス社1973年)中でそのようなものとして定義された生物を含むことを意味する。
【0070】
酵素混合物内の主要セルラーゼ酵素に対する補助酵素の濃度は、公知の技術に従って主要セルラーゼ酵素または宿主細胞内の他の分泌された酵素についてコードする1つまたは複数の核酸配列を欠失させること、続いて発現される残りの酵素の量を決定することによって調整できる。核酸配列の欠失は、標的核酸配列それ自体からの配列を変更された形態でコンストラクトの中へ組入れるコンストラクトの操作によって達成することができる。発現宿主の中へのコンストラクトの形質転換後に、次に変更された標的核酸配列との組換えが起こり、天然の核酸配列を破壊する変更された配列の挿入を生じる。その配列の中断により、大部分の事例における変更された遺伝子は、機能を持たないタンパク質へと翻訳されるか、または全く翻訳されないだろう。宿主細胞からの標的核酸配列の欠失に使用できる方法の例は、米国特許第5,298,405号(参照することにより本明細書に組み入れられる)中で記述される方法を含むが、これらに限定されない。
【0071】
酵素混合物内の主要セルラーゼ酵素に対する補助酵素の濃度は、上で略述されるような主要セルラーゼ酵素についてコードする1つまたは複数の核酸の破壊をもたらすように修飾した宿主細胞を含む宿主細胞によって生成されるセルラーゼ混合物への1つまたは複数の所望される酵素を追加すること、および最終セルラーゼ酵素混合物内の各酵素の濃度を決定することによっても調整することができる。
【0072】
セルラーゼ酵素混合物中の互いに対する補助成分の比率は、発現宿主の遺伝子修飾によって酵素混合物中で調整することができる。例えば、発現宿主を遺伝的に修飾して、公知の組換え技術に従って補助酵素をコードする発現コンストラクトの導入によって、1つまたは複数の補助酵素および任意で主要セルラーゼ酵素の発現を必要に応じて調整することができる。例えば、これは、発現される補助酵素をコードする核酸配列を含むコンストラクトの複数のコピーの導入によって達成することができる。発現コンストラクトを含むプラスミドは、宿主ゲノムの中へ組込まれるように、発現宿主のゲノム中でのプラスミドの配列による組み換えを可能にする配列を含むことができる。発現される補助酵素をコードする核酸配列の複数のコピーを、宿主生物のゲノムの中へ組込み、遺伝子の発現のレベルを増加することができる。あるいは、プラスミドは、非組込み形態(この事例においては宿主ゲノムから独立して複製する)で宿主中で存続することができる。他の実施形態において、主要セルラーゼ、補助酵素またはその組合せは、内在性レベルを超えて天然の配列の発現のレベルを増加させる、標的天然の核酸配列の上流へのプロモーターの導入によっても過剰発現させることができる。
【0073】
補助酵素および主要セルラーゼ酵素の発現レベルは、発酵のpH調整によっても修飾することができる。本発明の1つの実施形態において、セルラーゼ酵素混合物は、約2〜約5のpHで発酵を行うことによって生成して主要セルラーゼ酵素および補助酵素の発現を調整する。例えば、発酵のpHは、約2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8もしくは5.0、またはその間の任意のpHでありえる。
【0074】
酵素的加水分解によって生成された可溶性糖質は、微生物によって発酵することができる。発酵産物は、発酵プラントに対する価値を生み出す任意の所望される産物を含むことができる。発酵産物の例はエタノール、ブタノールおよび乳酸である。エタノール生成のために、発酵は、糖をエタノールへ発酵させることができる1種または1種以上の微生物によって実行することができる。例えば、発酵は、グルコース、マンノース、ガラクトースおよびキシロースをエタノールへ、またはグルコース、マンノース、ガラクトース、キシロースおよびアラビノースをエタノールへ発酵させるように操作した組換えサッカロミセス属酵母によって実行することができる。キシロースをエタノールへ発酵させることができる組換え酵母は、米国特許第5,789,210号(参照することにより本明細書に組み入れられる)中に記述される。酵母は、水性溶液中にエタノールを含む培養液を生成する。乳酸生産のために、発酵は、糖を乳酸へ発酵させる微生物によって実行することができる。
【0075】
本発明の酵素混合物は、セルロース加水分解について天然に存在する酵素とは異なる組成物、および先行技術において記述されたものである。トリコデルマ・リーゼイによって分泌された天然の酵素混合物のfEG4、fSwo1およびfCip1は、それぞれ0.26、0.20および0.54であり、したがって、それぞれ図4および5中のゾーン1およびゾーン2の外側に分類される。本発明の実施形態における酵素混合物は、トリコデルマ・リーゼイによって分泌された天然の酵素混合物よりも少なくとも12%高い活性を有することができる。
【実施例】
【0076】
本発明は以下の実施例においてさらに示されるだろう。
【0077】
実施例1:トリコデルマ・リーゼイのセルラーゼからの主要セルラーゼ(CBH1、CBH2、EG1およびEG2)および補助成分(EG4、Swo1およびCip1)の精製。
トリコデルマ・リーゼイの株は、当業者に公知であるようなセルラーゼ生産を誘導する条件下で液内発酵において増殖させた(例えば、Whiteら、米国特許第6,015,703号を参照 )。トリコデルマ属タンパク質の粗製混合物は細胞によって培養液の中へ分泌された。真菌細胞はハーバーライト(Harborlite)フィルターベッドを含むガラスマイクロファイバーフィルターを介した濾過によって培養液から除去された。主要セルラーゼ(CBH1、CBH2、EG1、EG2)は、Bhikhabhaiら(1984)により記述されるようなイオン交換クロマトグラフィーによって粗製濾過液から分離された。この工程はEG1およびEG2を単離する。次にCBH1およびCBH2は、Piyachomkwanら(1997、1998)によって報告されるようなp−アミノフェニル−1−チオ−β−D−セロビオシド親和性クロマトグラフィーによってさらに精製された。補助成分を精製するために、CBH1、CBH2およびEG1を欠損するセルラーゼは、陰イオンイオン交換クロマトグラフィーによって最初に分離された。75mLの充填ベッド体積のDEAEセファロースを10mMトリス、10mMビス‐トリス(pH8.5)中で平衡化した。出発材料はこれらの条件に調整され、5mL/分でカラムに適用した。次にカラムを、600mLの10mMトリス、10mMビス‐トリス(pH7.5)、および次に300mLの10mMトリス、10mMビス‐トリス(pH6.5)により洗浄した。次に結合タンパク質は900mLの0〜150mMのNaCl勾配により溶出した。これは、UV吸光度プロファイルにおける2つの主要なピークの溶出をもたらした。第1のピークはもっぱらEG4を含むが、第2のピークはSwo1およびCip1を含んでいた。第2のピークに関連した画分をプールし、濃縮し、バイオゲル(BioGel)P−60カラムを使用するゲル濾過クロマトグラフィーによって分離した。これは、Cip1の純粋な調製物および部分的に精製されたSwo1をもたらした。Swo1を含む画分を1.8M硫酸アンモニウムにより処理して、選択的にSwo1を沈降させた。この処理からのペレットは前述されるようなゲル濾過クロマトグラフィーによって分離された。これはSwo1の実質的に純粋な形態をもたらした。精製成分を濃縮し、緩衝液は、撹拌限外濾過セル(アミコン(Amicon)社)および10kDa NMWLポリエーテルスルフォン膜を使用して、50mMクエン酸ナトリウム(pH5.0)へと交換した。
【0078】
実施例2:主要セルラーゼおよび補助成分の濃度および純度の測定。
タンパク質濃度は、Bradfordら(Analytical Biochemistry,72:248−254,(1976))の方法を使用して化学的に決定された。各々の精製タンパク質(6μg)のサンプルをSDS−PAGEによって分離し、電気泳動の後にクマシーブルー染色によって可視化した。各々のバンドの染色強度は、ケミジニアス(Chemigenius)2(シンジーン(Syngene)社)イメージングシステムを使用して、スキャニングデンシトメトリーによって定量した。トリコデルマ属セルラーゼ(12μg全タンパク質)のサンプルは参照のために含まれていた。主要成分および補助成分の相対的純度は、ゲル上の同じレーン中のすべてのバンドについて測定された全染色強度により各々の成分のバンド強度を割ることによって計算された。炭水化物結合モジュールを欠くEG2は、少量で存在したが、この調製物中の混入物とは考えられなかった。CBH1およびCBH2の相対的純度は95%以上であったが、EG1、EG2、EG4、Swo1およびCip1の相対的純度は90%以上であった。
【0079】
各成分調製物がセルラーゼの混入が欠損していることをさらに実証するために、精製したCBH1、CBH2、EG1、EG2、EG4、Swo1およびCip1を、ウサギからの成分特異的ポリクローナル抗血清を使用するウエスタンブロッティングによって解析した(図2)。タンパク質を10%SDS−PAGEによって分離し、バイオラッド(BioRad)社からのミニトランスブロット(Mini Trans−Blot)(登録商標)セルを使用して、ポリ塩化ビニリデンフッ化物(PVDF)膜に100Vで1時間転写した。ウエスタンブロッティングは、Birkettら(FEBS Letters,187(2):211−218,(1985))の方法を使用して行なった。成分特異的ポリクローナル抗血清は、当業者に公知であるように合成ペプチドを使用して生成され、その配列はトリコデルマ・リーゼイからのCBH1、CBH2、EG1、EG2、EG4、Swo1またはCip1の一次アミノ酸配列に基づいた。
【0080】
この実施例は、使用される精製方法が実質的に純粋な主要成分および補助成分を産出することを実証した。このことは、これらのセルラーゼ成分の各々についてのこれらの抗血清の特異性もまた実証した。
【0081】
実施例3:市販のトリコデルマ・リーゼイのセルラーゼにおける主要セルラーゼおよび補助酵素の濃度の決定。
市販のトリコデルマ・リーゼイのセルラーゼにおける、主要成分および補助成分の相対的濃度を、ELISAによって決定した。
【0082】
セルラーゼおよび精製された成分スタンダードはリン酸緩衝食塩水(pH7.2)(PBS)中で1〜100μg/mLで希釈し、マイクロタイタープレート(コースター(Costar)社EIA−高結合)中で4℃で一晩インキュベートした。これらのプレートは0.1%ツイーン20(PBS/ツイーン)を含むPBSにより洗浄し、次に1%ウシ血清アルブミン(PBS/BSA)を含むPBS中で室温で1時間インキュベートした。ブロッキングしたマイクロタイターウェルは、PBS/ツイーンにより洗浄した。CBH1、CBH2、EG1、EG2、EG4、Swo1およびCip1について特異的なウサギポリクローナル抗血清をPBS/BSA中で希釈し、個別のマイクロタイタープレートに追加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングしたヤギ抗ウサギ抗体により室温で1時間インキュベートした。洗浄後に、テトラメチルベンジジンを各プレートに追加し、室温で1時間インキュベートした。
【0083】
各ウェルにおいて360nmで吸光度を測定し、実施例2において開発されたCBH1、CBH2、EG1、EG2、EG4、Swo1およびCip1スタンダードを使用して、タンパク質濃度に変換した。各成分の相対的濃度は、CBH1、CBH2、EG1、EG2、EG4、Swo1およびCip1の全濃度によりこれらのタンパク質濃度を割ることによって計算された。
【0084】
市販のトリコデルマ属セルラーゼの組成物を表8中に示す。
表8:市販のトリコデルマ属セルラーゼの組成物
【表8】

【0085】
全セルラーゼタンパク質のうちで主要セルラーゼの占めるパーセンテージ(%PC)は82.7%であり、


である。
【0086】
EG4、Swo1およびCip1は、全セルラーゼタンパク質のうちの5.6%、3.3%および8.4%を占めた。
【0087】
すべての補助成分に対するEG4の画分濃度(fEG4)は、5.6%/(5.6%+3.3%+8.4%)=0.324である。
【0088】
すべての補助成分に対するSwo1の画分濃度(fSwo1)は、3.3%/(5.6%+3.3%+8.4%)=0.190である。
【0089】
すべての補助成分に対するCip1の画分濃度(fCip1)は、8.4%/(5.6%+3.3%+8.4%)=0.486である。
【0090】
この補助成分組成物は図3中に示される三成分プロット上にマッピングされ、「ベンチマークブレンド」として標識される。
【0091】
主要セルラーゼの全体のセットに対するCBHの濃度(%CBH)は、57%(47.1%/82.7%)CBH1+29%(24.0%/82.7%)CBH2=86%であり、

である。
【0092】
すべてのCBHに対するCBH2の濃度(fC2)は、29%/(57%+29%)=0.337である。
【0093】
主要セルラーゼの全体のセットに対するEGの濃度は14%である。すべての主要(EG1+EG2)EGに対するEG2の濃度(fE2)は、7%/(7%+7%)=0.500である。
【0094】
実施例4:前処理したリグノセルロース系原料に対するセルラーゼブレンドのセルロース加水分解活性の測定。
EG4、Swo1およびCip1のブレンドを、表9中に示される比率に従って調製した。これらの補助成分ブレンドを使用して、CBH1、CBH2、EG1およびEG2の混合物を補完した。主要セルラーゼブレンドの組成物は、32%のCBH1、47%のCBH2、17%のEG1および4%のEG2であった。これは、米国公報の2008/0057541A1記述される方法によって同定された主要セルラーゼの最適化されたブレンドである。補助成分ブレンドが全タンパク質のうちの18%(%AC)を占め、%PC=82%であるように補完は行なわれた。主要セルラーゼおよび補助セルラーゼのこれらの混合物は、0.25mLの混合セルロース加水分解分析において検査された。セルラーゼ混合物を0.5%の安息香酸ナトリウムを含むクエン酸緩衝液中で希釈し、黒色麹菌からのβ−グルコシダーゼ調製物により補完し、酸により前処理した麦わらをインキュベートした。前処理は、Foody、米国特許第4,461,648号の通りに実行した。インキュベーションは50℃で24時間行い、標的セルロース転換レベルは70%以上であった。酵素活性は、標的セルロース転換レベルを到達するのに必要な酵素の量の決定によって計算された。これらの活性は、補助セルラーゼの非存在下において検査された主要セルラーゼブレンドの活性に対して正規化された(%PC 100%)。これらの分析のすべてにおいて、検査された全タンパク質質量は同じであった。セルラーゼ活性測定の標準誤差はモデル比較アプローチを使用して計算した(Motulsky,H.およびA.Christopoulos(2004)Fitting Models to Biological Data Using Linear and Nonlinear Regression:A Practical Guide to Curve Fitting.オックスフォード大学出版局社(Oxford University Press,Inc.)、ニューヨーク。351pp)。T−検定を使用して、各補助成分ブレンドの活性を主要セルラーゼ対照、ベンチマークブレンド、および至適ブレンドと比較した。0.05以下のP値を統計的に有意であると判断した。
【0095】
三成分ブレンド空間にわたる重み付き平均を適用して、活性データを平滑化した。与えられたポイントについて正規化された活性データは、その最も近接する6ポイントで平均化された。問題になっているポイントは重み付けw=1.00を与えられ、隣接する6ポイントは各々、重み付き平均(xw)についての式、xw=Σwii/Σwi(式中、下付き添字iは、上述された7つのポイントすべてにわたり計上するカウント変数を示し、xiおよびwiは、それぞれi番目のポイントの正規化された活性および重み付けを示す)においてw=0.15の重み付けを与えられた。
【0096】
各補助成分ブレンドに関連する加水分解活性は表9中で示され、図3中でfEG4、fSwo1およびfCip1の関数としてプロットされる。
表9:異なるfEG4、fSwo1およびfCip1の補助セルラーゼ混合物により補完された主要セルラーゼ混合物の相対的活性。
【表9】







aEG4=%EG4/(%EG4+%Swo1+%Cip1)
bSwo1=%Swo1/(%EG4+%Swo1+%Cip1)
cCip1=%Cip1/(%EG4+%Swo1+%Cip1)
dブレンド18はカラム1の通りである
【0097】
EG4単独(1.14)の追加は、主要セルラーゼブレンド(1.00)と比較して、セルロース加水分解活性(P<0.001、表8)の有意な改良をもたらした。Swo1単独(1.06)の追加は、主要セルラーゼブレンドと比較して、セルロース加水分解活性のわずかであるが有意な(P=0.005)改良をもたらした。しかしながら、EG4またはSwo1の単独のどちらの追加もベンチマークブレンド(1.16)よりも高い活性をもたらさなかった。Cip1単独(1.02)の追加は、主要セルラーゼ対照と比較して、酵素ブレンドのセルロース加水分解活性を有意に促進しなかった。
【0098】
セルロース加水分解活性に対する、Cip1およびSwo1の組合せ追加の効果は最小だった。等量のCip1およびSwo1を含むブレンド(1.07)は、Swo1単独(1.06)に類似する活性を有するが、Cip1単独(1.02)よりも高かった。
【0099】
等量のSwo1およびEG4の組合せ(1.26)は、ベンチマークブレンド(1.16)と比較して、セルラーゼ混合物の活性を有意に(P=0.008)改良した。EG4およびCip1の同等量の組合せ追加(1.21)は、ベンチマークブレンドと比較して加水分解成績を改良したが、これは統計的有意性の境界であった。理論に束縛されるものではないが、EG4は、Swo1およびCip1の両方と協調して働いて、主要セルラーゼ混合物のセルロース加水分解活性を促進しうる。
【0100】
個々の補助成分およびすべての二成分混合物の追加からの結果を、等式1を使用してモデル化し、最初に相乗作用パラメーター(α、βおよびγ)のための値を決定し、次にモデル至適条件補助成分組成物を計算した。これらの結果を表10中に示す。
等式1:



(式中、
Tは、酵素ブレンドの全セルロース加水分解活性であり;
PCは、酵素ブレンド中の、CBH1、CBH2、EG1およびEG2の全パーセンテージであり;
PCは、主要成分ブレンド単独の活性であり;
EG4は、EG4の画分濃度であり;
EG4は、Swo1およびCip1の非存在下における主要セルラーゼのブレンドへのEG4の追加に関連した活性であり;
Swo1は、Swo1の画分濃度であり;
Swo1は、EG4およびCip1の非存在下における主要セルラーゼのブレンドへのSwo1の追加に関連した活性であり;
Cip1は、Cip1の画分濃度であり;
Cip1は、EG4およびSwo1の非存在下における主要セルラーゼのブレンドへのCip1の追加に関連した活性であり;
αは、EG4とSwo1との間の相乗作用を表わし;
βは、EG4とCip1との間の相乗作用を表わし;
γは、Swo1とCip1との間の相乗作用を表わす。)
表10:補助成分のモデル至適条件比率の決定
【表10】


モデル至適条件は、fEG4=0.564、fSwo1=0.314およびfCip1=0.122からなり、図3中で「モデル至適条件ブレンド」として標識される。この組成物は、実施例3において解析された市販のトリコデルマ属セルラーゼ(ベンチマークブレンド)の組成物とは実質的に異なっていた。
【0101】
補助成分の三成分ブレンド空間の検査において、至適セルロース加水分解活性は1.36であり、fEG4=0.417、fSwo1=0.416およびfCip1=0.167に関連した。
【0102】
モデル至適補助酵素ブレンドおよび経験的至適補助酵素ブレンドの両方は、Cip1は低濃度であるが高濃度のEG4およびSwo1のを含んでいた。これとは対照的に、市販のトリコデルマ属セルラーゼ中のfCip1は0.486であり、モデル至適条件(0.122)および経験的至適条件(0.167)の両方よりも実質的に高かった。この三成分補助成分ブレンド(fEG4=0.324、fSwo1=0.190およびfCip1=0.486)に関連したセルロース加水分解活性は1.16であり、経験的至適条件(1.36)よりも有意に低い(P<0.001)。0.333以上のfCip1による補助成分ブレンド空間において検査された他のブレンドもまた、経験的な至適条件混合物よりも有意に低い活性を有しており、ベンチマークブレンドよりも有意によくなかった。
【0103】
このことは、補助成分(EG4、Swo1およびCip1)の比率の調整によって、前処理したリグノセルロース系基質に対する市販のトリコデルマ属セルラーゼの活性を改良できることを実証する。主要セルラーゼのブレンドに単独で追加された場合、補助成分はベンチマークブレンドよりも低い活性を有していた。このことは、主要セルラーゼ混合物とともに相乗的に働く複数の補助成分に注目する必要性を強調する。市販のトリコデルマ属セルラーゼ中に存在する比率から本明細書において決定された至適条件比率へ補助成分比率を変化させることにおいて、本発明者は、リグノセルロースの加水分解の速度を17.2%改良した。
【0104】
図4は、図3から修飾した三成分プロットである。このグラフにおいて、1.23〜1.36の間の活性の範囲の補助成分混合物のみが示されるが、1.23未満の活性を持つ補助成分ブレンドは除去されている。これらの酵素混合物はベンチマークブレンドよりも実質的に高い活性を有する。ベンチマークブレンドの位置は1.23以下の活性を有しているにもかかわらず、参照のために示される。この図において示される補助成分混合物を表わすブレンド空間はゾーン1として参照され、ベンチマークブレンドよりも高い活性を持つ酵素混合物を表わす。
【0105】
図5は、図4から修飾した三成分プロットである。このグラフにおいて、1.30〜1.36の間の活性の範囲の補助成分混合物のみが示されるが、1.30未満の活性を持つ補助成分ブレンドは除去されている。ベンチマークブレンドの位置は、参照のために再び示される。この図において示される補助成分混合物を表わすブレンド空間はゾーン2として参照され、ベンチマークブレンドと比較して、さらに促進された活性を持つ酵素混合物を表わす。
【0106】
補助成分の至適混合物は、fEG4=0.417、fSwo1=0.416およびfCip1=0.167からなる。
【0107】
実施例5:全主要セルラーゼのパーセンテージにおける成分混合物の変化の比較。
次に、全主要成分のパーセンテージ(%PC)において変化させた主要成分および補助成分を含む様々なセルラーゼ混合物の加水分解活性を検査した。主要セルラーゼ混合物の固有の組成物を固定し、32%のCBH1、47%のCBH2、17%のEG1および4%のEG2である。補助成分ブレンドの固有の組成物も固定し、42%のEG4、42%のSwo1および16%のCip1である。これらの2つの混合物は異なる%PCで組み合わせられ、それ以外は実施例4中で記述されているように前処理した麦わらを検査した。これらの分析の結果を図6中に示す。
【0108】
市販のトリコデルマ属セルラーゼの%PCは、「ベンチマーク比率」として本明細書において標識され、82.7%だった。約90%の%PCは最も高いセルロース加水分解活性をもたらした。これはベンチマーク比率と比較して、わずかに改良された。%PCが約90%よりも高かったならば、セルロース加水分解活性は急速に減少した。これらの結果は、%PCは、セルロース加水分解活性の著しい変化なしに、市販のトリコデルマ属セルラーゼ中に存在するものからおよそ75%まで実質的に減少させることができることも実証する。市販のトリコデルマ属セルラーゼ中の組み合わせた補助成分組成物の増加は、他のリグノセルロース系原料、および異なる前処理条件に由来したものの加水分解のために有益であることが証明されうる。これは、理論によって限定されないが、本明細書において使用される前処理した基質と比較した重合度、結晶度および/または残留ヘミセルロースまたはリグニン含量の変化に起因するかもしれない。
【0109】
実施例6:長期間にわたって前処理したリグノセルロース系原料に対する主要セルラーゼブレンドの加水分解活性の測定。
実施例3からのfEG4、fSwo1およびfCip1値についてのベンチマーク値を持つ補助成分のブレンドを、約17%活性が改良された補助成分の改良ブレンドに対して、実施例4中に記述されるように、より長いタイムコースのセルロース加水分解分析で比較した。改良ブレンドは、fEG4=0.417、fSwo1=0.416およびfCip1=0.167の組成物であった。両方の補助成分ブレンドは、32%のCBH1、47%のCBH2、17%のEG1および4%のEG2からなる主要セルラーゼのブレンドに追加された。主要セルラーゼのブレンドは、比較のために、補助成分の追加なしに、単独で検査された。これらの3つのブレンドは、1グラムのセルロースあたり6mg酵素で与えられ、100IU/gセルロースで黒色麹菌からのβ−グルコシダーゼ調製物がさらに追加された。
【0110】
ブレンドは、0.1%安息香酸ナトリウムを含む50mMクエン酸塩(pH5.0)中の25g/lのセルロースと共に連続的な旋回振盪により50℃で194時間インキュベートした。0.7mLのアリコートを様々なタイムポイントで採取し、溶解可能な部分のグルコース濃度を分析し、画分セルロース転換の測定へと転換した。次に転換データは、フィットの残差二乗和の最小化を使用して、追加の線形項を持つ直角双曲線にフィットさせる。等式は以下の形式であった。転換=(最大値*時間)/(2分の1最大値+時間)+c*時間。データの両方のセットは、特有の最大値および2分の1最大値ならびに変数cの共有の値により全体的にフィットさせた。記述されるようにこの実験を3回繰り返した。
【0111】
代表的な実験からの結果を図7中に示す。この図は、各タイムポイントでセルロース転換の程度がベンチマークブレンドと比較して、至適補助成分ブレンドについてより高いことを実証する。3つの重複した実験の結果は、0.75の標的セルロース転換を到達するのに必要な時間の計算によってさらに解析された。これらの結果を表11中に示す。補助成分の至適混合物を含む酵素ブレンドはわずか38時間しか必要としなかったが、補助成分のベンチマークブレンドを含む酵素ブレンドは、この標的に到達するために54時間を必要とした。これは30%の時間の節約に対応し、統計的に有意だった(P<0.001、スチューデントのT−検定)。
表11:0.75の標的基質変換を達成するのに酵素ブレンドに必要な時間。
【表11】

【0112】
すべての引用は、参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0113】
本発明は1種以上の実施形態に関して記述されてきた。しかしながら、請求項において定義されるような本発明の範囲から逸脱することなしに、多数の変形および修飾を行なえることは当業者に明らかだろう。
【0114】
実施例7:pH5.0およびpH3.5でのT.リーゼイ培養によるセルラーゼ混合物の生成。
胞子のコンフルエントなローンが得られるまで、T.リーゼイ株P59Gを28〜30℃でポテトデキストロース寒天培地上で増殖させた。胞子を回収し、750mlのバークレー培地(10g/L グルコース、1.4g/L(NH42SO4、2.0g/L KH2SO4、0.31g/L MgSO4・7H2O、0.53g/L CaCl2;5.1g/L 乾燥コーンスティープ、5mg/L FeSO4・7H2O;0.8mg/lMnSO4・H2O、0.7mg/lZnSO4・7H2O)を、2Lのバッフル付きのフラスコ中での接種に使用した。28℃および150rpmで3日間の増殖させた後に、この培養を使用して、初期組成物(13g/L グルコース、2.2g/L(NH42SO4、1.39g/L KH2SO4、0.7g/L MgSO4・7H2O、0.185g/L CaCl2、6g/L 乾燥コーンスティープ、3.75mg/L FeSO4・7H2O;1.2mg/L のMnSO4・H2O、1.05g/L ZnSO4・7H2O)の10Lの発酵培地に接種した。セルラーゼ誘導カクテル(全炭水化物の関数として、56%ケンチオビオース、14%ソフォロース、6%セロビオース、10%トレハロース、6%マルトトリオース、4%グルコースおよび14%他の炭水化物を含む)を使用する流加好気性発酵を、pH5.0またはpH3.5のいずれかで、14Lのニューブランズウィック(New Brunswick)社ミクロファーム(Microferm)発酵槽中で28〜30℃で6日間実行した。6日後に、培養をハーバーライトによって濾過し、培養濾液をpH4.5に調整し、0.5%安息香酸塩と共に保存して微生物増殖を妨害した。
【0115】
排他的な特性または権利が主張される本発明の実施形態は、特許請求の範囲に定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理したリグノセルロース系原料をセルラーゼ酵素混合物により酵素的に加水分解することを含む、前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質に変換するためのプロセスであって、前記セルラーゼ酵素混合物が、EG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素を含み、
前記EG4補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.09〜0.91(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在し、
前記スウォレニン補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.09〜約0.91(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在し、
前記Cip1補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、0〜約0.42(w/w)の画分濃度(fCip1)で存在する、プロセス。
【請求項2】
前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、前記EG4補助酵素が、約0.25〜0.83(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在し、前記スウォレニン補助酵素が、約0.09〜約0.66(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在し、前記Cip1補助酵素が、0〜約0.33(w/w)の画分濃度(fCip1)で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記セルラーゼ酵素混合物が、CBH1、CBH2、EG1およびEG2主要セルラーゼ酵素を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記セルラーゼ酵素混合物が、CBH1、CBH2、EG1およびEG2主要セルラーゼ酵素を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記主要セルラーゼ酵素が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約70〜約95質量パーセントのセルラーゼ酵素混合物内の組合せ含有量を有し、前記補助酵素が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約5〜約30質量パーセントのセルラーゼ酵素混合物内の組合せ含有量を有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記セルラーゼ酵素混合物内の前記主要セルラーゼ酵素の組合せ含有量が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約70〜約90質量パーセントであり、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する前記補助酵素のセルラーゼ酵素混合物内の組合せ含有量が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約10〜約30質量パーセントである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する全タンパク質に対して測定して、約70〜約100質量パーセントのセルラーゼ酵素混合物内の組合せ含有量を有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項8】
前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するCBH1、CBH2、EG1およびEG2酵素に対して測定して、前記CBH1およびCBH2酵素が、約55〜約85質量パーセントの組合せ含有量を有し、前記EG1およびEG2酵素が、約15〜約45質量パーセントの組合せ含有量を有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項9】
前記CBH1およびCBH2酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するCBH1およびCBH2酵素の組合せ含有量に対して測定して、約0.25〜約0.75(w/w)の画分濃度で各々存在する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記EG1およびEG2の酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するEG1およびEG2の酵素の組合せ含有量に対して測定して、約0.35〜約0.95(w/w)および約0.05〜約0.65(w/w)の各々の画分濃度でそれぞれ存在する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記EG4酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.33〜約0.50(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項12】
前記スウォレニン酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.33〜約0.58(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項13】
前記Cip1が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.08〜約0.25(w/w)の画分濃度(fCip1)で存在する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項14】
前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が真菌のソースに由来する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項15】
前記真菌ソースが、子嚢菌または担子菌の真菌である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記真菌ソースが、トリコデルマ属の種、アスペルギルス属の種、ヒポクレア属の種、フミコーラ属の種、ニューロスポラ属の種、オルピノミセス属の種、ジベレラ属の種、エメリセラ属の種、ケトミウム属の種、フザリウム属の種、ペニシリウム属の種、マグナポルテ属の種、およびファネロカエテ属の種からなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記真菌ソースが、トリコデルマ・リーゼイである、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、生物に内在性であるコード配列の発現によって生物から得られる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項19】
前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、生物に異種であるコード配列の発現によって生物から得られる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項20】
前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、トリコデルマ・リーゼイ内の発現によって生成される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項21】
酵素的に加水分解する前記工程において、前記前処理したリグノセルロース系原料中のセルロースの少なくとも80質量%が、可溶性糖質に変換される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項22】
前記酵素的加水分解工程の後に、エタノール、乳酸、ブタノール、またはその組合せを可溶性糖質から生成する発酵工程が後続する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記セルラーゼ酵素混合物が、微生物ソースに由来する分泌酵素の完全なブレンドであり、前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、前記ブレンド中の分泌酵素の約70〜約100質量%を構成し、前記分泌酵素が、ブレンド中の分泌酵素の0〜約30質量%を構成する追加の非セルラーゼ酵素を含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項24】
前記セルラーゼ酵素混合物が、β−グルコシダーゼを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項25】
前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質へ加水分解するためのセルラーゼ酵素混合物であって、EG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素を含み、
前記EG4補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.09〜約0.91(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在し、
前記スウォレニン補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.09〜約0.91(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在し、
前記Cip1補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、0〜約0.42の画分濃度(fCip1)で存在する、
セルラーゼ酵素混合物。
【請求項26】
前記EG4補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.25〜約0.83(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在し、
前記スウォレニン補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.09〜約0.66(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在し、
前記Cip1補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、0〜約0.33の画分濃度(fCip1)で存在する、
請求項25に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項27】
前記セルラーゼ酵素混合物が、CBH1、CBH2、EG1およびEG2主要セルラーゼ酵素を含む、請求項26に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項28】
前記主要セルラーゼ酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約70〜約95質量パーセントのセルラーゼ酵素混合物内の組合せ含有量を有し、前記補助酵素が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約5〜約30質量パーセントのセルラーゼ酵素混合物内の組合せ含有量を有する、請求項27に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項29】
前記セルラーゼ酵素混合物内の前記主要セルラーゼ酵素の組合せ含有量が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約70〜約90の質量パーセントであり、前記セルラーゼ酵素混合物内の前記補助酵素の組合せ含有量が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する主要セルラーゼ酵素および補助酵素に対して測定して、約10〜約30質量パーセントである、請求項28に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項30】
前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、セルラーゼ酵素混合物中に存在する全タンパク質に対して測定して、約70〜約100質量パーセントの組合せ含有量を有する、請求項27に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項31】
前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するCBH1、CBH2、EG1およびEG2酵素の組合せ含有量に対して測定して、前記CBH1およびCBH2酵素が約55〜約85質量パーセントの組合せ含有量を有し、前記EG1およびEG2酵素が約15〜約45質量パーセントの組合せ含有量を有する、請求項27に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項32】
前記CBH1およびCBH2酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するCBH1およびCBH2の酵素の組合せ含有量に対して測定して、約0.25〜約0.75(w/w)の画分濃度で各々存在する、請求項31に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項33】
前記EG1およびEG2酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するEG1およびEG2酵素の組合せ含有量に対して測定して、約0.35〜約0.95(w/w)および約0.05〜約0.65(w/w)の各々の画分濃度でそれぞれ存在する、請求項31に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項34】
前記EG4酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.33〜約0.50(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在する、請求項26に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項35】
前記スウォレニン酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.33〜約0.58(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在する、請求項26に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項36】
前記Cip1が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在するEG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素に対して測定して、約0.08〜約0.25(w/w)の画分濃度(fCip1)で存在する、請求項26に記載のセルラーゼ酵素組成物。
【請求項37】
前記酵素混合物が微生物ソースに由来する分泌酵素の完全なブレンドであり、前記主要セルラーゼ酵素および前記補助酵素が、ブレンド中の分泌酵素の約70〜約100質量パーセントを構成し、前記分泌酵素が、ブレンド中の分泌酵素の0〜30質量%を構成する追加の非セルラーゼ酵素を含む、請求項26に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項38】
前記酵素混合物が、β−グルコシダーゼを含む、請求項26に記載のセルラーゼ酵素混合物。
【請求項39】
前処理したリグノセルロース系原料をセルラーゼ酵素混合物により酵素的に加水分解することを含む、前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質に変換するためのプロセスであって、前記セルラーゼ酵素混合物が、EG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素を含み、
前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、
前記EG4補助酵素が約0.25〜0.83(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在し、
前記スウォレニン補助酵素が約0〜約0.66(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在し、
前記Cip1補助酵素が0〜約0.33(w/w)の画分濃度(fCip1)で存在する、プロセス。
【請求項40】
前処理したリグノセルロース系原料を可溶性糖質へ加水分解するためのセルラーゼ酵素混合物であって、EG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素を含み、
前記EG4補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0.25〜約0.83(w/w)の画分濃度(fEG4)で存在し、
前記スウォレニン補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、約0〜約0.66(w/w)の画分濃度(fSwo1)で存在し、
前記Cip1補助酵素が、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して、0〜約0.33の画分濃度(fCip1)で存在する、セルラーゼ酵素混合物。
【請求項41】
EG4、スウォレニンおよびCip1補助酵素を含むセルラーゼ酵素混合物を生成する方法であって、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して約0.25〜0.83(w/w)の画分濃度(fEG4)のEG4、前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して約0〜約0.66(w/w)の画分濃度(fSwo1)のスウォレニン酵素、および前記セルラーゼ酵素混合物中に存在する補助酵素のすべてに対して測定して0〜約0.33(w/w)の画分濃度(fCip1)のCip1酵素を生成するように、1種以上の微生物から前記セルラーゼ酵素混合物を発現することを含む方法。
【請求項42】
前記1種以上の微生物を遺伝子組換えして、前記1種以上の微生物によって分泌されるEG4、スウォレニン、Cip1またはその組合せのレベルを調整する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記1種以上の微生物を1種以上の主要セルラーゼ酵素の欠失によって遺伝子組換えして、主要セルラーゼに対するEG4、スウォレニン、Cip1またはその組合せの発現レベルを調整する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記セルラーゼ酵素混合物を約2〜約5の間のpHで発酵を行うことにより生成して、お互いに対するEG4、スウォレニン、Cip1もしくはその組合せの発現レベルまたは主要セルラーゼ酵素に対する補助成分の発現レベルを調整する、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2010−536391(P2010−536391A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522151(P2010−522151)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001546
【国際公開番号】WO2009/026722
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509047409)アイオジェン エナジー コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】