説明

補正方法、表示装置及びコンピュータプログラム

【課題】一定の色彩表現を厳密に実現する補正を行なう補正方法及び該補正方法を実施する表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置1に内蔵される記憶部に、複数の異なる種類の光源毎のスペクトル分布情報と、表示部10の表示面での反射率を波長毎に示す反射率分布とを記憶しておく。一又は複数の光源のスペクトル分布情報を選択し、光センサ12によって測定される環境光Aの光強度と、記憶してある反射率分布とから反射光Rのスペクトル分布を求めて三刺激値を算出する。反射光Rと表示面からの表示光Eとが合成された光の三刺激値が最終的な目標値となる表示光Eの三刺激値の目標値を求め、表示光Eの三刺激値を求められた目標値とする画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求める。そして、表示部10に画像を表示する場合、画像信号を求められた補正量を用いて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に入力される画像信号が表わす色成分毎の強度を、所望の階調特性に補正する補正方法に関し、特に、環境光によらない一定の色彩表現をより厳密に実現する補正を行なう補正方法、表示装置及びコンピュータを前記表示装置として機能させるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(Liquid Crystal Display)モニタ、PDP(Plasma Display Panel)モニタ、有機EL(Electro Luminescence)モニタ、CRT(Cathode Ray Tube)モニタ、電子ペーパ等の表示装置は、LCDモニタであれば個々の製品の液晶パネルの特性、PDPモニタであれば素子毎の発光特性、及び各パネルに印加する電圧を発生させる回路の特性等の種々の特性を有する。これにより、表示装置の階調特性、色彩表現は個々の表示装置毎に異なる。
【0003】
表示装置をX線にて撮像された画像データを表示する等の医療用途で用いる場合、及び、DTP(Desk Top Publishing)、印刷又はデザイン用途で用いる場合など、表示装置で厳密な色彩表現が可能であることが必要とされる場合がある。この場合、同じ画像データを表示しているにも拘らず、表示装置個々によって異なる階調表現又は異なる色彩表現で観察されること、そして表示装置と印刷物とで異なる階調表現又は異なる色彩表現で観察されることは問題である。
【0004】
そこで、個々の表示装置の種々の特性を吸収して同じ階調表現及び色彩表現で画像が観察できるような補正を実現するカラーマネージメントシステム(CMS:Color Management System)を実装した表示装置がある。このような表示装置では、表示装置の表示面の色度を測定する色度センサを用い、表示装置に較正用の画像を表わす画像信号を入力し、入力した画像信号が含む色成分毎の強度と、入力した画像信号により実際に表示される画像の色度とを比較して較正を行なう。
【0005】
しかしながら、較正をする際に用いる色度センサが接触型の色度センサである場合、表示面からの表示光のみの色度が測定される。ユーザが表示装置を用いて表示画面を観る場合、ユーザへは表示光と、周囲の環境光が表示面によって反射された反射光とが合わさってユーザにより観察される。したがって、表示光の色彩表現を個々の表示装置で同一としても、環境光の光源が異なることによって又は昼夜によって、反射光の色度が変化した場合は同じ画像データを表示しても異なる色味で観察される。
【0006】
非接触型の色度センサを用い、表示光及び反射光を合わせた光の色度を測定して較正することもできるが、異なる光源の環境毎、場所を変える都度、又は時間の経過にしたがって環境光の光強度及び色度が変化する都度に較正が必要となり非常に煩雑である。
【0007】
これに対し特許文献1には、環境光(周囲の光)の照度(光強度)及び色度を測定し、測定した照度及び色度、並びに、表示面での単一の反射係数から反射光の三刺激値を推定して求め、求められた三刺激値に基づいて表示面に表示させる色度を変化させる技術が開示されている。
【特許文献1】国際公開第99/23637号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている技術により、環境光の照度及び色度によらずユーザが観る画像の色彩表現を、ある程度一定とすることは可能である。
【0009】
しかしながら、環境光の色度を測定するとしても、複数の波長に対する光強度の分布、即ちスペクトル分布が異なる環境光に対してほぼ同一の色度が得られる場合がある。環境光のスペクトル分布が異なる場合は反射光のスペクトル分布は異なる。反射光の三刺激値は、スペクトル分布が高精度に求まらなければ厳密に求めることはできないはずである。したがって特許文献1に開示されている技術のように、環境光の色度に環境光の強度成分を与え、更に単一の反射係数をかける演算をしても反射光の三刺激値を厳密に求められない。つまり、環境光についても表示面での反射係数の情報についても、複数の波長成分についての分布情報を用いて反射光の複数の波長成分についての情報が得られなければ厳密に反射光の三刺激値を推定することは難しい。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、表示手段へ入力する画像信号を補正するに際し、複数の波長についての反射光の情報を考慮することにより、環境光の違いによらない一定の色彩表現をより厳密に実現するための補正を行なうことができる補正方法、表示装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、三刺激値を用いることによって複数の波長及び異なる強度の反射光の影響を考慮して一定の色彩表現を高精度に実現する補正を行なう補正方法及び表示装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、複数の波長についての反射光情報として特定の情報を記憶しておき選択して用いる構成とすることにより、記憶容量を節約しつつ、詳細な測定を行なうことなしに簡易な構成で表示手段における一定の色彩表現をより厳密に実現するための補正が可能な補正方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、より現実に近い反射光の色彩情報を求めることによって簡易な構成で表示手段における一定の色彩表現をより厳密に実現する補正が可能な補正方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、自動的に環境光の光源が推定され、現実に即した一定の色彩表現を厳密に実現することが可能な補正方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、ユーザによる設定を受け付けてより周辺環境に合わせた一定の色彩表現を厳密に実現することが可能な補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明に係る補正方法は、画像を表示する表示部に入力される画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正する方法において、環境光の光源の種類別に、及び、前記光源からの光の複数の波長成分毎に、前記光源からの光が前記表示部の表示面で反射した場合の光の情報を示す反射光情報を記憶しておき、環境光の光強度を測定し、前記反射光情報の内から、一又は複数の種類の光源に対応する反射光情報を選択し、測定した光強度、及び、選択した反射光情報を用い、環境光が前記表示部の表示面へ入射した場合の反射光の色彩を表わす反射光色彩情報を求め、求めた反射光色彩情報に基づき、前記表示手段で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光と前記反射光とを合わせた光の色彩が所定の色彩となる前記表示光の色彩を表わす目標色彩情報を求め、前記表示光の色彩を前記目標色彩情報が表わす色彩とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求め、求めた補正量に基づいて画像信号が含む色成分毎の強度を補正することを特徴とする。
【0017】
第2発明に係る補正方法は、第1発明における前記色彩情報として三刺激値を求めることを特徴とする。
【0018】
第3発明に係る補正方法は、第1発明又は第2発明における前記反射光情報として、光源からの光のスペクトル分布情報を記憶しておき、更に、前記表示部の表示面による光の反射率を複数の波長成分毎に記憶しておくことを特徴とする。
【0019】
第4発明に係る補正方法は、第1発明又は第2発明における前記反射光情報として、光源からの光のスペクトル分布と、前記光の波長成分夫々の前記表示部の表示面による反射率との積により算出される反射光スペクトル分布情報を記憶しておくことを特徴とする。
【0020】
第5発明に係る補正方法は、反射光情報を選択した場合、測定した光強度に基づき反射光情報の強度比率を求め、前記強度比率により重み付けした反射光情報を合成して反射光色彩情報を求めることを特徴とする。
【0021】
第6発明に係る補正方法は、測定した一又は複数の波長の光強度に基づき、反射光情報を選択することを特徴とする。
【0022】
第7発明に係る補正方法は、反射光情報の選択を受け付けることを特徴とする。
【0023】
第8発明に係る表示装置は、画像を表示する表示部と、該表示部へ入力する画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正する補正手段とを備える表示装置において、環境光の光源の種類別に、及び、前記光源からの光の複数の波長成分毎に、前記光源からの光が前記表示部の表示面で反射した場合の光の情報を示す反射光情報を記憶する手段と、環境光の光強度を測定する測定手段と、前記反射光情報の内から、一又は複数の種類の光源に対応する反射光情報の選択を受け付ける手段と、前記測定手段が測定した光強度、及び、選択された反射光情報を用い、環境光が前記表示部の表示面へ入射した場合の反射光の色彩を表わす反射光色彩情報を求める手段と、求めた反射光色彩情報に基づき、前記表示部で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光と前記反射光とを合わせた光の色彩が所定の色彩となるための前記表示光の色彩を表わす目標色彩情報を求める手段と、前記表示光の色彩を前記目標色彩情報が表わす色彩とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求める手段とを備え、前記補正手段は、求められた補正量に基づいて補正するようにしてあることを特徴とする。
【0024】
第9発明に係る表示装置は、前記反射光情報として、光源からの光のスペクトル分布情報を記憶しておき、更に、前記表示部の表示面での光の反射率を複数の波長成分毎に記憶しておくようにしてあり、前記選択手段が選択した反射光情報に対応するスペクトル分布情報に前記測定手段が測定した光強度に基づく係数を乗じた光強度分布を求める手段と、求めた光強度分布、及び、複数の波長成分毎に記憶してある反射率に基づき反射光色彩情報を求める手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
第10発明に係る表示装置は、前記反射光情報として、前記光の波長成分夫々の前記表示部の表示面による反射率との積により算出される反射光スペクトル分布情報を記憶する手段と、前記選択手段が選択した反射光情報に対応する反射光スペクトル分布情報に前記測定手段が測定した光強度に基づく係数を乗じて反射光色彩情報を求める手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
第11発明に係る表示装置は、画像を表示する表示部と、該表示部へ入力する画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正する補正手段とを備える表示装置において、環境光の光源の種類別に、前記光源からの光のスペクトル分布情報を記憶する手段と、前記表示部の表示面での光の反射率を複数の波長成分毎に記憶する手段と、環境光の光強度を測定する測定手段と、一又は複数の光源の選択を受け付ける手段と、選択された光源からの光のスペクトル分布情報に前記測定手段が測定した光強度に基づく係数を乗じた光強度分布、複数の波長成分毎の反射率、及び等色関数の積を色成分毎に積分して反射光の三刺激値を算出する手段と、所定の目標三刺激値から前記反射光の三刺激値を減算する手段と、前記表示部で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光の三刺激値を、減算により得られた値とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求める手段とを備え、前記補正手段は、求められた補正量に基づいて補正するようにしてあることを特徴とする。
【0027】
第12発明に係るコンピュータプログラムは、表示部に画像を表示させる手段を有するコンピュータに、環境光の光源の種類別に、及び、前記光源からの光の複数の波長成分毎に、前記光源からの光が前記表示部の表示面で反射した場合の光の情報を示す反射光情報を記憶させておき、前記反射光情報に基づき、画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正させるコンピュータプログラムであって、前記反射光情報の内から一又は複数の種類の光源に対応する反射光情報を選択するステップ、環境光の光強度、及び、選択した反射光情報を用い、環境光が前記表示部の表示面へ入射した場合の反射光の色彩を表わす反射光色彩情報を求めるステップ、求めた反射光色彩情報に基づき、前記表示手段で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光と前記反射光とを合わせた光の色彩が所定の色彩となる前記表示光の色彩を表わす目標色彩情報を求めるステップ、前記表示光の色彩を前記目標色彩情報が表わす色彩とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求めるステップ、並びに、求めた補正量に基づいて画像信号が含む色成分毎の強度を補正するステップを実行させることを特徴とする。
【0028】
第1発明、第8発明及び第12発明では、画像を表示する表示手段(表示部)の表示面により光源からの光が反射された場合の反射光の情報を複数の波長成分について含む反射光情報が複数の光源毎に記憶され、環境光に応じて選択される波長光情報と環境光の光強度とに基づいて、環境光が表示面に反射した場合の反射光の色彩情報が求められる。反射光の色彩情報は、複数の波長成分についての反射光情報を用いて求められるので、波長毎に表示面での反射率が異なる等の厳密な情報を考慮した反射光の色彩情報が得られる。これにより、表示面から表示光と反射光とが合わさった光の色彩を所定の色彩とするためにあるべき表示光の色彩が厳密に求められる。そして、表示光の色彩を目標の色彩とするための補正量が求められ、画像信号を表示手段へ入力する際には求められた補正量に基づいて補正がされる。
【0029】
第2発明及び第11発明では、反射光及び表示光の色彩を表わす色彩情報として三刺激値が用いられる。
【0030】
第3発明、第9発明及び第11発明では、複数種類の光源からの光のスペクトル分布情報、及び、表示面での各波長毎の反射率が反射光情報として記憶される。
【0031】
第4発明及び第10発明では、複数種類の光源からの光が表示面で反射した場合の反射光のスペクトル分布が予め光源毎に算出されて記憶される。
【0032】
第5発明では、測定された環境光の光強度に基づき反射光情報の強度比率が求められ、光強度の絶対値の影響を考慮して、より現実に近い反射光の色彩情報が求められる。
【0033】
第6発明では、測定した一又は複数の波長の光の光強度に基づいて反射光がいずれの光源からの光が反射したものであるかが選択される。
【0034】
第7発明では、反射光情報の選択が外部から受け付け可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明による場合、複数の波長についての情報を用いて反射光の色彩の情報を厳密に求めることができる。これにより、表示手段の表示面からの表示光と環境光が反射した反射光とが合わさって観察者であるユーザへ届く光の色彩を、表示光の色彩を調整することにより一定とすることができる。したがって表示手段に画像信号を入力して画像を表示するに際し、環境光の違いによらない一定の色彩表現を厳密に実現する補正が可能である。
【0036】
本発明による場合、反射光の色彩情報として三刺激値を用いることにより、強度成分についても考慮することができる。これにより、表示光と反射光とが合わさった光の色彩を考慮する際に、反射光の強度比率を考慮することができる。そして、最終的に目標となる色彩表現を考えた場合に、最終的な色彩表現の三刺激値から反射光の三刺激値を減算する処理によって表示光の色彩としてあるべき色彩を表わす三刺激値を求めることができる。このように、複数の波長及び異なる強度の環境光による影響を考慮に入れた反射光の色彩の情報を厳密に求めることができ、表示手段における一定の色彩表現をより厳密に実現する補正が可能である。
【0037】
また、本発明による場合、複数種類の光源毎のスペクトル分布情報及び、複数の波長の光についての反射率を記憶しておくことにより、環境光の色度及びスペクトル分布等の詳細な測定を行なうことなしに簡易な構成によって表示手段における一定の色彩表現をより厳密に実現するための補正が可能である。
【0038】
本発明による場合、予め反射率を用いた演算を行なった複数種類の光源毎の反射光スペクトル分布情報を記憶しておくことにより、記憶容量を節約しつつ環境光の色度及びスペクトル分布等の詳細な測定を行なうことなしに簡易な構成によって表示手段における一定の色彩表現をより厳密に実現するための補正が可能である。
【0039】
本発明による場合、光強度の絶対値の影響を考慮し、特に、環境光が複数の光源からの光が混ざった光である場合などは特に、より現実に近い環境光の反射光の情報を求めることができる。またこの場合、一の波長の強度を測定することで複数の光源からの光を合成する際の各光源からの光の比率を求めることができ、実際にスペクトル分布を測定することなしに、現実に近い反射光の色彩情報を求めることができる。したがって、簡易な構成で表示手段における一定の色彩表現をより厳密に実現する補正が可能である。
【0040】
本発明による場合、環境光の光強度の測定によって自動的に環境光の光源が推定される。これにより、現実に即した一定の色彩表現を厳密に実現することができる。
【0041】
本発明による場合、表示装置の使用場所の光源、表示装置を使用する時間帯によって異なる周辺環境に応じて、より周辺環境に合わせた一定の色彩表現を厳密に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0043】
図1は、本実施の形態における表示装置の外観及び表示装置が設置されている環境を模式的に示す模式図である。図中の1は表示装置であり、LCDパネル、PDPパネル等のパネルとパネルを駆動する駆動回路とを含む表示部10及び後述する各構成部を内蔵している。なお、表示装置1は正面に表示部10に含まれるパネルを露出させており、正面のパネル枠上であってパネル露出部の下方にOSD(On-Screen Display)のための各種ボタンを含む操作部11と、外部へ向けられた光センサ12とを備えている。光センサ12は、表示部10の表示面と略平行に受光部が配置されており、表示面へ入射する光の内の任意の波長(例えば540ナノメートル)の光の強度を測定するようにしてある。
【0044】
図1に示すように、表示装置1が利用される場合には表示装置1が設置される場所及び時間に応じて周辺は例えば蛍光灯及び窓により採光される太陽光によって照らされる。したがって、ユーザが表示装置1の画面を見るときには、表示部10から照射される表示光Eのみならず、蛍光灯、太陽光等の光源から発せられて表示部10の表示面へ入射する環境光Aが表示面で反射した反射光Rが合成されてユーザへ届く。
【0045】
したがって、ユーザが表示装置1の表示部10を見たときの色彩表現は、表示光Eと反射光Rとが合成された合成光の色彩表現であり、設置される場所によっても、時間的にも時々刻々と変化する反射光Rの色彩に影響される。表示装置1の表示部10で設置場所及び利用時間に拠らずに同一の階調表現及び色彩表現を実現するためには、表示光Eの色彩表現を一定の色彩表現とするのみでは足りず、反射光Rの色彩を考慮しなければならない。
【0046】
そこで、本実施の形態における表示装置1では、光源毎のスペクトル(分光)分布と、表示部10の表示面での反射率分布とを記憶しておき、反射光Rのスペクトル分布を再現して反射光Rの色彩を求め、反射光Rと表示光Eとが合わさった光の色彩表現が一定となるように表示光Eの色彩表現を表示装置1内部で調整する。
【0047】
図2は、本実施の形態における表示装置の構成を示すブロック図である。表示装置1は、上述した表示部10、操作部11及び光センサ12の他に、後述する画像信号出力装置2からの画像信号の入力を受け付けるインタフェースである入力部13と、入力される画像信号が含む各色成分の強度を表わす階調値を適宜変換するLUT(Look Up Table)14と、変換後の階調値を表示部10へ出力する出力部15と、書き換え可能なメモリを利用した記憶部16と、各構成部を制御するCPU(Center Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等を利用した制御部17とを内部に備えている。LUT14及び出力部15はASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途集積回路)で構成されている。なお、LUT14及び出力部15は夫々ASICに限定されるものではなく、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されてもよく、個々の回路で構成するようにしてもよい。
【0048】
表示装置1は、画像信号出力装置2から出力される制御信号及び画像信号を入力部13により受け付け、画像信号に含まれる各画素の各色成分毎の強度、又は輝度及び色差の強度を表わす階調値に基づき、表示部10に対応する画像信号を出力部15により出力し、表示部10に画像を表示させる。画像信号出力装置2は、PC(Personal Computer)、テレビ用チューナー、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤー、ゲーム機等の画像信号を出力する装置である。
【0049】
入力部13は、画像信号出力装置2から受け付ける画像信号の種類によってはアナログ/デジタル変換の機能を有し、後段のLUT14へデジタル信号を入力する。表示部10に表示させる画像を構成する複数の画素夫々の色成分がR(Red:赤成分)G(Green:緑成分)B(Blue:青成分)で表わされる場合、入力部13は、受け付けた画像信号をRGB夫々の色成分の強度を示す階調値を表わすRGB信号へ変換してLUT14へ入力する。なお、RGB信号に限らず他の表色系で各色成分を表わした信号でもよい。
【0050】
LUT14は、入力部13から入力されるRGB信号を受け付け、RGBの色成分毎の階調値を適宜変換し、表示部10での所定の階調表現及び色彩表現を実現する。LUT14は、変換のための係数、例えば色空間の設定に応じたカラーマトリックスが記憶されている。そしてLUT14は、後述するように表示部10での一定の色彩表現を実現するための色成分毎の補正量を記憶する。LUT14は入力された色成分毎の階調値をカラーマトリックス、補正量等の各種係数を用いて夫々変換することにより、カラーマトリックスによる変換、一定の色彩表現を実現するための変換等を多段的に適宜行ない、変換後のRGB信号を出力部15へ出力する。
【0051】
記憶部16には、表示部10に表示される画像の色彩表現を一定とするための処理に用いる情報が記憶されている。具体的には、光源から発せられる光のスペクトル分布の情報が複数の異なる光源毎に記憶されている。また、記憶部16には、表示部10の表示面での反射率を複数の波長夫々について含む反射率分布及び人間の目に対応する分光感度を示す等色関数が記憶されている。
【0052】
制御部17は、操作部11がボタンの押下を検知した場合に操作部11によりなされる通知を受け付ける。制御部17は、操作部11が含むボタンの内のいずれのボタンが何回押下されたかに応じて、各種設定項目を表わす文字情報及び画像を表示部10に出力させてOSD機能を実現する。また制御部17は、光センサ12により測定される特定の波長の光の輝度(光強度)を光センサ12から取得することが可能である。
【0053】
そして制御部17は、後述するように表示部10における色彩表現を一定とするためにRGB信号が含む各色成分の強度を示す階調値に対する補正量を求めてLUT14に記憶する処理を行なう。
【0054】
図3、図4及び図5は、本実施の形態における表示装置1の記憶部16に記憶される光源毎のスペクトル分布の例を示すグラフ図である。各グラフ図の横軸は光の波長をナノメートル単位で示し、縦軸は各波長の光の強度を示している。なお各グラフ図に示される各波長の光の強度は、最大値を1とするように正規化されている。
【0055】
図3(a)は、白熱灯から発せられる光のスペクトル分布を示し、図3(b)は蛍光灯(昼光色)から発せられる光のスペクトル分布を示している。同様に図4(a)は、蛍光灯(昼白色)から発せられる光のスペクトル分布を示し、図4(b)は、蛍光灯(電球色)から発せられる光のスペクトル分布を示しており、図5(a)は昼光ランプから発せられる光のスペクトル分布を示し、図5(b)は高演色型ランプから発せられる光のスペクトル分布を示している。
【0056】
図3乃至図5の各グラフ図に示すように光源によってスペクトル分布は様々である。図3(b)のグラフ図に示される蛍光灯(昼光色)のスペクトル分布と、図4(a)のグラフ図に示される蛍光灯(昼白色)のスペクトル分布とはピークとなる波長はほぼ等しくても、スペクトル分布としては紫側の波長のエネルギーは異なり、表示面の反射率によっては、反射光の色彩を考慮する場合に無視できない差異となる。
【0057】
記憶部16には、図3乃至図5に示したような光源毎、各波長についての光の強度が夫々記憶されている。例えば、正規化された光の強度を1ナノメートルのステップで波長毎に記憶する。この場合、図3(a)に示した白熱灯についてのスペクトル分布の情報は波長毎に(波長(nm),正規化された強度)で表わされて{白熱灯のスペクトル分布情報}={(380,0.00)、(381,0.00)、…、(540,0.411)、(541,0.414)、…、(780,1.00)}のように記憶され、制御部17により参照することが可能である。
【0058】
図6は、本実施の形態における表示装置1の記憶部16に記憶される反射率分布の例を示すグラフ図である。図6(a)及び図6(b)のグラフ図の横軸は入射される環境光Aに含まれる光の各波長をナノメートル単位で示し、縦軸は各波長の光に対する表示部10の表示面における反射率を百分率で示している。なおこのときの反射率は、入射される光の強度に対する反射された光の強度の比率を示す。
【0059】
図6(a)は、表示装置1の記憶部16に記憶される反射率分布の例を示している。図6(b)は、表示部10の表示面における反射率の実測値を光源別に示している。物質面における反射率分布は光源によらず一定である。しかしながら、図3乃至図5に示したように光源によっては特定の波長成分を含まないものもあるため、複数の異なる光源からの光の反射率を実測し、相互に補間して反射率分布を求めるようにしてある。なお、表示部10の表示面における反射率を理論的に求めたものを記憶部16に記憶して用いるようにしてもよい。
【0060】
そして、求められた反射率分布(図6(a))を記憶部16に記憶しておき、制御部17は共通にこれを用いる構成とする。なお、反射率分布の情報は詳細には、以下のように記憶部16に記憶される。例えば1ナノメートルのステップで波長毎に記憶する場合、反射率分布は(波長(nm),反射率(百分率))で表わされて{表示部10の表示面での反射率}={(380,0.00)、(381,0.00)、…、(540,10.20)、(541,10.22)、…、(780,12.69)}のように記憶され、制御部17により参照することが可能である。
【0061】
なお、図3乃至図5に示した光源毎のスペクトル分布の情報、及び図6(a)に示した反射率分布の情報を記憶部16に記憶する構成のみならず、光源毎にスペクトル分布と反射率分布との乗算を予め求めておき、更に最大強度が1となるように正規化した反射光スペクトル分布の情報を記憶部16に記憶しておく構成としてもよい。これにより、6種類の光源毎に光源から発せられる光のスペクトル分布情報及び反射率分布情報を計7つ記憶する場合よりも、6種類の反射光スペクトル分布情報を記憶すればよいので記憶容量を更に節約することができる。
【0062】
図7は、本実施の形態における表示装置1の記憶部16に記憶される等色関数を示すグラフ図である。図7のグラフ図の横軸は入射される光の波長をナノメートル単位で示し、縦軸は各波長の光に対する人間の目の感度をスペクトル刺激値の単位により示す。等色関数は、光の波長毎の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の刺激の感度(三刺激値)の分布を示しており、図7のグラフ図中のx(xバー)は各波長による赤と感じる度合いを表わしている。同様に図7のグラフ図中のy(yバー)及びz(zバー)は、各波長による緑と感じる度合い、青と感じる度合いを表わしている。
【0063】
このように記憶部16に記憶されている各種情報を用いて制御部17が、一定の色彩表現を実現するための補正量を算出してLUT14へ記憶する処理についてフローチャートを参照して詳細を説明する。
【0064】
図8は、本実施の形態における表示装置1の制御部17が、表示部10における色彩表現を一定とするための補正量を算出して記憶する処理の一例を示すフローチャートである。
【0065】
制御部17は、ユーザが操作部11を操作して色彩表現を一定とするための補正量の算出及び記憶処理を開始させようとした場合にこれを検知し、以下に示す処理を開始する。また、制御部17は、操作部11によりユーザによる操作を検知したことを契機とするのみならず、時間に応じて又は光センサ12で測定される輝度の大きさに応じて自律的に処理を開始するようにしてもよい。
【0066】
制御部17は、色彩表現を一定とするための処理を開始するに際し、光センサ12により測定された表示面へ入射される光の内の特定の波長の光の光強度を取得する(ステップS1)。そして制御部17は、記憶部16に記憶されている複数の異なる光源のスペクトル分布情報の内から、いずれか一又は複数の光源のスペクトル分布情報を選択する(ステップS2)。
【0067】
ステップS2において制御部17がいずれの光源のスペクトル情報を選択するかは、以下のように決定されるとする。ユーザが操作部11を操作してOSD機能を実行した場合、表示部10に周辺の光源の選択を受け付ける表示がされる。ユーザは操作部11の操作により、「蛍光灯(昼白色)」、「白熱灯」等の選択が可能である。なお、ユーザの操作によって光源が選択可能な構成には限らず、光センサ12によって測定される特定の波長の光強度から制御部17によっていずれの光源が周辺にあるかが自動的に推定され、制御部17は推定した光源に応じたスペクトル分布情報を選択するようにしてもよい。
【0068】
制御部17は、ステップS2で選択した一又は複数の光源のスペクトル分布情報夫々に対し、ステップS1で取得した特定の波長の光強度に基づいて強度比率を求める(ステップS3)。例えば、制御部17は、540ナノメートルの波長の光強度を光センサ12から取得するとした場合、ステップS2で選択した一又は複数のスペクトル分布情報における540ナノメートルの光強度を、光センサ12から取得した光強度とするためには、正規化されたスペクトル分布の比率をいくつとし、強度をいくつとすべきかを求める。
【0069】
次に制御部17は、ステップS3で求めた強度比率で合成される一又は複数のスペクトル分布情報、即ち環境光Aのスペクトル分布情報と、各波長について記憶されている反射率分布情報とを用い、環境光のスペクトル分布及び反射率分布の積を算出することによって反射光Rのスペクトル分布を求める(ステップS4)。そして制御部17は、ステップS4で求めた反射光Rのスペクトル分布と等色関数との積を求めて各色成分で積分することにより反射光Rの三刺激値XR R R を算出する(ステップS5)。
【0070】
なお、ステップS2からステップS5までに示した手順による反射光Rの三刺激値の算出は、以下に示す式1により表わされる。
【0071】
【数1】

【0072】
そして、制御部17は最終的な目標の三刺激値XO O O から、ステップS5で算出した反射光Rの三刺激値XR R R を減算する(ステップS6)。なお、ステップS6における最終的な目標の三刺激値XO O O は、ユーザが操作部11を操作してOSDの機能によって表示される画面から設定可能である。
【0073】
制御部17は、ステップS6における減算によって得られた値を表示光Eの三刺激値の目標値XT T T とする(ステップS7)。なお、ステップS6及びステップS7において、表示光Eと反射光Rとが合わさった合成光の三刺激値は表示光E及び反射光R夫々の三刺激値の和で求められることから、減算により表示光Eの三刺激値の目標値XT T T が求められる。具体的には表示光Eの三刺激値の目標値XT T T は、
T =XO −XR
T =YO −YR
T =ZO −ZR
により求められる。
【0074】
制御部17は、表示光Eの三刺激値が、ステップS7で求めた目標値XT T T となるRGB各色成分の階調値に対する補正量を求め(ステップS8)、求めた補正量をLUT14に記憶し(ステップS9)、処理を終了する。
【0075】
これにより以後、LUT14における変換処理により、表示部10の表示面から放射される表示光Eの色彩表現が反射光Rの色彩を考慮した色彩表現となるようにRGB信号の各階調値が補正される。
【0076】
なおステップS8における補正量の算出は事前に色彩表現の較正を行なっておくことにより実現する。例えば、所定の色例えば白色画像を表わす画像信号を表示部10へ入力し、図示しない外付けの色度センサによって白色画像の画像信号が表わす各RGB成分の階調値と、実際に測定される表示光Eの三刺激値XYZとの関係を求めておき、表示光Eの三刺激値を所望の色空間における三刺激値とするための各RGB成分の階調値に対する変換係数を求めてLUT14が記憶しておく。そして、表示光Eの三刺激値の目標値XT T T が求められた場合、予め較正により求められてある各RGB成分の階調値と実際に測定される表示光Eの三刺激値XYZとの関係に基づいて、白色画像を表わす画像信号を入力した際に表示光Eが目標値XT T T となる変換係数を補正量として求める。
【0077】
制御部17が図8のフローチャートに示した処理を行なうことにより、反射光Rのスペクトル分布を直接的に測定することなしに、環境光Aの強度を求めることによって反射光Rのスペクトル分布を厳密に推定できる。即ち、本発明に係る表示装置1では、複数の種類の光源のスペクトル分布情報を記憶しておく記憶部16と、環境光Aの任意の波長における光強度を測定する光センサ12とを備える簡易な構成で、反射光Rのスペクトル分布をより現実に近い形で推定し、反射光Rの三刺激値XR R R を厳密に算出することができる。なお、三刺激値によって反射光Rの色彩を表わすことにより、複数の波長及び異なる強度の環境光による影響を考慮に入れた反射光の色彩の情報を厳密に求めることができる。
【0078】
そして、反射光Rの三刺激値XR R R が厳密に算出可能であるから、表示光Eと反射光Rとの合成光の色彩が最終的な目標の三刺激値XO O O で表わされる一定の色彩表現により実現されるように、表示光Eの三刺激値があるべき目標値XT T T を厳密に求めることができ、表示部10で環境光Aによらない一定の色彩表現を厳密に実現するように、表示装置1内部でLUT14を用いて画像信号が表わす各色成分の階調値の補正を行なうことが可能となる。
【0079】
なお、表示装置1内部でLUT14により補正するので、画像信号出力装置2で調整する場合よりも色成分毎の強度を表わす階調の減少を防止して高精細で美しい画像を表示させることができる。
【0080】
上述の実施の形態では表示装置1は、任意の波長(例えば540ナノメートル)に対する分光感度を持つ光センサ12を内蔵する構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らない。光センサ12は、輝度センサ又は照度センサのような明るさに対応する量を取得するセンサを用いる構成としてもよい。また、光センサ12は外付けのセンサであってもよい。
【0081】
光センサ12を外付けとする場合、光センサ12の測定値の出力先を表示装置1として制御部17が取得できる構成とする。また、光センサ12の測定値の出力先は画像信号出力装置2であってもよい。画像信号出力装置2を出力先とする場合、表示装置1が備える構成とした制御部17、記憶部16又はLUT14のいずれかを画像信号出力装置2が備え、変換後の階調値を含む画像信号を表示装置1へ入力する構成としてもよい。この場合、各構成部間の信号の入出力はUSB等の通信線を介するように構成し、表示装置1及び画像信号出力装置2の間で信号を送受信可能とする。また、制御部17、記憶部16を画像信号出力装置2に、LUT14を表示装置1に備える構成とし、画像信号出力装置2から通信線を介してLUT14を書き換えるようにしてもよい。そして、記憶部16に記憶するようにしてある各種情報の内、光源毎のスペクトル分布情報及び等色関数の両方又はいずれか一方を画像信号出力装置2の記憶部に記憶するようにしてもよい。
【0082】
なお、本実施の形態では表示装置1の内部構成は、処理の高速化が要求されていることからASICを構成する各モジュールによって実現する構成とした。しかしながら本発明は、コンピュータ装置に本発明に係る補正方法を実施するコンピュータプログラムをコンピュータ装置に実行させることにより、コンピュータ装置が接続している表示装置で表示する画像を、環境光に拠らず一定の色彩表現で観察されることを実現するようにしてもよい。
【0083】
図9は、本発明に係る補正方法をコンピュータ装置で実施する場合の構成を示すブロック図である。この場合、コンピュータ装置3は、CPU、MPU等の制御部30と、ハードディスク(Hard Disk)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の記憶部31と、ディスクドライブ又は外部メモリを利用して外部からデータを参照することができる補助記憶部32と、補正後の画像信号をモニタ4へ出力する出力部33とを備える。
【0084】
記憶部31には、コンピュータ装置3が例えば記憶部31に記憶してある静止画像データから画像信号を読み出して出力部33によりモニタ4へ出力するに際し、コンピュータ装置3に本発明に係る補正方法を実施させるための制御プログラム3Pが記憶されている。制御プログラム3Pには、制御部30を上述の表示装置1におけるLUT14として機能させるためのモジュールが含まれていてもよい。記憶部31に記憶される制御プログラム3Pは、図示しないDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体34に記録されており、制御部30が補助記憶部32により可搬型記録媒体34に記録されていた制御プログラム35を記憶部31へ記憶させたものであってもよい。
【0085】
このような構成のコンピュータ装置3の制御部30は、記憶部31から制御プログラム3Pを読み出し、モニタ4に設けられる光センサ(図示せず)又は外付けの光センサから取得できる光強度を利用して図8のフローチャートに示した処理を実行する。なお、ステップS9におけるLUT14への記憶は、記憶部31への補正量の記憶とすればよい。そして制御部30は以後、モニタ4へ画像信号を出力するに際し、記憶部31に記憶してある補正量を用いて画像信号が表わす色成分毎の階調値を補正してから出力する。これにより、ソフトウェア処理によってもモニタ4における色彩表現を、環境光によらずに一定とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施の形態における表示装置の外観及び表示装置が設置されている環境を模式的に示す模式図である。
【図2】本実施の形態における表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における表示装置の記憶部に記憶される光源毎のスペクトル分布の例を示すグラフ図である。
【図4】本実施の形態における表示装置の記憶部に記憶される光源毎のスペクトル分布の例を示すグラフ図である。
【図5】本実施の形態における表示装置の記憶部に記憶される光源毎のスペクトル分布の例を示すグラフ図である。
【図6】本実施の形態における表示装置の記憶部に記憶される反射率分布の例を示すグラフ図である。
【図7】本実施の形態における表示装置の記憶部に記憶される等色関数を示すグラフ図である。
【図8】本実施の形態における表示装置の制御部が、表示部における色彩表現を一定とするための補正量を算出して記憶する処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る補正方法をコンピュータ装置で実施する場合の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0087】
1 表示装置
10 表示部
11 操作部
12 光センサ
14 LUT
16 記憶部
17 制御部
3 コンピュータ装置
30 制御部
3P 制御プログラム
4 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部に入力される画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正する方法において、
環境光の光源の種類別に、及び、前記光源からの光の複数の波長成分毎に、前記光源からの光が前記表示部の表示面で反射した場合の光の情報を示す反射光情報を記憶しておき、
環境光の光強度を測定し、
前記反射光情報の内から、一又は複数の種類の光源に対応する反射光情報を選択し、
測定した光強度、及び、選択した反射光情報を用い、環境光が前記表示部の表示面へ入射した場合の反射光の色彩を表わす反射光色彩情報を求め、
求めた反射光色彩情報に基づき、前記表示手段で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光と前記反射光とを合わせた光の色彩が所定の色彩となる前記表示光の色彩を表わす目標色彩情報を求め、
前記表示光の色彩を前記目標色彩情報が表わす色彩とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求め、
求めた補正量に基づいて画像信号が含む色成分毎の強度を補正する
ことを特徴とする補正方法。
【請求項2】
前記色彩情報として三刺激値を求めることを特徴とする請求項1に記載の補正方法。
【請求項3】
前記反射光情報として、
光源からの光のスペクトル分布情報を記憶しておき、更に、
前記表示部の表示面による光の反射率を複数の波長成分毎に記憶しておく
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の補正方法。
【請求項4】
前記反射光情報として、
光源からの光のスペクトル分布と、前記光の波長成分夫々の前記表示部の表示面による反射率との積により算出される反射光スペクトル分布情報を記憶しておく
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の補正方法。
【請求項5】
反射光情報を選択した場合、測定した光強度に基づき反射光情報の強度比率を求め、
前記強度比率により重み付けした反射光情報を合成して反射光色彩情報を求める
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の補正方法。
【請求項6】
測定した一又は複数の波長の光強度に基づき、反射光情報を選択する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の補正方法。
【請求項7】
反射光情報の選択を受け付けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の補正方法。
【請求項8】
画像を表示する表示部と、該表示部へ入力する画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正する補正手段とを備える表示装置において、
環境光の光源の種類別に、及び、前記光源からの光の複数の波長成分毎に、前記光源からの光が前記表示部の表示面で反射した場合の光の情報を示す反射光情報を記憶する手段と、
環境光の光強度を測定する測定手段と、
前記反射光情報の内から、一又は複数の種類の光源に対応する反射光情報の選択を受け付ける手段と、
前記測定手段が測定した光強度、及び、選択された反射光情報を用い、環境光が前記表示部の表示面へ入射した場合の反射光の色彩を表わす反射光色彩情報を求める手段と、
求めた反射光色彩情報に基づき、前記表示部で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光と前記反射光とを合わせた光の色彩が所定の色彩となるための前記表示光の色彩を表わす目標色彩情報を求める手段と、
前記表示光の色彩を前記目標色彩情報が表わす色彩とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求める手段と
を備え、
前記補正手段は、
求められた補正量に基づいて補正するようにしてあること
を特徴とする表示装置。
【請求項9】
前記反射光情報として、光源からの光のスペクトル分布情報を記憶しておき、更に、前記表示部の表示面での光の反射率を複数の波長成分毎に記憶しておくようにしてあり、
前記選択手段が選択した反射光情報に対応するスペクトル分布情報に前記測定手段が測定した光強度に基づく係数を乗じた光強度分布を求める手段と、
求めた光強度分布、及び、複数の波長成分毎に記憶してある反射率に基づき反射光色彩情報を求める手段と
を備えることを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記反射光情報として、前記光の波長成分夫々の前記表示部の表示面による反射率との積により算出される反射光スペクトル分布情報を記憶する手段と、
前記選択手段が選択した反射光情報に対応する反射光スペクトル分布情報に前記測定手段が測定した光強度に基づく係数を乗じて反射光色彩情報を求める手段と
を備えることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
画像を表示する表示部と、該表示部へ入力する画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正する補正手段とを備える表示装置において、
環境光の光源の種類別に、前記光源からの光のスペクトル分布情報を記憶する手段と、
前記表示部の表示面での光の反射率を複数の波長成分毎に記憶する手段と、
環境光の光強度を測定する測定手段と、
一又は複数の光源の選択を受け付ける手段と、
選択された光源からの光のスペクトル分布情報に前記測定手段が測定した光強度に基づく係数を乗じた光強度分布、複数の波長成分毎の反射率、及び等色関数の積を色成分毎に積分して反射光の三刺激値を算出する手段と、
所定の目標三刺激値から前記反射光の三刺激値を減算する手段と、
前記表示部で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光の三刺激値を、減算により得られた値とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求める手段と
を備え、
前記補正手段は、
求められた補正量に基づいて補正するようにしてあること
を特徴とする表示装置。
【請求項12】
表示部に画像を表示させる手段を有するコンピュータに、環境光の光源の種類別に、及び、前記光源からの光の複数の波長成分毎に、前記光源からの光が前記表示部の表示面で反射した場合の光の情報を示す反射光情報を記憶させておき、前記反射光情報に基づき、画像信号が含む一又は複数の色成分毎の強度を補正させるコンピュータプログラムであって、
前記反射光情報の内から一又は複数の種類の光源に対応する反射光情報を選択するステップ、
環境光の光強度、及び、選択した反射光情報を用い、環境光が前記表示部の表示面へ入射した場合の反射光の色彩を表わす反射光色彩情報を求めるステップ、
求めた反射光色彩情報に基づき、前記表示手段で所定の画像を表示した場合に表示面から発せられる表示光と前記反射光とを合わせた光の色彩が所定の色彩となる前記表示光の色彩を表わす目標色彩情報を求めるステップ、
前記表示光の色彩を前記目標色彩情報が表わす色彩とするための画像信号の色成分毎の強度に対する補正量を求めるステップ、並びに、
求めた補正量に基づいて画像信号が含む色成分毎の強度を補正するステップ
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−244340(P2009−244340A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87925(P2008−87925)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(391010116)株式会社ナナオ (160)
【Fターム(参考)】